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広告塔の少女~召喚者の魂~
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最終発言2017/10/17 07:41:05 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/10/16 22:53:12 -
【相談】関係者 控室
最終発言2017/10/17 20:51:20
オープニング
●ソングオブサマナーを知ってる?
ソングオブサマナー、今年の初めごろにリリースされ約半年で百一万本のヒットを記録した携帯ゲームである。グロリア社子飼いのゲームレーベルから出され、今では国内有数とまで言われた広告能力を駆使。
今では日本国内ではだいたい知ってる、くらいの知名度を獲得できた。
この土壌を早期に生かすべく、急ピッチでソングオブサマナー2の開発に着手。
ゲームシステムはそのままに、モンスターデータを大増量。
さらに前作では深めきれなかった主人公のストーリーを追加し。
『蒼天の章2』『業火の章2』『黄金の章』として売り出す予定だ。
現在リリースまで秒読みという段階になっている。
「2ってタイトルをつけるのがおかしい位に、ゲームシステムには手を加えてないのだけど、みんな満足してるし、廉価版として売り直す意味もあるから美味しいのよね」
そう遙華はティーカップをソーサーに起きながらそう言った。
「ソングオブサマナーはこれからの通信ゲーム業界を引っ張っていくタイトルになるわ。だから私はここで大掛かりなイベントを打つことにしたの」
それはソングオブサマナーの三作目へとつながる物語を現実世界で演出するという大がかりなもの。
これほどの企画を成功させるためにはやはり、リンカーの力が必要不可欠。
「ミュージカル半分、戦闘半分。24分構成のお話を四本分とるわ。ドラマみたいなものね、予算としては潤沢に出たからみんなの希望も通せるはずよ」
●ソングオブサマナー2とは
VBS機能を流用したゲーム。
プレイヤーはサマナーとなり、モンスターを召喚して遊ぶ。
歌声によって様々な種類のモンスターが召喚され、それを鍛えて友達や、敵モンスターと戦わせ遊ぶ対戦ゲーム。
そのモンスターはVBSによって実体化し、実際に触れることができるほか、アルスマギカのシステムを使うことによって、簡単なコミュニケーションが取れる。
召喚触媒の歌声は機械音源でも肉声でもよく、特別付録のCDからは特別なモンスターが召喚されるようになっていた。
今回は2という事もあり、モンスターデータが大増量。そのシステムも含めて説明するので聞いてほしい。
●モンスター傾向。
歌の種類によって属性が決められ、その属性条件を満たすモンスターが召喚される。
全256種
モンスターは六体まで『歌の欠片』と呼ばれるアイテムに収容できる。自由に呼び出せるが、厳戒させていられるのは、後述する冥王のせいで一体が限界。
《要素》
<音域>
高ければ高いほど、特化したモンスターが生まれやすい。低いとステータスがまんべんなくなる。
<曲調>
属性が決まる。属性は全部で13種類
【光 闇 木 火 金 水 土 空 悪 善 宙 歌 希】
<楽器の種類 数>
ようは複雑さ。オーケストラのように多数の楽器を使っているとスキル重視型になり。楽器や声が少ないと、ステータス至上型になる
<乱数>
さらに僅かばかりのランダム要素を含んでいるようで、同じ歌でも100回に一回はレアモンスターが召喚されるっぽい。
今回は撮影の都合上ある程度好みのモンスターが召喚できるのでプレイイングに記載してほしい。
● で、結局何をするの?
