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【甘想】連動シナリオ

【甘想】チョコレート工場は不思議の国?

鳴海

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
6人 / 0~8人
報酬
少なめ
相談期間
5日
完成日
2016/01/28 02:20

掲示板

オープニング

 グロリア社製チョコレート菓子を沢山食べて応募しよう。
 抽選に当たった八名の方はグロリア社のチョコレート工場を見学できます。
 霊力を使った最新のチョコレート作成技術はまるで魔法のよう。
 さながら工場の中は魔法とチョコの国。
 そんなふれこみでグロリア社製チョコレート菓子が飛ぶように売れたのは。
 年末のころ。人々が仕事疲れと、忘年会の酒気と。これが終われば休みだという、ランナーズハイで。世界全体がカオスとなっているころだった。
 疲れた人々はまるで肉にたかる亡者のようにチョコレートを食い漁り、あっという間にチョコレートは完売のあらし。
 その戦争に参加したのはあなた方も同じで、あなたがたは見事その抽選に当たり。
 工場見学券を手に入れたのだった。
 さっそく工場見学に向かうリンカーたち。
「来てくれてありがとう、別段、歌や踊りの歓迎はないけれど、最後にチョコレートを配るから楽しんでいってね」
 
 最新の霊力を原動力としたチョコレート製造機器は、それはそれは不思議なものでした。
 息が凍るほどの寒いフロアではチョコレートの雪が降りますし。
 巨大なロボットが蒸気を吹き出しながら、チョコレート生地をこねています。
 千を超える型が磁力と霊力の力で乱舞しながら出たり入ったりする部屋もありましたし。
 超高温のオーブンもありました。
 それを遙華がひとしきり紹介していきます。

『フローズンタワー』
 高さ300Mの長方形の塔の中にあり。地上はマイナス5℃程度、上空の方は温度がマイナス40℃程度に保たれています。その高さまで。チョコレート射出機でチョコレートをうちだし、細かい霧状になったチョコレートが、さながら雪のようになって振ってきます。
 それを小さなドローンが吸い込みラッピングルームに運びます。

『ミック君キッチン』
 原材料を適量混ぜ指定のフロアまで運ぶ、その工程を全てがロボットが行っています。そしてロボットが一挙に押し込まれているフロアがここ。
 1キロメートル四方の広大なキッチンで壁にずらっと並んだ棚には各種調味料がどっさり並んでいます。
 この世のありとあらゆる調味料がそろっていると言われています。
 ちなみにフロア自体は、全長5メートルのロボットに合わせて設計されているので、棚もテーブルもボウルも泡だて器も通常の五倍程度の大きさがあります。
「小人になったみたいで面白いでしょ?」

『霊石炭オーブン』
 熱を発する霊石炭が五百メートル四方の部屋に並べられたフロアです。
 まるで地獄のようなフロアです。陰炎が立ち上り、視界全部が真っ赤です。
 ここにさまざまな種類の生地が送られ。鉄板で作られた箱に入れられ加熱されます。
 フロア内は常に60℃。お菓子に合わせて、鉄箱に火炎放射を浴びせたりして100℃から2000℃まで調整可能です。
 そしてなぜか、140℃に保たれた液化チョコレートの泉がフロア内にあります。
「新しいお菓子の開発をするためにちょっとね」

『超次元収納棚』
 チョコレートの型や設備の予備パーツ。機材などを収納しているフロアです。
 磁力と霊力の力によって、任意のパーツを任意のフロアへ一瞬で飛ばすことができます。
 地下に無数のダクトがあり、そこを通して射出します。
 ちなみに使い終わった型や機材を洗浄する部屋と一緒であり。
 使い終わった機材の洗浄は90℃以上の煮沸消毒。弱酸による殺菌消毒。純水での洗浄という工程が踏まれます。
 「共鳴中であれば、あなた達もこの施設で消毒できるから楽でいいわね」
 そう遙華さんは皆さんを笑顔で消毒室に送り込もうとしましたが、猛烈に拒絶されたのでやめました。

