本部

命の価値を教えて

鳴海

形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~12人
英雄
10人 / 0~12人
報酬
少なめ
相談期間
5日
完成日
2018/03/29 23:07

掲示板

オープニング

● もう会えないってなんだろう。

 子供が巣だって行くことは珍しくない。自立し、立派になって自分の進みたい道へと走っていく。それは誰にも止められない。
 けれど。
 それが天国に向けてだったら、どうだろう。
 その日からとある孤児院は悲しみに包まれていた。
 唐突な友達の死。
 一年満たない同居者でも、皆友達と思っていたのだろう。
 『ナイア・レイドレクス』。彼女の写真は今も孤児院の大広間、その片隅に飾られている。
 そこには彼女が好きだと言った日本の食べ物や、本などが置かれ。
 じっと子供たちを見ている。
 彼女は孤児院の中でも不思議な立ち位置だったそうだ。
 唯一彼女は家族を知っているし、子供を知っている。何せ村は彼女の事を気味悪く思いつつ、村全体で家族だったのだから。
 だからナイアは子供たちの扱いがうまかったという。
 特に年少組に好かれ『三浦 ひかり』とは大の仲良しだったらしいです。
 そんな彼女はある日「また帰ってくるから」と言って、国に帰り。
 そして次に届いた彼女の報は、彼女が死んだというものでした。
 五才くらいの少女は孤児院のスタッフにこう問いかけたそうです。
「死ぬってなに?」
「お姉ちゃんともう、会えないの?」 
「お姉ちゃん、戻ってくるって言ってたよ?」
 それに対してスタッフは何も答えることができなかったそうです。


● 皆さんにやってほしいこと
 ここはグロリア社が管理する孤児院ですが。
 ここに入っていたOBが最近愚神との戦いで死んでしまったのが、先月の出来事。
 それが彼女『ナイア・レイドレクス』です。
 ナイアはもともと孤児。というわけではなく、アメリカのほとんど文明も入っていないような一帯に暮らしており、能力者として資質が見抜かれ、日本の未契約英雄と契約するためにここにいただけなのですが。
 彼女は英雄と契約すると共に出撃。
 ガデンツァの手によって命を奪われています。
 そのお葬式が本国で行われると同時に、子供たちの心の整理をつけるため、この孤児院でも行いました。
 しかし、それがかえって悪かったのか。子供たちの気持ちはあの時から沈んだままです。
 皆、思うところがあるのでしょう。
 もしかしたら死。という物が理解できていないのかもしれません。
 皆さんにはそのあたりうまく見つつ、子供たちの心のケアをしてほしいのです。

● 死に対する子供たちの反応。

3~6才
 この年の頃はあまり死に対して理解がありません。
 ただなんとなくみんながくらいので大人しくしているだけです。この子供たちとは積極的に遊んであげることが重要です。
 また彼女たちはリンカーにたびたび。
 ナイアが返ってこない理由を聞くことでしょう。
 答えによっては泣いてしまったり、今後の人格形成に影響が出たりするかもしれません。

7~10才 
 ナイアに対して様々な感情を向けています。
 今回一番フォローが必要な年齢層でしょう。
 さらに、皆抱く感情がまばらで対応も難しいとおもいますが。この年齢層に対応する人数を増やしてなんとかしてあげてください。例としては。

1 ナイアに対して恨み言を言うタイプ
 ナイアは帰ってくると言いました。
 孤児院に帰ってくると。しかしその約束が果たされない今。
 ナイアは彼らにとって嘘をついたことになっているのです。
「帰ってくるって言ったのに! うそつき!」
 そう言って、ナイアの葬式に参列できない子も多くいました。

2 ナイアの死を理解して純粋に悲しいタイプ
 ナイアが死んでしまったことを受け入れて、今も泣いているタイプです。
 ちょっとしたことでナイアを思い出して悲しくなると言います。
 一番大人しいタイプですが、一番心に深刻なダメージを追っているタイプです。
 どうしたら、彼らの心を癒すことができるでしょうか。
 
3 ナイアの死に対して悲しいのをごまかそうとするタイプ。
 ナイアが死んでしまったことなんてなかったかのように日々を過ごすタイプです。
 なので、ナイアの話題が出そうになったりするとそれを避け、ナイアのゆかりの地には近寄らないようにしています。

4 愚神に怯えるタイプ
 ナイアを殺されたことで自分たちも殺されるのではと思ってしまったタイプです。
 見分けるのは簡単で、夜眠れていないので元気がなく、クマができています。
 彼らには安らぎを与えることが最優先だろうか。

11~15才
 ナイアと一番かかわりが薄かった年齢層です、彼らはそれぞれショックを受けていますが、わりかしドライです。
 ドライになることで心を守っているのです。
 死というものがどういうものか、測りかねているからです。
 年少組のように、茶化すことや、真っ向から受け止めることもできず、避けることしかできません。
 なのでドライなのです。
 

● 孤児院のスターキャラクターたち
 孤児院には特に名の知れた子供たちがおります。
 その子供たちはムードメーカーでもあるので、彼ら、彼女等を元気づけることで孤児院の空気も少し明るくなることでしょう。

