本部

夏だ、海だ、遭難だ!!

落花生

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
4人 / 4~10人
英雄
4人 / 0~10人
報酬
無し
相談期間
5日
完成日
2017/07/31 15:29

掲示板

オープニング

 強い日差しがさんさんと降り注ぎ、青い海はきらきらと輝いていた。
「うっ、うっ、海だー!!」
 ひゃっほーい、とクルーザーの上からは歓喜が上がる。
 とある南国の国。
 この国で愚神が発見され、リンカーたちは派遣された。その仕事はすでに終了したが、せっかくだからという現地スタッフの計らいで船を出してもらえたのだ。向かうは、無人島。一晩限りのキャンプを行う予定なのだ。
「南の島っていうのは天気が変わりやすいから気を付けて。あと、明日の夜までは迎えには来れませんからね」
 たっぷりと食料や遊び道具を島に持ち込んだリンカーたちは、船長から注意事項を聞く。
「あと、洞窟には入らないほうが良いですよ。ここの島にはドラゴンがでるっていわれてますから。まぁ、どこかの金持ちが逃がしたペットが住み着いているだけだとは思いますが」
 それ以外は、とくに危険はない島だと言う。
 森は小さくて大型の動物はおらず、島の面積のほとんどが白い砂浜だ。
「じゃあ、気を付けて! 一応無線はおいていきますけど、緊急時だってすぐには迎えに来れないですからね」


 島の天気は変わりやすい。
 船長の言葉を証明するかのように、突然のスコールに見舞われる。痛いほどの雨にリンカーたちは「きゃーきゃー」と悲鳴を上げながら逃げ回った。
「ああ、波が!」
 海は荒れて、大きな波が持ち込んだ食料や道具をさらっていく。
 これはもう南の島でバカンスを楽しんでいる場合ではないと船長に渡されていた無線の電源を入れる。雑音が多いが、何とか船長の言葉は聞き取れた。
「う……みが……あれすぎて……むかえ……はむりです。しばらく……は、そっちで……」
 それを最後に、ぶちっと無線の電源は切れた。
「もしかして……迎えが来ない? これって、遭難!!」
 かくして、リンカーたちのバカンスもといサバイバル生活が始まったのであった。

解説

・無人島で助けが来るまで(食と住居を確保して)生活してください。

島……小さな無人島。ほとんどが砂浜。非常に天気が変わりやすく、スコールが降ることもある。島の枯れ木は濡れているために、火をつけるのに苦労する。
森――面積が小さく、木々の背も低い。大きな動物はおらず、最大の動物は野兎。肉食動物はいない。火を通せば人間が食べられる木の実も生えているが、味はあまりよくはない。小さな川も流れている。川は全体的に人が歩けるほどに浅い。なお、川の水は生水なので直接飲むとお腹を壊す。
滝――川の上流にある小さな滝。滝壺の下は、人が泳げるほどに深い。
砂浜――美しい砂浜。スコールの時以外は、波は穏やか。だが、一度スコールが降るととても荒れてしまう。浅瀬には魚はあまりいない。
浜辺の岩場――貝がある場所。しかし、貝やカニと言った食べられるものは少ない。

洞窟……ドラゴンがいると噂される大きな洞窟。島で唯一、なにも工夫しないで雨風を防ぐことができる。暗くて、底冷えする。
(PL情報――洞窟の奥には兎と蝙蝠の群れがおり、時より物音がする。また、船長は予定通りにやってくる)

道具……食料を含めてすべて流されているため使用不可能。

以下、PL情報

野生化したリスザル……本来は島にいないはずの動物。少数ながら群れで行動しており、食べ物を奪うことを目的に行動する。とても素早く小さいため、なかなか気配には気づけない。それなりに知能が高く、人をおびき寄せて食べ物を奪うと言った行動をとることもある。島の植生が乏しく、常に空腹。