『ラッピングルーム』
 いろんなラッピング用リボンや包装紙、箱があります。ここは案外普通で、機械が流れ作業で自動的にラッピングします。
 ただ、包装紙やリボンを延々と印刷している、超大型印刷機。が無数に壁に並んでいるのでうるさいです。
 
「と、まぁ、一通りこんな感じね。ここでラッピングされてトラックに積まれて出荷されるわ……ん?」
 その時、遙華さんは首をひねって話を唐突にやめました。
 その視線はテーブルの上のサンプルチョコレートに注がれています。
「いま、このチョコレート動かなかった?」
 あなた達は当然わかりません。
「動いたわよね?」
 そう遙華はドスの利いた声でつぶやくと、おもむろにテーブルのチョコレートを叩きました。
「ぎゃああああああああああああああ!」
 突如汚い悲鳴が聞こえ。そして遙華が手をどけると、そこには板チョコレートに手足が生えた珍妙な従魔が伸びていました。
「遙華! 大変よ! 在庫の確認をしていたのだけど。チョコレートが多いわ。それも相当数。ってなにそれ?」
「従魔よ、やられたわ。チェックは万全だったはずなのに。お昼のトラックね……」
「これはまずいわ、従魔を出荷するわけにはいかないし。バレンタイン用の在庫を減らすわけにはいかないし。どうにかしてチョコレート従魔と、普通のチョコレートを分けられないかしら……」
 ロクトは頭をひねります。
「二番倉庫にある大量の板チョコレートの中にも混じってると思うし。ここに従魔がいたことから、ある程度この工場内に散ってしまっているようね。何かいい対処法はないかしらね?」
 ロクトはあなた方に問いかけます。
「お願い、従魔退治を手伝ってくれない? ちゃんと報酬はお支払するわ」


解説

「見分ける方法? そうね、さすがに食べたらわかると思うわよ」
「…………私は食べないわよ、お腹壊しそうじゃない。みんなよろしくね」

目標 チョコレート従魔を退治する。
 チョコレート従魔の数は不明
「わかったら苦労しないわ、なるべくたくさん倒してね」
 今回は 雑談半分、従魔討伐が半分の。緩い空気の中やりたいことをやっていただくシナリオです。そんなに必死に倒さなくても大丈夫です。
 バレンタインデーどうする予定? とかチョコレート好き? とか遙華や別のプレイヤーとコミュニケーションをとりながらやっていただいて問題ないです。
 今回の従魔討伐数で、次回の鳴海の甘想のシナリオに影響します。

 チョコレート従魔の特徴
・一見普通の板チョコ。チョコレートに擬態している間はなかなか見分けがつかないが、義体がとけると、小さな手足,鼻と口が出る。
・ほとんどの個体は話すことはできないが、まれに喋る従魔もいる。従魔の特性上、話は通じない。(会話できる自我がない)
・頭が悪い
・攻撃力はかなり低い。ただし攻撃されるたびにチョコレートで汚れる。
・百体以上はいる様子
・チョコレートがたくさんある場所に潜り込もうとする。砂糖が好き。トウガラシが嫌い。
・マイナス5℃から43℃が適正活動温度、それ以上以下だと擬態できない。
・チョコレートのように溶けたり凍ったりするわけではない。
・触ると温かい、ぷにぷにする。

「各フロアの設備を使用しても構わないわ。有効活用してね」
 遙華はどうやらダクトの中や床下、天井などを探すようですね。予期せぬ場所であったら優しく接してあげてください。

 最後に遙華さんとロクトさんがチョコレートをくれるそうですが。
 どちらからチョコレートをもらいたいか考えておいてください。
 ひそかにどちらが多く受け取ってもらえるか、競っているようです。
 受け取らない場合、その時はまぁ。遙華さんの悲しい顔が見られると思いますよ。

