本部

研究所襲撃依頼

渡橋 邸

形態
シリーズ(続編)
難易度
やや難しい
オプション
参加費
1,300
参加制限
-
参加人数
能力者
8人 / 4~8人
英雄
8人 / 0~8人
報酬
普通
相談期間
7日
完成日
2017/09/20 20:58

掲示板

オープニング


「この研究所ももうダメか。どうやらH.O.P.E.にかぎつけられたようだ」
「ふむ? それはどういうことですかな、ミスタ」
「以前廃棄した臨時研究所、そこから繋がっている地下通路がどうやら制圧されたらしい。ひどく無能な同志がいたようだ……まさか、痕跡を残すとは。やれやれ、これは参ってしまったね」
「どうするんだい、ミスタ」
「……この研究所にもじきに奴らが来るだろう――まあもっとも、来た奴らはただで済ませる気はないがね!」
「これは……! 飛行型と地上型が20。新型が10……改造従魔が50も? いくら元がミーレスとは言え、せっかくの研究成果をこんなに放出するとは!」
「愛しい愛しい私の子たちさ。特別優秀ではない子たちだが……万が一の時の足止めにはなるだろう――さて、私たちは資料をまとめ次の拠点へ移動する準備を行うとしよう」
「製造プラントなどはどうしますか?」
「中身の破棄を行った後は破壊してしまおう。それだけは見られたら面倒になってしまう……面倒は嫌いなんだ」
「了解ですぞ、ミスタ――いやあ、これは楽しい祭りになりそうだ」


「以前調査してもらった地下通路、そこからしばらく進んだ先にステルス状態の研究所が発見された」
「かなり大きな施設だ。H.O.P.E.としては、洞窟施設を調査したときに現れたらしい愚神たちの拠点である可能性が高いと見ている」
「敵拠点の規模は不明だ。しかし今まで観測できなかったほどの高いステルス、遠目に確認できた十分すぎるほどの防壁などの存在。そしてその大きさから相当な防衛設備が施されている可能性は高いだろう」
「従って、今回の依頼内容はごく単純だ。研究施設を襲撃し完全に破壊してほしい。内部および外部で敵勢力に遭遇した場合は敵がどのような存在であれ討伐も許可されている」
「あんな非道的な実験を行う連中を、野放しにはしておけない。……頼んだぞ、エージェント」

解説

●目的(数)
・研究施設の完全破壊(1)
・内部の敵(50)

●舞台
・研究施設
 ステルスが仕掛けられていた
 かなり大きい
 外には大きな防壁などがあり外部からの攻撃で破壊は不可能
=============以下PL情報=============
●目的
・研究施設破壊には爆弾を用いるため定められた位置にセットする
 爆弾のセットには1分ほどかかる
・爆弾を勝手に起爆される危険があるため内部の敵はすべて殲滅が条件となる
 同エリアに敵がいる場合、爆弾のセットはできない

●舞台
・研究施設
 発見には工夫が必要
 複数階層および複数棟あり
 内部には従魔などが解き放たれている
 通路はやや広めに取られている(4m×5mていど)

●敵
・飛行型
 卵形の体から腕と翼が生えた異形の従魔。
 ライヴスによる攻撃と状態異常を起こす攻撃を行うようになった。
 基本は空中にいるが翼を叩ききって落とすことが可能。
 地面に落ちると腕で這って移動するため移動力が激減する。

・地上型
 犬を模した姿の従魔。
 ライヴスを反射・攪乱する霧を発生させることができる。
 通常攻撃は前脚から生えた鋭い爪と牙を用いる。
 元が獣であるため火に弱い。

・新型
 上記2つを掛け合わせて作られた従魔。
 犬から翼と人間のような腕が生えた奇怪な見た目をしている。
 鋭い爪と牙を用いた攻撃、ライヴスによる攻撃、状態異常などすべてを使える。
 地上型と同様に霧を出すことができ、この霧は非常に重く対象にまとわりつく。
 その代償として範囲は非常に狭くなった。(対象1名の行動阻害をする程度)

