本部

テレサ・バートレットという女

電気石八生

形態
ショートEX
難易度
不明
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
8人 / 0~10人
報酬
少なめ
相談期間
5日
完成日
2017/12/29 19:26

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掲示板

オープニング

●来日
「ブラジルから日本。さすがに遠いわね」
 税関を抜けた彼女はパスポートを閉じ、息をつく。
 地球を半周してきたのは、アマゾンでの激戦の代償に与えられた休暇を楽しむためだ。
「マイリン、いっしょに来られなくて残念だったけど」
 彼女の相棒たる英雄マイリン・アイゼラ(az0030hero001)は今、サンパウロの総合病院でいくつかの科をたらい回しにされている。
「すいませんアル――途中に食べ物屋さんがあったら止まってくださいアル――すいませんアル――」
 救急車の中、延々と繰り返していたマイリン。
“食べ過ぎ”で倒れたくせにあんな譫言を垂れ流すとは、さすが大食いといったところだが……いや、そんなことを考えてはいけない。マイリンは青ざめるほどの真剣さで、彼女の料理の味見役を務めてくれたのだから。そして最後に「デ……スぅ!!」と叫んだと思いきや、棒のようにぶっ倒れた。
「耳では聞こえなかったけど、あたしの心にはちゃんと届いたから。あなたのデリシャスって声」
 思い出映りこむ眼鏡を指先で押し上げ、はにかむように独り言ちた彼女の名はテレサ・バートレット。
 H.O.P.E.ロンドン支部に所属する特務エージェントにして会長ジャスティン・バートレットの娘であり、ジーニアス・ヒロインの異名を持つ才媛。そして。
 彼女以外の人間がもれなく「マイリンが言うたん、デンジャラスかそのまんまデスやろ!」とツッコむことうけあいの、料理に限ってはデス・ゴッドな22歳であった。

「お~、テレさんこっちっすよぉ~」
 空港まで迎えに来ていた礼元堂深澪(az0016)が『歓迎! テレサ・バートレットさん』を書きつけた幟を振り振りテレサを招く。
「深澪! せっかくの休日に申し訳ないわね」
「いやぁ~、会長直々のご指名っすからぁ~」
 深澪の非共鳴状態における近接格闘能力の高さは折り紙つきだ。「愚神もかくや」と評されたアラン・ブロイズ(az0016hero001)をふたつの拳でめこめこに叩き伏せ、真人間ならぬ真英雄に更生させた話は今やH.O.P.E.七伝説のひとつとなっている。
 そのことから、非公式に来日した要人の護衛を任されることも実は多いのだ。
「ジーニアス・ヒロインの休暇預かるとか光栄っすよぉ。うちにホームステイってことでいいんすよね?」
「ええ」
 テレサは最高の笑顔で引っぱってきたトランクを見やり。
「イッシュクイッパンノギリ? はこの手で返させてもらうから。滞在中の家事は任せて」
「はい?」
「掃除、洗濯、料理はあたしが」
「料理――まさか、ガチでマジっすか?」
「任せて!」
 深澪は呆然としたままスマホを取り出し、アランに連絡する。
「もしもしボクだけどアランくん!? すぐ別荘とか用意できる? うん、人里離れた、誰がどうなってもひと冬はバレないみたいなとこ――娑婆僧がのんびりしてんじゃねぇ~! こいつぁガチやべぇ緊急案件なんだよぉ!!」

●隔離
 人里離れた山中に建つ小洒落た別荘街。避暑地ゆえに冬期は人の気配なく、管理人もまた万来不動産からのエマージェンシーコールによって避難済みである。
 その中の一棟に、深澪とテレサはいた。
「原宿へ行ってみたかったのに。だって、日本のモードの発信地なんでしょう? それに温泉――」
「毒だから! 若者にもご高齢のみなさんにもテレさん毒だから!」
 深澪の必死に、テレサは思い至る。日本では金髪女子の価値が高いという。ブルネットも素敵だと思うのだけれど……騒ぎを起こすのは本意ではないし、ここは深澪に従っておくべきか。
「じゃあ、今日は深澪のためだけに腕を振るわせてもらうわね」
「きょ~」
 歓声なのだろう奇声を発する深澪を横目に、テレサはキッチンへ。
「揚げ物をうまくするコツは、新しい油に一割の古い油を混ぜること。そうすると味が馴染むんだってテンプラ職人の人に教わったの」
 テレサがトランクから取り出したのは、重油さながらに黒い油を収めたポリタンクだった。
「テレさんそれわ……」
 愛しげにタンクを抱くテレサが応えた。
「ロンドンで贔屓にしてるフィッシュアンドチップスの屋台から分けてもらった揚げ油。毎日継ぎ足しながら熟成させた逸品よ」
 タレじゃあるまいし、熟成って! 激しくおののく深澪へ、テレサは教鞭をとる教授さながら言ったものだ。
「闇の内に光明を見た気分よね。あたしに足りなかったのはセンセーショナルとトラディショナルのディスカッション」
 そして、黒油を鍋にイン! 料理下手にありがちな目分量で、料理オンチにありがちな大量投入からの、ガス全開。
 熱せられた黒油から放たれるなにかが深澪の目を潰しにかかる。
「ボクの目がそいつで致死ぃ~!」
 唯一の救いは絶望的に広いなにかの有効範囲内に一般人がいないことだけなわけだが、ともあれ。

「もう……ボかぁ、食べられ、ねぇ……」
 テレサのフィッシュアンドチップスに舌鼓というか体のどこかから這い出た謎鼓を鳴らし、深澪が前のめりに果てた。
「食べてすぐ寝るのはウシニナルんじゃないの?」
 テレサがしょうがない顔で深澪をひっくり返すと。
 ぷくぷくぷく。深澪の両耳――なぜか緑色に染まっていた――から不思議な泡が。
「これは」
 テレサはごとりと深澪の頭を落とし、そして天を仰いだ。
「ジャパネスク・タラバガニスタイル! タラよりも、カニ!」
 さらに彼女は灰色の頭脳を無駄に高速回転。
「いえ、そうじゃない。これが意味するところは灰汁。アクは救わない、じゃなくて掬わないことで古い油の滋味を示した。そういうことね」
 頭がいい人は、自分の知謀が及ばないところでとんでもない誤解を閃くものだが。
「ロンドン油に一割のトウキョウ油を加えて、オンコチシン。……こんなことにも気づかないなんて、とんだ才媛もいたものよね。パパの名前に泥を塗るところだった」
 深澪は霞む意識の中、必死でフリック入力。メールを飛ばし終えた瞬間、息絶えたのだった。――本人的には不本意ながら生きていたけれども。

●誘引
 エージェント宛てに深澪からのチェーンメールが届いたのは、偶然なのか必然なのか丑三つ時だった。
『明日の夕方、ボクの別荘で来日しやがったテレサ・バートレットさんの歓迎会を殺ります。鬼てね★』
 文字数にしてたったの44文字。しかし、その中に詰め込まれた怨念の深さは、それこそ1万字を尽くしても足りないほどどろどろと濃かった。
 エージェントたちは思いを馳せる。
 添付された地図が示すのは戦場だ。一歩を踏み出すだけで死線を越える生の向こう側……生き地獄!