・『黒鳥のファズ』 本名 小鳥遊 健吾 10歳 男
 子供たちからはファズと呼ばれ親しまれている。窃盗の天才でアイテムを盗まれる危険性がある。
 彼はナイアと接点はほとんどなかったようです。
 ただ、人は死んでしまう儚い、命。
 みたいなことをひたすらにつぶやいて、雨が降りしきる庭に立つ。
「いつだって、そばにいると思ってた人が。今この場にいないなんて、信じられるか?」
 と話しかけてくるので。彼の中二病会話につきあってあげると満足するでしょう。


・野島 正  7歳 男
 最近、リンカー達の教えもあってめきめき腕をあげている少年。
 ナイアとはそこそこ仲良くしていたらしく。
 正はかたき討ちをすると言ってきかないそうです。
 依然も一度孤児院を抜け出しそうになって止められています。
 今回の混乱に乗じてガデンツァ探しに向かうつもりらしいです。
「だってよ! ゆるせねぇじゃんか!」
 そう正はガデンツァへの怒りを訴えます。

・ アイラ・レセクティス 9歳 女
 金糸の目、金糸の髪の美しい少女。多くの男性児童を下僕としてはべらせている。自分のものにならない奴は嫌いである。
 ただ、彼女自身も能力者故、今愚神の恐ろしさに震え、部屋に引きこもっています。自分も殺されるのではないかという恐怖におびえて、髪もぼさぼさ、肌もがさがさ、目の下にはクマが浮かんでいます。 


・ 三浦 ひかり 十一歳 女
 アイドル夢見る少女。歌が得意。
 足が悪く車いすである。
 ナイアと一番仲が良かった少女。
 彼女は友達に連れられてナイアとお別れを済ませていたので。感情の整理はついている様子。
 と言っても、他の人間から比べるとまし、程度。
 彼女も孤児院を明るくしようと奮闘しているので、リンカーに非常に協力的である。

解説



目標 孤児院に少しでも元気を

● 死んでしまった少女

・ナイア・レイドレクス 12歳 (死亡)
 シナリオ名『WD~金蛇の村~』で愚神に憑依されていた女の子。
 非常に高い能力者適性があり、彼女もリンカーとした活動することを希望したために、一度日本にうつされた。
 前回『【電撃作戦】塔の真相』にてガデンツァによって殺害されており、先日彼女の葬式が終了した。遺骨は本国に存在する。


● 日程とやること
 今回のスケジュールは泊りがけです。
 初日13時ごろから到着
 次の日の18時頃に車で自宅まで送り届けられます。
 なのでこの二日がかりの孤児院訪問で、子供たちに元気を与える必要があります。

 方法としては、個別対応と団体対応があるでしょうか。
 個別対応はスターキャラクターや、ある一定層の子供たちだけをターゲットに対応する事。
 団体対応は、子供たち全員の気持ちを楽にするために何かレクリエーションを企画する、などです。
 前に訪問したときは、ミニアイドルライブだったり、実際にリンカーが戦っているビデオをみせたりしました。
 今までのリンカーたちの催しは好感触で、皆リンカーが期待しているようです。
 
● 新しい友達

・竹近 彩名 十三歳
『D~ロストチルドレン~』にて命を救われた少女。
 体に従魔化の痕跡である鱗が生えているので。顔半分をマスクで隠して、常に長袖、長ズボンです。
 彼女は最近孤児院に入ってきたばかりで馴染めてないせいか。
 ナイアとなぜ会えないの? と聞いてくる幼子に対して「彼女が弱かったからだよ」と吹聴して回っているそうです。
 弱ければ死ぬ、強ければ生きる。強い者には逆らえない。人生が狂わされてもしかたない。そう言った持論で殻を作り続けています。
 もし、自分を助けてくれたリンカーに出会っても。
「何で中途半端に助けたの! こんな体じゃ、死んだ方がましだった!」
 そう罵倒する事でしょう。

リプレイ

第一章 嘆きの音

 死んだら話しかけてもくれない。笑いかけてもくれない。怒ってもくれないし、抱きしめてもくれない。
 温かくもないし、動きもしない。
 そんな光景を『イリス・レイバルド(aa0124)』は夢に見る。
 もう取り返せない日々。家族といた幸せな日々。
 
「そういうのがすごく悲しくて、つらくて、泣きそうで。
 それでも時間がたてば薄れてしまう。
 悲しい思いはいやなのに、悲しくなくなっていくことがすごく悲しい。
 これから先がなくなってしまったのに。
 これまでの思い出すらも薄れてしまう」
 
