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広告塔の少女~サマーフェス準備編~
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最終発言2017/07/28 00:24:53 -
相談卓
最終発言2017/07/30 15:57:23
オープニング
● 夏のための準備をしよう。
サマーフェスとは夏の代名詞。
屋外に解き放たれたアーティストたちの情熱を、太陽で熱された観客たちが受け止める。
会場は広々90000平方メートル、東京ドーム二個分の敷地に用意されたステージは五つ。
そのステージの間と間に用意された出店には定番の焼きそばやお好み焼きからB級グルメまで並び。
この空間では人間の欲望をすべて満たすことができる。
夜には星を見あげながら、遠くに音楽を聴きつつ眠りましょう。
テントもお勧めですが。虫を恐れないのであれば芝生の上にマットを敷いて眠るのも言いでしょう。
昼間の熱が冷めやらん、観客たちが今度はパフォーマーとなってギターをかき鳴らす。そんな灯りと音を背景に眠るのは最高の贅沢。
そして体力が回復したならまた音楽に身をゆだねましょう。
心配ありません。音楽フェスは二日構成なのです。
こうして二日いっぱい体に音楽を通して、また日常に戻っていく。
今日、この日を楽しかった。来年もまたこよう。そんな思いを胸にひびを頑張っていただく。
そんな企画がこのサマーフェス。
ちなみに、企画名は。
「まだ決まってねぇんだよな」
発起人。赤原光夜はからからと笑った。
名前、募集中だそうです。誰か考案をお願いします。
*注意 観客の入り具合によって三日になる可能性が、それは今回の皆さんの活動具合を見て赤原が決めるようです*
● シリーズシナリオの流れ。
今回はサマーフェスに向けた準備編です。
この準備編では、当日に向けて使用する楽曲や舞台での動きなど含めた打ち合わせをしていただくんですが。
本当の目的は、今回のシナリオで作成されたリプレイが次回の本番編でのプレイイングにもなる点にあります。
こちらでダンスや当日の動きなどを決めておけば、本編のシナリオのプレイイングで改めて書く必要はないですし。
こちらで歌詞など書いておけば、当日編のプレイイングで歌詞など書く必要がないということです。
今回の話では、本番に向けての練習や当日のためのリハーサルという形で演出します
そして次回のサマーフェス本編の計画ですがEXとなります。
公開日は八月十日予定です、広告塔の少女シリーズですが相談期間が五日になります。
同時にサマーフェス参加編も執り行われます、25人イベントシナリオで公開されます。
このイベントシナリオは、皆さんをはじめとするアーティストたちのライブを見に来る観客側のシナリオです。そのイベントシナリオの皆さんのためにもこのシナリオは役立つことでしょう。あらかじめアイドルたちが何をやるのか、ざっくり把握できるわけですからね。
では企画の説明は以上になります。次に参加のルールについて遙華から。
● 当日使えるステージ。
サマーフェスと言えばライブ会場が複数あるのも魅力の一つでしょう。
会場は全部で五種類この中から選んでいただくことになりますが今回は一種類で無くて構いません。
そう時間をずらして別のステージに出ることができるのです(描写は散ってしまいますが)
前回試験で使った三ステージの大きいバージョンと、新規ステージが二つです、演出の一部として有効に使ってみてください。
1 屋外ステージ
天井もない照りつける太陽の下お客の声を全身に浴びて謳うステージです。
映像を映し出せるスクリーンが中央に一枚しかありませんが。ステージ幅が200メートル程度あるので、派手な演出をしやすいでしょうか。
2 ライブハウス風会場
豊富なライトエフェクト、前方左右に備え付けられたモニター、高級な音響設備で、聞かせる音楽に関してはもってこいの場所です。
