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ぼうけんの書(相談卓)
最終発言2018/01/13 10:45:56 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2018/01/05 09:19:18
オープニング
この【初夢】シナリオは「IFシナリオ」です。
IF世界を舞台としており、リンクブレイブの世界観とは関係ありません。
シナリオの内容は世界観に一切影響を与えませんのでご注意ください。
ヒュウゥゥ……
目を覚ますと草原が広がっていた。
「私は誰なんだろう……」
靄でもかかっているように、頭がぼんやりしていた。
「ああ、そうか……」
私は……勇者だ。
「早く行きましょう」
仲間が私を呼んでいる。
少し離れたところに、数人こちらをじっと見ていた。
「さあ、行こうか」
今、冒険が始まる――
***
城下町に着くと、そこは普段よりもいっそうと騒がしかった。
「姫がさらわれたらしいぞ!」
町の人によると、この国の姫がさらわれたらしい。
「なに驚いた顔をしているんですか……勇者様」
仲間によると、どうやら今回の旅の目的はその方を助けることだそうだ。
情報を集めるため、酒場に行こうと裏道を歩いていると――
ゴトゴトゴト……
樽の中から音がした。
猫だろうとは思ったが、不思議と覗いてみたくなる気持ちがあった。
チラリ……
覗こうとした瞬間、ひゅんッと青い物体が飛び出し、物陰に隠れる。
剣を構え近づいていく。
『ボ、ボクは……わ、わ、わ……悪い怪物じゃないよ!!』
青くてプルプルした物体が喋りだす。
「なんだ、スライムですね」
このプルプルした弾力性のありそうな物体を仲間がスライムと呼んだ。
「ボク……知ってるよ! 暇つぶしに魔王様が姫様をさらったんだ!」
そんなわけあるかと心の中で思う。しかし、スライムを見ると嘘も行ってなさそうだ。
プルプルとし続ける青い物体を放置し、勇者一行は酒場へと歩きだすのだった。
解説
●目的
このRPG世界を楽しむ
●職業 1D10か、または話し合いで決めてください。
能力者
1、勇者 2、姫 3、魔法使い 4僧侶 5、スライム
6、武闘家 7、スライム 8、賢者 9、村人A 10、魔王
英雄
1、兵士 2、村人B 3、スライム 4、魔法使い 5、僧侶
6、PLの好きな魔物 7、武闘家 8、スライム 9、遊び人 10、好きな職業(勇者、姫、魔王以外)
※描写について※
オープニングによると姫を救うとなっておりますが、もしかしたら夢から覚めて救えない可能性もあります。
冒険のどこが描写されるかは、プレイング次第になっておりますのでご了承くださいませ。
!プレイングについて!
何をやるか、誰とどういう行動をとるか、どこに行きたいかを相談することをお勧めします。
いきなり終盤ラスボス戦でもいいですし、町をグダグダするプレイングでも構いません。
文字数が限られているので、やりたいことを複数よりも大まかに絞っていただけると描写率が上がります。
リプレイ
■魔王城―寝室
静かな長い廊下。空気がひんやりして冷たい。
音一つないこの場でただ一つの足音だけが響いていた。
木造の重そうな豪華な扉の前でその足音は止まる。
ギイィィ……
ゆっくり静かに開くとそこは、広く立派な寝室であった。
天蓋付きのベットに抱えていたモノを優しく横たわらせる。
「……起きてないよね?」
先ほどの足音の正体――声の主である魔王、三ッ也 槻右(aa1163)が王国から攫ってきた姫の顔を覗き込む。
魔王としての威厳を保つため攫ってきてしまったが、姫の無垢な寝顔を見ていると罪悪感が生まれてくる。
「んん……ん……」
姫が寝返りを打ち、そのまま眠そうに眼をぱちぱちと開いた。
起きてしまう――慌てて大きな赤いふかふかのソファの陰に隠れ様子を窺う。
