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【相談】調停の終わり
最終発言2017/04/27 21:07:40 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/04/24 23:45:19
オープニング
●迫る者達
秘密結社シーカ。『調停』と称しH.O.P.E.、アメリカ、ロシアを害さんと謀る。
先の衛星兵器ライトニング・ステアウェイ2号機『ヘヨカ』に絡むシーカの行動は、狙われたH.O.P.E.とロシアは当然として、『ヘヨカ』を利用されたアメリカにも捨て置けない脅威と認識させた。
先の戦いで投降し、捕縛されたシーカ結社員達の身柄はH.O.P.E.が抑えており、尋問や調査は続けられている。
現在シーカを牛耳るフランツ・フォン・ノイラートら幹部達が拠点とする場所の捜索は、H.O.P.E.の他にロシア政府やアメリカ政府の各諜報機関も行っている。
ただ、これまで散々シーカに振り回された形となったロシアとアメリカいずれも、フランツ達を裁判にかけるのは自分の国だと譲らず、決闘が起きそうな雰囲気だった。
●幕引き
そしてH.O.P.E.もシーカを壊滅させるため、拠点の特定と幹部達の確保に向けた動きを進めている。
「これまでみんなが確保できたシーカ結社員や証拠から、シーカ幹部フランツ・フォン・ノイラート達がいる拠点が判明したよ」
担当になったジョセフ・イトウ(az0028)が機械を操作すると、スクリーンにはロシアでもアメリカでもない、世界のどこかの国の地図が示された。
やがてその地図の1点が拡大され、ある建物が映し出される。
「この建物には複数の企業が名前を連ねているけど、その実態は全て同じ。秘密結社シーカの隠れ蓑だ」
この建物の情報は、先の『ヘヨカ』発射を阻止する際に、『ヘヨカ』を守るふりをしていたトリブヌス級愚神ニア・エートゥスが、秘密裏にエージェントへと渡した記憶媒体の中にあった。
その記憶媒体はH.O.P.E.情報部が解析にあたり、最近になってこの内容が明らかになった。
「対テロ対策っていう名目で、建物の構造自体はやたら頑丈に作られている。こいつら自体がテロリストのようなものだから、笑えない冗談だけど」
現在この建物は、別ルートからこの拠点を突き止めたらしいロシアとアメリカの諜報組織が強襲したものの、両方ともシーカヴィラン達によって撃退された、との連絡がH.O.P.E.に届けられた。
「ロシアもアメリカも、自分達じゃ手に負えないということで僕達H.O.P.E.に、報酬の増額込みでシーカ幹部達の逮捕を依頼してきた。最終的にどちらの国にフランツ達シーカ幹部を引き渡すかは、現場に行くエージェント達の判断に一任するってさ」
各国の諜報機関員達は、建物への突入能力こそ失ったが現在建物周囲を包囲しており、『あなたたち』より要請があれば、シーカ幹部を運び出す護送車など必要なものを用意すると、H.O.P.E.の間に話がついている。
こうしてシーカを終わらせるための依頼が『あなたたち』の前に提示された。
●共食い
シーカが拠点とする建物最上階深部にある、複雑な認証や暗号の向こうに隠された会議室で。
シーカ幹部フランツ・フォン・ノイラートがニア・エートゥスを詰問していた。
「何をしたのかわかっているのか! 今やシーカは世界の敵扱いだ!」
これまでニアが、裏でシーカの活動を妨害していたことがフランツらシーカ幹部達にばれたらしい。フランツの周囲にいる他のシーカ幹部達もフランツに同調する。
「我々の同志たちをH.O.P.E.に売り、『調停』を潰すとは恥を知れ!」
「ロシアで少々暴れた程度で調子にのるな! 世界の管理者は我々だ!」
シーカ幹部達から浴びせられる罵声に対し、ニアは冷ややかに応じる。
「あれだけのことをしておいて、なぜいまだに自分達が正しいと思われるのですか?」
フランツはニアの問いに応えず、道具をニアにかざす。
「命ずる。全ての責任を負って自害しろ」