解説

●依頼
 冬の別荘で行われるテレサの歓迎会に臨み、生き延びてください。

●ゾーンルール
・この依頼は参加者全員が重体になったときのみ「大成功」が出ます。
・参加者の約70パーセントが重体の場合は「成功」です。
・それ以下の場合は「普通」が最高達成度となります。
・飲み物の持ち込みは自由ですが、食べ物の持ち込みは一切不可です。
・テレサの料理を一品食べるごとに生命力が20パーセントダウンします。
・食べるにせよ食べないにせよ、とりあえずリアクションしてください。すべての料理にリアクションする必要はありません。絞ってその分濃密なプレイングをしていただくもよいかと。
・5品食べきった方のみ、6品めを食べる資格が与えられます。これによって重体が確定しますが、ここまで来て食べないという選択肢は……ありえませんね?
・テレサ、深澪(半死半生)との絡みはご自由にどうぞ。

●テレサの手料理
1.煮野菜=玉葱とキャベツとポテトをていねいに煮込み、出汁のでたスープを全部捨てて皿にもりつけたデロ野菜。テムズ川の底をさらったみたいな舌触りと色即是空な味わい。
2.フィッシュアンドチップス=深淵のごとく黒く、廃墟のようにざらついたタラとカニとポテトのフライと思しきものです。
3.スターゲイザーパイ=ファイヤボールをくらったスライムのようなパイ生地から冗談みたいに鰯の頭がもりもり突き出したパイ。地獄さながらの見た目で味も……。
4.キドニーパイ=まさかのパイ2連発! 牛の腎臓入りで臭みたっぷり! 謎調味料で味わいもなにかを超えました。
5.チキンティッカマサラ=イギリス発のカレー料理。イギリス人のソウルフードですが、こいつは「知ったそのときが最期になる」逸品です。
6.うなぎのゼリー寄せ=ぶつ切りにしたイギリス産ウナギの煮こごり。しょっぱい酸っぱい生臭い。そこにテレサの腕が加われば「悪夢の向こう側へ連れて行かれる」代物に!

リプレイ

●一丁目
「テレサさんに逢えるなんてわくわくするねー! サインとかもらえるかな?」
 ね? ね? と雨宮 葵(aa4783)に詰め寄られ、燐(aa4783hero001)は頭上に「?」を飛ばす。
「……知ってる人、なの?」
 衝撃を受ける葵。まさか、こんなことが――!
「あのテレサ・バートレットさんだよ!? ジャスティン会長の娘さんで頭よくて美人でかっこいい“ジーニアスヒロイン”!! その辺の芸能人より人気あるんだから!」
 燐は重たいため息をつき、葵をにゅっと押し退けた。
「オブイエクト、これは一体……」
 オブイエクト266試作型機(aa4973hero002)の砲身の先に簀巻きで吊り下げられたサーラ・アートネット(aa4973)が、今日何百回めかの質問をぶらぶらしながら投げかけた。
 オブイエクトは夜の冬山に佇む別荘を指し。
「別荘にお招きされたんすよ。中でごちそうが待ってる、ね」
 サーラは眉をひそめ、思考する。
 昨日というか今日、礼元堂深澪から届いた不穏なメール。人なんかいない冬山。別荘の中にはごちそう。
「……自分は次の作戦遂行のためのデータ収集のためにここへ来たのでは?」
 おそるおそる確かめたサーラに、オブイエクトは平らかな声で応えた。
「という建前で、実はテ料理のデータ収集を」
「ははっ、図ったなぁぁぁぁあ!! っていうか貴様、どこでそんな情報を!?」
「軍機でありまーす」
 テレサの手料理、通称「テ料理」は有名だ。テ料理体験者のインタビューを集めたインタビュアー自身が最後にテ料理で緊急搬送されるまでを収めた伝説のドキュメントフィルム『死神の鎌』が、今もわずか5ドルで販売され続けているのだから(製作委員会には会長も名を連ねているとの噂あり)。ちなみに収益のすべては、テ料理の犠牲者への見舞金に充てられる。
 とはいえ裏フィルムなので、エージェントの中にはテレサ同様知らない者もいるわけで。
「イギリス料理か。まさにボクのためにある料理だな」
 CODENAME-S(aa5043hero001)にだけ聞こえる声で御剣 正宗(aa5043)がささやく。
「正宗さんの故郷のお料理ですものね。私も楽しみです」
 そして料理の道を行く柳生 鉄治(aa5176)と“イギリス”を体現するという女神ブリタニア(aa5176hero001)もまた――
「ちがう文化圏の料理が新しい発想に繋がるって、オーナーシェフもよく言ってるしな」
「イギリスの化身たる私にとってテレサ・バートレットもまた愛し子。その手料理、楽しみですね」
 知らないということは幸いだ。なぜなら知るまでの間は――それがわずか十数分であれ、幸いなのだから。
 深澪からのメールを今一度確かめた世良 杏奈(aa3447)は唇を噛み締め、別荘へ踏み出した。
『死神の鎌』こそ未視聴だが、生命力を増やすどころか削るという食品アイテム『毎日がソルスティス!』のプロデューサーがテレサであることは知っていた。
 立ち向かわなくてはいけないと思った。なぜかわからないが、思ってしまった。だから、行くのだ。
 その後ろで美空(aa4136)はぐっと拳を握り締め。
「テレサさんの手料理、通称テ料理でありますね。美空憶えたであります」
 英雄がついてきていないことからも、『死神の鎌』を見たのは確定だ。なのに、やけにポジティブである。もともとなにを考えているのかわかりにくい少女ではあるのだが……。
『死闘という名の地獄から辛くも生還した私たちを待ち受けていたものは、生き地獄だった。
 誰もいない冬山で、私たちはジーニアスヒロインの才が生み出した悪意なき絶望に打ちのめされる。
 次回「テレサ」。――今夜も地獄に付き合ってもらう』
 胸の内で次回予告風につぶやいてしまった水瀬 雨月(aa0801)は、自分の行いに気づいてかすかに頬を赤らめた。
「……きっと疲れているのね、私」
 アムブロシア(aa0801hero001)はなにも言わず、かすかに漂うカレースパイスの香りに引き寄せられるがごとく別荘の扉を開くのだった。
 果たして。
「東京海上支部のみんな、待ってたわ。ロンドン支部所属、特務エージェントのテレサ・バートレットよ。顔見知りもいるけど、礼儀だけはしっかりしなさいっていつもパパが……あ、日本だと三つ指をつくんだったかしら?」
 笑顔を傾げたテレサが一同を招き入れる。
 凜然と整っていながら、優しくやわらかな面差し。まごうことなきジーニアスヒロインがそこにいた。
「サインくださいっ!!」
 先陣切って突っ走ろうとした葵を燐が羽交い締め。
「落ち着いてから……」
 このときのふたりは知らなかったのだ。自分たちに、落ち着く時間などないことを。
「本日はお招きいただきましてありがとうございますじゃ! 高名なジーニアスヒロインとお会いできて、間隙至極ですじゃ。よろしくお願いいたしますじゃ、テレサお姉様!」
 大きく見開いた狐目をキラキラさせて天城 初春(aa5268)がテレサの手をぎゅっと握った。握手握手。
「これお初。あまりはしゃいでは迷惑になるぞ。少し落ち着くのじゃ」
 たしなめるのは辰宮 稲荷姫(aa5268hero002)。6歳の初春に9歳の稲荷姫、実に微笑ましい光景ではあったが。
「あたしの歓迎会を開いてくれたお礼に腕を振るったわ。イギリス料理はおいしくないのが定説だけど、今夜それを覆してみせるから」
 奥から忍び来る怪しい気配というか、臭いに稲荷姫は鼻をひくつかせた。む、なんぞ不穏な……。
「この度は素敵な機会をいただきまして、ありがとうございます。英国料理は幼いころ以来ですの!」
 大きなペンギンがよちよちと歩み寄ってヒレを差し伸べた。かぱっと口が開き、奥からファリン(aa3137)の笑顔が現われる。
「ジャスティン会長のご令嬢か。そちらのペンギンは華倫。俺はその英雄で楊嗣志という」
 絹の長袍をまとったヤン・シーズィ(aa3137hero001)が苦笑して一礼した。
 そして。
 一同の最後尾についたリィェン・ユー(aa0208)は、静かに吸気を体内に巡らせ、内功を高めていた。
「小僧の想い人直々の手料理を味わうか。ほぅほぅ、これはこれは」
 付き添う零(aa0208hero002)が楽しげに言うのを視線で制し、リィェンは低く言葉を紡ぐ。
「別にふたりきりでってわけじゃない。……とにかく、余計なことは言うなよ」
 心得た顔で顔をうなずかせる零から視線を外し、テレサを見た。
 零はテ料理の凄絶を知らないが、彼はすでにその身をもって知り尽くしている。
 だから肚を据えた。
 最期まで笑みは絶やさない。きみの手で逝ける幸せを噛み締めて――