リプレイ

「遙華! 大変よ!」
 そうロクトが駆け込んできて遙華が全員に頭を下げた直後。
 参加者たちは思い思いの方法で従魔たちを探す。
 そして『桜寺りりあ(aa0092)』と『比蛇 清樹(aa0092hero001)』も従魔討伐をすべく工場の長ーい廊下をどこへ行こうか迷いながらうろうろ歩いていた。
 その隣には『十影夕(aa0890)』と『シキ(aa0890hero001)』が並んで歩いている
「わ……すごい工場なの、ですね」
 リリアは熱と甘い香りで従魔たちを探せないかとアロマキャンドルに火をともしながら歩いていた。
「そうだね、絵本みたいな工場で、面白いな……」
 夕が同意する。
「チョコ……美味しそうなの」
 廊下を行きかう小型ミック君のトレイの上には大量のチョコが乗っており、りりあはそれを興味深そうに見つめる。
「おうぼしたかいがあったよ。たくさんたべよう」
 シキがいい、それにリリアが頷いた。
「美味しい……ふむ、とても好みの味なのです」
 目を細めほっぺを抑えてリリアが言った。
「あれ? 食べていいなんて言ってたかしら」
 その光景をみて『橘 由香里(aa1855)』が首をかしげた。
「まぁ。ちょっとくらいいいわよ。摂取できるチョコレート量にも限界があるでしょ?」
 由香里の言葉に遙華が答える。
「そのセリフは、あとで後悔しそうだけど、それにしても……」
呆れ気味に呟きながら遙華に行った。
「はあ、グロリア社も手広くやってるのね。武器からすごろくからチョコレートまで」
「世界有数の企業だもの」
 遙華はふふんと笑って答える。
「そのわりには簡単に従魔に侵入されてるじゃない」
 由香里もふふんと笑って言葉を返す。
「それは、グリムローゼが……」
 遙華はバツが悪くなりそっぽを向いた。
「まぁいいわ、私こっちから探す予定だからまたあとでね」
 そう由香里は超次元収納棚のフロアへ入っていく。
 
  *   *

 ミック君キッチンは巨大なキッチンである。ここにいるとまるで気分は小人。
 不思議な気分になりながらも、さっそく従魔を発見した『ユフォアリーヤ(aa0452hero001)』が逃げようとするそれをもてあそんでいた。
「ひぎっ。みぎゃ。うわ」
「ん、温かくてぷにぷに」
「ふむ、なるほど……溶けるわけじゃないのか」
『麻生 遊夜(aa0452)』は適当に、そこらへんにあったボウルに従魔を入れると、ユフォアリーヤを連れ立って探索を開始する。
「色々使っていいらしいからな、見て回ろうぜ?」
「……ん!」
 ユフォアリーヤの尻尾が唸った。遊夜はトウガラシを探して行動する。
 棚を見上げながら探して遊夜が首をいたくした頃。
 一足先に辛み調味料の棚に到着した『骸 麟(aa1166)』と『宍影(aa1166hero001)』をみつけた。
「唐辛子塗して劇辛煎餅とかあるじゃん……激唐チョコとか受けないかな?」
 そんな不穏なことを麟は宍影と話していた。
「間違って、出荷とかしないようにな」
 遊夜が苦笑いする。
「大丈夫作ったとしても食べるのは俺たちじゃん」
 麟が言う、その隣で遊夜は従魔を床に磔にし。トウガラシをふりまく。
「うわ、ぶ、は、うぇぇぇぇぇ」
 従魔が泣きだしてしまった。ちなみに従魔とは本来自我を持たないが、この従魔たちは念入りに人間たちの同情を誘おうとプログラムされているらしく、愛嬌のある動きをする。
「ふむ、予想通りかね」
「ん、辛いのが嫌い?」
 ユフォアリーヤは首かしげ言った。
「甘い方が良いらしい」
 そう、対照的に砂糖を与えられると従魔は笑うので、事前情報は間違っていなかったと確認が取れたわけだ。
「……ん、従魔ホイホイ?」
「上手くいけば、な」
 砂糖を入れたボウルと唐辛子を一袋、どっさりと抱え二人はいたずらっぽく微笑みあった。
 それに習って清樹もトウガラシをどっさりと抱え込む。
「とりあえずラッピングルームに唐辛子を置いてくるか」
 手分けしてトウガラシの設置にあたるようだった。  
「あれ? 麟さんたちがいない」
 りりあがあたりを見渡すと、遠くで腕を振り回しながらがしょんがしょんと不自然な動きで歩くミック君がいた。
「従魔殲滅の為機動戦隊発進!」
「そんな機能ないから! やめて」
 遙華があわてて止めている
「やはりロボもロマンであるな」
「ん、おっきいー」
 のんきに笑う遊夜とユフォアリーヤ。
「いや、あれは止めた方がいいんじゃないか?」
 清樹が呆れ果ててつぶやいた。

