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流れるプールでサメ退治!
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作戦会議室☆
最終発言2018/07/12 06:13:12 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2018/10/05 00:23:15
オープニング
熱さ厳しい、この季節。
そんなとき、人はどこに向うのか。
プールに向うのである。
「水が流れてる……」
エステルは興味深そうに、プールを見つめる。長方形の形を普通のプールとするのならば、そのプールは少しばかり変わっていた。まず、形は八の字を描いている。しかも、中の水は一定の方向に流れていた。
いわゆる、流れるプールである。
市営などのプールでは珍しいが、ちょっと料金の高いプールなどでは珍しくはない仕掛けだ。だが、初めてみたエステルは興味しんしんであった。
「プールなのに……川みたいに流れが速いですね」
変なの、とエステルは呟いた。
『普通に泳ぐのが目的じゃなくて、浮き輪を浮かべて流されたりするのがお決まりの遊び方らしい。普通だったらな』
アルメイヤは、露出度の高い水着姿で遠い目をする。
流れるプールには、何故かサメが泳いでいた。
●流れるサメ
「朝起きたら、プールにサメが泳いでいたんです」
H.O.P.E.にかかってきた電話。
その内容は、流れるプールに何故かサメが泳いでいるというものであった。何にかの冗談だろうかと思いつつ一同が向った先には、電話の内容とおり水流に若干流されながらも泳ぐサメたちがいたのであった。
「泳げない……」
エステルの呟きに、アルメイヤは何度も頷く。
こんなところで泳ぐ命知らずはいないであろう。そのせいもあって、プールに一般客はいない。
『サメを早く倒したら、プールで遊んでもいいらしい。無論、貸切状態で』
ふっ、とアルメイヤは不適に笑う。
今日のエステルの水着は、ひまわりの花柄が可愛らしいワンピースタイプ。手には大きな浮き輪も持っており、休日をエンジョイするに相応しい可愛らしさであった。
『一刻も早く、サメを退治するぞ! そして、エステルの可愛い写真を山のように取るのだ!!』
アルメイヤの手には、デジカメが握られていた。
こうして、欲望に燃えたサメ退治が始まったのであった。
解説
・流れるプールにいるサメを退治してください。
プール(11:00)――八の字型の巨大な屋外プール。夏の日差しが強く、水に入っていないとかなり暑い。巨大なウォータースライダーや浮き輪、ビート版の貸し出しも行なっている。しかし、従魔の出現したことにより、食べ物系の屋台はすべて閉まっている。依頼主より、プールにキズをつけないようにして欲しいと話があり。なお、プールは大人の胸程度の深さ。
サメ――1.5メートルほどの従魔。鋭い嗅覚で敵を発見し、とても鋭い歯を持っている。水中を素早く移動できる。四体出現
・水鉄砲……水の中から水流を放ち、水の外にいる敵を攻撃する。
・水の加護……水の外からの攻撃に対して、ダメージを軽減させる。
・歯ミサイル……水中で歯を飛ばし、攻撃する。すぐに新しい歯は生えてくる。
・出産……残り一匹になると発動。一匹の時間が長いと、自分そっくりの子供を出産する。サイズは小ぶりであるが、子供は時間と共に成長する。
ピラニア――掌サイズの魚の従魔。噛み付いて攻撃する。攻撃力は低い。サメの周辺に出没し、血の匂いに集まる習性を持つ。五匹出現。
アルメイヤ――サメを早く倒したいので、プールに飛び込もうとする。止めないとサメに噛み付かれる。
リプレイ
刺すような強い日差しのなかで、リンカーたちはプールを睨んでいた。その視線は、我がもの顔でプールを占領するサメとピラニアの従魔に向けられている。
「あれだな、どっかで見たような気がすると思ったら……」
『……ん、プールにサメ……廃校した学校の水族館? 流れてないけど』
麻生 遊夜(aa0452)とユフォアリーヤ(aa0452hero001)は、そろいの黒い水着姿で悠々と泳ぐサメたちを見つめる。従魔退治に来たのだが、魚を水族館で見ている気分になってしまうのはなぜだろうか。
