本部
これこそが『愛』だッ!!
- 形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 8人 / 6~8人
- 英雄
- 8人 / 0~8人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/05/10 07:30
- 完成予定
- 2017/05/19 07:30
掲示板
-
愛の相談卓~♪
最終発言2017/05/10 02:44:46 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/05/10 00:09:07
オープニング
●
再開発が進むにつれ姿を消していったとはいえ、下町にはいまだ古ぼけた映画館が残っているところが少なくない。
ここはそんな映画館のシアターの一つである。観に来る客は地元のおじいちゃんかおばあちゃんばかりで、若者が来ることはまずありえない。そして公開される映画も、決まって流行に乗ったものではなく、安価な製作費で作られる趣味全開のB級映画だ。
ちなみに今さっきまで映し出されていたのは、若い女性に一目ぼれをして以来ストーカーを繰り返した男が、何度も警察の注意や裁判所の接近禁止命令を破り続け、とうとう女性を殺してしまうという夢も希望もない作品であった。
観客のほとんどがハズレを引いたという顔で帰り支度を始める中、一人だけが肩を震わせていた。
「す……」
彼は感極まったという風につぶやくと、おもむろに立ち上がって叫んだ。
「素晴らしいッ!! こんな、こんな物語を人間は作る事が出来るのかッ!? なんて素晴らしいんだ、人間の『愛』を如実に、克明に描き出している! オレが生きてきた中で最高の傑作だ!!」
薄明りに照らされたその顔は、日本人離れした端正な青年のものだった。周りの目を全く気にすることなく映画に対する賛辞を述べるその姿は、まさしく日本人から見た外国人のオーバーリアクションであっただろう。
彼はひとしきりミュージカルのように興奮しながら言葉を並べ立てると、ふと我に返っていった。
「……こうしてはいられない。すぐにこの『愛』を実践しに行かなくては! 人間がどのような『愛』を紡ぐのか、そしてどのような反応をしてどのような結末を迎えるのか! オレにはそれがすべてわかっているのだから!」
そう言い切ると、彼は一足とびに座席横の階段を駆け下りてシアターを後にした。
残されたおじいちゃんたちは呆然としながらも、目の前で嵐のように巻き起こった光景を反芻してぽつりとつぶやいた。
「……やっぱ外人さんってのは、情熱的なんだなあ」
●
さて、そんな出来事が起こっていたとはつゆも知らず、深夜に犬を連れて散歩する女性がいた。仕事に追われていたのか、服装は着替えもせずに黒いスーツのままだ。人口の光が届かない闇の中だと、白い肌だけがぼんやりと浮かび上がる。
彼女はリードをつけた先で前を行く愛する小型犬を見ていった。
「ごめんね、毎日こんな時間に散歩させちゃって。もっと早い時間にできればいいんだけど」
わん、と元気のいい返事が返ってきた。心配するな、と伝えているかのように思えて、女性はふっと笑みを浮かべた。
この犬と出会ったのは上京する二年前のことである。偶然拾ったこの犬を女性がいたく気に入り、両親の説得をはねのけて一人で世話をしてきたのだ。そのおかげで一人と一匹の間の絆は強い。彼女が待てと言えばいつまででも待つし、だめといえば二度と繰り返すことはない。そんな間柄だ。
「せめてもう少し時間に余裕がある仕事につければよかったんだけど……」
はあ、とため息をついたその時、暗闇の奥に誰かが悠然と立っていることに気が付いた。目を凝らしていると、人影のほうがこちらに近付いてきた。
「こんばんは。こんな夜中に犬の散歩?」
黒い革ジャンにダメージジーンズ。西洋系のモデルかと思うほど整った顔立ちに、女性はまず疑問を抱いた。どうしてこんな人がわたしに声をかけるのだろう? そもそも彼はこのあたりにいただろうか?
