本部
英雄になれない英雄
- 形態
- ショート
- 難易度
- 易しい
- 参加費
- 1,000
- 参加人数
-
- 能力者
- 6人 / 4~6人
- 英雄
- 6人 / 0~6人
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2015/09/22 19:00
- 完成予定
- 2015/10/01 19:00
掲示板
-
相談卓
最終発言2015/09/21 22:31:48 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2015/09/20 00:01:15
オープニング
●餡と俊介
『あんこって、甘くて、人を幸せにするよね』
自分の名前が最大のコンプレックスだった餡にとっては、その言葉こそ、餡自身を幸せにしてくれるものだった。
「あんこー!」
学校からの帰り道、いつも通りに餡の名前をからかう声がしたが、餡は機嫌良く微笑んで振り返った。
「なに?」
いつもの反応とはまるで違うその反応に、餡をからかうつもりでいた少年たちは戸惑う。
「はやく用件を言ってよ! 用事があったから、私の愛称を大声で叫んだんでしょう?」
にっこりと笑みを深めると、少年たちは後ずさり、そして逃げ出した。
「なによ? つまんないわね」
そう言った餡の後ろで、くすくすと笑う声が聞こえた。
その声のほうへ視線を向けて、餡は自分の顔から火がふくかと思った。
「しゅ、俊介くん!?」
「強くなったね。観月さん」
俊介の瞳が優しく細められ、ますます餡の顔は熱くなる。
「俊介くんのおかげで、自分の名前を好きになれたから……」
でも、強すぎる女の子は、好かれないものかもしれない…… そう思うと、餡は急に恥ずかしくなった。
しかし、餡の心配をよそに、俊介はまた軽やかに笑った。
「強くて、甘い……凛としていて、和菓子みたいだね。観月さんは」
餡の家が老舗の和菓子屋であることは、仲の良い友達しか知らないことだったから、俊介はきっと、偶然に和菓子に例えたのだろう。けれど、それがチャンスのように思えて餡は聞いた。
「あ、あの……俊介くんは和菓子と洋菓子、どっちが好きですか!?」
唐突な餡の質問にも、俊介は生真面目に「ん〜……」と、ちょっと考える素振りを見せてから答えた。
「和菓子かな。綺麗だし」
和菓子の話なのはわかっていても、餡は自分が褒められたかのように幸せな気持ちになった。
「そ、それじゃ……」
餡の声は緊張から震える。
「今度、うちに遊びに来ませんか!?」
それは、餡にとってはとても勇気のいる提案だったのだが、俊介の視線は餡を通り越し、そのずっと後ろを見ていた。
「俊介くん?」
それまでにこやかだった俊介の端正な顔が、厳しい表情に変わる。
「観月さん、ごめん。俺、行かなくちゃ」
俊介が歩きだした方向、自分の背後を振り返り、餡は驚いた。
黒いスーツにサングラスをした、いかにも悪そうな男たちのもとへ俊介は歩いていく。
「俊介くん!」
慌てて俊介を呼び止めようと思ったが、俊介はもう餡を振り返ることなく、男たちが用意していた黒塗りの車に乗り込んだ。
「……見間違えじゃなかったんだ」
餡は一週間前にも彼らと俊介が一緒にいるところを見かけていた。
その時、男たちは俊介に厚みのある封筒を渡していた。時刻は夕暮れ時で、その場所が薄暗い路地裏だったということもあって、餡はそれを自分の見間違えだと思った。
でも、いま車に乗り込んだ俊介は、その時と同じ暗い瞳をしており、餡の見間違いなどではないことを知らせていた。
●ヴィランという覚悟
「ぼうず。ここに連れてこられた理由はわかってんだろう?」
黒いスーツの男たちに連れてこられた大きな屋敷のなかの一間。
その広い畳の部屋の中央に座らされ、趣味の悪い紫色のスーツの男にどすのきいた声で聞かれた。
「……」
少年の静かな眼差しに、紫色のスーツの男は口角をあげる。
「肝が据わったぼうずだな。桐生組の本部につれてこられたっていうのに、すました顔してやがる。さすが、うちのもんに催眠をかけて四百万も盗み取ったヴィランだけあるな」
「……」
強面の男たちに囲まれながらも、俊介の心のなかはさざ波ひとつたたず、静まり返っていた。
「催眠の能力は便利だろう? 俺たちも、有効活用させてもらってるよ」
桐生組には催眠を得意とした能力者が数名おり、その能力を使ってお年寄りなどからお金をだまし取る催眠犯罪を行っていた。
「さて、ぼうず。四百万を返してもらおうか? と、本来ならそういう話になるわけだが、そうすると、お前さんが非常に困ることになることは知っている」
俊介は四百万を受け取ったときの医師の顔を思い出した。
医師は驚きながらも、俊介の真っすぐな眼差しを受け止め、深いことはなにも聞かずに『お母さんの手術の準備をしよう』と言ってくれた。
今頃、母親は心臓の手術を受けているはずだ。
病院に向かう途中でこの男たちに見つかってしまったが、これもきっと運命だったのだろうと、俊介は目を閉じる。
どうか、手術が成功しますように…… 俊介は、そればかりを祈っていた。
「可哀想なぼうずに情けをかけてやろう。これからも治療費が必要だろう? ここにいれば、お前さんの能力はもちろんのこと、そのキレイな顔も金にすることができる」
英雄と契約を結んだ時から、俊介は覚悟していた。
「ぼうずに拒否権はねぇ。俺たちの仲間になれ」
自分は英雄にはなれないと。たとえヴィランになってでも、母親の命を助けると決めていた。
俊介は瞳を開き、自分のなかにたったひとつ残された選択肢を口にした。
「わかってるよ」
●依頼内容
桐生組に笠井俊介(十一歳)が連れて行かれたと、観月餡(十一歳)から警察に通報があり、桐生組には複数の能力者もいるため、HOPEに協力要請があった。
笠井俊介は以前にも桐生組の人間と会っていた模様。身柄の救出はもちろんのこと、彼が置かれた状況を確認の上、適切な対処およびアドバイスを行うことが重要となる。
解説
●目標
メンバーとして能力者もいる暴力団:桐生組から笠井俊介(十一歳)を助け出し、犯罪を犯すことなく生きていく術をアドバイスしてください。
●状況
俊介は母親の手術費用を桐生組の組員に催眠をかけることによって手に入れた。
●注意点
桐生組には能力者がいるため、法的な正規のルールが通用しないことを考慮しなければなりません。
今回は俊介を助け出すことが目的であり、組織の壊滅などは目的に含まれていません。
マスターより
こんばんは。geneです。
白と黒、正と悪は紙一重かもしれません。
純粋な心を持っているからこそ、自分の思い込みにはまりやすいということもありますよね。
どうか、少年を正しい道に導いてあげてください。
リプレイ公開中 納品日時 2015/09/30 03:08
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相談卓
最終発言2015/09/21 22:31:48 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2015/09/20 00:01:15