本部

夏だ! プールだ!

ガンマ

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
無し
相談期間
4日
完成日
2017/08/18 17:49

掲示板

オープニング

●水着回

 青い空!
 白い雲!

 そして黒いアスファルト!

「あぁ゛~~~……」

 ここはH.O.P.E.東京海上支部、の駐車場のとある片隅。
 ド真夏の炎天下に車を置くことは誰もが嫌がり、屋内駐車場ばかり使うので、この通り屋外駐車場は閑散としていた。
 そんな中、大きなビニールプールがポツネンと。水を張ったそこには、H.O.P.E.会長ジャスティン・バートレットの第二英雄ヴィルヘルムが、日差しに眩しいビキニ姿で浸かっていた。状況情報的には「可愛らしい白ビキニの乙女が水浴びをしている」――というものだが、その実態は「まるで温泉に浸かるオッサンのようなだらしなさ」である。
「あぢぃ~~~……アマ公~~水~~水かけてぐれぇ゛~~」
「誰がアマ公だ」
 ブスッとした顔で言い返すのは、麦藁帽子にハーフパンツ水着姿のアマデウス・ヴィシャス。ヴィルヘルムと同じくジャスティンの英雄である。そんな彼はブツクサ言いながらもホースをヴィルヘルムに投げ寄越した。そのまま近くの蛇口を捻れば、ホースから水がぶしゃーっと流れてくる。
「ぐああああ生温ィィィ~~~」
 やる気のない声を出しつつも、ヴィルヘルムは水を頭からダバダバ被っている。そのまま彼(異世界では男で、ジェンダーも男なので彼っちゃ彼なのだ)はアマデウスへ、
「アマ公~金やるからアイス買って来いよアイス~」
「貴様、金ないだろうが」
「んじゃお前のポケットマネーでいいからぁ~……」
「却下だ」
「オッパイもませてやっからぁ~……」
 ここでアマデウスは足元にあったビーチボールをヴィルヘルムの顔面へと容赦なく投げつけた。

 さて。
 なんだって会長の英雄二人がビニールプールで戯れて(?)いるのか。
 理由をまとめると大体こんな感じだ。

 ――海行きたい、とヴィルヘルムが言った。
 しかしジャスティン会長は忙しい身。なのでせめて楽しめるようにと、英雄にビニールプールを渡したのだ。
 会長は続けてアマデウスに言った。「折角だから君も遊んでおいで。ヴィルヘルムも一人ではつまらないだろうしね」と。

 そんなわけで、こういうことになっている。
 そして、うだうだ絡んでくるヴィルヘルムに溜息を吐いたアマデウスが「誰ぞ暇なエージェントはおらんのか」と人員募集したのは間もなくのこと。

解説

●目標
 ビニールプールで遊ぼう。

●状況
 H.O.P.E.東京海上支部、野外駐車場の片隅。
 真夏の午後。ド晴天。ファッキンホット。
 大きなビニールプールが設置されている。
 ビーチボール、水鉄砲、浮き輪、スイカがある。その他持込OK。
 近くに購買があるので、缶ビールやアイスやらも買ってこれます。ただしお酒は二十歳から。
 水着は「ギャラリー参照」を限定的に許可します。

 PC達は、アマデウス伝手に「暇なら来い」と呼ばれた感じです。
 その他、通りかかった、噂を聞いたという設定でもOK。

 プールでの遊び方は自由。プールを破壊するような行為はNG。
 アイスを持ち込んでひたすら食べるもよし。
 スイカ割りしてもよし。
 水着ファッションショーをしてもよし。
 プールで泳ぎの練習をしてもよし。
 漫然と水に浸かりながら、日頃の愚痴を零したり、任務を振り返ってみたり。
 水鉄砲で撃ち合い遊びをしたり。
 ビーチボールでバレーしたり。
 水をかけ合ってキャッキャしたり。
 水着女子を遠巻きにウォッチングしたり。
 水着男子を遠巻きにウォッチングしたり。
 相談で何をするかある程度話し合うとよいでしょう。
※やることを盛りすぎると文字数の都合上、描写が薄くなりますので気をつけて下さい。

●登場
ヴィルヘルム
 H.O.P.E.会長ジャスティン・バートレットの第二英雄。
 フリルとリボンの可愛らしい白ビキニ。暇そうにしているので、構うとスゲー喜ぶ。
 酒かアイス買って来いとうるさい。

