本部

酒豪よ、集え!

東川 善通

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
12人 / 4~15人
英雄
12人 / 0~15人
報酬
無し
相談期間
5日
完成日
2016/03/27 22:28

掲示板

オープニング

●酒豪による酒豪のための宴
 漸く開催して十年を少し超えた祭り。否、祭りと言うよりも宴に近いそれは酒飲みにとって、素晴らしいもの。誇れるくらいのものだ。だが、しかし、まだまだ知名度は低い。
 別に地元の人間だけで楽しんでもいいかもしれない。だが、やはり飲むからには色々なところの人間と盃を酌み交わしたい。そして、あわよくば、世界にこの祭りを、と運営委員会は考えていた。
 しかし、どうやれば、広く発信できるだろうかと酒で頭がいっぱいの男たちは悩む。
「あ」
 何かを思い出したように声を上げた青年に全員がどうしたんだとばかりに目を向ける。
「いや、正月に愛媛の親戚がエージェントの方に東の方の雑煮をご馳走になったって言うのを思い出しただけで……」
 アイディアとかそう言うんじゃないと申し訳なさそうにぼそぼそといった青年。それに興味を引かれたのか彼に詳細を求めた。青年は詳細を求められる理由が分からなかったが、何かのヒントになればと口を開く。
「――ということでして」
「なるほど。うん、それは使えるかもしれない」
「えっと、あの、どういうことですか?」
「エージェントだ。エージェントは様々な場所に仕事に行くだろ」
 つまり、そんな彼らにこの祭りのことを話題として持っていってもらえれば、にやりと笑みを浮かべながら言う男に青年は漸く合点がいったらしい、そういうことかと大きく頷く。
「そうと決まれば、早速、招待状を送らねば」
「だが、どこの宴に参加してもらうんだ?」
「やっぱり、この祭りと言えば、列車での宴会は外せんでしょう」
「いやいや、地元と交流できる商店街の宴会もあるぞ」
 何種類かある催し物に運営委員会の中でこれはどうだ、と次々に名前が上がる。

●宴への招待状
 後日、H.O.P.E四国支部を始め、東京海上支部の掲示板に酒豪の国土佐から宴への招待状が張りだされていた。
「来たれ、酒豪!」
 中央にでかでかと墨字でそう書かれたその周りに二つの宴の詳細が書かれていた。正直、酒を嗜んでいないものにとっては地獄ともいえるそれらの宴を一言で言えば、「酒の飲み放題の祭り」それに尽きるだろう。勿論、酒ばかりではなく、土佐名物の料理が並ぶとも記されていた。
 そんな招待状の前に立った酒飲みなエージェントや酒好きの英雄たちはじっくりと招待状を読み込んだ。

解説

 とにかく、飲んで騒いで楽しもう!

 一と二から参加したい宴を選択。エージェント、英雄バラバラでもOK。ただし、二の参加者が少ない場合は一のみの描写になります。

●選択肢
一、商店街での宴。
 外見年齢二十歳未満も参加可(ただし、酒は飲ませません。ジュースかお茶)。
 商店街の路上に畳を敷いてき、更に炬燵まで出して、大宴会。料理は土佐名物が並ぶ。七輪も貸出可。
 地元の人などとも交流もできる。むしろ、絡んでくる。
 尚、酩酊状態にならないように注意。
 小さい子向けの遊具なども設置される。

二、電車での宴。
 外見年齢二十歳未満は参加不可。
 乗車時間は約100分。お酒飲み放題、土佐料理付き。
 また飲み物や出来合いなら料理も持ち込み可。
 まさに走る居酒屋。
 カラオケなども常備。

●その他
 招待参加ですが、羽目の外し過ぎには注意しましょう。
 外見年齢が二十歳未満でも基本設定にて年齢が記されている場合は基本設定の年齢となります。
 またプレイングにはどちらに参加するか、酔うとどうなるか、どのくらい飲めるかなど書いていただけると助かります。

リプレイ

●おいでませ、酒豪の国
 エージェントたちは飛行機で降り立ったもの、周りの景色を楽しみながら列車旅を楽しみつつ、土佐を訪れていた。
「よし、ガルーちゃんが潰れた時用にタクシー予約、予約」
「会場まで来てくれるのか確認も必要じゃないか?」
「え、ちょ、やだぁ、それ、俺様が潰れる前提じゃない」
「どんまいなのですよ」
 のんびりとした列車旅で土佐に降り立った木霊・C・リュカ(aa0068)とオリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)は駅前に停まっているタクシーを眺めてそういう二人。そんな二人にガルー・A・A(aa0076hero001)は声を上げた。そんなガルーに紫 征四郎(aa0076)はぽつりとそう零す。そして、ぎゃあぎゃあ言い合うリュカ、オリヴィエ、ガルーの三人。ただ、彼ら三人を尻目に征四郎が「言い合っていてもしかたがないのです」といって、タクシーの予約をしていた。

