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【ドミネーター】地下攻略
掲示板
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依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/10/18 19:39:52 -
相談卓
最終発言2017/10/19 03:16:00 -
質問卓
最終発言2017/10/17 17:54:32
オープニング
船上攻略が発表されてからすぐに次の作戦に移りかかる。この攻略はスピードが大事だった。続いての攻略は地下鉄だ。
こちらも問題なく資料が出来ている。
――第二弾の調
危険なため、施設の中までは確認できていない。申し訳ない……。
日本のY市を走る地下鉄の、Y駅から下って次の駅に入るまでの間、駅から歩いて五、六分の所に扉を発見。駅員に確認した所、会社が作ったものではなく違法建築された物だと判明する。
定点カメラを設置して三日間の様子を確認した所、多くの隊員が出入りしていると分かった。見た目から判断するに隊長格、下っ端、更に売買された奴隷も連れられて来ている。
嫌な事実を見つけた。フランメスが復讐をした街、バグダン・ハウスの街の市長「テス」が出入りしていた。誘拐されたのではなく、自身の意志で。
また、ドミネーターとは違って白い仮面をつけた人間が何人か確認できた。何者かは不明。
扉は鍵がかかっていて、入るには網膜認証、または指紋認証を必要とする。扉は頑丈に出来ていて、破壊は難しいと思う。不可能ではないが破壊したら大きな音が出ることは間違いなく、電車が来で音をカモフラージュできるかと思ったが分からない。
人の出入りは頻繁ではなく、大体三時間~五時間に一回くらいだ。入る人数と出る人数が食い違うこともある。この施設には中に何人かの隊員が常備しているのだろう。
たまにビニール袋を持ってる隊員もいる。買い物をしてきたのだろう。
隊員は駅に向かうのではなく、歩いている最中に見える梯子に登って地上に出ているものと思われる。地下に行く時も梯子を使っている。
梯子の先は公園の公共トイレ、男子便所の個室に繋がっていた。
地下鉄の施設の情報を持っていたのは斎藤千草で、坂山は監視室へ足を運んだ。
「久しぶりね」
変わらない無愛想さだ。千草は無言で少しだけ頭を下げた。
「地下鉄の作戦実行段階に入ったわ。その前にちょっとお礼しようと思って」
「必要ない」
監視室とは名ばかりで、ほぼ独房だった。前は捕らえられて監禁されていたが、時間が経って潔白が認められつつあり生易しい監視室に移動になったのだ。
「綾ちゃんはよく来るの?」
千草の妹、綾は学校に行けるようになっている。保護者は代理としてクォーターが務めている。
「二日に一回」
「結構来てくれるのね。それだけあなたの事が心配だったんだ」
「半分迷惑だ。寝ているのに起こされると、誰だって機嫌が悪くなるだろう」
「それ、本気で言ってるの?」
「半分本気だ」
長居はしていられない。これからこの資料をエージェント達に渡して、作戦を一緒に練る必要がある。
「早くここから出られるといいわね。そしたら毎日、綾ちゃんと仲良くできるわ」
千草は否定も肯定もしなかった。
「早く行け」
「はいはい」
微笑の混ざった吐息。坂山は監視室を後にし、オペレーター室へと戻った。
解説
※以下は全てPL情報となります。
●目的
制圧
●違法建築
全体的な広さは学校程になるが、一階建てで縦に狭い。窮屈感はそこまで感じない。
扉から入って大人が四人並んだら隙間が無くなる廊下があり、五歩歩けばすぐに左右の分かれ道になる。施設の造りは四角形に十字の廊下。田の字に近い形になっている。
