本部
自分崩壊危機
みんなの思い出もっと見る
掲示板
-
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/03/28 22:40:54
オープニング
『あなた』達は、物陰に飛び込んだ。
いつ場所が知られるかは判らないが、ひとまず息を吐く。
「くそ、こんなことになるなんてな……」
蒼 星狼(az0052)が忌々しげに呟く。
彼も、英雄デイ・ブレイク(az0052hero001)からどうにか逃げた口だ。
『あなた』達は、今まで起きたことを思い浮かべる。
朝、その瞬間まではいつも通りだった。
けれど、ああ、けれど───英雄は、あの『レンジ』を手にしてしまった……。
あの動力源不明の『レンジ』は、能力者をチン☆出来る能力がある。
チン☆されたら、恐ろしいことになるのだ。
ある真面目に定評がある男性能力者は、完全開放<フルオープンパージ>で他の能力者を巻き込んでいる。
あるグラマラスな女性能力者は、顔据え置きで世紀末なムキムキマッチョでポージングしている。
あるクールが売りの男性能力者は、男性の身体のまま、おっぱいばいんばいん。
ある頭脳明晰な女性能力者は、頭カラッポで夢を詰め込んだのか厨二ごっこに勤しみ、英雄達の味方についてしまった。
嫌だ、それだけは嫌だ。
何て恐ろしいキャラ崩壊……!
オマケのなく、極振りである。
しかも、『レンジ』を扱えるのは英雄のみ、『レンジ』でチン☆出来るのは能力者のみ。
だから、一般人に被害ないし、どういう力なのかも説明出来ない。
……つまり、一般人からしたら、ただのHENTAI、OK?
『レンジ』を、壊さなければ。
今の自分達は英雄と共鳴が出来ない。
壊せるのか?
不安はあるが、気合とか根性とか……とにかく何でもいいので何とかしないと、自分の色々が守れない。
この際、他の人のキャラを犠牲にしてでも自分のキャラを守らないと。
『あなた』は、この戦いの果てに何を見るだろう?
ちなみに、言うまでもなく、これは夢。
どうやら、エイプリルフールというものを誤解した愚神のドロップゾーンの罠に陥ったらしいよ。
だから、ここで見る夢は全てエイプリルフールな嘘の夢。
現実には絶対起こらない話。
……愚神って本当に卑劣だよね(棒)
解説
●状況
・英雄が能力者を酷くするレンジを手に入れて叛逆してる。逃げよう。
・……という夢を見ているけど、夢という自覚はない夢を見ている!(犯人は愚神。でも、夢の中でそれを覚えてられない)
●出来ること
・能力者
英雄が持つレンジでチン☆されると、酷いことになります。
酷くなったら能力者妨害行動を開始します。
防ぐには、英雄全員のレンジを奪取・破壊等どうにかするか、英雄側に味方するしかありません(要するに裏切り☆)
酷い効果は任意設定でOK。私にお任せもOKですが、大体酷くなります。
夢だからか、全裸・大人行為等拙い場合モザイク・謎の効果音が全て隠します(明確な描写なし)
裏切る以外も他の能力者を犠牲にする・自分が犠牲になる・寧ろ自ら希望OKです。
・英雄
全員結託して能力者をレンジでチン☆します(裏切った能力者は除外)
叛逆の理由は、冷蔵庫のプリンを食べたとかそんなんです。何となく、とか、ノリとかでもいいです。
買収とか和解とかには応じません。
●レンジ
・手の平サイズの見た目普通の電子レンジっぽいレンジ。
・ドアを開けると、範囲1の能力者1人を吸い込み、10秒チン☆します。
・何ということでしょう、出てきた能力者が酷いです。
●NPC情報
・蒼 星狼
何もなければリプレイ内犠牲者第一号。
人身御供とかに使っちゃっていいんじゃないでしょうか。
・デイ・ブレイク
一緒にレンジでチン☆活動します。
星狼が冷凍庫のアイスを食べたのが叛逆理由。
●注意・補足事項
・アドリブ大量前提。絡みは確定的に発生します。
・愚神は気にしなくていいです。夢の戦いが終わって目覚めたら、そこにいた愚神にブチ切れて討伐します(一言で終了。報酬は愚神討伐分)
・夢の中なので目覚めた後の記憶状況は任意。全部忘れててもOK。
・コメディ要素高く、しかも夢の中の話なので、真面目になり過ぎないように。
・ノリ優先でOKですが、人を不快にさせない範囲でお願いします。
リプレイ
●貴様の罪を数えろ
「リアちゃんがあんな怒ったの初めてなんじゃねぇのかコレ……!?」
「あばばばばばばばば……!!」
古賀 佐助(aa2087)とGーYA(aa2289)は恐怖に顔を引き攣らせ、蒼 星狼(az0052)と全力疾走中。
背後に迫っているのは、リア=サイレンス(aa2087hero001)、まほらま(aa2289hero001)、デイ・ブレイク(az0052hero001)の英雄連合である。
「……佐助……Guilty……!」
「じぃいいいーやぁあああぁああああ~~~」
「そこに直れ、こわっぱああああああああ」
リアの目もまほらまの目もデイの目も笑ってない。
「てめぇの方が見た目だけは小童だろうがクソジジイ!!」
「黙れ、わしが湯浴みの後に食すつもりであったあいすを食いおって!!」
「また買えばいいだろうが!!」
「そういう問題じゃないのじゃ!!」
星狼とデイがぎゃんぎゃん騒いで、佐助とジーヤ、共にあることを思い出す。
昨日、冷蔵庫に見覚えないけど、何かいい感じのエクレアあったから、食べたっけ。
うめーって、全部食った。3個。
奇遇だね。
俺も何か美味しそうなケーキがあったから、あ、お土産かなと思って。
中を見ようとしたら、手が滑って、箱を落として、運悪く箱から中身が飛び出ちゃったてへぺろ。
……佐助とジーヤ後ろを振り返る。
「あたしが! あのケーキをどんだけ楽しみにしていたか知らないみたいだから教えてあげる。あれは、有名パティシエの限定特別ケーキ! 抽選で当たって、世界に1個のあたしだけのケーキだったのよ……!」
「私もね、朝から並んで、やっとの思いで購入した戦利品……!」
あ、これアカン奴だ。
佐助とジーヤは顔を見合わせ、頷き合う。
逃げ切るには、必要な犠牲ってあるよね。
どーん。
デイとの口論に夢中になっていた星狼を思いっきり突き飛ばし、英雄達へ捧げた。
「のう、小童、おぬしは自分の罪を知らねばならんのぅ」
「クソジジイ、てめぇ俺をこんなんで仕留められ」
星狼、話の途中でレンジに取り込まれ、チーン☆
しゅううううう……
謎の煙と共に、ニュー星狼爆誕。
「皆、英雄の裁きを受けるにゃん☆」
猫耳と猫尻尾、それからムタンガ、レースエプロン、黒レースのガーターベルト&網タイツという視覚攻撃力半端ねえ姿。
ウワァ。
佐助とジーヤが走りながら、後方を確認して思っていると、上からいきなり銃弾。
見ると、いつの間にかリアがビルの上にいる。
しかも、近くにあるそれ、設置して使う対物ライフルじゃないですかね、リアの後ろに山盛りの銃器あるけど、あれ、携帯式対戦車擲弾発射器さんとかバズーカ砲とかが見えるんですけど気の所為ですかね?