「しかし、こいつら何処から侵入したんだ?」
『こっちは暑い中で相手は涼しい水の中ですか……ムカつきますね』
いくら団扇であおいでも涼しい風はこないというのに、と不破 雫(aa0127hero002)の額には青筋が浮かんでいた。隣の御神 恭也(aa0127)も、暑さのために滝のように汗を流している。
「濡れて動きが阻害される服じゃないのは解るが、なんでビキニ型の水着で来たんだ?」
『つい最近買ったので丁度良いタイミングかと思って……』
素敵ですよね、と雫は新作の水着を見せる。
青い水着はビキニタイプではあったが、ところどころにリボンやフリルがついていて色気よりも可愛らしさが強調されている。
『今年の新作の水着は、やっぱり素敵ですね』
雫の姿を小野寺・愛(aa0131hero002)は、にこにこと見つめていた。ちなみに、彼女の水着はパレオ付きのツーピース水着の水着だ。若い肉体の魅力を存分に発揮させる愛の水着姿に、男性陣のなかには顔を背けるものが何名かいた。
「が、学校で使ってる水着入れてたはずが、どうしてこうなった!? だよ!!」
男子更衣室から悲鳴が響いた。
数分後に出てきたのは、ぴっちりとしたブーメランタイプに水着を纏った狼谷・優牙(aa0131)である。年齢に相応しくない水着に、優牙は思わず内股になっていた。
『その表情、とてもいいですよ~♪ これが撮れれば今日の目的は達したようなものですね~。帰ってもいいくらいですよ~』
上機嫌な愛に、文句の一つでも言おうとした優牙は茹蛸のように真っ赤になった。お子様な優牙には、愛の水着は刺激が強すぎたのである。
「……ん。暑い……」
『そうね……暑いわ……』
氷鏡 六花(aa4969)とアルヴィナ・ヴェラスネーシュカ(aa4969hero001)は、見つけた木陰で休んでいた。二人とも暑いのがめっぽう苦手なので、本日の天候にすっかりバテてしまっている。
「早く退治して……プール、入りたい……」
『そうね……入りたいわね……』
それか……カキ氷が食べたいの、と六花は哀しげに呟く。従魔が現れた騒ぎのせいで、プールの出店は全て閉まっている。なので、カキ氷のお店はあるのに品物はない状態である。
『エステルとの夏の一時を邪魔するとは……なんて、サメだ!!』
アルメイヤの怒声が響き渡った。
準備体操を終えたアルメイヤは、プールに飛び込もうとしていた。それを見ていた遊夜とユフォアリーヤは、アルメイヤを止めるべきかと頭を悩ます。エステルの教育に悪いような気もするが、アルメイヤの暴走はいつものことなので今更という気もする。
「アルメイヤさん、飛び込んだら危ない……です、サメに、噛まれちゃう」
『アルメイヤが噛まれたら、エステルも心配するわよ』
六花とアルヴィナは、必至にアルメイヤを止めようとした。
だが、アルメイヤは『任せてくれ。私の愛は誰にも負けない』と聞いてもいないことを言って、プールに入ろうとしていた。そんな暴走するアルメイヤに声をかけたのは、琥烏堂 為久(aa5425hero001)であった。
『アルメイヤさんには離れたところでエステルさんの警護をお願いしたいのですが、構いませんか? ただ待つのも退屈でしょう。カキ氷でもいかがですか?』
為久が差し出したカキ氷に、六花とアルヴィナの顔が明るくなる。
『一つしかありませんが……』
為久の言葉に、六花とアルヴィナの顔は沈んだものとなった。
「ああ! それは後で兄様と二人で食べようと」
琥烏堂 晴久(aa5425)の顔も沈んでいた。
兄の為久と一緒に食べようと思ってスプーンを二本刺した、カキ氷。シロップはイチゴ練乳という王道の味。一緒に食べて「急いで食べ過ぎて頭がキーンとなったよ」とか『ハル、口が真っ赤なっているよ』とか王道な会話をするはずだったのに。悔しい、と晴久は拳を握る。
『終わったら遊んでやるから』
「どうぞ、お二人で食べてください。ボクたちは従魔をやっつけて、兄様と浮き輪で遊んだり、ビーチボールで遊んだりするんで」
一足早い夏休みだ、と晴久は先程とは違う意味で拳を握る。
『すぐに、退治してみせるから……ね?』
「……ん。いこう、アルヴィナ。従魔は……ぜんぶ、殺す……の」
カキ氷を食べられなかった六花とアルヴィナは共鳴し、プールのなかに飛び込んだ。
●夏だ! サメだ! ピラニアだ!!
