本部

リンカーたちの長い一日

鳴海

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 6~8人
英雄
7人 / 0~8人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2015/10/08 11:55

掲示板

オープニング

 その日あなた方はH.O.P.E.指令かから収集命令が下った。
 今思えばこの時に自分の嫌な予感を信じこの仕事を下りていたらあのようなことにならなかっただろう……。

「作戦を説明する」

 そう司令官はふんぞり返って説明を始めた。
「先日、大量の霊石が眠る鉱脈が発見されたとの報告があった。
 場所については各々に配った資料に書いてある通りだが、この周辺に従魔が大量に発生しており、探索隊がうかつに近づけない状態だ」
 《霊石(ライヴストーン)》とはライブスの触媒として有益な特殊鉱石だ。ライヴス出現後、これまで何の変哲もなかった石ころや鉱石の中には、ライヴスの伝播能力をもつものや、強いライヴス抵抗を示すものなどが発見された。
 これらの特殊資源を総称して霊石、ライブストーンと呼称する。 
「なので君たちには先行し周囲の従魔の駆逐、そして安全の確保を行ってもらいたい。遅れて近場の町から到着した探索隊がテントを張り、サンプル霊石の確保にあたる。
 後発隊にはリンカーもいるので君たちはそのまま帰ってきてもよい
なにか質問は?」
 五分程度の質問会が設けられることになる、質問会で出た内容をまとめると左の通り。
 任務期間は三日間、近くの町まではヘリで向かってもらうが、そこから鉱脈までは徒歩。木々が生い茂る亜熱帯の山脈であること。食料は四日分。
異常が発生した場合、補給ポイント、採掘ポイントに通信端末を投下しておいたのでそちらから連絡を取ること。
「以上だ! 検討を祈る」
 そうあれよあれよというまに任務に送り出されたリンカーたちは。言葉のとおり近くの町まで飛ばされ。その後熱く蒸していて、蛇やら大きい虫やらがいる森の中を駆けずり回った。
 途中従魔に遭遇し戦闘になったが、数が多いだけで特に苦戦することもなく、周囲全ての従魔を相当しても、支給品と休憩でほぼ体力は回復していた。
 そして採掘ポイントの端末から、後発隊が出発したことを確認した一行は山を下りることにする。
 その時、メンバーの一人が異変を感じ取った。
 森の中では聞きなれない機械音がするのだ。そして遠くで樹を切り倒すような音。
「嘘だろ!」
 そう誰かが叫んだ時には遅い、亜熱帯特有の巨大な木がリンカーたち向けて倒れてくる。
 それを回避したリンカーたちはさらなる絶望に目を見開いた。
 周囲を囲まれていたのだ。
 数としては、ガスマスクを装備した銃兵が八体。そしておそらくリンカーだと思われる、チェーンソウで武装した兵が三体。
 その光景を目の当たりにしてリンカーたちは思った。
 罠だった。
 そう判断したリンカーたちの行動は早かった、誰かがフラッシュバンを投げ、次いで誰かがスモークグレネードを空に放った。
 次の瞬間にはあたりが煙に包まれて、一寸先も見えない状態になる。
 煙が風で流されて、完全に視界がもどってきたときはもう、リンカーたちの姿はなかった。

*   *

 リンカーたちは補給地点の一つにいた。本部と連絡し応援を要請するためである。
 しかし救援物資と共に投下されていた端末は電波の妨害にあい、メッセージを受信することしかできなかった。しかし幸いなことに指令から今後の行動についての指示が届いていた。


1 現状応援を派遣するとなると三日程度かかる。後発隊は一般人が多くリンカーは五名しかいないため応援に回すことはできない。
2 敵はヴィランの一派であり、この情報自体は信ぴょう性の持てるものだったため、偶然見つかったものと思われる。後発隊が滞在する町もヴィランに襲われたため同じチームの者かと思われる
3 ヴィランの隊員の口を割らせたところ。一般戦闘員は武装を施し、リンカー戦を想定し訓練した特殊兵士だという。しかしチェーンソウを持ったリンカーは対リンカー戦のスペシャリストらしい。
 リンカーの数では上回っているが。数で勝っているからと言って油断はしないように。
 以上の点を踏まえて君たちが行うべき行動は。
1 自力での敵の排除。
2 後発隊への干渉を妨げるために、いち早い戦闘の開始。
3 全員での帰還
 密林での戦闘は慣れていないと思うが頑張ってほしい。
 
