本部
夏がくるまで
- 形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 10人 / 4~10人
- 英雄
- 9人 / 0~10人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/11/07 15:00
- 完成予定
- 2016/11/16 15:00
掲示板
-
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/11/07 12:04:02 -
死者に安らかな終わりを
最終発言2016/11/07 12:06:31
オープニング
●俺の彼女は――
冷たい外気に、白い息を吐く。
自動販売機で買ったコーヒー缶は、焼石のようにであった。本当はブラックコーヒーが欲しかったのだが、展望台の近くの自動販売機は一台だけ。しかも、粗末な品ぞろえだった。
「探すと見えないもんだな。流れ星って」
暖かい車から三十分以上も出ていた彼女に、コーヒーを差し出す。ブラックはなかったよというと彼女は「甘いものをのみたい気分だったら、ちょうどいいわ」と答えてくれた。
「探して見つかるようなものだったら、願いなんてかなわないような気もするわ」
年下の恋人は、俺が投げ渡したコーヒーのプルタブを開ける。自分は熱いと思って手渡したのに、恋人は少しも熱を感じないかのようにそれに口をつける。
女の子なのに、彼女はすごく恰好が良い子だった。十代の頃からリンカーとして戦いから、その生き様が仕草に現れていたのかもしれない。
今日も、流れ星を探したいという自分の子供みたいなわがままに付き合ってくれる。
「もしも、流れ星を見つけたらどうする?」
この時、俺は二十六歳。
彼女は、二十四歳。
「私だったら、この世で一番大きな桃が食べたいって願うわ。あっ、もちろん甘いのよ」
彼女――モモカは、その名の通りに大の桃好き。夏になれば、わざわざ産地に車を飛ばして買い求めるほどだった。普段は恰好がいい彼女が、その季節だけ女の子らしい甘い香りをさせていたから俺は夏が好きだった。
「カオルは、何を願うのよ」
「俺は、実は一か月前以上からこの願い事をするって決めてたんだ」
俺は、ポケットに入れていた小箱を取り出す。
「モモカ、俺とけっこ……」
「危ない!」
モモカは、俺を突き飛ばす。
「カオルは車に戻っていて!!」
――それからの俺の記憶は、ひどく曖昧である。
気が付けば、モモカは死んでいた。
俺たちを襲ったのは、愚神だった。だが、そいつはモモカとの戦いで死にかけていた。携帯で助けを呼ぼうとした俺に、愚神は囁いた。
「あなたがワタシを受け入れれば、この女を従魔として蘇らせることができる。さぁ、ワタシの手を取れ!」
「ふざけるなっ!! そんな提案を受け入れられるか!」
「いいのか? お前の決断で、この女が蘇るチャンスは消えるのだぞ。そうだ、この女は桃の季節が好きだったのだろう。せめて、その季節まで女を生かすがいい」
桃が好きだった、モモカの好きな季節。
――夏まで、彼女を従魔にして生かす。
「私だったら、この世で一番大きな桃が食べたいって願うわ。あっ、もちろん甘いのよ」
「つっ!」
俺は、どうしようもなく弱かった。
モモカに守られているだけで、足を引っ張る男だった。そんな男だったからこそ、モモカの最後の言葉を叶えてやりたくなった。
「わかった。夏までだ。夏までだから!!」
俺は愚神を受け入れて、モモカの死体は従魔になった。夏が来れば、俺はモモカを死体に戻す。そのはずだったが、俺はモモカを殺せないままに――三年も無為に過ごしてしまった。このところ、愚神の意識が強くなるのを感じる。
奴は、とうとう俺とモモカに飽きたらしい。
ごめん、モモカ。
せめて、愚神を巻き添えにして俺も消えるから。
●三年後
「山の展望台で、不審な男女の目撃情報?」
HOPEの職員は、その話に首をかしげる。
「車で行けるお手頃な展望台ですから、若いカップルには人気の場所なんですよ