今回は、召喚したモンスターたちが暴走して主人たちに牙をむいてしまうという事件を、リンカーたち扮する、サマナーが解決するという物語になる。
その物語を役者として皆さんに演じてほしい。
話の流れは大雑把で穴あきなので、自分たちの設定を盛り込んでいただいて構わない。
『起』サマナーたちのモンスターがほとんど暴走してしまう。一番のお気に入りのモンスターのみが残り、しかも暴走したモンスターたちに襲われてしまうサマナーたち。絶体絶命化と思われたその時。光が舞い降りる。
『承』サマナー達の目の前に現れたのが『ティンゼル』ティンゼルは冥王を倒す以外に愛するモンスターを正気に戻すすべはないと語る。
ティンゼルの力により、通常召喚が可能となったサマナーたちは、歌を謳い戦力を増やしながら冥王の根城。世界の果てをめざし旅をする。
『転』冥王の配下との戦い。ここで冥王がモンスターの一種であると知り。配下は冥王の理想を遂げるために従っていると知る。
様々なやり取り、葛藤の中冥王は間違っていると告げるために、配下を撃破して先に進む。
『結』 冥王との戦い、冥王はその胸の内。サマナーがモンスターたちを大切にしないという感情を訴えながらも。サマナーたちはそれを否定。
冥王はサマナーとモンスターの絆を目の当たりにし戸惑いの中撃破される。
冥王は安らかな表情のまま歌となって消える。
・役回りについて
サマナーたち
自分たちのモンスターを召喚し冥王打倒を目指す者達。四人前後の人数が必要
モンスターたち
通常であればゲームシステムを介して召喚したモンスターはAI制御になるのだが。今回のモンスターは英雄たちが操作できる。(必ず操作しなくてはいけないわけではない)
なので能力者が英雄扮するモンスターを操り関門を突破していく形になる。
モンスターたちの戦闘スタイルなど考えていただけると嬉しい。
光神『ティンゼル』
新要素『希』属性持ち、光属性をことごとく吸収するという力を持つ。
性格に言うとティンゼルという種。モンスターにとっては数少ない人形でサマナーたちのガイド役になる。英雄が望ましい。ゲーム機形に偽装した幻想蝶などに収まると言った、人外じみた演出をしたいためである。
戦闘スタイルは演者が決めていただいて構わない。
冥王の配下
旅の途中でサマナーたちを倒すべく派遣されたサマナー。
冥王の配下は一度に多数のモンスターを召喚でき、さらに歌によってモンスターたちの理性を奪いステータスを強化できる。
サマナーたちを襲う目的については各々で決めていただいていいが。
一番扱いやすいのは、戦いでモンスターを失い。これ以上モンスターたちの命を落とさせまいと冥王に協力する、というのがいいだろうか。
こちら人数の関係上、サマナーと同数。もしくはサマナーより一人少ないくらいが望ましい。
冥王
新しい属性、悪を引っ提げたモンスター。
サマナーたちに倒されたモンスターたちの歌声データが降り積もり誕生した。モンスターたちを大切にしないサマナーたちに怒りをあらわにする。
共鳴したリンカー、設定はお任せ。強大な力でサマナーたちを苦しめる上に、サマナーと最も中のよかったモンスターたちでさえ洗脳しようとする。
多くて二人まで。
音響、カメラ。演出その他。
役回りに適さなかった能力者や英雄の方は裏方作業を手伝っていただけると嬉しいです。
あとは、主題歌とか歌ったり作ったりしてくれると嬉しいです。
解説
目標 モンスターとの絆を演じる。
今回は久しぶりのPV系依頼です(ドラマ系依頼かもしれません)
皆さんは与えられた役回りを自由に演じつつ物語を描いてください。
さらに余裕があれば、本編とは別に下記のEXシーンを演出してみてほしいです。
・EXシーン
下記の条件を満たすシーンも欲しいので演じられる人は演じて見ていただけると嬉しい
1 モンスターとサマナーのふれあい。喋れるモンスターなら語り合い
2 モンスターが暴走しかけるが、それをお互いを思いやる力で振り払う