追伸
 この端末は周囲の生命体の反応を感知できるようになっている、大雑把にだが反応は捉えられるはずだ。マップ機能も備わっている、地の利を生かし奇襲を仕掛けてやるんだ。 
 検討を祈る。

 そのメッセージは読み終えると自動的に削除され、画面には周囲一帯のマップが表示された、個々から二キロ程度離れた場所に三つのライヴス反応が見受けられる。
 君たちはあまりにひどいメッセージに苦笑しながらも行動を始めた。

解説

目標 敵の排除 

<チェーンソウリンカー> 合計三体
 一対一の戦闘に特化したリンカー、幸いなことに全体を攻撃するような技や、BSを巻いてくるような攻撃はしない。
 ただそのチェーンソウの一撃は重く、近接戦闘は避けた方がいいだろう。
 ただ距離をとったとしてもチェーンソウの刃を飛ばしてくるので気を緩めないように。
 どちらの攻撃も命中精度はよくないが、使用者本人はかなりタフなので。攻撃される機会は多いと思われる

<銃撃兵> 合計八対
 アサルトライフルで遠距離から撃ってくるタイプです。
 リンカーたちにとってアサルトライフルなどかすり傷程度も負いませんが、邪魔くさいことこの上ないでしょう

 このシナリオではいち早くの戦闘を要求されていますが。要は後発隊にちょっかいをかけられないように戦闘を行えばいいだけなので。あまり気にする必要はありません。
 時間制限なども特にないです。
 普通に戦闘を挑むとつらいと思います。
 ただ密林ということと、PCの手にはマップがあるということもあるので、奇襲を仕掛けることはできます。どんな奇襲にするのかはお任せします。

リプレイ

 突如銃声、そしてついで飛び立つ鳥たち、森を異変が襲っていた。
「きゃっ」
 その森の中を『リーゼロッテ アルトマイヤー(aa1389hero001)』は駆けていた。慣れない足取りに生い茂る葉のせいで見通しが悪く、足元に何があるか分からないので、常に全方向に気を配す必要がある、それは神経を張り詰めての全力疾走だった。
 その全力疾走の原因は背後の音である、銃声、そして木々をなぎ倒す音。
 見つかったのだ。ヴィランを偵察するために編成された班は敵に捕捉されてしまった
「リーゼロッテ」
 リーゼロッテと契約を結んだ、エージェント『駒ヶ峰 真一郎(aa1389)』がその傍らで膝をつく。
「歩けそうか?」
 信一郎はリーゼロッテの足首に触れ、様子を確かめる、折れてはいない。だがこれでだいぶ追いつかれてしまった。
「ここで追いつかれるのはまずい。いけるか?」
「私は、大丈夫だ。早くいこう」
「おいおい、大丈夫かよ譲ちゃん」
 そして進軍が遅れている二人を心配して『メイナード(aa0655)』が戻ってきた。肩に担がれている少女は『Alice:IDEA(aa0655hero001)』リンク状態であれば担いで走ったほうが早いとの判断だった。
「ああ、すみません。先に行ってくれててもよかったのに」
「見捨ててなんていけません。さぁ走って、仲間のところまで行けば、きっとなんとかなります」
 そうイデアが諭す。
 四人は逃走を再開した。どうやら先ほどの停止で、囲まれてしまったらしい。左右の少し離れたところから草木をかき分ける音、そして銃声が聞こえる。
「楽しんでるみたいですね」
 イデアが言った。
「まるで狩りだな」
 メイナードが答える
「私たちが狐?」
 そう皮肉交じりにイデア言葉を返した。
「すまない、私のせいだ……」
「リーゼロッテのせいじゃない、偵察の部隊に見つかった僕が悪いんだ」
「でも、ごめん、私はもう走れない」
 脂汗をぬぐってリーゼロッテが言って立ちくす。
「先に行ってください。後で合流します」
 そう真一郎がメイナードに叫んだ瞬間
「いや、もうおせぇ」
 そう脱力気味にメイナードが答えた。はじかれように顔を上げる三人。そこにはアサルトライフルを構えて下卑た笑い声をこぼすガスマスクの男が三人立っていた。
「もう少しで到着するぜぇまずは左右から、そして後ろから兄貴たちが来るんだぜ! そうなったら終わりなんだぜ!」
「クソッ……今日はどこまでツいてないんだ」
 メイナードが悪態をついた。
「そうだ、お前たちは恐怖しろ、兄貴と俺たちがそろえばリンカーがどれだけいようと負ねぇんだぜ」
「……そろえばいいですね」
 イデアが淡々とそう口にする。
「なに? なんで余裕ぶってやがる。そこの女だってもう動けねぇはずじゃねぇのか」
「別にそんなことはないです」
 指をさされたリーゼロッテのかわりに、真一郎が答えた。
「自分たちは、ここに望んでやってきた、そして合流地点だから立ち止まった、ただそれだけです」
「君たちの行動パターンは予測済みってことだ」
 そうメイナードがほくそ笑むと、左右で銃声、そして悲鳴が上がった。その悲鳴に戸惑いを見せたのは銃兵たち、当然だ、なぜならそれは彼らの仲間の悲鳴だったから。
「何が、おこって……」
「何がおこっていると思う?」
 信一郎がマスクをかけながらほくそ笑んだ。