リプレイ

●無人島には危険がいっぱい
 降り注ぐ太陽の光。
 青い海。
 白い砂浜には、置いていたはずの荷物の残骸
「あー……珍しいパターンだな」
 麻生 遊夜(aa0452)は呆然と呟いた。
 鞄一杯に詰め込んだはずの食料や水は、魚たちの栄養になったようである。遊夜の隣では、ユフォアリーヤ(aa0452hero001)がしょんぼりとしていた。
『……また、バカンスじゃ……なくなった』 
 思い返してみれば、自分たちの旅行は愚神やらハプニングでつぶれてばかりだ。愛しい人とは一緒にいるだけで楽しいけれど、これはちょっと違う。
「んー、困ってしまいましたね……」
『ま、悩んでもしょうがない。出来ることをやろうぜ』
 紫 征四郎(aa0076)もガルー・A・A(aa0076hero001)も幸いなことに、Tシャツの下に水着を着ている。雨でずぶ濡れになったが、島の気候ならばすぐに乾くだろう。
『皆、水着きてて助かったよな。主に目の保養的な意味で』
 遭難して普段着だったら潤いが足りなくて死ぬところだったぜ、とガルーは豪快に笑った。「下心を隠す努力をするのです!」と征四郎は叫んだ。
 その一方で、オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)はどこか安心したようであった。
「てっきり、水着を着てなかったら雨で濡れて下着がスケスケだったのに……とかは言いださないんだな」
 見直したぞ、とオリヴィエは評価した。
 だが、遊夜、狒村 緋十郎(aa3678)、ガルーは衝撃を受けていた。
『そっ、そんな夢のルートがあっただなんて!』
 とガルーは砂浜を叩き
「くっ、人類にはまだ早すぎるロマンだったというのか!」
 と遊夜は頭を抱え
「俺たちは何かを得て……何かを失ってしまったのか」
 と緋十郎は拳を握りながら耐えた。
『水着を得て、下着を失ったということね。まったく、男は常にくだらないことしか考えられないのね。それより、緋十郎。そろそろ限界ではないの?』
 レミア・ヴォルクシュタイン(aa3678hero001)の言葉に、緋十郎は青い顔をしてよたよたと歩き出す。生まれたての小鹿のような足取りで彼は草むらに消えて、しばらく出てこなかった。
『まったく、山育ちなのに生水なんて飲むから』
 レミアは、にやにやと笑っていた。
 残念ながら救急箱も波に流されてしまい、緋十郎の腹痛を止める手段はない。
『だが、水を確保しなければ俺たちも二の舞だぞ』
 オリヴィエの指摘どおりである。
『火や食料も必要です』
 助けがいつ来るかわからないのです、と征四郎は訴える。
「いつスコールが降るか分からないからな。雨風が防げる場所も必要か」
『ん……これ以上、濡れたら風邪ひきそう』
 くしゅん、とユフォアリーヤはクシャミをする。
『なら、リュカを置いてきた洞窟を拠点にしましょう。ドラゴンが住んでる噂の洞窟なんて、最高にスリリングよね』
 たとえ愚神が出てきても、この面子ならばどうにでもなるだろう。
 そう判断し、レミアの洞窟を拠点に活動する案が飲まれる。
『そうと決まれば、わたしたちは狩りをしましょう。山育ちだもの、本領を見せてくれるのでしょうね』
 レミアの言葉に、緋十郎はまだ答えない。
 正確には、茂みの奥から出てこない。
『わたしの言うことが聞けないの? わたしは食料はいらないけど、兎の毛皮は欲しいのよね。だって、濡れた体を拭けるもの』
 だから私のためにとって来なさい、とレミアは命令する。
「わかった、レミア。ただ一つ、頼みがある」
 あら、とレミアは声を漏らす。
 緋十郎が、頼みごとをするなんて珍しいと思ったのだ。
「誰でもいい……誰か紙をかしてくれ」
 彼の悲痛な声に、ガルーは『すまん。葉っぱで我慢してくれ』と言うしかなかった。

