本部

日常

示せ! 未来の道標

形態
ショート
難易度
やや易しい
参加費
1,000
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
多め
相談期間
5日
締切
2017/11/19 09:00
完成予定
2017/11/28 09:00

掲示板

オープニング

●出会い
「休みの日にまで勉強なんてしてられるかよ」
 屋敷に向かってそう言ってオレは森へと向かい走る。
「さて、今日はどうしようかな……」
 森を抜ければ屋敷の敷地の外だが、町まで歩くのは面倒な気もする。
 そんな事を考えながら何気なく見回した視界に半透明の女の子の姿が映る。
「お前、幽霊か?」
 まだ昼過ぎで明るかったせいかオレは不思議にも思わず自然に女の子に声をかけていた。
「お前、面白そうだな。一緒に遊ぼうぜ」
 幽霊相手に声をかけた自分に驚きつつもオレはこいつを今日の遊び相手にする事に決めた。
 差し出したオレの手にそいつが触れる。
 突然、風が吹いた。
 巻き上げられた風から顔を庇った手の中に真っ黒な丸い黒い石が有った。 
「何だこれ?」
 不思議な石を指でつまんで持ち上げる。
「あれ? お前、幽霊じゃなかったのか?」
 石の向こう側に見える女の子の姿は透明ではなくなっていた。
「まぁ、どっちでもいいや。ついて来いよ」
 オレはポケットに石をしまって女の子の手を取る。
 幽霊でないのならば使用人の誰かの子供だろう。
 戻って報告されるよりも一緒に連れて行った方が見つからないだろうとオレは考えたのだ。

 日が傾き風が冷たくなる。
 今日は何故か体が軽く、今まで登れなかった大岩にも楽に登れた。
 思う存分体を動かしたせいか腹の虫がグーと鳴く。
 そろそろ晩飯の時間だ。
「オレ、帰るわ」
 オレの言葉に女の子が不思議そうに首を傾げる。
「お前も早く帰れよ」
 オレは早く晩飯が食いたくてすぐに屋敷に向かって駆け出した。
 そして、抜け出していたことを忘れて屋敷に帰った俺は散々に怒られた。
 結局、翌日は抜け出す事も出来ずそのまま休みが終わって寄宿舎に戻ることになった。
 その時にはオレは森であった女の子の事などすっかり忘れていた。

●試練
「お願いだから、家族の問題に私を巻き込まないで」
 イリスの言葉にマリアは「友達でしょう」と応えて微笑んで見せる。
 組織(H.O.P.E.)に金(依頼料)を渡して調査で海に出ていた相手を強制的に呼び戻すのが友達というならば確かにイリスとマリアは友達なのだろう。
「クジラだの半魚人だのと違って命の危険が無い分気は楽だけど……」
 調査中の案件を思い出してイリスは大きくため息をつく。
「今回の依頼はマリアの甥っ子の説得よね」
 気持ちを切り替えたイリスの言葉にマリアが頷く。
 依頼内容を要約すればリンカーとなったマリアの甥っ子、十歳のローナン・エトワールにエージェントの実態を見せて本気でエージェントになるかを問うという物だ。
「マリアは甥っ子をエージェントにするつもりがあるの?」
「無いわよ」
 イリスの問いに迷うことなくマリアが答える。
 家族が危険に飛び込むのを歓迎する者などまずはいないだろう。
 だが、ローナンはエージェントに子供らしいヒーローのような憧れを持っている。
「最終的には本人の意思次第だけどね」
 マリアの言葉にイリスは何人かの幼いエージェントの顔を思い浮かべる。
 本気でローナンがエージェントになるのならばたとえ十歳の子供であろうと止めることは不可能だろう。
 その本気を問うためとしてマリアが準備したのがこの島の別荘に有る成人の試練だった。
「最初の三つの試練はただの建前よ」
 試練の施設の中を覗き込むイリスにマリアが声をかける。
 元々は空間認識を計る場だった第一の試練は今はただの暗い迷路になっている。
「第四の試練、マリアとの模擬戦……」
 リンカーであるローナンと一般人であるマリアの模擬戦。
 実際に重要なのはこの試練だけだ。
「半端な覚悟のまま私に挑むのならばちゃんと心を折って諦めさせてあげるわ」
 楽しげにマリアが笑顔を浮かべる。
 マリアは駆け出しのエージェント程度ならば軽くあしらえる程度にはメイスの扱いに長けている。
 相手が共鳴しているならば怪我をさせる心配もなく、加減の必要もないので覚悟が無ければマリアは容易にローナンの心を砕くだろう。
「憧れが本気に変ったらどうするの?」
 イリスの言葉にマリアは微笑む。
「その想いが本物ならば私はローナンを応援するわ」
 マリアの言葉に嘘はないだろう。
「ところで、英雄の方はどうなの?」
 イリスの問いにマリアが大きくため息をつく。
「あの子は……完全な他者依存よ。自分というものが全くないの」
 マリアのその言葉にそれなりに英雄を見て来たイリスはそれが英雄の本質に由来するものだと想像できたが、道具的な存在のままでは対等となることは出来ないだろう。
「その子も英雄もここで成長出来るかどうかがこれから先の人生を決めそうね」
 出来るならばローナンが普通の生活を選んでマリアと戦わずに済むことをイリスは心の中で願っていた。