「リアちゃん!? 俺殺す気!?」
「大丈夫。佐助だから死なない」
「っていうか、流れ弾に当たったら、ジーヤちゃんだって死ぬよ!?」
一緒に逃げてたジーヤ、げっという顔をした。
「ジーヤ、根性で避けるか耐えなさいよ……!! あたしが、レンジでチンするんだから……!」
頭上からリア、後方から鬼の形相のまほらま。
後、酷い姿になった星狼とデイも加勢している。
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ。
繰り返す。
ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ。
その時だ。
「こっちだ」
「早く来て!」
その声の方角を見ると、そこには御神 恭也(aa0127)と伊邪那美(aa0127hero001)の姿が。
彼らは地下への入り口から少し顔を出して手招きしている。
佐助とジーヤは地下への入り口に飛び込んだ。
すぐさま恭也が入り口のシャッターを下ろす。
「ふーっ」
「だが、ここも長くは持たないだろうな」
安堵する佐助とジーヤへ、恭也が同年代とは思えない落ち着き払った様子で見解を述べる。
「英雄達が手にしているレンジが原因であるなら、それを奪還すればこの暴挙は止まる筈だ」
「そうだね、恭也。持ってたら、こんな風にレンジに取り込まれちゃうもんね?」
伊邪那美が言葉を遮る。
恭也が振り返った時にはもう遅い。
その姿が消えていき、佐助とジーヤは消えた向こうの伊邪那美を見た。
笑顔の伊邪那美の掌にはレンジが乗っかっている。
「下克上なんだよ?」
伊邪那美、この瞬間だけを狙っていたのだ……!
佐助とジーヤは閉鎖空間の恐怖を覚えた瞬間、チーンという音と同時にシャッターが爆破され、恭也の変貌を見る前に彼らは外へ飛び出していた。
「ジーヤ、どうして逃げるのかしらねええええええええ」
「佐助……動いたら、当たらない……」
佐助とジーヤ、とにかく必死に逃げる。
伏兵の如く星狼とデイが現れるし、何かちらほら、能力者がレンジに取り込まれてるし!!
彼らは一蓮托生、必死に爆走。
●無慈悲に、裏切り
さて、少し時間を遡らせよう。
(ボクもレンジを手に入れないと……。不条理な行いには神罰を!)
伊邪那美は、英雄の惨劇に目を見張る恭也に気づかれないよう瞳を鋭くしていた。
だらしない生活態度を注意とか言うけど、恭也の行いに若さがないだけだ。
「あの真面目な白虎丸が凶行に走るとは……千颯、何をやったんだ?」
そんな伊邪那美に気づかない恭也は、虎噛 千颯(aa0123)を追う白虎丸(aa0123hero001)に注意を払って見ていた。
見た所、白虎丸は他の能力者に目もくれないようだが。
「千颯! 真人間になるでござる!」
「うるせー! この天然ゆるキャラキング! またなんつー勘違いしてんだ!」
どうやら、レンジでチン☆すれば、性格が変化する……千颯なら真人間になるという天然的超解釈によりチン☆の為に追い回しているのだ!
あの分だと、見つかったら巻き添えになる。
恭也はごく冷静に、物陰から事の推移を見守っていたのだ。
(ボクにまだレンジはない。でも、英雄だから、きっとレンジは来る! それまで、恭也、束の間の平和を楽しむといいよ……)
「伊邪那美、避難場所を確保しよう。物陰は見つかりやすい。地下に身を潜める場所を確保した方がいいだろう。シャッターがあれば時間凌ぎになる」
「見つからないように注意しないとね!」
伊邪那美が頷くと、恭也は「楽観的になってるんじゃない」と頭を抱え、物陰を移動していく。
その後、隔絶された地下で伊邪那美の手にレンジが授けられ──ああなっちゃった訳である。
「恐ろしい縮図だ……!」
谷崎 祐二(aa1192)も、物陰で観察していた。
一般人もいるのに、屋上からリアが佐助目掛けてぶっぱしてるし、まほらま追い掛けてるし。
千颯と白虎丸はぶっちゃけ平常運行だから、気にしないが、何で通行人、どう見ても非能力者なのに、喧嘩は他所でやれHENTAI程度なんだ、おかしいだろどう考えても。H.O.P.E.呼べ。
(って、俺達がH.O.P.E.……!)