   *   *

 一方第二倉庫にて。
 ここには多数のチョコが納品されており、この山の中に従魔が大量に潜んでいる物と思われていた。
 しかし第二倉庫だけで千キロ以上のチョコがあるわけで、探すのは困難に思えた。
 最初に全員がここに来たのだが一部のリンカーはこのチョコの山に胸やけを催して出て行ってしまった。
 しかし『天間美果(aa0906)』はチョコレートも大好きなので、ここに残っていた。
「なかなか、いないわね」
 彼女はチョコレートの山の中にがさがさと進軍し、そして手当たり次第にチョコを食べていた。
「いた! いました、こっち」
 うわあああああと叫び声をあげる従魔をぶんぶん振り回しながら『花邑 咲(aa2346)』がその場にいる全員に、その収穫を知らせる。
「おお、さすがですサキ」
『ブラッドリー クォーツ(aa2346hero001)』はチョコレートの匂いに眩暈を催しながらも同じようにチョコレートの山をかき漁っていた。
「これははずれ?」
「はずれです!」
『卸 蘿蔔(aa0405)』が答える。
 何か彼女には作戦があるらしく、探し始める前にこの場にいる全員に指令が下されていたのだ。
「言語を離せる従魔を探してください、探したら私に下さい、理由は聞かないで」
 その隣ですごく『レオンハルト(aa0405hero001)』が不安そうな顔をしていたが、その場にいる全員はとりあえずその提案にうなづいた。
「ブラッド、お願い」
「はいよ」
「いい匂いねぇ……ブラッド? 大丈夫?」
 チョコの匂いで上機嫌の咲は美果にならってチョコレートをつまみ食いしつつ答えた。
「心なしか、頭が痛くなってきました。匂いだけで胸やけしそうですねぇ……」
 咲は平気なのかとブラッドリーは問いかける。
「甘いの好きだからへっちゃら。それにしても……」
 咲はその手に握った従魔をふにふにと握ってみる、なんとなく気持ちよさそうな顔をしたのが、咲の堪忍袋を若干刺激する。
「チョコレートがふにふにしているのは不思議な感じね」
「あぁ、確かに……」
 しばらくブラッドリーと咲の共同作業は続き。だんだん発見率が下がってきたころ。
「見つけたわよ!」
 そう高らかに宣言した美香、美果その口には、従魔が挟まっていた。
 悲鳴を上げている。
「たすけてたすけて、おいしくないよ、ああああああ、あばばばばばばば」
 その時、蘿蔔の目が光ったのを全員が見た。
「どうするの? 卸さん」
「まぁ、見ててください」
 
 そして、チョコレートたちは思い出すことになる。人類に支配されていた時の恐怖を。

「ああああああああ」
 手足を縛られたチョコレートが、皆に見えるようにチョコレートの山の上につるし上げられている、その隣には銃を握った蘿蔔がいた。満足げに従魔にゴリゴリと銃口をねじあてている。
「ああああああああ」
「……私がこうすることで、穴のあかぬ愚神はいなかった……。いなかった」
「やめてあげろ! 可哀そうだろ!」
 さすがに非人道的? な光景に胸を痛めたレオンハルトが叫ぶ。
「あ。この手があったか」
「気が付きませんでした」
 のんきに笑う咲、ブラッドリー。そして美果。
 蘿蔔の暴虐を止められるものなどどこにもいない。
「ここの従魔たちは……自分の事だけを考え仲間を見捨てるおバカなのか…何も考えずに飛び出すおバカなのか……どっちだと思います?」
「お前が一番おバカだよ!!」
 その時だった、周囲のチョコの山から、大量の従魔が現れた。
「!”#$%&’’$&%$。もが、ひぐぇ」
 大半が何を言っているかはわからないが、どうやら助けるつもりのようで蘿蔔の元に向かっていく。
「おばかさん」
 にやりと笑った蘿蔔、そしてその手の銃が火をふいた。、全く歯が立たずに撃沈されていく従魔。
 勝てない、そう覚った従魔たちはまっしぐらに倉庫の扉目指して駆ける。
 途中何匹もの仲間が、凶弾によって倒れる、しかし今、自分がいきのこり、ここに悪魔がいることを伝えることができれば、生き残れる仲間は多くいるだろう。
 そう頑張って従魔たちは走った。逃げられる、扉は、目の前。
 やった、助かったんだ、そう従魔は涙を流しながら走る。
 がんばれ、従魔。負けるな、従魔。
 しかし従魔は悪寒を感じ振り返る。
 そこには、魔法少女レモンがいた。獰猛な笑みを浮かべ。その銃口はぴったりと従魔に向けられている。
「いやあああああああああああ」
 だだだだだだだ、銃声と悲鳴が、鳴り止まないレクイエムのように、工場内に響き渡った。