 自分の口から発せられる言葉が自分の言葉ではないかのように、イリスの唇を震わせる。
 そしてイリスは顔をあげる。すると眼前の光景は変わっていて。緩やかな坂を上っていくバスの中だった。窓の向こうに巨大な施設が見える。
「だから何かを遺したくなる」
 その施設を眺めてイリスははっきりそう告げた。
 それを『アイリス(aa0124hero001)』は頭を撫でて褒めてあげる。
「そうだね。それが正しい願い、思いだ」
 到着した孤児院は誰の目にも灰色に見えた。
「大人でも死は受け入れがたいことなのに、子供にそれを受け入れさせるとは……」
 『鐘田 将太郎(aa5148)』はそうため息をついて、タラップを踏む。
 『嬢(aa5148hero001)』の手をとって降りさせるとそう、ため息をついた。
 本日この孤児院へと訪れたのはメンタルケアのため。
 人一人の死。それをどう受け入れていいか迷う子供たちの導になるため。
 ただ、それに苦しみを抱いているのはリンカーたちも同じで。
 『藤咲 仁菜(aa3237)』はいまだにバスから降りようとしなかった。『九重 依(aa3237hero002)』がその手を取って顔を覗き込む。
 以前、仁菜はここには戦い方を教えに来た。守る事の大切さを教えに。
 だけど…………。
 仁菜は守れなかった。件の少女。ナイアを。
「守れなかった私に、ここに立つ資格なんて……」
 そう涙をこらえて膝を凝視する仁菜。だがそれを依は許さない。
「ここまで来てうじうじするな。行くぞ」
「無理やり連れて来たんでしょ!? きゃー引きずらないでー!」
 ずるずると仁菜がバスから担ぎ出されるとリンカー全員が孤児院の前にそろったことになる。
 いつもの様な歓迎はなし。
「常に死と隣り合わせだと言う事を忘れていたな」
「…………この手の空気は好きになれないね」
 『御神 恭也(aa0127)』と『伊邪那美(aa0127hero001)』が顔を見合わせる。
 この状況を見るだけ、それだけでも皆の精神状態が悪いものだとわかった。
 仁菜の視線が『彩咲 姫乃(aa0941)』に注がれる。
 どちらかと言うと、彼女はこの雰囲気に染まるべき人間だ。

――悲しいときに目をそらしたくなるのは仕方がないこと。
 だけど、それは自分自身の心に穴を開けること。
 欠けた心は時間がたつほど透明になって見つからない。

 けれどそれでも立っていられるのは、前に進むと決めたから。それを彼女も祝福してくれると思うから。
 姫乃の隣を悠々とイリスが通り過ぎる。
 その背に続いたのは以外にも姫乃が一番先だった。
「すぐに割り切れって言えることでもないしな」
「ご主人もそうでしたしニャ」
 『朱璃(aa0941hero002)』がそう告げた。
 孤児院の扉を開く。
 真っ先に視線に入ったのは廊下のすみっこで体育座りをしている少年。
 彼は姫乃を知っていた。
「姫乃お姉ちゃん。なんで」
 その瞳が涙で潤んだ。
「なんで、ナイアお姉ちゃんは返ってこないの?」
「ごめん…………」
 その言葉が、少年を突き刺すより前に、涙がこぼれるより前に動いたのはイリス。
 崩れ落ちそうな少年の体。自分と対して身長が変わらない少年の体を抱き留める。
「泣いていいんですよ」
 少年はイリスの肩に目を押し付けて声をかみ殺す。
「泣き疲れるまで泣いて、あったかくして眠って、ご飯を食べて。
 一度心を落ち着けるんです。
 そして本当に言いたかったことを言葉にしましょう」
 その言葉は玄関を覗きに来た全ての少年少女たちに届く。
「例え叶うことがなくても、悲しみじゃなくて願いを記憶に結び付けて刻み込むんです。願いは、悲しみよりも強い絆ですから」
 告げるイリスの明るい声で少しだけ、空気が和らいだ気がした。
 けれど。
 すぐにそれも剣呑としたものに再変換される、理由は一人の少女の登場にある。
 彼女の名前は彩名。全身を野暮ったい服で隠し。しかしその瞳はリンカーたちに注がれていて。
「久しぶりですね、彩名さん」
 そう口火を切ったのは『卸 蘿蔔(aa0405)』。
 『レオンハルト(aa0405hero001)』が心配そうに視線を向ける。
「あんたら!!」
 彩名の髪の毛が逆立った気がした。
 その彩名に歩み寄る蘿蔔。手にはパンフレットや書類が握られていた。
「友達に話したら、治る可能性があるって。それに私達まだ従魔化した子供たちのための研究を続けていて」
「そんなもんいらない!!」
 そう彩名は力にまかせて蘿蔔の手をはたく。
「いた…………」
 散らばる書面、その上に血が数滴たれた。彩名の手には硬い鱗。それに擦れて蘿蔔が出血したのだ。
 レオンハルトが気遣って手を取る。
「大丈夫…………大したことない」
 その声に目を見開いた彩名。再度振り上げる拳、それを蘿蔔はただじっと眺めていて。
「ヒャッハー! 天才の槇さま謹製のゲームを持ってきたお! 一緒に遊ぶお、さぁ遊ぶお!」
 その手を取ってコントローラーを握らせる『阪須賀 槇(aa4862)』。その手のざらりとした感触を確かめながら槇は言葉をかける。
「彩名たん元気してたかお!」
 『阪須賀 誄(aa4862hero001)』はその間彩名を観察していた。
 彼女の症状。それが進行している気がしたから。
「あれからチョーシはどーだお?」
「あんた、たしかあんたも一味だ」
「まるで悪いやつみたいな言い草だお」
「本気で言ってんのか!! 人殺しども!!」
 一瞬言葉を失う槇。それが、蘿蔔を責める機会を与えてしまった。
「特に、直接手を下したやつ、絶対許さない! お前もだ! 蘿蔔! 優しいふりして近づいて。殺す機会をうかがってたんだろ! 人殺し」
「……そ、そんなこと言うのNGだお! 可哀そうだお! それに卸さんは殺してな…………」
「うるさい! 私がどういう気持ちだったかわかる? 朝、目が覚めたらみんないない、死んでるって聞かされて、殺したのは…………殺したのは、大好きだったお姉ちゃんたちだって」
 涙交じりに叫ぶように言い放つ彩名。
「う……そ、それは……」
 言いよどむ槇、言葉を返せない蘿蔔。
「信じてたのに…………」
「…………ごめん、だお……」
「信じてたのに!!」
 悲鳴のように言葉を叩きつけると彩名は自分の部屋めがけて走って行ってしまった。
 孤児院訪問は最悪なムードでスタートしてしまった。
 