扉に入ってすぐ右手側に監視の小屋があり、隊員が交代交代で二十四時間見張っている。ガラス張りになっており、小屋の中には警報や施設内アナウンスのマイクが見える。
小屋以外には五つの部屋があり、その内の四つは隊員寮。十人もの隊員が入れるスペースがある。中にはテレビ等の家具、武具を入れる箪笥がある。出動命令が下された隊員達が集まる場所になっていて、同じ施設は日本以外にも数か所存在する。
五つの部屋の内、一つは会議室兼武器改造室になっている。その部屋には武器を改造するに必要な機材が揃っており、大きな机と多くの椅子が並んでいる。会議室は中央の部屋になる。
●敵勢力
・一般隊員
武器は刀と拳銃を両手に持ち戦う。どちらも改造されており、通常よりも強い威力を発揮する。人数は二十人。
逃走用の煙幕は全員常備。
・部隊長
三名いる中、特に「ヴェロッサ」が強力。彼女はサディスティックでリンカーには残虐な行為を強いる。武器はチェーンソーや大きな鋏を使って攻撃してくる。身長は子供並で、頭もそこまで良くない。
他二名は一般隊員よりも少し強い程度。武器は二刀流が一人、二丁拳銃が一人。二人とも素早い攻撃を得意とする。
・マフィア
仮面を被った人物達。全員リンカーで、一般隊員と同等の戦闘能力を持つ。十名程。
●テス・アンドレイ
かつてバグダン・ハウスを襲った首謀者は市長のテスであった。マフィアの威圧に負けて従うしかなかった、と彼は以前語っていたが彼とマフィアは元々癒着があったのだ。
目的は不明。
作戦実行時、彼は会議室にいる。
リプレイ
●
しとしと雨が降っていて、何かと傘が必要になる日々が続いている。
「お会計234円になります」
休憩中の社会人が多い午後のコンビニで、男は二人分のおにぎりを買った。愛想良く店員に挨拶をする。男はここの常連であった。
聞き飽きたチャイムを置き去りに外に出ると、傘立てに置いていたビニール傘をさして公園へと歩き始める。
道中、人の往復の少ない道に出た所で少年が一人、傘もささずにぼうっと佇んでいた。男は不信に思うも、無言で通り過ぎようとした。
「ここどこ?」
少年はそう言って、気怠げな顔を男に向けた。
「君、迷子?」
「知らないけど。早く帰りたい」
「お家への道、分かる?」
「うーん」
このままじゃ拉致があかない。交番に届けようとも思ったが、思いを踏み止まった男は無視を決め込むことにした。
「あ」
何処かに行こうとして、見計らったのか少年はぽつんと声を出した。
「思い出した。連れてって」
「え? 俺が?」
男の手を強く掴んで少年は歩き始めた。
少年が連れていった先はショッピングモールの地下駐車場だった。
少し若い父親と思われる男と、また若い女性が駐車場で少年を待っていた。
「よくやったぞ。上出来じゃ」
目標をしっかり連れてくるという大仕事を終えた英雄、クー・ナンナ(aa0535hero001)に向けて賛辞を送る。カグヤ・アトラクア(aa0535)は男に近づいて小声で言った。
「お主がドミネーターの関係者だという事は知っておる」
「ま、まさかこのガキ!」
クーは隊員の手を離した。御神 恭也(aa0127)はその間に隊員の口に猿轡を仕込んだ。
「カグヤ、どうする。このまま指紋のコピーを取るか?」
「それも一手じゃが、時間もかかる。このまま連れていくのが簡単じゃろうし、指紋のコピーで確実に取れるとは限らない」
剥離剤を使ってから瞬間接着剤で指紋をコピーする方法を御神は知っていた。
こんな物で機械を騙せるの? と伊邪那美(aa0127hero001)が疑問を口にするも、実証はできていないから頷けないのだ。
男は座り込んでカグヤに抵抗した。基地までは行かないという意思表示だろう。カグヤは仕方なく先ほど公園で拾った、尖った石を手に持った。
「仕方ないのう」
男も、何となく自分の手が受ける未来を想像したのだろう、額から汗が流れている。カグヤは手を取って地面に押し付けながら、石を力強く手に突き刺した。
