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戦闘

【屍国】絶望の謳い声

ららら

形態
ショート
難易度
普通
参加費
1,000
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
8人 / 0~8人
報酬
普通
相談期間
5日
締切
2016/12/20 19:00
完成予定
2016/12/29 19:00

掲示板

オープニング

「おい、聞いたか? 高知の惨状……」
 ひそ、ひそ、ひそ。
「聞いた聞いた。人が次々死んで……」
 ざわ、ざわ、ざわ。
「もう百人以上死んでるらしいな。しかも……」
 ひそ、ひそ、ひそ。
「死んだ後に蘇るらしいわ。そう、ゾンビみたいに……!」
 ざわ、ざわ、ざわ。
「しかも、このゾンビ化現象、感染するって話でさ……」
 ひそ、ひそ、ひそ……。

 寒々しい曇天の下、不安に凍えた人々が身を寄せ合っていた。
 腕に買い物袋をぶら下げた幾人かの主婦、缶コーヒーを片手に休憩室で寛ぐ会社員達、霜柱を踏み荒らすランドセルの集団。
 怯えきった顔をする者がいれば、笑いながら話す者もいる。然しどのような表情をしていても、誰しもがその裏側に同じ感情を抱いていた。
 不安。
 身も凍るほどに冷たい“不安”の沼底へ、彼らは、四国の大地は緩やかに誘われようとしている。
「感染って……病気なの?」
「愚神の仕業だとか、新種の病気だとか情報が錯綜して……」
「わ、私達ももう感染してたり……?」
「そんな……みんなゾンビになっちゃうの?」
「そう言えば、昨日隣の家の爺さんが具合悪そうに……」
「一昨日から風邪っぽいけど、俺、何ともないよな……?」
「政府は? よくわかんないけど、治療薬の事とか……何も言ってないの!?」
「いや、どう考えても薬の開発より、俺達が死ぬ方が早い……」
 不安は様々なものを呼んだ。悲観、諦観、疑念、焦燥、絶望。事件はあたかも底なしの洞穴が如く覗く者の心をざわめかせる。
 原因も、治療法も不明の奇病。そもそも病であるかさえ不確かだ。
 ヒトが恐怖を覚える最も大きな二つの要素……“未知”と“死”を体現した一連の事件は、実際に遭遇するまでもなく既に脅威と言えただろう。
 だがそれでも、彼らには心の拠り所があったのだ。
「隣町の奴ら、この前H.O.P.E.のエージェントに助けられたって」
「そうだ! H.O.P.E.なら何とかしてくれる……よな?」
 誰かがその名を口にすると、冷え切った空気に不思議と温かみが差し込んだ。
 一連の事件が不安を呼ぶものであるのなら、その名は対局。安心、期待、希望を孕むもの。
「これまでだって、何度も、何度もあいつらが世界を救ってくれてたんだ。今度だって……」
「そうだ! あいつらなら何とかしてくれるし、その間に治療薬ができるかもしれない!」
 ……このように、事件が話題に上るたび、人々の不安が掻き立てられるたび。最後にはその名を誰かが呟き、ほんのひと時であれど不安から目を逸らす。
 概ね此処ひと月ほど、比較的被害の少ない愛媛県の県民はそのようにして、この事件と付き合っていた。
「H.O.P.E.なら……」
「きっと治療薬が……」
「大丈夫……大丈夫だ……きっと、今回もなんとかなる……なんとか……」

「何ともならないよ」

 その言葉は、魔性を秘めていた。

「みんな死ぬんだよ」

 人々が振り返ると愛らしい少女がいた。
 底抜けに無邪気な笑顔で、死神の鎌のように黒く冷たい言葉を吐いた。

「希望なんてないんだよ」

 人々は様々な反応を見せた。
 ある者は少女を気味悪がり、ある者は少女を叱りとばし、ある者は少女を空気のように無視した。
 だが――少女の言葉には、魔性が秘められていたのだ。

「みんな死ぬ。みんなみんな死ぬんだよ。
 希望が実るのはドラマの中だけ。治療薬なんて開発されてないし開発されてても間に合わない。未知の病原菌でみんな苦しみながら死んじゃってニュースとかになって一週間くらい騒がれるけどだんだん異常気象とか芸能人の電撃結婚とかこの冬新作のスイーツとかそういうニュースに埋もれてそのうち誰も気にしなくなる。あなた達はどうでもよく死ぬ。苦しみもがき醜く腐り落ちながら死んだ後ゾンビになってもう一回H.O.P.E.の人たちに殺されて死ぬ。死ぬ。死ぬ。みんなみんなみーんな誰にも助けて貰えず惨たらしく死ぬ。痛いよ怖いよ死にたくないよ。でも死ぬ。希望はない。希望はない。希望はない。そんな風にみんなも本当は思ってるでしょ? 現実ってそんなものだって思ってるでしょ?
 ――ね、“メイちゃんの言う通りでしょ?”」

 H.O.P.E.という希望を盾に誤魔化し続けていた剥き出しの“不安”を、少女の言葉は深く抉る。
 人々の瞳から光彩が失われ、鬱屈とした顔の者はより深い鬱屈をたたえ、笑みを浮かべていた者はより笑みを深くした。
 そうして次々と口から漏れ出た言葉は、皆一様に同じ感情に彩られる。

「“死ぬ死ぬ死ぬ死ね死ぬ死ね死ぬ死んじゃえ死んじゃえみんなみーんな腐って死んじゃえ死ね死ね死ね絶望して腐って死ね死ね死死死死死”」

 即ち――絶望。



「エマージェンシー! 愛媛県X市の街中に従魔が発生したとの通報がありました! 目撃情報から四国で多数の出現が確認されているゾンビ型従魔と同種と推定されます!
 この場合、ゾンビに攻撃された住民もゾンビ型従魔と化してしまう可能性が高く、非常に危険な状況です! 動けるエージェントは直ちに出動を――」