アマデウス・ヴィシャス
 会長の第一英雄。
 シンプルな黒いハーフパンツ型水着。鎧じゃないのでコレジャナイ感が出ている。
 基本的にプールサイド(?)で皆を見守っている。

ジャスティン・バートレット
 会長。チラッと様子見に来るかも。

綾羽 璃歌
 オペレーターさん。呼べばちょっと顔出しするかも。
 み、水着ですか!? そそそそそのまた今度で!(自分の腹を隠しつつ)

リプレイ

●ドッ快晴。ファッキンホット。セミクレイジー。以上。

「夏だ!」
「夏、だね」
「プールだ!」
「プール、だね」
「スク水だッ!!」
「だから、なんで!?」

 ニウェウス・アーラ(aa1428)もストゥルトゥス(aa1428hero001)も、スク水だった。紺色で、胸元のワッペンにはひらがなで名前と、旧き良きお約束スタイルである。
「あ、いたいた♪」
 そこへ新たに現れたのはアンジェリカ・カノーヴァ(aa0121)だ。
「この度はお誘い感謝いたしますえ」
 その隣では八十島 文菜(aa0121hero002)が、品良くアマデウス達にお辞儀をする。「こちらこそ感謝する」と頷いた騎士英雄の近くでは、ビニールプールに浸かったヴィルヘルムが気さくに片手を上げた。
「よっす! 可愛い水着じゃねぇの」
 ヴィルヘルムが二人のいでたちを眺める。アンジェリカは可愛らしいフラワービキニ、文菜は大人っぽさが際立つホルターネックビキニだ。
「ありがと! ヴィルヘルムさんの水着も可愛いね」
 素直に感謝するアンジェリカ、「だろぉ?」とドヤ顔のヴィルヘルム……と対照的に、文菜はちょっぴり恥ずかしそうだ。
「ちょっと大胆やおへんか?」
「大丈夫、男性の視線釘付けだよ!」

「「……」」
 そんな女性らしい体つきの文菜から、雨宮 葵(aa4783)と燐(aa4783hero001)は互いに――具体的に言うと胸元に――目をやった。スポーティなビキニを身につけたそこは、つつましやか(優しい表現)である。
「ん。ここまで色気のない、ビキニも……めずらしい」
「燐だって大きいわけじゃないでしょー!?」
「私は、スレンダーなの。程よい、肉付きなの」
 ドヤ顔で胸を張る燐。葵は肩をわななかせる。
「くそぅ……! 今日こそぎゃふんと言わせてやるから覚悟しとけー!」
 依頼を探して本部に来てみたら、まさか水着を着て炎天下の駐車場に赴くことになるなんて。

「会長は何を考えているんだ」

 ある種、バルタサール・デル・レイ(aa4199)の経緯のそれと似ているかもしれない。紫苑(aa4199hero001)によって、「会長の英雄から呼ばれてるよ」と超不本意ながら連れて来られたのである。黒のカットソーにグレーのハーフパンツ、ビーチサンダルにUVカットのサングラス……と、姿までバッチリな状態で。
「海に行きたい、が、なぜビニールプールになるんだ……しかも駐車場の片隅とは……。ホテルの屋外プールだとかナイトプールだとか、色々とあるだろうに……」
 アマデウスに向ける眼差しは、相棒に振り回されることへの同情か。
「童心に返って、仲良く遊ぶようにっていう親心だよ、きっと。さあ、せっかくだし楽しもうよ♪」
 バルタサールの嫌そうな雰囲気に、紫苑は満面の笑みである。鬼である。実際角は生えている。そんな紫苑は珍しく和服ではなく、黒地に花柄パーカーとハーフパンツ、ビーチサンダルと洋装だ。

「これが……プールか!」
 一方、男子用水着姿のGーYA(aa2289)は目を輝かせていた。早くも浮き輪を装備して、キラキラ輝くプールの水面を見つめている。昨年は色々あって、水着を着る機会を失っていたのだ。それに、誓約する前はいつ心臓が止まってもおかしくはないほどの病人で。
「まほらま……!」
「うん、プールねぇ」
 少年が振り返る先には、奇抜なデザインの水着を着こなしているまほらま(aa2289hero001)。ボンキュッボンではないのでちょっと迫力不足は否めないが、それでも十二分に似合っている。
 ジーヤもまほらまもプールは初めてだった。ジーヤは病弱だったゆえ、まほらまは記憶のない英雄ゆえ。
「誘ってくれてありがとねぇ」
 まほらまがアマデウスにそう目をやれば「構わん」と彼は答える。
「……ていうか鎧がないと、パッと見、誰か一瞬分からないわねぇ?」
「ヴィルヘルムと同じことを言うな……」
 口をへの字にしたアマデウスに、まほらまはクスクスと微笑むのであった。