本来ならばここでフランツのかざした道具より不可視の力が放たれ、ニアを服従させるはずだったが、フランツがかざした道具は沈黙し、何も起こらない。
「何故だ! 何故、何も起こらない!?」
狼狽するフランツに応じたのはニアだった。
「その道具は『あの方』の制御下にあります。『あの方』が貴方を代行者と認めなければ、道具は何の効力も発揮しません。ですから貴方を代行者から外すよう『あの方』に言上いたしました」
手のひらの上で踊っていたのは愚神ではなくシーカ自身だと、ニアは暗に告げていた。
「たかがケントォリオ級の分際で我らシーカに、世界の調停者に刃向うとは愚かにも程があるぞ」
フランツが狼狽を隠した声でニアにそう告げ、近くの隠しにあるボタンを押すと、部屋の外からシーカ所属のヴィラン達がなだれ込む。
ヴィラン達に包囲されたニアは唇の端を吊り上げ、指を鳴らす。
次の瞬間、何もなかった空間に銃器の群れを従えるコート姿の老人――邪英ラビスと、全身に紫電を纏わせた女性型愚神ズセが次々と姿を見せ、ニアの左右を固める。
「愚かなのは貴方がたですよ」
そうフランツ達に宣告したニアの周囲に暴風が具現化し、無数の銃器と紫電の群れが後に続く。
「ほざくな。『調停』を妨げた罪、その身で贖え!」
フランツの号令とともにシーカヴィラン達がニア達を襲い、シーカとニア率いる『パラダイス・メーカーズ(楽園の作り手達)』が衝突した。
そしてその衝突はH.O.P.E.のプリセンサーに感知され、現場に向かう『あなたたち』へと伝達される。
●粛清と真意
シーカ拠点内の会議室では、ライヴスが吹き荒れていた。
次々とヴィラン達がニアの竜巻で捻じ切られ、ラビスの操る無数の銃撃で穿たれ、ズセが放つ紫電の嵐に貫かれ、鮮血を噴いて薙ぎ倒されていく光景に、シーカ幹部達は慌てふためき、懸命に命乞いを始める。
「ま、待て! 世界は我々の『調停』が必要なのだ!」
「我々を殺せば、この世界の人々はお前達愚神に牙をむくぞ!」
「そ、そうだ! 我々シーカを失えば、この世界は崩壊する!」
するとニアは穏やかに微笑んだ。
「そう思っているのは貴方がたのみです」
ニアの口調には何の敵意もない。これから消すシーカの者達にそんな感情を抱く意味がないからだ。
「ズセ。まもなくH.O.P.E.が来ます。彼らが来たらここへ案内して下さい」
「なぜH.O.P.E.をそこまで助けるのですか?」
ズセから見て、ニアがH.O.P.E.に対しお膳立てを続けるのは不可解だった。
「人間達は私達が滅ぼした存在を賛美するという妙な癖があります。彼ら自身に、シーカという連中が賛美に値しないと確認させる必要がありました」
ニアの思惑通り、H.O.P.E.がシーカの愚行の数々や実態を人間達に明らかにし続けた結果、シーカ存続を望む声はこの世界から消えた。
あとはシーカを滅ぼすだけだが、常にこちらの予測以上の行動をとるH.O.P.E.がどう動くのかも興味深い。
そうニアに告げられたズセは一礼すると姿を霧に変え、会議室から姿を消した。
解説
●目標
シーカの壊滅及びシーカ幹部達を一人でも多く確保する。
確保後ロシアとアメリカどちらに身柄を渡すか決めること。
失敗条件:確保前にシーカ幹部達が全滅する。
●登場
フランツ・フォン・ノイラート
秘密結社シーカ幹部。道具や『調停』で愚神や世界を操っていると思い込んでいた。ニアの強さをケントォリオ級と誤解している。
シーカ幹部達
フランツの同類。愚神勢力からはフランツごと『過去の遺物』とみなされている。
シーカヴィラン×複数
シーカ所属のヴィラン達。現在下記のニア・エートゥス達と交戦中だが押され気味。
ニア・エートゥス
トリブヌス級愚神。シーカ結社員達の粛清に乗り出す。
PL情報:既に道具による制御は受け付けない。H.O.P.E.とは攻撃されない限り戦うつもりはない。『あなたたち』からの話の内容次第では、その場にいる幹部達の身柄を『あなたたち』に引き渡してもいいと考えている。
ラビス
カオティックブレイドの邪英。ニアと共にシーカと交戦中。ニアの意志を尊重。