   *   *
 
『モニカ オベール(aa1020)』は森の中をかけていた。その傍らには相棒の『ヴィルヘルム(aa1020hero001)』が並走している。
 二人はまるで整地された地面を走るようにするすると森の中を進んでいく。彼女たちにとっては森という環境は生涯にはならないのだ。
 その姿は森と調和していると言ってもよかった、足跡をつけないように石の上に器用に足をのせながらも、木々をざわめかせることすらほとんどない。
「いいか、奴らは獣よりも頭がいい。だが鼻は効かず、自ずと視界に頼り、本能による警戒も薄い」
 ヴィルヘルムが息をひそめ、モニカにしか聞こえない声で囁いた。
「狩りだけじゃなくて戦いも慣れてるんだね。頼りになるーっ」
「いいや狩りだ。そう思わねば弓など引けんぞ」
「…そうだね、わかった。ならあたしたちも”獲物”を誘導する」
 そしてモニカは草木の中に身をひそめる。そして耳でなく全身で自然を感じる。足音が伝わってきた。遠くから、三つ。
 そして声が聞こえた、割と近く、しかし気配を気取られない程度の距離はある。
「うおい、蛇がいるぞ!」
 それはモニカが事前に集めておいた蛇だった。毒をもつ種で警戒せずにはいられない。
「リンカーならともかく、俺たちは噛まれるとあぶねぇ。気をつけろよ」
 直後、モニカは飛んだ、葉が多く生い茂った樹をみつけのぼり、息をひそめる。目の前には三人の銃兵。
「来た……リンクするよ!」
 そしてモニカは弓を引き絞る『トリオ』の構えだ。素早くいられた三本の矢が空気をさいて飛んだ。
 直後男の悲鳴。それが反撃の狼煙となった。