「んぁ……こ……ここはどこかしら……?」
むくりと体を起こし、眠気眼をさすりながら辺りを見渡す。視界の端に映るのはびくびくしながら隠れる魔王。
攫われてから到着した今まで、ずっと寝ていた姫――GーYA(aa2289)は状況がわからない。彼を魔王と気づかずに、ゆっくりと起きたばかりの体をフラフラさせ近づいていく。
「あの……貴方は――」
びくびくしながら見上げてくる彼に、怖がらせないようににっこり笑った。
「ごめん、ごめんねっ」
声を掛けられた魔王槻右は、びくっとなり姫にペコペコ頭を下げる。
「あらあら……?」
状況のわかってない姫は只々困惑、苦笑を浮かべた。
『……姫、あなたは攫われたのよ』
姫の体、ちょうどお腹のあたりだろうか、そこから姫とは別の女性の声が聞こえてくる。
『……この方は魔王様……』
声の主は姫の病を治すために体内にて活動している極小スライム「金の雫」。名をまほらま(aa2289hero001)と言う。
流石はスライム――魔物と言ったところだ。体内にいるということは一緒に寝ていた可能性が高いのだが、魔王の存在を知っていると共に状況の把握が早い。
「魔王様……」
本当に目の前にいるのが魔王なのだろうか。
姿を見てくすっと笑ってしまう。
「ふふ……魔王って可愛いのね!」
魔王がワタワタしている姿を見て、怖いよりも愛おしい気持ちの方が強かった。
「か、可愛い!?」
褒められてることには変わりないが、魔王という立場上「可愛い」と言われたことに対し何とも言えない顔をする。
「ね! わたくしたち、結婚しませんこと!」
自由奔放なジーヤ姫の気まぐれは、魔王の前でも止まらない。
「け……結婚……」
突然のプロポーズだったが、槻右も満更ではない様子だ。
『ふふ……姫も流石ね。仮にも一応魔王だもの。玉の輿だわ……』
「仮にも一応」というマホラマの呟きに突っ込まずにはいられない。
「あ、そうと決まれば指輪ですわ! あ、これを結婚指はとしてどうかしら!」
サイドテーブルに置いてあった、手のひらサイズの小さな宝箱を開けその中の一つを取り出す。
「あ……あ、そ、それは……! ゆ…指輪がっ! ま、まってっ」
古に伝わりし【オフトンの指輪】と言う前に、その指輪はぴったりと姫の指に収まった。
「代々王妃になる姫に受け継がれている指輪、そうなのですね? 素敵ですわ!」
何も言ってないのにもかかわらず、独自解釈で都合の良いものに変換。満足そうに笑うジーヤに槻右は何も言えずに、ただおどおどするしかなかった。
『それよりも姫、お腹すかないかしら』
マホラマの言葉と共に「クゥ~」と音が聞こえてくる。
「ええ、お腹すいたわね!」
「何か美味しいものはないのかしら」という姫の自由っぷりに、魔王はただ苦笑を浮かべる。
この先どうなってしまうのだろうという不安が、胸いっぱいに広がるのであった。
■魔王城―宝物庫
城にある螺旋階段を下へ下へ。その先の頑丈な鉄の扉。
そこに青色のプルプルした蒟蒻状の物体――スライムと、漆黒に染まりし鋼の鎧に身を包んだ男が、扉越しに中にいる者に話しかけていた。
「中の、状況は、どう?」
プルプルと体を揺らし、部屋の中の状況を確認するのは、スライムの魂置 薙(aa1688)である。
「魔王から内部の確認をするよう頼まれた。異常はないな?」
特に心配はしていないといった様子の騎士、海神 藍(aa2518)は大理石でできた壁に寄り掛かりながら言葉を付け足した。
ズズズ……
中で大きなモノを引きずるような音がする。
『もちろん。私の守りに抜かりはないぞ?』
声の主であるエル・ル・アヴィシニア(aa1688hero001)は、外にいる者へ扉を閉じたまま返事を返した。
『心配せずとも、易々と中の物を奪われるようなことはない』
また、ズズズと引きずる音がしたかと思えば、続けてビタンと叩くような音も聞こえてくる。
