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広告塔の少女~呪いの装備がはずせない~
掲示板
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呪いでパニック!
最終発言2017/10/29 00:09:21 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/10/27 10:17:23
オープニング
● これはとある遺跡で発掘されたベルト。
グロリア社研究室。そこでは新しく発掘された霊力を帯びし品の鑑定が行われている。
「これは、南米の密林内大型遺跡の一番最下層に鎮座されていたベルトね」
そうロクトが説明を読み上げる最中、遙華の視線はそのベルトに注がれ続けていた。
そのベルトの主成分は鉄。ただ地球上であまり見られない成分が混ざっており隕鉄である可能性が出てきた。
そして霊力を補てんするためのスロットがあることから、何らかの霊力を運用できるような機構を有していることは明らかである。
「遺跡で発掘されたベルトと言えばあのライダーね」
「あなた、何を言ってるの?」
最近遙華はいろんなメディアに手を出し始めたらしい、アニメ、特撮。映画。
その中の知識の一つに合致したらしかった。
「せっかく新しい霊力技術に繋がるかと思って検査してるんだから真面目にやりなさい?」
ロクトがそう嗜めると遙華も頷く。
「そうよね。私たちは強くならなきゃいけない、愚神なんかに負けられないの」
そう告げながら遙華はまったりとベルトに歩み寄り、あろうことかベルトを手に取った。ろくに解析もすんでいない謎の存在であるベルトをだ。
「あなた! 何やってるの」
ロクトが手を伸ばす、この時ロクトは自分の失敗を悟った。
遙華の目は正気ではない、ベルトに操られているのだ。
「もうあんな奴らのために、これ以上誰かの涙は見たくないの。みんなに笑顔でいてほしい! だから見ていて。私の、変身!!」
直後、遙華を光が包みこむ。
次の瞬間光が四散すると、ロクトの眼前に立っている女性が呻いた。
「わたし、一体何を」
「え?」
ロクトはその光景に目を疑う。
先ほどベルトを手に取ったのは遙華のはずで。
今も目の間で光に包まれたのは遙華だったはずだ……。
………………。
だが、ロクトの眼前にいる女性は遙華と似てもにつかな……くはないけど背格好が全く違う女性となっていて。それはつまり。
グラマラスな成長した姿に遙華が変わったという事を意味していた。
「遙華、あなた何ともないの?」
「え? 何が?」
遙華がロクトの声を聞き取ろうと前かがみになる。
服は遙華の変化についていけなかったのか胸元の生地が引っ張られてぱっつぱつである、シャツが押し上げられている。
谷間が見えた。髪をかき上げてロクトを見る遙華。
その何とも言えない色気に、ロクトは背筋が寒くなる思いだったという。
(この子、将来男たちにいいようにあそばれそう!)
遙華の教育プログラムに、男性との付き合い方を追加しようと心に誓ったロクトであった。
「それにしても。何が起きてるの? ロクトは何で何も言わないの?」
その言葉にロクトは無言で手鏡を差し出す。すると、そこに映っていた自分の姿に絶句する遙華である。
「厚みを増した胸部装甲、あまり運動をしなかったのか、ふくらはぎはむっちりと肥大化。私! 太った? この一瞬で?」
「成長したのよ、お馬鹿さん」
そうロクトが頭を抱えると告げる。
「まぁ。これも貴重なデータね、遙華もういいわよ、ベルト外して」
「ロクト……あの」
そんな中、遙華が恐る恐ると言った調子でロクトに声をかける。
視線をまた遙華に戻すとロクトは、その手に重たそうなベルトを吊り下げた遙華を見た。
ベルトを外しても。どうやら。
「変身は解けないみたいね」
「え! ええええええええ!」
さぁ、グロリア社でまた、厄介な事件が幕をあげてしまった。
● 遺産いろいろ
今回グロリア社は新規開発のために沢山のマジックアイテムを取り寄せました。
その内のいくつかでトラブルが発生しているようなので対処をお願いします。
そう、すでにトラブルは発生してしまっているのです。
皆さんはそれを装着してしまいました。
アイテムの魔力に魅せられてしまったのです。
さらにこのアイテムたちに職員の心が操られて、グロリア社がてんてこ舞いになっているので、対処をお願いします。
では順番に説明しましょう。まずマジックアイテムから。
1 変身ベルト『魁』
決してヒーローに変身するわけではない、なりたい理想の自分になれるベルトのようです。
遙華の場合、ロクトみたいになりたいと願っていた気持ちが反映されたようで。
願う思いが強ければ強いほど、忠実にその理想像に変身できるみたいです。
ただし、変身しても戦闘力は上がらない模様。
そして一番重要なのが、普段から何かになりたい、自分を変えたいと思っている人間はリンカーであろうともこのベルトに引き寄せられるようで。
あまりに思いが強いと、研究員から奪い返して装着したり、リンカーからも奪い取って装着してしまうくらいに、理性が蒸発するかもしれません。
最悪みんなで争奪戦になることも?
