本部

迷子を捜せ

saki

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
7人 / 5~10人
英雄
7人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/01/26 18:35

掲示板

オープニング

●小さな冒険
 昨今は何に対しても図鑑というものがある。植物や動物に車などといったものから始まり、勿論従魔に対しても図鑑はある。
 そんな図鑑が大好きな男の子は、今日も今日とて図鑑を眺めていた。そして昨日見たテレビ――能力者特集で従魔と戦う姿を見て、本物の従魔を見てみたくなったのだ。
「よしっ」
 そう言って、男の子は立ち上がった。
 母親に見つかれば駄目だと言われるのは分かっている。だからこそ、母親の様子を伺ってタイミングを見計らう。
 図鑑とお菓子を入れたお気に入りのリュックを背負うと、母親に気が付かれないようにそっと家を抜け出した。

●ご両親の話にて
「息子を見つけてください」
 母親は涙ながらにそう言った。父親がその肩をそっと支えている。
「男の子――龍也君5歳は昨日から姿が見えなくなったらしい」と、悲観に暮れる両親に代わり職員が説明を始めた。
「気が付いたのは昨日の夕方。母親が料理をしている間にいなくなったと推定される。お気に入りの図鑑とリュック、お菓子がなくなっていることから、誘拐の線は殆ど考えられない。自分から出て行ったと考えるのが妥当だ。
 無くなった図鑑は従魔の図鑑。その前日に能力者の特集を見ていることから、従魔を見に行ったと推測できる。
 いなくなったことに気が付き、警察並びに地域の方々が捜索するが見つからず、だが、森の近くで龍也君を見かけたという証言があった為、森に入り込んだ可能性が極めて高い。周囲の捜索は引き続き警察や地域の方々が行ってくれるようなので、諸君らには森の中を捜索し、龍也君の保護を任せたい」
「どうか、息子のことをよろしくお願いします」

解説

●目的
→迷子を発見し、無事に連れ帰ること

●補足
→迷子を連れ帰ることが目的なので、敵を全て倒す必要はありません
→デスラットやホーミングアントなどの弱めの従魔が生息しています。
 しかし、いなくなったのは5歳の子供なので抵抗手段がありません。早めに保護しましょう
→子供の足なので遠くまでは行けませんが、小柄なので、何処かに身を隠している場合もあります。
 子供目線で捜してみましょう
→可能でしたら、一人で危険なことをしないように言い包めましょう。
 もしくは、格好いい姿を見せて、大きくなるまでこういうことをしてはいけないという注意を促しましょう。

リプレイ

●森の前にて
「では、手筈通り、班に分かれての捜索ということで良いですね?」
 皆月 若葉(aa0778)はメンバーを見回してそう言った。

 班分け
1班→赤城 龍哉(aa0090)&ヴァルトラウテ(aa0090hero001)
   晴海 嘉久也(aa0780)&エスティア ヘレスティス(aa0780hero001)
2班→スラヴェナ・カフカ(aa0332)&レティシア・オラーノ(aa0332hero001)
   鹿中 靖一郎(aa0841)&馮 翠梅(aa0841hero001)
3班→皆月 若葉&ラドシアス(aa0778hero001)
   カトレヤ シェーン(aa0218)&王 紅花(aa0218hero001)
   鬼灯 佐千子(aa2526)&リタ(aa2526hero001)

 班には其々職員から入手した地図が行き渡っている。それから、木を傷つけずに捜索の目印にする為の紐やリボン等の括りつけられるもの、そして連絡用のスマホや通信機も班員の誰かが必ず持っている。その他にも使用するものは個々で用立て、準備は完璧だ。

 ご両親の話を聞いた後、何処か懐かしむ目をする者に子供を心配するものと、反応は様々であった。前者は自分にもどこか覚えがあるということなのだろう。

「餓鬼の頃の好奇心ってのは侮れねぇよなぁ」
 しみじみと呟いた龍哉に『あら、覚えがありまして?』とヴァルトラウテはからかうような視線を向ける。
 どうやら龍哉は完璧に前者のタイプのようだ。
 その視線を受けながら、腕を組み「思い立ったら即行動とかな。まぁ心当たりはあるさ」とぶっきらぼうに言葉を返す龍哉は昔を懐かしむように目を細めた。

 その横では、嘉久也が何処か遠い目をしながら「リンカーが迷子を捜す為に態々山狩りせねばならない世の中は…」と呟いた。それを聞き、エスティアも『これから先、普通になるのかもしれないとは言っても理不尽な物です』と同意した。
 そして、「ただ、此処には人間に変身・憑依する従魔が居るとは聞いていないので油断は出来ないとは言っても一安心ですかね」という呟きには『…何せ、以前それで惨事になりましたからね』と同様に遠い目をした。

