本部

お花見を邪魔する黒い奴

花梨 七菜

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/04/19 21:15

掲示板

オープニング

●春来たりなば
 春が来た。春と言えば、桜、お花見、宴会だ。
 ということで、噴水広場のあるこの公園も、連日、花見客で賑わっていた。
 噴水広場には、焼きそばやたこ焼きの屋台が並んでいて、おいしそうな匂いが漂っている。
 広場からは、東西に桜並木がのびており、家族連れ、大学生、社会人のグループがレジャーシートの上で、お花見を楽しんでいる。
 桜は満開を少し過ぎ、薄いピンク色の花びらがひらひらと風に舞っていた。

 一人の青年が、噴水広場にあるゴミ捨て場にやってきた。ゴミ箱は既に満杯で、ゴミの上にとまったカラスがゴミを突っついていた。
 青年は手に持っているゴミをゴミ箱に捨てようとしたが、途中で動きを止めた。カラスが青年をギロリと睨みつけたからである。
「……なんだよ」
 青年は思わず呟いた。
 どこかから、更にカラスが一羽、ゴミの山に飛んできた。
 飛んできたカラスが、クチバシを開き、カーと鳴いた。そのクチバシの中には、ギザギザの歯が並んでいた。
「……え」
 二羽のカラスが黒い翼を広げて、青年に飛びかかった。

●お花見を邪魔するカラスを退治せよ!
 HOPE敷地内のブリーフィングルームで、職員は説明を始めた。
「公園に、カラスの姿をした従魔が二体出現しました。見た目はカラスですが、鋭い歯を持っているということです。従魔を倒して、みんながお花見を楽しめるようにして下さい。公園には、花見客がたくさんいます。また、従魔が出現した場所の近くには、火を取り扱っている屋台が多いので火事にならないように注意して下さい。無事に任務を達成できたら、エージェントのみなさんでお花見をするのもいいんじゃないでしょうか。……私もお花見したいな。仕事が終わったら、夜桜見物に行こうかしら」

解説

●目標
 従魔の討伐

●登場
 ミーレス級従魔 × 2体。
 カラス型の従魔。体長30cm。
 クチバシによる突っつき攻撃、歯による噛みつき攻撃を行う。
 また、鉤爪による攻撃も行う。

●状況
 噴水広場の北側にゴミ捨て場があり、そのゴミ捨て場に従魔が出現した。
 従魔に襲われた青年は、軽傷を負った。
 噴水広場には、屋台(焼きそば屋、たこ焼き屋、わたあめ屋、りんご飴屋、射的屋、輪投げ屋)がある。
 噴水広場には、屋台の店員と花見客を合わせて、約60人がいる。
 噴水広場から東西にのびている道には、約200人の花見客がいる。

●補足事項
 戦闘後は、エージェントの皆様も楽しくお花見をしましょう。

リプレイ

●戦闘の前に
 依頼の説明を終えた職員に、真壁 久朗(aa0032)は、公園の地図や規模などを尋ねた。
 職員は、ホログラムに公園の地図を映し出した。
「ゴミ捨て場は、噴水広場の北側です。ここに従魔がいます」
「その部分を少し拡大してくれ」
 久朗の言葉に、職員が地図を拡大した。
「ゴミ捨て場の北東に空き地があるみたいだ。ここに道がある」
『カラスを誘い出すのに、ちょうどよさそうですね』
 久朗の英雄、セラフィナ(aa0032hero001)が、頷いた。他のエージェント達も地図を確認して、戦闘の方針が決まった。
 鴉守 暁(aa0306)が手を挙げて、言った。
「あ、HOPEにちょっとお願いがあるんだ。現地の警察と連携したいので、話を通しておいてほしい。従魔退治に武器を使うから。知らないと一般市民の混乱を招くでしょ。警察の同伴があれば、市民も安心するし、混乱した時の鎮圧を任せたいんだ」
『ユー、よく気がついたネー』
 暁の英雄、キャス・ライジングサン(aa0306hero001)がパチパチと手を叩く。
「名前は鴉守だけどね、従魔鴉は親戚じゃないからね。私の“鴉”は、叡智の象徴だから」
 暁が胸を張った。余談だが、割と胸は大きい。
「わかりました。連絡しておきます」
『あと、もう一つ』
 白瑛(aa3754)の英雄である、倭奏(aa3754hero001)が口を開いた。
『公園の管理の人達に連絡して、カラスがいたら近寄らないようにと花見客に通達するようにしてもらいたい。もしかしたら他にも同じような奴がいるかもしれないから』
「了解しました。それでは、みなさんよろしくお願いします!」