   *   *

 密林と言えど、あたり一面に緑が広がっているわけではない、その中をぶらぶら歩いていると稀に少し開けた場所に出ることもある。
 例えば水場であったり、自然災害で木々がなぎ倒されていたり。そしてそういう場所を人は通りたがるし、監視をするにはもってこい。そう考えて『炎樹(aa0759)』はその場所にいた。
太い木の枝に陣取り。弓を構えている。そんな少女の傍らには雪のように白い少女『氷樹(aa0759hero001)』がいた、その氷樹が炎樹の袖を引き、ある方向を指さす。
「ねぇ、炎ちゃん。ほら今回はゴリラの英雄の人と一緒なんだよ」
「……よく見なさい。彼は能力者だから人間よ」
 そう頭を抱えて炎樹は答えた。
 指さされた人物は『黄泉坂クルオ(aa0834)』規格外の体格に優しい心を持った青年だった。
「にしても……ヴィラン、か。その中でも、対リンカーのスペシャリスト」
 その不安そうな声音に何かを察して隣にいた少女『天戸 みずく(aa0834hero001)』が言葉をかける。
「あら、クルオ。簡単よ。犯して、潰して、壊してしまえばいいの。それが敵で、奪う側ならなおのことじゃない?」
 その時クルオの視線が一転に集中する、目を凝らしてみると。銃を担いだガスマスクの男たちが。駆け足でこちらに向かってくるところだった。
「だめだよ、そういうことを言ったら」
 クルオ人差し指を立ててみずくに静かにするように促した。
 ちらりと炎樹へ視線を向ける。炎樹も敵には気が付いているようで頷きを返した。
 タイミングを合わせて攻撃する、そう言うアイコンタクトだった。
「怖いけど。力を貸してくれよ、みずく」
「ええ」
 そして男たちがクルオの射程圏内に入る。
 その瞬間、青炎を纏った巨体が木々の陰から躍り出た。その手から放たれた炎が、周囲一帯を焼き払う。ブルームフレアだった
「貴方と私を脅かそうとした者だもの。赦すわけがないわ」
 みずくが声高に叫んだ
「このやろう!」
 直後反撃をしようと意識を残した銃兵がクルオに銃口を向ける、しかしその銃弾が放たれることはなかった、矢が銃を構える腕を貫通していた。
「炎樹さん!」
 クルオが振り返ると、凛と立つ炎樹が髪をなびかせ微笑んでいた。
 氷樹が同じように立とうとしてふらつき、炎樹へもたれかかる。
「私はチェーンソウとぶつかってる部隊に合流しようと思います。あなたはどうするつもり?」
「僕は合流地点に戻ってみるよ、まだ敵はいると思う」
 その言葉に炎樹はうなづき。二人は森深くへと姿を消した。
   *   *
 そして中央、メイナードと真一郎のいるその場に加勢としてたどり着けた銃兵は一人だけだった。しかもモニカの放った矢が深々と突き刺さってる。
「な、なんで……」
 銃兵が驚きの声を上げる。
「奇襲だよ、そして今から自分たちが親玉を倒しに行きます」
 そうメイナードと真一郎が踵を返し、森の中へとってかえそうとする。だが当然それを許すわけはない、銃兵たちがその背に照準を合わせる。
 しかしそれすら陽動。
「やらせない」
 直後ひらめくサーベル。見れば銃兵が独り体を深々と切り裂かれている。
『雪ノ下・正太郎(aa0297)』は切り捨てた銃兵を見下ろした。
「さぁ、ここは真次さんにまかせて走って、もう戦いが始まってる」
「ああ、わかった、頼んだぜ真次」
 そうメイナードが礼を口にした直後、銃兵の肩を銃弾が射抜く。
 どこかに潜んでいるスナイパーがいるのだ。
 そしてそのスナイパーの正体は『填島 真次(aa0047)』であり、彼は狼狽する銃兵たちをスコープで見下ろし淡々と弾倉を入れ替えた。
「ライフル兵は射線の確保に左右に広がる必要があり、それ故にまとまっての行動はできない。なのでこちらもある程度の進行方向を誘導し左右に分かれて、包囲、そして確固撃破する形を狙いましたが……」
 真次はその傍らで『エコー(aa0047hero001)』が物珍しそうに、周囲の花や草、そしてキノコを眺めている。
「見事に作戦がはまったようですね」
 そう、これはリンカー側が仕掛けた罠だった、わざと弱者を気取って相手の狩猟本能を刺激し、自分たちの優位な場所に追い込む、それが見事に成功した瞬間だった。
「良くある策ですが、有用だからこその、良くある策なんですよ」
「真次、お腹がすきました」
「……わかりました、すぐに終わらせましょう」
 そう真次はスコープに再度敵を捕らえる