「これ……凄く、恥ずかしい、よ?」
 さて。オシャレな水着の面々を順番に見、ニウェウスは最後に自分と、それからストゥルトゥスを見やった。
「何を仰る。この機能美溢れるデザインのどこが恥ずかしいというのかね?」
 スク水ストゥルトゥスは大真面目な顔で眼鏡をクイッと押し上げる。ニウェウスは眉根を寄せて続けた。
「本音で」
「ファッキンホットで頭茹ってるせいにして面白いコトしたいなって☆」
「うん……ストゥル、ユルサナイ」
 構える水鉄砲。放たれる水に描かれる虹。

「よくもまぁ……この時期の屋外で、あんなもので涼もうと思ったな」
「まぁ、暑いから泳ぎたいというのは分からなくもないが、さすがにな……」
 それをエアコンが効いたH.O.P.E.支部内の窓から眺め、呟いたのはリィェン・ユー(aa0208)と零(aa0208hero002)だった。
「冷たい水が循環するようなプールならともかく、一度水を貯めるだけのビニールプールでは、時間経過と共に生温くなるのは当然だろう」
 片眉を上げる壮齢の英雄に、リィェンも同感だと頷きを示しては言葉を続ける。
「というか、涼みたいなら屋内でエアコンが効いた部屋にいたほうがいいだろうに」
「いや、元々涼むというより『解放的な海でのんびりしたい』という欲求が強かったと思うぞ」
「ま……彼? 彼女? が部屋でずっとゴネてるよりは、こうして屋外ででも好きにさせたほうがお義――んん、会長も仕事に集中できるのかな」
 不審な咳払いと絶妙な間。心得た顔で零がニタリと笑う。
「そうだな、未来のお義父さんのこ……」
「ななん何を言ってるんだ零!!」
「はっはっは……そうだな。会長のことを考えれば、その方がいいのかもしれないな」
「含みのある言い方だな……」
「気のせいだ気のせい、はっはっは」
 老獪な零の言葉に、リィェンはそれ以上返すこともできず。「はぁ」と溜息を吐いた後、改めてプールの一同を見やる。
「さて、どうするんだ?」
 まるで相棒の反応を楽しむように零がリィェンを見やる。彼はそれに努めてクールであることを意識しつつも「とりあえずは」と言葉を続ける。
「他の連中が倒れないよう注意しつつ、食べ物とか用意しておくかな。かき氷とか飲み物とか……とうもろこしでも焼くか」

 しっかし、外、暑そうだなぁ……。



●八月の午後
「これが……プール……」
 ジーヤは泳げぬゆえに浮き輪で座って水面にたゆたいつつ、日差しの暑さと水の冷たさの心地よさに意識を溶けさせていた。
「うん、プールねぇ~」
 傍らではまほらまが、人魚のような優雅さで水をゆったり泳いでいる。ジーヤはそんなまほらまと、そして水をかけあったり泳いだりしている皆を眺める。はたから見れば水着少女をウォッチしている少年だが、決して邪な考えからではないのだ……。

 一方、木陰の下。
 バルタサールはデッキチェアとビールを持ち込み、寝そべっている。
「暑いなら泳げばいいのにー」
 その心を見透かすように紫苑がくつくつ笑う。それから遠慮もなしにバルタサールが飲みかけだった缶ビールを一息に飲んでしまった。
「……」
 バルタサールの無言の訴え。なんら悪びれずに見返した紫苑はというと、
「なに自分だけ傍観者を気取ろうとしてるの? だからきみはダメなんだよ。自分の分だけビール用意なんてあり得ないよね。皆のぶん、ロックアイスとジュースも用意すること。あとバーベキューしても楽しいかも」
 丸投げである。「それじゃよろしく~」と紫苑は笑顔でプールに戻っていった。

