本部

戦闘

白く光る

秋雨

形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
8人 / 0~8人
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/04/06 22:00
完成予定
2018/04/15 22:00

掲示板

オープニング

●光を頼りに
 とある山の麓。山の上へと続く、アスファルトで整備された車道に車が通る気配は一切ない。外灯も少ない暗がりの中を、スマートフォンによる2つの明かりがアスファルトを照らしていた。
「……ねーちゃーん」
「何よ」
 呆れたような、諦めたような声とぶっきらぼうな声が1つずつ。少年からため息が零れ落ちた。
「何も、こんな夜に来なくったっていいじゃんか。もうすぐ雨降りそうだしさぁ……やっぱり明日の朝行ったほうがいいって」
「ふん。怖いなら1人で帰れば?」
 少年の提案を一蹴し、少女の声が歩みを速めたようで、隣り合っていた二つの光は片方がやや前へと進む。その直後に慌てて遅れた光が隣へ駆け寄った。
「ま、待って! 1人で帰りたくないんだけど」
「じゃあついてくればいいじゃない」
 姉の言葉に、再び少年の溜息が落ちる。
「……っていうかさぁ、なんで今なの? なんで落とし物なんてしたの? あと落とし物なんなの?」
「1度に色々聞かない」
 辺りに響くぺし、という小さな音といてっという小さな悲鳴。頭を撫でさする少年は横暴だとか暴力的だとかいう言葉を飲み込んで、違う言葉を口にした。
「……何落としたんだよ」
「ネックレス。いつもつけてるやつよ」
 その言葉に少年は姉の方を見る。残念ながら暗がりでよく見えなかったが、そういえばいつもネックレスをつけていた気がするし、先ほど家を出る前はつけていなかったような気も、する。
「ネックレスなんて、どうやったら落とすんだ……?」
「むしろこっちが聞きたいわ。ちゃんとつけてたのに」
「単なる姉ちゃんの不注意……いって、何度もはたくなよ」
 再び頭を軽く叩かれ、少年はやれやれと言うように肩を落とした。もちろん今も先ほども言うほど痛くはない。この程度ならスキンシップの範囲内だ。
「で? なんで今なのさ。母さん達に怒られ……」
 怒られるよ、と続けようとした少年は、ふと歩みを止めた。2,3歩先で止まった姉が怪訝そうにこちらを振り返ったのがわかる。
「どうしたの?」
「……女の、子?」
 少年は彼女の問いに答えず、その視線は二人より少し離れた先に立っている白い少女へ向けられていた。
 姉は少年の声に正面を向き、ようやくその白い少女に気づいたようだ。
「え、さっきからいたっけ? しかもこんな場所に1人で」
「いなかったと思うし、俺らも人のこと言えないと思うけどね」
 2人とも立ち止まったまま白い少女の様子を見ていると、不意に姉が後ずさりを始めた。
「姉ちゃん……?」
「……逃げるわよ。あの子、おかしい」
「は?」
 少年は何がおかしいのかわからなかった。何故姉はそんなにも少女を警戒しているのだろう。何か刃物を持っているようにも見えない、1人の少女に。
 いつまでも距離をとろうとしない弟に焦れたのか、姉は少年の手を掴むと踵を返して走り始めた。その衝撃で少年の持っていたスマートフォンが地面に落ちるが、姉はそれすらも気にせず麓までの道を下り始める。
 そうして2人が背中を向けたと同時に後ろから聞こえる、獣の遠吠え。1つではない。いくつも、いくつも。
 不気味な不協和音となって耳に届くそれに揃ってビクリと肩を竦め、2人は走りながらしっかりと手を握り返した。



「……も、もういない……?」
「いたって無理……走れない……」
 ぜーはーと息を切らした2人はどうにかこうにか、麓の町まで戻ってきた。
 後ろを確認した姉がぺたんと地面に座り込む。
「……姉ちゃん、さっきの遠吠えってさぁ」
「狼なんて生きてるわけないでしょ」
 姉に睨まれ、でも、と反発の言葉が出る。
「皆言ってるじゃん。最近犬よりもっと大きい、四つ足の獣が出るって」
 被害に遭うのは近所のおばちゃんだったり、学校の友達だったり。この山の麓に住む者達だ。
 幸いすぐに他の者が助けに入れば獣は逃げるし、死んだ者もまだ出ていない。
(けれどまだ出ていないだけで……自警団のおじちゃん達だってH.O.P.E.に依頼しようって話し合ってた)
 怪我しなくてよかったなぁ──なんて考えていた少年は「あ」と思い出したように声を上げた。
「何よ。携帯は怒られるの覚悟で新しいの買ってもらうしかないからね」
 少年に溜息交じりの声がかけられる。しかし少年は首を横に振った。
「いや、まぁそれもそうなんだけど、そうじゃなくて。さっきのあの子……女の子、おかしいってどういうことさ」
「は? ……ああ、まだ気づいてなかったの? なんで明かりもないのにあの子がはっきり見えるのよ」
 姉の言葉に少年は目を瞬かせ、見るからに顔を強張らせた。
 今日は空が厚い雲に覆われ、月明かりなんて皆無だ。明かりのない範囲はほぼ真っ暗で、姉の表情だって見えづらかったほど。対してあの少女は自らが発光しているとでもいうのか、明かりを持っているわけでもなかったのにぼんやりと全身が視認できたのだ。