ズセ
パラダイス・メーカーズ(楽園の作り手達。略称PM)所属のケントォリオ級愚神。ニアの指示で会議室入口にいる。
ムンギア×多数
ミーレス級従魔。略称『影忍』。過去の交戦記録より『毒刃』『潜伏』『地不知』に近い能力を持ち、手裏剣と刀で武装している事が判明。建物内外に人の出入りを塞ぐ包囲網を形成中。
各国諜報員達
『あなたたち』を支援。要請があれば捕獲したシーカ結社員達を収容する護送車など、必要な道具を用意してくれる。
状況
世界のとある場所にある建築物。周囲は無人。無線やヴィラン達の拘束用具は貸与済み。
建物は頑強に作られたため、AGWでも構造に穴を開けるのは不可能。
建物入口は1階にあり、建物最上階深部にフランツらシーカ幹部達とニア達の集う大きな会議室がある。
会議室への入口は現在ズセのいる場所の1つだけ。
リプレイ
●接触
世界某所、秘密結社シーカ拠点内最上階。
深部に至る通路を、拠点への突入を果たした8組のエージェント達が突き進む。
Alice(aa1651hero001)と共鳴したアリス(aa1651)は、眼前に立ちはだかるシーカヴィラン達を確認すると、極獄宝典『アルスマギカ・リ・チューン』を顕現し、ただ一言告げる。
「……どいて」
アリスが宣告と共にサンダーランスを発動すると、アリスの眼前に顕現した稲光が槍の形に編み上げられ、雷の槍と化してヴィラン達に射出される。
アリスのサンダーランスが灼熱の軌跡を残して宙を駆け抜け、途中のヴィラン達を蹂躙すると、ヴィラン達は声にならない悲鳴を上げて薙ぎ倒され、通路に複数人が通れる空間がこじ開けられる。
(この先に幹部達がいるはずだよね)
「最優先はオーダークリア。それ以上でも以下でもない」
内からのAliceの声にアリスは淡々とそう応じ、こじ開けた道を進む横で、大宮 朝霞(aa0476)とニクノイーサ(aa0476hero001)は普段通りの様子を見せていた。
「ニック、変身(共鳴)するわよ!」
「ギャラリーとなる一般人なんていないじゃないか。省くわけにはいかないのか?」
無駄と知りつつも、ニクノイーサが朝霞に控えめに抗議するが、朝霞は首を横に振る。
「ヒーローが変身ポーズを省けるわけないでしょ! 変身、ミラクル☆トランスフォーム!」
自分の掛け声とポーズと共に、ニクノイーサと共鳴した朝霞は『聖霊紫帝闘士ウラワンダー』(自称)に姿を変えて疾駆し、セーフティガスでアリスが倒したヴィラン達を無力化すると、拘束具で手早く拘束し通路の端へと集めていく。
その間にЛетти-Ветер(aa4706hero001)と共鳴したГарсия-К-Вампир(aa4706)は、アリスに倒されたシーカヴィラン達を、朝霞と共に拘束しては、無線で周囲にいる各国諜報機関と連絡を入れていた。
「ようやく、シーカとの因縁が終わるのですね。……ですが、どうやらシーカの件は『私』にとってはあまり有益でなかったかもしれません」
(Гарсия。本気で言ってるんですか?)
内にいるЛеттиより真偽を問う意志が届くが、Гарсияは明確に応えようとはしなかった。
「シロガネ。今回は頼む」
「任せて下さい。おじいはんに負けんようにしますよって」
百目木 亮(aa1195)の頼みにシロガネ(aa1195hero002)は快く応じて亮と共鳴し、亮は周囲に潜む従魔ムンギア達の位置を割り出しにかかる。
「位置はこんなところだ。向かってくる奴、邪魔だと思う奴以外は放置でいいと思うぞ」
亮はライヴス通信機「雫」や無線を介して仲間達にムンギア達の位置を報せるとともに、そう仲間達へ助言を送る。
その近くで戀(aa1428hero002)と共鳴したニウェウス・アーラ(aa1428)は、突入直前に伝えられた『シーカとトリブヌス級愚神ニア・エートゥスの衝突』という情報を持てあましていた。
「ちょっと……頭を抱えたくなる状況?」
(でもまぁ、シーカ幹部達の確保という最優先でやることは変わらないわ。ぱぱっーといきましょ?)