『カラス退治だなんて、あまり気がすすまないですよね、クロさん?』
 セラフィナが、久朗の顔を見上げて言った。
「まあ多少縁があるくらいだ……人に危害を及ぼすのであれば対処しないとな」
『ええ。綺麗な桜の下で悲しい事はさせません』

 白市 凍土(aa1725)の英雄、シエロ シュネー(aa1725hero001)は、ルンルン気分だった。
『お花見だねトウ君!』
「終わってからだけどな」
 凍土は、冷静に呟いた。
『じゃサーッと終わらせよう!』
「花見するかはまた別だけどな、タイムセールに遅れる」
『(主婦だなー)』
 孤児院育ちの凍土は、堅実なしっかり者であった。だが、どう足掻いてもタイムセールには間に合わない運命であることを本人はまだ知らない……。

『花見なんて久々だなー。お弁当も持っていこうか』
 倭奏もまた、お花見を楽しみにしている一人だった。
「遊びに行くんじゃないんだぞ。能天気な奴だな」
 白瑛は、眉をひそめた。白瑛はふさふさとした鼬の耳と尻尾が特徴的な獣人である。
『わかってるって。シロは気張りすぎないようにするんだよ?』
 白瑛がエージェントになったのは、愚神や従魔に復讐するためであった。そんな白瑛の姿が、昔の自分のように倭奏には感じられる。だから、倭奏は、白瑛の心を少しでもほぐしてあげたいと思っているのだ。
『俺とシロは従魔の退治に集中しようか。早く倒せばみんなでたくさんお花見できるだろ?』
「結局、お花見はするんだな」
 倭奏の気持ちを知ってか知らずか、白瑛は素っ気なく言った。

「花見等興味もないが春限定SSRを引くためだ。カラス程度あっという間に平らげてくれるぞ!」
 神鳥 紅梅(aa3146)が気炎を上げた。紅梅は猫耳の獣人である。猫は気儘とよく言われる。だが、それにしたって……というほどの自由人っぷりに、英雄の雨水 鈴(aa3146hero001)はあきれ顔。
『紅梅ちゃんは相変わらずだなぁ』

 噴水広場は、花見客で賑わっていた。唯一の異変は、ゴミ捨て場の周辺に数人の警察官がいることくらいだ。
 エージェント達に気づいた警察官は、現在の状況を説明した。
「従魔はゴミ捨て場から移動していません。他の場所でカラスが何羽か目撃されましたが、普通のカラスでした。怪我をした青年は、あそこのテントにいます」
 少し離れた場所に、テントが設置してあった。テントの下に置いてあるパイプ椅子に青年が座っている。
 久朗はセラフィナと共鳴すると、うなだれている青年に近寄った。青年の右腕には白い包帯が巻かれている。
「災難だったな」
 久朗は、青年にケアレイをかけた。青白かった青年の顔に、血の気が戻ってきた。
「ありがとう!」
 青年は元気に立ち去った。
 久朗は噴水広場にいる人達に、ゴミ捨て場に近寄らないように声をかけていった。また、屋台の店主には、HOPEであることを名乗り、火災の危険があるため、指示を出すまでガスボンベを閉めておくようにと伝えた。
 暁とキャスも、ゴミ捨て場の近くにいる花見客への声掛けを始めた。
「どもーHOPEでーす。ゴミ捨て場でちょっと従魔退治するから噴水広場から少し離れててねー」
『オネガイシマース!』
 セクシーネーチャンのお願い!
 キャスが両手を合わせてお願いすると、男性達がざわめく。頑張れよー、と声がかかったりもする。
「屋台の方は一応火を消しといてねー」
 暁は、屋台の店主に声をかけた。
 従魔は少し凶暴なカラスというところだろうから、キャスも余裕綽々である。
『チョットしたショウデスネー』
 たこ焼き屋の前で、おじさんが店主と何か言い合っていた。おじさんは酔っぱらっているのだろうか。アツアツのたこ焼きが食べたいのに、なんで焼きたてがないんだ、と文句を言っているらしい。
「ま、手早く片付けるよう努力しますので。まーかせて」
 暁は、軽口で対応した。更に文句を言おうとしたおじさんの目が、キャスに留まった。キャスのナイスバディにぽかんと口を開けたおじさんを、暁は広場の外へと誘導した。
 ゴミ捨て場の周辺から花見客がいなくなると、久朗は呟いた。
「これだけ人がいるなら見られてしまうのは仕方ないかもしれないが……なるべく迅速かつ確実にこなそう。宴の席に水を差したくないからな」
「そうだねー。広場内の秘密みたいにこそーり処理したいね」
 暁が頷いた。

