本部

海岸戦線

saki

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 5~10人
英雄
8人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/04/08 19:38

掲示板

オープニング

●とある海にて
 まだまだ海開きには遠いが、それでも魚はいる。その時期にしか捕ることのできない旬の魚がいる。
 釣り人にとってはその季節が春であろうと夏であろうと、末には真冬であろうとも関係がない。釣竿片手に、ライフジャケットを着て魚に挑むものである。
 そんなある日のこと、釣り糸を垂らしていると、竿がヒットした。凄い勢いである。それこそ、もっていかれそうなくらいの当たりだ。
 当然、これを逃がすなんて釣り人の名折れだ。
 必死に戦っているのも虚しく海に引きずり込まれそうになるが、先に糸が音を上げた。十分な耐久性があるそれが切れたのである。
 そして大きな波と共にサメの姿が見えた。
 ジョーンズばりの大きさの、通常では到底考えられないサイズのサメである。口元からはナイフのような牙が覗き、背びれなど鋭利な刃物であった。
 そんな大きなサメであるが、海の一部が黒くなっている様から一匹ではない。複数の個体が確認された。
 釣り人は腰を抜かして岩盤に尻もちをついた。

 そしてそれから数時間後、漁に出た船から巨大なサメが複数船底を擦るように泳いでいるという報告を受けた。
 船は海の上である。その下を凶暴なサメの従魔が泳いでいるのだ。今はまだサメからの攻撃はない。だが、今か今かとその凶暴な口を開けて待っているのである。
 双眼鏡にてその様を確認した漁業組合の職員は、すぐさま能力者の派遣を依頼しようと連絡を入れた。

解説

●目的
→サメの従魔の撃破並びに、漁船の安全確保

●補足
→ミーレス級のサメの従魔との戦闘になります。漁師にとっては死活問題なので、全部倒しましょう。
 イメージとしてはジョーンズ。但し、従魔なのでもっと凶暴です。
 歯はナイフのように鋭く、背びれも刃物のようによく切れます。尾も本気を出せば岩を砕く威力。
 それに何より、海は彼らのテリトリー。水中での戦闘はかなり危険です。
 しっかりと対策を立てて臨みましょう。
→船は貸し出ししてもらえますが、彼らにとっては大事な商売道具。壊さないようにしましょう。
 また、運転はお願いしたら職員の方にしてもらうことも可能ですが、あくまでも一般人が運転しているので、安全の確保は必須です。
 海に出ている船の人たちも危険に晒さないようにしましょう。

リプレイ

●現場へ急行
 本部にて話を聞いた後、一同は現場へと急いだ。時は一刻を争うからである。外傷がなかったとしても、逃げ場のない海上で周囲をサメに包囲された状況など多大なストレスだからだ。


「セイレーンを使う機会がとうとう来たか」と赤城 龍哉(aa0090)は漸く出番の回ってきた自身の装備を満足気に確認する。その横でヴァルトラウテ(aa0090hero001)が『人が海上を駆け巡る。正に艦こ』とある意味NGワードを口にしそうになり、「おっと、そこまでだ」と龍哉が止めた。
 そんな二人に、ガラナ=スネイク(aa3292)は「よく会うな、今回もよろしく頼むぜ、龍哉」と声をかけた。それに龍哉も「おう」と応じる。
「さて、今回は鮫退治か。メンドクセェが、気合入れてくとするか」と、普段よりも十分にやる気がある姿に、リヴァイアサン(aa3292hero001)は『珍しくやる気ね。元漁師的に許せないとか?』と尋ねるが、「否定はしねぇよ、ある程度はやりようも知ってるしな」と頷く。
 元漁師ということもあり、海はガラナの庭である。船の運転もお茶の子さいさいであり、地元の漁師に船を借りに交渉へと向かった。


 海を眺めながら「しかし、春先とはいえまだまだ水温も風も冷たい中で海上戦とは」とリィェン・ユー(aa0208)は呟いた。まだまだ海開きには遠いのだ。冷たさは推して図れるところだろう。
 それに同意するようにイン・シェン(aa0208hero001)は頷き、『確かにそうじゃな。だからといって困っている漁師のためにもここは一肌脱いでやるのじゃ』と言った。