動員数が二百人と小さいのですが、それでも普通のライブハウス並の人数は入りますし、演出が一番派手にできることでしょう。
3 コンサートホール風会場
会場の大きさは屋外ステージとライブハウス風会場の中間程度ですが、一番の特徴はお客さんが座って音楽を聴ける屋内であることです。
また。生の音が響くことに気を使って作られているので、ピアノやヴァイオリンと言った電子を介さない音であればこちらの会場が一番強いです。
4 水辺ステージ
会場中央には湖があるのですが、その中心に浮かんだステージです。
使える電子機器が少なく、モニターとスピーカー程度なのですが。ALブーツによる演出、水を使った演出もできるので、戦闘やダンスを取り入れるリンカーにとってはやりやすいのではないでしょうか。
夏にぴったりなステージですしね。
またこのステージでは空を飛ぶための翼も貸し出すことができます。
5森林ステージ
ここにはステージと言える舞台はありません。
舞台の上で歌い踊るのではなく、森の中で歌い踊っていただきます。
観客も森の中に座ったり立ったりしているので、非常に観客との距離感が近いです。
この森の木にはVBRの装置がとりつけらえているのでアーティストたちはこの森の中では自分の姿を自由に写したり消したりできるのです。
ただ観客動員数が50人程度ですね。ここで演奏するなら、チケットは激レアと呼ばれることでしょう。
解説
目標 念入りにステージを作り上げる。
今回は皆さんの練習風景、打ち合わせ風景を描写するための準備編です。
本番のために沢山打ち合わせしましょう。
打ち合わせという名のフラグ立てをしましょう。
さらに、今回の本番編の裏ではイベントシナリオの参加編。
つまり皆さんのステージを見に来てくれるリンカーたちがいるので。その人達の笑顔を思い浮かべながらやると、きっとステージはいいものになるでしょう。
アイドルの笑顔はやっぱりお客さんがどれだけ楽しんでくれるか、によって変わってくると思いますし。
そのステージの演出について、なれない人ように少しだけアドバイスをまとめました。参考にしてください。
● ステージ演出について
今回は三曲以上で一ステージでございます。
チームで三曲でもいいですし、個人で三曲でもいいです。
今回は曲名さえ知っていれば『グロリア社名義』『赤原 光夜名義』『ECCO名義』の楽曲の使用許可が下りています。
さらに今回は試験ではないので必須ではないのですが。
・ 歌唱力
・ トーク力
・ 演奏力
・ 演出力
・ 模擬戦力
を意識してステージを構成すると観客を楽しませることができるでしょう。
どれも網羅する必要はありません。何かに特化していてもとてもいいステージになると思います。
リプレイ
● サマーフェス準備編
「沙耶、頼まれてた品トラックから降ろして置いたわよ、そして沙羅……」
「あらぁ、早いのね」
遙華は扉をあけ放つなり、『榊原・沙耶(aa1188)』の隣に佇んでいた『小鳥遊・沙羅(aa1188hero001)』へとタオルを投げつけた。
「わっぷ!」
それを受け止め損ねた沙羅は顔にまとわりつくそれを乱暴に手繰り寄せると遙華を一別、そしてその手に握ったタオルに視線を下ろした。
「あら、いいできね」
そう沙羅は青く着色されたタオルを手に取って目の前に掲げて見せる。
ものプロのロゴマークが入ったタオルだったが、表面にはデフォルメされたおぞましい何かがかきこまれていた。
「これはいったい何なの?」
遙華が問いかける、すると沙羅は悪戯っぽく笑った。
「知りたいならアイディアロールね。ただし、正気度が減るかもしれないけど、覚悟はいい?」
そして沙羅は山羊に触手が生えたようなゆるキャラを撫でた。
ちなみに色は、青と、緑、赤と黒を用意して逢って、全てにそのマスコットが印刷されている。
「タオルはいいわよ、水を含ませればしばらく体を冷やせるし、日差し避けにもなる」
沙羅が満足げに告げた。