2 グラヴァイス
グラディエーター・デヴァイスの略らしいです。
片手に収まるポケベルのような機器ですが。これをパートナーである英雄にかざすと英雄が進化します。
人の形を保っていられなくなるかもしれません。進化する時は特注のBGMがなぜか流れ感動的な進化シーンが挟まります。
英雄の自我がそれに耐えられるかどうかは、皆さんの英雄しだいです。
このデヴァイスを求める人は常日頃から強くなりたい、戦いたいと願う人達です。
このデヴァイスを巡って戦いが巻き起こるかもしれません。
ちなみに進化しても見た目が変わったり性格が変わるだけなので安心してください。
3 隷属の人形
喋って謳う人形です。と言っても自我があるわけではないみたいです。
詳しく後述しますが、この人形がグロリア社内を歩き回って一般人を洗脳しているようです。
洗脳されるとおでこに青色の宝石が浮かび上がり幼児退行します。
精神だけが幼くなるので、傍から見ると奇妙です。
宝石を破壊すると正気を取り戻します。共鳴していないリンカーも人形の餌食になる可能性があります。
4 epohの霊玉
片手に収まる冷たい石で、手のひらの上で転がすともう会えないと思っていた人が目の前に現れて語りかけきます。
当然人には見えないようです。
この石に取りつかれる条件は、過去へ戻りたいと願う心。もう二度と戻れない日々を強く胸に抱いているほどこの霊玉を求め、人が変わったように奪おうとしてしまうでしょう。
解説
目標 全てのアイテムを回収し、アタッシュケースに入れる。
おかしくなってしまった人々を解放する。
今回はおかしくなってしまったグロリア社の人たちを助けつつ。
マジックアイテムで遊ぼうという会です
● アイテムについて
マジックアイテムについては遙華がアタッシュケースを持っています。
このアタッシュケースに入れてください。
これは霊力を遮断するアタッシュケースで呪いが外に漏れるのを防ぐことができます。
このアタッシュケースは各アイテムにぴったり合うものがそれぞれ存在します。
ちなみに、アタッシュケースは内部にアイテムがしまわれたことを確認するとパスワードを自動生成してロックをかけるのでもう取り出すことができなくなります。
なのでアイテムを使って何かやりたいことがある人は回収前にやるといいですね。
● グロリア社てんてこ舞い。
皆さんにはそれぞれ、変わり果ててしまったリンカーへの対処もおねがいしたいのですが。
社内に蔓延した呪いのせいでお祭り騒ぎになっているこの状況も沈静化していただきたいです。
先ず、前述した人形の力によって、体は大人、頭脳は子供人間が量産されています。
この人達があまりに多いと皆さんの行動を妨害します。
さらにそれぞれのマジックアイテムにひきつけられる一般人が5~10人程度います。
気絶させてやってもいいのですが。ひきつけられる人間固有の願いを逆手にとれると面白いかもしれません。
また1,2,4番のマジックアイテムの誘惑は心の持ちようで何とかなりますので、説得というのも有効な手段でしょう。
お話が展開する舞台としてはグロリア社研究棟なので。
一階には多目的ホール、食堂、エントランスなどがあり。
二階から四階までは二十部屋にも及ぶ研究室が詰め込まれ。
最上階に研究室と並んで遙華の執務室がある。そんな感じです。
リプレイ
第一章 事の発端
ここはグロリア社研究棟。この都内某所に存在するグロリア社の頭脳部分から日夜AGWだったりそうでないものだったりが生み出されている。
そのグロリア社を尋ねる二人の少女がいた。
片方は『御門 鈴音(aa0175)』で『輝夜(aa0175hero001)』がどこかに行ってしまわないように常に目を光らせている。
その隣を並んで歩くのは『月鏡 由利菜(aa0873)』そして半歩後ろで彼女たちを守るように付き従うのが『リーヴスラシル(aa0873hero001)』である。
「ふふふ、こうして皆で休日にどこかいけるというのは良いものですね」
そう由利菜は鈴音と輝夜を見つめて微笑んだ。
今日は二人ともグロリア社に用があって訪れた。
二人ともメインの目的はアイテム改造に関する相談のため。
ただ、鈴音には違う思惑もあった。
前回の死亡宣告事件…………まぁつまりは遙華がやらかした事件だが。
それ以降、気まずくて遙華に会えてなかったのである。
ただ、今回は由利菜の誘いもあり、ちょうどいい機会だとこの場所に赴いた。
あの時ほど恥ずかしいドッキリはなかったと、笑い話にできればいいなと思ったのだ。
そして遙華の友人だという事で研究室に案内される二人。
そんな二人を景気よく出迎えたのは、いつものごとく発生した異常事態であった。
「下がれ、由利菜!」
開く自動ドア、直後室内に満ちる閃光、それは刺すように攻撃的であり、目蓋の裏からでも眼球を刺激した。
