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最終発言2016/06/01 00:25:55 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/05/31 07:07:16
オープニング
●一風変わった暴走車両
「クソッ、なんでこんな場所に来る羽目になってるんだか」
車に乗った男は悪態をついた。彼はドライブの最中、たまたま近くを通りかかった時に車のガソリンが尽きてしまったため町にあるガソリンスタンドに寄っていた。そのガソリンスタンドは廃れたド田舎の街の外れにあり、夜遅くであるためか静まり返っていた。
「給油も済んだし、さっさと行くか。こんなところにいつまでもいられねえしな」
アクセルを踏んで発車させる。そして町を遠ざかろうとしたその時、遠くから重々しい音が聞こえてきた。その音は貨物列車が通る音にも似ていた。男はいったん停車し、首を傾げた。
「ここらへんに線路なんてあったか――?」
音がだんだんと近づいて来て、その正体がはっきりすると男はあまりのことにぽかんと口を開けた。
「なん……だありゃ」
そこにいたのは先頭車両に恐ろしい鬼のような面を付けた列車だった。その姿は毒々しいオレンジ色をしている。何よりも特徴的だったのはその走っている場所だ。線路ではない、普通の場所を走っている。男は自らの危機を悟った。
「まさか、従魔……まずい、逃げないと……ッ」
だがもう遅い。列車型の従魔は男のほうへと近づいて来て――その横をすさまじい速度で通り過ぎていった。そしてそのまま、町の外周に沿って遠ざかっていく。
「……は?」
男には何が起こったのかさっぱりわからなかった。ただ一つだけやらなくてはいけないことがある。
「ほ、H.O.P.E.に連絡しねえと……!」
●暴走列車を食い止めろ
「新手の従魔が出現したとの報告がありました」
H.O.P.E.職員は、手にした資料を眺めながら口を開いた。
「発見者は、一般人の男性ですね。報告によりますと、どうやら従魔は列車のような姿をしており、常に町の周辺をすさまじい勢いで走行しているそうです。ただ、男性によると襲われそうな気配はなかったそうなので、危険性はあまりないとは思いますが」
列車型の従魔が走行しているのは町の周辺であり、いくら田舎でも一般生活に影響を与えるのは間違いない、と職員は続けた。聞いていた能力者たちも小さく頷く。
「ただ走ってるだけとはいえ、その速度はかなり速いですから、接触したら危険ですしね。なんとかして止めてください」
職員からの要求に、能力者たちはうなずき返した。
解説
街の近くを爆走する列車型従魔を討伐せよ!
●舞台
街の周辺一帯
従魔は一定のルートをただ駆け抜け続けています。従魔出没の報せがあったため近隣の住民は避難済みです
従魔の進行ルート付近にはいくつか建物があります
▼以下PL情報
●敵情報
列車型従魔
現代の乗り物である電車の姿を模倣した従魔。デクリオ級
誰が何の目的で生み出したのかは不明
従魔自身に知性はないため、街の周辺を走る以外の行動はとっていない
ただしその速度は非常に速いため正面から止めるのは困難を極める
列車型であるため内部に乗り込むことが可能。内部は電車そっくりだが、乗客は全員従魔である
運転席にあたる部分に従魔のコアに当たるものがある
乗客
列車型従魔の内部にいる従魔。だいたい全員ミーレス級。ときおりイマーゴ級が混ざっている
戦闘能力は皆無に近いが、とにかく数が多いため邪魔
リプレイ
●暴走列車に進入せよ
従魔の出現した場所の近くの街。そこにある建物の屋上に数名のエージェントが待機していた。
「H.O.P.E.の情報とアトラクア殿の予想によれば一番乗り込むのが楽そうなのはここでござるが……」
「飛び降り乗車とはずいぶんと思い切りましたね。一応何度か試したので後は実物を見てタイミングを合わせるだけですが」
小鉄(aa0213)の言葉に石井 菊次郎(aa0866)が答えるように告げた。
そのとき彼らの持つ通信機に通知が入る。
《こちら赤城! 射撃ポイントに到着した》
《カグヤ・アトラクア。わらわも到着したのじゃ》
ほぼ同時に通信を行ってきたのは列車従魔の足止めを行うために別行動をしていた赤城 龍哉(aa0090)とカグヤ・アトラクア(aa0535)であった。彼らは集合し軽く話し合いを行ってからそれぞれのポイントへ移動していた。
龍哉とカグヤからの通信に対して染井 桜花(aa0386)が質問する。
「……従魔は?」
《こっちはまだ姿は見えねえな》