「入って。って言ってもあたしの家じゃないんだけど」
 招き入れられたのはフローリングのリビングダイニングだった。床暖房が入っているようで、踏み入れた足があたたかい。
 中央部に大きな掘りごたつ式のテーブルがあり、その片隅に、海老反りした深澪が転がっていた。
「深澪! 勝手に用意させてもらうわよ。今日は同じブリティッシュも来てくれてるみただいから緊張するけどね」
 テレサがキッチンへ駆け込んでいく。
 その隙に杏奈がそっと深澪の脇へかがみこみ、後頭部と踝をぐいーっと押してまっすぐに伸ばした。
「深澪さん、いったいなにがあったんです?」
「英雄ハドコディスカイ?」
 生け贄の数が足りないことにご立腹らしい深澪の首をぎゅーっと横にひねって復活を阻止。杏奈は席についた。
「空手がこんなところで役に立つなんて」
「空手の要素がなにひとつ感じられなかったけど……料理を食べただけでどうしてこんな状態に?」
 首を傾げる雨月だったが、彼女にも他の面々にも、差別も区別もなくそれは分配される。
 あと、今回は三点リーダー超多用なことを先に詫びさせていただく。

●Fragrance of Thames
「あたしの手料理、コースでお届けよ。あら、飲み物持ってきてくれた人もいるの? あたしもいろいろ買っておいたから……グラスグラス」
 大皿をどんとテーブルの上に置いたテレサがいそいそ立ち上がり、再びキッチンへ消えて行った。
 ぴんとまっすぐ伸びたまま突っ伏す深澪はそのままに、一同は皿の中身を見る。
「テレサお姉様の手料理とは! 楽しみで、すぅ、のぉ?」
 初春の言葉が力を失っていく。
 なんというか、灰色だった。
「煮た野菜、だよな? なにをどうしたらこんなヘドロみたいな色になるんだよ……」
 料理人たる鉄治が青ざめた顔を左右に振った。愚神災害で機械化した臓器が、勝手に起動して妙な音をたてる。本能よりも先に、人の造りしものが拒絶反応を示すとは。
「実にロンドンらしい色合いではありませんか。郷土愛ですね」
 なぜかしみじみとブリタニアがうなずいた。
「煮た野菜……出汁はどこ? 色とにおいがどぶ川っていうか下水と完全一致?」
 葵はぽんと手を打って。
「ワタシヨウジオモイダシチャ」
 逃げだそうとした葵を羽交い締め、燐が静かにかぶりを振った。
「……逃さないよ?」
「なにそのやる気ぃぃぃ!?」
 一方ペンギンスーツを脱いだファリンは、その豊麗なる肢体を赤のチャイナドレスで包むセクシー極まりないパーティー仕様である。
「わたくし、上海租界が長かったせいでしょうか? 本場のイギリス、わたくしの想像を超えておりますのね」
 掘りごたつにうきうき両脚を差し込む彼女。そのスリットからはみ出す生腿をさりげなくガードしつつ、ヤンはなにかを悟った顔でうなずいた。
「そうだな。俺もそうであることを願おう」
 どん。リィェンがテーブルを低く鳴らす。それは数十年熟成させた特上の老酒の小瓶だった。
「おい小僧、我に隠してることがあるだろう?」
 座ることなく胡乱な顔でにらみ下ろしてきた零へ、テレサの斜め前――恋愛的にもっとも安定する位置取り――の席をキープして座したリィェンが噛んで含めるように語る。
「もう理解してるんだろう? 座れよ。ここはすでに退けない戦場――テーブルだぞ」
「おまたせ! じゃあすぐ乾杯しましょう。料理と情は熱いほうがいいものね」
 思い思いの飲み物をグラスに注ぎ、「今日の出逢いに!」。この杯を干したとき、すべては始まる。