全員が顔を腕で隠してその光をやり過ごし、恐る恐る開いた瞳には。
変わり果てた遙華の姿が映っていたのだった。
「…………メガネの姉貴か誰かか??」
そう首をひねる『柳生 鉄治(aa5176)』そもそもメガネが誰か分からぬ『マリアンヌ(aa5176hero002)』の視線は代わりにロクトへと注がれていた。
「大変なことになったね、遙華さ…………どなたですか?」
何度も顔を合わせている『海神 藍(aa2518)』ですら首を傾げる始末。
「もしかして遙華さんのお姉さん…………じゃないですね。すごいです」
『禮(aa2518hero001)』はわかってくれたようだ、背伸びをして遙華の肩を叩く。哀れむように。
「何やってるんだろうな?」
「遙華デスからニャー」
そう二代わりをうかべる『彩咲 姫乃(aa0941)』そして『朱璃(aa0941hero002)』はにやにやと笑いながらカメラを構えた。
「それよりご主人には目の毒じゃないデス?」
「うるさいな、意識して視線をそらしてるんだから意識させるな」
遙華は恥ずかしいのだろう、腕を体に巻きつけて縮こまっている。だがそれが逆に体のラインを際立たせ。
あー成長したんだなぁと思わせる。
「やれやれ、本当飽きない場所だよな」
「……ん、大騒ぎ」
そう同じようにカメラを構える『麻生 遊夜(aa0452)』と『ユフォアリーヤ(aa0452hero001)』。
「やめて、こんな姿残されたら恥ずかしいわ」
照れる遙華にズームしてよる遊夜。
「何時解除かわからん、今がチャンスだ」
「何のチャンスよ」
遙華は呆れながら頬を染めて、どうしていいか分からず佇む。
「綺麗になって……」
目頭を押さえる、お父さん気分の遊夜である。
「……ん、おっきくなった」
そうユフォアリーヤが抱き着く。
「出来れば変身シーンから欲しかった……無念だ!」
それにしても……。そう遊夜は物思いにふける。
(将来男たちにいいようにあそばれそうだ!)
「……おっきくなった、むちむち」
「ひゃ!」
さすがにユフォアリーヤには負けるが、なかなか稀有なボディーである。
まるでロクトのような。
(今の俺でもいいように遊んでみたくなりそうなこの魅力……危険が危ない!)
そう咳払いをして邪念を振り払う遊夜。
その遊夜の小さな変化をユフォアリーヤは見逃さなかった。
「……ユーヤ?」
いつの間にか背後に移動していたユフォアリーヤ、その犬歯がギラリと光る。
「……悪い虫が付かないよう教育を見直してもらわねば!」
「ええ、そうね、悪い虫がつかないように……」
けれどその前に遙華を元に戻さないといけない。そうロクトがあたりに視線を巡らせると一人の少女が目に入った。
マリアンヌである。
「ねえ鉄治。コレがあなたの愛人??」
コーヒーを吹きだす鉄治。
「聞いてるわよ??」
それはもちろん第一英雄からである。
「ぶっ!? おい、誰が誰のナンだ。…………ったく、なんてこと聞いてやがんだ」
「あらあら、嬉しい勘違いね」
ロクトが穏やかに微笑んで告げる。
「アンタも誤解を招くようなことは言わないでくれ」
そんなてんやわんやな一行を眺めて朱璃がぽつりとつぶやいた。
「遙華のむっちりぼでぃにご主人を投げ込んだらとても面白そうという欲求と大格闘中デスニャ」
「それは…………勘弁してくれ」
一瞬何事かを考えた姫乃。妄想の世界に引き込まれかけるが、遙華がテーブルの上に置いたベルトを見ると意識がそちらに吸い寄せられた。
「ところでご主人は理想の姿に変身って興味ないデス?」
「ないわけじゃないが……」
普段から心と体がちぐはぐな姫乃である。そのベルトに魅力を感じもする。
「けどな、昔と違って今は発散する時間も手段もあるからな」
「デスニャか」
ベルトは求めないのか、そう残念そうに朱璃は溜息をつく。
そんな中動いたのは『フローラ メルクリィ(aa0118hero001)』である。
「とった!」
ベルトに飛びかかるフローラ。そのテンションは狂気的に高い。
「遙華さんがナイスバディに! ……、わ、私だってっ!この格差社会に終止符を打ってやるんだから!」
「ちょっ! フローラが暴走した!?」
そしてそれを止める手立て持たぬ『黄昏ひりょ(aa0118)』。
「う、うふふふふ……、これで私も勝ち組よっ!」
しかしそのベルトはフローラの手が届く寸前に吹き飛ばされた。
見れば『雪室 チルル(aa5177)』がその手の刃にてベルトを切り上げたのだ。
「あああ! 失敗した」
ベルトが体に固定できないように一部分を切り飛ばそうとしたのだが失敗したらしい。
「残念だね」
『スネグラチカ(aa5177hero001)』がそう告げる。
「なんてことを! 壊れたらどうするの?」