駐車場に響き渡るくぐもった声。
「首を縦に振れば同行の意志を示したと認めるのじゃ」
血走った目でカグヤを睨みつける。カグヤは食い込んだ石を捻った。
あまりの痛みに男の手は痙攣した。
やがて首を縦に振った時、カグヤは傷のついていない方の手を取って男を立たせると、目を細めて言った。
「安心するのじゃ。後でしっかり治療してやる」
手が使えない男の代わりにビニール袋をクーに持たせて、カグヤ達は基地へと急いだ。
●
カグヤが戻ってきた時、ツラナミ(aa1426)は扉の前で待機していた。変装を終えていて、無事入手できたのだろう仮面を付けている。
「サヤ、出番だ」
線路上を歩いていた38(aa1426hero001)に呼びかけて、壁に凭れていたツラナミは共鳴した。
鍵の役割を担う男が指紋認証ボタンの上に手をかざすとロックは簡単に解除されて、扉が上に開いた。
「先に俺が様子を見てくる」
「任せるのじゃ」
ツラナミが一人入った後、扉は自動的に閉まった。
中に入ると、空洞音が嘘のように消えた。地下鉄の中は遠くを走る電車の音や人々の声が届いていたが、全く届かないのだ。
右手側に部屋が見えた。中には隊員が三人いて、それぞれ談笑している。ツラナミの姿を見ると、手で待てと呼び止めた。ガラスの向こうには様々な機材が置かれている。
「もう会議は始まってるみたいだぞ。遅刻かあ?」
「道に迷ってな。日本に来るのは初めてなんだ」
「じゃ、あんたが新入りのコミーなんだな」
白い仮面と荷物を奪われたあのマフィア員は不運ながら新入りだったのだ。
「会議ってどれくらい時間がかかるんだ」
「ざっと三時間くらいじゃねえかな。長いぜ、これから」
「どうも」
部屋にはマイクや消火栓、モニターがあった。モニターにはこの施設の映像が四分割で映されていた。監視カメラの類だ。
歩いて会議室を探していると、廊下の向こうから陽気な声が聞こえてきた。幼い子供の声だ。声を追いかけてみると、巫女服を着た身長の低い少女が歩いていた。黒いセミロングの髪だ。
手には包丁が握られている。
なんだ?
もう片方の手が赤かった。彼女は部屋の中に入っていった。深追いは危険だろうとツラナミは他の探索を開始した。
大凡の間取の理解が出来た。通信機を使って他のエージェントと連絡を取り、行動の合図を決める。
「監視部屋らしきものが入ってすぐ右手側の扉にあった。俺がその部屋の制圧を開始した所を突入の合図としたい」
「それなら、ウチも制圧に参加するッス!」
明快な声でシエロ レミプリク(aa0575)が言った。通信機越しに電車の音が聞こえてきたせいで、後々彼女がなんて言っているのか聞き取れなかったが、続きは「頑張るッス!」とツラナミは解釈した。
「分かった。部屋の中には三人の兵士だ。うち一人は、あのナリからすると隊長、くらいなはずだ。俺は警報機を真っ直ぐ狙う。シエロさんは奴らの気を引いといてくれ」
「おっけーッス! ウチの得意技ッスね!」
周囲に敵性の確認がない、監視カメラの場所も確認できた。監視部屋の近くまで来た所で変装を解いて、匍匐で進みながら扉の前で位置についた。
ツラナミは通信機のスイッチを入れて、扉をノックした。
「ん、なんだ?」
「コミーだ。少し聞きたいことがあって」
「おう新入りか。鍵は開いてるぜ、入りな」
ドアノブに手をかけた時、ツラナミは「開始」と小声で呟いた。
隣で自動ドアが開いたと同時に監視部屋の扉を開ける。中に転がりながら苦無を投擲し、隊長格と予想した男の脚に命中させ吹き飛ばした。
「くそ、侵入者か! お前、警報を鳴らせ!」
「無駄だッ」
警報機のスイッチに近づく腕はもう一つの伸びた腕に掴まれ、逆側に捻られてしまう。
「敵さん敵さーん! ウチもいるッスよ!」
計画通り、シエロも制圧に加わったみたいだ。ツラナミは警報機を破壊し、敵一体の背後を取ると飛鷹を両肩に突き刺した。