 狩りには随分と慣れていることもあり、「急げば被害を出さずに済むか、楽しい狩りになりそうだな」と麻生 遊夜(aa0452)は口角を上げた。それに『…ん、後手に回らずに、済む…サメ、おにく?』とユフォアリーヤ(aa0452hero001)は首を傾げるが、「ん? …そういや食ったことなかったっけか、楽しみにしとけー」という言葉に、しっぽを振りながら『…ん!』と目を輝かせた。


 北条 ゆら(aa0651)は「サメ全部やっつけて、困ってる漁師さんを助けてあげたいねー」とやる気満々だ。その傍でシド (aa0651hero001)は同意しつつも『一筋縄ではいかんだろうがな……』と口にするが、気にせず「戦闘後はサメ料理……」とゆらが呟く様に、『まずはお前の意識改革からだ』と溜め息を吐くが、「あら、全部美味しくいただいてあげるのが食物連鎖ってものですよ」と返され、『……従魔だが……?』とシドは眉目を寄せた。


 地元の人間以外全く人がいない海辺を見渡し、『海でのバカンスにはまだ早過ぎる時期よね…』と小鳥遊・沙羅(aa1188hero001)はぼやいた。これが真夏であったら他に楽しみも見いだせるが、この海水の温度で遊ぶのは逆に苦行である。
 そんな沙羅のことをあらあらと眺めながら榊原・沙耶(aa1188)は「漁場を守る為に、頑張らないとねぇ」と、おっとりと言った。


 抱きしめたぬいぐるみが潮風を受けてべたつくのを感じながら、獅子ヶ谷 七海(aa1568)は「……自分たちは、いっぱい魚をころしてるんだから。魚にころされることくらいあるよね、トラ」と言いながらも早く帰りたくて仕方がない様子である。それを五々六(aa1568hero001)は「そういう偉そうな台詞は、一人で生きられるようになってから言え」と窘めながらも、本日の戦場を前に鋭く目を光らせた。


 移動中に図鑑でサメのことは予習済みである。コサージュのついた麦わら帽子に白のマキシワンピ、パステルのカーディガン姿のセレティア(aa1695)は、「水中戦闘! 水着回ですか? わたし、フリルの付いてるパレオがいいなぁ」と楽しそうに言った。だが、すぐさま『ゆるさん。アレだ』とバルトロメイ(aa1695hero001)が長袖&足首丈のスイムスーツを指し、更に『着替えは共鳴してからだぞ』と過保護なまでにガードを固く付け加えた。

●いざ、海原へ
 ガラナの操縦にて、借りてきた船に乗り込んだ一同はそれぞれ戦闘へ備えての準備を終えた。救助要請が出ている船からの信号を受け取り、レーダーにて確認している為に場所に関しては難なく進める筈だ。
 沙耶は敵の取りこぼしが無いように探照灯を借り受け、セレティアは他に被害がいかないように船をドックに容れることを提案した。更に、ガラナは撒き餌用のマグロを、遊夜とゆらも其々で特製の撒き餌を用意して従魔の気を引き付ける備えもして準備は万端である。


 暫く船で進むと、目的地付近へと辿り着いた。
 そして、救助要請の出ている船を発見した。

●海上での戦い
 真っ先に海に飛び込んだのは七海であった。そう、文字通り海の中に飛び込んだのだ。
 他の面々は其々が海に浮かぶ道具を装備しているものである。しかし、「海ん中が奴らのテリトリーだってんなら……戦場は、俺たちのテリトリーだ」と言いながら先陣切って敵の舞台に踏み入れるのだからその度胸は大したものである。
 そこには、ALブーツに対する疑念があり、軽々しく命を預けられないという五々六の持論が背景にあり、生身の体と使い慣れた武具を武器に何処までやれるのか試したいというのだから生粋の戦人なのだろう。
 サメの従魔が集まっている地帯まで行くと、七海は大剣にて自らの腕を裂いた。
 海に赤が混じる。
 内心で七海は「……私の体なのに」と非難し、それを五々六は『必要経費って奴だよ。気が散るから黙ってろ』と制した。
 敏感に血の臭いを感じ取った従魔は七海のことを獲物だと認識したのか、我先にとその大きな咢を開けて襲いかかってくる。
 共鳴している為呼吸こそ問題はないが、水中では動きが鈍る。襲いかかってきた牙が七海の皮膚を引き裂いた。しかし、それに構わず大剣を振り抜き疾風怒濤が炸裂する。
 だが従魔はそんなことで怯みはしない。近寄ってきた従魔達に向かって怒涛乱舞を放ち、その強烈な攻撃により敵はノックアウトするが、それを掻い潜って一撃を入れてきた従魔の攻撃を受けながらも下に潜り込み、海上にセレティアの姿を認めてストレートブロウを放ち、海上へと従魔を数体押し上げた。