3 ティンゼルの死亡シーン。ティンゼルはその身を光としてばらまくことでモンスターたちを強化する力を持つ。
どんなモンスターが召喚されるか、例を見たい人は前作。ソングオブサマナーを確認していただければと思います。
それではよろしくお願いします。
リプレイ
プロローグ
グロリア社控室、そこでは撮影に備えたリンカーたちが順次衣装を合わせ、メイク等々を行っていた。
たとえば、鏡の前に座っているのは『ロゼ=ベルトラン(aa4655hero001)』がそう。
本日音響を担当する『高野信実(aa4655)』がロゼの隣で台本に目を通している。
そんなロゼが唇に紅を塗り終えてぽつりとつぶやいた。
「つい勢いで入っちゃったケド…………げぇむって何かしら」
「えっ!」
信実はぱたりと台本を閉じる。
「そこからっすか!?」
そう、本日行われるのはソングオブサマナーというゲームのドラマ撮影。
ただ、ゲームというものに疎くとも、演技ならばわかるロゼであるが……それとは違い演技という事も知らずにつれてこられてしまった人間が一人いた。
『夜代 明(aa4108)』はライトに顔が這えるように瞳の周りにラインを引かれている。
それを見てちょっと面白い『アジ(aa4108hero001)』は、先ほどからくすくすとした笑いをもらしている。
「…………何処かの誰かさんは、今日がリンカー同士の模擬戦闘だって言ったよなー。何で俺メイクさせられてんのかな」
「アジくんが、ドラマ……夢じゃないよぅ……んふふふ」
「今から台詞覚えろとか……って聞けぇ!!」
メイクのために体を動かすことができない明。そんな彼の周りをアジは行ったり来たりしている。
その背後では『斉加 理夢琉(aa0783)』と遙華がお話をしていた。
「あの遙華さん。本当に大丈夫なんですか?」
「あら、何を心配する必要があるの? 今日のために過酷なレッスンを乗り越えてきたじゃない」
「音もばっちり合わせるっすよ」
そう真実が親指を立てると、理夢琉は楽譜で口元を隠す。
「が、頑張ります」
彼女が提案したのは今回の主題歌。
『絆の旋律』それは、はずむような高いピアノ音に時折重なる重い爆発の様な電子音。彼女の音楽への想いと、誰かと結ぶ絆をテーマにした作品。
その曲を作り上げるまで理夢琉がどれだけ頑張ったかを知っている『アリュー(aa0783hero001)』はうんうんと、感慨深く頷いていた。
そんな、てんやわんやの新人組だが、流石のベテラン組は落ち着いてる。
「主役はあくまでサマナー達。目立てば良いワケじゃない。引き算勝負よ!」
「お姉さんが役者として出るなんて珍しいよね。がんばろう!」
そう二人で台本を合わせているのは『アル(aa1730)』と『雅・マルシア・丹菊(aa1730hero001)』
入り口の近くで談笑しているのは『蔵李・澄香(aa0010)』と『八朔 カゲリ(aa0098)』である。
その目の前ではナラカが唸りながら台本に視線を注いでいる。
今回も彼女が出演者であるようだ。
「はい、じゃあ」
そして、ロゼのメイクが完了すると遙華が声をあげた。
「準備が整ったので、会場にいどうするから……ついてきて」
部屋を後にする遙華、その背後に『辺是 落児(aa0281)』が続き。
慌ただしく始まった今回の撮影会、はたしてどのようなムービーに仕上がるのか。
お楽しみと言ったところである。
第一章 旅立ちの朝
「さぁ、行こうか聖女様。私と一緒に」
『ウィリディス(aa0873hero002)』は『月鏡 由利菜(aa0873)』に触れる。すると世界を闇が覆い、混沌が包んだ。
彼女達が扮するはこの世界に混沌もたらす冥王。
ただその頬を一筋の涙が伝う。
その隣に立つのは明。彼はその力を指先に宿し、世界中に放つと告げる。
「さぁ。全てのサマナーを殺し尽くせ」
その時今までの歴史が全て、過去になる。
暴走を始める歌の魔物たち。
サマナーの手を離れて主人たちを食い殺し始めた。
「……離反か? 見た限り正気ではなさそうだが……まぁ、それも構わん」