●石器作りは知識がいっぱい
 大きな雨粒は、勢いよく落ちてくる。
 南の島名物のスコールである。
「おにーさんのバカンスは、どーこー!」
 そのスコールに負けないとばかりに、木霊・C・リュカ(aa0068)は叫んだ。
 日光に弱いリュカは一時的に雨宿りした洞窟で、雨は止んだ後も過ごしていた。正確にいうならば、浜辺に置いておいた荷物を確認しに行った皆に置いて行かれた。退屈で死にそうになるなかで皆を待っていたのに、また天気は急に変わってしまった。
「うううっ、白い砂浜、女の子たちのキャキャウフフな声、冷えたカクテル」
 過ぎたものを悔やんでもしょうがないというが、バカンスを期待していただけに裏切られるのは悲しい。
『降り注ぐ雨に負けず楽しめばいい』
 帰ってきたオリヴィエは、開口一番にそう言った。
「この雨当たると痛いよ!……それで、何か収穫があった?」
 リュカの言葉に、オリヴィエは首を振る。荷物はひとつ残らず流されて、役に立ちそうなものはなかった。
『とにかく、文明を発達させよう。石器時代くらいまで……』
 目標が低いのは致し方ない。
 なにせ、ここには道具が何もないのだらか。
「本当に何もないのは初めてだな」
 遊夜は、道すがら集めてきた材料を地面に置く。スコールでユフォアリーヤともども再び濡れネズミになった遊夜だったが、必要なものはそろえることができた。
『……ん、全部流れてっちゃった。これから、どうするの?』
 ユフォアリーヤの疑問に、遊夜はにやりと笑う。
「サバイバルというよりは、歴史の授業だな。さて、オドランさん。このなかで一番ナイフを作るのに向いている石はなんだと思う? 石器時代では、ナイフの代わりになっていた石だぞ」
『黒曜石だろう』
 オリヴィエは、集めた石のなかで一番黒々とした石をつまむ。
『こうやって、石と石を打ちつけて石器を作っていたんだろう?』
「そうそう。黒曜石は鋭いから、手を切らないようにな」
 仲良く石器づくりを始める遊夜とオリヴィエに、ユフォアリーヤは「ぽっ」と頬を染める。
『ん……キャンプに来た、父と息子みたい』
「キャンプに来た父と息子は、あんまり石器づくりとかはやらないと思うけど……。二人とも、とにもかくにも火だよ! 寒いったら、ありゃしないんだから!」
 ほっておくといつまでも石器作りをしていそうな遊夜とオリヴィエに、リュカは声をかける。日が暮れる前に光源を確保しなくては、何も見えなくなってしまう。
「おっと、そうだったな。残念ながら、俺たちは火打石の代わりになるようなものが見つけられなかった。なので、ここは石器時代の人たちもやっていたキリモミ式でいこうと思う」
 用意するのはヒキリ棒とヒキリ板だ、と遊夜は拾ってきた道具を取り出す。
「ますます歴史の授業っぽくなるね」
 リュカは「懐かしいな」と呟く。
「火が付いたら、今度は理科の授業になるぞ。飲み水を蒸留しなきゃならないからな」
 喋りながら、遊夜は考える。
 義務教育までの知識でこれだけのことができるのだから、日本の教育は馬鹿にできないと。
「これから、一番大事なことだ。このキリモミ式の火付けは……早い話が人力で摩擦熱を起こす発火方法だ。つまり、火が出るまで木と木をこすり付けなければならない。……リーヤ、共鳴しよう」
 現代人の遊夜は、根性で火をつけることをあきらめた。
 数十分後、そこには火種とバテたユフォアリーヤの姿があった。
「……上手く行ったか?」
『……疲れた』

●食料さがしは危険がいっぱい
「これは食べれますか?」
 森を歩く征四郎は、もいだ実が食べられるかどうかをガルーに尋ねる。
『ああ、問題なく食べられる……』
 ガルーにお墨付きをもらったので、征四郎は真っ赤な実を口に踏んでみる。ほとんど種で、果肉は驚くほど少ない。サクランボに似ている。もっとも、似ているのは触感だけだった。
「!!!!!!??」
『すごい不味いが』
「それを早く言うのですよ!」
 口のなかがイガイガするです、と悲鳴を上げながら征四郎はサクランボに似た実を吐き出した。
「塩作りとか、水の濾過とかは上手くいったのに、食料はなかなか見つかりませんね」
 征四郎は、しょんぼりしていた。皆のために食べ物を一杯見つけたいのに、どうにもうまくいかない。
『元々、植生が乏しいんだな。小さな島だから、しょうがないか』
 ガルーは、木の実を拾い集める。
『あく抜きすれば……まぁ、食えるか』
「美味しくはないのですね」
 征四郎は、ため息をついた。
 彼女の様子に、ガルーは苦笑いをする。普段食べている野菜や果物は、人間の味覚に合うように品種改良されている。だが、野生の植物はそうはいかない。毒がないだけありがたい、と思わなければ。
「ガルー、さっき集めた実をたべちゃったのですか!」
『はぁ? 俺様はちゃんと真面目に採取してたぞ。って、俺様が拾ってた木の実もなくなってる!!』
 どこにいったんだー! とガルーは叫ぶ。
 その瞬間に、緋十郎が坂道から滑り落ちてきた。
「ヒジュウロー、大丈夫、です!?」
 彼の腕の中には、緋十郎が狩ってきたと思われる兎と「きー、きー」泣きながら暴れまわるリスザルがいた。
「……この島に生息しているサルのようだ。腹が空いているらしく、食料を常に狙っている。……ちょっと我慢できない間に、俺も兎を数匹やられた」
 何を我慢できなかったは、聞かなくともわかる。
 どうやら、彼の腹はまだスコールが収まっていないらしい。
『あら、わたしの入浴シーンに見向きもせずに猿と逢引? ずいぶんと偉くなったものじゃない』
 黒い水着姿のレミアは、白い足で緋十郎を踏みつける。
『緋十郎はこの島に残って、猿の王にでもなったら?』
「レミア誤解だ。……俺は食料泥棒を捕まえるために」
 レミアに虐げられたせいで腕の拘束が緩んで、リスサルは兎をくわえて森の奥深くへと逃げようとした。
「に、にがさないのです!!」
『おい、今日の夕飯を返せ!!』
 リスザルに果敢に挑んだのは、征四郎とガルーであった。二人とも木の棒を持って、リスザルを退治しようと躍起になる。
『ってこら! まとわりつくな!』
『あーあ、遊ばれちゃって』
 リスザルは、ガルーの顔面を派手にひっかいてどこかに行ってしまった。