 そんな時である。

「ん? じゃあお前ついでに酒とアイス買って来いよ」
 話を聞きつけたヴィルヘルムがプールからそう言って。バルタサールが露骨に難色を示せば、「じゃあお前」と近くにいた葵の肩をポンと叩くではないか。
 その言葉に、葵はピンときた。

「ふっふっふ! ここはエージェントらしく戦闘技術で勝負しようじゃない!」

 彼女の言葉が発端となり。
 一同は、水鉄砲で対決することとなったのである。
「ルールは簡単、最初に水鉄砲の水に当たった人が負け! 負けたら参加者全員分のアイス奢りな!」
 葵が高らかにルールを説明し、ここに戦士達が集う。

「ふふん、マカロニウェスタンを見て育ったボクに勝てるかな?」
 エントリーナンバー1、アンジェリカ。ピストル型水鉄砲を二丁拳銃スタイルだ。文菜は「はしゃぐ年でもおへんから」とプールでのんびり観戦だ。
「アンジェリカはん、しっかりな~」
「任せてよね!」

「全員ビショビショにしてやる!」
 エントリーナンバー2、ジーヤ。その手には古き良き竹筒式水鉄砲……ただし大型。最大飛距離二十メートル。連射力はないが、高速給水でそれをカバーだ。
「当たれば大量の水でズブヌレ必至……これで勝負!」

「僕とバルタサールも参加でー」
「おい」
 エントリーナンバー3&4、紫苑と(無理矢理参加させたれた)バルタサール。

「わぶっ、眼鏡は、眼鏡はやめっ……」
 一方、ストゥルトゥスはさっきから執拗にニウェウスに水鉄砲で主に眼鏡を狙撃されていた。水鉄砲大会の話を聞いたのはそんな時である。
「STOPだマスター! 何なら、あの水鉄砲勝負に参加して決着を付けよう!」
「その、必要は……」
「最初に水鉄砲当たった人がアイス奢ってくれるって」
「参加、する」
「即答デスカ」
 とゆわけでエントリーナンバー5&6、ニウェウスとストゥルトゥス。前者は飛距離重視の市販水鉄砲、後者は――スーパーでハイドロなキャノン水鉄砲を、大きい鞄からズイッと。
「待って、何それ……」
「安心しろ、市販品だ」
「そういう問題じゃ、ないよね!?」

「AGWで戦ったら、私はここにいる人達の足元にも及ばないだろうけどね? 皆慣れない道具で戦う状況だから私にも勝機はある!」
「ん。元殺し屋として、たかが遊びでも……負けるわけに、いかないね」
 スタンダードなピストル型水鉄砲を構えるのは、第一発言者にしてもちろん参加者の葵と燐。
「おっしゃ! 俺も行くぜ!」
 もちろんヴィルヘルムも参加だ。アマデウスも引っ張ってくるが、どうも彼は乗り気でない。「えーおいでよー」と誘う葵だが、その肩をトントンと叩いたのは燐だ。
「ん。葵、おじさんに無茶させるのは……やめときなよ。運動会のお父さんみたく……見栄張って、怪我したら……こまるし」
「そっかー!おじさんはもう無理できないね。ゴメーン!」
 断っておくが二人とも悪気はない。悪気はないのだ。しかしアマデウスの騎士精神を刺激するには何よりの言葉になった。
「……ヴィルヘルム、そこの武器を貸せ」
「いいよ!」

 というわけで。
 真夏のガチマッチが、幕を開けるのだ。

「ヴィル! 男同士、真剣勝負だ!」
「受けて立つぜッ!」
 相対したのはジーヤとヴィルヘルムだ。……と、ここでジーヤはヴィルヘルムの手元を二度見する。
「え、それバケツ」
「水鉄砲だぜ」
「いやどうみてもバケツ」
「白兵型カスタムだぜ!」
 言うなり、なみなみと水が入ったバケツをドレッドノートの膂力を活かしてブチ撒けるヴィルヘルム。
「うわーっ!?」
 思わず近くにいたまほらまを盾にするジーヤ。ドッパーンと大量の水を真正面から浴びるまほらま。
「……」
 ぽた。ぽた。
 ズブヌレになったまほらまが、蒼い髪から水を滴らせながら――ゆっくりと、ジーヤへ振り返った。その眼差しはまるで神話に伝わるゴーゴンのようで……
「ひえっ!?」
「ジーヤ、はしゃぎ過ぎでしょぉ!?」
 鳩尾に突き刺さる肘鉄。
「ぐふォ……ッ」
 くの字になるジーヤ。
「アンタも男なら男らしく水鉄砲で勝負しなさいよぉ!」
 更に返す刃で、まほらまの腹パンがヴィルヘルムに突き刺さる。
「がふァッ……」
 崩れ落ちるヴィルヘルム。

