本部
- 形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 6人 / 4~6人
- 英雄
- 5人 / 0~6人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/04/03 15:00
- 完成予定
- 2017/04/17 15:00
このシナリオは5日間納期が延長されています。
掲示板
-
相談卓
最終発言2017/04/03 13:06:26 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/03/30 20:58:51
オープニング
●屍国、と誰が言った
十時少し前。
植枝リコは胸の奥に重いものを抱えながら車を走らせていた。
愛媛との県境や鳴門市では何かが起こったとニュースがあったが敢えて耳を塞いだ。
「大丈夫、香川には被害が少ないし────」
それがリコの心を支える言葉。
空は晴れて、外を吹く風も先月よりだいぶ暖かく、もうすぐ訪れる春を感じさせる。
「朝日山森林公園では桜に蕾がついて開花までもうすぐだって」
誰もいない車内でぽつりと呟く。
桜が有名なあの公園で今年も花見がしたい。
きっと、空を覆うあの美しい桃色を見れば、きっとこの気持ちも晴れるに違いない。
四国では新型感染症が流行っている。
ただの風邪ならまだよかった。高熱や隔離されるくらいなら今の自分は感染したって良かった。
でも、それはほんの少しの傷口から感染し、罹ると人は死んでゾンビになる。
リコはその様子をまだ見たことは無い。テレビでも放映されたらしいし、インターネット上でもゾンビ化した被害者の画像を見ることはできるらしいが、怖くて観ていない。
新型感染症で何人も死に────ゾンビになった。
ほんとうは家に篭っていたい。できれば、どこか遠くに引っ越してしまいたい。
でも、経済的に豊かでもなく、遠くに頼る当ても無いリコはまだ様子を見ることしかできなかった。
先の見えない長い緊張はリコの精神をぼろぼろにしていた。
通勤退勤は即座に自家用車に駆け込み、夜はアパートで息をひそめて過ごす。しかし、食料はそうは行かない。人手が足りないのか通販の宅配業者も遅れがちになったし、知らない人間から荷物を受け取るのも嫌になって、リコは休日の明るいうちにスーパーへ駆け込み、必要なものを買いだめするようになっていた。
────怖い……怖いよ……。
運転するリコの視界がぐにゃりと歪み、彼女は慌てて滲んだ涙を拭う。
…………誰かがどこかで嘲笑った気がした。
●恐怖のなかでも
スーパーマーケットの駐車場に車を停め、リコは眉を顰めた。
────また人が増えてる。
今まではこの時間には人がほとんど居なかった。けれど、新型感染症絡みの事件が続くうちにリコと同じ考えの市民が増えたのか、この時間でも混むようになっていた。
「もっと早く来なくちゃ」
ぽつりと呟いて、慌てて首を横に振った。
二十四時間営業の店舗もあるが……。
────駄目、明け方じゃまだ暗いわ。太陽が出ていないと。
新型感染症事件に時間は関係ないが、それでも、彼女は太陽の光を頼りにしていた。
ショッピングバスケットを手に取り、運転席のドアを開ける。
そして、動きが止まった。
くちゃ、くちゃ……。
野良犬が何かを食べている。
嫌悪感にリコが顔を歪ませた。
────やだ、何かの死体……。
違った。
確かにそれは死んだ犬の死骸を食べていたが、食べているそれも屍体であった。
犬のゾンビが同じ犬のゾンビを喰らっていた。いや、食まれているのは犬の死骸だけでは無い。だが、リコの思考はそこで止まった。
ぼこ……ぼこ……。
千切れた皮とその合間から覗く筋肉が脈動する。背骨から拡張した骨が細い腕になり、脚の爪が皮膚を破って鋭く伸びる。
ひっと小さな悲鳴が漏れた。
いけない、そう思う間も無く、おぞましい化物と化したゾンビ犬と目が合う。
黄色く淀んだ眼球が、悲鳴を上げるリコを捕らえ、背中から伸びた長く骨ばった手が、反射的に顔を庇ったリコの腕を殴りつけた。
「いやぁあああ!」
しかし────、絶叫を上げるリコを後目に、その化物はリコに背を向けた。
「……えっ」
ゾンビ犬はのそのそと駐車場の向こうへ歩いて行く。
リコの悲鳴で何が起きたか気付いた人たちが騒ぎ出した。
「ゾンビだ、感染した!」
近くに居た誰かがリコを指さした。
同時に、空から鳥のゾンビが駐車場内の人たちを襲い始めた。
駐車場に残されたリコの心臓が早鐘のように打つ。
絶対に殺されると思ったのに、今まだ残るおそろしいその残骸のように食べられると思ったのに、なぜ自分は生かされた?