 通常の人間であったら到底扱うことの出来ないような銃口から、強烈な弾丸を発射させた。
 龍哉は船の上で「船底に穴を開けようと思えば、とりあえずぶつかりに水面近くまで上がって来る訳か」『何匹いるか判明していない点は要注意ですわ』「……油断して最後にパクリといかれるなんて、サメ映画なオチは勘弁だぜ」というようなやり取りをヴァルトラウテと交わしながら、用意を済ませていたのである。
 的確に背びれが起こす、水の流れを読んで着弾させる。
 それによって注意が惹きつけられ、近づいてきた従魔にはヴァリアブルブーメランを放つ。あまりにも接近してきた場合、銃は威力があるが距離がネックになるのである。
 そのブーメランが敵にヒットしている間に他の従魔が近づいてくるが、シャープエッジを投擲することで上手いこと敵を翻弄する。
「当たっても手元に戻って来るってのは、こういう時便利だな」『油断禁物ですわ。直下から来ますわよ』「それじゃ、こういうのはどうだ」


 リィェンは海中に引きずり込まれないように注意しながら、無理のない攻撃を仕掛ける。状況を判断し、仲間の援護になるようにタイミング良く、器用なまでに巧みなコントロールの烈風派によって隙間を縫うようなフォローの一撃を入れる。
 初めこそ慣れない海上戦に、頭を出した従魔を狙うような攻撃をしていたが、次第にセイレーンに慣れたリィェンは縦横無尽に海面を駆け回る。
 従魔と従魔の間を通り抜けてわざと挑発する。そしてそれに引っ掛かり、従魔を引き連れては他の仲間がその隙に攻撃を仕掛けるなど、誘導役としてもバックアップ等のフォロー役としても非常に優秀であった。
 時に多量の従魔が襲いかかってくれば、怒涛乱舞にて難なく対応する。
「団体さんいらっしゃーい、っと。……手間が省けって助かるぜ」
 その言葉の通り、襲いかかってきた複数の従魔を一掃した。


 ALブーツを履き、遊夜は水面を移動しながら狙撃を行う。
 的確な狙撃技術により、敵を翻弄するのはその熟練の技があるからだ。これまで数々の従魔をハントしてきた技は伊達ではないのである。
 確実に被弾させることで敵を惹き、長距離からのショットで間合いを取り続ける。
「まずは引き離す所からかね」『…ん、さぁ、こっちおいで?』
 その様はまるで鬼ごっこである。
 船から離れた位置まで来ると、ガラナ考案撒き餌作戦に乗っかり、自身で用意してきた睡眠薬入りのマグロをぶちまける。
「さぁ、極上の獲物はこっちだぜー?」『…ん、いっぱい食べて、眠ると良いよ』
 鬼ごっこの宣言に引き続き、楽しそうな言葉をかけて離れると、サメの従魔はあっという間に撒き餌に引っ掛かった。
 肉食であるサメにとっては強烈なまでの匂いであり、遊夜のことなど疾うに忘れて目の前の餌に群がったのだ。それを遠目に眺めながら、遊夜は口角を上げてほくそ笑んだ。


 救援予定の船と自身が乗ってきた船から適度に距離を取り、戦闘に巻き込まないように注意しながらセレティアは冷静にサメの従魔と対峙する。勿論味方の銃の射程圏内の距離であり、その銃弾を阻害しないように注意も怠らない。
 セレティアの今の姿は、バルトロメイが用意していたスイムスーツである。しかし、共鳴した現在では非常に肉枠的で、身体に密着しているだけあって目のやり場に困る扇情的な姿であった。
 予習してきたサメの特性を利用し、威嚇をしてきた従魔に向かって先手必勝とばかりにグレートボウを撃ち込む。すると、怒りに身を任せ、寄ってきた従魔に怒涛乱舞を撃ち込んだ。
 的確に打ち込んだ攻撃によって従魔がその巨体が吹き飛ぶが、不意に海面から押し上げるようにして従魔が上がってきた。明らかに今攻撃したものではない従魔にセレティアは驚きつつも一瞬下方に視線を滑らせ、何が起こったのか理解すると冷静にドラゴンスレイヤーにて尾と胸ビレを攻撃し、動けないように体勢を崩させる。そして、剣を振るって派手に水を撒き散らすことで下に居る戦友に了解の旨を伝えた。


