本部

戦闘

赤い頭巾を被って

形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
7人 / 0~8人
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2015/11/12 12:00
完成予定
2015/11/21 12:00

掲示板

オープニング

●約束は守って
 よく晴れた気持ちのいい朝だった。赤く色づき始めた葉が揺れる森は赤と黄色と僅かな緑の混じった独特の様相を呈していて、のどかな反面これからすぐに見られるであろう見事な紅葉の気配を感じさせる。
 その中を小走りに走る赤い頭巾の姿があった。赤い頭巾は布をかけた大きな籠と花束を持って森の小道を一目散に進んで行く。そして、その赤頭巾から少し離れた場所に気付かれぬようそっと後を追う『黒狼』の姿があった。
 赤頭巾と黒狼が森を進むこと一時間ばかり。鮮やかに道を彩っていた木々がゆっくりとまばらになっていく。やがて、三本の大きな樫の木がはっきりと見える辺りまで来ると、森は急に開けて、その先にぽっかりと、百坪ほどの空き地があるのが見えた。綺麗に下草を刈られたその空き地の真ん中に一軒の小さな山小屋が建っているのがはっきりと見える。
 黒狼は、逸る気持ちを抑えて、ゆっくりと樫の木に近づく。先に歩く赤頭巾の背から視線を外さずに、そっとその樫の木の根元の草むらに身を隠した。

 警戒しながら、ひとり先行した『赤狼』は山小屋の扉を叩いた。ぼそぼそと声がして扉がゆっくりと開き、中からひとりの老女が現れる。老女はそこに誰も居ないことを不思議に思い、辺りを見回した。その瞬間、ドアの陰から飛び出した赤狼は老女を仕留めようと素早く得物を振りかぶった。
 ──だが、思いも寄らぬ方向からの一撃が隙だらけの腹部を強く打ち、赤狼は地面に叩きつけられた。巻き上がる土埃が収まらないうちに、赤狼を殴ったそれは、恐ろしい勢いで何度も何度も敵対者を殴り続けた。
 やがてそこへ赤い頭巾が現れた。
「よく無事にお帰りだね、いい子だ」
 老女は労うようにそう言うと、小屋の扉を大きく赤い頭巾を迎える。それから、老女は赤狼の隣でバチバチと音を立てるそれに気付く。
「面白いものをお持ちだね」
 唇の両端を吊り上げて笑うと赤狼の身体とそれを引きずって小屋の中へと消えた。

 ばたん、無常に音を響かせて、赤狼を飲み込んだ厚い木の扉が閉まった。
 草むらの中で一部始終を見届けた黒狼は本部へ報告した。


●ハンターたちは少女を救えるの
「依頼です」
 H.O.P.E.の一室に集められた英雄と能力者たちは、固い表情をした女性職員と男性を見る。
「森の奥に愚神の巣が見つかりました。今まで愚神は従魔を使って定期的に街の人間を襲いライヴスを集めており、すでにケントゥリオ級に成長しているのが確認されました。ゾーンルーラーとしてドロップゾーンを形成するのは時間の問題でしょう」
 女性職員の言葉を引き継ぐように、壮年の男性がゆっくりと口を開いた。
「おれはこの愚神と従魔を追ってきたリンカーだ。敵は、従魔『赤い頭巾』と愚神『ロウバ』。先行した仲間『赤狼』は重傷を負ったものの生存しているようだ。『赤狼』の救助と愚神及び従魔の討伐の協力を依頼したい」
 彼、『黒狼』は色を無くした顔で続けた。
「どうか、おれの娘をたすけてくれ」

 黒狼の案内で一行はロウバの山小屋付近までやってきた。三本の樫の木の下で、背高くこんもりと生い茂った草木に身を隠しながら、小屋の様子を伺う。
 葉が擦れる音と鳥や虫の声が聞こえる。秋始まった森でささやかなパーティーが開かれていた。小屋の前に小さなテーブルと椅子が並べられていた。テーブルにはテーブルクロスが敷かれ、赤い液体が満たされたグラスとケーキの乗った皿がふたつずつ、赤い液体の入った酒瓶がひとつ。グラスを傾けるひとりの気のよさそうな老女と、赤い頭巾を目深に被りぐったりと俯いた少女がそれぞれ椅子に座っていた。
「うちの娘だ……!」
 少女を見て黒狼が小さな悲鳴をあげる。今にも飛び出して助けたい気持ちを押さえているのか、彼は毛深い自分の腕にぐっと爪を立てて老女を睨んでいる。