●
監視部屋の制圧を任せていた迫間 央(aa1445)はエージェントと手分けして隊員の捕獲を開始していた。
施設内に設立された部屋は中央の会議室を除いて隊員の寮だ。迫間は鍵のかかっていない寮を勢いよく開いて、油断していた隊員を捕らえていた。
「なんだ、なんだ!」
「HOPEだ。大人しくしろ」
「な、なんだよそれ! くそ、解けよッ」
大人しくしろ、という警告に従わない連中がほぼ十割。親切な警告も一度だけで、迫間は足の骨に罅を入れて使い物にならなくした。大人しくなった隊員はその部屋に置き去りにする。相手が油断していた、という隙が大きく制圧は素早く完了していった。
制圧を開始して三十分、最後の寮の制圧にはリィェン・ユー(aa0208)と二人で迅速に行うことになった。
「一つ一つの寮にはベッドが五個程備えられていたが、人数は一人や二人と少なかった。恐らく、ほとんどが会議室にいるのだろう」
「今はカグヤと御神が制圧に向かっている、二人だけじゃ難しいだろうな。リィェン、急いで終わらせるぞ」
「無論だ」
ドアノブに手を置いた迫間は一呼吸の間を置いて、勢いよく扉を開いて中に転がり込んだ。天叢雲剣を手にして、部屋の中央に座っていた者に呼びかける。
「HOPEだ、大人しく投降しろ」
異変にはすぐに気づいた。ツラナミは巫女服を着た子供がいると通信機で情報を伝えてくれたが、この子供が……。
趣味の悪い部屋だった。天井から人形か人間か区別の付かない手足が吊るされていて、子供は部屋の中央でぼうっと鏡を見つめていた。その目が迫間とリィェンの方に向かった時、黒すぎる目。
「カッコイイ人。綺麗な体をしているわ」
部屋の色が、他の寮と違っていた。薄赤いのだ。他の寮と違って、この部屋だけ異様だった。迫間とリィェンは横に並んで武器を構えた。
明らかに、他の隊員とこの少女は違う。少女はクリクリとした目で笑いながら茶色の箪笥まで走った。
「逃げるな!」
「逃げないよ。良い物を見せてあげるの」
箪笥の中からは成人男性よりも大きな鋏と、バイクのような機械音をたてるチェーンソーが飛び出してきた。少女はチェーンソーを背中に背負い、鋏を持つと左右の刃を大きく開けて、素早く迫間を挟んだ。
二つの剣を交差させて、迫間は刃を体に近づけさせない。本当に相手は少女なのかと疑いたくなる程に強い力が加わる。
リィェンはネビロスの操糸を少女の腕に向けて放った。少女は鋏を地面に落として糸を避けると、鋏を拾って今度はリィェンの首を中心に置いた。
「一旦外に出て標的を挟撃するぞッ」
刃が迫る寸前にしゃがんだリィェンは、後ろの扉から外へ出た。迫間もすぐに外へ飛び出し、左右に別れた。
「待ってよ」
チェーンソー少女は回転した残虐な刃で扉を破壊して外へ出てきた。左右にいる遊び相手を交互に振り向きながらどちらを狙おうか定めている。
息が荒く、興奮している。
「さぁ、死にたたくなけりゃおとなしく投降しろ。暴れればその分痛いぞ」
「できないの。残念だけど、できないの! 止まんないッ!」
血走った目と豪速の躯体がリィェンへ向かった。
斜めに構えられた神斬の刃とチェーンソーの歯が鬩ぎ合い火花を散らす。二人とも一歩も譲らない時の流れ。迫間はすぐに少女の背面へと移動し、脇腹を柄で突いた。
巫女服の中にアーマーを仕込んでいるのか? 硬い手応えがあった次に、少女は狙いを迫間に移し、神斬と逆に力を加えて体を回転させた。
●
隊員達の捕獲は信頼できるリィェンと迫間が担っている。御神は会議室の制圧以外を考えず集中できた。カグヤが後ろに控えると、御神は無言で頷いて扉をノックした。
「新入りか? 遅刻は程々に」
喋りながら扉を開ける男の声。いざ扉が開かれると、男は仮面を被っていた。三日月型の赤い口と幾何学的な両目。御神は男の首根っこを掴みボディブローを的中させた後、カグヤと息を合わせて内部へと侵入した。