「どういう反応するしろ。隙出来んのは確かだろう…ぜ!」
 そう言いながら、捌いたマグロを撒き餌にすべくガラナは水面へと投げ込んだ。勿論、船が巻き込まれないように離れた位置に向かって投げ、配慮は怠らない。
 撒き餌に釣られて従魔が寄ってきた所で、ALブーツで海面を蹴って接近する。
「オラぁ!」
 そんな荒々しい口調とともに、重い一撃を鼻っ柱に打ち込む。
 ヘヴィアタックである。
 サメの弱点を突いた攻撃に、堪らず従魔はよろめいた。そこに止めを刺し、確実に敵の数を減らしていく。
「お呼びじゃねぇんだよ、鮫擬き共。とっととくたばれぇ!」
 派手に血を撒き散らしたことによって狂乱索餌状態になった従魔に追撃とばかりに、怒涛乱舞を炸裂させて一掃する。
「テメェ等のテリトリーでやられる気分はどうなんだ? ま、理解できる頭もねぇだろうがよ」


 ALブーツに履き替えたゆかと沙耶は、撒き餌を上手く使って従魔の気を逸らし、分散すると救助要請が出ていた船に声を掛けた。
「もう大丈夫ですよ。怪我人などはいませんか?」
 その言葉に、「助かった」と口々に船員は言う。
 そこに、遊夜も「よし、こっちは問題ない。あとは任せろ!」『…ん、狩り尽くすだけ』と合流する。
 船から大丈夫という応えを受けると、「援護しますので、港まで船を出してください」と船を安全な海域まで援護する。
 避難勧告は出したものの、連絡を受けていない船がいないとも限らない。
 沙耶は船上にて探照灯を点滅させ、危険であることを知らせていた。
 船が動き出すとそれまで撒き餌に夢中になっていた従魔がこちらに気が付き、再び集まろうとする。しかし、ゆかは「大丈夫ですから行ってください」と船を促した。
 遊夜も「ハッ、俺達の目から逃れられると思うなよー?」『…ん、外さない、例え海中でも』と威嚇射撃をする。
 ゆかはここから先へは行かせないとばかりに、グラーシーザを振るう。そして従魔にではなく、海面に向かってゴーストウィンドを放つ。すると、風によって海面が巻き上げられ、吸い込まれるようにして従魔が巻き込まれた。
 為す術もなく従魔は流れに取り込まれ、そのまま中へと放出された。
 どんな従魔であろうとも、それは自身のテリトリーに居るからこそその真価を発揮できるものだ。そうでなければ、その強さも如何なく発揮することなどできないのである。
 宙に浮いた巨体に向かい、ゆかの雷神の書により、容赦のない電撃が従魔を襲った。
 身体が濡れている分、電撃の威力は計り知れないものである。通常よりも高められた攻撃により、従魔が襲う。
 そして、上手く攻撃を逃れてゆかを襲おうとする従魔には遊夜が絶妙のタイミングでイグニスをぶっ放して注意を引く。
「海のど真ん中で火傷は貴重な体験だろう?」『…ん、良い匂い?』


 少し進んだ所で俄かに騒がしくなる船上に、見ると、少し離れた所ではあるが、従魔の姿が見える。
 船足よりも従魔の方が小回りは利くし、泳ぐ速度も速い。幸いなことに、従魔は一体だけのようだ。
 沙耶は確実に船が港に戻れるように、海面へと降り立った。
 女性一人を敵地の中に残して行くことに船員たちは後ろ髪を引かれる思いになるが、船を進め、ゆかは従魔と対峙する。
 医者であり、回復に特化した沙耶からは想像もできないような凶悪な武器を握る。
 大鎌だ。
 癒しとは正反対の死神の名を持つグリムリーパーを握り、その名の通り命を狩る為に従魔と対峙する。
 しかし、回復系統のスキルに特化した沙耶は少しばかり苦戦を強いることとなった。
 そこに戦闘がひと段落したガラナが戻って来て、オートマチックによる援護が入る。
「鬱陶しいんだよ、ブッ飛べオラぁ!」
 その言葉と共に放たれたストレートブロウによって従魔は吹き飛び、沙耶が大鎌を振るって止めを刺した。