青ざめるフローラ。転がるベルト。
そのベルトだが床を総べると突如勝手に輝きだし、次いで当たりのオーパーツもそれに反応。光を放ち空を舞う。
「へー。おもしろマジックアイテムがいっぱいあるわねー」
そうチルルがのんきにつぶやいた。
「わああああ。その人形も、宝玉も、端末もすごくまずいのに!」
直後そのアイテムたちはその呪いめいた力を発揮。
グロリア社を混乱が襲う。
第二章 地獄の争奪戦
グロリア社で起こった三つの出来事。
1 ベルトの暴走によってリンカーたちの熾烈なあらそい。
2 人形の呪いが発動して次々とグロリア社員たちが幼児退行。
3 遙華が必死に状況を説明するも誰もかれもきいちゃいない。
「ねぇ姉様聞いた? 人形だって!」
違う、嘘をつきました、『リジー・V・ヒルデブラント(aa4420)』と『オーリャ(aa4420hero002)』は冷静に話を聞いてくれていたようだ。
「気持ちは分かりますが、あまり羽目を外し過ぎない様に」
リジーが告げるとオーリャは元気に手をあげる。
「はーいっ!☆」
そんな二人は走りながら手を取って共鳴の準備に入る。
「ふんふん、共鳴してないとやられちゃうのカナ?」
(……あ、嫌な予感が……)
そうリジーが感じた時にはすでに遅い。
共鳴するとあっという間にオーリャに主導権を奪われた。
「今回はボクが主導権頂くね! 途中で洗脳されてる人いたら、えーっとぉ」
楽しそうに夢想にふけるオーリャ。
「頭割れば良いんだっけ?」
「頭ではなく額の宝石ですわよオーリャ」
そうリジーが冷静に突っ込みをいれた。
「そうだったそうだった!」
そうオーリャは迫りくる研究員たちをかわして頭をぱちんと叩く。
「じゃあ青色の宝石割って行こうね! 叩けば良いのかなぁ?」
「オーリャ、それでは割れませんわ。少し代わりなさいな。……ふっ!」
一瞬意識を浮上させるリジー。その気合の入った一撃はおやじたちの額(宝石)を粉々に砕いた。
「こうですわ」
――……ワーオ……。
そんなリジーたちとは対照的に、研究室内はいまだ混沌としている。フローラ、チルル、遊夜がベルトを中心ににらみ合った状態では誰もがどうしていいか分からない。
「やはりオーパーツは摩訶不思議だね……」
「……どう見ても呪いの品だろう」
思わず突っ込む『御神 恭也(aa0127)』だが迷惑そうな表情を浮かべる彼と対照的に『伊邪那美(aa0127hero001)』の視線はベルトに向けられていた。
「た、楽しそう……」
「ベルトの魔力、そんなにすごいものかな?」
藍がそうしみじみと告げると禮がため息をつく。
「早く回収しないと拙そうです」
ただ、そんなリンカーたちの中からもう一組姿を消したリンカーがいる。
「会えない人に会える……お母さんにも……?」
鈴音の手に乗っていたのはepohの霊玉。
「馬鹿な事考えるでないぞ鈴音!? お前さん見た目の割にアホじゃから洗脳系には簡単に操られるじゃろ!?」
輝夜が告げる。
「うん、でも、わかってる、けど」
その石を使ってみたい衝動に耐えて鈴音はそれをポケットにおさめた。
* *
さて、話は戻り、研究室。
ここではすでに銃弾と斬撃飛び交う戦闘が繰り広げられていた。
遙華の悲鳴を背中にききながらチルルはデスクの上を滑り、素早くその陰に隠れた。
「とりあえず各員がそれぞれのアイテムの対応に回る形ね」
各マジックアイテムに対応すべく立ち去ったリンカーたちを思いながらチルルはそう告げた。
――グロリア社全体が大混乱になっているみたいだし。
スネグラチカが告げる。
「で、あたいの担当はズバリ変身ベルトよ!」
――てっきり操られてベルト争奪戦に参加したんだと思ったよ。
スネグラチカが驚きの声を上げる。
「ないない、それは絶対にないよ、あたいが操られて変身することはありえないって!」
そう自信満々に答えるチルル。
「だってあたいさいきょーだし」
――何というフラグ…………ところでチルルはもし変身するとしたらどんなやつに変身するつもりなの?
その声は甲高い音と光でかき消される。
フラッシュバンの光だ。
その光が去った頃。遊夜が机の上に立って銃を打ち鳴らす。
「これは俺のもんだ! 俺はもっと強くなる……リーヤを、ガキ共を守らねばならんのだ!」
そう高らかと叫ぶ遊夜。
「……やーん」
そんなちょい悪遊夜もかっこいいな。そう思うユフォアリーヤ。
そしてベルトを腰に巻く、すると光が彼を包み。
なんと、なんと。
あまり変わらなかった。
いや、違う、変わった。
肌がつやつやになっているし、髪の毛も短い気がする輪郭も少し丸いような。
これは健康になったという事なのだろうか。
「……ん、若返った」
違うユフォアリーヤが言うには若返っているらしい。
それこそユフォアリーヤに見合う年齢に、具体的には20歳くらいに!