「何者だ!」
「こちらHOPEじゃ。会議、よかったらわらわも混ぜてくれんかのう?」
「何? なぜ貴様らがここに!」
「教える義理もないのじゃ。ここにいる皆々に与えられるのは二つの選択肢じゃ。投降するか、痛みに悶えるか。好きな方を選ぶといい」
会議室は正方形の机に、四つの面に十個ずつ椅子がありほぼ埋まっている。正方形の中央は空きスペースになっていて、スーツを着た老年の男性が立っていた。彼は不格好な笑みを作って、カグヤを見ていた。視線に気づいたカグヤは、男性に向かって言った。
「テスと言ったかのう。色々話を聞く必要が出てきたようじゃ。善良な市長はもちろん、無抵抗でHOPEに連れて行かれるのじゃろう?」
「はは……、そうだな。ここではもう言い訳が出来ないよな」
座っていた隊員達は立ち上がって、二十四個分の拳銃が二人に向けられる。
会議室に置かれていたのは机と椅子、ホワイトボードだけではない。やや向こう側に見たことのない機械が置かれている。それを見つけた途端、カグヤの顔色が好奇心に変わった。
合図もなく、一斉に銃弾の軍団が御神とカグヤに降り注ぐ。御神はドラゴンスレイヤーを盾にして銃弾を防ぐ傍ら、カグヤは両手を広げ、まるでシャワーを浴びるかのように立ち尽くしていた。
全ての隊員の弾丸が尽きた後、唖然とする隊員。
「なんだあの女……」
誰もがそう思うだろう。一体なんだ? 数多の弾丸をくらいながら、苦痛を一切表さずに立ち尽くす女。
「そんな玩具でよく戦う気になれたもんじゃ」
隊員達を押しのけて、一人の茶髪の男が現れた。男はマグナム銃を二丁、構えている。一つはカグヤに、もう一つは御神に銃口を向けて。
「カグヤ、あの銃は生身で防げるとは思えんぞ」
「うむ。わかっておる」
男は薄ら笑いを浮かべた。
「こういう時、俺は決まって自己紹介から入るんだ。俺はマーク。さすらいのレンジャー」
髭面のマークは煙管を吸って机に腰かけた。
「さっき向こうの機械で改造したばかりでねェ。試してみたかった。丁度良い!」
西部劇のガンマンがするように、マークは横に銃を構えて二発発射した。御神は跳弾させないよう、避けずに剣で弾丸を斬った。カグヤは不敵に笑いながら、片手を前に突き出す。
銃弾はカグヤの手の平から腕の内部に入り込み筋肉を引き裂いた後、肩から後ろの壁へ抜けた。
「なるほどのう。出鱈目に改造した訳じゃなさそうじゃな」
改造されたマグナムの威力がどんなものか、カグヤは体で味わうと即座に治療した。
「あんた面白い趣味してんじゃねえか。俺は好きだぜ、だが敵同士ってのが災いしたな。お前ら、どんな手を使ってもいい。二人をひっ捕らえろ!」
隊員達は回り込み、二人を取り囲んだ。
向こうから近づいてきてくれるというのは都合が良い。御神はドラゴンスレイヤーで近くにいた隊員の拳銃を真っ二つに切り腹部を足で蹴ると大振りの大剣で斬りつけた。
背後から近づいてきた一人の隊員に肘鉄を食らわせて、斬る。撃ってきた敵は腕で弾丸を食らい、突き刺す。
●
六人程の隊員達が会議室から外へ逃げ出した。応援を呼ぶためだ。中には二人ほどマフィア団員もいて、出入り口まで走った。
赤い眼光。眼光ではないのだが、彼らには眼光にしか見えなかった。
「こっちにも居るのかよ、くそ!」
シエロはミョルニルを構えて立っていた。
「逃がさない。ここを通るなら、ウチの許可書が必要だ」
「ふざけた事言いやがって! お前ら撃て!」
六人は大雑把に狙いを定めてありったけの弾丸をシエロに向けていた。シエロは弾丸の多さに、後ろへ後ろへと追いやられていく。足が扉についた時、隊員の一人が刀に持ち替えてシエロの胴体に突き刺した。
シエロはその男の体を腕で掴んで空中に浮かすと、陰陽玉で左右から挟んだ。
腹部を貫く刃から、血が滴る。
――物足りん、束になってかかってこい!
