本部
叶えられてはいけない願い
- 形態
- ショート
- 難易度
- やや難しい
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 11人 / 4~12人
- 英雄
- 0人 / 0~0人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/12/19 07:30
- 完成予定
- 2015/12/28 07:30
掲示板
-
600文字で話す会
最終発言2015/12/19 07:38:03 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2015/12/18 21:47:04
オープニング
●叶えられる願い
「おい! 平!」
上司が男を呼ぶ。男の名前は「平」ではない。「大平」だ。
大企業とまではいかないが、中の上くらいには位置する会社だから、平社員なんていっぱいいる。それでも、「平」と呼ばれているのは営業の成績が一番悪いこの男だけだった。
彼は入社してもうすぐ三年になる。それでも、報告書の一枚もまともに作成することができず、営業の成績も最下位を継続し続けている。
だからといって、暴言を吐かれてもいいわけではないし、もちろん、本人も居心地がすこぶる悪い。
こんな会社、辞めてやる…… そう何度も思ったが、入社してすぐに彼女が身ごもり、できちゃった婚なんてしてしまったがために、退職の二文字を簡単に口にすることもできなくなっている。
会社でも、プライベートでも失敗ばかりで、自分を鼓舞する元気はないが、上司の呼ぶ声を聞こえないふりをして、「営業行ってきます!」なんてその場をかわすことだけはできる。
エレベーターに乗り込み、扉を閉めるボタンを連打する。
「あ〜! ついてない!」
仕事のことも、早々に家庭を持ってしまったことも、『ついてない』の一言で男は片付けようとしていた。
自分はついていないだけ。他のヤツよりもずっと運が悪いだけ。
そんな風に思考を逃がしていると、すぐ後ろから声がした。
「人生をやり直したいのなら、手を貸しますよ?」
自分しか乗っていないと思っていたエレベーターに他の声がして、大平は慌てて後ろを振り返った。
「お、おまえ、誰だ!? いつからそこに……」
大平と似たような黒い鞄を持ち、帽子をかぶったスーツの男は、「最初から乗っていましたよ」とにこりと営業スマイルを浮かべた。
「ところで、あなた、人生をやり直したいのでしょう?」
薄気味悪い男だと思いながらも、大平は「まぁな」と頷いた。
「それなら、私が叶えてあげますよ」
こともなげにそう言った男に、大平は疑いの眼差しを向ける。
「そんなことできるわけないだろう?」
「できますよ。私なら。あなたの仕事も家庭もゼロにして、あなたの人生をやり直すお手伝いが」
自信満々な男の態度に、大平は「それならやってみろよ」と、鼻で笑った。その言葉こそ、愚神がほしかった言質であることを知らずに。
「俺の人生を、やり直させてくれよ。できるものならな」
一階のエントランスにつくと、大平は言い逃げするように自動ドアの外へ出る。
目の前の交差点を信号無視で渡り、コンビニの日陰に入る。営業先へ向かう前にここでコーヒーを買うのが日課だった。
しかし、今日は、コンビニに入る前に大平は会社の入っている高層ビルを見上げた。
日の陰がやけに濃くなったような気がして。
「なんだ……?」
ビルの上のほうが、雲がかかっているように見えた。その雲はどんどん大きくなり、ビルを飲み込んでいく。
「ど、どうなってんだ……?」
その雲が異常なものであることはすぐにわかる。見る間に広がっていく雲は、あっという間にビル全体を飲み込んでしまった。
「これ、なんだよ……」
すぐ近くまで立ち込めてきたそれは、雲を構成する霧だとわかる。
会社が入っていたビルがあった霧の立ち込める場所を呆然と見ながらそう呟いた大平のすぐ後ろから、またあの声が聞こえた。
「ねぇ? 叶えることができたでしょう?」
あまりの恐ろしさから、大平は後ろを振り返ることができない。
「見てくださいよ。真っ白ですよ……これで、あなたを苦しめてきたものがひとつ、なくなりました」
帽子を目深にかぶった奥で、男の目はにたりと笑う。
「あなたの願いをひとつ叶えてさしあげたのですから、対価として、あなたの体をもらってもいいですよね?」
「ああ」と愚神は続けて言った。
「心配しないでください。もうひとつの願いも、ちゃんと叶えてさしあげますから」
妻と二歳の息子の笑顔を思い出し、大平は叫んだ。
『や、やめろ!! やめてくれ!!』
その叫びは声になっていなかった。
自分の口を動かすことはできず、声を発することもできない。
『……どうなってるんだ?』
頭のなかにだけ響く声。
体は、自分の意志に反して、勝手に動き始める。
『おい、どこに行くつもりだよ!?』
「だから言ったでしょう?」と、自分の口が動いた。
「あなたの体は私がもらいます。そして、もうひとつのあなたの願いを叶えに行くんですよ」
「私は、マジメですからね。約束を破ったりはしません」
●H.O.P.E.