体の傷も消えている、つるつるぴかぴか新品の遊夜である。
「……んー? ……んー……」
それを見て耳をぴこぴこさせるユフォアリーヤ。
嬉しいけどこれじゃないらしい。
「……ん、俺は何を……?」
その時我に返った遊夜。慌てふためく遊夜の影で何かが躍った。
「もう! 何それ、面白すぎだよ、私にも貸して」
「伊邪那美!」
恭也が止める間もなく飛びかかったのは伊邪那美。その手がベルトを奪い去る前に。姫乃がとった。
「おま! 朱璃! 俺の体を勝手に」
――にゃははは、お楽しみはこれからにゃ。
その行く手を阻むのはフローラ。
その手には愛用のフライパン。きしゃーっと威嚇の声をあげながら姫乃に襲い掛かる。
だがそれを止めたのはひりょ。
「さすがに暴力はまずいって」
そのひりょの手に握られていたのはホワイトボードに張り付けられていた、大きな定規。
けがをさせないための配慮だがそれで戦う二人は面白すぎた。
その傍らで遙華から鏡を借りて自分の姿を眺めている遊夜。
「……なるほど、そう言う事か」
苦い顔をして遊夜はユフォアリーヤを見つめると、首をかしげるユフォアリーヤ。
「あー……これが俺の願望かぁ」
「……ん、カッコイイ……よ?」
これはこれでという言葉が透けて見えてしまう遊夜である。
「で、解除方法はわかった?」
遙華が問いかける。
「……分からん、だからな考えたんだ」
遊夜はにやりと笑って遙華に告げた。
「……うむ、皆に装着させればいいのではないかってな」
「それは道連れっていうんじゃないの?」
「やれやれ、見てられないな」
そんな状況に手を差し伸べてくれるのが藍。さすが数少ない大人枠である。
「落ち着いてください! こんな物で強くなっても何の意味もないですよ!?」
零が告げる。まったくの正論である。
「こんなもので力を得ても、それは自身の力ではない。わかるだろう?」
そう告げた藍の手の中で何かがちゃりっと金属音を奏でた。
「さあ兄さん、早く仕舞いましょう……兄さん?」
(……進化か……。禮はどうなるんだろう)
その手に握られていたのはグラヴァイス。そう藍もしっかりアイテムの誘惑に負けている。
「兄さん!!」
直後デヴァイスから放たれる光。それが禮を包むと軽快な音楽が流れて禮が進化した。
「……え? あっ!?」
突然足が消失して転倒する禮、人魚姫モードである。
「あ……!? 禮、大丈……禮?」
それは共鳴時のような衣装外見で、さらに下半身が魚の人魚スタイル。
だが変わっているのは性格面もで
「……藍、そこに直りなさい」
ぎらつく王冠、まさに英雄と呼ぶにふさわしい威圧感。
「えっと、落ち着いて……」
禮の手元を警戒しつつ一歩下る藍。その手に握られたお魚もつけるトリアイナが藍すらついてしまいそうな気がした。
「何してくれてるんですかっ貴方は!?」
ジャンピング尾びれ。藍を三回転させてぶっ飛ばした尾びれナックルは世界を狙えるほどの重さを秘めている。
「ヒレ……いや、殴……蹴る?」
倒れ伏す藍。
「まったく。水場もないのにこんな姿にして……! 動きにくいです。早く共鳴しましょう、藍。……藍?」
藍はもう何も言わない。ただぴくぴく痙攣していい夢を見るだけだった。
「……寝てる場合じゃないです、起きなさい藍」
ぺちぺちと尾びれで欄を叩く音が研究室にこだまする。
「やああああ! あたいがさいきょ―なのよ」
そんな藍たちの背後で第二回戦が決着した、ベルトを奪ったのは以外にもチルル。
そしてチルルはベルトに操られているわけではない。
おわった、これでこの波瀾に幕が下りる。そう思った矢先。
「ふふふ、あんたたち甘いわ。あたいがさいきょーなんだからこのベルトはあたいの物よ」
「え? チャンピオンベルトと勘違いしてない?」
スネグラチカが突っ込むがそうではない。
チルルもベルトに操られている。
さっき操られてないとか言いながら操られている。
「そうだよ! 殺気変身しないって言ってたじゃない」
スネグラチカがそう叫んだ。
「うん、あたいは元々さいきょーなんだからこれ以上何かに変身する必要性がないわね!