『ねーねー、カラスって美味しいかな?』
 英雄の天青鉱(aa3943hero001)は、のんきに言った。
「うーん、あのカラスは美味しくないと思うからやめとこ?」
 粃 リウ(aa3943)はおっとりと言った。
『従魔だからねー』
 天青鉱は、にっこりにこにこ笑顔で、遠巻きに見ている花見客に手を振った。
『こういうのって愛想ふりまいて堂々としていればわりとなんとかなる! と思うんだ。たぶん』
「まぁ確かに勢いって大事だね」
『ちょっと戦闘場所の下見に行こうかな』
 天青鉱とリウは、ゴミ捨て場の近くの道を通って、空き地に行ってみた。
 空き地には、雑草が盛大に生い茂っているが、戦闘には支障なさそうだ。
『あ、桜の木があるよ』
 天青鉱が指さす先に、一本の桜。
 誰もいない場所でひっそりと咲く桜は、少し儚げだった。
「そろそろ戻ろう。従魔をやっつけなきゃ」
 桜に見とれている天青鉱の肩をリウは軽く叩いた。

●カラスを釣ろう
 凍土は、花見客のゴミを集めていた。少しだけ。
『何で少しなの?』
「重いの持てないから、買い物以外で体力使いたくない」
『(主婦? ダナー)』
 シエロは感心した。
「ゴミの中に食べ物があればいいんだけど。さすがに食べ物粗末にしたくないし」
『おでん勿体ないもんねー』
「うん、すごくもったいない」
 他のエージェント達から、おでんでカラスを釣ろうという提案が出ていたのだが、 “主婦”の凍土としては、それは避けたかった。だが、集めたゴミの中に残念ながら食べ物はなかった。
「……あとは、カラスが好きな“光り物”か。これで釣ってみよう」
 凍土は、懐中時計とアイアンリングを取り出した。
『カラスって釣れるんだね』
「物は試しって言うだろ」
『釣れなかったらどうするの?』
「実力行使」
『叩いた方が早いもんね!』
「害鳥駆除って事には変わらないし、従魔って単語を出さなきゃパニックにはならないんじゃないかな。本当は鷹が居れば良かったんだけどな……カラスの天敵ってこの間テレビで言ってた」
『私は魔法使いじゃないからなー、鷹は出せなかったねー』
「魔法使いじゃないんだ? 初耳だな」
『言ってなかったけ? 呪術使いだよー』
 違いが分からない。凍土は首をかしげた。
『私的にはトウ君のオネェさん見分け技術の方が分からないよ』
「勘と雰囲気の違い」
 凍土はきっぱりと言い切った。エージェントのお仕事をしているうちに、凍土はオネェさん見分け術に長けて来ているようだ。オネェさんであってオカマさんではない。その違いは彼にしか分からない。
 シエロは、そんな凍土を生温かい目で見た。