「ぶわっはっはっは! 200ミリリットルの威力をくらえーい!」
 ストゥルトゥスはちょこまか逃げ回りつつ、スーパーでハイドロなキャノン水鉄砲を発射する。弱点は一発ごとに水を装填しなければならないことだが、当てればどうということはないのだ!
「くっ!」
 狙われたアンジェリカは一瞬顔をしかめる。これまで小柄さを活かして逃げ回っていたが、如何せん水が多い――ならば。
「とうっ!」
 西部劇さながらの横っ跳びである。そのまま地面に転がる、が、

 じゅう。

「あ゛ッ づ~~~い!!!」
 素肌に真夏のアスファルトはどう足掻いても焼き土下座。
「これなら布面積の多い水着にすべきだったかな!?」
「フハハハハ! やはりスク水は最強! 露出度の低さこそこの戦いを制するのだ!」
 ストゥルトゥスは完全に脊髄反射で喋っている。
 その後頭部に、押し付けられる銃口あり。
 暴走マルチーズ系狩人(英雄談)と化したニウェウスである。思わずストゥルトゥスは両手を上げる。
「あの、何か目がガチじゃないですか!?」
「三百クレジットの、アイスの為に、狩るべし」
「待って。その値段、もしかしなくてもアレ?」
「きる、おあ、だーい」
「話聞いてってか台詞が不穏なんですけどぉー!」
 だがストゥルトゥスは間一髪で振り返ると――なんとスイカの種を口から発射する。
「きたなっ!?」
「こんなこともあろうかとスイカを食べていたのだ」
 ニウェウスは態勢を立て直そうとする。が、ここで英雄が突然の変顔。「ブッ」とニウェウスのツボに突き刺さる。
「ずるい!」
「どうとでも家康徳川!」
 言いつつ、ストゥルトゥスは片手にボールを盾代わりに持つのだった。

 負けるとお小遣いが減っちゃうので負けられないよ! というわけで、アンジェリカは的が大きい背の高い者を狙っていた。つまりはアマデウスなのだが、
「……」
 威圧感が凄い。鎧じゃなくて水着で、槍じゃなくて水鉄砲なのに、威圧感が凄い。身長差もあいまって凄い。そういえばこの人、会長の英雄だっけ。つまりH.O.P.E.最強英雄の一角では? アンジェリカは見上げることしかできない。例えるなら、虎と相対した子猫状態。
「仲間となるなら手荒にはせん」
「はい……」
 例えるなら、耳をペターっと伏せたまま弱々しく「みゃー……」と鳴いた子猫である。
 というわけで共同戦線である。アマデウスが見やった先には、我関せず顔で目をそらしたバルタサールだ。「俺を巻き込むなよ?」と雰囲気で語っている。ていうかバルタサールはアマデウスを囮にしてやろうなど目論んでいたのだが、まさかガチ参戦してくるなんて。
「……というか紫苑」
「なーに?」
「なんでアマデウス側に付いてるんだ」
 しれっとアマデウスの隣で陣営に加わっている紫苑。ニッコリ。
「知らないの? 寄らば大樹の陰だよ」
「おま」
 ばしゅー。
「やりました、アマデウス指揮官殿」
「よくやった、紫苑」

 一方、葵は燐にボコられていた。
「やる気満々、みたいだけど……まだまだ、だよ」
 クスクス微笑む燐に、的確に眉間をビショビショにされゆく葵。「日頃から燐のナイフを避けている私に避けられない水鉄砲などないのだ!」と思っていた時代が葵にもありました。
「もおー! なんでえー!」
「頑張れ、頑張れ」
「ずるいよ~~~!! 手加減してよぉ~~~!」
「え、いいの……? そんなに、して欲しいなら、するけど……手加減してもらってまで、勝ちたい、の……?」
「むが~~~!!!」
 舌戦にも勝てない葵である。また眉間にバシューと水が当たる。お嬢様として育った葵と、殺し屋として育った燐では、最早年季レベルであらゆる実力が違うのであった……。