「酒飲みの祭りか」
「お祭りの趣旨が趣旨だから今日は沢山飲んでもいいけど、迷惑かけちゃ駄目だよ!」
 そう言って、無い胸を反らし注意するアンジェリカ・カノーヴァ(aa0121)に「こう見えても聖職者だぞ。他人が困るような事はしないさ」と苦笑いを浮かべ、マルコ・マカーリオ(aa0121hero001)は答える。しかし、心内では彼女の言葉に甘え、酒を堪能しようと計画を立てていた。

「飲むヨー! イッパイ飲むヨー!」
 酒飲みのイベントと言うのを聞き、キャス・ライジングサン(aa0306hero001)は宴が始まる前から大はしゃぎでしている。その隣では「私も飲むよー」と鴉守 暁(aa0306)も同意していた。そして、ふと暁は「カクテルとか作れるかな」と疑問を抱く。しかし、考えているのも勿体ないし、時間もあるからとカクテル用のお酒を購入して向かうことにした。

「お酒、飲み放題! 土佐の名物料理! にひひ……。美味しいお酒とお料理がわたしを呼んでるわ♪」
「給料日前は倹約生活だからね。酒は飲んでも飲まれるなというから無茶はしないように……と言っても無理なんだろうなぁ……」
 空港に到着し、土佐の地を踏んだ雨流 明霞(aa1611)は両手に頬を当て、宴の席を想像している。そして、その隣では苦笑いを浮かべながら、火神 征士郎(aa1611hero001)は注意する。しかし、うきうきと想像を膨らませている彼女を見て、溜息を零した。

「んー、豪快なお祭りですねぇ。救急車待機で一気飲み競争とか……。何と言いますか、ラテン気質??」
 明霞と征士郎と同様の便で到着した雪峰 楓(aa2427)は空港にこれでもかとアピールするように貼られたポスターを眺め、そう零す。相方の桜宮 飛鳥(aa2427hero001)は自分たちの参加するイベントのポスターを眺め、「ほお、酒か。それに畳に炬燵とは」と面白そうに呟いていた。

「行こうか」
「……真面目な顔で言っても、行くところはお酒飲みにですよね」
 土佐の地に降り立った海神 藍(aa2518)はきりりとした顔でそう言う。それに禮(aa2518hero001)は苦笑いを零した。
「あ、そう言えば、日本酒とアイスは合うらしいってどっかで聞いた気がするな」
「では、アイスを買ってから会場に行きますか」
「そうだな」
 美味しかったら他の人にも勧めようと多めに購入することを決め、会場に向かう途中でスーパーに寄った。

「お酒と言っちゃ、黙ってられねぇな」
「でも、あんまり飲みすぎちゃダメですよ」
「わーってるって」
 にやりと笑う『破壊神?』シリウス(aa2842hero001)。そんな彼女の相方である新星 魅流沙(aa2842)はさり気なく注意をするがシリウスは軽く返事を返した。それに魅流沙は「もう」と溜息を落とす。

「……商店街は」
「大将、こっちみてぇだぜ」
 駅を出て、会場である商店街に向かおうとした朔耶・F・月臣(aa3037)にポスターを見て、場所を確認した藤原 厚(aa3037hero001)が彼の手を引く。
「にしても、よくこんなイベント思いつくよなぁ」
「まぁ、元々、宴会好きの県民性みたいだからな」
 そう言って頷く朔耶。そう、よくある100万円もらったらどう使うかというもので県民性をみると高知県はそれを宴に散財するとまで言われているのだ。故にこのようなイベントを企画するのは時間の問題だったのかもしれない。

「さぁて、折角の機会だ、楽しませてもらうとするか!」
「うわぁ、こんな機嫌良さげに笑ってんの久々に見た……」
 肩を回し、気合を入れるガラナ=スネイク(aa3292)にそんなガラナに声を上げるリヴァイアサン(aa3292hero001)。
「お、ちょっと時間もあるし、魚市場覗いてみるか」
「ちょっと、商店街に向かわないの!?」
 元漁師としては覗いておきたいとさっさと魚市場に足を向けたガラナにリヴァイアサンは驚きの声を上げ、一度こそは魚市場と正反対の位置にある商店街の方向を見るものの「あー、もう!」 と叫ぶとガラナの後を追いかけた。