   *   *

 そんな大参事も知らずに遊夜とユフォアリーヤは仕掛けたトラップの回収をしていた。
「いや、意外と集まるもんだな」
「……ん。簡単だった」
 手に下げた大型バケツの中には三十を超える従魔がひしめき合っていた。
 そして二人が向かったのは霊石炭オーブン。
 無造作に三人はバケツの中身を熱せられた霊石炭の上に薙げると、跳ね上がるように従魔が反応し、あらゆる方向に逃げていく。
「ハッハァ、大猟じゃぁ!」
 あとは処理をするだけとばかりにマシンガンを乱射する遊夜あらかた従魔が片付いた。
「……混ざってたね」
「普通のチョコだな、泉に放り込んでおくか」
 そう二人が熱せられたチョコがたまった泉まで行くとそこには麟と宍影がいた。
「里での地熱訓練に比べたら……ごふうう! じわじわ来るな…」
「遙華はふりきれたのか」
 遊夜が問いかける、ミック君キッチンで好き勝手やったので、追いかけられていたのだった。
「オレ達をあそこまで追跡できるなんて、忍びでもないのに大した奴だった」
「凛殿! 凛殿! これ、これってチャー…」
「宍影っ! 遙華に怒られるのはいいが、それ以外はだめだ。」
「パイプに吸い込まれない様にするでござるよ!」
「大丈夫、ガムも食べないし、リスも欲しがんないぜ!!」
「パイプってなんだ?」
 遊夜が、問いかける。
「泉の中の不純物を取り除くために。そう言うのがあるのでござる。いや本当にあるかは知らないが」
 ふーんと煮え立つ泉を見る遊夜、なんだかユフォアリーヤがあまり近寄りたがらないので、遊夜はその場を後にすることを決めた。
 しかしその矢先。
 ドボン。
 やけに粘着質な音が聞こえた。
 振り返ると美果が真茶色になって、チョコレートの中でもがいていた。
「やってしまったー」
 麟、宍影は頭を抱える。
「見てないで助けなさいよ! って、あああれぇぇぇぇぇ」 
 そして宍影が宣言した通り、チューブで吸われて美果はどこかへ行ってしまった。