「………つまり……幽霊……?」


●H.O.P.Eにて
「当然ながら幽霊など存在しません。従魔が何らかの依代に宿ったものと考えられます。麓の住民に話を聞いたところ、その少女も獣も幾度か目撃されてるようです。獣の被害にあった住民はいるようですが、いずれも軽症とのことでした」
 獣は犬にしては大きく、まるで物語に出てくる狼を連想させるのだという。
 絶滅した動物の出現。実は生存していました、なんてわけはない。
 四月一日 志恵(az0102)は淡々と説明を続けていく。
「少女は何も話さずこちらを見ているため、気味が悪く住民の方が逃げてしまったそうです。どちらも山の麓より先には下ってこないようですね。夕方から夜にかけては山道に必ずいることを自警団の皆さんが確認しています。今回はその時間帯に山道で待ち伏せをするか、こちらから遭遇しに向かうか──といったところでしょうか」
 そこまで読み上げると志恵は一つ息をつき、書類から顔を上げた。
 そして。

「山菜が食べたいですね」

「「……はい……?」」
 唐突な発言に目を丸くする者、思わず聞き返す者とまちまちだが、一様に戸惑いの色を見せる。
 志恵はエージェント一同の様子に目を瞬かせた。
「……あ、すみません。つい本音が。この辺りの山菜は美味しいと聞いたことがあるもので」
 咳払いを1つ。気を取り直すように志恵はエージェント達を見渡す。
「住人からあまり森を荒らさないでほしいと要望があります。今は山菜が採り頃だそうですので」
 なるほど、それが言いたかったのか。
「住民の方へは『善処します』と回答しています。それらを気にしすぎて取り逃がしたら元も子もありませんので」
 あくまで依頼内容は従魔の討伐だ。
 よろしくお願いしますね、と志恵は締めくくった。

解説

●目標
少女型デクリオ級従魔、及び狼型ミーレス級従魔の討伐

●敵情報
・少女型デクリオ級従魔『ホワイト』
 白い肌と白く長い髪。瞳は前髪に隠れてよく見えない。白い袖なしワンピースを身にまとい、裸足である。
 回避に強い。長い髪を鋭利に硬化させ、範囲4スクエアに無差別攻撃や防御を行う。
 積極的に戦いへ参加するわけではなく、ブラックが4体以下になると逃走の動きを見せる。
 言葉は交わせない。

・狼型ミーレス級従魔『ブラック』×8
 ホワイトの指揮下にあると想定される従魔。
 一見普通の狼だが、やや通常より図体がでかく黒い毛並み。獣並みの知能を持っており、獰猛である。
 攻撃力と素早さに優れているが、防御力は比較的弱い。爪や牙、突進などの近接攻撃を行う。
 たまに麓へ降りてきて住民に危害を加えていた模様。

●状況
 時間帯は夕方から夜。
 OPから引き続き天気は思わしくなく、月の見えない曇り空。幸い、雨は降らない予報。
 片道一車線の車道。アスファルトで固められており歩道はなく、両脇は森。ひたすら上り坂。
 しばらく進むとOPで落とした、壊れたスマートフォンがある。山道入口からその地点までの間で遭遇できるだろう、と予想される。
 OPで少女が落としたネックレスはまだ見つかっていない。

マスターより

 お久しぶりです。秋雨です。
 花粉で鼻ズビズビ言わせてますが生きてます。
 OP書いていたら山菜の天ぷらが食べたくなりました。頭の中が天ぷらでいっぱいです。
 何か不明点等ありましたら質問卓を立ててください。志恵が答えられる範囲で答えます。出発24時間前まで。
 夕方でも曇り空ですので、周りは視界が悪くなっていることが予想されます。光源が用意できれば戦いやすいでしょう。
 それではご縁がございましたら、よろしくお願いします。

関連NPC

  • エージェント
    四月一日 志恵az0102
    アイアンパンク|24才|女性|命中適性

リプレイ公開中 納品日時 2018/04/20 11:48

参加者

  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 共に歩みだす
    皆月 若葉aa0778
    人間|20才|男性|命中
  • 大切がいっぱい
    ピピ・ストレッロaa0778hero002
    英雄|10才|?|バト
  • 絶望へ運ぶ一撃
    黛 香月aa0790
    機械|25才|女性|攻撃
  • 偽りの救済を阻む者
    アウグストゥスaa0790hero001
    英雄|25才|女性|ドレ
  • まだまだ踊りは終わらない
    餅 望月aa0843
    人間|19才|女性|生命
  • さすらいのグルメ旅行者
    百薬aa0843hero001
    英雄|18才|女性|バト

  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避

  • ベルフaa0919hero001
    英雄|25才|男性|シャド
  • 紅の炎
    アリスaa1651
    人間|14才|女性|攻撃
  • 双極『黒紅』
    Aliceaa1651hero001
    英雄|14才|女性|ソフィ
  • クールビューティ
    アリスaa4688
    人間|18才|女性|攻撃
  • 運命の輪が重なって
    aa4688hero001
    英雄|19才|男性|ドレ
  • ひとひらの想い
    茨稀aa4720
    機械|17才|男性|回避
  • 一つの漂着点を見た者
    ファルクaa4720hero001
    英雄|27才|男性|シャド

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