本部
愛された鉄くず
- 形態
- ショート
- 難易度
- やや易しい
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 4人 / 4~8人
- 英雄
- 4人 / 0~8人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/05/18 19:00
- 完成予定
- 2017/05/27 19:00
掲示板
-
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最終発言 -
【相談卓】
最終発言2017/05/17 21:54:57
オープニング
●
ふわりと心地よい春の夜風に髪を当ててみれば、思い出すのは懐かしい日記の一節だった。地元の中学校から帰ってきて宿題を手早く済ませた遠塚(とおづか)聖(せい)は、シャープペンシルを机に放り投げ、ベッドに寝転んだ。
部活が疲れた。吹奏楽部の練習で、日が落ちるのが長くなると部活の時間も長くなるのだ。冬は四時半までだったというのに、今は六時までトランペットを吹いている。
今日は個別練習ではなく、平日では珍しく全員で集まっての演奏だった。部長が指揮をして曲を演じるのだ。その時に遠塚は大きな失敗をして曲を中止してしまった。一人だけ別の節を吹いていたのだ。
それが切っ掛けで小さなミスが続いて、正直――へこんでいる。両親は元気がないと心配してくれているようだが、今慰めてくれるのはこの優しい夜風だけだった。
「はあ」
大げさな溜息が出る。
もしも、リータンがいてくれたなとありもしない願いが胸に浮かぶ。
リータンとは、言ってしまえばただの機械。皆の持つスマートフォンと同じような大きさで、スマートフォンとは全然違うただの機械だった。
誰が見ても機械だというリータン。遠塚にとっては大事な親友だった。
遠塚の祖父、俊憲(としのり)は小さな設計事務所の所長で、五年前に肺癌で亡くなった。聖は典型的なおじいちゃん娘で、祖父が危険な状態だと親の会話を盗み聞きしてから毎日泣いていた。
人間界に置いていく聖を心配した俊憲は、事務所にあるガラクタ達を集めて世界で一つだけ、聖のためのロボット「リータン」を製造したのだ。親友であり、形見。
「リータン~……」
形見の寿命は早かった。そもそもガラクタの寄せ集めでできたロボットだから寿命は早かったのだ。四年もすると動かなくなって、電池もつかなくなってしまった。代えがきかないリータンを聖は、泣きながら庭に埋めた。
人工知能という高性能なものではなかった。リータンは会話はできるが、会話文には限りがあった。
「たっだいま~!」
『おかえり~聖ちゃん。元気?』
「元気だよ。リータンは?」
『元気。今日のリータンは快晴模様~。ただし明日は不明』
「あははーなんだそれ! 面白いなあ」
会話を更新するのは両親の役目であったと知ったのは、聖が中学一年生になった頃だろうか。
親友はいつもこの部屋の机に乗って聖が帰ってくるのを待っていた。リータンが亡くなったのは、ちょうど昨年の春くらいだった。その日も心地よい夜風が吹いていたから、リータンも安心して天国にいけるだろうと思ったものだった。
「あ、まーたお風呂も入らずベッドに乗ってー」
制服のままベッドに乗ることを聖の母親はダメと言っていた。しかし聖はあまり忠告を守らず、今も舌をぺろりと出して「ごめんね」と言うだけだった。
「もう。宿題は?」
「バッチシ! 今日はちゃんとやったよ」
「そう。さっき連絡網で回ってきたんだけど、明日は学校休みですって」
聖はベッドから起き上がった。
「え、ホント?! え、なんでなんで」
「どこからともなく従魔が集まってきてるんだって。従魔がどこかにいるんだけれど、具体的な場所は分からなくてリンカーさん達も四苦八苦してるみたい」
「今日ばっかりは従魔に感謝しようかなぁ。明日部活、行きにくかったんだよね」
「怒られたから?」
「怒られてはないよ! むしろ励まされちゃったくらいだけど……。なんか練習する気が失せちゃってさ」
「一回ミスしたからってそれなら、あんた人生難しいよ。もっと気楽に生きなさい。さて、明日は外出禁止ね」
「えー友達の家にいくのは?」
母親は呆れた顔をした。聖はまた舌を出した。この光景は日常茶飯事であり、双方のお約束みたいなものだ。
「あんたが銃を持って従魔を撃退できるなら別にいいけど」
「冗談冗談! おとなしくしてるよー。よっしゃー明日は久々にゲーム攻略だー」
「目が疲れるから程々にね。楽器は持って帰ってきてないの?」
「こういう時に限って持って帰ってきてないのが聖ちゃんクオリティ―的な」
「はいはい。後、万が一リンカーさん達の対処が遅れて避難指示が出た時に備えておいてね。ゲームとかしてる場合じゃないから」
「ぐえー」
こういう時、大人ならば色々考えなくてはならないから大変だ。避難場所の確認や、H.O.P.Eへの電話番号の確認。他の町民の心配もしなくてはならないし、最悪のケースも想定しなくちゃならない。だが中学生の聖は、若干ワクワクしていた。
非日常感だ。毎日同じ生活をしていると、心に刺激が欲しくなるのが子供である。
明日は一体どんな一日になるんだろうか?
解説
●目的
原因の解明
●状況
事件前日の夜に多量の従魔が街に集まっているとプリセンサーに反応があり調査のためリンカーが駆り出されるも、従魔の姿は発見できないため一度帰還。当日になると従魔が一斉に地面から姿を現して街を徘徊する。四方八方からまるで何かに吸い寄せられるように集まってくる。
従魔の種類も複数であり、調査を進めないと目的は分からないだろう。
●原因
原因は遠塚家の庭に埋められたリータンであった。デクリオ級の愚神が機械に憑依して自身のライヴスの力で電源を復活。電波を利用して従魔を集め、街を支配しようと目論んだ。従魔、愚神の情報は次の項にて
●カエル型従魔
舌を伸ばし、気泡を飛ばす人間サイズの従魔。身体に触れるとべたついていて、近接攻撃等の耐性がある。粘液を浴びても特に異常はないが、気色悪い。合計七匹
●ボール型従魔
色とりどりの完全な円球の従魔。人間に近づくと武器に変形して危害を加える。合計五匹
●土偶型従魔
煉瓦で出来た土偶のような姿をした従魔。非常に硬く重い。倒すには時間がかかるだろう。合計八匹
●愚神
元々は実態のある愚神だったが、憑依することで完全にリータンと同化。従魔が集わない限り愚神は姿を現さずに待ち続ける。
リータンを完全に破壊すれば愚神も消滅する。従魔達は消滅しないが。
●遠塚 聖について
もしもリータンが復活した事に気付けば、愚神がいることを構わず平気で街中に逃げ込むだろう。たとえ従魔がいようと。
せっかく親友が帰ってきてくれたのだから。
マスターより
※当MSはアドリヴ成分が多めです。
実際に夜風に当たりながら今は書いてます。
なぜかこの時期の外の香りは思い出をくすぐります。直感で懐かしいって思わせられるんですよね。どうしてかはわかりませんが。
子供の頃の玩具、ちなみに皆さんはどんなものを思い浮かべましたか。私はお喋りのファービーでした。ナデナデシテーっていう可愛らしいものです。親戚のおじさんに買ってもらったなぁとしみじみ……。
リプレイ公開中 納品日時 2017/05/25 19:15
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【相談卓】
最終発言2017/05/17 21:54:57