とにかく、このカオスから抜け出さないと、色々危ない。
さっき通り過ぎた星狼、格好だけで警察に通報していいんじゃないか?
だが、どうすればいい。
祐二は、その答えが出ない。
「逃げるんじゃないのだ! 痛くない(と、思う)から! ちょっと我慢するだけだからー!」
「どうも言葉に含みを感じますから、お断りしますよー!!」
プレシア・レイニーフォード(aa0131hero001)がレンジを手に狼谷・優牙(aa0131)を追いかけている。
見た所、プレシアはレンジでどうこうと言うより、優牙との追いかけっこを楽しんでいるようだから、自分への被害はないだろう。ないに違いない。ないと言ってくれ。
「汗を流して一緒にお風呂ー!」
「だから、一緒はダメですー!!」
見た目同い年、外見の性別は逆転しているようだが、それでも男女。
年齢的にあはんうふんな展開ではないが、そういう問題じゃない。
優牙が一緒の朝風呂を断ったのが事の発端みたいだろうから、まぁ、追いかけっこの邪魔したり、進路上にいなければ平気。
問題は、あっちだ。
「はわわわわわわわ……マ、マモンさんなんですかそのレンジー!!!!!」
「イハちゃんをチンするに決まってるじゃなーい★★★★★」
テンパりながらも生存本能故か逃亡しているイハドゥルカ イルパメラ(aa0250)とそんなイハドゥルカを捕捉すべく追い掛けるマモン(aa0250hero001)だ。
星が★と白くない辺りにマモンの色々が見えるが、それはさておき。
「な、何でチン☆するんですか、し、死んじゃいます~っ!!!!!」
「死なないレンジなの。イハちゃんが可愛いから、チン☆したいのぉ」
ドヤかますマモン、イハドゥルカを愛でるつもりでレンジを使うつもり満々。
その為ならこちらにも矛を向けかねない。
そう思っていたら、どじっこのイハドゥルカ、何もない所で足をもつれさせてこけた。
「いい子にしてねぇ★」
「はわぁ~!!?」
イハドゥルカが必死に逃げようとする奥襟をガッシリ掴んで、レンジ作動!
「イハちゃんのお胸とお尻をどんどんおっきくしちゃいましょう!」
チーン☆
出てきたイハドゥルカは一見すると変化がない。
「ひぁっ、何か、マモンさんに見られてるだけで恥ずか……」
お胸が何故か1サイズアップ。
服が爆ぜ、祐二は目を逸らす。
「や、そんな、見ないでください。って、下着が~!!」
ばんばーん。
下着が弾け飛ぶ音がするが、その時ちょうど脇を駆け抜けるプレシアが首を傾げた。
「ごにゃごにゃで見えないよ?」
「えっ」
イハドゥルカは自分の裸体がモザイクで隠れていることに気づいた。
ほっとしたのも束の間、マモンが飛び掛ってくる。
「イハちゃんイハちゃんイハちゃん!」
モザイクが2人分になった。
モザイクの中央に『しばらくおまちください』という字幕が浮かび上がり、ししおどしの音が風流に響き渡る。
「都会の癒しのような音ですねぇ、おじいさん」
「そうじゃのぅ、ばあさん」
通行人のおばあちゃんがおじいさんと仲良く会話してるけど、モザイクの向こう、絶対ヤバイ奴だろ!!
その時だ。
「にゃっ!」
馴染みのあるその声は!
祐二が振り返ると、プロセルピナ ゲイシャ(aa1192hero001)が少し後ろの別の建物の陰から祐二を手招きしている。
こっちこっちと真剣な目で手招きしているセリーのその姿に祐二は感動した。
「助けてくれるのか! 信じてたぜ」
祐二は、セリーへ駆け寄る。
ああ、セリーは違うな。
……そう思っていた時期が俺にもありました。
「にゃ」
セリーが建物の陰に隠していた手にはレンジがあり、祐二が近づいてきた瞬間、レンジ発動。
取り込まれた祐二が出るのを淡々と待つセリー。
「……にゃ」
セリー、昨日あれだけねだったのにまたたび香を買って貰えなかったことを忘れてなかった。
チーン☆
祐二がそのことを認識したかどうかわからないが、金ラメのストールで顔をぐるぐる巻き、装いはブラジルのカーニバル的な格好(過激過ぎて裸同然の奴)で生まれ変わったのだった。
●レンジに囚われゆく
「何故逃げるでござる? これもまた免許皆伝への道でござるよ?」
「おかしいから! よく見ろ! どう考えたってダメだろ!? 止めろ!!」
骸 麟(aa1166)は悲鳴のような叫び声を上げながら、宍影(aa1166hero001)の魔の手からかなり必死に逃げている。
宍影は、レンジで能力者達が変貌したのを見、修行にもってこいの効果であると考えたのだ。白虎丸並の超解釈により、いかなる状況でも精神の平衡を崩さないことが忍には何よりも大事である修行が出来ると麟へ足を止めるよう言っている訳だ。
「その変貌により、心を学べば……御免!」
「どわーっ!?」
麟は後方から棒手裏剣の投擲で悲鳴を上げる。
が、共鳴してなくとも、忍だけあり回避能力は高い麟は棒手裏剣を避けつつも走りを止めない!
「麟殿、避けてはなりませんぞ! 忍として大成する誓約はどうしたでござる!」
「誓約反故になってない時点で今の行動に疑問持て!!」
麟、この時ばかりはまっとうな意見。
が、逃げていく内に佐助とジーヤと合流してしまい、超大作映画真っ青の重火器ぶっぱの嵐の中へ放り込まれた。
ばーんずどーんちゅっどーん。
爆発に巻き込まれ、エージェントもお空に舞い上がったりしている。
何でノーダメージなのか深く考えてはいけない。いいね?