 話を聞き、スラヴェナは「元気な子だけど親に心配かけるような事をしちゃったらダメだよね。涙を流してまで心配してくれてるんだもん…素晴らしい両親だよ。彼らのためにも早く無事に龍也くんを保護しなくちゃね」と言葉にはしていたが、そこには羨望のようなものが滲んでいた。そして、レティシアは『能力者に憧れる気持ちは当然として、図鑑を調べる情報収集能力、即座に見に行こうとする決断力、それを実際に行動に移す行動力は侮れませんわね! 惜しむらくは自己把握と状況判断が出来ていない事ですかしらね』と言いつつも、『…まぁ、将来の同僚のためにも面倒くさいですがとっとと回収しましょうか』と付け足す辺り、素直じゃないというかツンデレなのかという感じである。

 どうするのかと問うような視線を翠梅から受け、靖一郎は「そうですねえ…。龍也君はやんちゃなようですねえ。従魔見たさとは…」と苦笑した。
 龍也のことを保護者目線で心配している翠梅は、『子供らしくて良いと思う。じゃが、子供が従魔の出る森に一人で行くのは心配じゃ。早く見つけてやらないと』と呟く。
 そんな彼女を慰めるように、靖一郎は「大丈夫だ。だから僕たちでご両親の元へ帰してあげよう」と言った。

『従魔を見にひとりで森に行くとはな…』と呟いたラドシアスに、「…まぁ、身に覚えがあるのであんま強く言えないけど」と若葉は苦笑した。
 ラドシアスの『…お前もやった事があるのか』と呆れたような驚いた言葉に、「従魔を倒しにちょっとそこまで。結局、父さん達に助けられてめちゃくちゃ怒られたんだよね」と若葉は肩を竦めた。
『無謀にも程があるな…。コイツもさっさと見つけてきちんと注意してやらんとな』

『好奇心あふれる豪気な子のようじゃのう』と、ある意味子供に対しては褒め言葉のような、そうでもないような紅花の言葉に、「おまえみたいだな」とカトレヤは言う。
 ノリが良いと言えばノリが良いが、豪胆と言えば豪胆な性質の紅花とある意味似ているとも言えるだろう。
 だが、龍也のことを心配していないというわけではない。『早く母様の元に帰してやるのじゃ』という紅花にカトレヤはそうだなと頷く。
「子供の好奇心を摘むような事はしたくないが、善し悪しはしっかり教えてやらなきゃな」

 真面目な性格をしているリタは、『元気なのはいいが、元気すぎるのは考え物だな』とクールに言った。
 それを宥めるように「やんちゃ坊主もいいところよね。さっさと見つけて家に帰しましょ?」と、佐千子は言う。
「怪我でもさせたら親御さんに顔向けができないし、まずは龍也君の身の安全を第一に考えないと」

 何はともあれ、迷子の捜索隊の始動である。

●森の中にて
・1班
 龍也の捜索が優先の為、共鳴はしない。
 従魔の警戒もしつつ、所々でかがんで周囲を捜している龍哉は「捜すための眼は多い方が良いが、どう痕跡を辿ったもんか」と眉根を寄せた。
『土地勘の無い場所で危ないと判っている物を見るなら龍哉はどうしますの?』というヴァルトラウテの言葉に、考え、「身を隠せて、バレても周囲に紛れて逃げられる場所を探す」と言った。
 子供の身だ。紛れられるとすると、狭い場所というイメージがある。
『昨晩からという事は、どこか潜り込める場所で寝ている可能性もありますわね』

 嘉久也は地図や連絡を担当し、エスティアは捜索に専念する。
 子供がこの森に入った、図鑑を持って行った等という少ない手掛かりしかない為、虱潰しに捜していく。
 子供とは大人が思いもしない場所に隠れていることもよくあることで、面倒な所に隠れていたり、落下していたりして大変な事態に陥っていることも可能性としては十分にある。
 龍也の名前を呼びながら探すエスティアに、紐を木に結びながら「何かありそうですか?」と尋ねると彼女は首を振った。
『まだ何も。けど、諦めずに続けます』

