本部

【森蝕】連動シナリオ

【森蝕】本拠地はどこにある?

岩岡志摩

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
8人 / 0~8人
報酬
多め
相談期間
5日
完成日
2018/01/05 13:33

掲示板

オープニング

●暴挙のその後
 まだ共鳴といった現象やリンカーが正式に認知されていなかった頃の話になる。
 ある地方の閉鎖的な集落で、『今までと見た目が違う』という理由で、住民達が子供達に暴力を振るい、焼き殺した。
 その後集落の人達はリンカーという存在が一般的となった頃になって、自分達の行動が過ちであったことに気付き、自分達の行いをもみ消した。
 だがジョセフ・イトウ(az0028)は、ラグナロクの『フレイヤ』と対峙したエージェント達が入手に成功した複数の手がかりやデータ、特に『オルリア』という本名をもとに独自の調査を行った。
 その結果、該当する集落の所在を突き止め、集落の人々が犯した罪を立証する数々の証拠と3つの事実を入手した。
 1つ目は、住民達の手で焼き殺されたと思われたリンカーの兄妹が、生き延びていたこと。
 2つ目は、妹は集落の人々によって片方の目を潰され、両親やまだ赤ん坊だった弟など残る家族を全員殺されていること。
 3つ目は、その兄妹は経緯不明ながら『ラグナロク』に加入し、『フレイ』『フレイヤ』と名乗ったこと。
 ただし兄である『フレイ』を討たれたオルリアこと『フレイヤ』は復讐鬼と化し、今に至る。

●本拠地を探り出せ
 救援にかけつけたエージェント達の尽力もあって、H.O.P.E.インカ支部はラグナロクの幹部率いる大群を打ち破った。
 幹部フレイの撃破など手痛い損害を被ったラグナロクは撤退し、危機を脱したH.O.P.E.インカ支部は復旧作業やラグナロクの本拠地特定など各作業に追われていた。
 それでもインカ支部単独では手が足りないので、引き続きあらゆる活動への救援要請を打診し、エージェント達を集めていた。
 ブリーフィングルームでギアナ支部より救援に駆け付けたポルタ クエント(az0060)が、要請を受け集まった「あなたたち」へ依頼内容を説明する。
「皆様へお願いしたいのは、ラグナロクの拠点を探り当てる事です」
 ラグナロクの居場所を突きとめるため、今回向かうのは現地住民たちが「聖域」と定めていた禁足地だ。既に現地住民の協力・許可も得られている。
 というのは、あれだけの規模の戦力を秘匿できる場所というのが、今まで調査に踏み込めなかった『聖域』しか考えられない、というのがこれまでの調査でラグナロクの行方を捕捉できなかった職員達の話だ。
 もちろん『聖域』にも立入許可が出るまでの間に、その外側からさまざまな機器や手段を駆使しての調査は行われていたが、ラグナロクの拠点らしきものは確認されていない。
 そこで、今回『聖域』に踏み入っての実地調査となった次第だ。
「今回の密林内での活動ということで、インカ支部より『ジャングルランナー』が支給貸与されます。よろしければご利用ください」
 なお今回別働隊となりうる職員達は、同時進行として別個の依頼に駆り出されているのでこれ以上の増員や動員要請には応じられず、任務の特性から少人数での隠密行動が要求されるので、その分報酬が増額されている。
「今回向かう『聖域』は内部の情報がほとんどありません。敵であるラグナロク勢力が警戒網を構築している可能性もあります。察知された場合、強力な敵が多数迎撃に現れる危険も考えられますので、隠密性を重視した調査をお願いします」
 ポルタの説明の間にも、別の形でジャングルに向かっていた味方がラグナロクの『トール』と遭遇したとの連絡が飛び込んできた。
 その場に緊張が走るなか、ポルタはしばし思案の後、依頼の方針を若干修正して説明を続ける。
「予想通り警戒網は存在していたようです。ただ逆を言えば敵の注意はトールの動いている一帯に集中しているとも考えられますので、この隙をついて『聖域』最奥への調査に向かって下さるようお願いします」
 トールと対峙する味方からの連絡では、こちらでトールやその周囲にいるであろう敵の注意を引きつけるので、その間に『聖域』奥への調査を進めてほしいとの事だった。
 確実に情報を持ち帰るために、敵との交戦を避けて堅実に進むことを優先するか、危険を冒してできるだけ奥まで踏み込むか。
 その判断は「あなたたち」に委ねられている。
 ラグナロクの本拠地を見つけ、その情報を持ち帰ることができるかは、「あなたたち」次第だ。