第一章 恐怖の形
 
「やぁああん可愛いじゃないかぁああ!
 『青色鬼 蓮日(aa2439hero001)』の奇声がこだまする。追いかけまわす蓮日に逃げる子供たち。それは一度この施設に『鬼子母 焔織(aa2439)』が来た時にも見た光景だった。
「笑顔ヲ少しデモ取り戻しましたカ」
 その光景を眺めて焔織は告げる。
 見れば蓮日は捕まえた子供たちを優しく抱え上げ頭を撫でている。
「子らよ。おいで」
 そう自分の周りに子供を集める蓮日に、焔織は鬼子母神のなんたるかを見た。
「さぁさ子供たち! 今日のおやつは蓮日ちゃん特性『かぼちゃ豆乳プリン』だよ!」
 そう幻想蝶から籠を取り出し、子供たちへと与える蓮日。
 だがその輪にうまくまじれない子供もいる。
「ほぉーれバカ息子どもー! 馬車馬の如くものを運ばんかー!」
 『煤原 燃衣(aa2271)』は槇が顎で使われる中。蓮日は立ち上がり。とある少女を背後から襲った。
「ひーめのん!」
「うひゃああ!」
 空中へと抱きかかえられた姫乃、普段であれば気配を察知するのもたやすいのだが、やはり疲れているのだろう。
 姫乃は手にぶら下げた本をたたむと蓮日を振り返る。
「俺、今本読んでたとこなんだけど」 
 子供たちへの読み聞かせである。
「何の本かな?」
「百回生きた猫の話って知ってるか?」
 そう本を振るう姫乃である。年長組にわざわざなんでそんな絵本なのかというと、やはりその心を気遣ったからだろう。
「ほらほら、みんなおいで」
 そう蓮日が子供たちを自分の周りに集める。
 姫乃を膝の上に抱きかかえて語りだした。
「……死ぬと言うのはね。二度と逢えなくなってしまうことだ」
「……蓮日さマ、それハ……」
 焔織の言葉に首を振る蓮日。
「幼子も本能では分かっておるよ。死とは何か、はね」
 そう少女を一人できとめて胸に耳を押し当てる。
「聞いてごらん」
 少女はそれが落ち着くのか目を瞑って蓮日に抱き着いた。
「これが命の音、心臓の音、みーんな持ってる音」
 そう蓮日は一人一人の顔を見渡しながら告げた。
「死んでしまうと心臓が止まる」
 蓮日の声が冷えた。
「心臓が止まると、人間はもう二度と動けない、喋れない」