リプレイ

●突入作戦―Aチーム―
「光学迷彩って言ったって透明になれるわけじゃないんだからさ、よく見ればわかるって」
 探索開始から少したった頃、志賀谷 京子(aa0150)は唐突にそう言い放った。今回のターゲットは施設そのものだが、事前の情報で光学迷彩および電波妨害の存在が確認されている。それに対する物だ。
「そーだな。こーがくめいさいがどーとかっての、さっぱりだけど、よーするに擬態してるよーなもんだろ? だったら目に入る光の質そのものをかえてやりゃーいーんじゃねーか?」
『はあ……間違ってはいないけど、だからってそれはないわよ』
 その意見に対して浅葱 吏子(aa2431)は同意しつつ自らの意見も述べる。その目はライヴスによってうっすらと光っていた。相方の宇治橋憐厳姫薄緑(aa2431heroo001)はその様子に呆れた様子も隠さずに突っ込みを入れる。
『今回防壁の存在は視認できていたようですからね、大まかな場所がわかっているならその位置を探索するだけですね』
 最後にアリッサ ラウオティオラ(aa0150hero001)が補足を入れるように行った。
「ステルスの施設、危険な実験、爆弾……ゾンビゲームとかみたいな展開だな!」
『映画の見過ぎだ。油断するんじゃない』
 沖 一真(aa3591)がわざとらしく浮ついた声を上げる。灰燼鬼(aa3591hero002)はそれを理解しながらあえて注意を促した。
 一真は気分を軽くするための発言を流されちょっと傷ついた顔をするが、すぐに気を取り直して探索を開始する。
 それからしばらくして、微妙な違和感を発見した彼らは接近してそれを確認した。
「おっ、みーっけ」
『ふむ、あると分かっていれば、見つける方法はいくらでもあるか』
「でも入り口らしいものは見当たりませんね」
「ふむ……となると、だ。爆破するか」
 ペタペタと見えない壁を触りながら、一真がそう口にした。
 他のメンバーも時間が惜しいのか、特に否定することはなかった。
 壁面に爆弾を接着すると、起動して距離を取る。ライヴス式ではないため能力者を傷つけられるかと言ったら微妙だが、安全のためである。
 直後、盛大な爆音と共に壁ががらりと崩れた。
「おー、なかなか派手にいったな!」
『1回ではさすがに無理でも何度かに分ければさすがに突破できるか』
「これで道は拓けたね」
『そうですね、先へ進みましょう』
 大人が容易に通れるほどの大穴を見てそれぞれが感想を述べる。
 穴からはある程度遠くが見渡せた。内部の施設や灰色の天井……そして遠くから急速接近してくる従魔も見えた。
『盛大にお出迎え、だな』
「数はあまり多くないですけどね」
『2……いや、3ですね』
「……来ますッ!」
「これが……改造従魔……。むごいです……これが人のやることなのですか……」
 三木 弥生(aa4687)は初めて見る改造従魔に息をのんだ。どう見ても自然な姿とは思えなかったからだ。そんな相方に向かって両面 宿儺 スクナ/クシナ(aa4687hero002)は鋭く言葉を投げる。
『可哀想、などと思ってはいけない。もし攻撃が鈍れば、君の大事な大事な御屋形様を危険に晒してしまうぞ』
「分かっています! 私は何度も従魔を倒してきました。たとえどのような姿でも、御屋形様に害をなすのであれば遠慮はいりません!」
 敬愛する主のために自身を奮い立たせた弥生が飛行型従魔の翼を的確に穿った。
「……そこッ!」
 翼を失った従魔は墜落し、その場で腕を振るいもがく。
「よしっ、今です!」
 もがいている従魔に一真の追撃が放たれる。
「そらァ!」
 2体いた飛行型のうちもう片方を京子が仕留める。
 残された四足型は戸惑ったような様子を見せつつ、霧を発生させて逃げようとする。
 そこに吏子の手によって電柱が叩きつけられ動きを封じられ、京子と弥生の狙撃で仕留められた。
「ふぅ、これで全部でしょうか……それにしても、改造従魔……。いつも倒してる相手だったとしてもこれは――」
『ああ、いけ好かないね……生まれながらにして異形の姿をしているのではなく、生まれた後から身体を弄られるなんてな』
《アァ……ウラメシイ……ノロイコロシテヤリタイ……》
「感傷に浸っている暇はなさそう。向こうから従魔が接近してるわ」
 改造従魔に小さな感傷を抱いた弥生、スクナ/クシナが言葉を交わしていると、京子が遠くを見て小さくため息をついた。
「次から次へと……きりがねえな。それだけ向こうも必死ってことか?」
「敵は全員倒す……それで、こんな些事はさっさと終わらせるとするか!」
 彼らは従魔を蹴散らしながら施設内へと侵入していった。