 同刻、ストゥルトゥスは逃げるためにアレコレ手を尽くしていたが、遂にネタ切れを起こしていた。こうなったら、もう――ポロリだな。真顔で合点。というわけでヴィルヘルムに狙いを定め、
「しねやヴィルヘルムゥー!」
 しかし。
 ストゥルトゥスは気付いていなかったのだ。
 無駄に洗練された動きで、ニウェウスが今度こそストゥルトゥスに襲いかかっていたことに……。

「ん? なんか近くで悲鳴が……」
 振り返るヴィルヘルム。
 その直後である。的確な水鉄砲の一射が、彼の持つ水鉄砲を弾き飛ばしたのは。射撃主はアマデウスである。
「なっ!?」
「者共、やれ」
「「了解!」」
 飛び出したのはアンジェリカと紫苑だ。紫苑が牽制して水を撃てば次いでアンジェリカが、
「中身は男性なのに羨ましい!」
 流石の命中適性、鋭く鋭く狙いを定めたアンジェリカの水は、ヴィルヘルムのたゆんとした胸にバシャー。
「グワーッ! やられた~っ……ていうか同盟アリかよ!?」
「同盟禁止ってルールはないよね?」
「チクショー!」
 微笑む紫苑に、悔しがりながらも笑うヴィルヘルムであった。



●おつかれサマー

 そういえばシッチャカメッチャカで結局誰が最初に水を喰らったんだっけ? ていうか審判いなかったね?

 というわけで、なんだかんだ、結局アマデウスが皆の分のアイス代を出してくれた。買いに入ったのはヴィルヘルムだが。
「楽しそうにしていたな。お疲れ様」
 ちょうどそんな頃だ。簡易なコンロセットでトウモロコシを焼きながら、リィェンが一同に微笑みかける。

 アツアツの焼きトウモロコシに、アイスにジュースに、大人はお酒で、空の下。水鉄砲遊びした後の体をプールで冷ましつつ、緩やかな一時。

「おもしろかったー!」
 アンジェリカはアイスを食べながら楽しそうにニコニコしている。
「プールって、楽しいね」
「そうねぇ」
 ジーヤとまほらまは、チューブ型アイスのコーヒー味を半分に割ってはんぶんこしている。
 ニウェウスは念願のお高いアイスに舌鼓を打っていたが、その間にストゥルトゥスに焼きトウモロコシを全部食べられ、水鉄砲勝負エクストラが勃発したのはまた別のお話。

「しかし、ついこの間までロシアや四国で色々あったから、後処理とかで上層部や事務方とかは今、大忙しだろうが……そこんとこ実際どうなのだ? アマデウス」
 木陰で焼きトウモロコシを頬張っているアマデウスに、零が問いかけた。
「そうだな。まあ、我々H.O.P.E.が暇になることなどないのだ」
「ふ。それもそう、か」
 一つ笑んで、さて。零はカキ氷を削っていたリィェンへ振り返る。
「こっちは我に任せて、汝は会長に差し入れでも持っていってやれ」
「あ……あぁ、そうだな。こっちのこと、報告がてら持ってくとするよ」
 小声気味にそんなやり取りをした直後。

「呼んだかね?」

 後ろからかけられた声に、リィェンは心臓が爆発するかと思った。
「おとッ あっいや 会長!?」
 そこに立っていたのはH.O.P.E.会長ジャスティン・バートレットその人である。クールビズスタイルのスーツ姿で、「お疲れ様だよ」と片手を上げて微笑んでいる。
「ヴィルヘルム達と遊んでくれていたのだろう? ありがとう諸君」
 差し入れだよ、とスポーツドリンク入りの袋を置いていく会長。リィェンは内心しっちゃかめっちゃかになりつつも、一つ咳払いして心を落ち着けると彼に話しかける。
「会長、お忙しい中ありがとうございます。ちょうど、少し息抜きに来られませんか……とお誘いに行こうかと思っていたところでして」
「おや、それはどうもありがとう」
 そう微笑むが、会長はあまり長居はできないだろう。そう察しては、リィェンは続ける。
「お仕事、まだ途中ですよね。手が必要でしたら、できる範囲で手伝いますよ」
 将来のためにもね。なんて思いつつ、会長の仕事に興味があるのは事実。色々と気になることもあるし、ね。
「そ……そういえば、最近話を聞きませんが、テ……テレサは元気にしていますか?」
「それ、あたしも気になってたのよねぇ。どうしてるか知ってるぅ?」
 まほらまも声を重ねた。
「テレサは今、ロンドン支部の方で忙しくしているねぇ……今の任務がひと段落すれば、またこちらに顔を出すそうだよ」
 父親らしい心配も含んだ声で、会長はそう答えた。
 そんな彼に、ジーヤが声をかける。振り返るジャスティンに、少年はまず頭を下げた。
「自分の興味だけで門に入った俺を見捨てても、あの戦いの中だったらおかしくなかった。それなのに……! 命懸けで助けられて……軽んじてた俺の命が重くなったんだ……!
 叱ってくれる人がいた、助けられて良かったと言ってくれた……皆が大怪我してるのにッ!」
 頭を下げたまま、少年は声を張る。【神月】の時の出来事を。