●新装備
 今回支給貸与される「ジャングルランナー」(略称JR)は、H.O.P.E.インカ支部が開発したベルト型のアイテムになる。
 クイックアクションで10sq先までのオブジェクトにライヴスによるマーカーを射出・設置し、ムーブアクションでマーカー先に移動することができる。
 このムーブアクションの使用タイミングはマーカー設置と別ターンでも可能だが、マーカーが有効である時間は3ターン。
 無機物・生物・従魔・愚神など「マーカーが接着できるもの」であれば、空中にいるものであってもマーカー設置ポイントとなるが、「マーカーが設置出来ない霧状のもの」「設置ポイントのない空間」「あまりに小さいもの(おおよそバレーボールサイズ以下)」に対しての移動はできない。なお接触事故防止のため、移動直前にはマーカーとベルトをレーザーが繋ぎ移動経路を示してくれる。
 ただし滞空機能はないため、射出先に足場がない場合はクリンナップフェーズで落下する。
「それでもうまく使えば、森の中で限定的な『飛行』が可能になると言われています」
 ジャングルランナーというアイテムの説明を終えたポルタは、そう言葉を添えた。
 
●調査場所
 今回の調査対象となる区域は以下の通り。
 
  ABCDEFGHIJKL
 あ森森森森森  森森森森森
 い森森森森森森森森森森森森
 う森森森森森森森森森森森森
 え森森森森森森森森森森森森
 お 森森森森森森森森森森
 か 森森森森森森森森森森
 き森森森森森森森森森森森森
 く森森森森森森森森森森森森
 け森森森森森森森森森森森森
 こ森森森森森  森森森森森

 森:密林。1マスあたり数百m×数百m。
 ○PL情報:中心付近に「ある方法」で秘匿されたラグナロクの本拠地が存在。

解説

●目標
 密林の奥にあるとされるラグナロク本拠地を探り当て、情報を収集する
 敵撃破数は目標達成とは無関係

 登場
 ウールヴヘジン×多数
 略称『獣』。デクリオ級従魔。剣と射程50sqの狙撃銃を使いわけ攻撃。なお狙撃銃には赤い光を放つレーザーサイトのようなものがついている。下記密林内で警戒中。
  
 ヴァルキュリア×多数
 略称『乙女』。デクリオ級従魔。翼で飛行し浮遊するので地上の影響を受けない。槍と射程30sqの突撃銃を使い分け攻撃。下記密林内を巡回中。

 アリカント×多数
 フウチョウのような派手な色彩の鳥型従魔。ミーレス級。略称『鳥』。体長1m。飛行して密林内を哨戒。攻撃力・耐久性いずれも低いが範囲2sq以内にいる味方1体に射程3以上の攻撃を無効化する障壁を付与する。障壁は射程3以内の攻撃を受けるか鳥自身が撃破されれば消える。

 状況
 現地住民たちが「聖域」と定めていた密林地帯。時刻は昼間。局地的な異常気象が発生中。事前のプリセンサーによる調査や各機器を駆使した探索では、内部に拠点らしきものや愚神や従魔、人の存在は感知できなかった。森の中に踏みに入ると、上記『獣』から放たれたと思われる赤い光が時々垣間見える模様。無線貸与済み。
 PL情報:あまり奥まで踏み込み過ぎると……。