「と、とても素材の味が生かされてますね……」
 杏奈の超無難なコメントが場をごまかしている間にも、生き地獄は着々とその深みを増しつつあった。
「これはなんともやわらかそぶぉはぁ!」
 初春がその場でドリルスピン。同じく逆方向にスピンした稲荷姫と衝突し、相殺し合ってその動きを止める。
「ここ、これがジーニアスってやつですかの!?」
「空が……空が見えたのじゃ……なんにもない、空が」
 幼女と少女がなんとも抽象的なことをささやきあう中、部下であるはずのオブイエクトから食レポを強いられ、サーラが声音を絞り出す。
「ナムの泥だまりだってこんな色味は……ないだろぉ」
「いつから海兵隊員になったんすか。じゃ、次は味レポで」
 サーラの頬骨を左右から圧迫して口をぱっかりさせ、灰色のでろでろをイン!
「な、ナンバーテぇンんんっ!!」
 解説しておけば、ベトナム戦争に参加した海兵隊員が最悪を表わすワードが「ナンバーテン(10)」だ。
「こんなのイギリスじゃよくある味だよ?」
 青を通り越して黒くなった顔をうなずかせ、正宗が言った。最後が疑問符になってさえいなければ、ごまかし通せたかもしれない。
「モルトビネガー、かけます?」
 イギリスの食卓には欠かせない酢を勧めるSへ「いやいやいいや」、首を左右に振った正宗はか細い声でつぶやいた。
「同じイギリス人としてこれは……国辱レベルだぞ」
「それでも」
 Sは正宗に真剣な目を向けて。
「お残しは失礼ですから。たとえこう、舌が外に押し出したがっても完食あるのみです」
 なにこの決意。正宗はおののきつつも覚悟を決める。ボクはブリティッシュだから。その誇りと意地にかけて、逃げたりしない!
 馬鹿な……なんだこれは。旨みが欠片も感じられねぇって言うか、味がしねぇのになんか“する”!
 悪寒と共に額の脂汗をぬぐう鉄治。
 ただまずいならわかる。しかしこれは、それを遙かに超えていた。これはこれでカネとれんじゃねぇか的な錯乱に囚われてしまう程に。
「煮とけるまで煮たキャベツですね。煮とけるまで煮たポテトですね。煮とけるまで煮たオニオンですね」
 淡々と事実のみをコメントしていたブリタニアがふと顔を上げ。
「テムズ河の味がします」
 飲んだことあんのかよ!? 自分の英雄にして想い人の見たくなかった深淵を見てしまった気がして、鉄治はあわてて目を閉ざし、すぐ見開いた。
 やべぇ! 目なんか閉じたらそのまま連れてかれちまう! ってか、こんなもん食えるわけねぇ!
 ふと鉄治は横を見た。
 イギリスの守護の権化たる女神が描写不可能な笑みを浮かべ、サムズアップ。その親指で自分の首を指してギギギっと一文字。
 食べなさい。さもなくばテムズに沈めます。
 鉄治は悟る。ああ、俺に明日は来ねぇんだな。
「……」
 モルトビネガーの瓶を手に思案していた美空はきゅきゅっと蓋を開け、いっぱい出るのを阻止するキャップをぽんと外し、酢をだばだば灰色にぶっ込んで、一気に飲み干した。
 出自に秘密のある彼女は人並み外れた才覚を備える代わり、五感に対して鈍いところがある。感覚というものは理解しているし、その刺激を整理して分析することもできる。ただ、その分イレギュラーへの対処が甘いというかなんというか。
 鈍さゆえの蛮勇。果たしてその代償は――
「美空は美空は」
 どこぞのラノベの打ち止められちゃった子みたいなことを口走り始めた。
 まあ、口がきけるだけいい。葵はただただ、皿の前で痙攣している。
 その横で燐は淡々とフォークを口に運び。
「この料理は……興味深い。能力者と英雄の防御力を無視した内臓への固定ダメージ。……素材はすべて通常のもの。ん、対ヴィラン鎮圧用アイテム化のため、完食して解明を」
 まずすぎて燐が壊れた! まだ、1品めなのにぃ!
 葵は胸元に書いてもらったテレサのサインの上から心臓を押さえつけた。燐を止めるにしても無茶するにしても、まずはこの不整脈を落ち着かせないと。
 内側からボリゴリミヂメリ、湿った音を漏らしながら、雨月は静かにつぶやいた。
「繋がったはずの骨が、臓腑が、癒着を放棄し始めたわ」
「深淵をのぞく者は深淵にのぞかれているものだ」
 冷静に見えるアムブロシアだが、意味がわからない。あからさまにやられていた。煮野菜という名もなきテ料理に。
 壊れていくのね、私もアムブロシアも。
 なんだか笑えてきて、雨月は口の端をかすかに上向ける。崩壊がもう始まっていることを自覚しながら。
「お兄様、おかしいですわ。フォークが刺さりませんの」
 ファリンが小首を傾げながら煮野菜にフォークを突き立てようとして――失敗。何度も何度も、何度も何度も。
「ワイルドブラッドの本能、大切にな」
 言い終えたヤンは箸を口に押し込んでその震えを止め、ついでに生命活動を数秒止め、なんだか生き返った。
 この先になにがあるのかは知れない。しかし、なにかあるのだと信じよう。その希望が損なわれたときが最期だと、知性ならぬなにかが告げていた。
「そんなにいいリアクションをしてもらえると作りがいがあるわ! みんなが疲れちゃわないうちに二品めを持ってくるわね」
 テレサが立ち上がり、いそいそキッチンへ。
 この有様を見てコメントがあれだと!? テ料理がからむとテレサはポンコツ化するという新事実が発覚した!
「手伝おう」
 誰よりも早く自らの皿を空にしていたリィェンがテレサを追う。
 その背を見やった零はかぶりを振って老酒を呷った。
 小僧、強い酒でごまかして流し込みおったか。しかし、それもいつまで続くかな? なぜなら我はもう、絶対喰わんのだから。

●Abyss the Black
「イギリスと言えばこれを思い浮かべる人も多いんじゃないかしら? フィッシュアンドチップス。今回は深澪のアドバイスでカニも揚げてみたわ」
 と、テレサは言うのだが。
「次は英国伝統のアレですじゃ! しかもカニまでとは、盆と正月がいっしょに来たようなめでたさです――のう」
 語尾が思わず否定型っぽくなる初春。
 なにせ彼女の目の前には黒い棒が並んでいるばかりで、どれがフィッシュでクラブでポテトなのか判別不可能だったからだ。
「も、問題は味じゃ味! 行くぞお初ぅ!」
 稲荷姫が初春とせぇのでぱくー。そろってシッポびーん! 白目ぐるー! 体ぽてきゅう!
「あ、味は……いちばん、問題にしてはならぬ、ところでは……」
「すまぬ……わし……記憶……飛んでたのじゃ……」
「ドンマイ……ドン、マイ……じゃ」
「……わし、あと何回……やれるか、のう」
 のたうち回ることすらできぬまま、時折びっくんびっくん動くだけの置物と成り果てたふたりであった。
「で、どうっすか見た感じ」
 オブイエクトにかぶりを振るサーラ。
「黒い棒! それ以外になにを言えと!?」
「あー、じゃー味のちがいで確かめましょっか。はいお口ぱかー」
「や、やめべぼぉ!!」
 サーラの口へ適当に3本、オブイエクトが黒い棒を差し込んで。
「深淵の……黒……ぉ」
 サーラは哲学的ワードを垂れ流し、息絶えた。
 それをしっかり見届けた杏奈は棒の1本を皿に取り、ナイフで割ってみた。
 芯までしっかり黒かった。それでいて炭ならず、しっとりプリっとしていたりして。
 煮野菜、煮汁にコンソメ入れたりすればおいしいスープになるのに――そう思っていた時期が、杏奈にもありました。しかし。コンソメを入れたらコンソメ風味のテムズ河になるだけ。
 杏奈はしっとりプリプリな深淵を口に入れて噛み締める。その度に命が削れていくのを感じながら。このフライもきっと、なにをどうしたって深淵なのだと思い知りながら。
「正宗さん」
 Sが正宗を促した。
 正宗は思うのだ。これって「ロンドン塔からノーロープでバンジーですよー」って言われてるのとなにがちがうんだろう?
 見れば見るほど、酷い。ブリティッシュがもっとも愛するファストフードは、確かに揚げ油の交換が雑なせいで黒っぽかったりするのだが……こんな純黒ではありえない。
 でも、これはボクの大好物で、いちばん信頼してる故郷の味。フィッシュアンドチップスはボクを裏切らないはず。
 そして。
「戦場より辛いっ」
「初めての味わいですよね……悪い意味で」
 美空は小首を左右に傾げつつ、猛烈な勢いで考えていた。
 テ料理は毒。だとすれば取るべき手段は相殺。毒をもって毒を制する、これしかないのでありますよ!
 美空はどこからか、先ほど採取しておいた煮野菜を取り出し、フライにだばーっとかけてみた。モノクロームからは抜け出せなかったが、見た目が変わったことでなんだか希望が――テ料理には勝てなかったよ。
 相乗効果でテムズ河の深淵と化したテ料理のざらついた色即是空の中、美空はちんまい体をきりきり舞わせ、謎のダブルピースでぶっ倒れた。このサインはえっちなやつじゃなく、2倍2倍――昭和のCMネタだった。
 そんな人々のリアクションをゆるめた両目でながめていたテレサが息をつく。
「そんなにおいしい? ――って、未来の旦那様に怒られちゃうかな。自分より先にテレサの手料理を味わわせるなんてって」
 バキグシィ!! 喰らうことをすでに放棄して酒を呷るばかりの零に代わり、彼の分までテ料理を胃に押し込み続けていたリィェンが頭突きで酒瓶をぶち割る音が響いた。
「大丈夫!?」
 布巾を探すテレサをリィェンは手で制す。
「大丈夫だ。俺は鍛えてるからな」
「ふふん。小僧が粗相をして申し訳ないな。汝が噂のリトルジーニアス、テレサ嬢か。うちの小僧は汝をけそぶぐっ」
 テレサに見えない角度から零の肋骨の隙間に貫手を突き込んだリィェンがなんでもない顔で。
「ててれテレサには、そういそういうあいあい相手がいるるのか?」
 いろいろと装いきれていなかった。
 かくて事情を知らなかった者も含めて全員がリィェンの気持ちを知ってしまったわけだが。
「けそ? 消そう――まさかあなたたち、あたしを亡き者に!?」
 お約束! あまりにもお約束であった!
「これはさすがに酷いですわ……」
 リィェンの事情を知るファリンはくっと顔を逸らし。
「意外なかわいげがあるのね、ジーニアスヒロイン」
 雨月は内臓から漏れ出した血を、口元から漏れ出した薄笑みに乗せて垂れ流し。
「料理も鈍さも毒レベルだぜ」
 行き場のない恋心には憶えありの鉄治が同情し。
「男の胃袋つかんで離さない……罪な女だよテレサさん。ほんとに……いやほんとに……」
 得体の知れないダメージに胃袋をつかまれ続ける葵が絞り出した。
 しかし。ぽんこつと化したテレサはまったく人々の声に気づかぬまま、リィェンの問いに頬を覆い。
「まだいないわよ! ……そろそろボーイフレンドくらい紹介しないとパパも心配するわよね。『正義とはいい家庭を築くことはできないんだよ、なぜなら正義はいつだって家の外にあるものだから』ってこの間も言われちゃったし。でもあたし、ストライクゾーンが狭くて。好みのタイプは186センチ77キロ、目は青くてー、髪は落ち着いたグレイでー、歳はあたしより32歳歳上で髭は」
 嬉々としてジャスティンのデータを読み上げるテレサの姿にまだ正気を保っている人々は涙し、零はなんとも言えない顔をリィェンへ向けて。
「小僧……小僧……」
 しかし。
「問題ない。もう肚は据えてるんだよ。――ところで髭染めって髪用のやつでできるのか?」
 人々の涙が勢いを増したことは言うまでもない。