「街中にて高層ビルが霧状の従魔に飲み込まれた!」
H.O.P.E.会議室に職員の声が響く。
「ビルの前にあるコンビニの店員によると、ひとりの会社員がビルが飲み込まれていくのを真っ青な顔で見つめていたが、その後、奇妙な独り言を言いながら立ち去ったとのことだ。おそらく、その人間に愚神が取り憑いたものと思われる」
職員は資料を見ながら詳細な説明をはじめる。
「愚神が取り憑いたと思われる人間の名前は大平哲平、二十七歳。ビルを飲み込んだ霧状の従魔は、ビルの中にいる人間のライヴスを食らっている」
会議室の扉が勢いよく開かれ、女性が飛び込んできた。
「ビルを沈めた愚神に動きがありました! 住宅街近くにあるドラッグストアをビルを飲み込んだのと同じ霧で包み込みました。その際、大平哲平と思われる男性が目撃されています。そのドラッグストアには大平の妻、大平素子が勤めていました」
手元のタブレットを見ながら、女性は話を続ける。
「プリセンサーが感知したところによると、この愚神はこの後、大平の二歳の息子が預けられている保育園へ向かうとのことです」
「大平の家族を狙っているということか…… その理由まではわからないが、とにかく、至急、保育園へと向かってくれ!」
解説
●目的
・愚神が保育園に近づかないようにしてください。
・会社及びドラッグストアを取り込んでいる霧状の従魔を消滅させてください。
・大平を助けてください。
●登場
・愚神(ケントゥリオ級)一体
・霧状の従魔(ミーレス級)を自在に操ります。
・鞄にはそのサイズに見合わない長物をおさめています。
●場所と時間
時間:日中
●状況
・大平の会社及び大平の妻である素子がパート勤務しているドラッグストアは霧状の従魔に取り込まれてしまいました。
・次に、愚神は大平の子供を狙っています。
・愚神の目的はもちろん、大平自身ではなく、ライヴスを集めることです。
・戦いの場はエージェントの皆さんの判断に委ねますが、愚神が保育園へ到着した場合には霧状の従魔が放たれます。
マスターより
こんばんは。gene(ジーン)です。
やることなすこと上手くいかない時、投げやりになったり、荒んだ気持ちになることもありますよね。
そして、そんな時に発した言葉は、大抵は本心ではありません。
しかし、一度口にしてしまった言葉をなかったことにはできませんし、その後の言い訳を愚神が聞いてくれるわけもありません。
たった一言が全てを失う原因になる……そんなこともあるかもしれませんね。
なお、プレイングには、心情・行動・戦闘・戦闘後などをPC口調で書いていただけると、多少のアドリブを書かせていただく際に、PCの思考の特徴や口調などが想像しやすくなり、大変参考になります。
格好いい&華麗な戦闘、お待ちしています。
リプレイ公開中 納品日時 2015/12/26 19:03
参加者
掲示板
-
600文字で話す会
最終発言2015/12/19 07:38:03 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2015/12/18 21:47:04