●突入策線―Bチーム―
「ふっ……っと、返ってくるまで結構早くなってきたな」
 ソナー代わりに飛ばしていたブーメランをつかんで、赤城 龍哉(aa0090)は言った。
「□□――□□」
『だいぶ近づいてきたみたいですね』
 同様に、辺是 落児(aa0281)と構築の魔女(aa0281hero001)もエコーロケーションで居場所の特定を図っていた。反射する音や赤外線を用いた原始的な探索方法は光学迷彩に踊らされることなく真実の道をたどっていく。
「あ、あそこじゃないかな。なんだかゆがみがあるけれど」
「ふむ、それではちょっとこの石を投げてみますか」
 龍哉が測り、落児が導いた道の先に小さな違和感を見つけた楠葉 悠登(aa1592)が声を上げる。
 九字原 昂(aa0919)はゆがみの確認をするため近くの路地に落ちていた小石を拾い上げ、綺麗なフォームで投げつける。
 それはまっすぐ歪みへと向かっていき、当たったと同時に音を立てて崩れ去った――小石が当たった壁の方が。
「……あ」
『ヒュー、石で壁を壊すなんてクールだな昂。やるじゃないか』
 ベルフ(aa0919hero001)が昂の起こした出来事を見て小さく口笛を吹く。
 それに対して昂は焦りながら弁明した。
「いや、違っ。そんなつもりでぶつけたわけではなくて……!」
「あー、もしかして俺が投げてたこいつが何度もぶつかったからとかじゃないか?」
『それが一番納得できますね。それにしても、外部からの破壊ができないものだと思っていましたが』
 焦る昂をかばうように、龍哉が自らの考えを述べる。それに追随するように構築の魔女も同意した。
『さすがに何度もAGWをたたきつけられては壊れるか』
 ナイン(aa1592hero001)も頷きながらその様子を見る。
「なんにせよ、都合がいいし。この穴を広げて中に入ろうよ」
 悠登の言葉で気を取り直し、穴を広げて中へ侵入する。彼らの眼前にはいくつかの連絡橋でつながれた建物が見えた。
「なんてーか、研究所って言うよりは学校か何かみたいに見えるな」
『天井がある……ドーム状の壁を設置することで光学迷彩による周囲への擬態を行い、姿を隠していたのですか』
『なるほど、確かにそれならば視覚的に見つけることは難しく……森の中にある木々を模した映像を精査するのは骨が折れますわ』
龍哉、構築の魔女、ヴァルトラウテ(aa0090hero001)の3人がそれぞれの感想を口にする。
「ここらへんにかけられてるジャミングも、山の中だから電波が届かないだけって言われても否定できないな」
「用意周到な相手だ……わかっていたことだけどね」
 昂と悠登もまた周囲を見渡しながら意見を述べていく。そして警戒するように周囲を見回していると、構築の魔女と悠登が接近する影に気がついた。
『……! どうやら、相手もこちらの侵入に気づいたようです』
「四足タイプと飛行タイプ……1体ずつか!」
『厄介な相手――ですが、既に対策済みです』
 構築の魔女が述べたとおり、既存タイプを相手にするにあたって、彼らは既に対策を打ち立てていた。何度も戦い、十分に情報を得ていたが故にできることである。
 ブーメランに射撃、そして鋼糸が動きを阻害し、そこに悠登の突きが刺さる。
「楽勝だったな」
「何度もやりあってるからね」
『構築の魔女も言ってたが、対策はばっちりってわけだ』
『それでも新型がいないとも限りません。注意しながら進むとしましょう』
 最初の遭遇戦は十分な対策により危なげなく終わったが、作戦はまだ始まったばかりだ。彼らは今一度、気を引き締めて研究施設の奥へと進んでいく。