  *  *
 
 本当に人がチューブに座れてどこかへ行ってしまうという衝撃的な光景を見た。麟達はとりあえず美果を探すため、あるいは美果がどこに行ったか聞くために遙華を探し始めた。
 とりあえずいちばんここに来る可能性が高いだろうと麟と宍影は超次元収納棚まで来ていた。
「転送系には注意!」
「テレビの中には住みたくないしね」
 そこには先客がいて、由香里が作業をしていた。
「あついし、動きにくいわ」
超次元収納棚から予備のカーゴをいくつか借り出し、ダクトの要所要所に
砂糖やチョコの屑などを入れて放置し従魔をおびき寄せる作戦だった。
おびき出した従魔が逃げないよう、枝線などには唐辛子を撒いて退路を絶ったり
進路を誘導したりと由香里は大忙しだった。
「由香里殿、美果殿がここにきてはおらぬか?」
「美果さん? 私が知る限りここには来てないわね。どうしたの?」
「ポンプに吸い上げられて、どっかにいっちまったのさ」
 そうぶつくさ言いながら麟は探索を開始する。
「西大寺殿は?」
「私も探してるのよね、あの子ダクトの中をちょろちょろしてるから危なっかしくて」
 由香里は従魔が罠にかかったのを見ると、無感情にそれをすくい上げ、大きなカーゴに押し込んだ。悲鳴が何重にも聞こえるがそれに耳を貸さずに、粛々と洗浄室に送り出す。 
 鋭い悲鳴が聞こえ。90℃の熱湯で従魔たちは大人しくなった。
「うわぁ、えげつないでござるよ」
「仕方ないじゃない、効率的だし」
「うっ……」
「地獄絵図とはまさにこのことだね」
 しかし開け放たれた除菌質を見て麟と宍影が顔をしかめる
「実際に茹で上がった口とか鼻とかついてる従魔の山はすっごく気持ち悪いわね。
しばらくチョコ食べられなくなりそう」
 そんなやり取りの間も収納棚は稼働し続けている。各部屋に器具を送りだしたり、または戻ってきた器具が、由香里の動きに関係なく出し入れされている。が、そのうち、巨大なボウルに収まって、遙華が姿を見せた。
 美果も一緒だった。
「ホットチョコレート、美味ね」
「二リットルも飲んで……。糖尿病になるわよ」
「動いて消費するから問題ないわ」
 そんな美果を見送ると、せっせと忙しそうにべつのダクトに突入しようとする遙華。
「貴女、そんな所で何をしているの。そんな非効率的なことをしていないで、出てきたら?」
「非効率でも、あまり逃がしたくないのよ」
 遙華がダクトからしょっこり顔を覗かせて反論する。
「邪魔になるって言ってるの。それに危ないわよ、さっきものすごい勢いでボウルが飛んでいくの見たし」
 そう手を差し出す由香里、その手をしぶしぶ取ろうとする遙華。しかし遙華がその手を取ることは叶わなかった。
 その瞬間のできごとである、射出された器具が脇腹に突き刺さり、うごっと声を上げてどこかへ飛ばされていく遙華。
「遙華が、等身大の泡だて器に攫われた……」
 茫然と由香里は佇み、差し出した手をどうすればいいか、わからないでいた。