男装の麗人『構築の魔女(aa0281hero001)』は背後から襲う斬撃に身を翻して対処。
一張羅である喪服のような黒のツーピースに血が滲んだ。
「これまでの礼だ、最高の戦いを提供してやろう!」
状況を瞬時に理解した構築の魔女は冷酷に、元々仲間であったモンスターたちも殺させようとする。
その冷酷で酷薄な猟犬『ハウンド』によって。
「待ってください!」
そんな彼女を止めに入ったのは銀糸の髪を揺らす『クラリス・ミカ(aa0010hero001)』
彼女の周囲には褐色の肌と銀髪を持つ聖女が浮かんでいるが、その瞳は悲しげである。
「この子たちは、正気を失っているだけなんです。だから」
「だからどうするというんだ? 殺さなければ……」
殺される。
そう断言できるほどに周囲には音の魔物たちが溢れかえっていた。
「それはとても難しいですね」
クラリスは自身のモンスターを撫でながら告げる。
「私のモンスターは特殊で、本来二人で一つのモンスター、その片割れが奪われたしまったことにより。ほとんどの戦闘能力を失っています」
「だめじゃねぇか!」
「洗脳されてあちら側に召喚されてしまったのです……早く取り戻さないと」
そうは言いつつも敵の層は分厚く道をあけてはくれなさそうだ。
どうしたものか、そう思案を巡らせる二人の背に、叩きつけられるような遠吠えが響いた。直後魔物たちは二人へと波のように襲い掛かる。
ただ、その戦列を切り裂いたのは二体の魔物。
それは銀の聖魔獣『アリュシオン』そして。
「アルさん!」
クラリスが見あげた天井から、朝と夜の使者が舞い降りる。
『ガリレオ』の肩に担がれたアルは飛び降りて。
ガリレオは主の無事を確認すると、歯車をばらまき操り、敵を屠っていく。
その戦いにハウンドも加わった。
機械仕掛けの猟犬は構築の魔女が使役していた他の猟犬へとめがけて襲いかかる。
その岩石すら砕く爪と。牙での高速接近戦闘。
だが、同レベルのモンスターとの戦いでハウンドはみるみる疲弊してしまう。
「……横やりが入ったか……まぁいい、現状を確認する」
そう構築の魔女が告げると、一人の女性が彼女に歩み寄る。
「それは、私から説明するわ」
「あんた、モンスターか?」
構築の魔女は目を疑った。これほどに神々しい存在を見たことがなかったからだ。
その女性はティンゼルと名乗った。
「共に満たされる世界を願う意思から生まれた存在の片割『導く存在』」
そんなティンゼルから溢れる光が周囲に反響し音となり帰る。
「歌の力が枯渇することはない。歌の力は無限なのよ、さぁ、歌って」
「いくよ! ガリレオ」
アルが口ずさむのは『騎士の歌』絆を歌い上げたその曲が、ガリレオを後押しして強化する。
ガリレオの動きはアルと正確にリンクして、敵を薙ぎ払っていった。
地面から歯車がつきだす。その身を朝として、光属性の攻撃を無効化する。
一体も殺すことなく、意識を失わせていく。
だが敵の数も多い。一斉に魔物たちは反旗を翻したのだ。
まだまだ沢山いる。
「敵が来るわ……備えて!」
ティンゼルが告げると上空から飛来する影があった。
直後サマナーたちの耳に届いたのは『喩え天が墜ちるとも』
その勇ましくも猛々しい音色と共に現れたのは。黄金の炎で身体を構成した鳥――炎の鷲。神鳥『ガルダ』
その炎はあまねくすべてを包みこみ、吹き飛ばしていく。
物理的な強打と、熱という魔法攻撃の二段構え。生きた攻撃スキルとなって敵を巻き込み、反撃とばかりに放たれた攻撃は全て焼き尽くす。
その強大な体故に懸念される回避性能を防御性能で補っている。
「手助け無用だったかな?」
そう笑みを向けるのはガルダの背に乗ったナラカ。
そんなガルダに脅威を感じてしまったのか、威嚇行動をとるアリュシオン。
「わあああ、アリュー、その子は敵じゃないの!」
あわてて理夢琉が止めに入る。
「すさまじいまでのステータス特化ですね、善属性……今までに存在しなかったモンスターです。」
クラリスが思わずつぶやいた。