「一体、何処から湧いて出たんだ……」
『侵入経路とか……本部に調べて貰った方がいいかも?』
迫間 央(aa1445)とマイヤ サーア(aa1445hero001)は、プールサイドでサメを追っていた。だが、予想以上の速さでサメはプールを泳ぎまわっている。
『無理に追いかけるより、流れの先で待ち構えるのがいいかしら』
「たしかに、このままだと悪戯に体力を消費するだけだな」
マイヤの言葉に、央は頷く。
彼女の立てた作戦通りに、水の流れの先でサメを待っていた央は攻撃を仕掛ける。だが、サメに思ったようなダメージを与えることができない。
「何だ? 手応えが今ひとつ……」
『水が防護膜のように作用しているみたいね。あの鮫型の能力かも』
だとしたら、やっかいな能力である。六花のように泳ぎに自身があるわけではない央とマイヤでは、水中戦ではサメに遅れを取るのは必至である。
なにか策を練らなければ、と央は思う。
「ボク魚釣り得意~やるぅ~」
畳 木枯丸(aa5545)が手に持っているのは、いつの間にか彼が倒していたピラニアの一匹であった。刀の鞘に糸をくくりつけて、即席の釣竿を作る。餌は、仕留めたピラニアである。
『坊、本当にやるのか……それ』
菜葱(aa5545hero001)は、不安そうな顔をしていた。
「やるよぉ~やりたい放題なんだよぉ~。 出てきたところをうぇぽんずれいんだよ~」
水面に垂らされる、即席の釣竿。
『せめて、釣り針ぐらいは作ったらどうじゃろか?』
「そんなのもってないよ~」
木枯丸の言葉に、菜葱は黙った。せめて、彼の行動をいさめてくれるような大人はいないかときょろきょろと探す。
「俺達の手に掛かれば……!」
『……ん、口を狙って……引っ掛けるのは、朝飯前』
遊夜とユフォアリーヤは、マグロの一本釣りもといサメの一本釣りを行なっていた。プールサイドに吊り上げられた獲物がサメでなければ、絵になっていただろう。吊り上げられたのが、サメだから奇行にしか見えない。
「ボクもやりたい~」
木枯丸の目は輝いている。
違う、菜葱は木枯丸を止めてくれるような大人の保護者が欲しかったのに。どうして、釣りの後押しをするような大人しかいないのだろうか。
「よし、敵を一網打尽にするぞ!」
そういって遊夜は、マグロをプールへ放り込む。マグロには切り込みを入れており、その血でピラニアを一箇所に集める作戦らしい。「あれも~あれもやる~」と木枯丸は大興奮だ。『わしらにはマグロはないじゃろ』といいつつ見守っていた菜葱だったが、プールに広がる血が怖くて目が離せなかったともいえる。
「……そういや、キズ付けるなとは言われたが」
『……汚れるのは、大丈夫?』
今更になって若干不安になってきたらしい遊夜とユフォアリーヤは考えた。
「まぁ、サメに噛まれた時のこと考えれば微々たるもんか?」と遊夜は考えた。もしも、怒られたらちゃんと掃除をしよう。
「水の中は……六花も、得意……だから。ペンギンは……サメにも、ピラニアにも、負けたりしない……の」
プールのなかを縦横無尽に泳ぐ、六花。
『ちょっと深めのプールでよかったわね。小柄な六花なら、十分に泳げる深さよ』
アルヴィナの言葉に、六花は頷く。
大人の胸ほどの深さのプールは、六花にとっては十分な水深である。泳ぎながら発動させた終焉之書絶零断章の冷気が、サメを凍結させる。
『上に気をつけて』
アルヴィナの言葉を聞いた六花は、すばやくその場を離れる。凍ったサメの口の中を貫いたのは、苦無「極」。それは央の武器であった。
「体の内側までは防御できまい……!」
『……どこかの映画で見たわ』
どれだったかしら、とマイヤは首を傾げた。
ゴーストウィンドを発動させ、ピラニアを攻撃していた晴久はぼそりと呟いた。
「屋台ないって思うと余計にお腹空いちゃうんだよ」
腹を押さえる晴久に、為久は嫌な予感を覚えた。
「……サメって、フカヒレだよね? 高級食材だよね。ピラニアもきっと美味しい。昔、テレビの特別番組でやってたんだよ。ピラニアを食べる企画」
『やめておきなさい』
ぴしゃり、と為久は言う。
