本部

戦闘

バトル・トリロバイト

ケーフェイ

形態
ショート
難易度
やや易しい
参加費
1,000
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
8人 / 0~8人
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2017/11/10 22:00
完成予定
2017/11/19 22:00

掲示板

オープニング

●ロシア、イリメニ湖畔

 意外にも、岩に鑿を打つ間は何も考えない。
 どうしてこんなことをしているのか、目当てのものは何なのか、一心に取り組んでいるとそんな自分の心からすら開放される。
 ロシア連邦の西方都市、サンクトペテルブルクから少し離れたイリメニ湖の畔で、男はひたすら岩を穿ち続けている。在野の古生物学者である彼の趣味でありフィールドワークだ。
 それらしき欠片が見つかっては鑿を止め、じっくりと眺める。そうして目当てのものではないと分かれば鑿と金槌を使って岩を少しづつ突き砕く。
 この辺りの地質は古生代前期にあたるカンブリア紀からオルドヴィス紀の化石が採取できるる。イリメニ湖から流れているヴォルホフ川流域は三葉虫の一種『ネオアサフス・コワレフスキー』が産出することで有名だ。
 彼の目当ても正にそれだ。古生代を代表し、地質の時代を決定する標準化石としても指定されている古代の生き物。
 いわゆる三葉虫らしい姿をしたエルラシア・キンギやアサフィスカス・ウィーレリ。長く湾曲した三本の角を持つアンピクス・ナストゥス。脇や背から棘を生やしたケラタルゲス。近くで産出するネオアサフス・コワレフスキーもカタツムリのように目が突き出た特徴的な姿をしている。
 地質が比較的地上に近い場所に出ていれば、大規模な設備は必要ない。少しずつ掘り進み、小さなか手掛かりも見逃さない根気だけあればいい。
「……ふう」
 手に痺れを覚え、近くの岩に腰を下ろす。植物などの欠片がちらほらと見つかるが、目当てのものには行き当らない。
 それでも完全な形の化石が出れば、博物館に寄贈することで名前が残る。場合によっては新たな分布や地質時代の研究論文を奏上することも夢ではない。妻や娘たちの理解は得られずとも、彼にとっては有意義で実利の伴った趣味である。
 風もないのに、不意の強い寒気が体を過ぎった気がした。彼は少し頭を捻る。今日の平均気温は七、八度。この時期にしては暖かい部類と言える。実際、これまで寒気を感じることはなかった。
 大方、発掘作業で汗を掻いたためだろう。そう結論付けて気にしないことにする。
 そうして休んでいる彼の目の前を、カタツムリがゆるゆると通り過ぎていく。
 普段見るものより随分と大きいらしく、気になって視界の端にちらりと映した瞬間、彼は鑿を打ち捨ててそれを凝視した。
 節くれた扁平な体。高くつき上がった二本の目。科学アカデミーの古生物博物館で幾度も見てきた、ネオアサフス・コワレフスキーの姿そのものだった。
「ひ、ひぃ!?」
 驚きや喜びよりも怯えと恐れが先立った。あり得ない。こんなものはあり得ない。遥か昔に絶滅した三葉虫が地上を歩くなど——
 こんな異常は、異世界のものに違いない。
 慄いている間に、周りが騒々しくなる。がさがさとムカデが大勢で行き交うような生理的嫌悪を催す音。古生物学者である彼はすぐに思い当たった。これは節足動物が歩行する際に特有の音である。
 そして三葉虫は、節足動物の祖先に当たる動物だ。
 エルラシア・キンギ。アサフィスカス・ウィーレリ。アンピクス・ナストゥス。ケラタルゲス。一瞥で確認しただけでも種々様々な三葉虫たちが畔を進み、湖の中に入っていく。ざばざばと波を蹴って泳ぐ様はいっそ優雅でさえあった。
 ただ一つ彼が気に入らなかったのは、犬や熊のような、本来の三葉虫から考えればとんでもない大きさのものばかりだったということである。
 そして小山のように一際大きな三葉虫が湖に入っていく。長く突き出た目を水面から潜望鏡のように出し、他の三葉虫の後を追う。
 麻痺していた感覚がようやく戻ってくる。心身の痺れ切った彼は自分の無事を喜んだが、三葉虫たちの向かう方向を見てそれを打ち消した。
 イリメニ湖を真っ直ぐ北上している。この先は彼の家もある大きな都市、ノブゴロドがある。
 奴らはそこへ向かっている。あんなものが、街に入ってくるというのか。
 男は携帯電話を取り出し、震える手で何とか番号を押し終えた。
「もしもし、H.O.P.E.ですか! 今すぐ来てくれ、大変なんだ! 三葉虫が、三葉虫が!」