●Hell Star
「やってきました3品めー」
「かひゅーかひゅーごぼぐべぼび」
 喘息の発作と喉に詰まったあれこれでひどいことになっているサーラの腕を後ろから操って愉快を演じさせるオブイエクト。
「元気ないっすねー。ま、これなら逃げられないんで結果オーライ?」
 きぃえぇぇぇぇ――音にならない絶叫を上げるサーラの10秒後は、「目の前の焦げ焦げスライムを詰まった口に無理矢理詰め込まれる」で確定だ。
 そう、言うなればファイヤーボールくらったスライムみたいな、なぜか青みがかった生地からもりもり突き出す鰯の頭!
 でちゃった! スターゲイザーパイ!! 杏奈は引き攣る口の端を隠しつつ、ついでに復活の兆しを見せる深澪の首を逆にひねって眠りにつかせた。
 名前の綺麗さと真逆の見た目もあれだが、テレサの手を経たことでさらなる進化を遂げてしまった代物に、ただただドン引きである。
「スターゲイザーパイは日本の有名なアニメ映画でも鼻つまみものだったのよね? 今日はあたしがその悪評を覆すわ!」
 高らかに告げたテレサだが、うなずく者はリィェン以外にいなかった。
「零は眠くてしかたないそうだから、幻想蝶に帰した。俺に二切れくれ。俺はまだまだ、腹ぺ・こだからな」
「了解。鍛えてる人の食べっぷりは見ていて気持ちいいわね」
 ナイフで鰯をぐちゃーっと潰しながら切り分けるテレサ。なぜ鰯を避けないのか、そしてリィェンが一瞬気絶したことにも、誰もツッコんでいる余裕がなかった。
「鼻つまんでも目に来るよ――逃げ場なしだよ」
「拷問……拷問に、使える……」
 葵と燐が突っ伏したまま語り合う。
「なぁ、ブリタニア」
「イングランド国教会はガバガバ――博愛なのですべてを受け入れるのみです」
 鉄治はブリタニアになにも言えないまま、目の前のパイに死んだ魚の目を向けた。
「この門をくぐる者は一切の希望を捨てよ……なんて注意書き、どこにもないわよね?」
「教会よりもカレーだ。カレーはその内にすべてを包み込む女神の衣なり」
 雨月とアムブロシアも、冷静に見えるだけでそこそこ壊れつつある。
「私が知ってる地獄でも、さすがにここまでのものは見れませんけど」
 震えるSに正宗がうなずいた。
「地獄はわからないけど、イギリスでも最近あまり見なくなったかも。まあ、こんなに青いのは……あるわけないよね」
 果たして、実食。
 鰯だったはずのものがパイであるはずのものと融合し、まったく新しい、まさに青き絶望と言うよりないなにかと化していた。
 そのなにかは一同の舌を侵蝕し、食道を腐食し、胃を地獄へと変える。煉獄などというわかりやすい地獄ではなく、得体は知れないのにただただ命を損なわせてくるという方向性のない地獄である。もやもやする。そして異様に苦しい。
 ファリンはフォークを礼儀正しく皿の上に置き、ふとヤンを見る。
「後漢の羊興祖は清貧を尊び賄賂を憎み贅沢な魚を贈られても軒先に吊るしこれを断ったと言います吊るすべきなのですわこれも今すぐ」
 句読点を忘れて垂れ流す彼女へ、ヤンはあくまで平らかに。
「興奮しすぎだ、淑女たる者礼を忘れてはならぬ」
「……」
「どうしたファリン?」
 くわっと笑顔をあげたファリンがにこにこと。
「なんでもありませんわお母様」
 ファリンの母は鬼籍に入って久しいのだが、まるで気にする様子もなくヤンは薄笑みを返し。
「ならばよろしいのですよ、我が師」
 ヤンの師も崑崙にいるわけだが。
 地獄の底でふたりが互いに見いだし、あるいは逃げ込んだのは、やさしい思い出の彼方であったということ……なんだろうか?
「あああああああああ」
 初春の肌に冷たい脂汗が噴きこぼれ、その小さな体をべたべたに濡らし尽くした。
「え、得も言われぬ味ワイぃぃぃぃ!」
 同じく脂汗にまみれて海老反り、セルフパイルドライバーを決める稲荷姫。
「エモイワレヌって、褒め言葉よね? あなたたちにそう言ってもらえるのはなによりよ」
 目を細め、テレサは愛しげに子どもたちのリアクションに微笑んだ。
「まるで御母堂のまなざしであります。お母様とお呼びしても?」
 美空にくいくい袖を引かれたテレサはとろけるような笑みを浮かべ。
「ちょっとはずかしいけど、プライベートでなら。外ではまだまだヒロインでいなくちゃいけない身の上だから」
「あら、テレサ様はお子様好きでいらっしゃいますのね。史記にも語られていますけれど、子どもというものは」
 うふふうふふ。すでに収めることすらかなわない笑みを垂れ流し、ファリンが問う。
「そうね。子どもは好きよ。だから食育は大事って思ってる。ううん、子どもたちがママの味に飢えるようなこと、したくないだけかな」
 ママの味ですってよ奥様! 杏奈は隠しきれない動揺に突き上げられるまま辺りに視線をさまよわせた。まさかテレサがこれで食育をかます気だなんて!
 が、彼女の知人たちはすでにそこそこ以上に壊れているので、誰ひとり同意してくれそうになかった。
 その知人の代表であり、テレサの言葉にすぐさま食いつくはずのリィェンもまた無言。
 なぜなら彼は零の分まで食べていて、とっくに命が尽き果てていたからだ。それでも動く。それでも食らう。すべては愛ゆえに。