これ以上さいきょーになったらゲームバランスが崩れちゃうじゃん。クソゲーよクソゲー」
「お前は一体何を言っているんだ。唐突なメタ発言はやめろ、あと変身する必要がないならそのベルトを置こう」
「まあ、強いて言えばさいきょーに相応しいゲーム的な感じの変身がしてみたいわね」
「うーん? つまり?」
「つまりこういうことだよ!」
ベルトを装着、次の瞬間にはチルルが求めるさいきょーのすがたがそこに。
「それは私自身がドット絵になる事よ」
…………
研究所を沈黙が覆った。
そこにいたのは確かにチルル。しかしペラペラなチルル。
「いくらなんでもそれは……だめじゃない? 2次元世界の住人じゃない」
そうスネグラチカがチルルの前方(つまりスネグラチカからはチルルが一本の線に見えている)に立って告げた。
「これがさいきょ―の証よ」
なんだかチルルがすごく楽しそうなので、スネグラチカはもう何も言えなかった。
チルルからベルトを回収して、さぁどうしようか。
そう思っていた矢先。
そのベルトを奪い去ってフローラが腰に巻きつけた。
スネグラチカは思っただろう、しまった彼女の存在を忘れていた。
直後装着されたベルトはフローラの体を光で包む。
変身シーンがたっぷり30秒使われてその場に佇んでいたのは。
アイテムを装備しナイスバディになった(はず)のフローラであった。
皆がさらに沈黙する。
確かに大人びた体には慣れた、しかし。
足りない。たりない。
「そ、それでも勝ち組にはなれなかったっ!」
膝をつくフローラ。
「周りは圧倒的だった……!」
そう涙を流しながら駆けていくフローラ、彼女の投げたフライパンを拾ってひりょはその背を追いかけた。
「待ってフローラ」
ついでに持ちさられたベルトを追いかけるべく、ベルトの呪いを受けた者達が群がることになる。
第三章 人形と私。
チルルは廊下を疾走している。
ベルトを持ちさったフローラへの対処もそうだが、他のアイテムを回収するためでもあった。
「その後余裕があればアイテムを試しに使って遊んで見る感じね」
そう懲りずにチルルは行った。彼女にとってドット絵になる程度なんでもないらしい。
――職員の人達には悪いけど、アイテムのためには多少の実力行使は仕方ない…………かな?
チルルは小さく跳躍すると、廊下を無秩序に徘徊する人間たちの額を叩いていく。
それでも割れない額の宝石。
そうこの人たちは全員マジックアイテムである隷属の人形にて操られてるのだ。
――倒しにくいね。
スネグラチカが告げる。
「それでもさすがに武器とかはまずいよね。ハリセンか何かで正気を取り戻してみよう」
そして向かったのは食堂。
そこは人間が多く収容できるためか人形に洗脳された人間どもが多くたむろっていて。恭也と鉄治が縫いとめられている。
「さて、早急に事を納めないと黒歴史が大量生産されそうだな」
そう恭也は研究員を一人投げ飛ばす。
先ほどから幼児退行が激しく、しきりに遊んでよぉーと迫ってきたおっさんだったが、邪魔くさいので背負って投げた。
そんな鉄治の足元に転がるのがグラヴァイス。
「…………なんだ、コレは」
おもわず拾い上げる鉄治だが、背筋に何とも言えない悪寒を感じてマリアンヌは声を上げる。
「鉄治、なにやってるの。あまり迂闊に触るものじゃないわ」
その言葉に耳を貸さず生唾を飲み込む鉄治。
「ちょっと、聞いてるの!?」
「こいつを使えと、なんか変な声が…………」
直後グラヴァイスから溢れる光、それをマリアンヌにかざすと、マリアンヌが進化した。
そこにいたのはふわふわなロリータ服が似合うウルトラびしょうじょ。
それはまるでマリアンヌが小さくなったような姿。
「なっ!? 鉄治、あなたバカなの? 死ぬの??」
あまりの驚きにぽかぽかと殴り掛かるマリアンヌ。
その手からグラヴァイスが吹き飛んで伊邪那美の頭に当った。
涙目で蹲る伊邪那美、そんな伊邪那美を尻目に恭也はグラヴァイスを拾い上げる。
「伊邪那美が進化したら何になるんだ? ……気になるな」
「だめ、だめだめ……だめだよ。だめだよ、恭也」
そんな静止は効かぬふり。恭也はグラヴァイスを伊邪那美にかざすと。
何も起きない。姿は変わらない。ただ……表情がたおやかになり。慈愛に満ち後光がさす。
「眩しいな……誰だお前は!?」
「私は伊邪那美、恭也……あなたの罪を全て許すよ」
「恐ろしい程に気味が悪いな……全身に鳥肌が立ったぞ」
とまぁ、こんな感じで。神の助けにも等しいグラヴァイスの登場だったが、起死回生の手立てにはならず二人はこの人ごみを突破することが困難になった。
ただ、そんな二人を救出するために突入してきたのが。鈴音、由利菜、そしてリジーである。