《わらわの方も同様じゃ。ただ予測通りじゃとあと10分もしないうちに来るのう》
カグヤは事前調査を行った結果を告げる。
その言葉通りそこから数分後、遠くから独特の重低音が聞こえてくる。
「おおっと、センス悪いデザイン……あれに乗るのもちょっと嫌だよね……」
「かなりキモいデザイン……だけど、携帯のアクセに一つ欲しいかも? シュールだね!」
「えっ」
穂村 御園(aa1362)と須河 真里亞(aa3167)がうっすらと見え始めた電車のデザインに対して感想を述べる。ただその感想の方向はややずれており、それに対して思わずと言ったように御園が声を上げる。
そして彼らは接近してきた電車が過ぎ去るのをそのままの姿勢で見届けた。
「これは……この列車のベースの型は……わかりません! テツのプリンスと呼ばれたこの僕がこんな事で!」
都呂々 俊介(aa1364)が声を上げる。一瞬全員が彼の方を見るが、真剣な顔に何も言わなかった。
気を取り直すように菊次郎が全員に告げる。
「思ったよりも速度はありそうですが……乗り込むのは難しくはなさそうですね」
《こっちもだいたいの速度は把握した。次の周回で仕掛ける》
《次のタイミングはおおよそ14分後じゃ》
「14分後でござるか。了解でござる」
通り過ぎた列車型従魔は街の外を大きく迂回し、現在は東側で街の境界に接触するようなルートを取っている。ちょうど接触してから1周するまでに15分かかることがわかっている。エージェントたちは次に備えた。
《よし、見えた! 初撃、いくぜ……情け無用ファイヤー! なんつってな》
他のエージェントたちが待機している場所よりも前方で待機していた龍哉がフリーガーファウストを従魔の顔面に叩き込む。しかし効果が薄いのか列車は速度を落とさずに走って行く。
《スマン、ほとんど速度が落ちなかった!》
《次はわらわが仕掛ける番じゃな》
龍哉がいたポイントを過ぎてからそう待たずにカグヤの待つポイント付近に従魔が来る。カグヤは列車の車輪に向けてフリーガーファウストを撃った。その一撃は直撃はしなかったものの爆風で従魔を少しぐらつかせる。
そして2撃を経てやや速度の落ちた従魔が残りのエージェントが待機している場所までやってくる。
「……きた」
「いくでござる!」
速度が落ちたとはいえ、未だやや早い列車従魔。それがちょうど建物の真横を通るタイミングで彼らは同時に飛び降りた。しかしタイミングが少し遅れたのか半数は列車の後方に落ち、残りは乗り込もうとした直後に風にあおられて落下する。
「いたた……失敗ですか」
「まだです……失敗したらもう一回!」
「再チャレンジでござるな」
落ちた彼らはまたすぐに建物の屋上に向かう。そしてまた約10分後、龍哉の方から通信が来る。
《次、仕掛けるぞ!》
炸裂音と共に弾頭が先頭車両側面で爆発する。その爆風で体勢を崩し、列車型従魔は速度を落とした。そのままカグヤのポイントの方まで進んでいく。
《一度落とした速度を元に戻させるわけにはいかないからの》
再びの炸裂音。カグヤが狙って放った一撃は車輪傍の地面に当たり風をまき散らしながら爆発する。それに煽られて列車はさらに速度を落とし、ついには元の速度の半分近くまで落ち込んでいた。
近づいてくる列車の速度を見たエージェントたちはこれならばとうなずく。
そして再び一斉に飛び降りた。小鉄は天井にクナイを突きつけて体を固定し、桜花は蛍丸を突き刺して体勢を整えた。御園は天井にフック付きのロープを固定する。残りはそれぞれ姿勢を低くすることでなんとか風に耐えた。
「それでは進入します!」
御園がロープを巻き付け列車側面に移動し、窓ガラスを割る。そしてそこから進入した。残る面々もそのロープを伝って窓から進入する。
「うーん……これはすごい数だね」
真里亞が唸った。ぎっしりとは言わないがつり革につかまってい立っているような姿を取った従魔や、椅子に座っている従魔など乗客に扮した従魔が大量に存在していた。
どう進むべきか決めあぐねていると、後れるようにして彼らが進入したのとは逆の窓からバイクごと龍哉が突入してきた。巻き込まれるようにしていくらか従魔が消し飛ぶ。
「悪い、少し遅れた」
「これで全員でござるな。それでは道を急ぐでござるよ」
列車内に侵入することに成功したエージェントたちは先頭車両を目指し、従魔を蹴散らしながら歩を進めた。
●暴走列車を食い止めろ
彼らは道中の従魔を蹴散らし、ついに先頭車両と思われる車両にまで到達した。そこにはこれ見よがしに、頑丈な扉がある。
小鉄が前に出てその扉を殴り飛ばした。
「何時の世も鍵開けはこれが一番手っ取り早いでござるな」