 撒き餌効果によって半狂乱になったサメの従魔を前に、龍哉はその渦中に飛び込んで怒涛乱舞を放つ。
 しかし、全ての個体に対してその特性が適用されている訳ではないようで、戦闘の隙をついてこの場を離脱しようとしている従魔もいる。
「なるほど、悪知恵の働く奴もいるか。だが、そうそう好きにはさせねぇってな!」

 高くジャンプしたリィェンが「んじゃ、いっちょこいつのテストといきますか」とグラビティゼロに武器を持ち替えた。
 上からの攻撃に従魔はその強大な口と牙で対応しようとするが、逆にカウンターのように連続で杭を打ち込んだ。
 重力と相まってその威力は計り知れない。

 そこから少し離れた所でも、この混乱に乗じてセレティアも怒涛乱舞を放つ。
 一撃で敵を屠るのではなく、相手の動きを封じるのが目的な為に戦法は一貫し、尾と胸ビレに撃ち込み、動けなくなった所で止めを刺す。敵の急所を突くだけあり、実に効果的な攻撃であった。


 各々の奮闘があり、見渡す限り従魔の姿は見当たらない。しかし、セレティアの提案により、念には念を入れて最終チェックを行う。
 来た時の船に戻ってきた面々に向かい、沙耶はケアレイにて治療を行う。
 特に大立ち回りをし、自分の身を顧みずに戦っていた七海の怪我が酷い。だが、それも沙耶にかかれば問題はない。
 医者様様である。こういう局面で回復に特化した能力者がいるのは非常に有り難い。
 正に白衣の天使ならぬ、白衣の女神といった感じだ。
 沙耶により、他の負傷者も無事に治癒された。すると、今度は今度でまた別の問題が浮上する。
 海を眺めながら「一応一段落ってとこか?」『気配は無くなったようですわ』とやり取りを交わしていた龍哉とヴァルトラウテであるが、そこに浮かぶ従魔に「にしても、憑いてる従魔を倒せば一応元が残るってのは判るが、さすがに喰う気にはならねぇなぁ」と苦笑してコメントをする。
 はたまた『しかし…これだけ倒してしまうと海が汚れてしまわないかのぅ』「少しは俺らが食っちまうにしても……流石にこの量じゃな」と会話していたリィェンとインであるが、リンは徐に着替えだし、「ところでなんで着替えてるんだ?」『せっかくの海じゃぞ。泳がずしてどうする』「……まさか岸までとか言わないよな」『何を当たり前なこといってるのじゃ?』という結論に達する。
 通常運転のユフォアリーヤは『……お肉、お肉』とサメを船に乗せ、遊夜は遊夜でサメ肉パーティをする気満々である。
 ゆらは「お弁当がありますよ。食べませんか?」と持参した弁当をメンバーに振る舞い、その間にシドはサメを船に載せる手伝いをする。
 沙耶はにこにことその姿を眺めていて、沙羅は何この状況とばかりに肩を竦めた。
 七海はやっと終わったとばかりに疲れてうとうととする横で、五々六は今日の戦闘を満足そうに振り返る。
 重量オーバーにならない程度に積まれたサメを見ながら、バルトロメイは『新鮮な鮫はアンモニア臭も少なくて食いやすいんだぞ。わに料理って言ってな。広島では一般的なんだ』と知識を披露し、セレティアは「えー…また、従魔を食べるんですか?」と肩を落とした。
 来たとき同様に船を運転するガラナはサメが積まれたのを横目で見て、「ま、種類はどうあれ、魚だろ? 捌くのは十八番だぜ」と言うと『鮫って美味しいの?』とリヴァイアサンが首を傾げるが「食えばわかんだろ」というコメントに落ち着いた。

●港にて
 船が港に戻ると、先に港についていた漁師たちからは口々に礼を言われた。従魔を殲滅したことも伝え、ゆらが「もうサメいなくなりましたよー。安心して漁に出てくださいね」と言えば深々と頭を下げられた。
 これにて任務は完了である。互いに労い合い、解散した。
 しかし、従魔の肉を食べるべく船に積んでいた面々も居るのだ。従魔の肉を食べる者は残り、これから調理である。
 勿論ここに残っているのは最初から食べる気満々の遊夜とユフォアリーヤ、ゆらとシド、セレティアとバルトロメイ、ガラナとリヴァイアサンである。余談であるが、リィェンとリンはまだ遠泳をしているようである。海を泳ぐのはプールとは違って波があるから時間も体力も使うのだ。