   *   *

 『カグヤ・アトラクア(aa0535)』は土まみれで草まみれで密林の中に潜んでいた、地面に穴を掘り草を乗せ、カモフラージュしている。
 その隣には同じく泥だらけになった『クー・ナンナ(aa0535hero001)』がいた、同じように息をひそめている
「共鳴後に……僕消えるよね。だったら泥だらけになる意味はないんじゃ……」
「いやいやいや、重要じゃよ。一心同体、一蓮托生、息を合わせるには同じように泥だらけにならなくてわの」
「そういうものかな……」
「そう言う物じゃ」
 そしてカグヤは遠くで銃声を聞いた。
 戦闘が始まったのだ。
「おお、やっとるやっとる、にしても遅いのう、チェーンソウリンカーは。どこをほっつき歩いておるのかのう」
「ん、あれ」
 そうクーが指をさした方向から、超速度で三つの巨体が駆けてきて、あっという間にカグヤの射程距離まで到達する。
「早すぎじゃ!」
 チェーンソウ兵の前に躍り出て、そしてマビノギオンの魔法攻撃で周囲一帯を攻撃する、それにひるんで足を止める三体のリンカー。
 これは攻撃ではなく煙幕、作戦は成功しリンカーは足を止めた。
「ここから先へは行かせぬぞ」
 カグヤはリンクを開始する、カグヤも強いとはいえ一人で三体の敵と相対すると冷や汗が出た。
 敵は一目で手練れとわかる戦士、何より、唸りを上げる三つのチェーンソウが恐ろしい。
「ここが蜘蛛の巣じゃ。絡め捕らわれるがよい」
 だが気丈にもカグヤは臆することなく言い放つ。
 作戦は成功している、もうすでに別働隊が銃兵を壊滅させている頃合いだろう。だからこそ応援はすぐに来る、そう信じてカグヤは敵三人と相対する。
「さぁ、行くぞ」
 片手に収まる魔導書が輝きを帯びた。その一撃が中央にいるリンカーに直撃し、上半身が焦げ付くほどのダメージを与えた。
 奇襲の成功により近接攻撃の届かない距離で戦闘を始めることができたため、完全に接近されるまでは一方的に攻撃ができるだろう。
 だが、あのチェーンソウの間合いに入ってしまえばもう。
「待たせて申し訳ありませんでした」
 その時だった。真一郎が失踪するチェーンソウリンカーの目の前に躍り出た、勢いを乗せてグリムリーパーを振るう。
「リンクコントロール、リーゼロッテ、力を貸してくれ」
 振り下ろされた刃は、途中で加速し、深々と一人のリンカーを切り裂いた。傷口から噴き出した血があたりに散らばる。
「おらっ」
 そしてもう二人疾駆する影がある、カグヤの脇を通り過ぎ、その巨大な拳でチェーンソウリンカーを殴り飛ばし、光り輝くサーベルで、切りつける。
「待たせたな」
「メイナードと正太郎か、いいタイミングじゃ」
 しかし攻撃ができる敵が現れたことによってチェーンソウリンカーたちは素早くターゲット変更、黒焦げたリンカーと切り傷を負ったリンカーが真一郎を、残るチェーンソウリンカーがメイナードを攻撃した
「直線的な攻撃など」
 しかしその攻撃は大雑把で一撃たりとも当たらなかった。見事にかわして見せたのだ。そして二人は距離をとる。
 それをみてチェーンソウリンカーたちが体制を立て直す、ゆっくりと眼前の敵を見据え、ゆったりとチェーンソウを構えなおし、エンジンをふかした。
「ここで全員倒す」
 そう叫び動いたのは真一郎、グリムリーパーを振りかざし、先ほど切りつけたチェーンソウ男に攻撃する。切り上げ攻撃でからめ捕り、がら空きになったボディに一太刀浴びせた。
 その攻撃に合わせるようにカグヤが動く、真一郎が一撃離脱を行うために、弾幕を張るように追撃をかけた。
「射線からどけて!」
 突然の声に正太郎は驚き飛びずさると一本の矢が飛来する、そして真一郎へと接近しようとする黒焦げのリンカーに突き刺さった。
 声の主は炎樹だった。クールな笑みを浮かべ。あたりを見渡す。
「けが人はいないわね」
 メイナードも先ほど自分が相手をしていたリンカーと真っ向からなぐり合っていた、チェーンソウを屈んでかわし、時にはその刃の腹に手を当ててそらし。強烈な連撃をあびせている。
 しかし、敵もバカではない、このままでは当たらないと察したのかアイコンタクトで息を合わせ。メイナードが攻撃を屈んで回避した時、別チェーンソウリンカーが攻撃を仕掛けてきた。
 メイナードはその刃をまともに受けてしまう。
「…………くっ」
 体を伝って振動が響く、今は両手で刃のない部分、チェーンソウの腹の部分を掴んで止めているので傷は深くないが。一瞬でも力を抜けば胴体が真っ二つにされるだろう。
「おじさん」
 メイナードの義手を介してイデアが声を響く、震えるような声音だった。
「く、心配するな、大丈夫だ」 
 そして残る一体のチェーンソウリンカーの攻撃。
 その刃は正太郎に向けられていた。
「くっ」
 盾を使い防ごうとするが。それでも防ぎきれず深く切り裂かれてしまう。
 それでも彼が武器を取り落すことはなかった、血と共に力が抜けてしまいそうな足で踏ん張って、そして返しの一太刀を浴びせる。
 チェーンソウリンカーは追撃を警戒して、少し距離をとった。
 その瞬間、崩れ落ちる正太郎の体。グランツサーベルを支えに立ってはいるが、傷が大きく出血量が尋常ではない。
「正太郎!」
 カグヤが回復しようと、彼の元まで走る。
 