●赤頭巾ちゃんを助けて
 リンカーの少女は震えていた。彼女は父親に負けない勇敢な戦士だった。若く、今まで戦いの中で震えたことなどなかった。
「あら、震えてるのかい? 可愛い仔だね」
 老女はそんな彼女を見て笑う。赤狼は深い傷を負ってはいたが辛うじてリンク状態は保っていた。しかし、不思議なことに指先すら動かすことが出来なかった。それどころか、リンクしている彼女の英雄と話すことすらできない。
 老女の背中からカマキリのような鋏の付いた腕が一本伸びて彼女の目の前でカタカタと動いていた。鈍色(にびいろ)のそれは全体的に植物のトライコームのような産毛が生えていたが、先端の鋏は刀のように尖ってぎらりと光っていた。眉間の前で揺れる物騒な刃に、目に入るほどの脂汗がダラダラと流れ落ちる。
「だいじょうぶだよ。怖いことも痛いことも苦しいこともなあんにもないさ」
 ずっとうろうろと揺れていた巨大な鋏は、ついに、つ、と彼女の目の前を通り過ぎ、胸から胎の辺りをさくりと──切る、真似をした。
(……え、なにもな──)

 糸の切れたマリオネットのようにぱたりと倒れた少女の姿を満足げに見届けると、老女は傍にあった一体の従魔を掴む。
「これがいいかね?」
 赤い頭巾の下には黒い岩のような塊で出来た体があった。老女は頭巾を少女に被せると塊を少女の身体に詰めるような仕草をする。
「ほれ、出来上がり。可愛い可愛い」
 赤い頭巾を被った少女はむくりと起き上がると、無表情でぎぎぎとぎこちなく首を動かした。

解説

※PCたちは赤狼が従魔に憑かれていることを知りません※
 赤狼に不用意に近づくと攻撃を食らい、暫く動くことが出来なくなります。ただし、誰も赤狼に近づかない(助けようとしない)場合、黒狼が近づいて攻撃を食らいます。
 赤狼は憑依されていますが、まだ完全ではなく威力があるのは不意打ち攻撃位です。
 憑依を解く方法は『従魔の生命力以上のダメージを負わせること』です。オーバーしてもダメージは憑依対象へいきません。

愚神ロウバ:ケントゥリオ級。銀髪の細身の老女の姿をしているが素早く、背中の鋏は殴ることに特化しています。催眠能力がありますが静かな環境が必要なので今回の戦闘中に使うことはありません。鋏を含めた第三の腕の長さは2m。

従魔赤い頭巾:デクリオ級。赤い頭巾を被った黒い岩のゴーレムのような姿。今回は憑依しているので赤狼のステータスを参照。

黒狼:シャドウルーカー。壮年の男性で妻とは死別し、一人娘を溺愛しつつも厳しく育てている。優れたリンカーではあるが、娘のピンチに酷く動揺しており、今回はあまり戦力にはならない。

赤狼:ドレッドノート。16歳。母親を亡くしてから父親を助けてきたが、英雄と出会い父親の反対を押し切ってリンカーになった。今回は偵察のみの約束だったが、慢心故に約束を破った。雷を纏った大剣を使い、剣の届く範囲に居る相手をしびれさせる事ができる。現在、剣は彼女の椅子に立てかけられている。

マスターより

「あれれ、おばあさんの手、めちゃくちゃ大きいわ。まるでバル●ン星人みたい」
「フォッフォッフォッフォ」
 寓話って色んなバージョンがありますよね。
 今回のお話はどうかハッピーエンドになりますよう、
リンカーの皆様、どうかご協力をよろしくお願いいたします。

リプレイ公開中 納品日時 2015/11/20 18:53

参加者

  • 止水の申し子
    まいだaa0122
    機械|6才|女性|防御
  • まいださんの保護者の方
    獅子道 黎焔aa0122hero001
    英雄|14才|女性|バト
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • まだまだ踊りは終わらない
    餅 望月aa0843
    人間|19才|女性|生命
  • さすらいのグルメ旅行者
    百薬aa0843hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 愚神を追う者
    石井 菊次郎aa0866
    人間|25才|男性|命中
  • パスファインダー
    テミスaa0866hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
  • 影踏み
    ポプケ エトゥピリカaa1126
    人間|7才|女性|生命

  • ポプケ チロノフaa1126hero001
    英雄|27才|男性|ドレ
  • エージェント
    フィオナ・レイノルズaa1141
    人間|18才|女性|命中



  • 暗闇の脚本家
    秋明 恋美aa1571
    機械|24才|女性|生命
  • エージェント
    アストラガルス・シニクスaa1571hero001
    英雄|17才|男性|ブレ

掲示板

前に戻る
ページトップへ戻る