   *   *

 夕とシキはフローズンタワーにいた。ここは雪のようにチョコレートが降る空間で、温度は低く保たれている、そのため二人は防寒具を着込んでいる。
 二人はずっとここで天高く射出された従魔が悲鳴を上げながら降ってくるたびに共鳴しそれを排除するという行為を繰り返していた。
「すごい、黒い雪だ」
 夕が言う。
「これおいしい」
 シキが降ってきたチョコレートを食べながらつぶやいた。
「うほ、食べ放題でござる」
 麟と宍影もいつの間にかそこにいて
 フローズンチョコの踊り食いに挑戦している。
 麟に至ってはドローンにチョッカイを出して遊んでいた。
「ひっくり返しても動けるか試すか」
「意外とロマンチックでもないな」
 幻想的な風景を期待してやってきた遊夜がつぶやく。
「うん、意外ときたない」
 ユフォアリーヤがそう答えると、突如、バカンとおとがして床が跳ねあがり。そこから遙華が這い出てきた。
「やっと出られた」
「またすげぇとこから出て来るな……で、成果はどうかね?」
 遊夜が遙華にかかったチョコ雪をはらってあげつついった。頭をぽんぽんと叩く。
 すると遙華は頬を赤らめた。
「私は、だめね。そっちは?」
「こっちも一応実験してみてな、上手くいけばそろそろ良い感じなはずなんだが」
「ん、結構叩いた」
「あ、いた、遙華」
 防寒具を纏った蘿蔔が走り寄ってくる。
「蘿蔔」
「大体片付いたと思うので、あとはラッピングルームを調べたいです」
 そう提案する少女に全員が乗った。
 そして一行はラッピングルームに集合した。
「同じ動作繰り返してて飽きないかい?」
 レオンハルトが問いかける
「………ん?別に?」
ラッピングルームにてレーンで運ばれてくるチョコレートの選別作業を蘿蔔は行っていた。
流れてくるチョコレートを触り感触を確かめ従魔がいないかチェックしていく。
 マスクと手袋、及び消毒は済ませベテランパートの如く、素早く商品を傷つけないように丁寧に触る。
「もうすぐバレンタインですね? 遙華は……チョコレートあげたい人、います?」
 言ってしまった後で恥ずかしくなったのか蘿蔔は顔を赤らめてうつむいた。
 その言葉に同じく選別作業をしていたリリアが首をかしげた。
「そういえばチョコの行事があるの、です?」
「知らないの? 女の子が好きな異性にチョコをあげる日よ」
 由香里が説明し、清樹つぶやく。
「あぁ、そういえばバレンタインについては教えてなかったな……」
 内心、これはチョコを作るとか言いださないだろうかとひやひやしながらも清樹は作業に戻る。
「そうそう、チョコをあげたい人よね?。レオンハルトかな」
「「え」」
 蘿蔔とレオンハルトの声が重なる。
「冗談よ、最近ジョークの練習をしているの、おもしろかった?」
「仏頂面のまま言われると、冗談なのか全くわからないです」
「…………。ひとが気にしていることを」
「ジョークでごまかそうとしているからダメなんじゃないか?」
 こう見えて遙華はメンタルは強くないので、冷や汗をかきつつ話題を変える。
「蘿蔔はどうなの? 好きな人はいないの?」
「そ、その話は、今は、ちょっとなのです」
 顔を真っ赤にしてあわてる蘿蔔。
「……蘿蔔が人の子みたいな反応してる」
「心の声が漏れてますよ」
「……すまない」
「遙華はそう言えば何歳ですか? 学校には通ってるのですか? 趣味は?」
「うわ、えっと。高校生一年生よ。趣味は読書。蘿蔔は?」
「私は、共学の学校に通ってますよ。毎日それはそれは楽しい高校生活を……」
 レオンハルトはなぜかカゲリを帯びた瞳で蘿蔔を見た。
「こんど、一緒にお茶でもしに行きましょうね。積もる話もあるようだし」
 そんな盛り上がる二人をよそにリリアと咲が仲良く話をしていた。
「バレンタインデーはね、恋のビックイベントで毎年たくさんのカップルが生まれるんですよ」
「かっぷる? そうなると、どうなるのですか?」
 リリアが首をかしげた。
「成功すると、あんなふうになれるのよ」
 遊夜とユフォアリーヤを指さす。
「コイツとコイツと。コイツ、かね?」
「……ん、ぷにぷに」
 ユフォアリーヤはマグナムで何度もたたくと、何を思ったのか従魔にかじりついた。
 悲鳴がこだまする
「……美味しくない、ユーヤぁ」
 悲しそうな顔で遊夜にすり寄るユフォアリーヤ
「何やってんだほれ、ぺってしなさい」
 そしてその開いた口に飴玉放り込む。するとユフォアリーヤは満足げに微笑んだ。
「あとはあっちですね」
 ブラッドリーが麟と宍影を指さす、二人は何を思ったのかラッピングマシーンで包装されながら遊んでいた。
「プレゼントフォーえーブリバーディだぜ!世界のみんな!」
「あれは何かが違う!」
「そう言う咲さんはバレンタインデーは誰にチョコをあげるんですか?」
「そうですねぇ。いつもお世話になっているブラッド……」
「じゃあ、ブラッドリーさんと恋人同士になりたいのですね」
「いえいえいえ、そう言うわけではなくてですね、世の中には友チョコというものがあって」