「だから俺はこの命ある限り、エージェントとして生きると決めたんだ。会長達が築いたこのでH.O.P.E.で! 」

 その言葉に。
 会長は優しく微笑んで、ジーヤの方に手を置いた。
「ありがとう。……これからも、共に頑張ろうじゃないか!」
 簡潔だった。けれど、だからこそ深い強い想いが篭った言葉だった。
「うんうん!」
 頷いたのは葵である。
「【絶零】、【屍国】そして【森蝕】って厳しい戦いが続くけど、皆でパーッと騒いで気分転換する時間も必要だよね! どんな戦いからも帰ってきて、皆でまた馬鹿騒ぎしよう! 」
「ん。……帰ってきたい場所が、ある……それが戦いに行く時、力になるよ」
 燐も柔らかく微笑んで、言葉を添えた。

 正義なんて、希望なんて。H.O.P.E.の在り方に、顔をしかめる者もいる。
 けれど彼らは、人々の為の正義でありたい。希望でありたい――そう願う。

「アンジェリカはんに聞いたけど」
 そんな景色を見守りつつ。日傘の下、文菜はアマデウスに話しかけた。
「あんたの相方も結構フリーダムな性格らしいどすなぁ」
「ヴィルヘルムか。まあ、そうだな……」
「うちの所も相方がなぁ。昼日中でも暇さえあればお酒は飲むし、女の人と遊び歩いては朝帰りなんてしょっちゅうやし。キスマークなんてつけて帰られたら年頃の娘さんがおるのに教育上よろしくあらへんわ」
 溜息を吐く。「ああ」とアマデウスの頷きは、深い同意だった。
「アイツも中身は男だからな、女遊びをやたらしたがるのだ。馬鹿なことをしてマスコミ共に騒がれたらどう責任を取るつもりなのかと」
「ほんま、火遊びもほどほどにして欲しいもんやね」
 肩を竦める文菜。「けど」と続ける。
「仕事はちゃんとするのは評価しとります。あのお嬢はん? もええ所はありますのやろ?」
「……そうだな。悪い奴では、ない」
「ふふ」

 微笑んで、見やるのは夏の景色。
 カキ氷のような入道雲。



『了』

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 希望を胸に
    アンジェリカ・カノーヴァaa0121
    人間|11才|女性|命中
  • ぼくの猟犬へ
    八十島 文菜aa0121hero002
    英雄|29才|女性|ジャ
  • 義の拳客
    リィェン・ユーaa0208
    人間|22才|男性|攻撃
  • エージェント
    aa0208hero002
    英雄|50才|男性|カオ
  • カフカスの『知』
    ニウェウス・アーラaa1428
    人間|16才|女性|攻撃
  • ストゥえもん
    ストゥルトゥスaa1428hero001
    英雄|20才|女性|ソフィ
  • ハートを君に
    GーYAaa2289
    機械|18才|男性|攻撃
  • ハートを貴方に
    まほらまaa2289hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • Trifolium
    バルタサール・デル・レイaa4199
    人間|48才|男性|攻撃
  • Aster
    紫苑aa4199hero001
    英雄|24才|男性|ジャ
  • 心に翼宿し
    雨宮 葵aa4783
    獣人|16才|女性|攻撃
  • 広い空へと羽ばたいて
    aa4783hero001
    英雄|16才|女性|ドレ
前に戻る
ページトップへ戻る