本部
テレサ・バートレットという女
- 形態
- ショートEX
- 難易度
- 不明
- オプション
-
- 参加費
- 1,500
- 参加人数
-
- 能力者
- 10人 / 4~10人
- 英雄
- 8人 / 0~10人
- 報酬
- 少なめ
- 相談期間
- 5日
- 締切
- 2017/12/25 09:00
- 完成予定
- 2018/01/08 09:00
このシナリオは5日間納期が延長されています。
掲示板
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質問卓
最終発言2017/12/21 06:44:03 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/12/24 08:02:39 -
絶望の歓迎会を乗り越えよ!
最終発言2017/12/25 00:07:35
オープニング
●来日
「ブラジルから日本。さすがに遠いわね」
税関を抜けた彼女はパスポートを閉じ、息をつく。
地球を半周してきたのは、アマゾンでの激戦の代償に与えられた休暇を楽しむためだ。
「マイリン、いっしょに来られなくて残念だったけど」
彼女の相棒たる英雄マイリン・アイゼラ(az0030hero001)は今、サンパウロの総合病院でいくつかの科をたらい回しにされている。
「すいませんアル――途中に食べ物屋さんがあったら止まってくださいアル――すいませんアル――」
救急車の中、延々と繰り返していたマイリン。
“食べ過ぎ”で倒れたくせにあんな譫言を垂れ流すとは、さすが大食いといったところだが……いや、そんなことを考えてはいけない。マイリンは青ざめるほどの真剣さで、彼女の料理の味見役を務めてくれたのだから。そして最後に「デ……スぅ!!」と叫んだと思いきや、棒のようにぶっ倒れた。
「耳では聞こえなかったけど、あたしの心にはちゃんと届いたから。あなたのデリシャスって声」
思い出映りこむ眼鏡を指先で押し上げ、はにかむように独り言ちた彼女の名はテレサ・バートレット。
H.O.P.E.ロンドン支部に所属する特務エージェントにして会長ジャスティン・バートレットの娘であり、ジーニアス・ヒロインの異名を持つ才媛。そして。
彼女以外の人間がもれなく「マイリンが言うたん、デンジャラスかそのまんまデスやろ!」とツッコむことうけあいの、料理に限ってはデス・ゴッドな22歳であった。
「お~、テレさんこっちっすよぉ~」
空港まで迎えに来ていた礼元堂深澪(az0016)が『歓迎! テレサ・バートレットさん』を書きつけた幟を振り振りテレサを招く。
「深澪! せっかくの休日に申し訳ないわね」
「いやぁ~、会長直々のご指名っすからぁ~」
深澪の非共鳴状態における近接格闘能力の高さは折り紙つきだ。「愚神もかくや」と評されたアラン・ブロイズ(az0016hero001)をふたつの拳でめこめこに叩き伏せ、真人間ならぬ真英雄に更生させた話は今やH.O.P.E.七伝説のひとつとなっている。
そのことから、非公式に来日した要人の護衛を任されることも実は多いのだ。
「ジーニアス・ヒロインの休暇預かるとか光栄っすよぉ。うちにホームステイってことでいいんすよね?」
「ええ」
テレサは最高の笑顔で引っぱってきたトランクを見やり。
「イッシュクイッパンノギリ? はこの手で返させてもらうから。滞在中の家事は任せて」
「はい?」
「掃除、洗濯、料理はあたしが」
「料理――まさか、ガチでマジっすか?」
「任せて!」
深澪は呆然としたままスマホを取り出し、アランに連絡する。
「もしもしボクだけどアランくん!? すぐ別荘とか用意できる? うん、人里離れた、誰がどうなってもひと冬はバレないみたいなとこ――娑婆僧がのんびりしてんじゃねぇ~! こいつぁガチやべぇ緊急案件なんだよぉ!!」
●隔離
人里離れた山中に建つ小洒落た別荘街。避暑地ゆえに冬期は人の気配なく、管理人もまた万来不動産からのエマージェンシーコールによって避難済みである。
その中の一棟に、深澪とテレサはいた。
「原宿へ行ってみたかったのに。だって、日本のモードの発信地なんでしょう? それに温泉――」
「毒だから! 若者にもご高齢のみなさんにもテレさん毒だから!」
深澪の必死に、テレサは思い至る。日本では金髪女子の価値が高いという。ブルネットも素敵だと思うのだけれど……騒ぎを起こすのは本意ではないし、ここは深澪に従っておくべきか。
「じゃあ、今日は深澪のためだけに腕を振るわせてもらうわね」
「きょ~」
歓声なのだろう奇声を発する深澪を横目に、テレサはキッチンへ。
「揚げ物をうまくするコツは、新しい油に一割の古い油を混ぜること。そうすると味が馴染むんだってテンプラ職人の人に教わったの」
テレサがトランクから取り出したのは、重油さながらに黒い油を収めたポリタンクだった。
「テレさんそれわ……」
愛しげにタンクを抱くテレサが応えた。
「ロンドンで贔屓にしてるフィッシュアンドチップスの屋台から分けてもらった揚げ油。毎日継ぎ足しながら熟成させた逸品よ」