「酒好きとしては逃せんな」
 駅に到着し、うむと頷く東江 刀護(aa3503)。
「あ、お前は飲むなよ」
「そう言われなくても、私はお酒は飲めません」
 思い出したように刀護がそう言うと隣立って周りを眺めていた美少年に見える双樹 辰美(aa3503hero001)は力強く答えた。「そうか」と答えた刀護は「それでは行くぞ」と商店街に足を向けた。

「何もしないで酒が飲めるなんて最高じゃないか!」
 意気揚々と声を張り上げた男――鵜鬱鷹 武之(aa3506)。そんな相方の珍しい姿を見て、目をぱちりとさせるザフル・アル・ルゥルゥ(aa3506hero001)。
「武之がやる気を出してるなんて珍しいね」
「働かないで酒が飲めるんだぞ! これ以上最高なことはないだろ」
 声のトーンは上がっているものの姿勢は猫背のままである。そんな武之はさっさと行くぞとばかりに商店街へ早足で一直線に向かった。

●いざ、飲まん!
 商店街に到着するとすでに準備されており、商店街の中央には長机がくっつけて並べられ、その上には豪勢な土佐料理。そこには土佐の代名詞ともいえるカツオのたたきも鎮座してる。また、それだけでなく、道には畳が敷かれ、炬燵がずらりと配置されていた。その上にはコンロが乗っており、クジラ鍋がぐつぐつと温められている。
「これは凄いね」
「へぇ、随分と豪勢だな」
 料理の数々にいいねと頷きながら、奥様方の固まっている席に「お邪魔しまぁす」と言ってリュカは座り、ガルーは中央にある料理を興味津々に眺める。
「今日はお招きいただきありがとうなのです」
「……まだ始まってないのに」
 征四郎は隣に座ることになった現地の人にお礼を言い、オリヴィエは漂ってくる酒の匂いに溜息を吐いた。
「今日はお招きいただき、感謝する」
「本日はお招きいただき、ありがとうございます」
 その一方で主催者らしいマイクを持った男性にマルコと藍が同時に挨拶をする。それに互いに顔を見合わせ、「これはどうも」とこちらにも挨拶。
 そんな彼らの一方、マルコの相方アンジェリカは炬燵の上に置かれた鍋を覗き込んでいた。そして、「これはなに?」と隣にいた現地人に尋ね、説明をうける。また藍の相方禮はずらりと並べられている料理の隣に当然とばかりに置かれた山積み酒樽を見ていた。
「おい、これだけありゃ足りるか」
「足りなかったら、取りに行きゃいいさ」
「それもそうだな」
 運営らしい屈強な男たちの言葉に「これが、足りなくなることがあるのですか」と驚いていた。
「お嬢ちゃん、歳は幾つかな。流石に未成年は飲ませられなくてね」
「ダメとは言わせん。この通り、酒が飲める年齢だー」
 酒をいそいそと確保しているとそう声をかけてきた男に暁はどやっと身分証を提示する。それをみた男は「こりゃ、悪かったな。こいつぁ、内緒な」と頭を掻き謝るとちょっといい酒を彼女の前にとんと置いていった。
「見た目が幼くて悪かったなー」
 そう言った暁に男は「いやはや、ホントにすまんね。それにしても、若いのに年齢を重ねてる子が多いなぁ。あっちの子は人魚で二十歳なんだって言ってたよ」とちらりと禮に視線をやりつつ、零す。
「料理もイッパイデスネー。食べごたえアルネー」
 うきうきと始まるのを酒の前でキャスは待機している。その手には既に料理が乗せられた皿も準備済みである。
「もう、最っ高♪」
「明霞、まだ始まってすらいないよ」
「到着してるんだから、始まってるようなものよ」
 海の幸は当然のことながら、山の幸までずらりと並べられ、最初にどれを食べようかしらと明霞は料理を吟味する。その一方で征士郎は「こちらの席、よろしいですか」と明霞を目の端に入れつつ、席を確保していた。
「やはり、炬燵は落ち着くな。ただ、商店街、というのは少々珍しい気もするが」
 炬燵に入り、ほぅと息を吐く飛鳥。その隣に「勿論、私は飛鳥さんのお隣に」といって、ふふふと笑いながら楓が座る。
「なんだいなんだい、そっちのお人はお嬢さんのこれかい?」
「はい、私の大切な人なんです♪」
 目の前に座っていた老人が面白そうに小指を立ててきたのに対し、手のひらを頬に照れたようにそう言葉を返す。それに老人は「ありゃ、そいじゃあ、ワシはお邪魔かな」と笑った。ただ、隣で聞いていた飛鳥は慌てて「勘違いされるようなことを言うな」といい、老人の誤解を解こうとした。しかし、それに老人は「照らなさんな」と全く聞く耳を持ってもらえなかった。
――私は、果たして此処にきてよかったのでしょうか……。
 あっちでもこっちでも酒酒酒。始まる前に出来上がっているのではないだろうかと思える人々もおり、魅流沙は困惑していた。
「お嬢ちゃん、こっちに座りね」
 どうしようと突っ立っていると見かねたおばちゃん集団が彼女を自分たちが陣取っている場所に案内する。そこにはおばちゃんたちと話の花を咲かせているリュカの姿もあった。