●洞窟探検
「俺が! お兄さん達が、働く農業系アイドルだ!」
 生水を蒸留して、せっせと飲料水を作っていたリュカは突然叫んだ。どうやら、あまりに地味な作業に飽きてきたらしい。
「オリヴィエは、新しいお父さんと魚釣りとかして新しい思い出をたくさんを作ってきたのに。お母さんは、さっせと飲み水を作るだけなんて……」
『誰が、お母さんだ』
 オリヴィエは、思わずリュカにツッコンだ。
 ユフォアリーヤは『ん……本妻の座は渡さない』と尻尾を膨らませていた。一方で、遊夜は楽しげだ。
「おー、新しいお父さんと魚釣りなんていい思い出になったな。学校の宿題の絵日記に書いていいぞ」
 複雑な家庭ごっこが繰り広げられるなかで「ただいまです」と征四郎たちが帰ってきた。一番目を引いたのは、ガルーとレミアに支えられた緋十郎であったが。
『たぶん、脱水症だと思うのよね。お腹を壊してたし、水分もあまりとれなかったから』
 レミアの判断は、おそらくは間違っていないだろう。
 だが、ここにはスポーツ飲料という気の利いたものはない。とりあえず、リュカが蒸留した水にガルーたちが作った塩を解かしたものを飲ませて様子を見ることにする。本当は砂糖もあった方がいいらしいが、残念ながら無人島にはそんなものはない。
『緋十郎はわたしが見ているから、皆はご飯の準備をしてて。大丈夫、見た目通りに丈夫だから死なないわよ』
 ぱたぱた、と手で風を送りながらレミアはそっと緋十郎の顔を見つめる。
『まったく。こんな状態でも、わたしに血をささげるなんて馬鹿なんだから』
 飲む必要なんてない水を口に含んで、レミアはそれを火照る男へと与えた。
『早く目覚めなさいよ』
 そう願いながら。
『……お肉!』
「はいはい、まず血抜きと捌くところからな」
 遊夜は手早く、緋十郎が狩ってきた兎をさばく。ユフォアリーヤは肉を一口大に切って塩を振り、オリヴィエは肉を木の棒に刺してからせっせと焼いた。
「ねぇ、このやっぱり奥からなにか聞こえない……?」
 リュカは、洞窟の奥から聞こえてくる音に澄ました。
 オリヴィエは、ぼそりと呟く。
『……船長は、ドラゴンが住んでいると言っていたな』
 あの時は、誰も取り合わなかったが――。
「住処のことは大事なのです! 危険がないようにしっかり確認しておくのですよ」
 征四郎は、勇んで立ち上がる。
『洞窟のドラゴンね。もしかしたら、腹痛に効く薬草の一つも持っているかもしれないわね』
 レミアも立ち上がった。
 まさか子供と女だけに行かせるわけにもいかず、ガルーが二人について行く。
『ん……ついていかないの?』
「いや、オチは見えたからな」
 遊夜の言葉に、ユフォアリーヤは小首をかしげた。
 そして――次の瞬間、バサバサっと大きな羽ばたきの音がした。
「まさかっ! これが、ドラゴンの翼の音」
 リュカの叫び声に、オリヴィエは「違う」と否定する。
『……蝙蝠の群れだ。きっと群れで飛ぶ蝙蝠の姿や翼の音が、ドラゴンの伝説になったんだろう』
「うわぁ! 蝙蝠と蝙蝠の間に、なにか小さなものがいるよ!!」
 お肉がとられちゃう!! とリュカは悲鳴を上げた。
 遊夜の号令が飛んだ。
「各自、食料を守ってくれ。……あれは、リスザル?」
 