「ちくわとかまぼこは、残ったら後でおでんにしよう」
 暁は、カラスを呼び寄せるために、ゴミとちくわとかまぼこを用意した。
 リウが用意したのは、おでんと伊達眼鏡。
 各自、用意した物をゴミ捨て場から空き地へつながる道に、ある程度の間隔を開けて並べていった。
『チッチッチッチッチッ(・ε・』
 天青鉱が、カラスに呼びかけた。
「天、それは猫誘う時のやり方じゃないかな……?」
 リウが突っ込む。
「ふん、妾の実力を持ってすればこーんな鳥相手にならんが、万一ということもある。客の多い場で戦うより人の少ない方へ誘導した方がよかろうの」
 紅梅は、片手に持ったゴミをぶんぶん振りながら叫んだ。
「ふふん、餌はこっちだ駄鳥め!」
 二羽のカラスが、顔を上げた。一羽がゴミの山から飛び降りて、ちくわをついばみ始めた。そして、ちくわ、かまぼこ、おでんとついばみながら、空き地の方へぴょんぴょん跳んでいった。
 残った一羽は、動かない。
『ほら、キラキラだよ』
 シエロは懐中電灯を振って見せたが、カラスはうろうろするばかりだ。カラスの習性として光り物は気になるものの、何かの罠ではないかと疑っているのだろう。
「ええい、まどろっこしい! リン、リンクだ!」
 紅梅は鈴と共鳴すると、天雄星林冲でカラスを攻撃した。攻撃されたカラスは、従魔としての本性をむきだしにして、紅梅に襲いかかった。
 紅梅はカラスの攻撃を避けて、空き地に向かって駆け出した。カラスは紅梅の後を追う。
(紅梅ちゃんアグレッシブ~)
 鈴が紅梅を茶化す。
「リンが妾の代わりに働いても――いや寧ろ僕の貴様が率先して働くべきと思わぬか」
(私はこーめちゃんと違ってか弱いから遠慮してくねっ)
「何だと!? 貴様終わったら腹パンだからなっ!」
 紅梅は走りながら、何故こんなのが妾の英雄なのだ……うるさくないのにチェンジしたい、と強く思った。
 紅梅以外のエージェント達も、花見客を驚かさないように静かに自分の英雄と共鳴し、空き地に向かって走った。
 紅梅が空き地に駆け込むと、空き地でおでんをついばんでいたカラスが驚いて飛び上がった。
 紅梅を追いかけているカラスが、一声鋭く叫んだ。その声を聞いて、おでんをついばんでいたカラスは、我に返ったらしい。おでんよりも、おいしそうなライヴスが辺りに満ち溢れている……。
 二羽のカラスが宙を舞う。
 戦闘開始。