「優牙ーっ、爆発記念に……レンジでチンッ☆」
「記念でも何でもないですー!! 落ち着いてください、プレシア!!」
「僕は落ち着いてるから大丈夫だよー!!」
爆発に巻き込まれて舞い上がりながらもプレシアは手放さないレンジを指し示して超笑顔。
優牙が落ち着かせようとするが、プレシアは案ずることは何もないと聞く耳持たず。
流れゆく流星と共に空から地面に降り立つと、プレシアはまた追い掛けてくる。
「絶対落ち着いてないです。落ち着いて話せば解りますー!! そもそも何でレンジなんですか!?」
「コマケェコタァイインダヨって偉い人が言ってたー」
「誰ですかその人!!」
余計な入れ知恵ぶっこいてる。
「難しいこと言って誤魔化そうとしても無駄なのだ! 優牙がこれにレンジでチン☆されてくれれば全て丸く収まるのだ!」
「断固拒否! 拒否ー!!」
着地地点はイハドゥルカとマモンがいるっぽいモザイク付近。
かっこーん。
かっこおおおおおん。
ししおどしの音が癒しのように響きまくる。
しかも何かモザイクにユリの花加わってないか!?
放送事故の時に表示される画面みたいな奴!!
「はわわ、いやです。こんな姿ー!!」
「何でもするっていうことは……」
「そ、そんなこと……」
かっこおおおおおおおおおおん。
ししおどしの合間の会話が再度盛大に遮られる。
関わったらヤバイのは生存本能で理解し、優牙、逃げに逃げて、麟に続いて佐助とジーヤに合流。
「今は生き残ることを考えるしかないんじゃないかなっ!」
「どうやって生き残るんだ!?」
「気合だ!」
ジーヤへ麟が逃げながら問うも、佐助がすんごい真顔。
「気合があれば、多分何とかなる、といいな」
「確証がないじゃないですかー!!」
「だって……え、戦車!?」
佐助が優牙との会話最中で、目の前に立ちはだかる存在に気づく。
戦車である。
その上に颯爽と立っているのは、リアだ。
「祈りの言葉は唱え終わった……?」
「ま、待ってリアちゃん落ち着こうぜ? 落ち着いて話を……!」
「問答無用」
親指で首を掻っ切る仕草をしたリアに合わせて戦車砲がこちらを向く……!
「こっちよ! 今度は大丈夫!」
見慣れない少女……ん、違う、この声と雰囲気、恭也じゃないか?
4人は戦車砲がぶっぱされる前に物陰へ飛び込んだ。
「とにかくレンジをどうにかしましょう。強硬手段になったとしても、仕方のないこと」
「それはいいけど、レンジの効果がそれだったの?」
ジーヤが恭也をメッチャ見る。
だって、声は恭也だけど、服装バニーガールで、女の子のように話す度に胸がたゆんって揺れてるよ?
「不本意だわ……」
当初焦ってしまい、その間に伊邪那美は体勢立て直しで恭也からバックレたという。
『恭子ちゃん、無駄な抵抗はよせー! ボクに対する行いを反省しろー!』
戦車から聞こえるのは伊邪那美の声。
どうやら彼女が戦車を操縦しているようだ。
っていうか、何で伊邪那美が戦車運転可能なんだよ。
「馬鹿な真似をして……早急に破壊しない悪い子はお仕置きしなければならないわ」
胸がたゆたゆしているだけでなく、バニーちゃんなので兎尻尾もふりふり。
なまじ声が恭也だけに哀愁を誘う。
胸の合間から黒革の鞭が出てきて、地面をびたーんと叩く。
どこにあったんだ。
4人の視線を受け、恭也は事も無げに言った。
「武器を隠し持つのは、嗜みよ。ここに隠しておくしかなかったけど」
隠せる胸が今の恭也にはある。ぷるん。
が、その姿に勇気付けられた4人がレンジを破壊するしかないと決意を固めた、その時だ。
突然、佐助の背中が突き飛ばされた。
「え……?」
信じられない者を見る目で、佐助は見た。
いつの間にか背後にいた千颯の姿を。
「虎噛さん同じ状況だったなら、どうして……」
「オレちゃんはオレちゃんが助かることにしか興味ない!」
千颯が手をしゅっと挙げて更に奥へ逃げていく。
どうして、こうなったのか。
「……Check mate……」
『GOGO!!』
リアの怨嗟の声と共に景気いい伊邪那美の声が響き、佐助は戦車砲ぶっぱされた。
「彼は手遅れだわ、逃げ……!!」
恭也が切り替えようとした瞬間、セリーが別の物陰からじゃーん!
驚いた?と言いたげなドヤが目に浮かんでいる。
だが、セリーがここにいるということは!!
「ふふふ……天が呼ぶ地が呼ぶカンガルーが呼ぶ……!」
金ラメのストールで顔をぐるぐる巻き、装いはブラジルのカーニバル的衣装の祐二、ケーキとおでんを手に屋上から登場。
「ケーキ投擲も至高だが!! 時代はおでんとの交互投擲を!!! 求めていた!!!!!」
とうっ!!
ビルの上から飛び降り、しゅたっと着地する裕二。
その拍子に過激なカーニバル衣装がモロリしちゃったけど、モザイクが守ってくれたから問題ない。
「甘いのとしょっぱいのって最高だよな」
腰の孔雀のような羽がぶわさっと開く。
佐助の悲鳴が響く中、4人は彼のチン☆に敬礼する間もなく逃げ出した。
『恭子ちゃん、ヒドーイ! 仲間思いじゃなーい!』
「もう手遅れなら諦めて切り捨てるのも戦いでは大事よ」
伊邪那美に小さく呟いて返す恭也、チーンという音だけ耳に拾っておいた。
●迫り来る悲劇
「甘いのとしょっぱいのって最高だよな」
祐二がケーキとおでんをバンバン投げてくる。
投げる度にどこからともなく生じた『こちらは食品ではありません。環境に配慮した非食用製品です』という字幕が生じていて、食べ物で遊んでいるという抗議がH.O.P.E.へいくことはないだろう。やったね!