・2班
「目撃情報の場所に近い藪が浅く子供でも入り易い所を探し、そこから始めるとしましょうか」という靖一郎の言葉に、そこを重点的に捜していく。
 従魔が出るということも考慮し、スラヴェナは既に共鳴を済ませていた。
 今回参加しているメンバーの中では、スラヴェナが一番小さい。つまり、一番龍也に近い目線を持っているということだ。
 子供の目線で穴や巣がありそうな場所を重点的に捜していく。図鑑を持って出掛けている以上、デスラットやホーミングアントの居場所などを自分なりに探している可能性が高いからだ。
 なるべく声をかけて捜している為、「龍也君、いるなら返事をして」というスラヴェナの声や「龍也君、いますか?」という靖一郎の声、『母様も心配しておるぞ』という翠梅の声が響く。
 靖一郎は自分が子どもだったらという視点の元、下生えを中心に捜し、等間隔で目印の紐を木に結び付ける。
 翠梅はフェアリーテイルの光の玉を操って周囲を照らし、低い樹の上を中心に捜していく。
 心配の色が濃くなってきた翠梅に、靖一郎は「大丈夫だよ。見つかるよ」と声をかけた後、スラヴェナに「そちらは何か手がかりがありましたか?」と尋ねた。

・3班
 若葉はモアキーンを発動させた。龍也が何処にいても見つけられるように、感覚を研ぎ澄ませたのである。
 共鳴はしない。少しでも捜索の目を減らさない為である。
 足跡や痕跡には特に注意をし、従魔が好みそうな川べりや茂みでは特に目を凝らした。
「子どもの視線だと見え方が全然違うから…抜け道とか見落とさないようにしないとね」とラドシアスにも注意を促し、適宜木にテープを巻いて目印を付けるのを忘れない。
『子供の目線など、……考える方が困難だ』
 溜息を吐いたラドシアスに、「ほら、かがんだらそれが子供目線だよ」と若葉は苦笑した。

『龍也君や~い』と、紅花の声が響く。
 最後に目撃情報があった所を初めに捜し、その後に侵入口と思われる場所を捜して行く。
 5歳の子供が大人と同じように草木を掻き分けて進んでいるとは考え難い。大人にとってはどうということがないことでも、子供からすると大変なことだからだ。
 カトレヤは紅花に「子供って、心細い時、暗くて狭い所が落ち着いたりすんだよな」と声をかけ、獣道や道なりになっている場所に足跡の痕跡を探す以外にも、穴のような所がないか探すように提案する。
「お菓子を持って出た事から、付近にはお菓子の食べかすや包み紙等が落ちてるかもしれないぜ」

 龍也に気が付いてもらえるよう、佐千子とリタは龍也の名前を呼びながら捜す。
 特に、小さな子供の登れそうな木、潜り込めそうな窪みや藪を念入りに確認していく。
「なかなか見つかりませんね。子供の足ならそう遠くまでは行けないと思いますが」
『確かにそうだが、子供だからこそ、その小さな身体を隠されるとなかなか見つけられないものだ』
 地図を見るに、半日もあれば回れる距離である。だが、そこはあくまでも大人の足だったらという注釈がつく。5歳の子供の足であれば、行ける範囲などたかが知れている。
 佐千子は地図を見ながら、「……と、なると行けてもせいぜいこの辺りまでという感じでしょうか」と当たりをつけた。

●発見
 気が付いたら三つの班は何時の間にか集合していた。捜しながらここに集まってしまったようだ。
 子供の足で行けそうな範囲を限定し、捜索し、三方から攻めていったらここに辿りついたというわけだ。
「龍也を捜してみたが、全員ここに集合ってことは、この辺りに居る可能性が高いってことか?」
 龍哉の言葉は尤もである。
「取り敢えず、この辺りをもっと捜してみましょう」
 意気込んだスラヴェナの言葉に、注意深く周囲を捜す。

「これは、お菓子の包み紙か?」
 カトレヤが拾ったのは、某有名製菓が作る飴の包み紙である。街中ではあるまいし、普通に考えるのならこんなものが落ちているわけがない。となると……
「この辺りに居る、もしくはこの辺りを歩いた可能性が高いわけですね」と、若葉は声を上げた。
「探せばもう少し手がかりがあるかもしれませんね」と嘉久也が言葉を引き継いだ。