「もちろん、心配はしていない。貴殿のようなドラゴンを倒せるのはそういないだろう」
フッと笑みを漏らす。
「うん、エルルは、すごく、強いからね……」
ぴょんぴょんっと飛び跳ねながら、ナギは話を続けた。
「心配も多少は、あると思う。でも、それは、侵入者がくるかも、それだけ。魔王様も、エルルが、負けるとは、思ってないよ……」
飛び跳ねた反動で震える体。そのまま体を左右に揺らす。
『ああ……そう言えば、姫を攫ってくるなどと言っておったな。どうじゃ、上手く事は済んだのかの』
フウゥと強い風が、扉に当たる音がする。アヴィシニアが息でも吐いたのだろうか。
「……姫を攫うことはできた様だ。今頃、寝室で姫と話でもしているんじゃないだろうか」
以前、御守していた姫がこうして攫われてくるのは何とも言えない気分である。
『流石に魔王。攫うことぐらい造作もない事か』
フッフッフと笑う声が聞こえてくる。
「それにしても、平和、だね」
魔王城で「平和」と言うのもおかしな話だが、魔物たちからすれば責められることもなく過ごしていれば平和と言えるのだろう。
「今はまだ、な」
遠くでも見る様に、海神の視線は天井へと注がれる。
「……それにしても、嫌に静かだな」
多いわけではないが、いつもなら少なからず魔物たちが城内を行きかっているはずだ。しかし、今日はここに来るまでに一匹としてすれ違うことがなかった。
『姫を攫うために魔物払いでもしたのではないか?』
魔王が意図としてやっていることなら、確かに気にならない。だが、そのようなことは言われていない。
「そう言えば、二人の姿も見えないな」
自分の他に、魔王には二人の腹心がいる。常に城内は、自分を含め三人とナギ、アヴィシニアが守っていた。
『あやつらは、なにやら客人を招いておったぞ』
流石は太古から城を護る番人としてこの城にいるドラゴンだ。城の中の事なら知らないことは殆どないのだろう。
「ふむ……いつも、客人を招くときは私にも報告をと言っているのだがな」
「まったく」と海神は溜息をつく。
「僕、知ってるよ。さっき、髪の長い、女の人が、二人と一緒に、図書室に行くところ。案内、する?」
ナギは、首をかしげるように体を傾け、それにより体がプルンと揺れる。
「図書室か……なぜそのようなところに?」
ふむ……と考え込むような素振りを見せる。
『何やら最近、あの二人は一緒におることが多いからの。気になるようなら見に行くと良い』
ここにいても仕方ないとでも言いたげだ。
「……そうだな。ナギ、案内してくれるか」
特に案内は必要ではないが、折角の申し出だ。彼に図書室まで案内するように頼む。
「うん、任せて、こっちだよ」
ぴょんぴょんとウサギ跳びでもするように通路を進んで行く。そのまま通路の先の螺旋階段を上がっていった。
『さて……五月蝿い輩がいなくなったところでひと眠りでもするか』
ズズズと尻尾を引きずるような音が聞こえ、そのまま風がヒューヒューする音が聞こえてくる。
「海神さん、はやく、行かないの……」
階段方から声が聞こえ「今行く」と彼に返事をすると、騎士海神もまたこの場を後にするのであった。
■魔王城―図書室
紙の匂いが充満する、図書館と言ってもいいぐらいに広い図書室の一角――本棚の奥にある秘密の部屋で、ヒソヒソと会話をする者たちがいた。
『おお、野乃! とうとう我々の野望が叶う時が来るのか!』
身を乗り出し目を輝かすのは、キリル ブラックモア(aa1048hero001)という賢者である。
『ふふふ……彼女の魔法によって、ようやく、じゃ』
魔王よりも魔王らしい笑みを浮かべるのは、魔法使いの酉島 野乃(aa1163hero001)は椅子に座り二人に視線を送った。
『この時を待っていました……後は事を進めるだけです』
同じく椅子に座り、禮(aa2518hero001)は小悪魔のような笑みを浮かべる。
『あとは、何が必要なんだ?』