リプレイ

●侵入開始
 現地の住民達が『聖域』と呼ぶ一帯は、陽光も遮られる密林で覆われていた。
 H.O.P.E.インカ支部の予想では、この奥に『ラグナロク』の拠点があるらしい。
 ドロシー ジャスティス(aa0553hero001)はスケッチブックに文字を描くと、傍らにいる鋼野 明斗(aa0553)に掲げて見せる。
 ドロシーの見せた文字は『前進悪断』。
「……話聞け」
 敵の本拠地を叩く気まんまんのドロシーに、明斗はそう言ってドロシーのこめかみを両方の拳で挟みグリグリする。
「戦闘は最小限。情報をできるだけ集めてとっとと持ち帰るのが任務だ」
 明斗の噛んで含めるように伝えた言葉に、ドロシーは『悪に背は向けられない』という文字を見せ、抗議する。
「これも、大きな悪を討つためだ」
 明斗の言葉にドロシーは納得し、意気揚々と明斗と共鳴する。
「隠れた子を探すのは得意ですけど、今回の子は大きいですね」
「ちびっこの遊戯とは違うわよ。もっと狡猾で巧妙だと思っておいた方がいいわ」
 想詞 結(aa1461)とサラ・テュール(aa1461hero002)はそう言い交すと、基本方針を確認する。
 可能な限り見つけ出すこと。ただし奥まで深入りはしないこと。深入りする場合は覚悟を決めること。
 そして結とサラは共鳴し、今回の任務に適したサラが主人格となって密林内に臨む。
「視界が悪いですね……。慎重に進みましょう」
「おう、狩りをする要領だよな!」
 リシア(aa5415hero001)の助言にシュエン(aa5415)はそう言って頷くとリシアと共鳴し、警戒しながら森の影へと溶け込んでいく。
「先生、早く戦いたい」
(今回は情報収集が主な任務です。戦いは最小限でお願いします)
 戦意旺盛なシュエンを、内よりリシアが制御しながら先に進む。
「う゛ぁひゃっひゃっ。Embora eu queira me mexer, estou planejando trabalhar de forma constante【派手に動きたいところぢゃが地道にぢゃな】」
 南米出身のヴァイオレット メタボリック(aa0584)は、今回作戦時ということもあってか総入れ歯を入れ直し、ポルトガル語で喋っている。
(注釈:以後のヴァイオレットのポルトガル語は日本語に翻訳表示されます)
「この地に立ち入る事は、わらわ達がこの一帯を聖域と崇める現地住民達に許可をとりつけておるので大丈夫じゃ」
 その間にもノエル メタボリック(aa0584hero001)は、現地住民達のもとを訪れて実施した活動結果を仲間達に報告していた。
 ヴァイオレットとノエルが収集したこの地方の伝承によれば、『アウタナ』と呼ばれる天まで届く世界樹があったらしい。
 この樹の恵みを得ようと欲を出した人間達がこの樹を切り倒したところ洪水が起こり、人々は呑まれて滅び、アウタナが倒された後が大河となった。
「この伝承にラグナロクの活動がどう関わっているかは、実際にものを見ぬことにはわからんがの」
 そうヴァイオレットは話を締めくくり、ノエルと共鳴する。
「ここで情報仰山集められたら、後々有利になりますな!」
 弥刀 一二三(aa1048)はラグナロクの本拠地探しに乗り気だったが、キリル ブラックモア(aa1048hero001)は『……菓子屋探しなら得意だが』と気乗りしていない。
「……どうかこれでやる気だしておくれやす……」
 一二三はそう言って予め持参してきた多種多様な甘みをキリルに提供し、キリルのやる気を引き出すことに成功させた上で共鳴する。
 なお一二三はインカ支部に、盗聴器付探知機や改造パソコンといった機器の用意や、レーダーユニット「モスケール」への熱感知機能の追加改造、持ち物全てへの防水防塵耐衝撃加工を施す要請を出していたが、いずれも却下されている。
 十影夕(aa0890)は既に結羅織(aa0890hero002)と共鳴し、二つの意識が一つに混ざり、『世界』の境界さえ失せていた。
「木を隠すなら森ってゆーけど、アジトを隠すならなんだろね?」
 ――世界の終焉『ラグナロク』かあ。あれはどうして起きるんだっけ?
 夕は北欧神話に伝わるラグナロクの話から本拠地の推測を試みる。
「9つの世界の天と地を繋ぐビフレスト(虹の橋)とかありそうだな。どこかで雨でも降ってないかな。ヘイルダムがいたりして」
 夕が確認した限りでは、雨ならここから離れた場所で嵐となって降っており、虹はないが愚神ヘイルダムならいた。
 そう考えながらも夕は真壁 久朗(aa0032)に視線を向ける。
「虎穴に入らずんば虎子を得ず、と言うが」
「ミイラ取りがミイラになる、なんて言葉もありますね」
 その久朗が言わんとする事をセラフィナ(aa0032hero001)は続ける。
「さて……俺達はどちらだろうな」
 ラグナロクの本拠地発見という虎子を得るか、失敗するか。
 久朗には先日夕より『後悔しないようにね』と送り出され向かったフレイとの戦いで、心残りがあった。
 想いは伝えた。後悔もないが、結局フレイの本名はわからず、フレイの妹すら……。
「今は本拠地を突き止めるのが先です。考えるのは後でもできます」
 セラフィナの助言に頷き久朗は共鳴する。
「ヴィラン組織『ラグナロク』の本拠地がこのあたりに……?」
「やはり、白刃や東嵐のときと状況が似てきたな……」
 月鏡 由利菜(aa0873)とリーヴスラシル(aa0873hero001)がそう言って森の奥へ目をこらすが、一二三の装備するライヴスゴーグルでもない限りライヴスの奔流は確認できない。
「……不謹慎かもしれませんが、ここはある種異界に近いとも言える場所。そう思うと探索が楽しみなのは否定しません」
「その性格は……やはりご両親に似たものなのか」
 そう言いながら由利菜とリーヴスラシルは共鳴し、仲間達と共に『聖域』へと踏み入れていく。