●Transcend Spices
「せっかくオーブンがあるのに使わないのはもったいないわよねって思って、もうひとつパイを作ったの。温めなおしたからおいしく食べられるはずよ!」
 うきうきとテレサがテーブルに置いたのは、二連続のパイだ。ただし今度のやつは見た目が。
「妙に普通っすね?」
「えべべるでぼるび」
 そろそろお伝えできなくなりそうな勢いで跳ね回るサーラを二人羽織風に押さえつけ、オブイエクトがその腕を振り上げさせる。
「喰って喰って喰いまくるっすよー、おー」
 それを横目で見ながら、葵はえへへ。
「普通だよ? 普通は大事だよね? 普通は普通だから最高だよぉっ!」
「私は……私にできることを……やるだけ」
 パイを凝視して燐はぶつぶつ。
「イギリスは昔、貧民が多かったんだ。まともな肉を買える人がいなかったせいで普及もしなくて、代わりに安価な内臓が流通した。それがこのキドニーパイの生誕秘話だよ」
 正宗のためになる豆知識だったが、聞いている者はSしかいない。誰もが見た目普通のパイに魅入られていたから。
「普通なのがすっごく怖いんですよね……」
 ため息をつくSの顔は白い。もともと白いのだが、今はその白を彩づかせていた血の気もすっかり抜け落ちて、無の白に成り果てていた。
「それでも」
「食べますよ。あの期待のまなざし、裏切れますか?」
 Sが指す先に、普段は凜然としている面を子どもさながらわくわく輝かせたテレサがいた。
「うう」
 奇しくも正宗と同じ呻き声を漏らしたのは初春だった。
「うう。ま、またパイですじゃよ」
 汗を流しすぎてしおしおな幼女が、テーブルにすがってその身を起こす。
 ちなみにテレサは、ごちそうを食べてはしゃいじゃってる幼女を見守っていた。残念ながらひどすぎる思いちがいである。なにせ初春は必死で瀕死だから。
(お初、おまえ甘酒持っとるな! パイごとぐいーっと行くのはどうじゃ!? 噛まねば耐えられるじゃろ!)
 テレサに聞こえないよう小声で初春にのしかかる稲荷姫。もう、部屋の隅っこに行って相談する気力は残されていなかった。
(おお、それはよき策ですじゃ!)
 結果。
「なにやらくにゅくにゅしたすさまじきものがあああああああ」
「胃がっ、収めることを拒否して押し戻すぅぅぅ! 息が、でき、ぬ」
 楽しそう!
「く、臭ぇ――バカな、なんの味だよこれ? ラー油か? 魚醤か? まさかカレーか」
 信じられない顔を振り振り悶絶する鉄治の後頭部に、ブリタニアの冷たい視線が突き刺さる。
「牛の腎臓の風味です。ブリティッシュはこのキドニーパイを食し、黒ビールとエールを呷ってきたものです。感じるでしょう? 産業革命の香り」
 ナイフとフォークを優雅に繰り、パイを切り取っては口へ運ぶ。ただそれだけの挙動でかき立てられた激臭が鉄治の鼻を突き上げ、脳を抉る。
「臭ぇって! ケチャップとか臭い消し使わねぇにしてもトマト入ってんだろ! 爽やかさのカケラもねぇよこのもったりした謎臭にはよ!」
 ブリタニアはそっとかぶりを振り、にっこりと。
「すでにこの香りは本来ある腎臓の臭いを超えています。うふふ、不思議ですね? 普通に作ったものが普通を超えるなんて、まさに神の奇蹟です。イギリスよ永遠なれ!」
 いえー。テレサとハイタッチしたブリタニアを斜めに見上げ、テーブルに突っ伏した鉄治は考える。
 イギリスの守護女神に惚れた。それに後悔はない。でもよ、こんなテ料理もそいつで壊れちまう女神もだめだろうよ。俺は、認めねぇぞ。
「あなたからブリティッシュのにおいがします! さあ手を掲げなさい!」
「え……あの、ボクは……」
 ブリタニアは謎の神パワーで正宗の手を挙げさせていえー。
 パギン。鉄治の人造臓器のどこかが、ダメージとストレスで割れた。
「足りないものは足してしまえばいいのであります」
 美空が取り出したのは、実は意外に美味と評判なイギリス軍24hr戦闘糧食の一品、朝食用ミートボールとパスタのトマトソースである。
 本来パイに効いているべきトマトの味がしないなら足してやる。臭みを包み隠すには濃い味と匂いで補う。これがたったひとつの冴えたやりかた――
「美空は美空は」
 テ料理には勝てなかったよ!
「奇蹟なんて起こらない。目の前にあるのはいつだって現実、それだけよ」
「これはきっとカレーなのだ。カレーゆえに私は私であり、つまり私がカレーだ」
 雨月とアムブロシアは現実やらカレーやらを幻(み)つつ、パイに顔を埋めて不動。
「あら、みなさまどうなさったのかしらお母様?」
 その様に虚ろな笑みを傾げ、ファリンがヤンに問う。
「魏の曹操は宴の席、楽しさが極まると椀に顔を突っ込んでいたと言います。その類でしょう、我が師」
 復活したように見えるリィェンはほがらかに語りあげる。
「ははは、別に問題ないよ。きみの旦那になる男はそんなに心の狭い男じゃない。保証するよ。だって俺は」
 すまないリィェン。そのテレサは幻だ。
 ――生き地獄の片隅、パイをひと口食べてギブアップした杏奈は、深澪のとなりに並んで突っ伏していた。
 誰にも見つからなかったのは幸いではなく、必然だった。なにせテレサ以外の全員、どうかしてしまっていたから。なんのBSなのか知れないが、それに苛まれながらなおテ料理に向かう人々。彼らはいったいなにと戦っているのか。
 私はもう戦えません! だってまだやらなくちゃいけないこといっぱいですし、お家で待ってる家族もいますし。