真剣な眼差しでこれからの計画について話す。
『まず、この魔法――禁術【菓子変換式,スウィーツコンバーション】を使うためには、宝が必要なんです』
禮はポケットから銀貨を取り出し、魔法を使う。すると、銀貨はクッキーの山に代わった。
『おおお! 素晴らしいじゃないか!』
お菓子好きのキリルは更に瞳を輝かせた。
『しかし、これには欠点があっての……宝の価値によって変換されるお菓子も違う。よりおいしいものを食べるには高価なものが必要なのじゃ』
頬杖を突き、小さく溜息をつく。
『なるほど……それで私がここに呼ばれたということだな』
客人であるキリルは、腕を組みうんうんと頷く。
『流石はキリル殿。お菓子のことになると鋭いの』
にやりと笑う野乃。
『キリルさんには、菓子の知識も頂戴したいところです。そして、魔王様の宝を奪還。あの指輪さえあれば……!』
オフトンの指輪が菓子に代わるのを想像して、うっとりする。
『後は、宝物庫の場所と指輪をどう奪うかじゃ。魔王には側近の騎士が常に近くにおっての……そう簡単に手はだせん』
『その上、宝物庫はドラゴンが守っているのも厄介ですからね』
三人は机の上の羊皮紙に、羽ペンでメモを書いていく。
『なんにせよ、本当に魔法を使って野望を達成するにはまだ色々と準備が必要だってわけだな』
キリルの言葉に二人は静かに頷いた。
『とはいえ、できないことではない。まずはスライムのナギをこちら側に誘えれば……』
同志を増やすことは成功のカギにもなる。
『彼は、番人のドラゴンと仲が良いと聞いてます。こちらに誘うことができれば、宝物庫に関しては手に落ちたと同然』
一番の問題は指輪だと続ける。
『魔王が手にした状態では、確実に奪うのは難しいじゃろうな』
『ええ、騎士をどうにかしても、わたしたちが眠らされ、そこで計画は失敗です』
どうしたものかと、また三人は考え込む。
……カチコチカチコチ
考えがまとまらないまま、静かに時間は過ぎていく。
図書室をただ時計の針の音だけが静かに時を刻んでいた。
『そうじゃ、姫は使えんかの?』
野乃が一番に沈黙を破る。
『そういえば、魔王様が攫ってくると言っていましたね』
『うむ。確か寝室に連れて行くと言っておったような……』
なるほどとキリルが続ける。
『姫に隙をついて奪ってもらうというんだな?』
そう口にして、少々渋い顔をする。
『しかしだな……一国の姫だろう? そのようなことができるだろうか』
温室育ちであろう姫に、そのようなことができるか。想像しようにも思い浮かばない。
『魔王も魔王じゃからな』
指輪は脅威だが魔王自体はどうということはないと野乃が言う。
『実際やってみないと何とも言えないです。とりあえず、ナギを仲間に入れるところから始めましょう』
箇条書きした項目の一つに丸と付ける。
『その前にじゃ……』
にっこりと野乃が笑う。
『ああ、腹が減っては戦ができぬというやつだな!』
力強くキリルが頷きながら言う。
『そうね……折角こうして集まったんですから』
実行する前に、腹ごしらえ。何やら企む三人は別の部屋へと移動するのであった。
■魔王城―数週間後門前
ギィギィギィと肉が腐り骨が見える鴉が鳴く。
黒く大きな鉄柵の前で、六人の冒険者が立ち止まっていた。
身なりはいかにも冒険者と言った感じだろうか。騎士のような重装備ではなく身軽な装備である。
「っててて……」
ここに来るまでに、魔物たちに襲われ何とかこの場までやってきた――が、無傷とは言わず多少の傷はついてしまう。
「流石に無傷とはいかんかったなぁ」
腕の切り傷が痛むのか、賢者の弥刀 一二三(aa1048)は眉を顰める。
「いたそーなんだよ……大丈夫?」
心配そうに一二三に薬草を使ってあげたのは、商人のピピ・ストレッロ(aa0778hero002)。
『全部で80Gだよ♪』
使ってから請求するのはこ狡い――いや、小悪魔商人と言ったところか。