●侵入
 頭上を塞ぎ、数m先も見通せないような森の中を、緑の葉を掃くようにエージェント達のジャングルランナーが縦横にマーカーを振るい、その動きに従って森の中を『飛翔する』。
「これ、おもろいな! あっちゅう間に本拠地まで行けてまうちゃうんか?」
 一二三はジャングルランナーによって、密林内という限定空間内ながら自由自在に飛び回る事ができてご満悦だ。
 既に一二三はコツを掴みジャングルランナーの持ち味を引き出している。
『……久朗殿、セラフィナ殿。此奴は単細胞ゆえ、好きに利用してくれ』
 ――私が貴殿を観察し必要なとき意図を伝えよう。
 内にいたキリルが一時的に主導権と無線を奪い、久朗へそう伝える。
 一時的に押し込められた一二三はキリルの言い分が的を得たものであったので何も言えず、再び主導権を取り戻した後はキリルの指示どおり久朗の補助に回る。
(いまのところ、何らかの建造物のようなものは見当たらないようじゃの)
【本拠地を隠す手段は森そのものを使ってのものか、地表の見え方などを活かした作りではないかと思うんぢゃが】
 ジャングルランナーで低空をすべるように『飛行して』周囲を探索していたヴァイオレットは、ライヴス通信機「雫」や無線を介し、仲間達へノエルと自分が周囲を探索した内容に、自分の見解も添えて報告する。
 本拠地の姿は見えないものの、周囲には警戒網が満ちていた。
 鬱蒼と茂る森全体が悪意の塊となって押し寄せてくるようで、時折森の各所からレーザーサイトらしき赤い光がちらつく。
(この警戒の濃さ、どう思います?)
「外部から干渉できない隠し方をしているなら、こんな警戒網を張る必要はない筈だ。少なくとも近くまで行けば何か情報が得られるかもしれない」
 ――本拠地を秘匿している方法や、探索を無効化している方法も調査して持ち帰りたい。
 そう言いながらも久朗は既に動画用ハンディカメラを腰に据え付け、録画を開始していた。
「怪しまれれば、本拠地移転の可能性もあるから慎重にね」
(頭のいい子はまめに隠し場所を変えますもんね)
 サラや結は久朗の方針に忠告付きで賛意を示しながらも、オートマッピングシートも駆使して退路となる方角を警戒し、夕はジャングルランナーで森の中を飛びながら、周囲を見渡し雨が降っている場所や虹の有無を確認していた。
「ただの虹ならジャングルランナーでマーカーを設置できない。できる何かがあれば、それは何かあるってこと。だよね」
 ――虹が駄目でも、何もないように見えるところに何かあるかもしれない。
 夕は秘匿されているものを探ろうと努力する。
「先生、あれ絶対やばいやつだよ」
(レーザーサイトっぽいですものね……)
 遠くにちらつく赤い光を発見したシュエンとリシアはそう言い交し、ライヴス通信機「雫」を介し仲間達に警告を送る。
(ここは鷹の目を先行させましょう)
「そうだな、先生」
 リシアの助言にシュエンは頷くと、鷹の目を発動してライヴスの鷹を構築し、森の奥へと放つ。
(そろそろ索敵に切り替えてはどうだ?)
 ジャングルランナーと携帯するレーダーユニット「モスケール」は装備部位が同じで、その切り替えに多少時間がかかるため、キリルがその最適なタイミングで一二三に助言を送る。
 キリルの助言に従い、一二三はレーダーユニット「モスケール」を起動すると、複数の反応を感知する。
『この先から飛びおるのが10。地上を進むのが1ほどの反応がこっちに来よる』
 一二三はレーダーユニット「モスケール」の反応から、敵の種類や動向を読み取り、無線を介し仲間達へ伝達する。
『一二三さん、サラさん。地形や情報の収集をして下さり助かります。交戦が避けられなければ、ここで始末するしかなさそうですね』
 由利菜はライヴス通信機「雫」や無線を介し、一二三とサラに短く礼を述べると、意識を敵の殲滅へと切り替える。
(……あまり深追いしすぎるな。今回はあくまで敵の本拠が見つかればいいのだ)
 リーヴスラシルが由利菜に助言を送り、由利菜が頷いた。
 やがてサラの双眼鏡やシュエンの目にも、森の向こうから派手な色彩の鳥型従魔アリカントと、空間を貫くレーザーサイトらしき赤い光線が見えてくる。
『前方から敵群の接近を確認。アリカントの他にヴァルキュリアやウールヴヘジンもいるみたいなの』
 無線でサラは双眼鏡で把握できた情報を味方に報せ、一二三の情報を補強する。
『鷹の目で周囲を確認してみたけど、今見えてる敵を殲滅するのが一番手っ取り早いみたいだよ』