「みなさん大丈夫ですか!」
二人はその手に竹刀を携えている。
鈴音と由利菜はお互いに死角をカバーしあいながら適度な衝撃で研究員たちを気絶させていった。
「人形の本体はどこかな?」
群がるおっさんたちを避けながらオーリャが問いかける。
「喋って謳う人形だってさ、とってもとっても愉しみだよね!」
その時だ食堂内のガラスごしに、自分たちの背後に潜んだ小さな人影が見えた。
「オーリャ!」
あわててリジーの意識が浮上。
リジーは振り返って人形を薙ぐように吹き飛ばした。
その人形は素早く体制を立て直すと人ごみの中へ消える。
「あれが噂の人形か」
鉄治が人形を追って駆ける
「あんな不細工な人形の虜になるなんて許さないわ。いいわね、絶対よ!!」
そう人ごみに消えていく鉄治の背にマリアンヌが声をかけた、普段より声がしたったらずで高いのはやはり、グラヴァイスの影響だろうか。
「鉄治??」
そんなマリアンヌの前にすぐさま鉄治が戻ってきた。
その瞳はトロンと虚ろである。
「ま、まさか鉄治……」
そのまさかだ、見事なフラグだてであったと言うべきだろう。
「…………ママぁ」
「…………は??」
直後恐るべきスピードではいよる鉄治。
「ママぁっ!!」
そのまま押し倒されるマリアンヌ。成人男性に組み伏せられる幼女と言う絵面だけでもやばいのに、肝心の鉄治は赤ちゃん口調である。
「ちょっ、やだ、どこ触って…………。い、嫌っ…………いやあああああああっっ!!」
そんな大混乱の食堂にさらに混乱が追加される。おかわりである。
「いやああああああ、私はもう一回このベルトで変身するの!」
「もう無理だよフローラ!」
「ベルトよこすにゃ!」
――俺の体でその猫口調やめろ!
ベルト組の合流である。
先ずフローラに抱き着いてその暴走を止めるひりょ。
フローラの体からスッとベルトを抜き取る。姫乃……もとい朱璃。
追加で押し寄せる研究員たち。
満員電車のごとき人口密度となった研究室のテーブルの上で朱璃がベルトを装着変身した。
次いで光り輝くその姿。
ガラスに反射して見えた自分の姿に言葉を失う姫乃。
「……説明を求む」
――見たかっただけデスニャ。
「メルトと違って扱いづらいなーおい!?」
――そんな事よりきゃめらの確保デスニャ。ご主人のぷりてぃすたいるを激写で永久保存デスなー。
その言葉に姫乃は体を隠すようにしゃがみこむ。
「おい待て!」
――待ちませんニャ。お説教はごめんデスニャー。
ベルトの力によって、いやこれはもはや朱璃の趣味だろうか、外見年齢を引き上げられた姫乃。
色々なサイズが大きすぎず小さすぎず、少女でも大人でもない独特の魅力を漂わせる。
「服、サイズ合ってない……キツイ、痛い、苦しい……」
――あっ……なんていうかごめん。
直後素に変える朱璃。
――しかし、ご主人が自らすかぁとを求めるとは……貴重な機会デスニャ。
「誰のせいだと思ってるんだエロ猫?」
そんな会話の流れで朱璃ベルトを投げ捨ててしまう。
「せめて確保しろよ!?」
――その発想は――なかったデスニャ。
「いや、その発想こそ持てよ!」
その可愛らしい姿のまま姫乃は人ごみに飛び込んだ。
気配を殺しスルスルと人ごみの中を走る。
――いた、人形じゃ! 鈴音! 由利菜!
――わかっている。
リーヴスラシルが告げると由利菜は体を滑り込ませるように人ごみへダイブ。人形本体を追う。
その逆サイドに回ろうと鈴音は人をかきわけようとするのだが、特にがっちりと人間バリケードが組まれていて先に進めない。
「こうなったら最後の手段よ」
鈴音はいつの間にか回収していたグラヴァイスをかざす。
共鳴を解いて輝夜に光を向けた。
「ま! まて! それはまずい、いやじゃ!」
直後流れる軽快な音楽。
輝夜が再構築されていく。
ブリキの表面、球体関節
完成したのは『メカ輝夜RX』
もはや原型とどめてないカオスな容姿となってしまう。
「うおおおおお、わらわ全身が鉄臭い。おのれ鈴音!」
大激怒の輝夜であるがその暴れっぷりで人間バリケードを崩すしていく。その衝撃で鈴音も吹き飛ばされ、ポケットに入れていた宝玉が転がるのだが、それに鈴音は気が付かない。
「遅れて悪いな」
告げて食堂入り口から遊夜が洗脳者たちを狙い撃つ。
額の宝石を破壊して。邪魔な人間たちを排除していった。
「これが一番厄介だな……」
「……ん、とても……混沌」
「とった!」
直後、由利菜がロブスターでもとったかのように人形を掲げる。
じたばたもがく人形をよそにリンカーたちはその場をいったん後にした。
「…………なんてことしてくれたのよ。もうお嫁に行けないじゃない」