天使の笑顔を浮かべるピピに「なんでやねん」と突っ込まずにはいられない。
「こらこら……仲間に商売しない」
二人のやり取りに苦笑を浮かべるのは、同じく賢者の皆月 若葉(aa0778)だ。
「えへー」と可愛く笑って誤魔化そうとするピピに怒れるものはいないだろう。
「流石にここまでくると邪気がすごいね」
冷や汗をかき魔王城を見上げる、これまた賢者の荒木 拓海(aa1049)。
『とにかく中に入ってみないことにはわからないよね』
辺りを見渡す、遊び人――踊り子のメリッサ インガルズ(aa1049hero001)。鉄柵は固く閉ざされ、開く様子はない。
「そ、そ、それにしても大きいよね……! どうやって入るのかな」
帰りたいとでも言いたげなロザーリア・アレッサンドリ(aa4019hero001)。
それもそのはず、彼女はただのなんちゃって従士なのだ。実力も一般人レベルなのだが、架空の武勲をべらべら喋ってしまい、見込まれて一向に同行することになった。
そのため、本当は帰りたいところなのだが、場の空気が帰りたいと言わせてくれない。
「周りを見てみようか。もしかしたら抜け道があるかもしれない」
拓海の言葉に五人は頷く。
左右に伸びる鉄柵を時計回りに見て回ろうとする。
ザッザッザ……
砂の上を歩く五人の足音。先程から鳴いている鴉。遠くで聞こえる狼の遠吠え。
ヒュウゥゥ……
冷たい風が頬をかすめる。魔王城の周りは荒れ果て、木々は枯れ、隠れられるような場所はない。
それなのにもかかわらず、目立つ六人が襲われる気配はない。
「なんや、静かとちゃいますか」
皆が思ったであろう疑問を一二三が真っ先に口にする。
「だよね。城のすぐそばだから襲われるのは覚悟してたんだけど……」
来るまでは確かに襲われることは多々あった。だが、城を目の前にしてそれは一切なくなったのである。
「警戒しておくに越したことはないけど、逆に怖いよね」
見える範囲で敵の姿は見当たらないが。
『あ……あそこなら入れそうじゃない?』
メリッサの目線の先には、柵がひしゃげ、人が一人通れるぐらいの隙間ができていた。
『おー! ここならとおれるんだよ♪』
侵入できそうな場所を見つけ、ピピはニコニコ笑う。
「そう簡単に見つからないかと思うたけど、案外不用心やなぁ」
魔王城と言うだけあって、隙がないかと思いきやそうでもないとは。
改めて周りを見渡し、危険がないのを確認した後、中に侵入する。
「こんなところまで来てしまいましたけど、大丈夫かしら」
一行が通った後、しばらくして一人の女性が同じく中に侵入するのであった。
彼女は、ウェンディ・フローレンス(aa4019)という村の富豪の娘なのだが、好奇心に身を任せここまでついてきてしまったのだ。
使用済み間満載のグレードアックスを携帯し、友人であるロザリーが心配なこともあり少し離れたところから、五人の様子を窺っている。
彼女もここで引き返す様子もなく、そのまま後ろからついていくのであった。
***
正面の扉から堂々と侵入するわけにもいかないので、裏口がないかを探していく。
「静かだね……」
空は紫色がかかって、さらにここまで静かだと不気味さが増す。
窓から中を覗くに厨房だと思われる部屋、人がいないのを確認し扉に手をかけ開くかを確認する。
ギイィィ……
扉の軋む音と共にゆっくりと開いていく。
危険がないか隙間から再度確認する。大丈夫だ、問題ない。
『なんか……ここまでスムーズだと、逆に心配になるわね』
誘われてるのではないかとでも思ってしまう。
『しんちょーに、しんちょーに、なんだよ……』
皆が身をかがめ中に入っていくのを真似して、もともと身長が低いピピも身を屈め中に入る。
状況が状況だが、その姿を見てつい顔がほころんでしまう。
厨房に入ると、甘い香りが充満していた。
「ついさっきまで、誰かが使うてたみたいやな」
一二三が竈がまだ温かいことに気づく。火傷するほどではないが、そこまで時間がたってないことはわかるだろう。
