本部
ネフシュタンの欠片 ~アスクラピアの棺~
- 形態
- シリーズ(続編)
- 難易度
- 普通
- 参加費
- 1,300
- 参加人数
-
- 能力者
- 8人 / 4~8人
- 英雄
- 8人 / 0~8人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/12/27 19:00
- 完成予定
- 2018/01/05 19:00
掲示板
-
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/12/26 21:35:30 -
【相談】岩蛇 in希臘
最終発言2017/12/27 17:21:01
オープニング
●クレタ島のアスクラピア
クレタ島はピュロスの宮殿、通称『ネストルの王宮』にある玉座の間で、キターブは壁画を見つめていた。玉座の両側に侍らう翼のないグリフォン。グリフォンのモチーフは地中海から中央アジアまで広く伝播しているが、翼を持たないものはここクノッソスでしか見られない。
日本の青銅鏡、ジブラルタルの青銅の杖に見られた図像の一種だ。しかし日本やジブラルタルで感じたもの――身の危険を感じるほど濃密なライヴスの気配はない。この壁画に従魔が宿ることはないだろう。やはりあの図像なのだ。あれらが揃い、配置されて初めて意味を持つ。
古代人のテクノロジー。人類が早い段階で異世界存在と接触していたことは以前から指摘されていた。彼らは現代人とは異なるアプローチで異世界存在と接したに違いない。
果たしてどうのようなことがあったのだろうか。キターブの興味は尽きない。
――これはX線による……石棺の中に……青銅……杖、蛇が……。
聞き捨てならない単語がキターブの耳に入る。後ろを歩いていた学生が絵葉書のようなものを見ながら喋っていた。
「ちょっと、君!」
思わず呼び止めたキターブは先ほどの台詞と学生が持っていた絵について訊ねた。
それは単なるイラストで、青緑色の杖が描いてある。長い杖に蛇が巻き付いたもの。丁度ジブラルタルで出土したものを修復したならこうなるであろうと思われるほど酷似していた。
「これは、この青銅器はどこで?」
「これですか? 近くにあるアスクラピアの遺跡で見つかったものです。石棺の中に入れられてまして、これはその予想図です」
「アスクラピア? この辺りの地名かい?」
「いいえ。アスクラピアとは、古代ギリシャにおける病院のことですよ」
キターブはぶるりと身を震わせた。強く着想するものがあったのだ。
「病院、アスクラピア……アスクレピオスか!」
アスクレピオス。ギリシャ神話における医学の神。彼の持つ杖にはケリュケイオンと同じように蛇が絡みついている。
「はい。これはアスクレピオスの杖をモチーフにしたものと思われます」
これだ。キターブは確信した。これは同類だ。日本やジブラルタルで出土したものと同じものだ。
アスクレピオスの杖――蛇や龍を中心としたモチーフ。
「この現場に連れて行ってくれ。今すぐ!」
●アスクラピアの石棺
「HOPEのキターブ・アルセルフです。責任者はおられますか」
遺跡の奥にある石室の中に入るなり、キターブは怒鳴るように言った。室内の中心には石棺が鎮座しており、教授と思われる老齢の男がうっそりと立ち上がる。
「私がそうだが? こんなところのH.O.P.E.が何の用かね」
「この遺跡は従魔発生の危険が高い地域として封鎖します。急ぎ撤収の準備を」
「いきなり現れて無礼な! 一体どんな権限があってのことだ」
「あなた方が現在発掘している青銅の欠片と酷似したものが既に日本とジブラルタルで発見され、いずれも従魔は発生させて周辺に被害を及ぼしているのです。これもまた従魔による被害を起こしかねません」
「理由がどうあろうと、そのような言だけでは対応しかねる。きちんとした証拠を提示してもらわねば」
当然の要求だ。手順としてはそれが正しい。しかしキターブはひしひしと感じていた。窮屈な石室に充満するライヴスの気配を。
「事は一刻を争うのです。どうかーー」
言い差し、ばきんと大きなひび割れの音が重なる。見れば奥の石棺を封じていた詰め物が砕け落ちている。