「いや、その……間違ってないけど」
小鉄の行動に俊介はそれでいいのかと思わず引いた。だがいつまでもそうしていられないため、扉の向こうを見る。そこには青色のキューブが操縦席に埋め込まれる形で存在していた。
「これが従魔のコアか? こういうのを砕くにはちょうどいい代物があるぜ」
龍哉が一歩前に出る。その手には杭打ち機。扱いの難しいそれを軽く振るうと突撃する。そして攻撃を加えたとき、コアがきらりと光った。直後、龍哉は吹き飛ばされる。
「うわ!?」
「これは……シールドですか?」
菊次郎が目の前の光景を見ながら口にした。コアから少し離れた位置に薄くライヴスのようなもので構成されたシールドが発生していた。龍哉の攻撃に反応して生成されたものだろう。
「いてて、油断したぜ。普通の攻撃じゃ反射されるみたいだな……」
「……ん」
龍哉の言葉に桜花が頷いた。どうするか考えようとしていたとき、彼らは入り口の方に従魔が集まってきていることに気がついた。
「コアにつられたのでしょうか?」
「とにかく従魔の足止めだね。俺様にご挨拶なしで通り抜けなんざ許さねえぜ!」
真里亞が従魔の中に突撃する。それについていくように小鉄も突撃し、御園も入り口を陣取り、銃器を構えた。
「時間は稼ぐので、コア破壊は頼むでござる」
「って言っても、これはどうしたらいいんだ?」
《反射バリアーとはやっかいじゃな。どういう仕組みで動いているのか興味があるのう……わらわも突入すればよかったのじゃ》
通信機越しに本気で悔しそうなカグヤの声が聞こえた。
《龍哉が殴ったら反射させられたのであれば、魔法攻撃はどうじゃろうか。それで無理ならば……ふむ、あとはシールドの耐久以上の攻撃を加えるしかないじゃろう》
「なるほど。物理でだめならば魔法でということですか。試してみるとしましょう」
菊次郎がコアを睨むと、彼の目の前に雷の槍が現れる。それはシールドに向かって殺到し、反射されることなくぶつかって霧散した。
「なるほど……どうやら魔法攻撃は反射されないようですね」
「ってことは、あとは限界以上の攻撃を一気に叩き込めばいいって訳か」
「魔法攻撃が得意なのは……どうやら俺以外はいなさそうですね。それでは持てる全力で攻撃しましょう。これが終わったらネタ切れになるので後h任せますよ」
それだけ言うと、菊次郎は再び集中する。彼の目の前にはライヴスの弾丸や炎球、そして先ほどはなったものと同じ雷槍が現れる。そしてそれらは一斉に放たれた。魔法攻撃の一斉射はシールドに当たるたび弾けていく。だが確実にダメージを与えていき、最後にはなった槍が当たった瞬間に砕け散った。
「……叩く」
「今度こそ……おりゃああああ!」
シールドが砕けた瞬間を逃すまいと桜花と龍哉が攻撃を加える。すべてを粉砕する一撃を同時に2度受けたコアは耐えきることができずに砕け散った。
コアを失った列車型従魔はそのパワー源を失い、速度を落としていく。やがて振動が止まり、列車は自然に止まった。
●後処理と――
列車は止まったが、中にいる従魔がいなくなったわけではない。エージェントたちは力を合わせ中に残っていた従魔を片付け始める。あまり強くないとはいえこの数の従魔が一斉に外に出られると確実に面倒なことになるだろう。
「事故の為しばらく列車が停止しまーす。乗客の皆様は列車内でおとなしくお待ちくださーい! なんちゃって」
イマーゴ級従魔を吹き飛ばしながらふざけるように真里亞が口にした。
「がるるるる! 人の姿をした連中を噛み殺すのはなかなか乙なもんだなぁ!」
「なんか、大量殺人犯になった気分……意外と、爽快?」
「こう、なんだかアレだな。ゾンビをひたすら撃ち殺すゲームとか、武将を操作してひたすら無双するゲームを彷彿とさせるな」
従魔の群れを処理しながら御園と龍哉はそれぞれの感想を口にする。
順調に数を減らしていっているが、その数は意外と多い。どうやら処理にはまだ時間がかかりそうだった。
その頃、カグヤは1人で従魔の操縦席と思われる場所にいた。
「これが大型従魔のコアの欠片……面白いのう。普段は倒されると完全に消滅することが多いから回収できないのじゃが。……なかなか高純度のライヴス結晶に何らかの加工を施しておるのか?」
ピンセットで砕けた従魔のコアをつまみ、袋に入れる。そしれそれを懐にしまうと操縦席内を闊歩した。
「内部は列車そのものじゃが……何らかの実験用に人工的に作られたという想像は間違ってなかったようじゃな。さて、さっさと終わらせて回収したサンプルの調査をせねばのう……」
いくらか壁などに触れ、観察をするとカグヤは未だに従魔が蔓延る列車内部に戻っていった。