本部
災いを呼ぶ獣、血鉤
- 形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 8人 / 4~8人
- 英雄
- 8人 / 0~8人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2018/01/12 19:00
- 完成予定
- 2018/01/24 19:00
このシナリオは3日間納期が延長されています。
掲示板
-
相談卓
最終発言2018/01/12 18:02:58 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2018/01/09 23:36:42
オープニング
●天地のあいだ
空を天蓋とし、大地を褥とする。
それがいまの男の生活のすべてだった。
聶(ニェ)はかつて人民公社に務める優秀な職員だった。
しかし民主化の波に乗り、一攫千金を夢見て事業を興した。
事業は、はじめのうちはうまく行っていた。工場を建設し、人員を集め、機械を入れて生産を始めた。
だが、ある日重要な商談に向かう途中で、交通事故が起きた。
一命は取り留めたが聶は両脚を失い、商談を失った。
工場も会社も妻も子も。
聶の手の中から消えていった。
そして路上で生活するようになり、めまぐるしい社会の動きを低い位置からただ、眺めている。
「この世の中に、確かなものなど何もない……」
聶はすべてを失って、かえって安らかな心を手に入れた。
中国――長い歴史を持ち、世界最多の人口を擁するこの国は、男の生きている間常に激動の中にあった。
聶は一度は激流に身を投じた。
そして飲まれた。
煌びやかな成功譚の影で、自分たちのような失敗者も居る。
成功を追い続ければ、心を失う。
そもそも男が妻も子も失ったのは、成功を追い求める中で心を失っていたからではなかったか。
窮地に陥ったときに手を差し伸べてくれるはずの友人まで陥れ、求めたものは何だっただろう?
「よう爺さん。飯は食ったかい」
吃飯了嗎(飯は食ったか)――そう尋ねるのは、この国伝統的な挨拶。
英語の挨拶を真似た你好よりも、くだけた場面で用いられる。
ゴザの上に膝上までしかない脚を投げ出し、物乞いをする聶老人に話しかけてきたのは、白いシャツに黒いスーツを着込んだ若い男。およそ彩りとは無縁な服と同様、表情もつくりものの面のように動かない。
若いのに、どこか人間らしさの欠けた男だった。
「ああ」
実際に食べていなくとも、食べたと答えるのが社交辞令だ。
聶はもう何日も食い詰めていたが、挨拶としてそう返した。
「煙草はどうだ」
若い男は少しいい煙草を差し出す。庶民に手が出ないほどではないが、やや高級な銘柄。
以前聶が会社を経営していた頃には、商談の場において煙草は最も重要な意思表示の道具だった。相手より高い銘柄の煙草を持っていればより優位に立てるし、勧められた煙草を受け取れば商談に前向き、断れば保留を意味する。
「いいね」
どこか懐かしさを感じて、聶は手を伸ばした。
煙草を受け取ると、若い男はどこにでもある使い捨てライターで火を貸してくれた。
肺いっぱいに紫煙を吸い込み、そして溜息をつくように吐き出す。
ひととき、時間が巻き戻ったようだった。
書類のいっぱいに入った鞄を持ち、自社の製品の利点を弁舌たくみに売り込む……。
あの頃、世界は無限の可能性に満ちていた。
「爺さんは、新しい工場には行かなかったんだな」
最近、工場で働く人員が足りないといって、ここらの浮浪者にも声を掛けて回る求人があった。若い男はそのことを言っているのだろう。
「わしはもう年だ。脚もない年寄りに何ができる」
「脚がなくとも、手は無事じゃないか。車椅子でもできる仕事はあるだろう」
「いいや、おそらくそれでも役立たずだろうさ。昔は人を使っていた立場だからわかるんだ」
きっぱりと言うと、男はそれ以上言い募りはしなかった。
「じゃあ爺さん、この辺でできる仕事ならどうだい? 飼ってる動物が太って来たから、散歩させて欲しいんだが」
「それこそ脚もなしに何ができる」
「いつもは台車に乗って移動してるだろう。散歩といっても、運動させりゃあいいんだ、牽かせても構わないよ」
聶のそばには古びた荷物用の台車が立てかけてあった。ずっと前にゴミ捨て場で拾ったものだ。
「台車を牽けるほど賢い犬なのかい?」
「犬じゃあないが、言うことは聞く。それでも気になるなら」
男は黒い上着のポケットから無機質なアルミのピルケースを取り出す。
その中に入っていたカプセルを一錠、老人に差し出した。
「これを飲んでみるといい。きっと爺さんの望みが叶うだろう」
●血鉤
「化け物だ!」
「逃げろ! こいつ、咬みつくぞ!」
千祥公園前の大通りは、逃げ惑う人々で騒然としていた。
突如として大通りに凶暴な獣が数十匹も現われ、人間を襲い始めたのだ。
それは遠目に見ると鼠に似ていた。