「……蝋付け、ですか?」
「いや、泥だ。石棺の隙間に詰められている」
教授の解説にキターブは訝しむ。そのような様式、聞いたことがない。
「泥。まさか、封泥ですか?」
泥による封印は封泥と言われ、中国で広く発達したが、起源は古代シュメールにまで遡る。
「ああ。よほど厳重に保存したかったのだろう。この辺りの風習とは異なっているが」
古代ギリシャの様式ではない。つまり渡来したのだ、他の場所から。
「……中身はなんですか」
しつこく訊ねるキターブに、老教授はつまらなそうに言った。
「単なる青銅の杖だ。アスクラピアの遺跡ということで何かの医療器具かとも思ったが、とんだ見当違いだったよ」
開封されていないことを示す封泥の印章がさらにひび割れていく。石棺の隙間を埋めていた泥も同様だ。空気に晒されて急速に風化しているのだろう。
そう、空気だ。それが引き金なのだ。図像を宿した青銅器が空気を――クリエイティブイヤー以降、大量のライヴスを含有してきたこの世界の大気を吸い込むことで親和性を高め、ライヴストーンのような性質を帯びる。それが結果的に従魔を引き寄せるのだ。
考察を遮断したのはさらなる鳴動だった。立っているのも難しいほどの揺れに、キターブはこれ幸いと教授達を石室から追い立てて避難するように促した。
一瞬、石室を満たしていた空気が希薄になる。キターブは直感した。青銅器が吸い込んだのだと――
その直後、衝撃が石棺から広がった。砕け散る破片をまともに受けたキターブは壁に叩きつけられ、崩れ落ちる岩に巻き込まれてしまった。近くにあった発電機も潰され、盛大な火花を上げて電球が割れ、石室が一気に暗闇に包まれる。
電球が放つ残り火のような火花の他に、暗闇の中で光るものがある。僅かな光を跳ね返す蛇の目。キターブは息を荒げ、歯の根を震わせた。身動きの出来ない密室で従魔と相対することは恐怖以外の何ものでもない。
従魔の息遣いを間近に感じる。目をまともに見てしまう。異世界存在の視線が、彼に反応を許さない。
バチバチと跳ねまわる火花。僅かな閃光で確認できたのは白い石と青緑のまだら模様。これまでの青銅器をそのまま取り込んでいたものではなく、全身に吸収している。これでは取り除くのは難しい。
そうしてどれほど時間が経ったのか、やがて気配が遠ざかっていく。岩の隙間から、従魔が天井を砕いて上に向かっているのが見える。あの従魔もこれまでと同様、周辺の鉱物を吸収して巨大化していくことだろう。
だが今は見逃された。何故だ、この近距離で。より大きなライヴスを見つけたのか、あるいは――
自分の無事を喜ぶ暇もなく、震える手を何とか動かしてH.O.P.E.支部に連絡を入れる。
「こちら、キターブ。クレタ島にて従魔……エージェントを、早く……」
「キター……今、どこに……従魔、情報を……」
スマホから雑音が聞こえる。支部の人間が何か喋っているのだが、それを言葉として認識できない。意識レベルが低下するのを感じながら、それでもキターブは気力を振り絞った。
「……敵は、全身、青銅を、吸収……。弱、点、あの蛇の、弱点、を……」
そこまでが彼の限界だった。スマホの明かりが岩の隙間に落ちていくのを待たず、キターブは意識を手放した。
解説
・目的
敵従魔の撃破。
・敵
岩蛇。青銅と石や岩で体を構成している。周辺の鉱物を吸収し巨大化するものと思われる。
・場所
ギリシャ・クレタ島の遺跡。
・状況
人里からは離れており、観光客も殆どいないが、遺跡の発掘を行なっていたチームが避難中のため近くにいる。
マスターより
今度はクレタ島に岩蛇が現れました。街からは離れていますが、遺跡発掘チームが避難している途中ですので、彼らが襲われないよう現場に急ぎましょう。
そしてどうやらキターブには相手の弱点に当てがあるようです。余裕があれば彼の話を聞いてみましょう。戦いを有利に進められるかもしれません。
関連NPC
リプレイ公開中 納品日時 2018/01/04 19:28
参加者
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【相談】岩蛇 in希臘
最終発言2017/12/27 17:21:01