「命は一個しかない、一回消えたらおしまい」

「だから、死んだ人とはもう会えない」
 思い出したのだろう、親しい人間もいたのだろう。すすり泣く声が聞える、その子供を探しだして蓮日は手招きしてその腕に抱えた。
「だけどよーくお聞き? 人間には魂がある。死んだ人は魂になって、遠い所にいく」
 空を見上げて蓮日は告げる。
「だけど、いつも生きてる大好きな人を遠くから見てる。そして時々不思議な事をして皆を守ってくれる」
「本当に?」
 少女が目をあけて蓮日をじっと見た。蓮日はそれに頷き告げる。
「だから……ちゃんと勉強してるか、泣いてないか、悪い事してないか……ナイアちゃんは今も皆を見てるんだよ」
 そう蓮日は少女の鼻をつまむとぐりぐりと左右に振った。少女は少し笑顔を取り戻す。
「うまく言えないけどな。……悲しみにつり合うまで涙と時間が流れるのを待つしかないんじゃねえかな」
 姫乃がそう皆に告げる。
「それまで放置しますニャ?」
 朱璃が首をかしげた。
「いや、悲しみはどうしようもなくても苦しみはやわらげるはずだ」
 そう言って姫乃は蓮日を見る。
「話し相手がいるだけでも違うもんだろ」
 その視線に答えるように蓮日は声音をあげた。
「さぁ! 実は少しだけ、死んだ人が生きてる人を見易くなるどーぐがある!」
 そうガサゴソと幻想蝶を漁る蓮日。
「この紐にみんなでお祈りをしよー! そして腕輪を作るぞー!」
 ナイアの死には蓮日もまた涙した。同じ苦しみを抱えるからこそ乗り越えられることもあるのだと、蓮日は言う。
 ただそれを分かち合おうとしないものもいる。
 黒鳥のファズ。そう名乗る少年は外で雨に打たれて空をじっと凝視していた。
 その姿を姫乃は見つけると歩み寄る。
 そんなファズ。こと健吾少年の後ろから歩み寄る別の影があった。その影は健吾の目を後ろから覆う。
「けーんごっ、久しぶり」
「おおおう!」
「だーれだ」
「その声! ヴァイオリン野郎!」
 『九重 陸(aa0422)』である。その光景を窓辺で『(HN)井合 アイ(aa0422hero002)』が見つめている。
「何? お前も『ファズ太郎』が気に入ってたの?」
「気に入ってねぇよ」
「しょーがないなー、それならこれからもファズ太郎って呼ばなくちゃな」
「やめろ!」
「ところで健吾は何考えてたんだ」
「え? あ? けんご……。いや! 俺はだな」
「やっぱファズ太郎の方がいいんじゃん!」
「別に気に入ってねぇよ! 俺はな!」
 ファズ太郎は語る。
「いつだって、そばにいると思ってた人が。今この場にいないなんて、信じられるか?」
 そう今までコメディが嘘のようにシリアスに告げる。
 その言葉を受け止めたのは姫乃。
「信じられないよな、今だって悪い夢だったらよかったと思うよ」
 姫乃の言葉にファズは振り返る、二人の視線が雨の中で交差した。
「それでも現実はここで、――結果は覆らないんだ。……悪いな。何時ものようにかまえるほど余裕がないみたいだ」
 それに対して陸はしらーっとした視線を向けつつ肩を叩く。
「ファズ太郎は難しいこと。考えるなぁ。俺にはよく分かんないや」
「おい。それ俺が言ったこともギャグっぽくなるからやめろ」
 姫乃の発言はスルーして、中二病という言葉を隠して陸は言葉を続ける。
「よく分かんないけどさ。とりあえず中入ろうぜ、風邪ひいちゃうし。……若い身空じゃあんまり実感の湧かない話かもしれないけど、健康な身体って、貴重なものだからさ」
「俺はここにいるよ、せめてあいつのちょっとでも近くに」
「かぜ、引いたら俺らが迷惑するんだからな!」
 そう陸はファズを引きずるように屋内に引き入れた。
 すれ違いざまアイは告げる。
「大抵の人は、大切な人、側にいた人と死に別れるという経験をしなくちゃならない。それを悲しむのも、恐れるのも、ごく普通の事だ。だけど、いつまでもそれだけではいけない。明日も生きていくためには、先に進まなくちゃな」
 その言葉にファズはアイに少しだけ尊敬のまなざしを送った。
 その後陸はずぶ濡れの健吾をバスタオルでワシャワシャふくとステージの前に座らせた。
 子供たちが陸の演奏を楽しみにして集まっている。
 そして陸は全員の顔を一度見渡すと、弦に弓を走らせた。
 子供達の心を慰める優しい『別れの歌』を中心に、しかし後半に向けて彼らを励ますような『カノン』を交えていく構成。
 演奏の合間合間にアイが語りだす。
「ここで亡くなった子は、弱いから亡くなったんだ……そんな事を言っている子がいるそうだね」
 響く音色は激しく、けれど旋律は布のように柔らかく温かい。
「歴史を振り返ってみれば、強い人だってたくさん死んできた。
 そのナイアという子だって、オカルトばかり追ってる俺や、ヴァイオリンばかり弾いてる陸より、よっぽど強かったさ」
 その旋律をBGMに語るアイの言葉はしんっと子供たちの心に降り積もっていく。
「弱ければ死ぬ、強ければ生きられる……そういう事ではないんだ。
 だから、焦って強くなろうとする必要は、どこにもないんだよ。
 強くなるのは、戦うのは、どうしてもそうしたい目的を見つけてからでいい」
 告げるアイは一人の少女の姿を部屋の隅に見つけた。
「強い人、優しい人、賢い人、器用な人。色んな人がいて。
 それぞれの力を思う存分発揮してこられたから、人類は今日まで続いてこられたんだと、俺たち二人は思ってる」
 彼女は立ち上がると二人を拒絶するように部屋を去る。
「俺たちは今、ここで生きてる。
 それは、これまでに死んでいった多くの人が、真剣に願って、挑んで、それでも成し遂げられなかった偉業だ。
 生きるっていうのは、それだけで途方もない大成功なんだよ。
 今日を生きたかった人たちの遺志を、ナイアの遺志を、ここにいる皆で継いでいこう」