●サンクトペテルブルク支部にて

 第一報が入ってから十分ほど。集められたリンカーたちへのブリーフィングは既に始まっていた。
「いやまったく、三葉虫が練り歩くなんていつからここはカンブリア紀に舞い戻ったんだ。化石に憑りつくとは妙な従魔もいたものだよ」
 若干キレ気味にオペレーターが冗談を放ち、状況を説明する。
「現場は幸いにもここから近いイリメニ湖。車でノブゴロドの街へ向かってもらう。連中もイリメニ湖を北上してそこを目指しているらしい」
 従魔にとって人間はライブスを有する餌そのものだ。彼らが本能的に餌場を目指すのは珍しいことではない。
「街に被害が出る前に仕留めてくれ。恐らくノブゴロドとイリメニ湖の間に展開してもらうことになる。小さな川や池があり、場所によっては足場が悪いだろう。ここにも修道院や小さな村があるのでそれも気に留めてほしい」
 ヴォルホフ川が縦断するノブゴロドの街は二十万人弱。そんな都市でドロップゾーン発生など悪夢でしかない。敵勢が街に到達した際の被害を思えば街の郊外が戦場になるのは致し方ないが、被害は極力少なくしてほしいと言外に伝わってくる。
「第一発見者が三葉虫の研究者らしくてな、色々教えてくれた。彼らは多くの体節を持っており、それらは硬い甲羅に覆われている。だが体節同士の隙間は柔らかいとのことだ。狙うならここだろう。後は前部の甲羅に付いている目や体の裏側も弱点となるらしい。まあ、化石に憑りついている従魔を祓うのが手っ取り早いだろうが」
 手先の操作でホログラムに浮かぶ三葉虫を動かし、詳しく解説する。節足がびっしりと生えた裏側は見ていて気持ちがいいものではないが、堅い甲羅を狙うよりは有意義だろう。
「数は確認されているだけで二十匹ほど。大きさは犬ほどのものから熊より大きいのとよりどりだ。こんなものが街に入り込んだらイワン雷帝のノブゴロド虐殺を再現することになるな。歴史は繰り返すと言うがいちいち先人の顰に倣うこともない。敢然と立ちはだかって迎え撃つのだ」
 一息に言い終えたオペレーターがリンカーたちの顔を満足げに眺める。皆が皆、気合いの乗った良い顔をしている。準備は万全のようだ。
「では諸君、くれぐれも頼んだぞ」
 月並みの言葉で締めくくったオペレーターが深々と頭を下げる。リンカーたちはそれぞれに頷き、半ば慌ただしく席を立った。
 現場が近いとはいえ間に合わなければ元も子もない。彼らは駐車場へと足早に向かった。

解説

・目的
 従魔の殲滅

・敵
 巨大な三葉虫の群。従魔が化石に憑りついたものと思われる。全長一メートルから三メートル以内。堅牢な甲殻を持ち、個体によっては鋭く長い棘を有する。攻撃方法は体当たり。その際は棘や角に当たらないよう気を付けること。
 水面近くを遊泳し、地上でも活動できる。動きは人の走る速さと同じ程度。知能はそれほど高くない。
 二十匹ほどが確認されているが、それ以上いる可能性があるため捜索が必要になる。
 外殻は硬いが体節ごとに隙間があるのでそこが弱点となり得る。甲羅に付いた目や裏側も比較的脆弱である。
 化石に従魔が憑依しているため、これを追い出して従魔のみを倒すことでも撃破可能と思われる。


・主な従魔(ミーレス級)
 エルラシア・キンギ。アサフィスカス・ウィーレリ。
 丸い小判型をしたいわゆる三葉虫。

 アンピクス・ナストゥス
 三本の長い角を持つ。

 ケラタルゲス
 湾曲した棘を体中から生やしている。

 ネオアサフス・コワレフスキー。
 カタツムリのように目玉が飛び出している。他の従魔よりも大きな体躯をしている。

・場所
 川の岸や湖の畔。泥濘が多く足場が悪い。修道院や村のあるところまで行けば足場はしっかりしているが、人が住んでいる場所なので被害を出さないよう注意が必要。

マスターより

こんにちは、ケーフェイです。

化石とか古代生物ってロマンがあっていいですよね。そんな奴らと戦えたらと思うとワクワクしますね。
街に入られたら大変なのでその前に全滅させてください。

初MS作となるので、よろしくお願いします。

関連NPC

  • エージェント
    キターブ・アルセルフaz0101
    人間|27才|男性|-

リプレイ公開中 納品日時 2017/11/14 18:29

参加者

  • ほつれた愛と絆の結び手
    黄昏ひりょaa0118
    人間|18才|男性|回避
  • 闇に光の道標を
    フローラ メルクリィaa0118hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • 死を否定する者
    エミル・ハイドレンジアaa0425
    人間|10才|女性|攻撃
  • 殿軍の雄
    ギール・ガングリフaa0425hero001
    英雄|48才|男性|ドレ
  • 神月の智将
    ハーメルaa0958
    人間|16才|男性|防御
  • 一人の為の英雄
    墓守aa0958hero001
    英雄|19才|女性|シャド
  • 対ヴィラン兵器
    鬼灯 佐千子aa2526
    機械|21才|女性|防御
  • 危険物取扱責任者
    リタaa2526hero001
    英雄|22才|女性|ジャ
  • 復活の狼煙
    リジー・V・ヒルデブラントaa4420
    獣人|15才|女性|攻撃
  • エージェント
    オーリャaa4420hero002
    英雄|11才|女性|ソフィ
  • 悪食?
    逢見仙也aa4472
    人間|18才|男性|攻撃
  • 死の意味を問う者
    ディオハルクaa4472hero001
    英雄|18才|男性|カオ
  • 悪性敵性者
    火蛾魅 塵aa5095
    人間|22才|男性|命中
  • 怨嗟連ねる失楽天使
    人造天使壱拾壱号aa5095hero001
    英雄|11才|?|ソフィ

掲示板

前に戻る
ページトップへ戻る