 ここにきて初めての手がかりに、捜す側も自然と力が入るものだ。
 靖一郎が「みなさん」と声をかけた。
「ここに足跡がありますよ」
 土が柔らかかったのだろう。地面に足跡が残っている。明らかに子供サイズの小さな靴の跡だ。
 その足跡を辿っていくと、一本の大きな木に辿り着いた。
 根本を覗きこんでいた佐千子が、「ここ、隙間がありますよ」と声をかけた。
 地面の土が抉れ、根本に空間が出来ているようだ。そう、大人では手を入れることがやっとだが、例えば小さな子供だったら身体を丸めれば入り込めるかのような空間がそこにはあった。
 翠梅はフェアリーテイルの光の玉を操り、その空間を照らす。すると、何かが動いたように見えた。
「龍也君」と、其々が名前を呼ぶ。
 微かな息遣いが聞こえる。
 だれ……と、小さな声が聞こえた。
 一番年齢の近いスラヴェナが優しい声音で、「お母さんに頼まれたの。一緒に帰ろう」と声をかけた。
 すると、「おかぁさんが?」と舌足らずな応えがあった。
 奥の方でもぞもぞと動いている感じがあり、穴から男の子が出てきた。
 衣服や肌は汚れているようだが、怪我をしているようには見えない。それどころか、目をこすっているあたり、この中で眠っていたようである。
 真っ先に翠梅が龍也にぎゅっと抱きついた。
『靖一郎! おぬしはきりきり、見つかったことを連絡するがよいっ』と言ったかと思うと、一転し、慈愛に満ちた笑顔で『無事で何よりじゃった。よう頑張ったのう』と龍也の顔を覗き込んだ。
 不意に、大きな音が鳴り響いた。
 腹の虫の音だ。
 龍也から発せられた音のようで、「……おなかすいた」と半べそで呟いた。
『お腹が空きまして?』とヴァルトラウテは龍也にチョコを渡す。すると、一転して笑顔で受け取った。
「このチョコも食べる? 喉は渇いていない? ……全く。1人でこんな所に……寒かったでしょ、ホラ」『よく頑張った。もう大丈夫だ』と、佐千子とリタも龍也に問いかけた。
 チョコと飲み物を貰い、龍也はご満悦である。
「ごはんたべるまえにうちをでたから、おなかすいておかしたべちゃったの」
 しょんぼりとした龍也に『一人で勝手にこんな所まで…従魔に見つかったらどうするつもりだ』とラドシアスが言い放ち、龍也はその目に涙を浮かべた。今にも零れ落ちそうである。
 それを慌てて若葉が「一人で森に来るなんて龍也くんは勇気があるね。…でも、龍也くんのお母さん心配で泣いていたよ。心配かけるのはよくないよね? さ、早く帰って安心させてあげよう」とフォローする。
 すると、龍也は幼いながらも悪いというよりは、いけないことをした自覚があるのか「……うん」と頷いた。
「怪我はしていない?」『大丈夫ですの?』とスラヴェナとレティシアは声をかけ、小さな手に飴玉を握らせた。
 子供は現金なもので、たちまち笑顔で「うん」と頷いた。
 防寒具を羽織らせ、男女差別ではないがここは男が背負うべきだと靖一郎が龍也を背負った。袖の部分を前へと回して結うことで、落下も防げて安定した状態で背負うことができた。
「では、ご両親も心配していらっしゃるでしょうし、早めに戻りましょう」と嘉久也が声をかけた。
 その視線の先には、ホーミングアントの姿がある。
 お菓子の匂いに釣られてきたのだろう。だが、こちらの姿を窺っているだけで近づいてくる様子はない。しかし、長いは無用だ。これ以上従魔が集まってきたら、厄介だ。
 早めにここを立ち去ることに誰も異論はない。『帰る途中、結んだ紐も回収していきましょう』と抜け目なくエスティアはそう言った。


●帰り道
 背負われている龍也の顔を覗き込みながら、龍哉は「従魔は見られたか?」と聞いた。
 その言葉にうんと龍也は頷く。
「そうか。実際に見てどうだった?」
 するとびくっとした後、「……こわかった」と消え入る声で龍也は告げた。
「テレビとかずかんでみるのとちがって、すごくこわかった。はじめはみつけたときうれしかったけど、ちかくまでいったらかみついてこようとして、いっぱいにげたの。そしたらおなかもへって、おかしたべたあとにねちゃったの」
 しゅんとした龍也に、「判ってるならいい。あんまし無茶すんじゃねぇぞ」と頭をわしゃわしゃ撫でた。
 んっと小さく頷いたのを見て、龍哉は「よしっ」と言った。
 その後、様子を伺うように「おかぁさん、おこっていた?」と龍也が尋ねた。
 それにはカトレヤが「怒っているというよりは、心配していたぜ」と答えた。
「君が両親に行った様に、君の両親が君に黙って何処かに行ってしまったら君はどう感じる?」
 少し考えた後に小さな声で「やだ」と呟いた。
「だろう? 君が嫌な事や心配するような事は、他の皆もそう感じるんだぜ」
『人が嫌がる事はしちゃいかんのじゃ』
 カトレヤと紅花の言葉に「たつや、わるいこ?」「おかぁさん、たつやのこときらいになった?」と涙を浮かべるが、『何が悪いのかわかるなら、謝ってくるのじゃ』と言われ、龍也は頷いた。