●Soul Breaker
「今日のメインディッシュになるのかしら? チキンティッカマサラよ」
 漂うカレースパイスのような、なんだかそうでもないような、怪しい香りがリビングを満たす。
「カレーはね!? 初心者だって失敗しない料理ナンバーワンなカレーだからね!?」
 葵が祈りを込めて燐の肩をばんばん叩いた。声の高さは、それだけ追い詰められている証拠である。
「それだと……拷問に使えない」
 十二分に拷問を受けてきただろう燐は不満そう。それよりも、すでに目的がおかしい。
「九死に一生じゃあ」
 稲荷姫が涙ぐんで何度もうなずき、初春は兄貴分たる正宗へ解説をねだる。
「御剣兄、これはどんな料理ですかの?」
「え? 簡単に言ったらタンドリーチキンのカレー煮込み? 日本の洋食みたいにブリティッシュが自分たちの嗜好に合わせて作ったインド料理だけど……これ、ほんとにカレーなのかな」
 と、げんなりする正宗を押し退け、アムブロシアがふらふらと皿へ引き寄せられる。
「カレーであるな。これは、カレーなのだな。私はカレーがあれば、カレーさえあれば、幾度なりと蘇るであろう」
 かくて餓狼のごとくに食らいつき――ゆっくりと雨月を返り見た。
「冒涜ノ味……コレハ背徳……カレーナラヌカレー的ナカレルルリリレ」
 ごとり。皿の脇に頭を落としたアムブロシアに、同じくテーブルに頭を落とした雨月が言った。
「アムブロシア、声優養成校に入った基礎科生の滑舌練習みたいになってるわ……本科に上がれるといいわね」
 雨月ばかりでなく、ファリンとヤンも絶賛錯乱中である。
「お母様……お兄様はお母様じゃありませんの?」
「我が師……ファリンが我が師ではない、だと?」
 そして美空は言うまでもなく。
「美空は美空は」
 問題はいつ彼女の意識が打ち止めになるかに絞られてきた。
「貴様を殺す! いやむしろ殺せ自分ここで爆散して祖国の土になるぅぅぅ!!」
 瀕死の気合で幻想蝶から37mmAGC「メルカバ」を引っぱりだそうとするサーラの大きく開いた口へカレーを流し込むオブイエクト。
「はいはいー。あと3500字くらいでオチつけないといけないですんでねー」
 きえー! 人とは憤るだけで死ねることを自らで体現するサーラであった。
「くぁせぶぢぃ!!」
「ぬぼるぼべび!!」
 スパイシーな死に躍る初春と稲荷姫。いっそ文学を感じさせる有様である。
「ど、どうすればカレーがこんな……こんな……」
 翼どころか表現という自由すらももぎ取られたSは、カレーのような顔をしたなにかを前に嘆息。
「ごきげんよう、愛しきブリティッシュ」
 ブリタニアがいい笑顔で正宗に語りかけた。
 ごきげんようもなにもないだろうと正宗は思うのだが、無口ゆえにうまく返せなくて。あとは単にしゃべる気力がないこともある。
「イギリス料理はやっぱり最高ですね!」
「そうですね」
 応えたのは正宗ならぬ空虚な顔の鉄治。魂が抜けた体が自動的に反応しているらしい。
「本当はイギリスについて七日七晩語り明かしたいところですが、私は少し、お花を摘んできますね」
「そうですね」
 かくて遠くのほうからえぼろろうべぼぼ――いや、これは聞いちゃいけないやつだ。正宗は意識を逸らして鉄治を向いて。
「そうですね」
 これは、触れちゃいけないやつだ。今度こそ耳を塞いで音のすべてをカットした。
「て、テレサさん、これ、カレールーとか」
 葵が最後の気力を振り絞ってテレサへ這い寄る。
「スパイスから調合したわ! ちょっと辛かったかしら? 日本人は世界的に見ても辛さに弱いっていうものね」
 ここには日本人じゃない人も、女神とかもいるんですが……葵は倒れ込みながら絶望した。でもさー、ダヨネー。ルーとか使わないヨネー。テレサさんはねー。
 ああ、向こうに見える河はテムズ河? それにしては綺麗に澄んでて、花もたくさん咲いてて。
「きっと強い子になるな。きみのジーニアスと、俺の内功を受け継いだ……食育はほんとに大事だな」
 リィェンはやわらかくつぶやきながら、土気色に染まりきった体にカレーを放り込み続ける。
「そういえばデザートがあるの! ネットで“日本のデザート”って揶揄されてたのを見て思いついたジョークなんだけど」
 惨劇はついにクライマックスだ!