『あまーいかおり! ボクも食べたいんだよ……』
お菓子大好きなピピはお腹を押さえ、しゅんとした顔をする。
ここにいる一行は、国王に頼まれ攫われた姫を助ける四人とお菓子を求め旅をしていたピピの五人組。なんとなくついてきたピピだがお菓子を食べれないこの状況は何とも歯がゆいだろう。
「全てが終わったら、きっと王様がお菓子をくれるよ」と若葉がピピを諭す。
「こ、ここまできたのはいいけど、どうやって探すのかな?」
探すにしろ、城内は広く手あたり次第と言うわけにもいかないだろう。
『姫がとらわれてると言えば、地下牢?』
捕まっていると考えれば、牢が一番妥当だろうか。
「ってことは、まずは地下への階段を探すようかな」
なんにせよ、このままここで立ち止まっていても仕方がない。
通路側の扉を開き、中を確認する。魔物は――
「いないようだよ」
聞き耳を立て足音や話し声が聞こえてこないか確認する。
「うん、今のうちに……」
ささっと、部屋から出てなるべく視覚の多い場所へと移動する。
開けているところを避け、万が一遭遇しそうになった時、対処できる場所を選ぶ。
「なんや、自分らが救いに来たはずなのに、コソ泥みたいやなあ」
壁を背に曲がり角の先を除く姿は、第三者から見れば確かに泥棒だろう。
音を立てないよう、忍び足で歩いていく。
カツカツカツカツ……
突如として足音が遠くから聞こえてくる。 その音はどんどんこちらに近づいてきた。
「隠れて」
その言葉と同時に、さっと身を隠す。皆の額に冷や汗が足らりと流れる。
「誰か来る」
段々と近づいてくる足音に皆が息をのむ。
しばらくして、長い廊下の先から一人の男性が現れる。
「あ、あれは……」
慌てるような姿から、魔王ではない――のだろうか。
「ど、どうする?」
城内にいるということは、恐らく魔王軍と思われる。
不安そうに五人に視線を送るロザリー。
「……なんや、慌ててるようやな。ちょっと飛び出して、なんなら姫の居場所でも吐かせようや」
六人は目で合図し、その者が近くに来たところで前へ飛び出るのであった。
一方その頃、途中までついてきてたはずのウェンディだったが、魔王城内の装飾に気を取られているうちに一行を見失ってしまった。
「……どうしましょう」
出口に行くにしろ、自分の現在地がわからない。その上、下手に動き回って魔王側に見つかってしまったらどうなることやら。
「ロザリーはちゃんと活躍できているのかしら。心配ですわね。」
見失ってしまった友人と一行の身を案じ、彼女も彼女で魔王城をうろつくのであった。
■誰が魔王か
六人が遭遇した足音の主――魔王槻右だったが一行の姿を見つけると、一瞬驚いたような顔をし、すぐにヨロヨロと近づいてきた。
「よく来たな……勇者よ……タスケテクレ……」
疲れ果てた様子で拓海の胸に倒れ込むのを見て、誰一人として魔王だと気づかない。
「拓海、こん人は任した! ドデカい邪気を感じますえ!」
そう言って、強い邪気を感じる方へ一二三が突っ走ってしまう。
「邪気……確かに感じるが今は先に魔王を探そう!」
拓海がそういう間もなく、一二三の姿は見えなくなっていた。
***
邪気のする方へ着くや否や、重い鉄の扉の前に一人の女性が佇んでいた。
「あんさんが魔王どすか! 覚悟しい!」
「最強魔法【ストラック・ブレイズ】」と叫び、アルコールを口に含みライターの火の向こうに霧状に吹き出し炎を吐くように見せる奥義を繰り出す
『誰だ! お前は記憶に無い!』
――が、呆気なく避けられてしまう。杖のような剣でぶった斬られ、勢い空しく一二三はやられてしまう。
「……聞いといて倒すんかい……み、皆……後、は、頼みますえ……ガクッ」
賢者一二三、猪突猛進が仇となり敵の刃にやられ、姿が消えてなくなった。
***
時は戻り、魔王が六人と鉢合わせる前。腹心であったはずの騎士海神と賢者禮が対立していた。彼女の行く手を阻むように、海神が剣を構えている。
