本部

戦闘

三猿

十三番

形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2018/02/12 07:30
完成予定
2018/02/21 07:30

掲示板

オープニング


 遠慮を知らない極彩色の、しかしどこか安っぽいネオンが視界の左右を長々と陣取っている。自転車で走れば10メートルも行ったところでパンクしてしまいそうな道のでこぼこに、時折足を取られそうになりながら、あなたと仲間はひた走っていた。
 前方にはもう二名のエージェント。どちらも暗い色の服を着込んだ、東洋系の男と女。
「長い夜になりそうですなァ、冷えて膝が痛ェですワ」
 男の歳は40過ぎ、短い黒髪にはちらほら白が混じっている。重度の愛煙家のようで、現場で顔を合わせた時から紙巻を銜えていた。それは現在にも言えることで、今もあなたの鼻を紫煙がくすぐりに来ている。
 溜息を落とした女は二十歳過ぎ程度。整った顔立ちを、顔の半分を覆う薄汚れた丸眼鏡が台無しにしていた。
「自分でこの仕事選んだくせに、女々しいこと言わないの」
「さあて、あっしでしたかね? オタクの記憶違いで?」
「間違いないでしょ、今日は奇数の日なんだから」
 左右の建物の隙間から、同時に何かが飛び出してきた。はっきりと視認することは適わなかったが、あなたは具体的に予想することができたし、それは的中していた。少年程の背丈をした、小柄な従魔である。
「やれやれ、ですワ」「まったく……」
 男が面倒そうに振った棍が、女が苛立ちを滲ませながら振り回した大振りの刃物が、それぞれを吹き飛ばす。従魔は、文字通り吹いて飛ばされてしまったように、原形をまるで残さぬまま道端の看板に飛び散った。

 街に現れた従魔の討伐に協力せよ。あなたが今宵引き受けた仕事の文面である。
 ここに誤りはなかったが、重要な情報が欠落していた。
 即ち、敵の数。
 主な目標は先ほどの、少年のような従魔であった。現地に到着したときには、砂糖にたかる小虫を思わせる規模で広場の隅に固まっていて、それを男と女が『しりとり』に興じながら淘汰している真っ最中だった。あなたが合流してあいさつをすると、応じてくれてありがとう、と女が頭を下げ、貧乏くじでしたナ、と男が笑った。

 貧乏くじとは言いえて妙である、と、あなたは少なからず感じたかもしれない。さして手痛い攻撃もしてこない、決して例えでなく『ひと撫で』で片がついてしまう手合いを、果たして敵と呼ぶことができるだろうか。できたとして、切っても叩いても殴っても貫いても、それでもそれでも這い出てくる敵を前に、果たして命を賭すように集中し続けることができるだろうか。
「報酬ふんだくってやりましょうや。もしくは一週間毎晩11時にイタズラ電話、てな如何です?」
「前者はともかく後者が情けなさ過ぎるんだけど」
 軽口を叩きながら、しかし一匹たりとも逃すことなく、間延びした警らは続いていた。



 さて、と男が立ち止まった。女も足を止め、眼鏡をずらして目頭を押さえている。
「だいたい一周しましたかね。こんだけ減らしゃあ文句も言われねぇでしょう」
「あー、もう、目痛い……」
「コーヒーでも飲みますかい? ……っと」
 男が舌を打ち、紙巻を吐き捨てた。続けて新しいものを銜え、火をつけて舌を打つ。
「川んとこ、見てませんでしたな」
「川? そんなのあった?」
「あそこですワ」と火種で指し示す。視線を飛ばせば、なるほど、弱々しい弧を描いた、錆だらけの手すりが見て取れる。確かにそこは、見かけはしたものの、他の通りを優先して見回らなかった箇所であった。
「今日はもう良くない?」
「その提案がジョークであることをあっしは重々存じてますワ♪」
「語尾上げないで、気色悪い」
 待っててくれ、見てくるわ、と、男と女が並んで離れていく。それなりに距離があったため、あなたはふたりの背中を見送り、仲間と二言三言交わして報告を待った。
 やがて、「うわー」、何よりも雄弁な、息の合った重い溜息が届いた。
 苦笑いを湛えて問いかける。いましたか?
 男と女がげんなりと振り返った。