●破壊作戦―Aチーム―
「ほっと……これで何体目だ?」
 一真は揺らぎと共に四足の従魔を切り捨てたところで同じチームのメンバーに問うた。
「私たちが倒したのは13体です」
『今のところ既存のタイプしか出てきてないみたいだね』
 それに対して答えたのは弥生とアリッサだった。
「それにしても、なんで1体ずつなんだ?」
 周囲を警戒しながら、ふと吏子が疑問を口にした。それは侵入してから今までずっと考えていたことだ。
「そうね……複数出した方が相手の消耗を誘えるのは分かるはず……」
『……何かを狙っている?』
 その疑問を今まで意識していなかったメンバーは、何を考えているか分からない敵に対して警戒をやや強める。
 やや空気が重くなったところで疑問を呈した吏子が咳払いをし、もう一度口を開く。
「んー、よくわかんねーけど。とにかくここを破壊するのが優先だよな?」
「……そうですね。今はとにかく奥へと向かうことを考えないと」
 それに乗ることにした京子が話題を変えるようにして周囲へ視線を走らせた。
「それにしても、気味の悪い施設……」
『ええ、先ほどから何本もシリンダーを見てますけど、中身は――』
『それ以上はいいよ。ただでさえ気分が悪いのに余計気が重くなるだけだ』
《アア、ウラメシイ……》
『……そうだね、今回ばかりは限界だ。とても許せる相手じゃない』
 スクナとクシナが強い恨みと嫌悪感を表しながら吐き捨てた。
 嫌悪感を隠さない各人を見ると、一真は音頭を取るようにして口を開く。
「……一刻も早くこの施設を破壊するぞ。H.O.P.E.が破壊作戦なんて打ち出すとは、なんて思っていたけど。確かにこんな施設はあってはいけない」
 彼の言葉に同意を示したメンバーは今まで以上に熱を入れて探索を進めていく。そうして歩を進めていくと、やがて大きな施設の扉までたどり着いた。
「うん……? 結構大きな扉ね。もしかしてここが最深部かしら?」
「その可能性は高そうです」
「それじゃ、さっさと爆弾を設置して脱出しようか」
「さんせーだ。こんなところ、早く出たいしな!」
「それじゃ、開けるわ」
 京子が率先して前に出て、扉横の端末を操作した。すると重苦しい音を立てながら仕掛けが駆動し、扉は左右へと分かれていく。
「これは……また……」
「なるほど、そういうことですか」
「今まで敵が少なかったのは、ここを守るためだったってことだな」
 中にいたのは2桁を超える従魔の群れ。奥の方には2つの扉が見える。どうやらこの従魔たちはそこを守るために配置されたようだ。
「見たことがないのまでいる……これはさすがにきついね……」
『……どうします?』
「やるしかないだろう、こいつらを倒さなきゃならないのに変わりはないんだ」
「御屋形様、支援します」
「ああ、任せた」
「私は飛行型を」
「足止めと盾役なら任せろ!」
 敵勢力を確認した彼らは即座に陣列を組み、従魔たちと相対した。
「さて、と。なんとかなるといいけど」