『飢餓に苦しむ無辜の民達の為、美味しいお菓子の為に! ……そう、パンが無ければ、ケーキを食べればいい』
「なぜ裏切った! 禮! 貴様! 自分が何を言っているのか解っているのか!?」
何を言っているかわからない。話が通じないと分かると、すぐさま魔王を逃がそうとする。
「……魔王様、お下がりを。あの日の御恩をお返しする時です。たとえ剣を捨てようと、騎士の務め、今度こそ果たして見せよう」
『頭上に注意することです。……高そうなシャンデリアですね……?』
邪魔するものは容赦ないとでもいう様に、禮は魔王の頭上のシャンデリアをお菓子に変換。押しつぶそうとする。
「危ない! 魔王様!」
魔王を突き飛ばして救い、彼自身が犠牲になる。
「……あぁ……魔王様、どうか強く生きてくださ……」
魔王が逃げたのを確認し、海神は動かなくなるのであった。
***
時は戻り、魔王遭遇後。
別の場所では今回の野望【お菓子同盟】により、買収されるものがいた。
『ふむ、酉島の案か。……面白い。私も乗ろう』
話を聞いて、楽し気ににやりと笑うアヴィシニア。
『アヴィシニア殿も同士じゃ!』
にやりと笑う魔法使い野乃。
「お菓子、食べ放題……ダメ。僕は、魔王様の配下」
ぷるぷる頭を振り強い心で誘惑に耐えていたナギも、実際にお菓子の山を見てお菓子同盟の手に落ちてしまう。
『あまいもの食べれるんだったら、ボクもはいるんだよ! ワカバもはいろ!』
「え……まあ、魔王さえ倒せれば問題ないか」
もちろん、この場に居合わせた他の五人のうちお菓子好きのピピは同盟に参加。賢者若葉は、ピピに誘われ同盟に参加することになった。
『ピピちゃーんお姉ちゃんも一緒させて欲しいな!』
「みんな……何を馬鹿な事を! 菓子の為に国を裏切る気……っ! リサもか!」
『……え? お菓子じゃないわ、場の流れ! 強い方に着くわよ』
きっぱりと言われてしまっては何も言えなくなってしまう。
「魔王さまを裏切るなんて」と言っていた姫も、お菓子食べ放題の魅力にあっさり魔王をすて寝返ってしまう。
「……は? 魔王を倒してくれると信じて送り出した結果がこれですわ!!」
いつの間にやら合流していたウェンディはお菓子同盟と言うカオスな状況につ行け行けず、柱の陰から困惑の表情を浮かべてた。
「……ふう、危なかったね」
どうなる事やらと思っていた旅立ったが、平和的解決?を迎えそうな状況にロザリーは安堵を浮かべていた。
■それぞれの終わり
何がなんやら流れるままにお菓子同盟が結成。
賢者拓海は振り回されて可哀想な目にあった魔王を仲間に誘うも、勘違いによりプロポーズをする形に。
国からの指名手配があるかと思えば、お菓子同盟事件にそれどころじゃなくなった国は、魔王のことなど忘れるのであった。
魔王の代わりに下敷きになった海神を助け、皆がお菓子に気を取られる間に、二人はどこか遠くへと、海神は新しい主探しにと旅立っていくのであった。
お菓子同盟の者たちは魔王城の宝をすべてお菓子に変え、気のすむまでお茶会を楽しむのであった。
ピピはアヴィシニアにとっておきの宝物で背中に乗せて飛んでもらい、野乃、禮、キリルは念願のお菓子に笑みが絶えない。薙は大量のお菓子によって体を巨大化、人をダメにするクッションサイズにまでなるのだった。
姫、まほらま、若葉、ウェンディ、ロザーリアは流れるままにお茶会に参加、お菓子を前にこれもまた有と、それぞれ甘いスウィーツを堪能した。
「シンデシマウトハナサケナーイ」
暗闇の中で目を覚ます一二三。
「……これで終わると思わんとけや……」
まだまだこの世界の物語は続いていくので――
「……んにゅ?」
そこで目が覚めるのである。
結果
シナリオ成功度 | 大成功 |
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