タレじゃあるまいし、熟成って! 激しくおののく深澪へ、テレサは教鞭をとる教授さながら言ったものだ。
「闇の内に光明を見た気分よね。あたしに足りなかったのはセンセーショナルとトラディショナルのディスカッション」
そして、黒油を鍋にイン! 料理下手にありがちな目分量で、料理オンチにありがちな大量投入からの、ガス全開。
熱せられた黒油から放たれるなにかが深澪の目を潰しにかかる。
「ボクの目がそいつで致死ぃ~!」
唯一の救いは絶望的に広いなにかの有効範囲内に一般人がいないことだけなわけだが、ともあれ。
「もう……ボかぁ、食べられ、ねぇ……」
テレサのフィッシュアンドチップスに舌鼓というか体のどこかから這い出た謎鼓を鳴らし、深澪が前のめりに果てた。
「食べてすぐ寝るのはウシニナルんじゃないの?」
テレサがしょうがない顔で深澪をひっくり返すと。
ぷくぷくぷく。深澪の両耳――なぜか緑色に染まっていた――から不思議な泡が。
「これは」
テレサはごとりと深澪の頭を落とし、そして天を仰いだ。
「ジャパネスク・タラバガニスタイル! タラよりも、カニ!」
さらに彼女は灰色の頭脳を無駄に高速回転。
「いえ、そうじゃない。これが意味するところは灰汁。アクは救わない、じゃなくて掬わないことで古い油の滋味を示した。そういうことね」
頭がいい人は、自分の知謀が及ばないところでとんでもない誤解を閃くものだが。
「ロンドン油に一割のトウキョウ油を加えて、オンコチシン。……こんなことにも気づかないなんて、とんだ才媛もいたものよね。パパの名前に泥を塗るところだった」
深澪は霞む意識の中、必死でフリック入力。メールを飛ばし終えた瞬間、息絶えたのだった。――本人的には不本意ながら生きていたけれども。
●誘引
エージェント宛てに深澪からのチェーンメールが届いたのは、偶然なのか必然なのか丑三つ時だった。
『明日の夕方、ボクの別荘で来日しやがったテレサ・バートレットさんの歓迎会を殺ります。鬼てね★』
文字数にしてたったの44文字。しかし、その中に詰め込まれた怨念の深さは、それこそ1万字を尽くしても足りないほどどろどろと濃かった。
エージェントたちは思いを馳せる。
添付された地図が示すのは戦場だ。一歩を踏み出すだけで死線を越える生の向こう側……生き地獄!
解説
●依頼
冬の別荘で行われるテレサの歓迎会に臨み、生き延びてください。
●ゾーンルール
・この依頼は参加者全員が重体になったときのみ「大成功」が出ます。
・参加者の約70パーセントが重体の場合は「成功」です。
・それ以下の場合は「普通」が最高達成度となります。
・飲み物の持ち込みは自由ですが、食べ物の持ち込みは一切不可です。
・テレサの料理を一品食べるごとに生命力が20パーセントダウンします。
・食べるにせよ食べないにせよ、とりあえずリアクションしてください。すべての料理にリアクションする必要はありません。絞ってその分濃密なプレイングをしていただくもよいかと。
・5品食べきった方のみ、6品めを食べる資格が与えられます。これによって重体が確定しますが、ここまで来て食べないという選択肢は……ありえませんね?
・テレサ、深澪(半死半生)との絡みはご自由にどうぞ。
●テレサの手料理
1.煮野菜=玉葱とキャベツとポテトをていねいに煮込み、出汁のでたスープを全部捨てて皿にもりつけたデロ野菜。テムズ川の底をさらったみたいな舌触りと色即是空な味わい。
2.フィッシュアンドチップス=深淵のごとく黒く、廃墟のようにざらついたタラとカニとポテトのフライと思しきものです。
3.スターゲイザーパイ=ファイヤボールをくらったスライムのようなパイ生地から冗談みたいに鰯の頭がもりもり突き出したパイ。地獄さながらの見た目で味も……。
4.キドニーパイ=まさかのパイ2連発! 牛の腎臓入りで臭みたっぷり! 謎調味料で味わいもなにかを超えました。
5.チキンティッカマサラ=イギリス発のカレー料理。イギリス人のソウルフードですが、こいつは「知ったそのときが最期になる」逸品です。
6.うなぎのゼリー寄せ=ぶつ切りにしたイギリス産ウナギの煮こごり。しょっぱい酸っぱい生臭い。そこにテレサの腕が加われば「悪夢の向こう側へ連れて行かれる」代物に!
マスターより
お疲れ様です、電気石八生と申します。
このシナリオはテレサ・バートレットや礼元堂深澪と親しみつつ、デス料理に対するリアクションを楽しんでいただく、日常という名の不条理となっております。
多くは申しませんが、まあ、ぜひ大成功目ざして斃れ臥していただきたく(報酬は病院代です)。
ネタに命をかけてしまう好事家のみなさま、何卒よろしくお願いいたします。
関連NPC
リプレイ公開中 納品日時 2017/12/29 19:26
参加者
掲示板
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質問卓
最終発言2017/12/21 06:44:03 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/12/24 08:02:39 -
絶望の歓迎会を乗り越えよ!
最終発言2017/12/25 00:07:35