ごわごわとした暗灰色の体毛に覆われ、鼻先は尖り、ずんぐりとした体の下で短い手足がせわしなく動く。足指には、尖った鉤爪。
しかしその大きさは中型犬ほどもあり、うねうねと動く尻尾の先には蛇の頭がついて周囲を威嚇する。
闖入者に吠えかかる野良犬は、あっという間に囲まれ襲われる。
がり、ばき、と骨を噛み砕く音の後に残るのは、血溜まりと骨の残骸。
「血鉤だ……!」
誰ともなく、そう呼ぶ声がした。
血鉤とは、この地方の民間伝承にある、蛇の尾を持つ獣。
複数の獣の混じった姿をし、災いを運ぶという。
犬の肉を喰らった獣たちは、頭部が犬に似た形に変化していた。
「おい爺さん、あんたもふらふらしてちゃ危ないぞ!」
人の良さそうな男が、茫洋と歩く老人に声を掛ける。
銜え煙草で歩いているのかと見えたが、近くに寄るとそれは銀色の笛であった。
そして老人の顔には、血管が浮いたように細い肉の根が伸び、唇も目も、皮膚の上を細く伸びる肉に覆い尽くされようとしている。
わずかに開いた瞼の奥では、怯えた目がきょろきょろとあたりを窺っていた。
「うわあっ?!」
驚いて飛び退く男は、老人の膝から下も尋常でないのに気づいて蒼白になる。
老人には、膝から下が無かった。
ただ、腿から服を突き破って伸びる無数の肉の根が、木の棒を軸として脚のような形のものを形成していた。
一歩、また一歩と進むたび、肉の根があやしげな植物のように伸びて偽物の脚を補強する。
「そこの御老人は変わったなりじゃの。その脚はなんじゃ?」
共鳴した風 寿神(az0036)が死神の鎌を構え、裾の長い司祭服を揺らして進み出る。
老人は、もう振り返りもしなかった。
偽の脚に導かれるようにただ前に進む。
「逃げろ。なるべく早く、獣の群れから離れるのじゃ」
寿神は周囲の人々に声を掛ける。それからH.O.P.E.香港支部に連絡を入れる。
「風寿神じゃ。先だって蜥蜴市場の確認された街で、従魔が出た。場所は千祥公園前、公園南路じゃ。従魔は列を成し、西へ向かっておる。すぐに公園南路一帯を封鎖できるよう、手配してくれ」
【現場模式図】
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■ ■
■ 千祥公園 ■
■ ■
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ロロロロロロロロロロロロロロロロロロ
公園南路
ロロロロロロロロロロロロロロロロロロ
公園南路;横幅およそ20sq
解説
【目標】
主目標;従魔『血鉤』の撃破
副目標;事件の背景について情報収集する
【登場】
・風寿神&ソロ デラクルス
共鳴済み。公園南路にて一般人の避難誘導中。
蜥蜴市場の痕跡がないか調査を続けていたが、いままでにめぼしい情報なし。
【敵情報】
・血鉤(シィエコウ)×50
中型犬ほどの大きさのキメラ従魔。巨大化した鼠をベースにし、鳥の鉤爪、蛇の尾を持つ。
動きは速いが、基本的に群れとして動く。先導者の老人が歩いている限り、公園南路からは外れず西へ向かう。
うち10体は犬を取り込み、犬の頭を持つ。牙の鋭さと咬みつき力上昇。
《咬み裂き》;歯または牙で咬みつき、肉を裂く。
《毒咬み》;蛇の尾で咬む。減退(2)。
《毒爪》;毒のある爪で引っ掻く。減退(1)。
・聶老人(PL情報)
千祥公園で浮浪者をしていた老人。『●天と地のあいだ』の記述はすべてPL情報。
口には銀の笛を煙草のように銜えている。笛から可聴域の音は出ていない。
脚のかわりになっている肉の根は老人のライヴスを侵蝕して成長中の従魔。細く長く伸び、枝分かれをして宿主を縛る。肉の根は他の生物に接触すると新たな肉芽を埋め込もうとする。
老人を確保しようとすると血鉤たちが優先的に襲ってくる。
聶老人は頭内部も侵蝕が進んでおり、助かることは無いが、確保時期が早ければ会話可能。
【現場情報】
千祥公園は前回の東小寒路にほど近い公園。警察により通行止め。通行人及び車両は入ってこない。
血鉤を包囲する障壁としては不十分だが、先導者が居るあいだは獣の隊列は道路幅以上には乱れない。
マスターより
『蜥蜴市場』第二話です。前回のシナリオは『小羊路市場の胡蝶』。聶老人も前回リプレイの最後にチラッと顔出ししています。
香港支部よりそのつど招集なので出入り自由です。
『蜥蜴市場』という闇市場を開くヴィラン組織が居ます。中国黒社会(=マフィア組織)です。ちょっとやばい感じの奴らです。
よろしくお願いします。
関連NPC
リプレイ公開中 納品日時 2018/01/23 23:40
参加者
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相談卓
最終発言2018/01/12 18:02:58 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2018/01/09 23:36:42