   *   *
  
 真次は樹から降り遠くの森を見つめていた、戦闘が始まっているのか、破壊音が響いてくるのを感じていた。
 その後ろ姿にモニカが語りかけた。
「どうしたの、敵はこれで全部たおしたよ、早く行こう」
「胸騒ぎがしました」
「胸騒ぎ?」
 クルオもそれに並び立つ。 
 彼らはあの後すぐにここにいる銃兵を処理したのだが、もしかするとその数分の遅れが取り返しのつかないミスにつながったかもしれないという。不安があった。
「早く行きましょう」
 真次が先導し、森を駆け抜ける。

   *   *

 メイナードを捉えたまま離さないチェーンソウリンカーを、真一郎が切りつけた。
 しかしその巨躯はびくともしない。
 真一郎は歯噛みする。
「くっ」
「それより正太郎君は」
 その声を遮ったのは、銃声。敵の物ではない。真次の放つ弾丸がメイナードと相対するチェーンソウ男を穿つ。
 次いでモニカの矢が命中し、やっと距離をとることに成功した。
「あぶない、追撃されてたら死んでいた。ありがとう」
 そうメイナードは森の中に潜むスナイパー達に礼を言う。
 その状況に胸をなでおろしながら、カグヤは正太郎に近寄る。
「よし、まだ息はあるようじゃな」
 ケアレイによりその傷を癒す。
「ありがとう」
 一歩間違えば死んでいたような傷だったが、かろうじて出血も止まった。それを確認してからカグヤは異変を感じ敵を見据える。
 彼らはおかしな行動をとっていた。今まで振り上げたり振り下ろすだけだったチェーンソウを今度は腰のあたりで構えたのだ。
「いかん、警戒しろ」
 肩口から切り裂かれたチェーンソウリンカーが、森の中にいるモニカを視界にとらえ、そのチェーンソウの刃を射出した。
 だがその刃が届くことはなかった、間に炎樹が入り、カバーしたのだ。
「く、重たい」
 だが防いで見せた、ダメージは多少残っているがそれでも仲間を守りきったのだ。そしてそのチェーンソウの射出攻撃によって大きく隙ができたところに。
「今よ、クルオ」
「うん、行くよ、みずく! なるべく、死なせないようにね!」
「死ぬ直前まで傷めつけていいのね。そういうのは得意よ」
「ち、ちがっ!」
 密林の中に甲高い少女の声、みずくの声が響き渡る。直後木々の間から姿を現したクルオが。三人を纏てブルームフレアを放ち炎で包む。
 だがその攻撃をかろうじて受け止めた黒焦げのチェーンソウリンカーが、大きく武器を振りかぶりクルオへ攻撃、それが命中しクルオはうめき声をあげた。そしてそれに追撃しようと別のチェーンソウの刃が迫る。
「反撃と行こうか」
 だがそれをメイナードが許さなかった、必殺の構えを見せ、拳を引き絞り、放つ。
 それをチェーンソウ兵は防ぎきれず弾き飛ばされた。
 轟音と共に土煙を巻き上げながら木に叩きつけられ、そして動きを止めた。
 あたりに土煙が舞い、周囲を包んだ。一瞬前後不覚に陥る、その煙幕の向うにライブスで輝く一振りの刃が見えた。
 意識を取り戻した正太郎は瞬時に判断をつけ、黒焦げのリンカーを切りつけたのだ。
 それに続いて、真一郎が接敵、アルマスブレードで切り付けた。
 真一郎はこの短い戦いの中で気が付いていたのだ。敵が魔法攻撃に対しては著しく弱くなることに。