●破壊作戦―Bチーム―
「ぜんっぜん敵が出てこないな」
『不気味ですわね……』
 龍哉たちは施設内の静寂に薄気味悪さを感じていた。
『これがいいことなのか悪いことなのか、わかりかねますね』
「□□…………」
「今いないってことは、後から出てくるってことも考えられるよね」
『ああ……胸騒ぎがするな』
 敵勢力がやってくることもなく施設内部を進めているのは何か罠があるからではないのか。何か嫌な予感が、彼らの脳裏をよぎる。
 そのとき、ラジオ端末を弄っていた昂が顔をあげた。
「ノイズが強くなってます……おそらくこの先の施設がジャミングの発生源ですね」
『電波とライヴスを妨害する設備、ね。鬼が出るか蛇が出るか……』
 息をのむ一同。非道な道を行く敵が仕掛けた施設がどんなものであるか、彼らには想像がつかなかった。
 そしていざ部屋の戸を開けると、部屋の中は円柱状のパーツが中央に鎮座し、そこからいくつものケーブルが伸びているだけだった。
「これが妨害施設、か?」
 訝しげに機械を見ていた龍哉は、じっくりと見ていると中に何かが浮かんでいることに気がついた。
「四足タイプをコアパーツとして使っているのか!」
 機械内部に浮かんでいたのは四足型の従魔だった。その身体にいくつもの管を取り付けられ、無理矢理能力を行使させられているように見える。これこそが大規模なジャミングを行っていた物の正体だった。
『なんてことを……従魔を改造するような相手に、倫理観を求めても仕方ないのかもしれませんが。こんな、道具のように……』
「壊しましょう。――それしか、やれることも、やることもありません」
 昂は鋭く前を見て、冷たく言い放った。その表情は常のような笑みを浮かべることはなく、能面のようにまっさらであった。
 彼の言葉で残りのメンバーも覚悟を決め、前を向く。
 それと同時に何かに気がついたように落児が声を出した。
「■■」
『はん、ようやくお出ましってか。随分と重役出勤じゃないか』
 天井を壊し、翼を羽ばたかせながら何かが降りてくる。それは今までの飛行型とは違いしっかりとした四肢を持っていた。重苦しいライヴスと霧が今までの従魔とは根本から違う代物であることを示している。
『見たことのないタイプ……新型か!』
「敵はこいつだけ、か。さっさと片付けるぞ!」
 敵に狙いを絞らせないように四方に散り、攻撃を開始する。それを見た従魔はあまり大きく動こうとしない構築の魔女に対して大きく口を開けた。
《■■■■――ッ!》
 そして咆哮と共に周囲の霧を散らし口からスモッグにも似た物を噴出させた。それは非常に重く、捕らわれた構築の魔女たちの動きを大きく制限する。
『くっ……』
「待ってて、今解除する!」
 直後ライヴスの光が降り注ぎ、霧を晴らす。同時に構築の魔女はその場から飛び退ると、反撃とばかりに翼を狙い撃った。1撃目は当然のように回避されるが、好きが大きく2撃目を被弾。直後に追尾してきたブーメランが完全に翼を刈り取った。
「今だァ!」
 地上へ墜落し一時的に動きを止めた新型に対して全員が攻撃を加える。止めどなく行われた猛攻に、ついぞ反撃の機会もないまま従魔は倒れ伏した。
『新型だけあって見たことのないパターンがありましたが……さすがに多勢に無勢でしたね』
「妨害装置、停止――内部の従魔の消滅を確認」
『限界まで酷使してたってのか、こいつを』
『ひどい奴だとは思っていたが、ここまでとはな』
「……はやく、犯人を止めないと。これ以上好き勝手させるわけにはいかない」
「同感だ」
 新型を倒した彼らは即座に妨害装置を止め、次の場所を目指す。
 そうして歩いて行くと、やがて重厚な扉が彼らを迎えた。
「重厚で巨大な扉、ですね」
「あからさまにこの先が重要拠点だって言ってるようなもんだぜ」
 それを目にした龍哉が軽口を叩く。
 同時に中から火薬の炸裂する音がかすかに響いた。
『……! 内部から……これは、銃声でしょうか?』
「戦闘中ってこと?」
『現在侵入しているのは俺たちくらいで、相手は撤退してると見なした方がいい以上、答えは出ているな』
「よし、それじゃあ行くぞ!」
 龍哉は手にした武器で力任せに扉を叩き斬る。
 そして中へと飛び込んで声を張り上げた。
「待たせたな、助太刀するぜ!」

●合流
「Bチームか? どうしてここに?」
 群がっていた四足型従魔を切り捨てながらBチームのメンバーが接近すると、盾に徹していた吏子が真っ先に疑問を口にする。
「基地の最深部を目指して進んだらここにたどり着いたんだ」
「どうやら最終地点は一緒だったみたいね」
「正直助かったぜ。さすがにこの数は4人で相手をするには骨が折れるからな」
「それでも無理とは言わないんですね」
 一真の言葉に昂が失笑する。
「俺たちが無理だって言ったら、じゃあ誰がやるんだ……――ってことさ」
「それもそうだね……。改造従魔――かなりの数を置いていったみたいだが、ここですべて終わらせる!」
『皆さん、お話はそこまでです。続きは、彼らを倒してからするとしましょう』
 全員が頷き、総勢8組のエージェントが陣を組んで敵に対して攻撃を開始した。

