本部
この愚神達を今は黙認するか選択せよ
- 形態
- ショート
- 難易度
- 普通
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 8人 / 4~8人
- 英雄
- 8人 / 0~8人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2016/01/03 22:00
- 完成予定
- 2016/01/12 22:00
掲示板
-
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2015/12/31 15:28:18 -
相談卓
最終発言2016/01/03 21:52:15
オープニング
●
その老人は、自分の体から何かが吸い出されていく感覚に包まれていた。
しかしそれ以上に、あれだけ自分の全身の中で暴れ、自分を責め苛んでいた痛みの感覚が急速に消えていくことが、老人には嬉しかった。
やがて自分の体に触れていた女性の手が離れ、吸い出される感覚も終わりを告げる。
「これで痛みとの戦いはしばらく収まる」
白衣を着た女性が、つい先ほどまで老人に触れていた手にペンを持ち、紙に何かを書きながら目の前の診察用ベッドに横たわる老人に告げた。
「毎回思うんじゃが、痛みがないというのはとても嬉しいもんじゃ。体が動かしにくいのは仕方ないが、そこまで望んだら罰があたる」
老人の顔は先程まで苦痛に悶え苦しんでいたのが嘘のように晴れ晴れとしていた。
「毎回言ってるけれど、これは治療じゃない。痛みになるものを『喰う』だけ。健康になるとか、寿命が延びるとか、人間で言うところの『健全』ではない」
淡々と白衣の女性は老人に自分が施した行為を説明するが、老人の顔から笑みが消える事はなかった。
「それでもワシには健全な痛みだらけの生活よりも、今の痛みのない生活の方がいい」
やがて白衣を着た女性の指示で、人の姿をした、しかしどこか人間離れした部分のある存在達が、老人の体を病室まで運んで行く。しかし運ばれていく老人には恐怖の表情はなく、むしろ運ぶ存在達へ感謝の言葉を向けていた。
老人が去った後も、次の『患者』が女性のもとへ運ばれてくる。
そして女性はその『患者』に問診のようなものを行った後、手をかざして同じような事をした。
それ以外でも行っている医療活動の合間を縫って、休息をとる女性はため息をついた。
「この世界の人間達は、この類の人間達の面倒を見るのがそんなに嫌なのか? 『私』は困らないから、別に構わないけれど」
目の前にある書類の上には、自分の運営する介護施設への入所を希望する人達の名前の列がずらりと並んでいる。
意思疎通もままならないほど衰弱した人達の介護についてや資金面は『同志達』の支援があるので何とかなるが、『彼女』の事情を知った上で、ともに働く医師がいるのか『彼女』には想像できない。この施設でも典型的な人手不足に悩まされていたが、『彼女』の事情がその解決を阻んでいた。
女性の名前は橘(たちばな)美弥(みや)。主に快復の見込みがない末期患者の介護や看病が得意分野だが、それ以外でも大概の医療活動はこなせる医者であり。
●
「そして『ある特殊能力』により、恩恵を受けている人々から、その手勢ごと重宝されている愚神でもあります」
スクリーンに映し出された女性の姿を見ていた人達は、担当官の言葉に驚きを隠せなかった。
「この愚神の特殊能力というのは、人のライヴスを喰う時、特定の部位の活動を抑えたり、または『喰う』ことで消すというものです。具体的に申しますと、人の体内にあるがん細胞を『喰ったり』、痛みを司る神経の働きを弱くして、その人の体から痛みを取り除く、などですね」
ただしライヴスを喰う事には変わりないので、その人の寿命が延びたり、健康な体になるというわけではない。
「また人間の世界に溶け込んで医学系の大学試験に合格し、大学の医学部で知識や技術を学び、研修医となり、正式な手続きを踏んで医師免許を取得していますので、この愚神が行う『医療活動』はほぼ合法の範囲内です」
つまり表向きは正式な医者なので、無資格での医療行為を理由に討つのが難しい状況だ。
「ライヴスを喰うだけの存在でしたら討伐対象にしやすいのですが、この愚神の場合、他の医者から『手の施しようがない』と言われる末期患者の面倒を引き受けたり、患者達の介護や看病が得意なので、自然とこの愚神のもとへ、そうした末期患者の方々が、全ての事情を知りながら、自分から望んで集まってくるという『需要』があるので、この愚神の討伐を難しくさせています」
さらに調査の結果、この愚神は人が立ち入らない野生動物が暮らす山奥と、人間達が暮らす地域の間にドロップゾーンを形成していることが判明し、しかもそのドロップゾーンを現地の人達が黙認している事が判明し問題がややこしくなった。
「現地の方々が黙認している理由は、山から降りて来ては作物を食い荒らす『害獣』達を、この愚神のドロップゾーンがせき止めている為です。実際にこのドロップゾーンが形成されて以降、現地での農作物への獣害が激減している事から、獣害対策にはなるでしょうが、ゾーンが固定化し、『害獣』とされた動物達のライヴスを収奪している事に変わりはありません」