第三章 墓標

 その後夕食までの時間、リンカーたちはいつもの孤児院訪問の時のように過ごした。
 イリスは同い年くらいの子供たちを中心に友達の輪を広げている。
「ははは、友達百人できるかな」
「……僕の友達はメリーとクリューだけですよ」
 そんなジョークなんだか、ジョークじゃないんだかわからない言葉で子供たちを戸惑わせながら、それでも年上の子供たちにも意識を向ける。
 傷ついて疲れ果てた子がいれば抱きしめ、歌を歌う。
 すると、少年少女たちは悪態をつきながらもイリスのなすがままにされた。
 自分より小さい子に当るまいという理性は残っているのだろう。
「僕はお姉ちゃんにしてもらったことをみんなにしてあげているだけです」
 そう、どうして優しくしてくれるか問いかける子供に告げた。
 そしてアイリスは自分の羽を溶かしこんだホットミルクを振る舞う。
 同じ小さい子供たちの面倒を見るのは伊邪那美の役目でもあった。
 悲しみを忘れさせる為に一緒に遊んであげて、周囲の復讐等と言った血生臭い話を聞かせない様に注意を払う。
「相手を憎む気持ちは解るけど、この位の子達には聞かせたく無いからね」
 そんな伊邪那美へ少女が、ナイアお姉ちゃんはどこに行ったの? と問いかけた。
「う~ん、ナイアちゃんはこの前の事で暫くのあいだ遠くに行くことになっちゃったんだよ」
 そう伊邪那美が抱きしめながら告げる。
「行き先が特殊でね。電話と手紙が届けられない場所なんだよ。だからねナイアちゃんが居ない間みんな仲良く協力し合えるかな?」
 その言葉に泣きだした少年がいた。伊邪那美は同じようにその子も抱きしめる。
「大丈夫だよ……ボクが確り抱き締めてあげるから心臓の音を聞いてゆっくりと深呼吸をして」
 そう胸に耳を押し当てる。
「眠くなったらこのまま寝ちゃって良いから……次に目を覚ましたら楽しいことを探そう」
 その時伊邪那美はふと気が付いた。恭也がいない。
 そして廊下から轟音が聞えてきた。
 見れば正が恭也に向かって刃を振り上げている。
「退かないとお前を殺して、あいつを殺しに行くぞ」
「お前が感じている怒りは正しい、身近にいる人を殺されれば復讐を考えるのは当然だ」
 恭也はその少年の怒りが理解できた。だから振るわれた刃を素手でそらすにとどめる。
「だがな、今のお前がガデンツァを探し出してどうする? 敵討ちか? 例えどれほど有利な状況だとしても実力差を考えれば返り討ちにあるだろうな」
 正の表情が歪んだ。
「例えそうなっても、何もせずに行動したと思うお前は満足かもしれん。だがな、残された者達はどうなる」
「うるせぇ!」
「今回の様に悲しませるのか?それとも、未来のお前の様に自己満足を抱えて死にいかせるのか?」
「黙れって言ってんだろ!!」
「もし、そうだと言うならお前はガデンツァと同じだ。理不尽な悲しみをまき散らしているんだからな」
「おれが……同じ?」
「それでも復讐をすると言うなら、今は力を付けろ」
 そのまま恭也は徒手空拳で構えをとる。
「奴を倒せるだけの実力を身に着けたら本懐を果たせ」
「ちっくしょおおおおおおおお」
 正はがむしゃらに刃を振るう、それを恭也が捌き続ける。そうやって感情のはけ口になっているのだ。

   *   *

 また年中組が多くいるフロアでは仁菜と依が常駐している。
 依は死というものをどう受け入れていいか迷う子供たち、全員、一人一人と向きあっていた。
「約束を破ったから許せない、か? そんな事いったら俺達はまた明日、といって別れる事も出来なくなるな。このご時世いつどこで従魔に襲われて死んでもおかしくない」
 告げると少年はすねたように足元を見つめる。
「そんな世の中で何故不確かな約束をするか? それはきっと願いだ。帰って来たい、また皆に会いたい。その願いを約束に込める」
 そんな少年をしっかり立たせて依はそう告げる。
「約束を守れなかった、それに怒る気持ちも分かる。だが彼女の願いは無下にしないでほしい」
 彼女にとってここはきっと大切な場所だったと依もおもうから。
「調子はどうかな?」
 そんな二人に声をかけたのは将太郎である。
 彼は特に症状が重たい子供たちを見ていた。
 そんな一行の耳に少女の鳴き声が聞こえる。それと同時に別の少女の金切り声。
「入るよ」
 将太郎が扉をゆっくりとあけると、ベットの上で泣きじゃくる少女と、部屋の隅で震える少女アイラが見えた。
 その扉と将太郎の間を仁菜はするりと通り抜け、少女の目の前に腰を下ろす。
「この子達、ナイアがいなくなって辛いんだね」
 嬢がそう告げた。
「本心では受け入れがたいから、余計、悲しいんだ」
 正太郎は噛みしめるように告げる。ナイアはもうこの世にいない。
「ナイアはどんな子だったの?」
 そう嬢はまず泣いている少女にそう声をかけた。
 将太郎はすぐに理解する。嬢は、ナイアの話をさせることで悲しみを浄化させようとしているのだ。
 少女は語ってくれた。自分が困っている時に助けてくれたこと、優しくしてくれたこと。
「でもね」
 仁菜が言葉を継いだ。
「ナイアさんとの思い出を悲しいだけの思い出にしてほしくないの」
 告げると仁菜は少女を抱きしめた。
「楽しい事だっていっぱいあった、笑いあったこともあったでしょ?」
 告げると仁菜は少女に微笑みかけた、先ほどまではあんなに渋っていたのに。
「ナイアの好きだった歌、教えてくれる?」
 少女は答える。ナイアは『希望の音』という歌が好きだったのだと。
 それを仁菜は一緒に謳う。
 その隣で将太郎がアイラの前に膝をつく。
「能力者の鐘田だ。愚神が怖いのかい? それとも、死ぬことが?」
 その言葉にアイラはコクリと頷いた。
「何が怖いの?」
 嬢がそう問いかけた。
「愚神に殺されるのが……」
「あたしだって死ぬのは恐いよ。でも、誰かを守りたい、助けたいから戦うんだ」
 きみ達もね、そう付け加えると初めてアイラは嬢を見る。
「ナイアもあたし達と同じ気持ちだったと思うよ。だから、必死で戦ったんだ」
「俺も能力者だ。いつになるかわからないが、戦いで死ぬことがある」
 再びアイラの瞳が恐怖で彩られる。
「俺も死は怖い。それは他の能力者も同じだ。恐怖を完全に取り除くことはできない、けれど。泣き叫んでも怯えても、苦しみを吐き出すことで自身に打ち克つしかない」
 告げるとアイラは将太郎の袖を強く引いた。
「辛い思いさせてごめん。もう大丈夫だから」
 そして将太郎はアイラを抱き留める。