●悪夢の施設に終わりを
「思った以上に数がいるな」
『こちらから踏み込むと逆に手間かもしれませんわ』
 戦闘開始からしばらく時間が過ぎ、敵の数は大きく減っていたが未だに勢いは衰えない。それは新型の存在も少なからず関係していた。
「時間がもったいねぇ。片っ端から片付けるぜ!」
「ああ、同意だ。こんな研究所、さっさと破壊しなきゃ次が生まれる……それだけは、まっぴらゴメンだな!」
 一真は武器を仕舞い、特殊なドールを取り出すと声を張り上げ指示を出した。
「よし、行け――"弥生"!」
「は……いっ!?」
『弥生が2人』
「片方はAGWだけどな」
「冷静に突っ込んでる場合か」
 思わずといったように反応を返す弥生に一瞬場が弛緩しかけるが、すぐに締められる。
 AGWオートマトン"アルレッキーノ"は弥生を模しており、あまりに精巧であるためか敵も見分けがつかず混乱しているように見えた。
「よし、どうやら対象を絞り切れてないようだな!」
『今の隙に仕留めさせていただきましょう』
 動きを止めた新型に対して弾が降り注ぎ、地に落ちると同時に爆弾矢と斬撃が襲いかかる。
「まず1体!」
「次、2体目……」
「そして、これで新型はラストだッ!」
 それぞれ一真、龍哉、悠登が仕留めると群れをなして襲いかかっていた四足型の動きが悪くなり始める。
「残すは既存のタイプだけね」
「このままの調子で……ッ!」
「おう……押し切らせてもらう!」
 先ほどと同様に、糸が。柱が。弾が。矢が。そして斬撃が残りの従魔を蹴散らしていく。
「この一撃で終わりだ……!」
 そして悠登の放った爆弾矢が最後の1団を飲み込み、完全に消滅させた。
『やれやれ、随分と手間取ったな』
「だな。だけど、道中の敵は全部倒してきたから、こいつで本当に仕舞い……だな」
『あとは爆弾を設置して撤退するだけ、ですわね』
 敵がいないことを確認し、京子が扉を開ける。
 奥にはいくつものコンピュータが平行して並べられていた。
「これは、データベースね。それなら爆弾で破壊する前に、資料の回収を――」
『……! 危ないです!』
「――■!」
 直後に消滅したと思われていた新型が再起動し、背後から京子へと襲いかかった。
 落児と構築の魔女による注意が間に合い、回避に成功したが従魔はそのまままっすぐ進み、奥の部屋の中で自身を爆発させる。
「くっ、データの抜き取り前に破壊されたか」
『まさか取りこぼしがいたなんてな……こいつは予想外だ』
「あるいはジャミング装置の時と同じで、そのためだけに用意されてたのか……」
『……なんにせよ、面白くない話だ』
「せめて本体が生きてればサルベージも不可能じゃないんだが、物理的に破壊されるとな」
「んー、紙の資料系は皆無だったからなー。これと同じように従魔が処理したのか」
『用意周到だとは思っていたけれど、ここまでとはね……』
 完全に破壊され尽くしたサーバルームを見て、彼らは小さく肩を落とした。
「……仕方ありませんね。潮時です。以降の調査はH.O.P.E.の調査エージェントに任せるとして、僕らは撤退しましょう」
「そう、ですね……」
「ここで一旦分かれて、また外で合流でいいか?」
 昂の提案から気を取り直して、彼らは再びチームごとに分かれて行動を再開した。

●設置―Aチーム―
「それにしても、人影がまったくないな」
『ふん、人の気配はない。元よりここは捨てるつもりであったか』
 爆弾を設置しながら、小さくこぼした一真に灰燼鬼が返す。
 それに対してそれもそうか、と一真は肩をすくめた。
「ま、こうもあっさり懐に侵入できる時点で察せることだわな」
「爆弾の設置、完了です」
「こっちも完了だ!」
 そこに爆弾の設置を終えた京子と吏子が帰ってくる。
 爆弾を設置できないため、一真の傍で警戒していた弥生が問いかけた。
「これで全部でしょうか?」
『この部屋に設置する分は完了ですね』
「俺たちの担当する区域はここでラストだ――撤退するぞ」