「体調不良や緊急時の避難経路などをあらかじめ示す事で、来場者の安心と安全に配慮したイベントをアピールしようかと思ってぇ」
そう沙耶は頬に手を当てて、いつもの笑みで告げる。
「あとは……資料はどう?」
沙耶は遙華に向けて手を差し出す。
「ああ、最寄病院の資料ね、連絡はあなたからする?」
「考えておくわぁ」
沙耶の今回の指針は『愚神よりも熱中症、食中毒対策』である。
「じゃあ、入り口のこのあたりにテントを張って、氷を沢山作るための冷凍庫がいるわね」
そんな二人の打ち合わせ風景をロクトがカメラで撮っている。
ロクトはカメラを左右に振った。そこに佇んでいたのは『アル(aa1730)』と『泉 杏樹(aa0045)』二人は台本を片手に鏡で自分たちの動きを確認してる。
「皆に、癒しの音、届けます」
扇の角度、視線の位置。上げ方。
背中合わせで曲を始め、どう動くのが適切か。
曲をいれながら考えていく。
それに照明を当てるならば。そう『榊 守(aa0045hero001)』は舞台の見取り図と器具の一覧を見ながら考える。
「あ、榊。サイリウム届いたわよ。一度確認しておいて頂戴」
そう告げる遙華に向けてプラプラっと手を振る榊。
「ねぇ、遙華?」
そんな遙華の後ろから声をかけたのは『世良 杏奈(aa3447)』見ればその相棒の『ルナ(aa3447hero001)』は杏樹とアルと三人で改めて流れを確認している。
そんな三人には聞こえないように杏奈は声をひそめて問いかける。
「梓ちゃん、あんなことがあったけど、ディスペアは出るの? アネットさんは……」
「ディスペアは、梓、アネット抜きでステージに立つ予定よ」
そう告げると遙華は踵を返し。それ以上は何も言わなかった。
● がーでぃあんず
「では次は、がーでぃあんずの会議室にお邪魔してみましょう」
そうロクトが告げると、遙華がそろそろと扉を開ける。
広いレッスンルームの中央に長机が集めてあってその周りで各々の作業に没頭しているようだ。
『クラリス・ミカ(aa0010hero001)』は足を組んで資料に目を通し。
『卸 蘿蔔(aa0405)』は自分の衣装に針を通している。
『セバス=チャン(aa1420hero001)』は『八朔 カゲリ(aa0098)』とお湯を片手に何かを話しており、『ナラカ(aa0098hero001)』は『蔵李・澄香(aa0010)』の膝の上で寝ている。
「あ、いらっしゃい」
澄香はそう微笑むと、首をかしげた拍子に髪がこぼれた。
「あら、みんな、わりかし穏やかね、もっとがつがつ会議してるかと思ったわ」
「少し前まではそうだったんだけどね。うん、今私達」
そう澄香はナラカの髪をさらりと撫でると『小詩 いのり(aa1420)』へと視線を向けると、いのりは難しい顔をして頭を抱えていた。
「いのりの歌詞待ちなんだ」
いのりが一人机に向かってガリガリと歌詞、および音符を書きなぐる。
頭に浮かんでくるものを書き写しては消して、書きなぐっては別の紙に書き直す。
その背後のホワイトボードには『存在の音』とだけ書かれていた。
「い、いのり。休んだら?」
そう祈りに声をかけるといのりは、浮ついた返事を返す。
「ん~、もう少し」
「あ、そうだそうだ遙華、こんな感じで曲を作ってみたのですが」
そう蘿蔔が遙華の袖を引っ張る。
「見せて見て」
その楽譜には明らかにこの世界の文字ではない言語で何事かが刻まれている。
音符でさえもこの世のものではない。
「多重コーラスを使って幻想的に演出したいのです」
「ちょちょちょ、ちょっとまって、蘿蔔。これ、よめるの? うたえるの?」
「読めないし、歌えません」
あっけらかんと言い放つ蘿蔔。となりで『レオンハルト(aa0405hero001)』がため息をついた。
「この楽譜どこから……」
「アルスマギカさんが教えてくれました」
それは一週間前くらいのこと。
いい曲の思いつかなかった蘿蔔が気分転換にとグロリア社に向かったら、たまたまアルスマギカロボが外をお散歩していた。
なので、ダメもとで曲をちょーだい! っとお願いしてみたのだ。