●カラス退治!
「さっさと片して帰るぞ! 妾の頭上を飛ぶなど無礼千万! 妾の気を害した罪で死刑だッ!」
 紅梅が叫ぶ。
(わぁい暴君女王のお通りだー)
「貴様の首も刎ねてやっていいんだからなリン!」
(きゃーこわーい☆)
 へらへらした鈴の態度に、紅梅の苛立ちは募った。
「ぐぅう……この苛々もぶつけてやる!」
 紅梅の背後を走り抜け、白瑛は空き地の奥に回り込んだ。
 久朗、暁、凍土、天青鉱も空き地に散らばり、カラスを包囲した。久朗は、仲間より前に出てカラスの攻撃を引きつける。
 暁は、射手の矜持を使用し、集中して感覚を研ぎ澄ませる。
 カラスが、久朗に飛びかかった。カラスの鋭い爪による攻撃を久朗は機械化した左腕で受けとめた。カラスが再び宙に舞い上がる。
 もう一羽のカラスが、紅梅を襲う。
 カラスは翼をばたつかせながら、クチバシで紅梅の顔を狙った。紅梅は片腕で顔を覆った。天青鉱がカラスを攻撃し、カラスを追い払った。
(大丈夫かな)
 紅梅の怪我の状態を気にするリウに、天青鉱は言った。
『あの大きいお兄さんに任せよう。そうしよう』
(適材適所ってやつだね)
 大きいお兄さん、こと、久朗が、紅梅にケアレイを放った。
 暁は誤射の危険性を考慮し、水平には撃たないように注意しながら、上空を飛ぶカラスをファストショットで攻撃した。狙うは翼。カラスは片翼を破壊されたら、もう動けない。カラスを動けなくして確実に仕留める作戦である。
 暁の発射した弾丸により、カラスの黒い羽が飛び散ったが、命中とまではいかなかった。
 紅梅もまた翼を狙う。空から下りてきたカラスの翼を一気呵成で貫こうとしたが、惜しくもはずれた。カラスは嘲笑うかのように宙に舞い上がった。
『ぐぬぬぬぬ……卑怯者めぇ!』
 天青鉱がぴょこぴょこしながらカラスが下りてくるのを待っていると、その動きに目を留めたカラスが天青鉱に向かって急降下した。
 カラスは天青鉱を爪で攻撃し、再び宙に舞い戻った。
 久朗は、天青鉱をケアレイで治療した。
 凍土は、銀の魔弾でカラスを狙った。銀の魔弾がカラスの翼に命中した。カラスは地上に落ちた。
 すかさず、白瑛が一気呵成でカラスを転がして追撃する。
 カラスは片翼を大きく広げ、カーカー鳴きながら白瑛を威嚇する。
「鳴き声がやかましいな。黙らせる」
 白瑛はカラスの翼に手を伸ばした。
(あ! シロ無茶するのはダメだからね! 相手が鳥だからって油断したら怪我するでしょ?)
「……もっとやかましいのがいたな」
 心配する倭奏に口ではそう言いながらも、白瑛は用心してカラスに近づいた。
 カラスが歯の生えたクチバシで、白瑛に噛みつこうとする。白瑛は素早くそれを避け、カラスの翼をつかんだ。
 動けなくなったカラスに、久朗がブラッドオペレート。更に、天青鉱がオーガドライブでカラスを攻撃した。
 空を飛んでいたカラスが白瑛の背中に襲いかかろうとした。それに気づいた凍土は、ゴーストウィンドを使用した。シエロが呟く。
(風が吹くよー桜吹雪にゴヨージン)
 不浄の風が、空き地に一本だけある桜の花びらを散らす。同時に白瑛を攻撃しようとしていたカラスの攻撃を止めた。
 紅梅は素早く手近の木に登った。
(引きこもりなのに木登り出来たの)
 鈴が感心して呟く。
「妾は猫だぞ? この程度造作も無い」
 紅梅は、どや顔である。
 紅梅は、空中のカラスに狙いを定めて跳び、ヘヴィアタックで攻撃した。カラスの身体を貫いた武器が、カラスをそのまま地面に縫い止める。
 二羽のカラスは、どちらも動きを封じられた。
 天青鉱は、白瑛が捕まえているカラスをヘヴィアタックで攻撃した。カラスは息絶えた。
 残るは一羽。
 白瑛は、地面に縫い止められたカラスをオーガドライブで強打した。続けて、天青鉱が一気呵成でカラスを攻撃した。カラスは息絶え、動かなくなった。
 戦闘が終わると、紅梅はすぐに共鳴を解除して、鈴に全力で腹パンをお見舞いした。
『い、いつもよりキレが……あるね……!』
「貴様は共鳴中くらい黙ってられんのか。ウザいぞ」
 二人のやりとりを見て、仲間が笑いをもらした。

●お花見~
 久朗とセラフィナは、公園内を歩いて回って、他に敵がいないか付近の安全を確認した。
 一方、リウと天青鉱は、カラスをおびき寄せるために使用したゴミやおでんなどの片付けをした。
『終ワッタヨーこれで安心ネー』
 キャスがにっこり笑いながら、警察官に伝えた。HOPEと公園の管理者にも従魔の討伐が終わったことを連絡し、屋台の営業も通常通り再開された。
『良かったら、依頼のお疲れ会もかねて、みんなでお花見しませんか……?』
 セラフィナが、仲間達に呼びかけた。
「いいねー」
 暁がそう賛成した。
 にこりと微笑みを浮かべたセラフィナの横顔を見ながら、久朗は思う。
(ここ最近は香港やら小笠原やら色んなところにセラフィナを連れ回していたからな。たまにはゆっくりさせてやろう)