「タフで馬鹿力とか、敵に回すと迷惑この上ないですね」
 真次はライフルにとっておきの弾丸を装填する。ストライクがチェーンソウリンカーに突き刺さった。
「炎樹さん、大丈夫?」
 先ほどの攻撃で受けた傷を炎樹は見つめた。声の主は見当たらない。森のどこかに身を潜めているのだろう。
「これくらい大したことはないです」
「守ってくれてありがとう、これから終わらせてくるね」
 そうモニカが密林の中をかける。そして囮として何本か当たらない矢を放つ、そうやって背後にまわり、血濡れのリンカーへ矢を放つ。
「白兵戦ならともかく、狩りに適したのは」
 しかもそれはかなり遠くから、この密林では十メートル以上離れてしまえばほとんど射線は見えない。そして敵の姿も見えない。
 ただモニカに対してそれはあまり問題ではなかった、姿は見えなくても位置さえわかればいい
 生い茂った葉を貫き視界外からストライクを使用。引き絞られた鋭い一撃が。そのリンカーの命を奪った。
「弓だよね」  
 カグヤはマビノギオンをひらく、魔法攻撃を放ち、残るチェーンソウリンカーを縫いとめる。その隙を狙って炎樹が弓を射った。 
 そしてクルオが杖を構える。銀の魔弾、クルオの魔法攻撃がチェーンソウリンカーを射抜く。
 ライブスが銀色の霧となり霧散し、その霞が晴れても、そのリンカーは動くことはなかった。
「敵勢力の全滅を確認。作戦終了だ」
 そう真次がライフルの構えをとき全員に警戒態勢解除を通達した。

   *   *


 戦闘終了後、リンカーたちは泉のほとりに集まって休憩していた。
 激闘と言って過言ではない戦闘だったために、全員に肉体的にも精神的にも疲労が見られる。
 だがそんな体に鞭打って。真一郎はリンカー全員の安否確認を行っていた。
「リーゼロッテ、全員いるか?」
「確認できてる、負傷している人もいるけど、みんないきている」
「よかった、じゃあ、傷がふかい正太郎さんとメイナードさんは炎樹さんが治療をしてくれるそうなのでそちらへ行ってください」
 炎樹は二人の傷口を見て的確にケアレイをかけていく。
 その治療を受けながらも豪快にメイナードは笑った。
「酒を浴びるように飲みたいものだな、填島さんやモニカ君の相棒はなかなか行けそうな口だ、よしこれから誘って」
「おじさん、飲みすぎないでくださいね」
 イデアが心配そうに傷口を見ながら言った。
「お酒もいいですけど、傷がふさがるまでは安静にしててくださいね、そう何度もケアレイをかけられるわけではないのだから」
 炎樹が困り顔でそう言い治療を終えた。そして次に正太郎の傷にあたる。
「これはひどい」
 正太郎の傷を見た炎樹は反射的にそう言った。
「すこし無理をしすぎたかな」
 傷口を圧迫されたことで激痛が走ったのか、顔をしかめる正太郎。そんな正太郎を炎樹は労わりながらも傷にケアレイをかける。
「ありがとう」
「いいえ、少しでも痛みが和らげばいいけど」
 その炎樹の治療を見つめながら傍らの氷樹が言った。
「むぅ、後始末まで全部終わったら早く帰ってお風呂に入りたいんだよ」
「そうね、正直しばらく森の中に入るのは勘弁したいわ」
 そう炎樹はため息をついて空を見げた。
  