私も昔は旦那と行きましたー、と女性職員は声を上げる。
「そんな男女がわんさか居そうな場所に『不審な』男女なんて現れるのか。歳の差がいくらあってもカップルとして見られそうな場所なんだろ?」
「まぁ、カップルに人気だったのは昔の話になりつつありますから。今の若者は、もっとにぎやかなところにいっちゃいますよ。ただやっぱり――星空の下で語り合うってロマンがあるじゃないですか。ただ、そこで三年前に失踪したリンカーのモモカがいたという目撃情報が出たんです」
女性職員はため息をつく。
モモカは、若いがリンカーとしては経験豊富な女性であった。しかし、三年前に失踪。当時付き合っていた男性と共にいなくなっていたため、警察は駆け落ちではないかと判断した。
「駆け落ちした先から帰ってきただけじゃないのか?」
「モモカが目撃された山の展望台で、殺人事件が起きたんです。警察は愚神による犯行ではないかと判断して、HOPEの協力を要請しています」
三年前に突如として消えた――モモカと恋人。
目撃された場所できた――愚神による事件。
「モモカの情報を念のため、派遣するリンカーたちに伝えろ」
きな臭い匂いがしていた。
●俺の公開は――彼女の
「モモカっ――」
俺は、荒い息を吐く。
もはや、モモカは俺の言うことを聞かない。いや、モモカは最初から俺のなかにいる愚神の云うことしか聞いていなかったのだ。だから、愚神が俺の言うことを聞いてくれなくなったというほうが正しい。
「モモカは、ここで死んだのよね」
愚神が、笑う。
「今日まで、アタシの玩具になってくれたお礼に見せてあげるわ。あなたのモモカがリンカーたちに壊されるところを。そして――そのリンカーをアタシが壊すところも」
解説
・愚神および従魔(モモカ)の撃破。
・夜の山の展望台。都心から車で一時間程度であり、展望台としては手軽にこれる。そのためカップルに人気だが、現在は事件のために人気はなくなっている。障害物等はないが、星を見るための展望台のために明かりはごくわずか。なお、展望台の大部分は駐車場のために足場はしっかりとしている。
・モモカ……死後に従魔につかれており、言葉を発することはない。二十代の女性の姿をしており、その身体能力は生前のものを完全に復元している。接近戦に秀でており、近づいてくるものは日本刀により力づくでねじ伏せる。遠距離戦になると銃を発砲するが、腕はあまりよくはない。追い詰められると、袖口に隠した小型の銃。ブーツに仕込んだ、小型のナイフを使用しての蹴りなどを使ってくる。従魔が消えると、モモカの死体は土へと変える。
・愚神(カオル)……カオルについた愚神。カオルを完全に取り込んではおらず、引離すことは可能。モモカとは別に女性の死体を使った従魔を使用しており、それに自分の身を守らせている。主に従魔を支援することに長け、自身の戦闘能力は低め。
使用する技
ブースト――カオルのライヴスを使用し、発動。モモカ以外の従魔に使用し、身体能力を劇的に上げる。これにより、リンカー並みに身体能力を得ることができる。序盤に使用する。
アップ――モモカ以外の従魔に使用。武器の性能を格段に上げる。従魔が一人でも倒されると使用。
・従魔……五体出現。元々は若い女性の死体であり、生前程度の身体能力しかもたない。愚神の技を受けて、リンカー並みの身体能力に性能が上がる。武器は銃器であり、ナイフも持っているが必要にかられなければ使わない。
マスターより
こんにちは、落花生です。
今回は、夏に思いをはせる秋のシナリオとなります。
個人的にですが、今が外で星を鑑賞する限界の季節なのではと思います。これ以上、山で星を見ようとすればどうしても雪の問題が……。
リプレイ公開中 納品日時 2016/11/14 20:49
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最終発言2016/11/07 12:04:02 -
死者に安らかな終わりを
最終発言2016/11/07 12:06:31