「にぼし、オレは向こうに混ざってくるぜ」
 シリウスはそう言うとぴゃっと酒豪たちの集団に混ざっていった。
「ささ、立ってないで座って座って」
「あ、はい」
 リュカに促され、魅流沙はおばちゃんたちの席に腰を下ろした。
「辰美はジュースだぞ。間違っても酒は飲まぬようにな」
「わかっている」
 自分の酒を確保しつつ刀護は辰美の前にジュースの入ったコップを置く。そして、改めて注意を重ねた。
「俺は沖縄から来た東江 刀護だ。こっちは相棒の双樹 辰美」
「ちゃんと私の自己紹介もしてください」
「してるじゃねぇか」
 地元人はもとより、初めて会う人もいることもあって、刀護は自己紹介をした。それに不満を申し立てる辰美。しかし、やったという刀護は『沖縄』という言葉に反応した人々にあっという間に囲まれる。そのため、辰美は改めて自己紹介をした。
 そんな一方で既に酒を飲み始めたものもいる。
「タダ飯タダ酒……本当に最高だな。働かないって最高」
 至福だと酒を呷る武之にザフルは「武之、まだ始まってないよ」と声を上げるも武之は聞き耳を持たない。そんな彼女に「お嬢さん、明確な開始時間は決まってないから大丈夫だよ」という笑みを浮かべた男にザフルは周りを見て、「でも、まだ」というと、「美味しい食べ物とかどうかな」と彼女の意識をそちらに向けさせた。
 そんなことしているとどこからともなく「乾杯!」と声が上がり始める。
「厚、それはこちらです」
「へーい」
 商店街の中央に位置するあたりで、朔耶と厚は準備を進めていた。商店街の方に事情を軽く伏せつつ語り、机やまな板を借りる。そして、そんな様子を見ていた地元人たちは「なんだ、なんだ」と興味津々である。そこに挨拶を済ませた藍が合流した。
「実は手ぶらと言うの少々気が引けましたので。手土産にこちらをお持ちしました」
 そう言って、藍は左手にある幻想蝶からまるで手品の如くマグロを出して見せた。それに幻想蝶なんぞ滅多に見たこともない地元人たちはおぉーと歓声を上げる。
「解体はこちらで準備をしてくださった、月臣さんがしてくださいますので、ご安心を」
 そう彼を紹介し、朔耶に「あとはよろしくお願いします」と一言を告げ、禮の待つ席に下がった。頼まれた朔耶は着物をたすき上げ準備は万端。そして、藍と同様に幻想蝶から新身の小太刀を取り出す。
「それでは、解体をさせていただきます」
 いざ、とばかりにマグロに刀を入れていく。その隣に元漁師というガラナが面白そうに見つめていた。四分一を切り離すと朔耶は厚と共にその身を崩さぬように別の机に移す。
「こういうのは時間が勝負だからな」
 解体ショーを眺めていたガラナはそう言って、分けられた切り身に商店街の人から包丁を借り、刃を入れる。流石、元漁師と言うだけあってか、その手捌きは鮮やかなもの。解体ショーにも感嘆を上げるが、こちらにも上がる。
「いやぁ、これは美味い酒になりますな」
「ほんとほんと、いいもんが見られて、酒が美味い」
 二か所で鮮やかに繰り広げられるそれに美味い美味いと酒を進める酒豪たち。
「おい、こっち、刺身出来たぞ」
「ちょ、俺はあんたのあしすたんとじゃねぇ」
「いいから手伝えって」
「行ってきて大丈夫ですよ」
 ガラナに呼ばれ、厚は断るがガラナは早く来いと続け、それに朔耶が後押しをした。それに厚は溜息を吐きながら、ガラナの手伝いをする。そんな光景に周りでそれを見ていた地元人たちが「仲良くしろよー」などと面白そうに野次を飛ばす。
「これで、終いです」
 綺麗に四つのブロックと中骨に切り分け終わり、ふぅと息を吐きながら朔耶は小太刀を綺麗に拭き取った。そして、その隣でも「一丁上がりっ!」と声を上げて、刺身から炙りまで作っていたガラナが声を上げる。
「おい、兄ちゃんの腕前も見せてくれよ」
 そう言って、少し小さめのマグロを台車に乗せ、持ってきた男。それに彼の妻だろう女が「父ちゃん、それ、商品だよ!」と声を上げる。
「俺の店のもんだ。お前がとやかくいんじゃないさ。それにこのマグロ分くらい俺のへそくりで」
「アンタ、へそくりなんかしてんのかい!」
「あ、やべ」
「おい、魚屋、夫婦漫才はいらねぇぞ」
 そんな魚屋夫婦の会話にゲラゲラと笑う酔っ払いたち。
「まぁ、盛り上げるためにもう一丁」
 へそくりの件を洗いざらい吐かされた魚屋の旦那はそう言いながら、ガラナの机にどんとマグロを置いた。それにガラナはにやりと笑うと開始の声を上げることなく、マグロに包丁を素早く入れていく。
「うわぁ、凄い」
 流れるような早い動きに解体ショーを見つめていた魅流沙はそう言葉を零す。
「あら、お嬢ちゃん、食べてないじゃない。ほら、お食べなさい」
「え、あ、はい、ありがとうございます」
 ぽかんと見つめていた彼女に世話焼きおばちゃんたちが取ってきた料理を分ける。
「にぼしー、踊ろうぜー!」