●誓約
 目を開けると白い天井が見えた。
「目が覚めましたか?」
 聞こえた声に視線を動かす。
 大人の女の姿が見える。
 子供の男に連れられて森の中を走り回って、日暮れに森の中に置いて行かれた。
 その場所で私は待ち続けた。
 日が昇りまた沈む。
 次第に自分という存在が希薄になり世界から私が消えていくのをただ感じていた。
「まだ寝ていてください。私はリディ様とローナン坊ちゃんを呼んでまいります」
 そう言って大人の女が部屋から出て行く。
 私はベッドから降りて体を確かめる。
 手も足も消えていない。
 扉がノックされ大人の女が扉を開ける。
 部屋の外に森であった子供の男と大人の男が立っている。
「すまなかったね、知らなかったとはいえ息子は君との誓約をいきなり破ってしまったようだ」
 部屋に入ってきてリディ・エトワールと名乗った大人の男がそう言って頭を下げる。
 その隣でローナンと呼ばれている子供の男が興奮して、私がローナンの英雄で有る事、共鳴すれば悪者を倒す事が出来るのだと言う事を騒々しく話しかけてくる。
 騒がしいローナンをリディが「お前はまず彼女に謝りなさい」と叱りつける。
 私が消えかけたのはローナンのせいらしい。
 そう言われたところで私には何の感慨も無い。
 必要とされなければ朽ちて果てるのは当たり前のことだ。
 私達は誰かの傍らに有って初めてその存在が意味を持つのだから。
「何にしろ君の事は私達の家族として面倒を見よう。名前を教えてくれるかな?」
 リディの言葉に私は静かに首を振る。
 戦の為に鍛えられた私達には銘など刻まれていない。
 私は私を規定する言葉を何も持っていないのだ。

解説

●目標:ローナン・ハルスベルグの意志を確認する。

●ローナン・ハルスベルグ
 十歳の男の子。
 エージェントにヒーローのような憧れを抱いている。
 いたずら小僧で勉強嫌い。

●英雄
 十歳ぐらいの見た目の女の子。
 黒髪とおかっぱな髪形のせいで日本人形のような印象を受ける。
 今まで一言も声を発した事が無い。
 クラス:カオティックブレイド
 誓約:一緒に居る事
 幻想蝶:黒曜石

●共鳴
 二人は共鳴できますが、スキルは使えません。
 原因は二人の関係に有ります。

●ハルスベルグ家の試練
・第一の試練「暗闇の迷路」
 光源の一切ない迷路になっています。
 ※PCには地図が渡されています。

・第二の試練「揺れる一本橋」
 長さ五メートル、幅十センチメートルのひどく揺れるつり橋です。
 下は暗くて見えませんが、安全ネットが張ってあります。

・第三の試練「壁」
 レンガ積みの四角い部屋の中央を塞いで凹凸の無い滑らかな壁が設置されています。
 壁の高さは十メートル、天井との間には隙間が有り壁の向こう側に行けます。 
 床は全面にクッションがひいてあります。

・第四の試練「模擬戦」
 戦闘に十分な広さが有る土の地面に石壁の部屋。
 クリア条件:ローナンがマリアの体に攻撃を当てる事。
 マリアの装備:メイスと円盾に体を守る防具。
 ローナンの装備:長剣と円盾。
 ※どちらもAGWではありません。

●マリアの戦術
 防御主体の戦術です。
 マリアの才は天賦の物です。先読みでもするかのように攻撃を確実に防ぎメイスで殴ります。

●指導
 日数の定めはありません。
 島内には皆さまが想定したものは全てあるので自由に使ってください。
 一から三の試練も指導の道具の一つに過ぎませんので使わない選択肢も有りです。
 何も教えずビーチで遊ぶのも有りです。(南半球なので今は初夏に入る所です)

※滞在中の宿泊食事はエトワール家の別荘で出してもらえます。

マスターより

 みなさまこんにちわ。
 今回は従魔も愚神も出ないシナリオです。
 しかも戦うのは両方NPCです。
 ローナン君は皆さまの指導次第で戦術が変化します。
 とはいえ、戦わせない事も一つの選択肢です。
 戦闘中に出来る事はアドバイスの声をかけるくらいですので、戦わせるならば予めしっかりと訓練を積ませるのがいいでしょう。

 OPの内容も含めて全ての情報はPCも知っている物として構いません。

 では皆様がんばってください!

リプレイ公開中 納品日時 2017/11/26 23:17

参加者

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 断罪者
    凛道aa0068hero002
    英雄|23才|男性|カオ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 全てを最期まで見つめる銀
    ユエリャン・李aa0076hero002
    英雄|28才|?|シャド
  • 雄っぱいハンター
    虎噛 千颯aa0123
    人間|24才|男性|生命
  • ゆるキャラ白虎ちゃん
    白虎丸aa0123hero001
    英雄|45才|男性|バト
  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • 絆を胸に
    麻端 和頼aa3646
    獣人|25才|男性|攻撃
  • 絆を胸に
    華留 希aa3646hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • きっと同じものを見て
    桜小路 國光aa4046
    人間|25才|男性|防御
  • サクラコの剣
    メテオバイザーaa4046hero001
    英雄|18才|女性|ブレ

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