すると。
「震えてましたね」
「震えてたね」
蘿蔔とレオンハルトはうんうんと頷き始める。
アルスマギカロボが震えながら、ガガガガっと印刷したのがこの楽譜らしいが、全く読めない。
「なので、今アルスマギカ語をお勉強中なのです」
アルスマギカ先生の授業はわかりやすく楽しいらしい。
「でも、これ謳えないわよね」
「はい、解読は絶対間に合わないと思います、けどカナタをアルスマギカ語に翻訳して曲調も変えて。ってコラボレーションはできると思うのです………………レオが」
「ははは、俺が作業してる隣でこいつゲームしてるんだ。すごく腹が立つだろう?」
「内容はとある少女の歌なのです。迷っている人の心を導く光の矢のように、強くまっすぐで。でもちょっぴり不器用で……」
レオンハルトの言葉を華麗にスルーして蘿蔔は曲のイメージを告げる。
「ちなみに、さっきから針を通してるのは」
「ステージ用の衣装です。特注品です」
そう告げて蘿蔔はデザイン画を差し出した。ロングドレスはいつもの可愛らしい路線を踏襲しつつ神秘的だ。
「さて皆様、休憩にしましょう。今日はカゲリ様がコーヒーを淹れてくださいました」
そうセバスが一声かけると皆の手元にコーヒーを運ぶ。
ちなみにコーヒーはすごく苦かった。
「覚者よ……もう少しどうにかならんものか?」
寝起きにとんでもない物を飲まされナラカは悲しそうな顔をする。
「努力する」
あまりの苦さに涙を浮かべながら遙華は尋ねる。
「で。進展度はどんな感じ?」
「僕たちは滅びの歌へのカウンターソング『存在の音~being~』を引っさげていくよん」
そういのりができたてホヤホヤのスコアを差し出した。
「beingは滅びを否定し存在を、生命を高らかに謳う歌」
「生物だけでなく、無生物も含めた存在するもの全てへの賛歌」
澄香がいのりの言葉を継ぐ。
「ただ、これは『歌』なのよね?」
遙華の言葉に澄香は頷く。
「滅びの歌を原点とするルネシリーズと同じく、この歌自体には何の力もないよ。でも、滅びを謳う歌があるなら、その対極があってもいいよね」
「それは……」
「これはルネさんの否定なんかじゃ決してないよ」
いのりが穏やかに告げる。
「もしかしたらガデンツァですら囚われてるかもしれない、滅びの螺旋への挑戦だよ。それを抜きにしても『生の肯定』っていうメッセージを持った力強い歌なのです」
「なるほどね、あなた達の強い思い、今回も応援させてもらうわ。じゃあ、澄香、次は……」
「うん、進行表を作ったよ」
澄香は遙華に一枚の紙を見せる。
*進行表*
水辺ステージ。
1:チーム紹介(澄香)
2:1曲目(蘿蔔チャレンジ開始)
3:メンバー紹介(澄香)
4:2曲目(いのり)
5:3曲目(沙羅)
6:盛り上げ(澄香)
7:4曲目(イリスちゃんペア)
8:5曲目(ナラカちゃん:模擬戦)
9:ご挨拶
「遙華、翼の用意はできてる?」
紙を眺める遙華に澄香が問いかける。
「ええ、あなた達仕様に着色も完了してるわ。あとでプールでテストしてみましょう」
「あと、当日春香をよべばいいのよね?」
「うん、予定つきそう?」
「ええ、大丈夫そうよ。ちょっとスケジュール調整が必要だけどね」
その時である、ロクトの背後で扉が開いた。
「やあやあ、おそろいだね!」
『イリス・レイバルド(aa0124)』と『アイリス(aa0124hero001)』である。ちなみにイリスは両手に大量の瓶を抱えていた。
そしてその背後に不気味な生物が立っている。
「あ、あのアイリス。あの、あれはいったい……」
「おやおや、遙華さん、ロクトさん、来ていたのだね。進捗状況の確認かな?」
アイリスが羽をパタパタさせながら歩み寄るとテーブルの上に伏せられていた紙を一枚表にする。
そこには歌詞と妖精にしか読めない音符がかきこまれている。
「アイリスの羽をパズルのように分解し倍加して再構築。それを繰り返して三十二枚羽に変え、一枚一枚で別の音を奏でる」
「アニマって曲だよ」