「えぇええ、お、踊りですか?」
「おう、礼がてらによぉ」
「うぅ、やれと言えば、やれますけど」
 既に出来上がっているらしいシリウスにそう言われ、恥ずかしさで頬を染める魅流沙。それに「お、今度はこっちの可愛い姉ちゃんたちがなんかやってくれるみたいだぞ」と声が上がり、魅流沙は困惑する。それにシリウスは全く何とも思っていないようで「おうともよ」と自分の胸を叩いた。
 そして、引けなくなった魅流沙は「普通の服ですが、失礼いたします」と言って、シリウスと踊りだす。
「いやー、タダ飯、タダ酒プラスこういう見世物があるとか最高だな。あとはもう俺を養ってくれる人がいるといいな。特に働けと言わない人がいい」
 そして、毎日、これだといいのにと魅流沙たちの踊りを眺めそう零す武之に「ダメだから」と注意するのはザフルの役目だ。しかし、酒を飲むことに集中している武之は「ルゥルゥ……俺は今、酒を飲むのに忙しいからあっちで同年代っぽい子達と遊んで来るといい」そう言って、自分は酒を呷る。
「もう、武之はお酒飲んでばっかり! ルゥつまんない!」
 そう言って、彼が言ったように同年代そうな征四郎やオリヴィエの許へと向かった。丁度、彼女が向かった時に二人は遊具で何やら競い合っているようだったが。
「このような大きな魚を捌くとは……見事な腕前です」
 そんな一方では解体ショーを終えたガラナと朔耶の近くで辰美がメモを取っていた。
「ありがとよ」
 そう言って、ガラナは辰美に喰えとばかりに刺身を差し出し、辰美はありがたくと一切れ、頂く。
「お、俺にも食わせろよ」
「まだまだたっぷりありますから」
 美味しいとばかりに辰美が舌鼓を打っていると程よく酔った刀護が声をかけてくる。それにガラナ、厚と共にお疲れの乾杯をしていた朔耶が並べられたマグロの数々を指した。
「よし、禮、あれを試してみよう」
「そうですね。早速」
 酔っているのだろうか若干口数が多くなり、話に花を咲かせていた藍は思い出したように手を打ち、隣で初めての日本酒を呷っていた禮が素早く準備する。
「アイスに日本酒ってどんなんだろうな」
「折角、沢山買ったのですから、合ってほしいですね」
 小皿をもらい、アイスを少し移し、日本酒を注ぐ。最初は恐る恐るということもあり、酒1に対しアイス4の割合だ。それを二人して口にする。
「「美味しい」」
「中々、いけます」
「そうだね、多くしてもいけるかな」
 禮の言葉に藍は頷きつつ、今度は多めに酒を注ぐ。それに禮はどこか心配しそうにしつつ、美味しかった酒アイスを地元人や近くにいた楓達に勧めた。
「はい、飛鳥さん、あーん♪」
「ちょ、楓、私は一人でも食べれるぞ」
「ほら、いいですから、お口を開けてください」
 マグロの解体ショーを見つつ、「トロが高級食材……だと」と驚いている飛鳥に楓が禮からもらったアイスを一掬いして差し出す。それに飛鳥は大丈夫だと言うが、楓はにこりと微笑み、その手を引かない。
「なら、ワタシがもらってあげるヨー」
 そう言って、そのスプーンにくいついたのは現地の酒豪たちと飲み比べをしていたキャス。
「あらぁ」
 思わず、声を上げるものの楓は怒ることなく、「では、こちらもどうぞ」とクジラ肉を差し出す。
「お、兄ちゃん、飲んでるか?」
 そう言って、楓の肩に腕を回しながら、男が盃が渡される。それは周りで呑んでいる女性陣と少々大きさが異なっていた。
「ふむ、男女で量が違って……おい、私は女だぞ」
「あんた、兄ちゃんじゃなくて嬢ちゃんかい。まぁ、さっきから見てたらいい呑みっぷりだから大丈夫だろ」
「ま、まぁ、このくらい平気だが。それにしても、なんでこうも間違えられるのか」
 そう零しつつも、注がれた酒を呷る。
「……ぷはぁ~、あぁ、このお仕事後の一杯! もうこのために生きてるって感じよね!」
「中年サラリーマンじゃないんだから……。それにしても、この土地の海の幸は美味しいね」
 ダンと机にジョッキを置き、最高! という明霞に征士郎はくすくすと笑いながら、「これ、美味しいよ」と料理を勧める。
「うん、美味しい。マグロもいい感じ」
「そうだね。彼らの腕がよかったんだろうね」
 二人で料理にもマグロにも舌鼓を打ち、地元人たちとも話をする。
「そう言えば土佐にはリョウマと言う有名人が居るらしいが詳しくは知らないんだ。一体どういった人物なんだ?」
 そうマルコが酒の肴にと尋ねれば、きらりと地元人たちの目が光る。
「征四郎しってるのです。剣が強いけど、銃も使った人なのです。新しい発想と、好奇心。征四郎は好きですよ」
 そこに龍馬を知るならココがいいなどと名所を教えてくれる人たちに混ざり、ひょこりと征四郎が顔覗かせた。
「名言として『おのおの、その志のままに生きよ』という言葉もあるのです」
「その言葉もいいね。本当に器の大きい人だ。それでいて人間味のある人だ」