別の見方をすれば、住民達の平穏な生活を人質にしているため、始末が悪い。
「愚神としての名はヒーリショナー。そして利害の一致で手を組んだ『シュドゥント・エジクタンス』(あるはずのない存在達)という名称の愚神集団に所属しています」
そして担当官は改めて目の前で話を聞くエージェントたちに向き直る。
「皆様にお願いしたいのは、『この愚神を現段階では黙認するか、否か』を、実際にこの愚神と会話した上で判断する事です。黙認する場合につきましては、人間に危害を加えない事も含めた協定を取り交わしてください。もちろん相手は愚神ですから協定を破るでしょうが、次の時『協定を破った』ことは、この愚神と繋がっている人達を黙らせて、この愚者を退治できる正当な理由になります。今回倒す場合はこの限りではありませんが、間違いなく周囲の末期患者たちや、恐らく『彼女』の所属する愚神集団の存在達が救援に駆けつけ、迎撃の末、逃げられる可能性が高いです。それを踏まえての選択や行動をお願いします」
そしてこれは非常手段の案でもありますが、と担当官はとんでもない事を周囲の人達に提案し頭を下げた。
担当官が出した非常手段とは、『今後別の愚神から救出できた保護対象者を一時保護する場所として、この施設を一時利用する事を認めさせること』だった。
本来愚神は人間に対して良いことはせず、この愚神の場合は『偶然ライヴスの収奪手段を含めた自分の活動が、人間達の利害と一致している』だけに過ぎない。
しかし自身を攻撃された場合は、愚神は自分を守るため、たとえ相手が同じ愚神だろうが迎撃する。
この愚神の施設を利用するという選択は、今後別の愚神がその施設内に保護した対象者を襲撃する事態が発生した場合、この愚神達をその愚神との戦いに引きずり込む事に繋がるので、周囲に思わぬ影響が出る危険性がある。
しかしやり方次第では襲撃に来た愚神を、この愚神及び愚神集団との戦いに釘づけにし、その間に自分達は人々の避難誘導、護送に専念できる猶予を作ったり、愚神同士が戦う状況から各愚神達が持つ能力の把握ができる面も否定できない。
「ご判断はお任せします」
こうしてこの愚神を今は黙認するか否かの選択が皆様に委ねられた。
解説
●目標
この愚神と接触し話を聞いたうえで、今は黙認するか、退治するか選択せよ
黙認する場合は今後討伐を正当化する為に必要な協定を取り交わし、退治する場合は愚神の抱える問題への具体的対策を提示する事
登場
愚神
人間の時の名は橘美弥。愚神としての名はヒーリショナー。治る見込みのない末期患者の介護や看病が得意だが、正式な医師免許もあるので大概の医療行為が可能。外見上は細身の女性医師の姿。
利害の一致で手を組んだ愚神集団「シュドゥント・エジクタンス」(略称SE)に所属する1体。総数不明。
調査の結果ドロップゾーン保有が判明しているので、ケントゥリオ級と目される。
特殊能力
『痛み喰い』
人からライヴスを喰う時、がん細胞や痛みを司る部位など、特定の部分から喰い、その人のがん等を『喰ったり』痛みを抑えるなどの効果があり、受けた人は痛みのない生活をしばらく送る事ができるが、ライヴスを喰われている事に変わりなく、健康になったり寿命が伸びたりしない。
(PL情報:識別不可の範囲回復術、状態異常回復術も使用可能。戦闘を選択した場合、愚神側の増援が3ターン後に来て実質難易度が1ランク上がる)
従魔達
推測でミーレス級。末期患者達を運ぶなど肉体労働系の作業に使用されている。戦闘能力は低い。
患者達
『彼女』のもとへ自分の意志で集った末期患者達。全員が『彼女』の正体を知っている上で『治療』を望んでいる。
●状況
とある街にある病院兼介護施設。医者は『彼女』1体のみで、肉体労働系の作業は『彼女』の指示で従魔達がこなし、それ以外の業務や作業、患者への食事や入浴介助などの世話は『彼女』と全ての事情を知る施設職員達がこなしている。なお職員達への報酬はどこから調達したのか、相場と比べ倍以上の額が支払われており高待遇との事。現在入院・入所希望者の数が収容可能限界数を超えている。今回申請すれば無線機の借用可能。
マスターより
岩岡志摩です。
今回は愚神を今は見逃すか否かの選択を皆様に委ねるシナリオです。
本来愚神は人の為になる良いことはしませんが、利害の一致とこの愚神の能力がその行動を黙認させています。
見逃す場合は、協定を破ったという正当な理由を掲げて今後の討伐に繋がるような協定を取り付けてください。
倒す場合は彼女が抱える末期患者達や獣害対策といった『彼女が抱える問題』をどうするか、皆様が『彼女』に具体的な方法を提示し実現にこぎつける事もお願いします。皆様が当事者です。
なお『非常手段』を提示し今後に備えるかにつきましては皆様のご判断にお任せします。
それを踏まえた上で選択して下さい。
よろしくお願いします。
リプレイ公開中 納品日時 2016/01/10 22:34
参加者
掲示板
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依頼前の挨拶スレッド
最終発言2015/12/31 15:28:18 -
相談卓
最終発言2016/01/03 21:52:15