「そうね。目標は変わってないわね」
内からの戀の励ましにニウェウスは頷くと、ロストモーメントで双炎剣「アンドレイアー」を複数構築し、近くに潜む従魔ムンギアを、空間を焼き焦がすような複数の剣閃を残して切り刻む。
ニウェウスに身体を細断され、塵を噴いて消えるムンギアの向こうでは、ミュー・イーヴォル(aa0002hero002)が、傍にいる努々 キミカ(aa0002)に向け、現状を酷評していた。
「手の内にあると思い込んだ愚神に背かれ、滅びゆく。『調停』を僭称する連中には相応の末路だ」
キミカはミューの意見を否定はしなかったが、現状を憂いていた。
「でも、私は無用な殺生が好きではないんです。行きましょう。これは討伐であり、捕縛であり、救助です」
「甘い考えだが仕方ない。連中には生きてもらわねばならんからな」
ミューがキミカの意志を否定しない物言いでキミカと共鳴すると、キミカは『日蝕』の銘を持つ九陽神弓の弓弦を静かに引き絞ってトリオを発動する。
弓弦の鳴る音が3度響き、飛翔した3本の矢状ライヴスが途中に潜む3体のムンギア達の身を射抜き、3度肉を穿つ音を通路に残し、ムンギア達を塵と化す。
メグル(aa0657hero001)と共鳴した御代 つくし(aa0657)は、極獄宝典『アルスマギカ・リ・チューン』を駆使して通路上のシーカヴィラン達やムンギア達を退けていたが、通路の先に佇む存在を見て何かを思い出す。
「メグル。もしかしてあれって……愚神ズセ?」
(そのようですね。『パラダイス・メーカーズ(楽園の作り手達。以下PMと略)』所属の愚神です)
つくしが内にいるメグルに確認すると、過去にズセの関わった依頼報告書に目を通していたメグルより、肯定の意志が返ってきた時、先に到達した朝霞がズセに声をかける。
「私達はH.O.P.E.です。シーカ幹部の逮捕に来ました。その件でニアと話がしたいんです。取り次いでもらえませんか?」
朝霞に続き、つくしもズセに向けて、今回自分達にニア達PMと敵対する意志はないことを伝える。
「ニアは中にいるんだよね。それなら、ここを通して。ニアにシーカを滅ぼさせるわけにはいかないから」
つくしや朝霞の声を受けたズセは特に反撃するそぶりを見せず、近くの機器に何かを打ちこみ、隠されていた通路を開けた。
「本当に協力的な愚神だな。ま……協力してくれるってんなら俺は良いけどね」
イン・シェン(aa0208hero001)と共鳴したリィェン・ユー(aa0208)は、ズセへの警戒は怠らないが今回はPMとの積極的な交戦を避けるつもりだった。
(そちは相手が協力的なら、愚神であっても気にしないやつじゃったな)
リィェンの内よりインが諦念めいた意志をリィェンに届ける。
「俺からすれば、シーカの連中のやらかしてることのほうが目に余るからな」
(そうじゃな。ならばシーカをさくっと片付けてしまうのじゃ)
インの意志にリィェンは頷くと、ズセが開けた通路を進み、ニウェウスもズセから交戦する意志がないことを確認して後に続く。
「戦う相手を、無駄に増やしたくはないわ。欲張りは損をするし、ね」
(シーカと対決中のPMまで戦う必要はないってこと?)
「そういうことなのよ」
内から届く戀の意志に、ニウェウスはそう応じる中、つくしや朝霞、亮達は今回のニアの真意やニアがこれまでH.O.P.E.に便宜を図っていた理由をズセに尋ね、およその内容を聞き出していた。
そして会議室へとエージェント達が足を踏み入れたとき。
周囲に転がり、辛うじて息のあるシーカヴィラン達。邪英ラビスが展開する無数の銃器に睨まれ、怯えているフランツ・フォン・ノイラートやシーカ幹部達。
そしてつい先ほどまで、彼らを駆逐していたトリブヌス級愚神ニア・エートゥスが出迎えた。
●新たな道
亮はこちらに視線を向けたニアに、常と変わらぬ口調で声をかける。
「お取込み中悪いな。ちょいと俺達もシーカの連中に用があってな。武器をしまってくれないか」
亮の言葉にニアは片手を上げると、ラビスが周囲に展開していた銃器を消す。
(アリス。周囲に倒れてる結社員の様子から見てあのラビスという邪英、恐らく直線の範囲攻撃持ち)
「銃器のように見えるけど、効果から推察すれば、ライヴスキャスターに似た能力の可能性も低くない」
内からのAliceの分析に、事前にウィザードセンスでライヴスを活性化させ、魔法能力を上げていたアリスも自分の見解を冷静に伝え、ライヴス通信機「遠雷」を介し仲間達へ密かに伝達する。
アリスは交渉には加わらず、眼前にいるニアやラビス、ズセ達から情報を集める動きにシフトしていた。
「シーカと衝突されたとの事ですが、御無事でなによりでございます。お茶などいかがでしょうか?」
戦場に近い状況でもあえて普段通りの態度で接してくるГарсияに対し、ニアは備品のある場所を短く伝え、Гарсияの自由にさせた。
「御用件を伺いましょう」
エージェント達の話を聞く姿勢となったニアに向け、朝霞が前に出る。
(朝霞。今はニア達と交戦するのは避けろ。現状では戦力的にかなり厳しい)
(わかってるわよ、ニック)
内にいるニクノイーサと思念でやりとりしながら、朝霞は交戦の意図はないことをニアに示して切りこむ。
「私達にシーカ幹部達の身柄を譲ってもらえませんか? 彼らは私達人間の手で裁かれなければいけないんです」
朝霞はニアへの対価として、フランツが持つという愚神を制御できる道具をニアに引き渡す事を提示した。
(亮はん。あの道具に拘り過ぎると、まとまる話もまとまらへんのではおまへんか?)