そんなガルダに迫るのは同じく飛行属性を持つ魔物たち。
「ほう、お前たち、どこに行ったかと思えば……」
ナラカは眉をひそめた。
彼女の召喚するモンスターは全て飛行属性に偏っていた。つまりこの戦場羽ばたくモンスターたちはたいていナラカの配下の者達。
「身内の汚辱は私が注ぐよ。さぁ、喩え天が墜ちるとも正義を成就せしめよ」
その時ガルダの炎が一際強く燃えたった。
だがガルダが動くより先に動いた人物がいる。
「いきなさい、カナタ!!」
そう、空中を走り上るように少女が飛行モンスターたちの頭上をとる。
そして峰うち。
「火の属性。朝焼けに消える者『カナタ』そして」
地面からズロロロロと伸びる茶色い手。そして地面にモンスターを引きずり込むと縫いとめてしまう。
「殺さずに済みましたね」
そうクラリスが告げるとナラカはガルダの背から飛び降りる。そして魔物たちに向かって告げた。
「――済まぬ。だが汝等に誓うよ、この元凶を必ずや断ってみせると…………如何か、見ていてくれ」
これから先、連れてはいけない。そうナラカは考えたのだ。
「元凶? どういうことだ?」
構築の魔女が問いかける。
「それは、私から説明するわ」
ティンゼルがそう口を開く。
第二章 闇とはどこから出でるものか
ティンゼルは語る、全ての事の発端を。自身と別たれた闇の存在冥王の事。
「けれど……もともと力は拮抗していた。光と闇は対等な力関係だったけれど」
ある日決定的な出来事が起こった。
「もう一人の冥王が現れて、この世界のバランスは崩れてしまったのよ」
旅の道中、ティンゼルは秘められた物語を語ってくれた。
それは一人の聖女の話。
異界の存在。生まれながらに風の女神を宿す聖女。
自らの身に冥王を封じ、自らへ女神との調律の封印を施すことで異界を守った。
しかし時が経つにつれ冥王の意識が強まり、女神の意識は薄らぐ。
ある日突然自らの意志で封印を解き『こちらの世界』に現れた。
「そして手始めに、この子の片割れを奪ったのですね」
クラリスがツインエンジェル、その片割れを手の上で遊ばせながらつぶやいた。
「ごめんなさい、私の力がもっとあれば」
そうティンゼルは頭を下げる。
「いいえ、私が未熟なのが悪いんです」
クラリスはそう答える。先ほどの戦闘で見た通り、クラリスはその力の大半を奪われており、攻撃のために現界させるのがせいぜい。
それも仲間の歌を、その歌への想いを借りることくらいしかできなかった。
「冥王か……なにが目的かは知らないが素晴らしいな」
そうつぶやいたのは構築の魔女。
「……ん? あぁ、これだけの闘争を生む存在にとても興味が出た」
そんな旅の一行、世界をすくおうと立ち上がったサマナーたち。それを遠見の魔術により監視していたのが由利菜。
彼女は語る、いや、彼女の中のウィリディスが語ると言った方がこの場合良いのだろうか。
「……冥王の起源は、ひとつではありません」
――異界は無数に存在する。同種の存在でも、起源は異界によって違う。
ウィリディスの声が闇にこだまするとその声を受けて、赤いバラのように凛とした女性が唇をなぞって微笑んだ。
「そう言うことだったのね」
その女性は踵を返すとその部屋を後にする。
「あなたの達のために奴らを殺して見せるわ」
そうロゼは明を振り返る、彼はロゼには視線を向けずただただ悲しそうに佇むだけだった。
* *
そしてサマナーたちがたどり着いたのは冥王のねぐら、その入り口前。
「とまれ、誰かいるぞ」
そうナラカがガルダの上から指さすと確かに城門前に一人の女性が立ちはだかっている。
毛皮のストール、スパンコールを散りばめた黒のマーメイドドレス姿。ピンヒールを鳴らして、サマナーたちに歩みよる。
その周囲をガーネットの蝶が数羽飛び回っていた。
「あなた達が、敵ね」
全員が身構える。彼女もサマナーだ空気でわかった。
「ここから先は遊びじゃないわよ。仲良しごっこは他所でおやり」
次いで冥王上から響くのは彼女の音楽だろう。それに彼女は歌を乗せる。