ドミネーターといえども、一般隊員はやはり取るに足らない。ジスプ トゥルーパー(aa0575hero002)が威勢よく吠えた。
「いいぞ、お前らもっと撃て! さっきの女よりはまだ簡単だ!」
計画がうまくいっている時ほど、笑みを堪えるのは難しい。シエロはミョルニルを振り回して乱暴に地面を叩いて突撃した。埃の煙を散らしながら五人になった隊員達の中心部へ入りこみ、縦に横に左右に斧を振り回す。
足を銃弾が居抜き、横腹を刃が抉る。シエロは少しだけ怯み動きが鈍ったが、揺れ動く視界の中で目の前にいた一人を掴み斧で叩き伏せると、鋭い足で何度も切り刻んだ。
「くそ、こいつまだ倒れないのかよ! 増援を呼ぶか?」
「さっきから手応えはあるんだ、諦めんな! 一斉発射だ!」
四方向にいる四人分の銃弾がシエロの頭部や腹部に命中する。陰陽玉で幾つかの弾は防ぐが、四方から発砲される弾丸を全ては見られない。
体力も無限ではない。シエロは一瞬に賭けた。
銃弾から発生する衝撃に抗いながら二人の腕を掴み、人間瓦割り。残った二人の内、一人が刀へと武装を変えた。シエロはフリーガーファウストで一人を呆気なく撃破。残る一人となった隊員は、変わらず拳銃をシエロに向けていた。
「惜しかったな」
「くそ、くそ!」
「だが、てめえで最後だ」
重苦しい音。
廊下の向こうから、蜘蛛の巣に縛り付けられた何人もの隊員達を引きずってツラナミが歩いてきていた。
「安心しろ、殺してねえよ。……にしても派手に暴れたな」
「これがウチの平常運行だよ。チワワを相手にしてる気分だった」
「にしては、結構傷を負ったみたいだな」
シエロの体には幾つもの切り傷、銃創が出来ていた。
「あまりにもウチが強すぎて諦めて逃げられでもしたら困るからね。ちょっとは勝機を与えてあげないと。今日のウチは頭使える系バーサーカーなんだよ」
「なんだそりゃ。とりあえずここら辺の雑魚は制圧した。後はチェーンソーを振り回す巫女服の女と、テスとやら、会議室の連中を片付ければ終わる」
「ウチも手伝いにいった方がいいかな?」
「俺が行く。引き続きここの見張りをお願いする」
シエロはオッケーと返事をすると、監視部屋に入り、監視カメラの映像を見つめる仕事に戻った。
●
会議室の制圧は程なく終わる。カグヤは一人の隊員を狂気の眼で見つめていた。
「やめろ、見るな、見るな!」
絶叫をあげた隊員は力を失い、地面に倒れ込む。
マールは会議室から出ており、もう一人の隊長ヴェロッサの元へ向かっていた。ヴェロッサは二人のエージェントと遊んでいる。マールは一人の男、迫間に向けて弾を発射した。寸前で弾の軌道に気づいた迫間は、剣で弾丸を斬った。
「ヴェロッサ、ここは撤退だ」
「何言ってんの……? ここは私の家。どこにいくっていうの?」
「そうかい。じゃあ一人で頑張れよ」
戦略的撤退の意味を分からないお子様は、ここでバイバイするのがいい。迫間はマールを逃すまいと標的を変えようとしたが、その必要は無いみたいだ。マールの逃げ先にはカグヤと御神が既に立っていた。ツラナミも合流している。
「俺も男だ。負けられない勝負がある時、最後まで諦めずに戦い抜くのが本物の漢ってもんよ!」
マールは腕を交差させ、何度もトリガーを引いた。跳弾が重なり、背後から左右からエージェントに攻撃が向く。
瞬間、マールの周囲に花びらが降り注いだ。ひらひら舞い散る。舞い踊る。
気づけばマールの背後にいたツラナミの片手には刀が、片手には鞘が握られていた。そして、音を立てて鞘の中に刃が仕舞われていく。
「急所は外しといた。俺がエージェントで良かったな」
マグナムを落としたマールは、血を流しながら地面に倒れ込んだ。
「敗北を認めるってのも、漢の強さみてえなもん……か」
ツラナミの刃に弾かれた弾丸の感触が後頭部にぶつかる。俺の負けだ、マールは呟くように言った。
ヴェロッサはチェーンソーを轟かせ、走りながらリィェンの腹部を狙って突撃してきた。彼女はあまりにも興奮しすぎていて、獣のように舌を出していた。