そうイリスは告げると、自分の椅子に歩み寄る……のだが、澄香にがしっと捕まえられて膝の上に乗せられた。
「私達も私達でガデンツァへの対策を考えていてね『固有心振動数』だったか」
「『固有心振動数』それに対しての調査はまるで進んでいないけど」
何かつかめたの? そんな遙華の視線にアイリスは首を振る。
「おそらく、魂の振動だとは思うのだがね。遙華さんお得意の科学的な観測な観測が難しいのなら、神秘的な方向で魂を再現し観測しようというアプローチだよ」
「なるほど、多方面からのアプローチは常套手段ね」
「自分で言うのもなんだが、私は神秘の塊だしね」
「そこでこの曲?」
「ええ、この曲は……」
口に含んだコーヒーがにがかったらしい。
顔をしかめるイリスに、くつくつと笑うナラカである。
「ところで、その後ろの生物はいったい何なのかな?」
ナラカが指をさすと。妙に蒼くてツインテールな四角い生物が左右上下にじたばたと動いた。
「タカナッシー!!」
「うわ! これアウトだよ!」
いのりが絶句する。
「よく気が付いてくれました!」
澄香がイリスを抱きかかえて立ち上がる。
「某ゆるきゃらを真似してみました。キグルミはみんなで手作りしました」
「タカ! ナッシー!!」
「文句ばかり言います」
「ちょっと、この着ぐるみ暑すぎるんだけど、あと、私は某ナシの妖精の親戚です」
「こらーーー!? アウト通り越して大暴投だから!?」
「大変だったのです」
蘿蔔が職人のような笑顔を浮かべる。
そんな蘿蔔を尻目にいのりはカメラに映らないように立ち上がる。するといのりは気が付いたなんだがタカナッシーがぴくぴくしはじめた。
あ、なんだかまずい。そう思った矢先いのりがその着ぐるみの背後に回ってチャックをあける。
突如吹き荒れたのは血なまぐさい風。
キグルミの中味は、ケチャップでも爆発したのかなと思えるくらい真っ赤で、対照的に真っ青になった沙羅が白目をむいてぴくぴくしていた。
「うわああああ! 沙羅さん! じいや! 早く早く!」
共鳴して回復作業を施す。その光景を見て一抹の不安を胸に抱える遙華であった。
● ALA作戦会議
「皆さん、こんにちわ。ALAです。皆のハートに真心お届け!」
フラッシュが瞬く、スピーカーを震わせて大音量で曲の流れるホールの最前線で『雅・マルシア・丹菊(aa1730hero001)』がシャッターを切っていた。
その目の前にラブズッキュンを撃ちながら登場したのはルナ、アル、杏樹の参人。
ステージが証明で明るく彩られた。
「『ALA』アル・ルナ・杏樹の頭文字なの!」
直後響いたのは軽快な音楽。
『forward』のイントロである。
ルナと二人で手を繋いでステージ中央から声を響かせる杏樹。
ここは大型ホール。練習のために貸し出されたリハーサル施設。
先ず姿を現した杏樹は借り衣装で舞い散る。そんな彼女の姿に遙華はデザイン画を重ねて眺めた。
白雪の振袖、それは光を鮮やかに反射する素材で作られていて。弐曲目『桜クラクラ』ではその身に桜色の光を投影していた。
オルゴールとテクノポップを組み合わせた曲。
――雪が降り積もる
不安が君の心凍らせる
街中がスノウブルー
――不安で閉ざした君の心の扉
魔法かけて開くよ
空に手を伸ばして
桜クラクラ
――街に光満ちて
雪ノ下から希望が芽吹き
君の涙は春風に消え
笑顔の花が咲く
――春よ来い
僕の恋
君と繋ぐ手
きっと届くって
――寂しい君に
魔法のコトバ
君と手を繋いで
桜クラクラ
暗い心さよなら
曲に対して振り付けはまだ途中なのかぎこちない。本番までは時間があるので今日はざっくりと本番のイメージを掴むことが目的のようだ。
仕方ないかと、遙華は瞳を閉じる。ステージの感動は本番までお預けである。
「楽しみね」
遙華は手元の進行表に視線を下ろした。
曲の流れとしては『forward』『桜クラクラ』『1cm』『もう一歩』の順番である
アルが最後に『1cm』のアンサーソング『もう一歩』を謳い。フィニッシュである。
流れとしたら盛り上がりを意識できたよい進行表である。