すると、青年は体を電流が巡ったかのようにぶるりと震えた。
「いいね、その表情。どうしてオレがここにいるのかわからないって顔だ。いいね、実にいい。あの映画とおんなじだ」
「……あの、一体どういうことですか?」
「決まってるさ。この状況だと答えは一つしかない」
生年は両手を広げると、暗がりの中なのにやけにくっきりと見える笑顔で言った。
「オレは君に惚れている」
「……は?」
「なので、オレは何としても君を殺さなくちゃあならない。あの映画ではそうしていた。それが人間の『愛』なんだからな」
「な、何を言ってるんですか? わたしを殺すことが愛なんて、そんなのおかしいですよ。あなた、どうかしてるんじゃないですか?」
だが、青年は批判など意に介さずゆるゆると首を横に振って、
「ああ。それでいい。そうして俺のことを嫌って憎んで恨んでけなして罵倒して――最後には、オレの腕の中で息絶えるんだから」
まともじゃない。
早く逃げなければ、本当に命が危ないかもしれない。
そう考えた時には、きっともう遅かった。
いつの間にか目の前に現れた青年は女性よりずっと大きく、威圧感を与えた。地面に足が縫い付けられたかのように動けなくなった女性を前にして、青年はいっそ慈愛的にさえ見える笑みとともに、首元に犬歯を突き立てた。
吸血鬼のような光景であるが、吸いだしているのは血液ではなくライヴスだ。生命エネルギーをものの数分で吸い尽くされた女性は、彼の足元に力なく転がった。
青年はついさっきまで女性の首を噛んでいた犬歯を愛おしげに撫でて呟いた。
「……この感覚か。この感覚なのか。……だが、まだ足りない。もっと、もっと人間の『愛』を知らなくては。そうでなければ、これほどまでに濃密なライヴスは得られない……!」
夜空に浮かぶ月を見上げていた青年は、そこでようやく雑音に気が付いた。
それは彼の足元で女性の亡骸に寄り添いながら吠え続ける、彼女の愛犬だった。沈黙した彼女の仇をとらんとしたのか、あるいは下手人を追い払おうとしたのか。憎しみがこもった瞳とともに吠え立てていた。
「……、」
それを何の躊躇もなく右手から出した衝撃波で絶命させると、青年は軽やかな足取りで闇に消えていった。
●
「……以上が事の顛末だ。すでに犠牲者は三人目を数えた。次に現れるのが人通りの多い繁華街。これ以上の狼藉を許せば、犠牲者はますます膨れ上がる。ここらで一旦終いにしてくれ。
奴を……デクリオ級愚神『ラヴァー』を倒せ。偽りの愛を粉微塵にしてやれ」
解説
目的:デクリオ級愚神『ラヴァー』の討伐、並びに一般市民の保護
『ラヴァー』
・デクリオ級愚神。見た目には若い西洋風のイケメンにしか見えない。下町の映画館で見たB級映画から人間の『愛』を間違って学習し、その実践のために行動している。
・武器はなし。素手で戦うが、手のひらから衝撃波を出したり、吸血行動のようにしてライヴスを奪い取ることがある。
かなり素早く、また人混みに紛れて攻撃を防ごうとする。消耗すると群集の中で気に入った相手からライヴスを奪い取ろうとする。
スキル
・受け取ってくれ、我が愛!
『愛された者』専用の攻撃。距離を一気に詰め、ライヴスを奪い取る。対象者に大ダメージ、加えて[減退]付与。
・この愛を捧げよう!
二連続の回し蹴り。
・リラクタント
『愛された者』以外への専用攻撃。右手と左手から黒い衝撃波を放つ。名前の通り『しぶしぶ』使っているので、ダメージは低いが範囲は広い。『愛された者』には当たらない。
(PL情報:『愛された者』に該当するPCは完全ランダム。最大三人。ちなみに『ラヴァー』は『愛』そのものに関心を持っているので、対象の性別は全く問題視していない。つまり両刀)
繁華街
・人でにぎわう週末の繁華街。メインストリートの左右に二階建てのアパートのような建物が奥に伸びているが、横道も多い。道幅は片道二車線程度。
・当然だが人が多いのはメインストリート。ただし横道にも少ないが人はいる。
・事前に避難勧告や一般人の立ち入り禁止を発布することは可能だが、そうすると『ラヴァー』も近寄らなくなる。『ラヴァー』に気づかれないようにこっそりと避難誘導を行うことは十分可能。
・天候は晴れ。
マスターより
お久しぶりです、山川山名です。
今回のテーマはもちろん『愛』。敵となる彼の思想はいろいろと破綻していますが、しかしそれを愛の一形態でないと切り捨てられる人はいないでしょう。
個人的な話として、この戦いに挑む人々の「愛とは何か」という思想に触れられたらうれしいな、と思います。
リプレイ公開中 納品日時 2017/05/15 17:24
参加者
掲示板
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愛の相談卓~♪
最終発言2017/05/10 02:44:46 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/05/10 00:09:07