第四章 蓮華

「なぁ、おまえ」
 それは夕飯時。配膳を手伝っている姫乃は明らかに一人浮いた背中を見た。
 彩名は一人壁をつくるように食事をとっている。
「一人だと、寂しくないか?」
「余計なお世話」
 告げると姫乃は彩名に告げる。
「あいつ、強かったよ。俺達を助けてくれたんだ」
 その言葉に彩名は威圧的な視線を姫乃に向ける。
「ここの子供たちは今どうしようもなく心が足踏みしてる。――そういう前に進めない時ってのは弱いときだ」
「だから?」
「だがな、だからって殺させねえし奪わせねえ。強くなるまで弱いってんならその時が来るまで俺が強くなる」
「もう、奪われた人間の前でそんなこと言うの? それとも私は勘定に入ってないってわけ?」
「わ、私だってもっと…………もっと早く助けたかったよ」
 そのか細い言葉に振り返ると蘿蔔が立っていた。
「あなたがこんなことになる前に…………間に合わない子が出る前に。全員、助けたかった」
 蘿蔔は涙をためて立ち尽くしていた。
 蘿蔔はあの日からずっと後悔している。何故もっと早く治療法を見つけられなかったんだろう。
 何故従魔化が進んでいた子達にも治療を試さなかったんだろう。
 他の方法も見つけるべきだったのではないか。
 何故あの子に辛い役目をさせてしまったんだろう。
 もっとできることがあったんじゃないか。
「でも、生きていてくれて嬉しかったのも本当です」
 でもそれ以上の後悔がずっとあるのだ。
「だから……だからなに。結果私はこんなんで、あんたらの不始末を私は背負ったんだ!!」
 彼女の気持ちはわかる、自分も病という理不尽にさらされたことがあるから。
 だからうまく言葉が出ない。何も言えない。
 だって、蘿蔔は自分の想いが。どれほど彼女にとって無意味か知っているから。
「ごめんね、ごめんね…………」
「そんなに謝るくらいなら!! 私を殺せよ!! 後始末くらいつけろよ」
 そう蘿蔔に掴みかかる彩名。
 それを見てレオンハルトが止めに入ろうとするが、先に誄が動いた。
――……だったら死ねばいいじゃん。
 その言葉に場が静まり返る。
「どうせ死ぬ勇気なんて無い癖にさ。ワロスワロス」
 槇が止めに入ろうとするが誄はそれを遮った。
「すまん兄者、隊長。俺は精神年齢ガキだから黙ってらんない」
 彩名が殺意をもって誄を睨む。
「ヒネた態度で自分の事ばっか言うけどさぁ。毎日、地獄の様な苦しみに体を差し出した隊長の事は知ってんの? 毎日、寝ないで意識が飛ぶまで研究続けた兄者の事は知ってんの?」
「そんなの、関係ない」
「不幸自慢すんなよな。隊長なんて家族みんな目の前で殺されてんだぞ」
「そんなの、そいつが弱いからだ」
「…………そうだよ。全部弱いからだよ。俺も同じ持論だよ」
「だったら」
「でもそれ《お前も》だろ」
「…………そうだよ」
「弱いから《そうなった》んだろ?」
「……そうだよ!」
「辛いのは分かるよ。だけどそれを手当たり次第に他人に押し付けんなよ。それこそ、自分を《そんな》にした奴と同じだろ」
「そうだね、あなた達と同じ、私はそう言うやつだ」
「そんなの《強くなるしかない》だろ、JK」
 その言葉に彩名は何も答えない。
「強くなる以外に、方法なんてないだろ」
「弟者、待つお。それ以上言ったら……彩名たんが壊れちゃうお」
 そう間に入ったのは槇。
「ごめんお彩名たん、でも……。弟者の言ったことも、時に間違ってもねーお」
 次いで槇は誄を見た。
「彩名たんは悲しいんだお? 憎いヤシに怒りをブツける事も出来なくって、メッチャ悔しくて悲しいんだお?」
 そして次に周囲の少年少女を見た。
「でも、だいじぶ。なんたって。この無敵の阪須賀さまも初めは弱っちかったお」
「…………今も弱いよな兄者」
 誄の言葉に顔を赤らめる槇。
「…………い、一緒に強くなったら良いんだお! そうだお? タイチョー!」
 次いで、キーンっと施設中のスピーカーが震える。 
 放送室に待機していたのは燃衣。今までのやり取りはばっちりすべて聞いていた。
「皆さん、覚えていますか? 以前エージェントの講義に来た、煤原です。
 まだ年端も行かない皆には、ナイアちゃんの事は、さぞショックでしょう。
 目を逸らす、怯える、誤魔化す。色んな方法で……心を守っているんだと思います。
 だけどボクらは認識する必要がある。彼女は《敵》に殺されたと」
 館内がざわめいた。
「その事に『弱いから彼女は死んだ』と吹聴した子が居ました。……それはある意味正しい」
 その言葉にそっぽを向く彩名。