その流れを一連でこなした三人は、榊が曲をとめると、息を荒げながら舞台袖から出てきて、ステージ中央に倒れ込む。
息を荒げる参人に対してロクトがボトルとタオルを手渡した。
「いいステージだったわ」
「気に入ってもらえてよかったの」
そう杏樹が微笑むと台本に感じたことを書きとめていく。榊の照明のタイミング。足運び、演出。MCのやり方。
何事にも真っ直ぐ取り組む性格の少女は疲れも感じさせずにクオリティーを研ぎ澄ませる。
「アイドルの人達スゴイ。歌詞ってそんなにポンポン出てくる物なの?」
共鳴を解いて床に転がる杏奈、そんな杏奈の背中を叩いてルナが告げる。
「……杏奈、大丈夫?」
「大丈夫、それより休憩にしましょう」
そう杏樹がお茶をいれつつ、杏奈がクッキーの用意をする。
「コンセプトは『傷つき落ち込んだ人を応援したい』ってきもちなの」
そんな休憩時間の合間に杏樹が唐突に告げた。
「とても明るい素敵なステージだったものね」
「『forward』はつらい過去や困難を乗り越えて前を向こう! って明るい歌よ」
そう杏奈が告げると、ルナの頭をわちゃわちゃとかき回す。
「1CMは杏樹の代表曲で……」
「もう一歩は茉莉花の思い出の曲だね」
そうアルは言って笑った。
「また、一緒にステージに立てるなんてうれしいな」
● 姉妹ユニット
「うう! あの子私に準備を負かせて自分の仕事に行っちゃったのよ!」
『楪 アルト(aa4349)』が涙目になりながら遙華の手を取った。
「あ、大丈夫よ枠はあるから。枠は。にしても大変ね」
さすがの遙華もたじたじであったが不安げな彼女をむげに扱うこともできなかったので、同じ椅子についた。
ユニット名『トワイライトツヴァイ』略称トワ☆ツバ。
彼女と彼女の姉妹によるユニットで当日の登録名でもある。
「ほら、私達それぞれ『日向の音~soleil~』そして『影踏の音 ~Forsythia~』を持ってるでしょ?」
「ええ」
「それを合わせてみようとおもってるんだ」
『安寧の歌』と名付けたらしい。
日向の暖かさと日陰の安らぎの二つの意味を込めてある詩
夕燈がソプラノ調、アルトがアルト調。二人で時間を取って一生懸命練習しているらしい。
「あとは、ECCOさんの曲謳えないかなって」
曲名『ダスト』ECCOの描き下ろしの曲。~36時間TV~にて初公開された曲だ。
「場所は屋外ステージでいいのよね」
「ああ」
「抑えておいたわ」
設備の一覧やできる演出などをまとめた資料をアルトに手渡す遙華。
「あとは、当日あの子が間に合うかどうかよね」
「そうなんだよなぁ」
そうアルトは溜息をついて見せる。
「まぁ、何とかやるよ。あたしたちとしても、でかいステージは多く経験したいしな」
そう告げてアルトは輝くように微笑んだ。
● 模擬戦闘
グロリア社に作られた模擬専用の施設。そこでナラカは翼を翻しイリスに突っ込んだ。
その突撃をイリスがいなすと。澄香が上空から魔法弾をばらまく。
当日はMCをしながら、ナラカに弾丸を叩き込む役をやるらしい。なかなかハードである。
それをいのりが間に入って防ぎ、ナラカは水を巻き上げながら直情方向に急上昇。
セーラー服のスカートが揺れて下着が見えそうになる。と言っても白い水着だから見えても大丈夫……と言えば大丈夫だが。
そしてその施設にはいつもはないはずの大型スピーカーが大量に運び込まれている。
曲を流しながらの戦闘。本番を意識した戦闘演出を考えている最中だった。
ちなみに流れているのはナラカの曲。『生ある限り、希望あり』
前回に続く人間讃歌である。いのりの讃歌とは異なる、勇気を讃え謳う讃歌である。
その曲のサビの部分で高らかにナラカは空へと舞いあがった。浄化の炎は太陽のごとく。
そんなナラカは急降下。バアル・ゼブブの戦旗を掲げ盾を構える沙耶。それに突っ込んだ。
ナラカのチャージを受けながら一歩も引かない。
そのナラカへと、光を振りまいてイリスが切りかかった。
だがその時。
「うお?」
「うわ……」
二人の翼がバランスを崩して二人して水の中に突っ込んだ。