そんな為久の共鳴後の姿は、うら若き女性のもの。胸元が強調されるデザインの水着に、アップにされた黒髪。いつもとは違う魅力の兄に、晴久は空腹も忘れて叫んだ。
「誰か兄様の動画を! 写真でもいい! バイト代出すから!!」
だが、共鳴中なので誰にも聞こえなかった。
為久は、若干ほっとする。
その隣で、木枯丸はじゅるりと涎をすすった。
「ふかひれっておいしいんだよねぇ~? 食べたことないんだけど、菜葱さんはある~?」
晴久と同じ思考回路の木枯丸の目には、もうサメがフカヒレにしか見えなくなっていた。本物は見たことはないので、テレビで映った餡かけがかかったフカヒレしか想像できなかったが。
「あれじゃ、春雨みたいな食感じゃったよ……というか食うのか、アレを……』
目の前で泳いでいる、サメ。
あれを食べたいと思う気持ちが、菜葱には理解できなかった。
「え~気になるぅ~、食べたい~」
きっと美味しいんだろうな~、と木枯丸はワクワクしていた。そして、そのワクワクした気持ちのままでウェポンズレインを発動させる。
『優牙くんとの楽しみを邪魔する悪い子には、お仕置きですよ~?』
愛は槍を使って、ピラニアを撃破していた。
その光景を見ていた優牙は複雑な気分になる。
「戦闘、早く終わらせたいような終わらせたくないような……」
戦闘中は愛主体で共鳴しているために、自分の恥ずかしい水着を見られることもないし、愛の水着を見ることもない。戦闘なのに心が安らぐなんて、と思ってしまう。
そんな優牙の心境を察したかのように、愛の目が妖しく光る。
「さっさと終わらせてプールを楽しまないとですしね~。それにしてもプールにサメとピラニアとは~」
笑う愛の笑顔が、どことなく怖いと思ってしまう優牙であった。
「まとめて倒すぞ」
『ピラニアは血に集まるものだもんね」
恭也は指をわずかに切って、自らの血でピラニアを集めた。その光景に、雫は顔をしかめた。
『なんというか、あんまり気分がいい光景ではないね』
「肉食の生物だからな」
集まってきたピラニアを始末し終えた恭也は、最後の一匹となったサメの鼻先を狙う。もしも、従魔が本物のサメと同じ体内の構造をしているのならば鼻先はロレンチーニ器官があるはずである。サメのそこは、人間の目と同じだ。人間にとって、視力は大きな武器である。だが、同時にデリケートな弱点でもある。
ジェミニストライクで狙いを定めたつもりであったが、水の加護でダメージが軽減されてしまった。サメは、まだ泳いでいる。
ざぶん、と水しぶきが舞った。
央が、プールに飛び込んだのだ。
彼はプールの底を蹴りあげ、天叢雲剣を構える。そして、全身の力を集中させて、サメを空中に打ち上げた。陸上にいる仲間に、止めは任せたといわんばかりに。
プールに打ち上げられて、止めをさされたサメ。
水を吸った服に難儀しながらも、プールから上がった央は小さく呟いた。
「……天殺龍神剣」
『後で言うのね』
水の中だと言えないものね、とマイヤはどこか呆れたようであった。
●夏の一時
『……ハル、どっちの更衣室で着替えた?』
為久の質問に、水着ミズクラゲを身に纏った晴久は答えられなかった。
「この輝きは最早ダイヤモンド……腹筋が眩しい……ボクにはない胸筋も眩しい」
なぜならばハンディカメラを兄に向けるのに、忙しかったからである。ちなみに為久は、サーフパンツに狐面という姿である。彼の名誉のためにいうのならば、決して趣味ではなく素顔をさらせない理由があるからである。だが、今日はこの仮面が少し邪魔に思える。
『ハル、今日くらいは外してもいいか?』
少しだけ、仮面をずらす。新鮮な空気が口に入り、それだけで少し涼やかな気分になる。
『これじゃ思いっきり遊べないだろう……ハル?』
晴久は、固まっていた。
どうやら仮面をずらしたときに、為久の素顔をちょっとばかり見てしまったらしい。たったそれだけで、固まってしまったようなのだ。しかたがない、と為久は仮面を被りなおす。そして、晴久を叩いて正気に戻した。
『ほら、何をして遊びたかったんだい?」
為久の言葉に、はっとした晴久は「ウィータースライダー!」と元気よく答えた。
「……ん。やっと……のんびりプールに入れる……気持ちいい……」