「あれだろ、『日本の夜明けは近いぜよ』っていった人だろ」
 マルコの言葉に近くにいたエージェントたちも酒を片手に集まってきた。そして、地元人たちを交えつつ、坂本龍馬とはいかなる人物だったのかとそれを肴に酒を呷り、料理を口にする。
「さぁ、どんどん作っていくよー」
 坂本龍馬で一部が盛り上がっている中、こちらも盛り上がっていた。
 暁が未成年者に気分だけでもと果物系のジュースを混ぜ合わせ、ジュースを作っていく。
「まずはオレンジ。次にレモンにパインを混ぜて、出来上がったはシンデレラ」
 「混ぜるだけでも美味しいから覚えて帰るといいよー」と子供から酔い覚ましを求める酔っ払いまで飲み物を提供していく。それに子供たちは「おいしー」とにぱーと笑みを浮かべ、彼女におかわりを強請った。
「やだーリュカちゃん顔色ひとつも変わってない!! お酒の方がやり甲斐無いって泣いちゃうわよ……!」
 地元人と酒で盛り上がっていたガルーはオリヴィエにちょっかいをかけ、仕返しとばかりにおしぼりを顔に喰らった後、リュカの許に絡みに来ていた。しかし、顔色の変わっていないリュカを見て、「やだ、この人」と声を上げるガルー。
「はーい、ちゅーもく! 今から、ガルーちゃんが一気飲みをしまーす」
「ちょ、やだ、俺様、やるって言ってない」
 手を挙げ、そう宣言したリュカにガルーはそう言いつつも「やってやるけど」と一気飲みをする。そして、次はリュカの番だと盃を渡した。
「お、白髪の兄ちゃんもやんのか? 大丈夫か」
「だいじょーぶ、こう見えて結構飲んでるんだよ」
 人々の心配を他所にぐいと酒を呷ったリュカにおぉと歓声が上がった。
「待って、俺様の時、歓声無かったんだけど」
 そうガルーが声を上げている一方で、空吸を渡された朔耶は只管注がれる酒を呷っていた。そんな彼の背中にはべったりと既に潰れかけた厚がくっついている。
「なぁ、あの小太刀の銘、鮪切なんてのはどうだろうか」
「その小太刀の銘はやめてさしあげなさい。紹介する時に『酒の席で鮪の解体に使われたから鮪切』なんて、貴方だったら誇れますか?」
「あ……確かに俺だったらヤだわそんな由来。正直すまんかった」
 そんな会話を聞いていた一部の女性陣の脳裏にとある刀の擬人化ゲームの「青銅の燭台だって切れるんだよ。……うーん、やっぱり格好つかないな」というセリフが過るのだった。そして、朔耶の言葉に「確かにマグロは格好つかない」とうんうんと酒を呷る。
「んだリヴ、お前食ってばっかじゃねぇか。太るぞ」
「余計なお世話よ! 飲んだくれてるガラナに言われたくないし! それにアタシの何処が太ってるのよ!」
「チチとケツ」
「セクハラしに来たのアンタは!?」
 料理を頬張っていたリヴァイアサンに酒を呷りつつ、ガラナが茶々を入れていく。それにリヴァイアサンは声を荒げた。
「食ってるだけなら酌しろよ、酌。こうエロイ感じに」
「顔面に酒ぶっかけるわよ!?」
「ぶっかけるってエロイな」
「ぶん殴るわよ!」
「ゴフ……! おま……殴りながら言うか……?」
「だから宣言したじゃない」
 まるで夫婦漫才のようなやり取りをし、自分よりも背の高いガラナに腹パンを決めるリヴァイアサン。そんな二人に「お、喧嘩か?」 と言う人がいたり「姉ちゃんやっちゃえ」というような野次も飛んできた。
「もう、変な目立ち方しちゃったじゃない!」
「いや、自業自得だろ」
 腹を抑えつつ、そう言ったガラナに「アンタのせいだから」と言うとまた料理を頬張り始めた。
 そんな夫婦漫才がある中、こちらもまた少々特殊なことが起きていた。
「うぅ~……あつい~~~。ちょっと位大丈夫よね」
 酒が進み、御猪口でジャグリングという一発芸を披露していた明霞だったが、運動したためか、酔いが回ったよう。そして、上着を脱ぎ、胸元に風を送るために少し開けると、パタパタと手で扇ぐ。それに一部の男たちはごくりと生唾を飲み、妻がいる男たちは思いっきり、頭を叩かれていた。
「明霞、みっともないから止めなよ……。聞かないと、明日からお弁当のおかず一品減らーー」
「ごめんなさい! ビシッとします!」
 そんな彼女の姿に、はぁ、と溜息を吐いた征士郎が声をかけた。どうやら、お弁当を作ってくれているのが征士郎らしく、彼女は減らされたくないとばかりにピシッと服装を整える。
「そんな、雨流にこんなのあげちゃうよー」
「何、これ? カクテル」
「ジンジャエールとライムシロップで作ったモスコミュールだよー」
 ついでにノンアルだからと言って暁に差し出されたジュースを面白いと言って明霞は飲む。
 そして、宴は盛り上がり、マルコはアンジェリカの父親なのか聞かれたり、積極的に手伝いをしていたオリヴィエはガルーに寄りかかり寝てしまったり、キャスと朔耶、リュカが飲み比べを開始て、周りの人々を潰していったりなど様々なことがあった。