「何故ならこの世界には……《敵》が居るから」

「《敵》にとってボクらはただの食べ物です。ボクらがご飯を食べる時、お肉の気持ちを考える? 考えないよね。
 ボクらの事情は……《敵》には関係ない。
 目を背けても誤魔化しても怯えても、関係なく狙ってくる」
 恭也に向けて刃を振るっていた正がぎらつく視線をスピーカーに向けた。
「じゃあ……どうしたら良い?」

「……ボクの答えは……《強くなる》」

「自分を、友達を、お家を…………守れるだけ、強く」

「それは簡単な事じゃないし、その為に何をしても良いワケじゃない」

「ヤケになったって、突っ走ったって一人じゃ弱いんだ」

「だから……仲間と共に強くなるんです」

「《心》も共に強くなるんです」
 そして施設中のモニターの電源が入った。それらはすべて。リンカーが愚神と戦い勝利した映像。
「こう見えてボク弱いんです、カッとなって大変になる事も沢山ある。だけど、ボクの事情なんて敵には関係ない。だから進み続ける、毎日一歩でも」
 その画面に少年少女は食い入るように見入った。
「……悔しいじゃないか! 怖がるだけなんて! 何も出来ないなんて! だから、共に強くなろう! 立ち上がって!
 戦い方は一つじゃない。モノを作ったり、戦う仲間を励ます戦い方もある。
 違うと思うならばそれも答えだ、だけど、悔しいと感じたなら……」
 告げるとモニターにマップが表示される。
「VBSを始めます。今回の敵は強いです。協力し合わなければ勝てないでしょう。それでもと思う方は……体育館へ!」
 ぞろぞろと子供たちが移動していく、その光景にあっけにとられた彩名。
 そんな彼女にレオンハルトが歩み寄る。
「俺たちは君を中途半端に助ける気なんてないよ。まだ終わってない…………戦っている子が目の前にもいるからね」
「それって私の事?」
「今治療法を探しているんだ。時間はかかるし…………体も大変だと思う。でも君が納得するまで協力する」
「治るの」
「治すよ」
 そう言い切るレオンハルトに彩名の表情が少し変わった気がした蘿蔔。
「だから少しで良いから頼ってくれないか? 恨み言でも良い。なんでも言ってくれ。どんな君でも否定しないから」
「あ、あとね、実はね…………お洋服作ってきたの」
 そう蘿蔔は背負ったバックから服を取り出した。
 長袖で露出は零に近い衣装だったが、それでも可愛いと彩名は感じる。
「私はもう、こんな可愛い服着れないよ」
「そんなことないです。似合うと思います」
 そんな蘿蔔を一瞥して、彩名はそっぽをむく、そしてぼそぼそと告げた。
「さっきは、ひどいこと言ってごめん。でもまだ、許せない」
「それでもいいです。でももし全部、許せる日が来たなら、私とお友達になってください」
 その言葉に彩名は顔を赤らめて、蘿蔔には背中を向けたのだった。



エピローグ


 騒がしい体育館の外で姫乃はひかりと会っていた。
「写真のとこに置いといてもよかったんだが、ひかりが持っててくれ」
 そう姫乃が光に手渡したのはネックレス。
「あと無理はするなよ。――他と比べたらましなだけでひかりも元気足りてないからさ」
「お互い様だよ」
「ご主人にも同じこと言えますデスがニャー」
 朱璃とひかりに突っ込まれて姫乃の顔が熱くなる。それを隠すために姫乃はひかりの肩に額を押し付けた。

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

  • 太公望
    御神 恭也aa0127
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
  • 無名の脚本家
    九重 陸aa0422
  • 臨床心理士
    鐘田 将太郎aa5148

重体一覧

参加者

  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 太公望
    御神 恭也aa0127
    人間|19才|男性|攻撃
  • 非リアの神様
    伊邪那美aa0127hero001
    英雄|8才|女性|ドレ
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
    人間|18才|女性|命中
  • 苦労人
    レオンハルトaa0405hero001
    英雄|22才|男性|ジャ
  • 無名の脚本家
    九重 陸aa0422
    機械|15才|男性|回避
  • 叛旗の先駆
    (HN)井合 アイaa0422hero002
    英雄|27才|男性|ブレ
  • 朝日の少女
    彩咲 姫乃aa0941
    人間|12才|女性|回避
  • 疾風迅雷
    朱璃aa0941hero002
    英雄|11才|?|シャド
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271
    人間|20才|男性|命中
  • エクス・マキナ
    ネイ=カースドaa2271hero001
    英雄|22才|女性|ドレ
  • 我ら、煉獄の炎として
    鬼子母 焔織aa2439
    人間|18才|男性|命中
  • 流血の慈母
    青色鬼 蓮日aa2439hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • その背に【暁】を刻みて
    藤咲 仁菜aa3237
    獣人|14才|女性|生命
  • 私はあなたの翼
    九重 依aa3237hero002
    英雄|17才|男性|シャド
  • その背に【暁】を刻みて
    阪須賀 槇aa4862
    獣人|21才|男性|命中
  • その背に【暁】を刻みて
    阪須賀 誄aa4862hero001
    英雄|19才|男性|ジャ
  • 臨床心理士
    鐘田 将太郎aa5148
    人間|28才|男性|生命
  • 苦難に寄り添い差し出す手
    aa5148hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
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