「解体なら任せろー!」『…ん、得意』と自前の包丁を煌めかせる遊夜とユフォアリーヤ、そして元漁師のガラナがサメの解体をする。
 出刃・柳葉包丁も使いヒレは乾燥させ、内臓を取り出し部位ごとに捌く姿は堂に入っており、遊夜の本職は一体何なのか疑問を抱くレベルでの包丁捌きである。そして、ガラナも十八番と言うだけあって流石に手慣れた動きであった。
 そして解体されたサメを其々が調理していく。

 遊夜は「竜田揚げやムニエル、香草焼きに照り焼きと色々あるが…新鮮ならやはり刺身だな」と丁寧に身を捌き、慣れているのか『…ん、お醤油持ってきた』とユフォアリーヤが醤油と山椒を持ってくる。
 柑橘類と一緒の水に付け込みアンモニアの中和もし、癖の無いものへと姿を変えていく。
「うむ、ガキ共への良い土産になりそうだな」『…ん、大漁』

 ゆらはサメを刺身にしたが、その刺身をまず「サメ、食べてもだいじょぶかな? まずはシドで確認」と差し出した。
『おい……いつも俺が毒見か』とは言いつつも、慣れたものでシドは何の躊躇いもなくそれを口に運ぶ。「いや、まあ、普通にうまいがな』という感想を言うと、一体何処に隠していたのか一升瓶を取り出した。そして早々に手酌で飲み始めた。
 その姿を見て、ゆらは「どの口が意識改革とか言ってた!?」と突っ込んだ。

 セレティアとバルトロメイは安定して料理上手な二人組である。刺し身にして生姜と刻みネギといった、王道の食べ方で口にする。
 そして「サッパリして美味しいですね。従魔グルメって言ったら猪ばかりでしたからね。お魚美味しいです。悔しいけど」というセレティアに『白いご飯が欲しい。あと酒も。ハツが美味い』とバルトロメイも頷く。その言葉が聞こえたのか、シドから酒を差し出され、バルトロメイは『すまん』と言いながらも遠慮なく受け取る。その横で、セレティアは「幻想蝶に入れてお土産にしよー」と余った刺身を仕舞った。

 他の面々と同じようにサメを刺身にしたガラナは、それを口に運びながら「これでちっとは海の平和も守られんだろ」と黄昏たように呟いた。しかし、リヴァイアサンが『…すっごい今似合わないこと言ってる自覚ある?』と茶々を入れる。
 それを聞き、「よし、その喧嘩買った。プロレスで決着着けてやるからかかってこいや」と喧嘩腰になるが、『キレながら器用にセクハラしようとしてくるんじゃないわよ!』とリヴァイアサンから強烈な怒りを買った。


 一部、妙に締まらない幕引きをしている所もあるが、海の平和と漁師達の平穏、そして自分たちのお腹が満たされて今回の任務はこれにて終了である。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • エージェント
    獅子ヶ谷 七海aa1568
  • 黒の歴史を紡ぐ者
    セレティアaa1695
  • 海上戦士
    ガラナ=スネイクaa3292

重体一覧

参加者

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 義の拳客
    リィェン・ユーaa0208
    人間|22才|男性|攻撃
  • 義の拳姫
    イン・シェンaa0208hero001
    英雄|26才|女性|ドレ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 乱狼
    加賀谷 ゆらaa0651
    人間|24才|女性|命中
  • 切れ者
    シド aa0651hero001
    英雄|25才|男性|ソフィ
  • 未来へ手向ける守護の意志
    榊原・沙耶aa1188
    機械|27才|?|生命
  • 今、流行のアイドル
    小鳥遊・沙羅aa1188hero001
    英雄|15才|女性|バト
  • エージェント
    獅子ヶ谷 七海aa1568
    人間|9才|女性|防御
  • エージェント
    五々六aa1568hero001
    英雄|42才|男性|ドレ
  • 黒の歴史を紡ぐ者
    セレティアaa1695
    人間|11才|女性|攻撃
  • 過保護な英雄
    バルトロメイaa1695hero001
    英雄|32才|男性|ドレ
  • 海上戦士
    ガラナ=スネイクaa3292
    機械|25才|男性|攻撃
  • 荒波少女
    リヴァイアサンaa3292hero001
    英雄|17才|女性|ドレ
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