目に涙をにじませながら四つん這いで逃げるマリアンヌ。それにしても女神様の嫁入り先など存在するのだろうか。
だが洗脳中の鉄治が追いかけてきた。
「このっ…………!!」
スカートを気にせずキックを鉄治の額に浴びせるマリアンヌ。その衝撃で宝石が割れた。
「…………うん?? 何だ、何があった??」
鉄治は晴れやかな表情でそうマリアンヌにといかける、するとマリアンヌは。
「うるさい、変態!! 黙りなさい!!」
そう叫んで、もう一度鉄治に蹴りをみまうのだった。
第四章 望みの淵
もぬけの殻となった食堂に現れたのは藍である。
その双眸が床に転がる小さな石をみつけ、藍はそれを手に取った。
「これがepohの霊玉か……」
「藍、少し使用してみるべきです。今の貴方なら囚われることは無いでしょう」
「……では、お言葉に甘えて」
石が小さく輝くと、藍の目の前に霞が買った家族が現れた。
それは仲睦まじそうな三人の幻影。
その中で男性の幻影が藍の頭をなでる。
「……父さん?」
おおきくなったな、そう藍には聞えた。
少し微笑んで、藍はアタッシュケースを開いた。
「……帰れないからこそ、価値があるものだよね」
その時である、食堂まで追いかけっこして、フローラが再び戻ってきた。
その背後から追いかけるひりょもくたくたなようで、二人とも食堂の床に倒れ伏す。
「どうせ私は周りと違って……ぺったんこですよ~だ! えーん!」
情緒不安定なフローラ。彼女がなにを気にしているか分かりひりょはポッと赤面する。
「な、何を言ってるんだ! 周りって」
そんなひりょだが、かけるべき言葉はわかっている。しかしその言葉はひどく恥ずかしい。
顔面温度が上がるひりょ、意を決して言葉を告げる。
「ま、まぁ……こういうのは楽してなれるものじゃないからこそ、意味があるんじゃないか」
「ひりょが何かうまい事言ってるし~」
なかなか聞いてもらえない。けれどフローラはいつものような笑顔を向けてくれた。
* *
ほとんどのアイテムがリンカーたちによって回収された頃。藍が宝玉を手に一同と合流した。
その手の宝玉を見て由利菜が両手を合わせた。
「お願いします。一度だけ」
瞬く小さな光。それはリーヴスラシルへ向けて放たれた。
宝玉がラシルの記憶の一部や、由利菜の両親と過ごした幸せな日々を呼び覚まそうとする。
だがリーヴスラシルはこの世界と互いへの思いが薄れていくことに気づき、激しく抗った。
「陛下だけではない……王女殿下、騎士団の同僚、辺境からの侵入者との戦い、異邦人との出会いの記憶が浮かぶ……」
「……過去の思い出も大切ですが……ラシルや鈴音、それに遊夜さんや恭也さん、ひりょさん、藍さん達と刻んできた今、そしてこれから紡ぐ未来の思い出と引き替えにはできません……!」
そう視線を巡らせる由利菜、そんな彼女の視界に鈴音が入った。
「鈴音はこれを……使わないのですか?」
そう問いかけると鈴音は告げる。
「もう使ってみたんです、けど」
母は現れなかった。
そう項垂れる鈴音の頭を撫でる由利菜。
その時である。鈴音の耳に声が届いた。
大きくなってもおっちょこちょいね?
そう笑う声は楽しげで。少しだけ気持ちが楽になる。
そんな鈴音とは離れた場所で輝夜は一人つぶやいた。
「じゃろ? わらわが面倒みてやらんとまだまだ駄目なやつでのぉ」
エピローグ
「はぁ~、酷い目にあったよ」
伊邪那美は飲物片手に恭也の隣に座った。
「自業自得だ」
「ちぇ~……ねえ、何で恭也はepohの霊玉を欲しがらなかったの?」
「何だ藪から棒に」
「……恭也は御両親を亡くしたんでしょ? あれがあればもう一度会えたんだよ」
「……幻が語り掛けて来る言葉は、結局は俺が欲してる言葉だ。それは、両親の死を汚してる気がしてな」
黙りこくる伊邪那美。
「それに思い出は逃げる場所じゃないだろ?」
「そうだね」
そんなことを言いつつ伊邪那美は幻想蝶からあるアイテムを取り出した。
それは例の変身ベルト。
「おまえ、くすねてきたのか?」
にやりと笑う伊邪那美。
「最後にちょっとだけ。にゃは~……これさえあれば、もう子供扱いはしなくなるよね~」
次いでベルトを装着すると。伊邪那美は光に包まれる。変身したのは恭也と同じ年ごろまで成長した伊邪那美の姿。
「恭也~見てみて~ どう? あだるとば~じょんのボクの姿は?」
「……伊邪那美か?」
「背も恭也と同じ位になったから、もうこれでお子様扱いは止めるよね」
「俺がお前をお子様扱いするのは身長の問題じゃなく、普段の生活姿からなんだがな……」
その後変身は三日程度でとけて、大団円となった。