●設置―Bチーム―
「肝心のデータベースは破壊されたけど。他に何かしらの手がかりがあれば……」
『これだけご丁寧に隠蔽されて、あんな丁寧に破壊までしてくれたんだ。俺らが今探しても証拠は既に消されてるだろうよ』
「それでも、なんとか見つけたかったんだけどね……」
 爆弾を設置しながら施設内を再び探索していたBチームのメンバーだったが、ついぞ証拠は見つからなかった。
『廃棄しきれなかった情報なども見当たりませんでしたね』
「仕方ないよ。今回の相手はかなり用心深いみたいだからね」
『ああ、思えば最初の頃からそうだった。だが……』
「うん、だけども同時に自己顕示欲の強い相手なのもわかってる。絶対に何か仕掛けてるはず」
 そう口にして捜索を続けるが、やはり仕掛けなどは見つからなかった。
 龍哉はほうっと息を吐いた。
「……それらしい仕掛けは見当たらないな」
『今回のことは相手にとっても予想外だったのですわね』
「それならそれでいいんだが……よし、設置完了だ。撤退しようぜ」

●爆炎を背に
 全員が外に出ると同時に、施設のあちこちから爆発音と炎が吹き上がった。
 設置した爆弾が次々と爆発しているのだ。「……もし生まれ変わることがあれば……次こそはこのようなことをする方々に捕まらない、平和なところで過ごされますように……」
 祈りを捧げる弥生を尻目に龍哉はやれやれと首を振った。
「これで終わり……ってわけにゃいかないよな」
「施設を破壊したけど、結局犯人は見つけられず仕舞いだからね」
 彼の言葉に悠登がやや落ち込んだ様子で言葉を返す。
 それをフォローするようにナインが口を開いた。
『研究者という奴は抜け目ないからな。逃げる準備はできていたってことだろう』
「ああ、あるある。ゾンビ映画の科学者とかそんな感じだよな」
「そういうものなの……?」
『私にはわからんな……』
 一真がのんきに会話に乗り、流れがそれていく。
 悠登と灰燼鬼は流れに乗り損ね、首をかしげていた。
『それにしても、よくもこれだけの規模の物を用意できましたね……資金はどこから出ているのでしょう』
 流れを戻すように、構築の魔女が疑問を口にする。
「□□――」
「よくあるパターンだと、その技術がほしい企業とかじゃねーかな」
『そのために愚神と手を組むなんて、欲深いのね。人間は』
 落児が唸り、吏子が推測を口にする。
 それに対して宇治橋憐厳姫薄緑が呆れたように感想を述べた。
『その上この用意周到さ……なかなか尻尾がつかめませんね』
「施設をいくつか占拠して、破壊までしてるのに逃げられているものね」
「……でも、いつまでもは逃げられないよ。ここまで来たなら――」
『最後まで、だな』
「絶対に、犯人を捕まえる……あるいは、倒す」
『いいねえ、その意気ってやつだ』
 彼らの瞳に炎が映る。
 それは彼らのやる気を示しているようで、最終決戦の訪れを予感させる物であった。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • 双頭の鶇
    志賀谷 京子aa0150
    人間|18才|女性|命中
  • アストレア
    アリッサ ラウティオラaa0150hero001
    英雄|21才|女性|ジャ
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ

  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避

  • ベルフaa0919hero001
    英雄|25才|男性|シャド
  • 薩摩芋を堪能する者
    楠葉 悠登aa1592
    人間|16才|男性|防御
  • もふりすたー
    ナインaa1592hero001
    英雄|25才|男性|バト
  • 我が肉体は鋼の如し
    浅葱 吏子aa2431
    人間|21才|女性|生命
  • ネガティブ鬼娘
    宇治橋憐厳姫薄緑aa2431hero002
    英雄|24才|女性|バト
  • 御屋形様
    沖 一真aa3591
    人間|17才|男性|命中
  • Foe
    灰燼鬼aa3591hero002
    英雄|35才|男性|ドレ
  • 護りの巫女
    三木 弥生aa4687
    人間|16才|女性|生命
  • 愚神の監視者
    両面宿儺 スクナ/クシナaa4687hero002
    英雄|36才|?|ジャ
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