「あ~、出力がよわかったのね。ごめんなさい」
水に沈むナラカへと手を差し出す遙華。
「対愚神用の翼でないとダメね」
「ああ、耐久度は上げた方がよいだろうね」
水から上がるナラカに、そんなナラカに例のタオル……モノプロタオルをかぶせ水気をふき取ろうとワシャワシャする。
その時だ、ナラカが顔をあげてあたりを見渡した。
「おや? 蘿蔔はどこへ?」
その質問には澄香が答える。
「蘿蔔チャレンジの練習に行ったよ」
「ああ、蘿蔔チャレンジか」
「うん、蘿蔔チャレンジ……」
「…………」
「…………」
「まぁ、放っておいてもだいじょうぶだろう」
その場にいなくても特に探されることのない蘿蔔であった。
「うん、蘿蔔なら放っておいても大丈夫。イリスちゃんのリハーサルを観よう」
(蘿蔔かわいそう、強く生きて)
遙華も探しにいかない始末。
しかし仕方ないのだ。イリスのステージは特に音響が複雑で、遙華も気を抜くわけには行かないのだ。
「えっと、微妙な雰囲気ですけど歌っていいんですか?」
イリスが水場の中央で手を振る。
「ええ! はじめてちょうだい、むしろイリスの方が大丈夫? ってかんじ。疲れては……なさそうね」
そう納得するとさっそく音楽が流れ始める。
だがまだ、ステージの音響は使っていない、それ全てイリスの翼から響く音である。
音の一つ一つが全て別の感情を表現。
音楽で感情を再現し、無数の音楽を織り込む事で音楽そのものを魂として再現しようという取り組みである。
と事前にメンバーには説明されていたのだが。
実はさっぱりわかってない。まずは完成系を見せてもらった方が早いのだろう。
そう思ってステージに立ってもらったのだが。
もはやすでにわけが分からない。
三十二枚の羽を操る一人音楽団状態であり、もはやバンコクびっくり人間ショーに出られるレベルである。
「これは本番が楽しみね」
音響さんの人数を倍にしないとな。そう思いながら遙華は頷くのであった。
● 大切な人への想い
「あなたは確か、ALA以外にも催しものをやりたいのよね」
「うんそうだよ!」
アルトとの会議の後に遙華の前に座ったのはアルだった。その小さい体にどれほどのパワーを秘めているのだろうか。歌以外にも企画がやりたいとは。
遙華は素直に感心した。
「題して【大切なひとへの想い、貴方だけの歌にします!】」
ふんふんと頷きながらメモを取る遙華である。
「例えば恋人、家族、友人。感謝の気持ちや愛情、言いそびれた『ごめんね』、当人達の間だけで通じる暗号。中々言えない言葉を歌にして届けませんか、って企画」
「思い。言葉……つまり。私たちの想いを代弁してくれるということね」
そう告げると遙華はアルの手を取った。
「素晴らしいと思うわ!」
なにせ遙華は生来の口下手である。しかし相手が目の前にいない状態、例えば紙の上などでは自分の想いが素直に出せるのだ。
「う、うん。チケット購入後に簡単な歌詞を提出してくれたら。僕が謳うよ」
そしてアルは喉に手を当てて耳をふさぐと。ロクトの声でこう告げた。
「声のサンプルがあれば、もうこの世界にいない人の声だって再現できるよ」
「すごいわね、来場者向けに募集をかけて見ましょうか、でも時間があまりない面も含めて、アル自身でも募集はした方がいいと思うの」
「うん、わかったよ。あ、あとは森林ステージの使い方について確認したいことがあるんだ」
そうアルはタブレットを取り出すと、それに表示させたのはとある構造体の設計図。
それはステージ全体を再現した見取り図。
「テーマは秘密基地で、キャッチコピーは頑張る貴方へ疲れた君へ、癒しと驚きの一時を」
「ふんふん、なるほど。チケット用の撮影もしないとね。そこは雅と話をした方がいいのかしら」
「うん、お願い、そして僕たちがやりたいのは3Dマッピングと音を飽和させての光と音のステージだよ」
「ふんふん」
「沢山の蛍を投影して、僕と君たちだけの秘密基地・進行表はこんな感じだよ」
*進行表*
1:光の音
2:higher!