「タイムセール」
 凍土はぼそりと呟いた。
『今からじゃ間に合わないよトウ君』
「もしかしたらってのが」
『ナイネー』
「花見しよう、満喫しよう」
『自棄にならなくても良いんだよ』
 シエロは、凍土の肩をぽむと叩いた。
「なってない」
 凍土の目は、少し涙目だった……。

 皆で桜の並木道を歩いていると、おじさんが声をかけてきた。
「おい、ネーチャン! ここ空いているから、ここに座れよ」
 たこ焼き屋の店主に文句をつけていたおじさんであった。おじさんとその周囲の人達が席を詰めてくれた。
『アリガトウゴザイマース』
 キャスは愛想良くお礼を言って、おじさんの隣に座った。
 倭奏は、帰りたそうにしている白瑛の手を引っ張った。
『ほらほら。桜は今しか見れないんだから、大人しく座ってジュース飲もーよ』
 たまには白瑛にリラックスしてほしい。倭奏はそう思っていた。
「……子供扱いするな」
『あはは、気にすんなって』
 白瑛はしぶしぶレジャーシートの上に座った。
 倭奏は、高級お弁当、フルーツ盛り合わせ、あつあつおでんをじゃーんとレジャーシートの上に広げた。
 天青鉱とリウも、高級お弁当とおでんを出した。
 4月はまだ冷えるので、おでんで暖まれるというのは嬉しい。
「ちくわとかまぼこはおでん鍋にぶちこんどくよー」
 暁が、残っていたちくわとかまぼこをおでん鍋に投入。
 和気藹々とお花見が始まった。

 紅梅はスマホを弄りながら呟いた。
「帰ってイベント走りたい」
『えー? 桜綺麗だよ? お花見しよ!』
「花見イベントは今やって――おいリン! 引っ張るな無礼者!」
 鈴は紅梅の腕を引っ張って、仲間達のところに連れて行った。
『はーい私達もお花見するよ! 混ぜて混ぜてー』
「ぬぅ……仕方無い。妾も付き合ってやるか。おいそこの! その弁当妾が味見してやるぞっ」

「再開した屋台からテキトーに買ってくるよー」
 暁は、屋台で焼きそばとたこ焼きを購入した。戦闘時に火の使用を止めてもらったので、その間の損害についてのお詫びも兼ねて、といったところである。
 屋台の店主は暁の顔を覚えていてくれて、焼きそばもたこ焼きも大盛りにしてくれた。
「買ってきたよー」
 暁は、焼きそばとたこ焼きをドーンと並べた。
『お酒アル?』
 酒豪のキャスが暁に尋ねる。
「あるよー飲めージュースもあるよー」
 お酒とジュースもドーン。

「ゆっくり花見するの初めてだな」
 凍土はおでんを食べながら、のんびり桜を眺めた。凍土は屋台には近づかないと決めている。なぜなら、お金を使ってしまうから。
『サクラってキレイだね』
 シエロもおでんを食べながら、お花見を楽しんでいた。
「キレーだな」

 久朗は、焼きそばとたこ焼きを食べながら、ちょっとした祭気分を楽しんでいた。
「そういえば桜なんてじっくり見た事ほとんどないな……」
『じゃあ今のうちにたくさん目に焼き付けておかないとですね!』
 セラフィナが桜を見上げる。つられて久朗も桜を見上げた。
 青い空とそこに浮かぶ薄いピンクの桜が、とてもきれいだ。

『俺は元いた世界では戦ってばっかだったけど……でもこういう穏やかな時間も無くは無かったかな』
 倭奏はちょっとしんみりしつつ、お花見を楽しむ人々を眺めていたが、ふとおでんをたべている白瑛に目が留まった。
 友達のいないシロに友達が出来るように他の人の所に突き出してこないと、と倭奏は思った。
『ほら、シロ。ワイルドブラッドの女の子いるぞ! 行ってこいよ!』
「ば………初対面なのに失礼だろ」
『こういうのは思い切りが大事なんだよ。ほらほらほら』
 倭奏は白瑛の背中を押して、紅梅の前に突き出した。
「何用じゃ。貴様も高級お弁当を食したいのか?」
 どうにか白瑛と紅梅の会話が始まりそうなのを見て、倭奏はほっと一安心。