生き返る、とばかりに六花は伸びをする。青と白の生地で作られたワンピースタイプの水着に着替えて、遊ぶ準備はすっかり整えていた。
『はぁ……融けちゃうかと思ったわ……』
アルヴィナもとてもセクシーな水着――ではなくて、いつもの羽衣姿であった。しかも、水で濡れて透けるために男性陣をぎょっとさせている。普通のプールだったら退場を言い渡されてもおかしくはないが、今日は貸切だったのでアルヴィナを叱るものはどこにもいなかった。
「……ん。一緒に、浮き輪で浮かぶの。先にゴールに流れ着いたほうが……勝ち」
六花はエステルを誘って、さっそく浮き輪で遊んでいる。それをアルヴィナは『子供は元気でいいわね』と笑いながら見ていた。
「氷鏡さん、エステルさん、ウォータースライダーとかも楽しいよ!」
どっちが早く流されるかを競っていた六花とエステルに、遊夜が声をかける。だが、二人ともまだ流れるプールに夢中で、遊夜に返事を返す前に遠くへ流れていってしまった。
それを見た遊夜は、笑う。また、自分たちのところに二人が流れてきたらウォータースライダーに誘ってみよう。
『……ん、流れていっちゃって残念……でも今はプール、暑かったから……格別』
「そうだな……。流れるボールでビーチボールを投げるのも楽しい遊びになるよな」
可愛い子供とどうやって遊ぼうか、そう考えるだけでお父さんとお母さんはわくわくしていた。
「ぷかぷかたゆたうんだよぉ~にへぇ~たゆたぅ~……たゆたうたぬきぃ~」
大きな浮き輪に乗って、木枯丸が流れていく。その後を追うようにして『わしもたゆたうのじゃぁ~』も菜葱も流れていった。きっと二人なりに楽しんでいるのだろう。
「結局、最後は水に潜る羽目になったか……」
びしょびしょになった服を絞りつつ、央は途方にくれていた。まさか裸になるわけにはいかないし、と考えていたところで差し出されたのは水着である。
『乾くまで遊んでいけばいいじゃない。私も付き合ってあげるわ』
マイヤが用意をしているとは思わず、央は驚いていた。
「……用意いいな。ちょっと意外」
ぱさり、とマイヤはパラソルを開く。
『陽に焼けるのはちょっと、ね』
そういって、マイヤもプールに向っていく。
夏のプールは英雄だって、童心に戻してしまう魅力が詰まっているのだ。
『意外でしたね。キョウだったら鍛錬の一環として流れに逆らって泳ぎ続けるものだと思ってました』
浮き輪に捕まっている雫は、極普通にプールを利用している恭也に首を傾げていた。
「いくら何でも空気ぐらいは読む。皆が楽しんでいる中で修練をする訳がないだろ」
『では、私を曳いて泳ぐのはどうですか? 空気を壊さずに鍛錬が出来ると思いますが』
「俺は馬車馬の馬か? それに、お前はおもっ――」
雫の目が、キラーンときらめいた。
『子供たち、今すぐ集合です。キョウが泳ぎの鍛錬をするので、背中に乗って欲しいとのことです。ささっ、遠慮せずに』
雫の言葉に一番乗りしたのは、木枯丸であった。「わ~い」と言って、無邪気に恭也の背中に乗る。ついで、六花はエステルがやってきて遠慮しがちに恭也の背中によじ登る。
「……ん。泳ぎの練習……がんばってください」
水泳の練習をしていると思った六花は、恭也にエールを送る。ちなみに子供四人(雫、木枯丸、六花、エステル)を背中に乗せている恭也は気がつかなかった。
彼の隣には優牙がいて、恭也と同じように手をばたつかせていた。ただし、こちらは溺れかけているのではない。
「な、何か当たってないかな!?」
愛に泳ぎを教えてもらっていたはずなのに、いつの間にかべったりと引っ付かれてしまっており、恥ずかしくて手足をバタつかせていたのである。愛は楽しげに、優牙をむぎゅっと抱きしめる。
『あはは~、当ててるのですよ~? 人並みに泳げるようにしっかり教えてあげますね~♪ 愛から逃げられるようになったら、泳ぎはもう一人前ですよ』
恭也と優牙の――まったく違う趣の悲鳴がプールに響き渡った。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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