「甘いのなら、まほらま、どうかな!」
「ジーヤ、いい度胸してんじゃないのよ……」
祐二が顔面狙いのケーキお断りとばかりに横から飛び出してきたまほらまへそう言うが、まほらまの怒りを存分に煽った。
「ケーキの恨みは人類の恨みにゃん。諦めるにゃん」
「星狼さんだってアイス……」
ジーヤは言いかけて、時間停止。
別の物陰から出てきた星狼、地味にチェンジしてやがった。
尚、現在はフルメイクにツインドリル、あと、レースのエプロンの形がハートマークになってたり、ムタンガのレースが黒になって大人使用になってたり、ネコ尻尾には鈴付きのリボンが加わってたりと、大変どうでもいい変更がされている。盾とかになってるから、多分身代わりチン☆されたのだろうけど。
「俺は絶対逃……」
「わしはまほらまに加担するのじゃ」
ジーヤ、背後に迫っていたデイから膝カックンで体勢を崩した。
「今じゃ、まほらま!」
「ケーキに代わっておしおきよ」
レンジに取り込まれるジーヤの最後の意識は、皆だけでも逃げて、である。
その遺志(死んでない)を汲み取ったかのように3人走り出す。
『逃そうったってそうはいかないんだから!!」
伊邪那美の声と共に戦車砲ずっがんずっがん。
千颯は逃げながら、白虎丸以外の追っ手はない今、どうやって生き延びる為にどうすればいいか考える。
「空気抵抗があるから、オレちゃん速度が上がらないんだ。オレちゃんも本気にならないと……!」
エボリューション☆
虎 噛 千 颯 完 全 開 放 !
一瞬にして解き放たれる!
「千颯、せめて俺の手で……!」
「オレちゃんは捕まらないぜ。オレちゃんが1番完全開放を上手く使いこなせるんだ!」
「そんなのはどうでもいいでござる。せめて俺が引導を……!」
「はっ!? 星狼ちゃんシールド!!」
自分が助かる為、にゃんにゃん近づいてきた星狼を咄嗟に盾にする千颯(星狼が身代わりチン☆)
絵面相当ヤバくて、今頃、H.O.P.E.東京海上支部の電話回線パンク、サーバーダウンしてそうな勢いだが、千颯は知ったこっちゃない。
出会う能力者全部犠牲にしてでもオレちゃん生き延びてみせる……!
「ま・つ・にゃ・ん」
逃げようとした千颯の尻を星狼の猫尻尾がべしぃっと叩いた。
本物の毛皮!?
千颯が地味な変更点に気づき他にも何か不利な変更があるかもと確認しようとした瞬間、ばったり倒された。
「あそぶでちゅ」
佐助である。
自分が盾にした佐助だ。
レンジでチン☆された結果、その心は赤ちゃんになってしまったようだ。
「後にするでちゅ」
子持ちの千颯、佐助を置いて逃げようとしたが、足元から何かが這いよってくる……!
「ジィィィイィィィヤァァァ」
顔はジーヤだが、首から下、肌色の触手を持ったスライム。
でも、全裸だから、ところどころモザイクである。
最初、レンジ破壊を狙ったようだが、まほらまが上手いこと言って誘導したらしい。
「何でオレちゃんが首から下全部モザイクなのに、ジーヤちゃんは部分モザイクなんだよ!」
流石フルオープンパージャー、怒る所が違う。
「ジィィィイィィィヤァァァ」
触手うねうねしたジーヤが足元からうねうね触手伸ばして這い寄って来る。。
何かこう、ランランララランランランな図になっているが、千颯は咄嗟にはいはいで追いかけてきた佐助をジーヤに向かって放り投げた。
ジーヤに佐助がぐにゃっとダイブして、何か顔だけ出して、融合した!
「ジィィィイィィィヤァァァ」
「いい度胸してるじゃないのよ」
それを見てキレたまほらまが千颯をターゲッティング!
その時、白虎丸も間合いを詰めて来て……!
『横暴、はんたーい!!』
伊邪那美の景気のいい声を聞きながら、千颯は覚悟を──
「決めてたまるかああああ」
全力疾走、モザイクのお陰で色々助かっているが、おまわりさん、こいつです。
「追い込むわよ!」
「了解、です」
まほらまの怒声に応じるリアが遠慮なく機関銃乱射。
街中、街中忘れてる!!
「そうだ、H.O.P.E.に行こう」
「能力者と英雄がHENTAIしちゃうと、私達の時間が邪魔されちゃうわ。ダーリン」
「街はすぐ直るからいいけど、そういう問題じゃないし」
いちゃいちゃカップルがどっかへ歩いていく。
すぐ直るの? え? 世界ってそうだったっけ?
千颯はそうだったけと思うが、足を止めたら捕まる。
完全開放の名の下、負ける訳にはいかない!!
千颯は今、開放の風になる……!!
で、恭也、優牙、麟は物凄い必死に逃げていた。
戦車、戦車なんて反則だ。
「戦車なんてどこに隠し持っていた……」
ぶっちゃけると、恭也はそこが疑問だった。
まぁ、更に彼らに知られないようぶっちゃけると、夢だから、用意可能だったという。
夢の中の一般人にとって、日常の一部みたいなノリであり、騒ぎを察してさっさと避難してしまったようだ。
なので、一般人今いない。やったね!!