すると隣に、夜空を押し固めたような煌びやかな外套纏う奇術師『ベイカー』と真っ赤な靴を履いた半透明な女『スカー・レッド』が召喚される。
「実力勝負よ、全力でかかって頂戴」
芯の通った発声で歌声を強めた。
それに真っ先に対応したのは構築の魔女。
「さぁ、奪え! 進め! 矜持を見せろ! 貴様らを世界と私に刻み逝け!」
放つのは影絵の大鷲、大型肉食獣の骨格キメラ。それらは命をいとわずただただ敵に突っ込んでいく。
苦痛や悲鳴を奏でる大鷲はベイカーの闇属性攻撃によって捕えられ影の中へ。スカーレッドの赤い靴は苛烈にステップを踏むと地面を燃やし尽くしキメラを炎で覆った。
だが。
「魔物など使い捨て、歌えばいくらでも補充がきく」
「そう言うのが、むかつくって言ってるのよ!」
ロゼはその言葉に怒りを示す。低音ながら甘い声を響かせ、さらに強く思いを込めてジャズソングを歌い上げる。
それは、叶わなかった初恋の相手と夢の中で踊る、という歌だった。
赤い靴から炎が噴出した。
その炎をツインエンジェルが防ぐ。そしてクラリスは見ることになる。
その炎の向こうに佇む魔法少女の姿。ツインエンジェルとして召喚されるようなデフォルメ姿ではない、変わり果てた彼女の姿。
「澄香ちゃん……」
直後上空から魔法弾が降り注いだ。
それはガリレオが展開したマントの向こうに消えていく。
アルの顔が険しい。
「そう言うことだったんだね、ティンゼル」
アルがティンゼルを振り返った。
ロゼの歌が苛烈さを増す。ある時は愛を囁くように、ある時は衝動を表すような力強いビブラートを奏でた。
「澄香ちゃん!」
直後魔法少女が金切り声をあげる。
さらに降り注ぐ弾幕が分厚くなり、サマナーたちは防戦一方に追い込まれてしまう。
その姿をナラカがじっと見つめていた。
クラリスは即座に『踏破の音~achieve~』を謳う。
眼前に召喚されたのは、ナシのような……妖精のような? 版権的にアウトな見た目の魔物である。
その魔物あまりにブラックジョークすぎるためか属性が闇であった。ブッシャーと魔法少女に汁を吹きかけ視界を潰す。
「怒ってるんだ」
アルが告げる。
「モンスターたちが起こってる」
「怒ってる?」
その言葉を華で笑う構築の魔女。
その力のすべてを解放し、鷹とキメラを衝突させる。それは砕けることなくまじりあい、やがて一つの生命となって雄たけびをあげた。
音と音の合成魔獣。禍々しいその姿は闇を超えて悪となった。
「あの魔法少女を倒さない限り逆転はない。殺すぞ」
「待ってください、あの子は、あの子たちはただ私たちに不満があるだけなんです」
「関係あるか! 大切、大切というのなら箱にでも入れて腐らせるといい」
キメラが魔法少女に襲いかかる、だがそれを庇ったのはロゼだった。
反撃の炎をガルダが食らい尽くす。
「闘争が心を磨き力を磨き魂を磨く。力を奮い壊し潰す恐怖と興奮を魅せる。奪わずに奪われずに生きている存在などいないのだ!」
「私たちの気も知らないで!」
ベイカーがキメラの真上から襲いかかりその体を粉々に砕いた。
「見てみろそいつらを! 強化だと? 十全の力も出せず哀れなだけだろう」
さらに召喚される構築の魔女のモンスターたち。
「哀れな哀れなお前たち……私なら悔いも残さずすべてを使い潰してやる……さぁ、選べ!」
「そうだな……我々にも貫かなければならない意志がある」
そうつぶやいたのはナラカ。ガルダの輝きが増した。
「犠牲にしてしまった総てに報いねば、その犠牲に背を向ける事と同義であるが故に!」
飛来する灼熱の塊はロゼ事すべてを焼き尽くそうとする。
当然それには魔法少女も含まれた。
ロゼの視界が黒く染まっていく。
次いで感じたのはわずかに感じる肌寒さ。
目を覚ましてみればクラリスが隣に座り、魔法少女に膝を貸していた。
歌が聞える。
それは聖女の声なき歌、それを彼女と心を繋いだクラリスが声に出して届ける。
題名は『存在の音~being~』
「良いのですよ。わたくしに不満があったのでしょう?」