他の仲間達はもう役目を全うしている。リィェンも遅れを取る訳には行かない。神斬の構えを変えて攻撃を躱し、回し蹴りを額に当てて剣をチェーンソーのグリップに叩きつけた。大きな衝撃で地面に落ちたチェーンソーに追撃するように、再び剣を叩きつける。その一撃がトドメとなって、芯が折れた。
「遊びも、終わりの時間が近づいてきたみたいだな」
「てめえ!」
突然言葉遣いの荒くなった少女は鋏に持ち替え、リィェンに突き刺した。
怒りの感情は、何かを忘れさせるものだ。少女は後ろから頭を抑えられていた。
「道具はそれに見合った用途と使い方がある。もっと頭か腕を使うべきだったな」
――尤も、貴女は人を見下す為の暴力に知恵や勇気なんて求めないのでしょうけれど。
少女からしてみれば、気づいたら意識を失っていたに過ぎないのだろう。
御神は少し離れて、改造器具を持ち運びできるエレベーターを探していた。施設のどこかにあるはずだ。
予想は正しかった。エレベーターは施設の一番奥にあり、横幅が広かった。
「少し遅かったみたいだね」
エレベーターの扉は開いていた。中にいた人物、テスがそう言った。
彼はいつの間にか会議室から消えていたのだ。会議室の中で隊員達が煙幕を使ったが、その隙に逃げてしまったのだろうか? 御神は閉じかけているエレベーターに向かって全速力で走る。
「また会うその日まで……。君達リンカーの実力を見るには良い一日だったよ」
僅かの隙間に、御神は拳を挿し込んだ。両手を使って、無理矢理こじ開ける。
突然、右手に激痛が走った。電気が走ったのだ。御神は耐えようとしたが、手が痺れて扉から離してしまった。扉が閉まるその時に、テスの笑い声が聞こえてきた。
――逃がしちゃったね……。
「まだだ」
御神はドラゴンスレイヤーで扉を破壊し、上へと上昇していくエレベーターの線に捕まって同時に上昇した。
動作が停止し、エレベーターの床に穴をあけて中に入り込む。テスは走って扉から逃げ出していた。
エレベーターは地上の見知らぬ倉庫に繋がっていて、出入り口からはシャッターが降りていた。御神は仲間にすぐに共有した。リィェンと迫間がすぐにエレベーターを使って倉庫に訪れたが、テスの姿は見当たらない。
――この倉庫は、武器保管庫のようね。
マイヤ サーア(aa1445hero001)は言った。武器だけでなく、防具も棚に陳列されている。
「思わぬ成果だな。ここも制圧すれば、ドミネーターに打撃を与えるだろう」
時間をかけて調査したが、隠れる場所はないのにテスはいなかった。一体どこへ消えてしまったのだろうか?
――この倉庫、酒も置かれるみたいじゃ。宴会の足しになるのう。
イン・シェン(aa0208hero001)はリィェンの眼を借りて、棚に置かれていた日本酒の文字を追っていた。
「いや、いる……」
インの言葉に耳を貸さず、リィェンは感覚を澄ませるために、眼を瞑った。
確かにいるのだ。奴は、どこかに隠れている。感覚がそう告げている。そう思った途端、倉庫のシャッターが徐に開き始めた。
――右じゃ、リィェン。
リィェンの感覚も、インと同じことを言った。リィェンは右に糸を張った。……感触はない。
「出てこい!」
シャッターは完全に開ききり、光が差し込んできた。リィェンが感じていた気配が消えた。もうどこにもテスはいないのだろう。
リィェンは一つの可能性を見出していた。まさか、透明化か? 神経接合マスクを用いてようやく気配を感じた。高度な技術を使っているのか。
逃しはしたものの、一つだけはっきりした事がある。テスはドミネーターと繋がっている。マフィア集団とも繋がっている。次に会った時は、問答無用で捕らえても問題ないという事だ。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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