●Food Porn
「日本でも馴染み深いうなぎはイギリスでも食べられてるわ。うなぎのゼリー寄せ、これがデザートに見えるって、どういうことかしらね?」
 そんなことはどうでもいい。リィェン以外の全員が同じ思いを共有していた。
 なぜうなぎをぶつ切りにして、煮こごらせちゃったのか。
 血に毒があることは周知の事実だが、毒素であるイクシオトキシンは熱であっさり無毒化する。だからこその煮こごりなんだろうが、それを解説してくれそうな鉄治は「そうですね」と繰り返すマシーン化しているのでここに記しておこう。
「もともと貧乏人の食べ物だったんだよ……だから手をかけるより食べられればいいや的な感じなんじゃないかな」
 ぐらぐら揺れながら正宗が言葉を添えた。
「私もぅ、食べられるものならぁ、なんでもぉ、いいですぅ」
 正宗よりぐらぐらしながらSが、うなずいた拍子に額をテーブルへ墜落させた。
「これはロンドン名物うなぎのゼリー寄せですね! イギリスに祝福を!」
 何事もなかったような顔で帰ってきたブリタニアは声高く、実に無意味な祝福をもたらした。彼女の名誉のために言っておきたい。いろいろな意味で逃げられない彼女は、ある意味でもっとも深刻なテ料理被害者なのだと。
「そうですね」、鉄治は相槌を打って沈黙。
「う、鰻の煮こごりなら――」
 意志によらず跳ね回る右手を左手でつかんで固定、初春と稲荷姫はスプーンを煮こごりに突っ込んで、口へ。
『骨が刺さったのじゃ! しかも生臭い! 処理は!? 下ごしらえは!? でも、なんじゃろう、どこも苦しくない。あの光は』
 上へゆっくり昇っていく初春のとなりには、やはり昇りゆく稲荷姫がいた。
『ああ友よ――顔も名も憶えてはおらぬ戦友よ――わしを迎えに』
「私モ解脱ヲ……! カレーヨ私ヲソノ御手ニ」
 天に両手を突き上げたまま絶命したアムブロシアの傍ら、雨月はうなぎゼリーを飲み下してネクロノミコンを繰る。
「見える……見えるわ……扉が見える……きっとあの先に……」
 彼女があの先へたどりつけたのかどうかは、結局知れなかった。
 惨状をのんびり見つめ、オブイエクトは持参の潤滑油にストローを差して吸い上げる。
「いやー、自分戦車なんでご相伴にあずかれないのは残念でありまーす。潤滑油を吸う共和国の潤滑油役……うまい! う、まい?」
 なんだこの味。テムズ河で深淵でスライムで臭くてしょっぱくて酸っぱくてもう一丁臭くて超まずい!
「テ料理全部ぶっ込んだオイルだよ」
「伍長殿!?」
 オブイエクトの足元に這い寄っていたサーラが、気力を振り絞って共鳴。口に含めておいたうなぎゼリーを一気に噛み砕いた。
『は、図ったっすねぇ!?』
「共和国に潜むクソ虫は自分が駆除します。上官殿、自分の代わりにどうか祖国を、祖国を――」
 互いに食したテ料理のフィードバックで消し飛ぶふたつの命。
 後に残るは鉄の棺桶、ただそれだけであった。
 笑顔で入滅したブリタニア、うなずいたまま逝った鉄治へ折り重なって倒れたSに、正宗はため息をついた。
「これだからジョンブルの料理はって、言われるんだよねぇ」
 がくり。
 死屍累々の戦場のただ中、葵はひとり覚悟を完了した。
 テレサさんを悲しませない! 死んじゃった人のお残しは、全部私が連れて逝く!
 その横で突っ伏したまま燐の目を閉ざし、葵はうなぎゼリーといっしょに賢者の欠片を噛み砕いた。やけに酸っぱい。しょっぱい。生臭い。ささやかに回復した命がごっそり削り取られて虚空へ消える。でも――
 立ち往生ならぬ座り往生を決めた葵の脇より、リィェンが静かにテレサを呼んだ。
「テレサ、そこにいるか?」
「みんな食べ過ぎて寝ちゃったみたいだから毛布を――ん? おかわり?」
「もちろんだ。ああ、その前に、すまないが教えてくれ。俺の手は今も箸を持ってるか?」
「お箸の持ち方、ほんとに綺麗ね。そういうきちんとした人は好きよ」
「きみの期待に応えられる俺でありたいよ。……そうだ、次は俺に腕を振るわせてくれるか?」
「へえ、料理が得意なんて知らなかった。ごちそうしてくれるの?」
「ああ。近いうちに、きっと」
 なにも見えぬ目で、なにも感じぬ手で、それでもテレサの温度を感じながら、彼は高鳴りを――鼓動を止めた。
「お母様、ごちそうのお礼にお茶をどうぞであります」
 死相丸出しの美空がテレサへ差し出したのは、カップを兼ねた水筒のフタ、そこになみなみそそがれたブルーハワイ茶だ。
「あら、ありがたくいただくわね」
 飲んだでありますねお母様。そのブルーのお茶には超ブルーなシアン化化合物がたっぷりなのであります。家族はいつでもいっしょであります。逝くときもいっしょに……!
「ごちそうさま。あたし毛布取ってくるわね」
 当然のごとく、すべての料理をテレサも食べている。胃に収まったテ料理の毒が化合物の毒を無毒化した――美空は体を丸めて倒れ込み、独りぼっちで仲間の後を追う。
 すべてが零に還りゆく中、いささかの正気を取り戻したファリンとヤンはうなぎゼリーを食す。
「これは京観か」
 ヤンがおもしろくもなさそうに言い放つと。
「春秋左氏伝にある、殺した数万の敵兵の遺体や首級で築き上げた建造物ですわね」
 ファリンがよどみなく解説を入れる。
「懐かしいな、ここはなるほど戦場で相違あるまいよ」
 霊符を貼った腹をさすり、ヤンはうなぎゼリーを骨ごと噛み砕いた。
「人は有害な丹砂を含む神丹でもって神仙となるという(仙道に云う外丹法)。この身はその死線を潜ってはおらぬが、ゆえに知りたくなった。深淵の行きつくその先――清浄なる神界か、あるいは汚泥満ちた混沌か」
 いつになく饒舌に語るヤンの内より、“テ”に穢れたライヴスが噴き上がった。
 それを達観した目でながめやったファリンがうなずき。
「邪英の道を行かれるおつもりですのね、お兄様」
 その美しく豊かな肢体が、ヤンに喰われゆく――
「させませんよ!」
 くわっと起き上がった杏奈が、ヤンの鳩尾に正拳突き。くの字を描いて落ちたその口に残っていたうなぎゼリーをまとめてイン。
「わたくしの死後、季節のお祀りなど必要ございませんわ。そのお金は孤児のために寄付してくださいましね」
 即死したヤンに目を向け、激しくうさ耳を痙攣させるファリンの心はすでに……
 杏奈は見なかったことにして部屋を駆け出した。
 もういやですぅ~っ! こんなどうかしちゃってるテ料理地獄は~っ!!
 果たしてドアをバーンと押し開けた瞬間。
 宇宙服さながらの完全密閉防護服を着込んだ兵士たちがなだれ込んできた。
「生存者確保! ――ジーザス、よく生き残ってくれた!」
「安心してください。我々はテ料理被害者互助会です。これより現場を封鎖し、死傷者の蘇生にかかります」
「B-4! デコイのヨークシャテリアはどうだ!?」
『訓練通りにやってくれてるさ! ジーニアスヒロインは腹をなでるのに夢中だ! 今のうちに死体を回収してくれ!』
「ジーニアスヒロインにだけは知られるわけにいかないからな……慎重に急げよ!」
『了解!』
 なにか大きな力が、全力でテ料理被害をもみ消しにかかっている。
 そうしてジーニアスヒロインの名誉は保たれ、『死神の鎌』は販売され続けるのだ。
「これは見舞金だ。少ないがとっておいてくれ」
 握らされた封筒に書かれた文字は「口止め料」。
 杏奈はその文字ごと封筒を握り締め、別荘を後にする。言えなかったテレサへの言葉――今度いっしょにお料理作りませんか? にぎやかで楽しいですよ。を飲み込んで。それは今度絶対伝えよう。でも今は。
「――なにかおいしいもの買って帰らなきゃね!」

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結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

  • 義の拳客・
    リィェン・ユーaa0208
  • 語り得ぬ闇の使い手・
    水瀬 雨月aa0801
  • 危急存亡を断つ女神・
    ファリンaa3137
  • 譲れぬ意志・
    美空aa4136
  • 心に翼宿し・
    雨宮 葵aa4783
  • さーイエロー・
    サーラ・アートネットaa4973
  • 愛するべき人の為の灯火・
    御剣 正宗aa5043
  • 惚れた弱み・
    柳生 鉄治aa5176
  • 鎮魂の巫女・
    天城 初春aa5268

参加者

  • 義の拳客
    リィェン・ユーaa0208
    人間|22才|男性|攻撃
  • エージェント
    aa0208hero002
    英雄|50才|男性|カオ
  • 語り得ぬ闇の使い手
    水瀬 雨月aa0801
    人間|18才|女性|生命
  • 難局を覆す者
    アムブロシアaa0801hero001
    英雄|34才|?|ソフィ
  • 危急存亡を断つ女神
    ファリンaa3137
    獣人|18才|女性|回避
  • 君がそう望むなら
    ヤン・シーズィaa3137hero001
    英雄|25才|男性|バト
  • 世を超える絆
    世良 杏奈aa3447
    人間|27才|女性|生命



  • 譲れぬ意志
    美空aa4136
    人間|10才|女性|防御



  • 心に翼宿し
    雨宮 葵aa4783
    獣人|16才|女性|攻撃
  • 広い空へと羽ばたいて
    aa4783hero001
    英雄|16才|女性|ドレ
  • さーイエロー
    サーラ・アートネットaa4973
    機械|16才|女性|攻撃
  • エージェント
    オブイエクト266試作型機aa4973hero002
    英雄|67才|?|ジャ
  • 愛するべき人の為の灯火
    御剣 正宗aa5043
    人間|22才|?|攻撃
  • 共に進む永久の契り
    CODENAME-Saa5043hero001
    英雄|15才|女性|バト
  • 惚れた弱み
    柳生 鉄治aa5176
    機械|20才|男性|命中
  • 英国人も真っ青
    ブリタニアaa5176hero001
    英雄|25才|女性|バト
  • 鎮魂の巫女
    天城 初春aa5268
    獣人|6才|女性|回避
  • 天より降り立つ龍狐
    辰宮 稲荷姫aa5268hero002
    英雄|9才|女性|シャド
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