「僕、少し走り疲れました……」
恭也と麟よりも年少の優牙は共鳴していない状態だと、やはり彼らと同じようには走り続けていられなかったらしい。
路地裏に逃げ、疲れたと優牙がビルに手をついた瞬間。
カッ
空が光ったと思うと、ビルがズズズズゴゴゴゴと倒れていく。
「えええええ!?」
「衛生砲が成功したのだよっ!」
プレシアがどやどやぁっ。
「く、ここまでやるとは!」
『コラー! 恭也、真っ先に逃げるなー!!』
恭也は身を翻して更に奥へ。
「麟殿、逃げるは忍の恥ですぞ」
「こうなったからには、骸忍法の全てをぶつけていくぜ……!」
残骸の上にしゅたっと降り立つ宍影を見上げ、麟は相対する構えを取る。
と、その時だ。
「おおっと、ごめんよー」
どんどーん!
背後を走り抜けた千颯が優牙と麟を突き飛ばして奥へ逃げていく。
「追うでござるよー!!」
「燻し出しますね……」
「待ち伏せするわよ!」
白虎丸の声に応じるリアの声、まほらまが誰かに連携を伝える声が聞こえてくる。
そして、「いどーでしゅー」「ジィィィイィィィヤァァァ」と謎の声が後を追う。
更にもっと遠くでは「谷崎って名前を何で間違えんだよ! 谷口でも谷先でもない! 谷崎だ!」という祐二の怒号と共に「あぶねーだろ!」と千颯が逆ギレした声が聞こえてくる。
でも、ま、それがよく聞こえたのは、優牙と麟の目の前でレンジがぱかっと開いたからで。
その瞬間に絶望したからで。
「覚悟なのだよ~♪」
「これも忍として大成することへの道なれば!」
この世界に神なんていなかった。
虎噛 千颯……オボエテロ。
チーン☆
彼らもまた、レンジでチン☆となってしまったのだった。
●ネバーギブアップ
逃げる千颯の後方から白虎丸の声が響く。
「千颯、その人格、今日という今日は正すでござるよ。あのように!!」
だから、見てしまった。
『あのように』って何?
そこには──
「皆様、喧嘩などはしたなくてよ。お茶会をして、仲良くなりませんこと? ……わたくしったら、殿方もいるのに大胆ですわ」
ロココ調のドレスに身を包む麟が恥らって手で顔を覆い、いやんいやんしている。
麟のキャラ全然違う。
共鳴して忍装束、共鳴しない普段、麟ってジャージだし。
しかも髪型も後ろで一本の三つ編みしかしていない筈なのに、縦ロールだよ。
でも、現代日本で言動はともかく、まともな格好かと言われると何かが違う。
「正すってレベルじゃないだろうが! あんなに着込んだら、パージの観点からだな」
千颯、ツッコミもその観点。
パージに拘りがある男は、そこは大事にしていた。
と──
「ふーむ、これでは修行になりませぬな。御免」
背後にいた宍影的にアウトだったらしく、麟を再度チーン☆
出てきた麟の服装はジャージに戻っていた。
けれど──
「え? な、なに? あたし怖い……誰か助けて!!」
メッチャ普通だ。
が、言うまでもなく、チン3回目。
これは拙いと千颯が顔を引き攣らせたその時だ。
「にゃ」
セリーの声が響いた瞬間、千颯はおでん被弾。
あっつあつおでんがびたんびたん当たる。
「あっつ!? オレちゃんに何するの!?」
「うっせえ! いいから黙って喰え!」
裕二がおでんの千本ノックで千颯を狙いまくっていた。
どこにそんなおでんがと思ったら、背後にデイがいて、おでん鍋ぐるぐる回している。
でも、字幕は『非食品』変わらない。
「火傷したらどうすんの!?」
「なら、ケーキで相殺してやるよ。火傷なんてさせないぜ?」
イケメン調に言ってるが、やってることはコメディ。
セリーが裕二にせっせとケーキを渡しているが、足元にケーキの山がある。
勿論、字幕に『非食用』と出ていて、食べ物でもない。
「受け取れ!」
ウエディングケーキ級のケーキがずがーん。
千颯は必死に避け、逃げようとした瞬間、今度は本物の銃弾が足元へ突き刺さる。
ビルの屋上にはリアがおり、千颯を見下ろしていた。
「避けたら、当たりません、よ?」
「当たりたくないから避けて」
「ジィィィイィィィヤァァァ」「とー!」
いつの間にかビルの上に移動していたジーヤ(佐助取り込まれ済)が飛び降りてきた!
「何で自分の名前以外言えなくなってんだよ……。人間じゃないのにクラスチェンジしてもそこは喋んないとダメじゃね?」
「今それを気にしている場合かしら?」
千颯は間一髪避けたものの、まほらまが艶然と笑って接近してきていた。
それだけじゃない、優牙とプレシアが……!
「レンジって気持ちイイですよ! 千颯さんもチンッされちゃいましょう! さあ、奥ゆかしく遠慮してないで! 大丈夫、すぐに終わりますから!」
逃げてる最中はシャツとパンツ姿だった優牙、今は顔は据え置きで身長70cm追加のムキムキマッチョボディだ。
しかも海パン姿で、ポージングしながら迫ってくる。
「この後、プレシアとお風呂入る為の運動なので気持ちよく入る為にもご協力ください!」
「ご協力よろしくー!」
「今にゃー」
優牙とプレシアに意識が流れた瞬間、星狼が合図した。
しまった!
そう思った時には白虎丸がレンジを開けていた!!
「千颯! 真人間になるでござる!」
チーン☆
「禁断の扉が解放されたままだ……。世界に混沌が流れ出ている……」
千颯は全身拘束具に拘束された姿で登場した。
世界が混沌としているのは認めるが、自分の姿もハイスコアで混沌となっている現実を忘れてはならない。
「く……混沌が、侵蝕してくる……! 世界の綻びを鍵で閉じねば……」
「モザイクは除去されているでござるが、これは違うでござる。却下でござる」
チーン☆
白虎丸、容赦せず、再度千颯をチン☆した。
次は──あ、モザイクが掛かってる!