亮の内よりシロガネが亮に助言を送る。
当初亮は愚神を制御できるという道具を回収し、分析に回す予定だったが、既に朝霞より道具の提供をニアに提示した以上、回収を強行すればニア達が警戒し、戦闘となる危険性に思い至る。
(そのようだな。道具の回収は諦める)
シロガネに思念で応えた亮は、こうニアへ持ちかける。
「あんたらの情報と思惑で、世界がシーカを望まなくなったんだ。見切りをつけられたシーカを人間達がどう使うか、興味ねえか?」
亮に続きつくしも前に出て、ニアとシーカ幹部達の間に立ちはだかる。
「あなたの真意は聞いたよ。シーカが賛美に値しないって言うなら、それは世界にも広めるべきだと思う」
シーカはヴィラン組織であり、これまで積み上げてきた罪は重い。それはつくしも理解している。
だがその前に自分達やH.O.P.E.が守るべき『人間』であり、殺させるわけにはいかないと、つくしは判断する。
(当のシーカの者達にも、自分達は賛美されないと理解させなければ意味がありません)
つくしの内より、メグルも密かに自分の意志をつくしに伝え、つくしがニアに押し負けぬよう加護する。
「人を裁くのは人だよ。間違ったことは間違いなんだって。もうしてはいけないって教えなきゃいけないと思う」
ただ終わらせるのではなく、シーカのしてきたことが間違いだと広めることが大事だと、つくしはニアに訴え、キミカも人間達による法の断罪を行う事がニア達愚神にとっても利があると、ニアに説く。
「我々は、第二、第三のシーカが現れないようにする為にも、彼らの所業を世界に示す必要がある。ただ抹殺したり、恐怖で縛るだけでは、シーカの件は解決しない」
キミカの説得につくしもこう言い添える。
「手を出さないと約束してくれるなら、シーカは人の手できちんと裁くと約束するよ」
それまで黙って交渉の流れを見守っていたニウェウスからもシーカ幹部達の身柄引き渡しについて意見を提示する。
「まずH.O.P.E.が身柄を押さえ、ロシアとアメリカ双方が平等に尋問できる形にする。その後得た情報によって身柄引き渡し先を決める。これでどう?」
意見を言い終えたニウェウスは会議室の外へと足を向ける。
(あとは外に残るヴィラン達を押さえなくちゃねぇ)
「ん。ちょっと邪魔な人達を、黙らせてくるわね」
内からの戀の提案に頷いたニウェウスは、周囲の仲間達にそう告げて会議室を出て行った。
そしてそれまで備品を使い茶を淹れていたГарсияも意見を述べる。
「私はシーカの方々を賛美する気は少しもございません。ですがこのまま滅ぼす事を讃えるつもりもございません。ロシアにて罪を犯した者はロシアで裁きを受けさせる。それがシーカの方々の活かし方と存じますが」
一連のやり取りの間に、どうやら自分達は助かるらしいと判断したのか、それまで震えていたフランツが尊大な態度で口を出してきた。
「H.O.P.E.の諸君は、世界の調停者たる我々を尊重――」
フランツが言い終える前にリィェンに胸ぐらをつかまれ、氷のような視線と冷徹な態度を向けられ絶句する。
「世界の調停者? うぬぼれるな。貴様らはただのテロリスト集団だ」
(ここまで増長しておる集団もそうおらぬがな)
自分達のみの通じる理屈のためなら、いくら人々や世界に害を与えても構わないというシーカの論理と行動は、リィェンや内にいるインにとってはテロリスト集団以外の何者でもなく、害悪でしかなかった。
「貴様らもその妄想も終わりだ。貴様ら程度の妄想家集団に、この世界が操作される理由も権利もねえんだよ。世界はこの世界に生きる者達一人一人のものなんだ」
(リィェン、そちの言う通りじゃ)
世界は特定の誰かのものではないというリィェンの意志に、インも内より賛意を示す。