クラリスの頬に魔法少女が手を伸ばした。もう片方の手には聖女が抱かれている。
「ぶつけて下さって良いのです。すべて受け止めますから」
「だって、わたくしたちはパートナーですもの」
「何でっ、貴方達は傷ついてまで戦うの? 何で悩んでもなお共に居ようとするの!?」
二人のやり取りを見てロゼがそう、声を曇らせながら絞り出す。
そんな彼女にアルが告げた。
「それを僕ら、魔王に示しに行くんだよ」
ティンゼルがクラリスの隣に立つ。
すると彼女の光がツインエンジェル両方に伝わって。そして。
二人の姿が元に戻った。
手を取り合って喜ぶツインエンジェルたち。
「そう、解放されたのね」
ロゼがつぶやく。するとロゼは目を瞑り。その体から力が流れるに任せた。
光の粒子に包まれるロゼ。
「嗚呼…………これで、貴方様の夢が、叶うのなら…………」
第三章 夜明けを迎える
その仰々しい扉を理夢琉とクラリスは押し開いた。
するとまず聞えたのは神器のパイプオルガンの輝かしい音色。
だが加えて寒々しい。それはなぜか。
きっと彼女の心が浸食されているからだろう。
グリフォンの鳴き声が聞こえた。
由利菜は玉座に腰掛けてそのグリフォンの頭を撫でている。
その眼前に佇むのはもう一人の冥王。
いや、この世界の冥王というべきか。
「ようこそ、正義の味方さん。俺が、冥王。……この混乱を止める気なら、戦え。俺は交渉に応じないし……人間相手だとコイツの抑えが効かないからな」
押し黙るサマナーたち。威圧感が場を満たした。
モンスターたちも震えている。
それは冥王ではなく、その冥王の全身にある痣への恐怖だった。
その痣はうねるとその上に三つ首の蛇が現れ、三首三様に怨嗟を撒き散らし始める。
「ウァ、アァァ」
「ヒッ、苦し……」
「痛イ痛イ痛イィィィァアアッ!」
「それが、モンスターたちの」
アルがぽつりとつぶやいた。その言葉に冥王は頷く。
「長い歴史の中、人の手で理不尽に殺されたモンスター達の歌声、憎悪が寄り集まった存在だ!」
それが自我を持たず冥王と同化し、そして。この事件を引き起こした。だから。
「お前たちサマナーは死ぬべきだ! 魔物たちのためにもな!」
直後動いたのは由利菜のグリフォン。
それだけではない。複雑なパイプオルガンの演奏から。エキドナ。テュポン。
様々なモンスターが召喚されてサマナーたちに食らいつく。
「私も動きましょう」
由利菜が立ち上がる。
「やらせません!」
立ちはだかったのは完全となったツインエンジェル。
だがそれもスィエラ。
構築の魔女、そして理夢琉もアリューを差し向けるが、眼前に立ちはだかる冥王に阻まれる。
彼が召喚するのはこのゲームでも最上級のレアモンスター。
悪を呑む龍『アジダハーカー』しかも闇属性から悪属性へシフトした特殊バージョン。
「憎悪を具現化している?」
ティンゼルが告げた。
その瞬間、アジダハーカーが量産された。
そうかれが作り出すモンスターはモンスターの憎悪を具現化する。冥王の配下より大量に召喚できるが、凶悪な性能ではあるが実際のモンスターより少し脆い。
ガルダが焼き払ってもあとから際限なく生まれ続ける。
「なんでこんなことを!」
理夢琉が問いかけた。その問いに対して冥王は憎悪を持って答える。
「決まってるだろ! 憎いからさ!」
冥王は力の限りに叫ぶ。
「誰も彼もがモンスターとニコニコやってるなんて思うなよ……!繁栄の為に使い潰し、私欲の為に甚振る奴らもいるんだぞ!」
たとえば構築の魔女のように。モンスターたちを道具としてしか考えていないものもいる。
そんなアジダハーカーの攻撃がアルに伸びようとした瞬間、ガリレオがその爪を、牙をしのいだ。
代わりにガリレオの体は軋み、あちこちに歯車が飛び散った。
だがそれでもアルは冥王へと視線を注いでいる。
「モンスターを雑に扱う人間はいる。そこは同じサマナーとして謝らせて?」
けれど、そう握りしめた拳を突き上げてアルは高々と告げた。