「……ここの桜も綺麗だね」
 リウは桜を見上げて、目を細めた。
『きれいだね。一本だけの桜もいいけど、たくさんあるほうが賑やかでいいね』
 天青鉱は、笑顔で言った。
 周りの花見客に一芸を求められた天青鉱は、舞闘を披露した。キレのある動きに、皆は拍手喝采した。
 舞闘を終えた天青鉱は、倭奏に話しかけた。
『やぁ、おつかれさま。私、君にとてもよく似た人を知っているんだ。君は私によく似た人を知っている?』
 倭奏は、天青鉱の顔をしげしげと見つめながら答えた。
『知っている、ような気がする。誰だろう?』
 二人の話は長くなりそうだ。

「田舎から出てきたばかりでして……街での暮らしももちろん、エージェントについても色々おききしてよろしいですか?」
 リウは、他の仲間に話しかけた。
「あぁ、いいぜ」
 凍土が答えた。
「何でも聞いてー」
 暁は胸を叩いた。余談だが、割と胸は大きい(本日2回目)。
 こちらの話も長くなりそうだ。

『僕最近、すまーとふぉんが使えるようになったんですよ!』
 セラフィナは覚えたてのスマホを手に、みんなの花見の様子を写真でパシャり。
『キレイに撮レタ? あとでメールで送っテネ』
 キャスの言葉に、セラフィナは『はい!』と元気に返事をした。

 お腹がいっぱいになった久朗とセラフィナは、ぶらぶらと屋台を見て回った。
「射的か……いつぞやの秋祭り以来だな」
『やりますか? 僕もやってみたいです!』
「レバーに指をぶつけないようにするんだぞ」
 久朗とセラフィナはお金を払って、射的の銃を構えた。
『僕はあのカエルを狙います!』
 セラフィナはカエルの置物に狙いを定め、引き金を引いた。コルク玉はうまくカエルに命中したが、カエルは少し動いただけで台から落ちなかった。
「カエルが重すぎるんじゃないか。1、2の、3で一緒に撃ってみよう」
『いち、にの、さん』
 セラフィナと久朗の撃ったコルク玉が同時にカエルに命中し、カエルが台から落ちた。
『やりましたね! クロさん!』
 セラフィナはジャンプして大喜び。

 久朗は、友人達の土産を屋台で購入した。振り返ると、セラフィナが宙を舞う桜の花びらを追いかけてキャッチしていた。
『この本を開けばいつでも今日の事が思い出せますよね?』
 セラフィナは桜の花びらを何枚か本に挟んだ。

 風が吹いた。桜吹雪が舞う。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 此処から"物語"を紡ぐ
    真壁 久朗aa0032
  • ようへいだもの
    鴉守 暁aa0306

重体一覧

参加者

  • 此処から"物語"を紡ぐ
    真壁 久朗aa0032
    機械|24才|男性|防御
  • 告解の聴罪者
    セラフィナaa0032hero001
    英雄|14才|?|バト
  • ようへいだもの
    鴉守 暁aa0306
    人間|14才|女性|命中
  • 無音の撹乱者
    キャス・ライジングサンaa0306hero001
    英雄|20才|女性|ジャ
  • エージェント
    白市 凍土aa1725
    人間|14才|男性|生命
  • エージェント
    シエロ シュネーaa1725hero001
    英雄|12才|?|ソフィ
  • 筋金入りの引き籠り
    神鳥 紅梅aa3146
    獣人|20才|女性|攻撃
  • エージェント
    雨水 鈴aa3146hero001
    英雄|24才|男性|ドレ
  • 清廉先生
    白瑛aa3754
    獣人|15才|男性|回避
  • 裏技★同時押し
    倭奏aa3754hero001
    英雄|20才|男性|ドレ
  • エージェント
    粃 リウaa3943
    人間|20才|?|生命
  • エージェント
    天青鉱aa3943hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
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