「「たっぷりいるー」」

 力ない笑みを浮かべるふたりの背後から、大きな何かが飛び出してきた。

「おや」
「うん?」

 あなたが目を見開き、仲間が腰を落とし、得物を構える。
 ドンッ、という、腹の底まで響くような揺れが三度轟いた。

「あれがボス格ってわけね。隠れてたのか、演出の相談でもしてたとか?」
「満を持してご登場、ってか? 有象無象が調子に乗りやがる」

 あなたたちを挟み込むように降りてきた3体は、どれも似たような姿をしていた。形状は上体を肥大させた猿に近い。上背は2メートルほど。表面は単一色で、それぞれ赤、緑、青であった。口も鼻も目も無かったが、顔に当たる部分は間違いなくあなたたちを見据えており、ぶるぶると震える四肢は敵意を湛えているに相違なかった。

「――……デクリオ級くらい?」
「個々ならそのくらいでしょうなァ。生意気にも連携なんざ組んでくるなら――っとォ」
 足に絡みついてきた従魔を、男が棍で突き、落とした。橋の下の光景は、一部分だけ皮を剥いたとうもろこしに近い。看過できる規模ではなかった。
 しゃあねぇですなァ、と男が首を鳴らす。
「ほんじゃ、見せ場譲りますワ」
「危なくなったら呼んで頂戴」
 告げて女も、男に続いて橋の下へ飛び降りていく。

 あなたが呼吸を整え、得物を構えると、暴力的な照明を背にして彩色の猿<ましら>が飛び掛かってきた。

解説

●目標
→→→猿型従魔3体の討伐
気絶者が出ると成功度が減少する。周囲への被害は成功度に関わらない。
少年型の討伐ならびにNPCへの助力は不要。

●環境
・夜間。十分な照明により、視界は確保されている。
・20×20sq程度の広場。参加者の初期位置は中央。外周は背の高いフェンスに囲まれている。
 足元は舗装されており、ペナルティなどは発生しないものとする。隠れられるようなものは見当たらない。
・およそ正三角形を描くように、3体の従魔が参加者を取り囲んでいる状態。
・橋、川への移動は不可。

●敵
→→→赤猿
物理攻撃・防御↑、回避↓
発達した両腕で殴ってくる(射程2)。自身を中心として範囲(2)の物理攻撃を使用する。
また、緑猿を庇うように動く。
広場の西側に位置取っている。
→→→青猿
魔法攻撃・防御↑、移動力↓
発達した両腕で殴ってくる(射程2)。口にあたる部分から魔法攻撃(単体)を行う(射程8)。
広場の東側に位置取っている。
→→→緑猿
回避・特殊抵抗↑↑、生命力↓
味方の生命力を一定量回復する(単体、射程∞)。自分を回復することはできない。
また、攻撃手段を持たない。
広場の西側に位置取っている。

●その他
・質問にはお答えできません。

マスターより

ご検討いただけましたら幸いです。
よろしくお願いいたします。

リプレイ公開中 納品日時 2018/02/20 12:52

参加者

  • 薄明を共に歩いて
    木陰 黎夜aa0061
    人間|16才|?|回避
  • 薄明を共に歩いて
    アーテル・V・ノクスaa0061hero001
    英雄|23才|男性|ソフィ
  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 絶望へ運ぶ一撃
    黛 香月aa0790
    機械|25才|女性|攻撃
  • 偽りの救済を阻む者
    アウグストゥスaa0790hero001
    英雄|25才|女性|ドレ
  • 四人のベシェールング
    キトラ=ルズ=ヴァーミリオンaa4386
    人間|15才|女性|攻撃
  • 四人のベシェールング
    イフリート=ドラゴニアaa4386hero002
    英雄|18才|女性|ドレ
  • さいきょーガール
    雪室 チルルaa5177
    人間|12才|女性|攻撃
  • 冬になれ!
    スネグラチカaa5177hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
  • 闇を暴く
    畳 木枯丸aa5545
    獣人|6才|男性|攻撃
  • 狐の騙りを見届けて
    菜葱aa5545hero001
    英雄|13才|女性|カオ

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