 ライヴス通信機「雫」を介して伝わるシュエンの索敵結果も、この場での戦闘を後押しする。
(鳥型従魔『アリカント』……能力を活かす為には密集せねばならないのが奴らの弱点だ)
「散れ、セラフィムの羽! セラフィック・ディバイダー!」
 リーヴスラシルの助言を受けて由利菜は、アリカント達が群れている場所へ突っ込んだ。
 裂帛の叫びと共に一閃を発動し、『ヴァドステーナ』の固有名を持つ【SW(剣)】ブレードジュエルの効果で、剣身に光の帯を纏ったカルンウェナンを思うさま縦横に振るう。
 その剣身より淡い粒子を散らし、幾条もの漆黒の軌跡を宙に描いた由利菜のカルンウェナンは大気を裂き、周囲にいるアリカント達は由利菜の一閃を受け胴中より断たれ、塵を噴いて落下し、ウールヴヘジンやヴァルキュリア達に付与されていた防壁もとろも消え失せた。
「やり過ごせそうにないので、ここから記録を開始することにします」
 その間に近くの木へと持参したスマートフォンを括り付け、スマートフォンの動画撮影で得た情報を携帯するノートパソコンへ送信される様設定を終えた明斗は、仲間達と従魔達が交戦する隙をつき、ジャングルランナーを駆使して森の奥へと『飛翔した』。
 無論明斗は森の中を飛翔しながら長巻野太刀「極光」真打を振るい、オーロラのような軌跡を残し、ヴァルキュリアを斬り捨てて地上に落とし、残る味方を援護することは忘れない。
『すみませんが、先行します。何かあれば無線でお報せします』
 そう無線を介して仲間達に告げ、明斗は森の奥へと消えていく。
(こやつの鳴き声も厄介なことになりそうじゃの)
【そういうわけぢゃから、ここはさっさと討たせてもらおうかの】
 ノエルの助言に従い、明斗が斬り倒して手負いとなったヴァルキュリアには、ジャングルランナーでその上に到達したヴァイオレットが急襲する。
 ヴァイオレットのインドラの槍が稲妻と化して打ちこまれ、その身を貫かれたヴァルキュリアが悲鳴を上げ、塵をあげ消え失せる。
 塵をあげ消えるヴァルキュリアに一瞥をくれることもなく、ヴァイオレットはジャングルランナーを稼働して再び森の中を飛翔する。
 残るヴァルキュリアにはサラが和弓「流星」の弓弦を引き絞り、狙いをつける。
 ヴァルキュリアは突撃銃をサラに向けると、針のように鋭い火線をサラへと吹き伸ばし、サラが弓弦を鳴らして解き放った矢状ライヴスと一瞬すれ違う。
 サラは放たれた機銃弾に乱打されるも踏みとどまり、サラの和弓「流星」に射抜かれたヴァルキュリアは地上へと失墜する中、塵を噴き消えていく。
 空の敵が駆逐される中、地上にいるウールヴヘジンには夕と久朗、別方向から一二三が迫っていた。
 夕は聖槍「エヴァンジェリン」+1を翻し、急速に間合を詰める中、ウールヴヘジンより放たれたレーザーサイトの光が夕の身をつかの間撫でる。
「十影、俺がカバーする。そのまま向かえ」
 そう言って並走していた久朗が夕を庇うのと、ウールヴヘジンの狙撃銃が火を噴いたのはほぼ同時だった。
 乾いた銃声と共にウールヴヘジンの銃弾が夕を庇った久朗に殺到するが、久朗は幾多の戦場を共にし使い込んだフラメア+5を翻し、火花と共に銃弾を弾き飛ばす。
 その間に死角へ回り込んでいた一二三がライヴスリッパーを発動し、ウールヴヘジンの意識を刈り取り、それ以上の攻撃を妨げる。
「ありがとう。俺たちを狙った敵はここで撃破だよね」
 夕は久朗や一二三に向け短く礼を述べると、そのままウールヴヘジンめがけて聖槍「エヴァンジェリン」が突き出された。
 気絶したウールヴヘジンの腕を、夕の聖槍「エヴァンジェリン」が銀光を描いて貫き、後続の久朗がすかさず繰り出したフラメアが重い一撃と化してウールヴヘジンの胴を貫いた。
 夕の聖槍「エヴァンジェリン」と久朗のフラメアに貫かれたウールヴヘジンは、塵と化して消えていく。
(敵が使っていた狙撃銃が残ってるみたいですよ)
 セラフィナが指摘した場所に久朗が目を向けると、先程倒したウールヴヘジンの近くに狙撃銃らしき残骸が転がっていた。
 久朗は最初幻想蝶に残骸を入れようとしたが、何らかの力が作用して入れる事ができなかったので、通常の収納できる部分に回収する。
 敵の警戒網を食い破ったエージェント達は、引き続きジャングルランナーを駆使して森の奥へと『飛行する』。
 この時別件で動いていたエージェント達がこの一帯を秘匿していたプロジェクター型RGWを破壊したため、本拠地を隠すものが消える。
 突如視界にある空が不気味な色を晒し、木々は緑を失い、巨大な樹が顕現した。