  *  *

 真次は密林から出ようとしないエコーを見つめながら休憩していた。まるで娘を見守る父のように。
「これ、焼いたら食べれる?」
 そうエコーが紫色のキノコを差し出す。
「確か携帯食の残りが有った筈です。なのでその良く分らないキノコは捨てなさい」
 お腹かが減ったような発言を繰り返してはいたが。まさか
「ん、了解した」
 そして戦闘終了後、数時間休憩の後後発隊が到着した。リンカーたちは皆後発隊の治療と物資の補給を受けこれから密林を抜けることになる。
 そんな後発隊の研究員に対して、カグヤは交渉を開始していた。
「ところで、依頼は成功させたのじゃから、その霊石少しでいいからくれぬか?」
 研究員が困った顔で相談を繰り返している。そんなカグヤの袖を引いてクー言った。
「困ってるよ、やめてあげようよ」
 研究員としては、この霊石が危険なものの可能性があるから渡せないという説得にしぶしぶ了承するカグヤであった。
 クルオは縛り上げたヴィラン戦闘員を護送部隊に引き渡している最中だった。
 彼らには今自殺阻止として、薬物で体の自由を奪っている。
「……これだけ強いリンカーなのに。なんでヴィランなんかに」
 クルオが暗い顔で立ち尽くす、心優しい彼には理解できないのだろう、この力を私利私欲のために使う彼らが、そしてショックだったのだろう、こういう人種がいることが。そんなクルオの手をみずくは労わるように握りしめた。

 モニカは戦闘終了後、敵の注意を引くために設置した蛇を逃がす作業をしていた。
「ごめんね、そしてありがとうね」
 そんな姿をヴィルヘルムが眺めている。どんな命でも労わることは彼女らしいと感じた。
「そう言えば、メイナードから酒盛りの誘いがあった」
「私は未成年だよ」
「モニカが誘われているわけではない」
 そう言うと、納得した表情を浮かべ、蛇の解放作業に戻る。
「何の酒だろうな」
「飲みすぎないでよ」
「まだ飲むかも決めていない」
 そんな会話をしながら、二人は仲間たちの元に戻っていった。


結果

シナリオ成功度 普通

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 魔王の救い手
    填島 真次aa0047
    人間|32才|男性|命中
  • 肉食系女子
    エコーaa0047hero001
    英雄|8才|女性|ジャ
  • 敏腕スカウトマン
    雪ノ下・正太郎aa0297
    人間|16才|男性|攻撃



  • 果てなき欲望
    カグヤ・アトラクアaa0535
    機械|24才|女性|生命
  • おうちかえる
    クー・ナンナaa0535hero001
    英雄|12才|男性|バト
  • 危険人物
    メイナードaa0655
    機械|46才|男性|防御
  • 筋肉好きだヨ!
    Alice:IDEAaa0655hero001
    英雄|9才|女性|ブレ
  • エージェント
    炎樹aa0759
    機械|16才|女性|防御
  • エージェント
    氷樹aa0759hero001
    英雄|16才|女性|バト
  • エージェント
    黄泉坂クルオaa0834
    人間|26才|男性|攻撃
  • エージェント
    天戸 みずくaa0834hero001
    英雄|6才|女性|ソフィ
  • 雪山のエキスパート
    モニカ オベールaa1020
    人間|17才|女性|生命
  • エージェント
    ヴィルヘルムaa1020hero001
    英雄|38才|男性|ジャ
  • エージェント
    駒ヶ峰 真一郎aa1389
    人間|20才|男性|回避
  • エージェント
    リーゼロッテ アルトマイヤーaa1389hero001
    英雄|15才|女性|ブレ
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