「友チョコ、難しいですね」
「あそこにいる院長さんと、院の子供たちにチョコレート菓子を作って渡そうかなぁ、と」
 遊夜が咲の視線に気が付き言う
「ちなみにみなさんは、どなたかに渡されるんですか?」
 さきが隣の由香里や遙華に尋ねる。
 すると遙華はにやりと笑い。
「私は、みんなにかな」
 そう言ったタイミングでロクトが部屋に入ってきて、籠を一つ手渡した。
「人数分はちょっと用意できなかったの、でも大き目だから、これで許してね」
「これが、友チョコ」
 リリアがチョコを受け取り目を輝かせた。
「おい、食べ過ぎるなよ?」
 清樹が釘をさす。
「はい、ご苦労様、手伝ってくれてありがとうね。」
「まぁわたしたちにもいただけるんですか? ありがとうございます。
 咲がうれしそうに飛び上がった。ブラッドリーはそれを眺めて微笑んでいる。
「ありがとうございます。大切にいただきますね」
「こ、これって、友ちょこ……ですかね?」
 蘿蔔はパッケージをしげしげと眺めた後に、花の咲いたような笑顔でいった。
「ありがとうございます。初めてもらいました。一生大事にします!」
「違うだろ! つーか食えよ!?」
「賞味期限は守ってね、そして、はい」
 遊夜へ遙華はチョコを手渡す
「おぅ、ありがとうよ」
 そう遙華の頭をなでる遊夜と、その光景を見て尻尾をぴんと伸ばすユフォアリーヤ。
「……むー!」
「勘違いしないでよね、義理チョコなんだから」
「虻蜂取らず! 危険は全クリアで従魔退治に成功したよ」
「それなのにどうして麟殿はかようにボロボロなのでござる?」
 まだまだ元気が残っている様子の麟と宍影に対して、遙華は呆れたようにつぶやいた、チョコを渡す。
「あれだけ元気に走り回ればそうなるわ」
 そして遙華は由香里に向き直る。そしてチョコを手渡した
「ありがとう、と言っておくわ。またね」
「ええ、次はもっと話せる機会があるといいわね」
「ええ、由香里とはもっと話し合う必要があると思うの。そして夕とシキにも」
「ありがとう」
「さすがにもう食べ飽きたけど」
 そして遙華はいまだに従魔を探しながら、チョコを食べ続ける美香へチョコを渡す。
「なかなか。いないわね……」
「私も手伝うわよ」
「あれ?」
 その場にいた人間全員が、聞きなれない声を聴いたような気がした。
「いま何か聞こえたような?」
 美果も含めたその場の全員が首をかしげた。
「それにしても、結構な量の従魔が潜り込んでいましたね」
「本当ねぇ。あんなに沢山いるとは思わなかったわ」
 咲とブラッドリーがしみじみとつぶやいているところに遙華は冷や水をぶちまけたような爆弾発言を残す。
「いえ、まだまだ従魔はいるわよ」
「安心して、晩御飯は作ってあるから」
「えー」
 麟と宍影はあからさまに不服そうな声をだし、遊夜はやれやれと首をふった。
「お泊りですか!」
「おれは嫌だからな」 
 そう蘿蔔がつぶやいて、レオンが抗議の声を上げる、そんなにぎやかな工場見学はまだまだ続いた。
「晩御飯は何が出るのかしら」
 美果が目を輝かせて言ったが、残念ながらこの後のひと騒動のせいで彼女は晩御飯を食べ損ねた。
 それはまた、別の話。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
  • 終極に挑む
    橘 由香里aa1855

重体一覧

参加者

  • エージェント
    桜寺りりあaa0092
    人間|17才|女性|生命
  • エージェント
    比蛇 清樹aa0092hero001
    英雄|40才|男性|ソフィ
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
    人間|18才|女性|命中
  • 苦労人
    レオンハルトaa0405hero001
    英雄|22才|男性|ジャ
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • エージェント
    十影夕aa0890
    機械|19才|男性|命中
  • エージェント
    シキaa0890hero001
    英雄|7才|?|ジャ
  • 肉への熱き執念
    天間美果aa0906
    人間|30才|女性|攻撃



  • 捕獲せし者
    骸 麟aa1166
    人間|19才|女性|回避
  • 迷名マスター
    宍影aa1166hero001
    英雄|40才|男性|シャド
  • 終極に挑む
    橘 由香里aa1855
    人間|18才|女性|攻撃



  • 幽霊花の想いを託され
    花邑 咲aa2346
    人間|20才|女性|命中
  • 守るのは手の中の宝石
    ブラッドリー・クォーツaa2346hero001
    英雄|27才|男性|ジャ
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