●拠点発見
 聖域から魔境と化した中央部分には、明らかに異質な『大樹』がそびえ立っていた。
 その大きさも異質ながら、『大樹』の幹や幹より伸びる枝葉は宝石のような煌めきを帯びており、よく見ると結晶体の『実』や葉、木肌の輝きだということがわかる。
 そして根元にあたる部分は、動物の血管を思わせる太く長いものが複雑に絡み合い、遠目でわかる程不気味に蠢いていた。
(あれがヴァイオレットの調べてきた伝承にあった世界樹『アウタナ』とやらか?)
「あないにえげつないもん、世界樹であるわけがないですやろ。うちのレーダーにえらい反応してはるで」
 一二三はレーダーユニット「モスケール」の探知結果から、この異様な『大樹』の正体をほぼ言い当てていた。
 レーダーユニット「モスケール」で反応が確認できるということは、この『大樹』が愚神か従魔ということだ。
『皆さん。恐らくここがラグナロクの本拠地で間違いないと思いますが、すぐにここから退避して下さい。まずいのがいます』
 それまで別行動だった明斗から、無線を介してやや切迫した内容の情報が飛び込み、やや遅れサラの双眼鏡が『それ』を一瞬だが捉えた。
「本当にグリムローゼなのよ! あの『大樹』の向こうにチラッと見えたの!」
(トリブヌス級愚神もいるなら話は別です。気付かれる前に、急いで退くのです)
 サラと結の撤退条件は『負傷の回復手段がなくなったら』だったが、グリムローゼがこの場にいるなら話は別だ。
 まず久朗が仲間達に即時撤退を提示する。
「RGWの件もあるし、ライヴスに干渉できるような装置が見つかれば回収するつもりだったが、情報を持ち帰る方が大事だ」
(本拠地に近づけば強敵と遭遇する可能性、本当にありましたね)
(杞憂で済めばよかったんだが、案の定だな)
 内にいるセラフィナと久朗がそんなやり取りを交わす中、他の仲間達も異論はなく、急いでエージェント達は撤退へと移る。
(一二三。どうやら大人しく帰してはくれないようだぞ)
 キリルの警告と共に、周囲から複数の敵が忙しなく動き回っている様子が、一二三のレーダーユニット「モスケール」に映し出されていた。
「まだ退路は塞がれてはおりまへん。来た道をそのまま急いで通れば退却できますがな」
 一二三はそう言うと、装備をジャングルランナーに切り替え、オートマッピングシートに記された道へと飛翔し、仲間達を先導する。
 エージェント達はその後に続き、来た道をそのまま急いで通過する。
 それでも全ての警戒網を振り払うことはできず、途中でヴァルキュリアとアリカントの混成群が後方から追いすがり、突撃銃の鋭い火線が発射音と共にエージェント達へ襲来する。
(ユリナ。心眼を使え。射られた悪意、あまねく脅威に値せず……!)
 ヴァルキュリア達の銃撃が、周囲の木々をとらえて宙に木端を散らす中、リーヴスラシルの助言に従い由利菜は退却する仲間達の最後尾に割り込み温存していた心眼を発動する。
「味方への射撃、全て打ち払います!」
 そう言って由利菜が展開した心眼が、複数の銃撃音と共にヴァルキュリア達より殺到してきた機銃弾を跳ね上げ、火花や金属音を散らして払いのけた。
(鳴かれて仲間を呼ばれては困りますから)
「鳴き声をあげる前に仕留めさせてもらうぞ」
 追いすがるアリカントには、リシアの助言に従いジャングルランナーを駆使して忍び寄っていたシュエンがジェミニストライクを発動した。
 2つに割れたシュエンがそれぞれの孤月+2を横に薙ぐ。
 月光のような淡い光芒の軌跡が宙に一対描かれ、苦鳴すらあげえず、シュエンの孤月に喉を切り裂かれたアリカントはそのまま塵を撒いて消えた。
 別のアリカント達には夕とヴァイオレットがそれぞれ向かっていた。
「避けられる戦闘は避けたいところだけど、倒しておかないと後で困ることになるのかな?」
 夕はそう言いながら、ジャングルランナーのマーカーをアリカントにつけ、森を飛翔し急速に肉薄すると、勢いをつけたまま聖槍「エヴァンジェリン」を繰り出す。
 風を貫いたような手応えと共に塵がしぶき、夕の一撃で貫かれたアリカントは塵を撒いて落ち、消える。
(追いかけてくるアリカントは、こやつで打ち止めのようじゃな)
【ではとっとと片付けて、逃げさせてもらうのぢゃ】
 ノエルの助言にヴァイオレットはそう言うと、インドラの槍をアリカントに突きだした。
 雷光の勢いで奔った穂先は、アリカントの身を貫いた。塵を噴いて消えていくアリカントに眼もくれず、ヴァイオレットはそのまま逃走に移る。
 残るヴァルキュリアが突撃銃を咆哮させ、久朗が由利菜を援護する形で白銀と漆黒の色を帯びた飛盾「陰陽玉」+5を展開し、味方への銃撃を防ぐ中、そのヴァルキュリアの背後にオーロラ色の軌跡が一瞬煌めく。
 それはこれまで別行動をとっていた明斗の攻撃だった。
 豪風を纏った長巻野太刀「極光」真打の一撃がヴァルキュリアの無防備な背中に叩き込まれ、まともに明斗の斬撃を浴びたヴァルキュリアはそのまま地面に落下し、地表に叩きつけられる。
「撤退を援護します。お急ぎください」
 合流を果たした明斗はそう久朗に言い残すと、長巻野太刀「極光」真打を旋回して、前方に残る敵へと向かう。
(久朗。後方に残るのはこの敵だけみたいです)
「そのようだな。では手早く倒して味方の撤退を援護するとしよう」
 セラフィナの指摘に久朗はそう応じ、双生の鳥の骨から造られたとされる飛盾「陰陽玉」で、明斗に叩き落とされたヴァルキュリアを殴りつけた。
 肉体が叩き潰される異音が響き、久朗の一撃を浴びたヴァルキュリアは塵を噴いて消え、追いすがる敵はこれで潰えた。
(一二三、銃撃で敵の防壁を消すのが手堅いぞ)
 前方では立ち塞がるアリカントの姿をキリルが認め、助言する。
「邪魔どす、消えなはれ!」
 そう言って一二三は携帯品よりAK-13+3を取り出し引き金を引くと、AK-13の弾けた銃声が断続して森に響き渡り、アリカントは弾痕を穿たれて吹き飛ばされ、塵を撒いて消える。
(私達も退路確保に動くのです)
「退路は維持するわ。その間に退却させるのよ」
 結の助言を受けサラも退路の確保へと動き、一陣の疾風となって、防壁を失ったヴァルキュリアに迫る。
 サラとヴァルキュリアが交錯した一瞬、サラの炎剣「スヴァローグ」+5が翻り、ヴァルキュリアの首を刎ねていた。
 鮮血のような塵が吹き上がり、ヴァルキュリアの首と体が塵を撒いて地面に落下しながら消えていく。
 前後の敵を殲滅したエージェント達は、そのまま一気にジャングルランナーで密林を駆け抜け、『聖域』からの脱出を成功させた。