「世界の綻び? ウケるwwwww 解決方法はひとつだけ! 今こそ完全開放<フルオープンパージ>する時なんだぜ! さぁ! 全てを開放して世界に委ねるんだ! 怖い? オレちゃんがお手伝い」
「それはもういいでござる」
聞いてられないと遮り、白虎丸はワンモアチン☆
けれど、拘束具とパージャーパワーアップを繰り返すばかり。
「壊れてるでござるか?」
「お互い苦労しますなぁ」
いつの間にか、周囲には宍影と麟しかいなくなっている。
どうやら、恭也に全戦力が向けられたらしい。
周囲、爆撃が響き渡り、ビルがたまに倒れてたりする。
それに混じって、祐二が「おでんにトマトがないと誰が言っていた…! セリー、トス!」なんて声が響いてる。あのブラジルのカーニバルな過激衣装で打ってるから、モザイクが所々祐二をガードしてたけど、恭也はあまり動じてくれないだろう。精神年齢は30年は上乗せしてもいい冷静さだ。
「宍影殿も苦労されているでござるか!」
「今はこの通り」
宍影が指し示す麟は──巨大化してた。
どの位かというと、ビル20階建て位の大きさ。
ここで、麟のレンジでチン、ハイライト。
「これは世界滅亡のメッセージかもしれない……。宍影、何とか原因を探り出して世界に平和を! まずそのレンジを調べ……あ!」
最後まで聞いてられないので、宍影も再びチン。
「おででで……ぼくりんちゅんです……あ! ちちかぎゅー」
「修行にならないのは困るでござる」
やっぱり話全部聞き終わることなく、宍影チン3回目。
「ふ……くだらぬ人間どもだ。この様な下賤の生に執着して見苦しく騒ぐとは。我が奴隷となり真の命に目覚」
吸血鬼ちっくな服装を見て、話も聞かずにチン☆
「くけきゃきゃきゃ! vsぢがきゃぐごげげげげ!!!!!」
「人間でないと困るでござる」
服は着てるがジーヤ形態になったので、さっさとチン☆
結果、ジーヤ形態はどうにかなったが、巨大な人型、中身はジーヤ形態の麟が出来上がってしまったそうだ。
「俺は諦めないでござるよ……!」
会話している最中も千颯をチン☆しまくっていた白虎丸、何度も何度も拘束姿と全裸姿を往復する彼をレンジへ取り込む。
健闘を祈った宍影が麟と共に立ち去った瞬間──
「白虎丸というプロパガンダを使用することでゆるキャラ界がアグレッシブになり、かつセンセーショナルを巻き起こすことでベネフィットがあるってことなんだぜ……!」
やっと違うのが出てきた。
妖精達が夏を刺激するような、そんな装い。
ベルトで身体を覆っているが、チラリズムだし、肝心の場所が隠れてないのでモザイク掛かってる。
意識が高い系という奴なのだろうが、白虎丸はよく判らないし、中身の意識がどうであっても服装がアウトなのでレンジをパカッ。
「間違いでござる」
チーン☆
そして──
●遙かなる未来を信じて
千颯がチン☆されまくっている頃、恭也も必死で逃げていた。
これ以上酷くならないとチン☆された能力者を適宜身代わりにしているが(地味に酷い)、慣れない身体と服装では走り難い。
「胸がなければまた違ったかもしれないが……!」
女性化している恭也、バニーちゃんやるだけあってお胸はFカップ。
ふぅと息をついた瞬間、マモンの魔手が伸びてきて、咄嗟にバックステップで避ける。
「な、何をする」
「邪魔なんてことはないって、特別サービスで教えてあげようかなって」
マモン、スゴイ楽しそう。
じりじりと間合いを詰めて来るが、恭也は機を窺い、身を翻して逃げる!
「イハちゃーん!」
「ずずずずずるい、です、ご自分だけ……!」
首からしたモザイクが掛かっているイハドゥルカ(目にハイライトなし)登場。
しかも、モザイクが他より強化されていて、最早肌色がぼんやり確認出来る程度だ。
モザイクの向こうは想像しない方がいい。
恭也が冷静に逃げようとした瞬間、たゆたゆのお胸に祐二のケーキが被弾した。
「顔に当たらなかった……!」
祐二が悔しがっている所を見ると、故意ではないのだろう。
セリーが申し訳なさそうに、次行こうと新しいケーキを指し示す。
でも、打ってるのがケーキだし、バットコントロールはいつも以上に難しいから仕方ないね。
「大変~★ バニーちゃんのお洋服脱がないと……」
便乗したマモンが魔手を伸ばそうとしたが──
「恭也をどうこうするのは、ボクを通してよね!」
伊邪那美が颯爽と登場、レンジをパカッと開ける。
お前を通したからと言って、俺をどうこうしていい訳ないだろう。
ツッコミの声を上げる前に、恭也はレンジに取り込まれた。
チーン☆
恭也は自身の目線が伊邪那美と同じことに気づいた。
見ると、バニーちゃんの装いは変わらないが、つるぺたである。
「まさか」
声が高い。
これは、まさか。
「やった! これで完全にボクと一緒だね」
伊邪那美が喜んでいるから間違いない。
恭也は心の最奥で何かが切れた音を聞いた。
「……ぶち殺すわよ、伊邪那美」
意識据え置きを考えれば、恭也が初めて本来の年齢に一致したような言葉を言った瞬間である。
だが──
「イハちゃんの膨らんだお胸で世界征服するから、ちょっと困るわね」
「はわわ……マモンさんだめですよ~……でも、1人だけ、無事はズルイですから……」
イハドゥルカとマモンが邪魔する気満々で。
「ジィィィイィィィヤァァァ」「きゃー!」
「ジーヤが遊んで欲しいって言ってるの」
「ターゲット、捕捉……」
ジーヤ(佐助取り込み済)の横でまほらまが艶然と笑い、リアがバズーカ砲設置完了。
戦車砲と衛星砲も準備OK。
「麟殿、これも修行でござるよ。強敵との戦は大事でござる」
「きゅむーん☆ かぎゃ! ぐぎぎぎきゃんきゃああ! ぐろぐろはらほれはらひろ」
巨大化した麟の肩にいる宍影が戦いの合図を送っている。
ポージングする優牙と楽しそうなプレシアが退路を立つようにやってきた。
「最後にお風呂に入れば全部忘れられますよー!!」
「皆で背中を流しっこすると仲良しになれるよね!」
「恭子ちゃんも混じらないと!」
伊邪那美の一言が更に怒りを煽る。
「全てを敵に回してるにゃ。何度も盾にするなんてヒドイにゃ」
「おでんは熱いのじゃ。そちらはどうなのじゃ?」
「にゃ」
「熱いのもひんやりしているのも、この一振りに全てを賭ける。セリー、デイ、協力を頼む」
星狼もじりじり間合いを詰める後方で、デイとセリーが打ち合わせており、彼らからのトスを望む祐二も夜叉の構え。
「千颯があのようなことになった以上、レンジを破壊する為……!」
駆けつけた白虎丸が見上げて睨む先には、千颯が!