「確かにこの子達は戦いの道具じゃない。共に戦う大事な友。でもねぇ、皆を洗脳し操った君こそ、この子達を大切にしてないんじゃないかい!?」
「ああ、そうだなお前たちと同類かもしれない。だが。だがそうしなければ、どうやってこの運命を変えられる!」
そう悲痛に叫ぶ冥王がアルには泣いているように見えた。
直後殺到する、誰もが死を覚悟する。理夢琉は目を閉じその瞬間を舞った。
だがその瞬間は訪れない。
「……でも、やり方を間違えただけで彼等を助けようとしてくれたのは分かる」
アリュシオンが阻止すべく体を滑り込ませる。
「お前らは人……主が好きなのか? ……ごめんな、もう止まれない」
次の瞬間その体が吹き飛んだ。
「アリュー!!」
「な、人間を庇ったのか」
唖然と冥王は立ち尽くし全ての攻撃を忘れて涙を流す少女に見入る。
その銀色の獣を抱えて少女は涙した。
「そんな、行かないで、アリュー。私をおいていかないで。だってあなたは」
私だけの……
そうつぶやいた声に乗せて。歌が響いた。
理夢琉の作った歌『絆の旋律』
直後光が舞った。銀色の獣はその体を溶けさせ代わりに、髪の長い男性へと変わっていく。
「絆の糸を引き合い旋律を奏で……声重ねて歌いましょう」
直後光がフロアを覆った。
「絆の旋律発動!」
その光はあらゆる闇を駆逐して。憎悪の魔物たちを倒していく。
「アリュー」
「最後まで理夢琉が呼んでくれたから、戻ってこられたんだ」
そう理夢琉が胸に飛び込むとその頭をアリューはなぜた。
そして歌声を衝撃波に変換して放つ。
「これが」
茫然とつぶやく冥王。そしてそれに告げるティンゼル。
その体をアルは抱き寄せた。そして優しく囁くように告げる。
「ありがとう冥王さん。
一人で抱え込ませてしまった。
つらかったね、ずっと……」
「ああ、辛かった。ああ」
そう冥王の体からやんわりと力ぬけていく、その時。
「これが絆の力よ」
その時である。
矢のように飛来した由利菜がティンゼルの腹を槍で貫いた。
「光神よ、あなたの役割は終わりました」
そう不敵に微笑む顔は邪悪に染まっていて。
――我が望むは世界の融合。この世界で力を取り戻したあと『門』を完全に開き、この世界の全てを我が世界に取り込む。
「いや、それはもうやめよう」
そう由利菜に告げたのは他でもない冥王。
瀕死のティンゼルを制して一歩前に踏み出した。
「もう、もういいんだ。見たいものは見られたから」
「何を勝手なことを……う。これは」
顔をゆがめる由利菜。いや彼女の中の本当の由利菜が目を覚ましたというべきか。
顔をしかめ動きを止める。だから冥王はその手を取って邪悪な魂だけをすくい上げた。
「こいつは俺がもらっていく」
冥王がそう告げると、周囲で停止していたアジダハーカー達が冥王を向く。
「最後にいいものをみせてもらった」
ありがとう。
その声は押し寄せる闇の波の中に消える。
ただ、サマナーたちは見た。
憎悪の表情しか浮かべなかった冥王の最後の笑顔を。
エピローグ。
冥王が倒れたことで、自分のモンスターたちと対面を果たし、喜ぶサマナーたち。
そんな彼女らを背後にティンゼルは一人バルコニーに出た。
朝がやってきている。長い夜だった。
そう思って空に手を伸ばし謳うティンゼル。
夜明け前の丘で歌う顔は穏やかだ
「この戦いは、朝を迎えるための夜 明けるための夜。
これから貴方達の時間が始まる。
よい夜明けを」
そう願って。ティンゼルは朝の光の中に溶けて消えた。
本当のエピローグ
そんな彼女をバックに主題歌が流れエンドロール。その最後では次回作発売決定のもじ。
そして、新システム「既存のモンスターを進化させる『ティンゼルラストソング』が実装される旨が発表された。
その完成試写会を見て明は溜息をつきアジを見る。
「酷いよぅ。自分が笑えないからって急にアジくん主体にして……」
「休憩中、俺だけ隅で台詞覚え、忘れねぇ……」
どすの利いた声で威嚇する明
「アッゴメンナサイ」
だがその脳裏にはあの笑顔がずっと張り付いていた。