●帰還
 こうしてエージェント達は、数多くの情報を持ち帰る事に成功した。
 一二三の探知できた情報と、ヴァイオレットが収集した伝承にあった世界樹の名、別件でトールと接触していたエージェント達が聞き出せた『アウタナ』という名が一致する事から、この大樹は以後愚神『アウタナ』と呼称される。
 ラグナロクの最終目的は『アウタナ』を育てること。
 アウタナが成長し花開く時、広がりつつある巨大なドロップゾーンは完成するらしい。
 また『アウタナ』近くでグリムローゼの存在も確認できたことから、H.O.P.E.上層部は『アウタナ』がいる場所がラグナロクの本拠地であるとの見解を示す。
 支部に収集した情報を提出した一二三がキリルに引きずられ、スイーツ店に連行されていく中、明斗がスマートフォンで撮影し、ノートパソコンに転送されてきた情報を支部に提出すると、今回現地に置いてきたスマートフォンのスペアが支部より明斗に支給される。
 ドロシーからは『結果オーライ』と書かれたスケッチブックを見せられたが、次いで『巨悪眼前撤退 不満』という文字も見せられた。
「ああいう時は自分一人でなく、もっと多くの仲間と力を合わせて戦うのが理想なんだ」
 明斗の言葉にドロシーは頷くと『連携必須 悪断正義遂行』という文字を見せる。一応納得したらしい。
 久朗は今回回収できた狙撃銃の残骸を、動画用ハンディカメラで収集した情報と共に支部へ提出し、古龍幇の武器密売経路からアルター社と関連のある流出元を辿る調査が依頼出来ないかと提案する。
「本当に倒すべき愚神を見つけるためだと伝えてもらいたい」
 ――この虚しさの連鎖を断ち切る術につなげるために。
 ややあって古龍幇より『合法組織化した以上、違法手段を用いることが出来ないが、検討しておく』との回答があった。 
 エージェント達のもたらした情報によってインカ支部、ギアナ支部の活動が本格化する。
(真壁さんの言ってた心残りって、自分だったかもしれない人への思い入れなのかな?)
 ――相手が敵だからと武器を振るうのは、ラグナロクと何が違うのか。
 そう久朗が言っていたことを、夕は思い出す。
「俺が感じてる以上にここでは複雑に根を張ってるんだ。きっと」
 異質なものへの嫌悪や恐怖とか。排斥しようとする意志とか。
 夕の言葉に結羅織も同意する。
「 恐ろしい暴力を受け、大切なものを奪われたフレイヤが復讐鬼と化したこと。無理もありません。ですがラグナロクが新しい世界を創ったとしても、彼女が救われるとも思えないのです」
 彼らのしていることは止めなければならないはず……。
 結羅織はそう覚悟を決める。
 この密林を巡る一連の騒動の決着まで、あと少し。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 此処から"物語"を紡ぐ
    真壁 久朗aa0032
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
  • ひとひらの想い
    想詞 結aa1461