幕間 MC(挨拶と簡単に企画説明
3★個人企画曲群
・MC(この場で好きな単語やテーマを募集、それを元に年内に曲を作ると発表
観客少人数だからこそ出来る秘密共有で、特別感ドキドキ感を
4:黄金色のプリンス
「3番のところで企画で集めた歌を披露するのね」
「うん、たくさん集まるといいなぁ」
「二回目のMCは即興要素が強いのね」
「うん! ライブは生もの。一つだって同じライブはない。それなら生ものを突き詰めて、お客さんと一緒に作り上げちゃおうって。思ったんだ」
「大変よ?」
「覚悟の上だよ」
「ふふふ、頼もしいわ。じゃあ。もうちょっと具体的な話にうつっていきましょう」
● 出店もやるよ!
二敗目のコーヒーが上がった。エプロン姿のカゲリは、緊張……等微塵も感じられないいつもの表情でセバスを見つめている。
セバスはお上品にカップに手をかけ。音もなくコーヒーを一口、口に含むと、その香りと苦みを楽しむ、一連の動作がひどく長く感じられた。
「はい、結構です。カゲリ様は大変筋がよろしゅうございますな」
その言葉にカゲリは瞳を閉じて満足そうに頷いた。
おそらくはアイドルたちの出店で振る舞うのだろう。
そう、がーでぃあんずのメンバーは、夏に嬉しい、アイスクリーム屋さんまで開こうとしている。
「売り子…そんな、アイドルみたいな!?」
「アイドルなのだがねぇ」
イリスとアイリスもおそろいのエプロン姿。当然彼女たちの蜜も提供されている。
「澄香! 僕の方は準備できたよ!」
味は少し、風変わりな物が多かった。
まず『歌姫さま香水味』
「いのりをイメージしたフレーバーだよ」
澄香が可愛らしく告げる。遙華は首をかしげていった。
「知ってるわよ、私のもあるんでしょ? あと、蘿蔔のはなんだっけ。泥水なんだっけ?」
「あとは、ハーブフレーバーのアイスだよ」
いのりがアイス屋さんがよく使う、あの……しゃこしゃこと音がするあれでアイスを救って遙華に差し出してくれる。
「おいしい」
「これは、アイリスの蜜を使ったアイスだ」
そうカゲリの声が聞えてきたために視線をあげてみると、遙華の目の前にエプロン姿のカゲリがいた。
何気に似合っているのが面白く、遙華は少し視線をそらして小さく微笑む。
「覚者よ、ここに私たちをテーマにしたフレーバーが無いぞ!」
「作ってないからな」
「当日までに開発するのだ!」
「無茶をいうな……」
「あとは当日までにグロリア社味とルネ味を用意することだね」
澄香が言った。グロリア社味とはエナジードリンクの味わいで。ルネ味は口の中ではじけるキャンディー入りのソーダ味。
「これで熱中症対策もばっちりね」
沙羅が告げる。
「ええ、普通に食べても美味しい、嬉しいしね。うん。蜂蜜味も美味しい。蘿蔔も食べてごらんなさいよ」
そう遙華がスプーンを振り回しつつ蘿蔔を探す。
しかし、蘿蔔の姿はどこにも見えなかった。
● 今日の蘿蔔
「レオ」
「なんだ?」
「なんで、私、走らされてるんですか?」
蘿蔔はジョギングスーツで、グロリア社の周りを永遠と走らされていた。
「当日のためらしい」
「いったい、何をさせようというのでしょうか」
こうして着々と準備が進む中。蘿蔔はまだ、当日の悪夢の事を知らない。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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