無意識に右腕をさすり、ぬめりとした感触に、一瞬、息が止まる。
次の瞬間、滝のように涙が流れた。
リコは震える手でスマートフォンを掴むと、お守りのように登録していたH.O.P.E.に電話した。
現在地と名前を告げ、混乱した頭で状況を伝える。
「────犬のゾンビが一匹……ゾンビの鳥が一匹……。私が見た犬は仲間を食べて恐ろしい姿に……それより、あの、私……私、たぶん、感染しました」
そこまで言った時、巨大な鳥の影が横切り、驚いて彼女は通話を切ってしまった。
晴れていた空が暗い。
彼女が心のよすがにしていた太陽が隠れた。
────ギャア……。
望んていたのは桜の緋色の雲。けれども、空を覆ったのは腐肉滴らせた鳥の群れが成す黒い雲。
喉が張り付いて悲鳴が出ない。
「逃げなければ」
仕事もお金も、どうでもいい。
逃げなければ。
「助けてえ!」
悲鳴をあげた誰かの方をリコは見た。
自分以外の人々が襲われている。
もしかして、とリコは自分の未だ血が流れる腕を見た。
────感染したら襲われない?
「逃げて!!」
弾かれたようにリコは近くの人に覆いかぶさった。
「ひっ、あなた」
「大丈夫! まだ正気……だから────逃げよう」
泣きながらリコはその人を全身で庇って走る。
腐った鳥はリコを避けてその下の人間を襲おうとするが、ジャケットを広げたリコがそれを阻止する。
すると、不思議な事が起こった。
…………それを見た、他の人々が同じようなことをし始めた。傷を負って感染したであろう人々が。
駐車場に居た全員がスーパーの中に入った時、誰かが叫んだ。
「町は駄目だ! 山だ、とりあえず山に逃げろ!」
彼の見ていたスマートフォンには悲惨な町の状況が映し出されていた。
だが、このスーパーもすでにゾンビに囲まれている。
────もう、この街はだめ。もう、私たちは駄目……。
誰もが諦めたその時、スーパーの駐車場に三台のバスが止まった。
ドアが開くや否や武器を持った数人が飛び降りた。
リコはスマートフォンを握りしめ、呟いた。
「H.O.P.E.の、リンカー……」
さっきとは違う涙がほろりと零れた。
解説
●目的
・生きている一般人全員をバスに乗せ、バスを出発させること
・ボスゾンビ二体を倒す
※従魔が蠢いており、駐車場内にバスは入れません(車で店内へ突撃などは不可)
※バスを動かせれば、車内の住民はH.O.P.E.の庇護下の避難所まで待避できます
●敵:蟲毒ゾンビ×2※同じゾンビを食べることによってパワーアップしたゾンビ
・蟲毒・狗:デクリオ級相当、獣ゾンビを率いている
四つん這いになった人間程度の大きさ、素早くはないが攻撃範囲が広めで防御力が高い
背中から鋭い爪を持った一メートル程の細い人間の腕が生えており、それで周囲の人間を引っ掻くことが出来る
・蟲毒・禽:デクリオ級相当、鳥系ゾンビを率いている
鴉程度の大きさ、素早いが高くは飛べない、攻撃力が高い
※蟲毒ゾンビが生きている限り、配下ゾンビは統率が取れ、隙があれば一般人を傷つけることを優先するが、蟲毒ゾンビ撃破後、大半はエージェントを優先して狙う
※配下ゾンビは倒し切ることはできない
●ステージ:香川県山沿いの町のスーパー
(スーパー)―(駐車場)―(バス×3台)
※駐車場に蟲毒・狗ゾンビ、バスの上空に蟲毒禽ゾンビ
※店内の民間人は32名、うち12名は感染の疑い
●状況
店舗からバスまで100m
蟲毒従魔・狗、禽は必ず襲ってくる
ドアを開けるとゾンビ鳥・犬が店内に侵入を試みる
バス×3…1台乗員77名(運転手含む)、最後尾の一台は運転手とリンカーのみが乗車していたが、他二台には町の住民が乗車(満員ではない)
蟲毒従魔たちを倒さないと他二台も邪魔されて発車できない
PL情報:
禽は民間人に感染を広めるため素早く建物外を飛び回り、狗は店への侵入を試み成功すれば店内を走り回り感染させます。
邪魔すればエージェントに襲い掛かかりますが、感染を広めるのを優先しています。
ゾンビたちは一般人は傷つけ感染させることが目的ですが、エージェントは殺そうとしてきます。
マスターより
PC情報
・ゾンビからの接触で感染したリンカーは居ない
・一部の病院では延命治療ができるが、治療薬は数が数が非常に少なく貴重
・現在、愛媛側から大量のゾンビが香川に侵攻中
お世話になっております。
従魔たちから人々を護り、逃がすことが目標です。
こちらの従魔は屍国イメージノベルの『夜、深まりて』に登場した強化ゾンビの一種になります。
前回は家族からインフルエンザを貰ってリアルで感染の恐怖と隔離の難しさを味わいました。
屍国の人たちのメンタルが心配です。
ちなみに、タイトルは『【屍国】蠢き散蒔き殖(ふ)えよ種』です。
リプレイ公開中 納品日時 2017/04/17 03:38
参加者
掲示板
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相談卓
最終発言2017/04/03 13:06:26 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/03/30 20:58:51