重体一覧

参加者

  • 此処から"物語"を紡ぐ
    真壁 久朗aa0032
    機械|24才|男性|防御
  • 告解の聴罪者
    セラフィナaa0032hero001
    英雄|14才|?|バト
  • 沈着の判断者
    鋼野 明斗aa0553
    人間|19才|男性|防御
  • 見えた希望を守りし者
    ドロシー ジャスティスaa0553hero001
    英雄|7才|女性|バト
  • LinkBrave
    ヴァイオレット メタボリックaa0584
    機械|65才|女性|命中
  • 鏡の司祭
    ノエル メタボリックaa0584hero001
    英雄|52才|女性|バト
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ
  • エージェント
    十影夕aa0890
    機械|19才|男性|命中
  • エージェント
    結羅織aa0890hero002
    英雄|15才|女性|バト
  • この称号は旅に出ました
    弥刀 一二三aa1048
    機械|23才|男性|攻撃
  • この称号は旅に出ました
    キリル ブラックモアaa1048hero001
    英雄|20才|女性|ブレ
  • ひとひらの想い
    想詞 結aa1461
    人間|15才|女性|攻撃
  • 払暁に希望を掴む
    サラ・テュールaa1461hero002
    英雄|16才|女性|ドレ
  • 仲間想う狂犬
    シュエンaa5415
    獣人|18才|男性|攻撃
  • 刀と笑う戦闘狂
    リシアaa5415hero001
    英雄|18才|女性|シャド
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