●宴のあとは……
「立つ鳥跡を濁さず、ですね」
 刀護と辰美はそう言いながら、散らかった瓶などを運ぶ。また、オリヴィエや征四郎もお手伝いをしていた。その一方で、酒を飲みすぎた人は「頭が痛い」と唸っているものも多々。
「あ~……頭痛ぇ……流石に飲み過ぎたなこりゃ。ついでに腹も痛ぇ」
「どっちも完全に自業自得じゃないのよ」
「ま、楽しめたからいいか」
 ガラナも当然、多く飲んでいたこともあり、頭を押えていた。それに呆れるリヴァイアサン。しかし、楽しかったからいいと頭痛に耐えつつ、片づけを行う。
「まだ、終わりたくない」
「武之、もう、終わったの! ほら、片づけするよ!」
「いやだ、動きたくない」
 ごそごそ片付ける中でごろりと寝転がる武之をザフルは叱咤する。しかし、彼にはどうも効果がないようだ。
「とりあえず、ここは邪魔になるから移動するよ!」
 寝転がり、酒瓶を抱えた武之をうんしょうんしょと邪魔にならない所に引き摺って行った。
「あ、あの、今日の様子とかSNSに載せてもいいでしょうか」
 お礼という形でこの祭りを広げたいという魅流沙の言葉に主催者は「ぜひ、お願いします」と目を輝かせていた。それに魅流沙は「はい」ととても可愛らしい笑顔で頷く。その後、その男が恋の病で苦しむのだが、これは別の話。
「ほら、ガルーちゃん、タクシー役に立ったよ」
「あー、ホントだな」
 片付けも終わり、土佐の人達に挨拶を済ませ、リュカはガルーにどや顔を披露する。その一方で、征四郎とオリヴィエは「次こそは征四郎が勝つのです」「それはこっちのセリフだ」という会話をしていた。どうやら、遊具戦は引き分けに終わったようだ。
「……頭が痛いです」
「英雄も二日酔いになるのかい? 興味深いな」
「なんで平気そうなんですか……」
 わたし以上に呑んでましたよねという禮に藍は笑いながら「それほど呑んでないよ」と言った。ただ、そう言うものの結構な量を開けているのに本人は気づいていない。
 そして、エージェントがそれぞれの帰路につく中、一人、帰りなくないと地面に転がっていたものがいた。
「ほら、帰るったら帰るよ!」
「誰か俺を養ってくれー!」
 その言葉は誰もいなくなった商店街に響くのだった。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 酒豪
    雨流 明霞aa1611
  • エージェント
    朔耶・F・月臣aa3037
  • 海上戦士
    ガラナ=スネイクaa3292