恭也は見上げ、確認した。
パージはしている、のか?
首から下はモザイクが掛かっている。
どこから生えているのか、孔雀の羽が広がっていて、夜の蝶のよう。
「パージはしてないぜ? パージャーにしか見えないマイクロビキニをオレちゃんは着ている」
それ全裸だろ。
「雨にも負けず風にも負けず」
言う瞬間、風が吹くが、風で靡いていると判別出来るのは髪の毛だけだ。
「どんな時でも最高の演出で脱ぎ続ける。そういうパージャーにわたしはなりたい」
意識高い系。
「パージの神様がオレちゃんに言うんだ。恭子ちゃんを導け、と。とうっ!!」
その格好で飛び降りやがった千颯、しゅたっと降り立った。
「オレちゃんのことは場を脱がすパージの使者、パージプリンスとでも呼んで貰おうか。愛と希望、そして未来の名の下に、パージプリンス、ただいま参上!」
装い自体は孔雀の羽が生えた全裸なんで、この中ではまともに見えるが、言ってる内容はアレだ。
「今ならパージすると、高い枝も難なく切れる枝切り鋏プレゼントだぜ? 恭子ちゃんなら、更に手元の枝を切るのに便利な断ち鋏とお手入れセットもつけちゃうかな!」
何の勧誘だよ。
絶体絶命だ。
だが、と恭也は周囲を睨む。
「負けない。伊邪那美をぶち殺し、レンジは全て破壊し、この世界に平和を取り戻して見せるわ……!」
恭也はその勇気を携え、最後の戦いに挑む。
その勇気が、遙かなる未来へ続くと信じて。
御神KYOKO先生の次回作にご期待ください!
って、打ち切りなのかよ。
けれど、その瞬間、どこからかバカ笑いが響き、エージェント達は『目覚めた』。
●夢の終わり
バカ笑いしている愚神を見て、エージェント達は術中に嵌っていたのだと悟った。
ぶちっ。
何かが切れる音がした。
言葉は要らない。
エージェント達は愚神へ武器を向け、そして──
愚神は死んだ。
「ううう~わ、わたしもうお嫁にいけません~」
「夢だからいいじゃない」
夢同様目のハイライトがないイハドゥルカはマモンの声など聞こえてないように落胆。
「あのような様に成り果てると、修行にはならないのでござる。見込み違いでござった。帰ったら、組み手を再開でござるよ!」
「オレその前に何か美味しいもの食べたい」
「俺は綺麗なケーキ見つけて、買って帰る」
「賢明な判断ね、ジーヤ」
宍影へ麟が答えていると、ジーヤがげっそりとした様子で加わり、続くまほらまの言葉で顔を引き攣らせる。
色々考えたら触手人間は面白かったかもしれないけど。
でも、飛べたら最高だったのかな?
何にしても疲れた。
が、覚えていない者もいるのだ。
「よく覚えてないけど、お風呂入りたくなりました」
「一緒に入ろー」
「それはダメ」
優牙とプレシアの攻防戦の横で、佐助が膝から崩れ落ちている。
「何で記憶は残ってるんだよぉお……!!」
「?」
佐助と違い、リアは記憶残ってないから不思議そうな顔だ。
「ぼんやりとしか覚えてないが、何かすっきりした」
祐二はぼんやりとしか覚えていないようだが、鬱憤が晴れたらしく、晴れ晴れとした顔。
が、セリーが祐二をガン見しているので、もしかしたら覚えているかもしれない。
「いひゃい、いひゃい……ボクは何をしたって言うんだよ」
恭也が伊邪那美の頬を抓り上げている。
彼にしては珍しく腹立たしいといった表情だ。
「何故かは解らんが、お前に仕返しをしないといかん気がしてな」
「恭也も夢の出来事を覚えてるの?」
「記憶にはないが、俺の行動は正当だということだな」
墓穴を掘った伊邪那美、帰ったら怖そうだ。
「もっと俺は真剣に千颯を真人間にする努力をしなければならない、その戒めの夢であったでござる」
しっかり記憶している白虎丸の先には、千颯がいる。
「オレちゃん覚えてないんだって!」
「うるせぇ、てめぇ、よくも人のこと何度も盾にしやがったな、コロス!!」
「ちょっと、デイちゃん何とかしてよ!」
「わっぱ同士の喧嘩に口を挟む程無粋でもないわ」
鬼の形相をした星狼が指バキバキしたのを見て千颯が逃げ出し、介入するつもりもないデイが見送っている。
白虎丸も介入するつもりなく、ただ、決意を新たにした。
何が、パージプリンスだ。
現実でさせると思うなよ。