 現地に降り立ったあなた達が目の当たりにした光景は、当初の予想と些か異なっていた。
 住民は既にゾンビ型従魔に襲われており、もはや一刻の猶予もなく生き残った人々の救助が求められた――不幸中の幸いとしてゾンビ型従魔は戦闘力が極めて低く、掃討自体は容易と思われた。
 ただ一点問題があるとすれば“人々が助かろうとしていない”点か。
 死ぬ。みんな死ぬ。希望はない。
 譫言のようにそんな事を呟きながら人々はゾンビの爪を、牙を無抵抗に享受し、空虚な顔でびゅうびゅうと血液を吹き出しながら地に倒れる。
 其処は、絶望の檻だった。



「あはははははははっ! おっかしー! ちょっとつっついただけでみーんな“綿が出ちゃった”!」
「……綿なんか出てないよ。ただ、みんな狂っただけだよ」
「よーするに壊れちゃったんでしょ? じゃあ綿が飛び出たのと一緒じゃない?」
「……うん、そうだね。メイちゃんの言う通りだよ」
 X市――何処か。
 如何にも気弱そうな少年は、俯いたまま、顔色を盗み見るようにして隣に立つ少女に尋ねた。
「……どうしてこんな事を?」
「世の中が腐ってるから」
 少女は底抜けに無邪気な笑顔で、目前で引き起こされる殺戮劇を眺めながら即答した。
「腐っているから……滅べば良いって?」
 重ねて投げかけられた少年の問いかけに、少女は首を振る。
「こんなにも腐ってる世界だから、末永く腐り続けるべきだって、そう思うの」
 これを聞いた少年はひどく悲しそうな顔をして、そうだね、メイちゃんの言う通りだよと、蚊の鳴くような声で呟いた。

解説

解説

○状況・目標
愛媛県X市の街中に突如として従魔が発生。
速やかにこれを排除し住民の命を守れ。

○時刻


○場所
愛媛県X市。それなりに栄えている。
被害が発生しているのは現在2エリア。

PCの開始地点は同一だが目の前が分かれ道になっており、それぞれのエリアに繋がっている。
またエリアは広ささえ差異があるものの一本道のようになっており、同じ場所に辿り着く。
双方、概ね幅7sq、長さは100Mほど。

○敵戦力
ゾンビ型従魔×いっぱい
低知能低火力低防御低移動力。攻撃方法は引っ掻き・噛みつき・拘束のみ。
これの攻撃を受けた一般人が死亡した場合従魔化する事が確認されている。

住民×???
後述。

○特筆
双方のエリアで住民が正気を失っており、その様子も若干異なっている(PL情報)。

エリアA
住宅街。住民は皆深い絶望に打ち拉がれている。
自分達は死ぬ、既に感染している、助からない、など過剰とも言える悲観に囚われており
中には自傷・自殺を試みる者もいる。
「死ぬ……死ぬ……もう駄目……私も四国も世界も終わり……」
「お、お前たちには、救えない……救えない救えない助からない助からないあああああ……ッ」

エリアB
商店街。Aに比べて被害が酷く、住民達は今まさに従魔の餌食となっているか、既に殺されて地面に横たわっているかのどちらか。
生き残った少数の住民は従魔と化した自分の知り合いや家族を殺そうとするPC達を錯乱して非難したり、妨害しようとして来る。
「俺達は死ぬしかねえええええだからお前らも死ねえええええええッ!!」
「ねえ、ママだよ……? 私のママに……ひどい事しないで……?」

マスターより

お久しぶりです、または初めましてです、らららです。
今回はシンプル・オブ・シンプルなシナリオです。どこからどう見てもシンプルで王道なシナリオです。王道ったら王道です。
ね、らららちゃんの言う通りでしょ?(裏声)

どうか、皆さんのPCを、RPを思う存分プレイングにしたため、私に教えて頂きたく思います。
ご参加お待ちしております。

リプレイ公開中 納品日時 2016/12/28 09:40

参加者

  • 対ヴィラン兵器
    鬼灯 佐千子aa2526
    機械|21才|女性|防御
  • 危険物取扱責任者
    リタaa2526hero001
    英雄|22才|女性|ジャ
  • 日々を生き足掻く
    秋原 仁希aa2835
    人間|21才|男性|防御
  • 切り裂きレディ
    グラディスaa2835hero001
    英雄|20才|女性|バト
  • 天秤を司る者
    キース=ロロッカaa3593
    人間|21才|男性|回避
  • ありのままで
    匂坂 紙姫aa3593hero001
    英雄|13才|女性|ジャ
  • Trifolium
    バルタサール・デル・レイaa4199
    人間|48才|男性|攻撃
  • Aster
    紫苑aa4199hero001
    英雄|24才|男性|ジャ
  • エージェント
    木佐川 結aa4452
    人間|16才|女性|回避
  • エージェント
    水蓮寺 義政aa4452hero001
    英雄|23才|男性|シャド
  • 開拓者
    文殊四郎 幻朔aa4487
    人間|26才|女性|攻撃
  • エージェント
    黒狼aa4487hero001
    英雄|6才|男性|カオ
  • 薄紅色の想いを携え
    藤岡 桜aa4608
    人間|13才|女性|生命
  • あなたと結ぶ未来を願う
    ミルノaa4608hero001
    英雄|20才|女性|バト
  • 高潔の狙撃手
    フレイミィ・アリオスaa4690
    獣人|12才|女性|命中
  • 宵闇からの援護者
    aa4690hero001
    英雄|12才|女性|ジャ

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