重体一覧

参加者

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 仄かに咲く『桂花』
    オリヴィエ・オドランaa0068hero001
    英雄|13才|男性|ジャ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 優しき『毒』
    ガルー・A・Aaa0076hero001
    英雄|33才|男性|バト
  • 希望を胸に
    アンジェリカ・カノーヴァaa0121
    人間|11才|女性|命中
  • コンメディア・デラルテ
    マルコ・マカーリオaa0121hero001
    英雄|38才|男性|ドレ
  • ようへいだもの
    鴉守 暁aa0306
    人間|14才|女性|命中
  • 無音の撹乱者
    キャス・ライジングサンaa0306hero001
    英雄|20才|女性|ジャ
  • 酒豪
    雨流 明霞aa1611
    人間|20才|女性|回避
  • エージェント
    火神 征士郎aa1611hero001
    英雄|18才|男性|ブレ
  • プロの変態
    雪峰 楓aa2427
    人間|24才|女性|攻撃
  • イロコイ朴念仁※
    桜宮 飛鳥aa2427hero001
    英雄|26才|女性|シャド
  • マーメイドナイト
    海神 藍aa2518
    人間|22才|男性|防御
  • 白い渚のローレライ
    aa2518hero001
    英雄|11才|女性|ソフィ
  • 魅惑の踊り子
    新星 魅流沙aa2842
    人間|20才|女性|生命
  • 疾風迅雷
    『破壊神?』シリウスaa2842hero001
    英雄|21才|女性|ソフィ
  • エージェント
    朔耶・F・月臣aa3037
    人間|27才|男性|命中
  • エージェント
    藤原 厚aa3037hero001
    英雄|22才|男性|ジャ
  • 海上戦士
    ガラナ=スネイクaa3292
    機械|25才|男性|攻撃
  • 荒波少女
    リヴァイアサンaa3292hero001
    英雄|17才|女性|ドレ
  • その背に【暁】を刻みて
    東江 刀護aa3503
    機械|29才|男性|攻撃
  • 優しい剣士
    双樹 辰美aa3503hero001
    英雄|17才|女性|ブレ
  • 駄菓子
    鵜鬱鷹 武之aa3506
    獣人|36才|男性|回避
  • 名を持つ者
    ザフル・アル・ルゥルゥaa3506hero001
    英雄|12才|女性|シャド
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