●森の出口にて
 連絡を受けて待っていたのだろう。戻ってきた面々を見て、「龍也!」と母親が涙を流しながら近づいてきた。
「無事? 怪我はない? 大丈夫?」
 矢次に心配だと言わんばかりの言葉をかけられる。
 靖一郎が龍也を下すと、翠梅はしゃがんで龍也と視線を合わせた。
「のう、坊。おぬしの気持ちはよう解る。解るがの、母様の顔を見たかえ? 今の坊の力ではあんな顔をさせてしまうのじゃ…。だからの、これから一杯勉強して力をつけるのまで少し我慢じゃ。坊なら出来ると信じておるぞ。あれだけの冒険が出来たのじゃから…」
 諭すような言葉に、龍也は涙を流しながら「ごめんなさい」と大きな声で叫んだ。
 そして「おかぁさん」と母親の元へ走って行き、抱きついた。それを母親も抱きしめ、「良かった」と悲痛の声が耳に届いた。
「本当に有難うございます。何と、お礼を言ったら良いか……」
 父親も余程心配していたようで、礼を告げる声が震えていた。
 母親に抱きついて泣いて落ち着いたのか、母親に連れられて龍也がみんなの前にやってきた。
「本当に有難うございます」と、母親は深く頭を下げた後龍也の背を押した。「ほら、龍也も」と背中を押される。
「おにぃちゃん、おねぇちゃん、ありがとうございました」
 鼻声で告げられた言葉に、一同に笑みが浮かんだ。
「もう、こんなことしたら駄目だぜ。解っているな」『大丈夫ですわ。危ないことをしたら駄目ってもう解っていますよね』と龍哉とヴァルトラウテ。
「一人で従魔を見に行くのも、勝手にいなくなることもいけないことだとわかりましたね?」『本物が見たいのも解りますが、もうこんなことをしてはいけませんよ』と嘉久也とエスティア。
「お母さんとお父さんを悲しませちゃ駄目だよ」『こういうのは、大きくなって能力者になってやれば良いのですわ』とスラヴェナとレティシア。
「探検や冒険はもっと大きくなってからしましょうね」『坊、これからは母様を泣かせないようにするのじゃぞ』と靖一郎と翠梅。
「龍也くんは勇気があるけれど、その勇気を間違ったら駄目だよ」『……これからは危険なことをするな』と若葉とラドシアス。
「俺からはまぁ、さっき言ったら言うことはないが、両親に心配をかけさせないようにするんだぞ」『おぬしは大きくなってからいっぱい冒険すれば良いのじゃ。その為にも、いっぱい食べていっぱい寝て、いっぱい遊ぶのじゃぞ』とカトレヤと紅花。
「何がいけないことなのかは解ったでしょう? それじゃあ、これからはそういうことはしないようにしようね」『好奇心は良いことだ。だが、周りに迷惑や心配はかけさせないようにするんだ』と佐千子とリタ。
 其々に言葉を貰い、龍也は「ありがとう」「ごめんなさい」ではなく、うんと頷いた。今日初めて見せたとても良い笑顔で頷いたのだった。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
  • エンプレス・ルージュ
    カトレヤ シェーンaa0218
  • エージェント
    鹿中 靖一郎aa0841

重体一覧

参加者

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • エンプレス・ルージュ
    カトレヤ シェーンaa0218
    機械|27才|女性|生命
  • 暁光の鷹
    王 紅花aa0218hero001
    英雄|27才|女性|バト
  • エージェント
    スラヴェナ・カフカaa0332
    人間|12才|女性|攻撃
  • エージェント
    レティシア・オラーノaa0332hero001
    英雄|16才|女性|ソフィ
  • 共に歩みだす
    皆月 若葉aa0778
    人間|20才|男性|命中
  • 温もりはそばに
    ラドシアス・ル・アヴィシニアaa0778hero001
    英雄|24才|男性|ジャ
  • リベレーター
    晴海 嘉久也aa0780
    機械|25才|男性|命中
  • リベレーター
    エスティア ヘレスティスaa0780hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • エージェント
    鹿中 靖一郎aa0841
    人間|29才|男性|防御
  • エージェント
    馮 翠梅aa0841hero001
    英雄|20才|女性|ソフィ
  • 対ヴィラン兵器
    鬼灯 佐千子aa2526
    機械|21才|女性|防御
  • 危険物取扱責任者
    リタaa2526hero001
    英雄|22才|女性|ジャ
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