●救助されました
『まさか、ドラゴンの正体が蝙蝠だったなんて』
 がっかりよ、とレミアは頬を膨らませる。
「……何もなくてよかった」
 その隣で、緋十郎は頷く。
 翌朝、迎えの船はやってきた。そして、船に乗せてあった常備薬と経口補水液で、緋十郎はすっかり回復したのであった。文明ってすばらしい、と彼は人知れず感動したという。
『ん……道具がないから、本当に大変だった』
「でも、何もないから工夫できる楽しさはあっただろう」
 これぞサバイバルの醍醐味、と遊夜は満足そうであった。
『今度は……子供たちと一緒にキャンプがいい』
「そうだな。今日みたいなところじゃなくて、安全な場所を探さないとだな。オドランさんも一緒にどうだ?」
『……考えておく』
 石器作ったり魚を捕まえたり、サバイバル生活は思いのほか楽しかった、だが、オリヴィエには一つ気がかりがある。ほとんどを洞窟で過ごしていたリュカは、どうだったのだろうかと。彼の顔を覗き込むと、リュカは優しげに微笑んだ。
「塩だけのお肉って、思ったより味気なかったね。でも、大昔の人たちはああいう料理しかなかったんだと思うと……」
 現代に生まれてよかった、とリュカは呟く。
「お兄さんのことは、心配しなくていいよ。次はちゃんと日傘に日焼け止めを持っていくからね。だから、次はちゃんとしたキャンプをしようよ」
 全てを見透かしたようなリュカの言葉に、オリヴィエは思わず海を眺めた。無意識の照れ隠しだったのかもしれない。
「……本当に、現代に生まれてよかったですぅ」
 青い顔で征四郎は、呟く。
 別に、船に酔ったわけではない。
 昨晩、蝙蝠の群れに交じってリスザルの奇襲を受けた面々はほとんどの食料を失ってしまった。空腹を抱えながらも、征四郎は幸せだった。
 だって、洞窟の奥に兎の群れがいたのだ。
 ふわふわで可愛くって、彼らのなかにうずもれて眠ればきっと夜だって寒くはないだろう。そう思った矢先に『おっ、食料発見! ラッキーだったな』とガルーが呟いた。
 そこから先は征四郎が止める間もなく、兎を捕まえる、絞める、血抜きをする、皮をはぐ、調理をする、の流れ作業であった。昔の人々は日常的に見てきた後悔なのだろうが――色々と衝撃があった。あまりにも簡単に捕まる兎に「アホウドリって、こんなふうに減っていったんですね」という奇妙な感慨まで生まれてしまった。
――ともかく、文明ってすばらしい。
 それが、サバイバル生活を通して得た全員の感想であった。

●船のなかにも危険がいっぱい
「えっ。なんで、こんなところにリスザルが?」
 船長は、目を疑う。自分の前に、なぜか見覚えのないリスザルが一匹。実は、緋十郎がこっそり懐にいれて連れ帰ってきた一匹である。人になれていない猿は思いっきり船長の顔面をひっかき、船長も負け時と猿を捕まえようとした。
「コラ! 待て!!」
 船の航路が、本来のものから徐々にずれていく。
 果たして――リンカーたちは無事に文明社会へとたどり着くことができるのか。
「キッ、キッキー!!」
 それは、リスザルたちだけが知っている。

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 仄かに咲く『桂花』
    オリヴィエ・オドランaa0068hero001
    英雄|13才|男性|ジャ
  • 『硝子の羽』を持つ貴方と
    紫 征四郎aa0076
    人間|10才|女性|攻撃
  • 優しき『毒』
    ガルー・A・Aaa0076hero001
    英雄|33才|男性|バト
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 緋色の猿王
    狒村 緋十郎aa3678
    獣人|37才|男性|防御
  • 血華の吸血姫 
    レミア・ヴォルクシュタインaa3678hero001
    英雄|13才|女性|ドレ
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