「貴様らに残された選択肢は2つだけだ。ここから死体で運び出されるか、生きて裁きを受けるか。生きている内に決めろ」
言うだけ言うとリィェンはフランツが持っていた道具を片手でもぎ取り、フランツを掴んでいた手を放す。
「悪と定めた奴らを自らの手で裁きたがる者もいるんだよ。人間にはな」
リィェンの行動を補足するように告げた亮の言葉に、ニアは頷いた。
「貴方がたの仰る通り、私が手を下すよりは興味深い結果になりそうですね」
そう言うとニアはズセに視線を向けると、ニアの視線を受けたズセが一礼して霧となり、会議室から姿を消す。
「その幹部達の身柄は貴方がたに委ねましょう。私達は引き揚げます」
ニアの言葉と共にラビスが動き、周囲に隠れていたムンギアと思しき無数の気配も、ラビスと共に会議室から去っていく。
ニア達が退散していくのを確認したリィェンは、朝霞の提示した条件を守るべく、手にした道具をニアに投げ渡し、ニアは受け取った道具を握り潰して粉砕した。
「やはり、これからは私達とは敵、ということになるのか?」
立ち去るニアにキミカが確認を投げかける。
自分達と愚神は相容れない事はキミカも承知している。シーカに関して一時ながら『共闘』できた縁に惜しい気持ちも少々ある。
だがキミカは人々を守る者として、敵対する時はニア達と全力で戦う決意を固めていた。
そんなキミカに向けニアは微笑を浮かべ、こう言った。
「私達と貴方がたは敵です。いま交戦を避けているのは、貴方がたと途中まで行先が同じだからです」
そんなニアに向け、Гарсияは『仕えたい』と告げた。
「どこにいようと。誰に仕えようと、私の勝手です。いかがなさいますか、ニア様?」
その行動は他のエージェント達も知らされていなかったようで、会議室の空気が固まった。
(Гарсия。自分が何を言ってるのかわかってるんですか?)
内よりЛеттиが抗議の意思を伝えてくるが、Гарсияは沈黙したままニアの回答を待つ。
ニアは微笑を消し一瞬考える様子を見せたが、やがてГарсияに応じる。
「連れ回したり証を見せろというつもりはありません。ご随意にどうぞ」
言葉通りニアはГарсияに触れることなく会議室から去っていく。
「Прости, мой дорогой господин(申し訳ありません、我が愛しき主様)……」
Гарсияはニアではない誰かに向け、そっと囁いた。
●残党確保
ニア達が去り、後にはこの拠点にいたフランツらシーカ幹部やヴィラン達のみとなったことが、外で戦っていたニウェウスよりライヴス通信機「遠雷」を介し、会議室のエージェント達にも伝達されていく。
(朝霞。今のうちに幹部達を無力化しろ)
「わかったよニック! ここにいる貴方達も全員逮捕させてもらうわね!」
内からのニクノイーサの助言に朝霞は頷くと、セーフティガスを発動して会議室内にいるフランツらシーカ幹部や辛うじて息のあるヴィラン達の意識を奪いとり、つくし、アリス、亮、Гарсия達と共に持参した拘束具で幹部達を拘束していく。
(幹部達は確保できたみたいねぇ。後はここにいるヴィラン達だけみたいよぉ)
それまで外で交戦していたニウェウスは、内からの戀の意志に頷くと、カオティックソウルで攻撃力を底上げした状態で、レプリケイショットを発動する。
「この人達も確保すれば、目標達成に繋がるわよね」
ニウェウスのレプリケイショットで双炎剣「アンドレイアー」の2筋の剣光が立体的かつ多数に広がり、8度の剣閃と化して眼前にいたヴィランに躍りかかる。
空間に8度刃が煌めき、ニウェウスのレプリケイショットで全身を8度斬られたヴィランは温かい血を撒き、その身を転倒させる。
「正面は潰したわ。残りはよろしく」
敵を倒したところで、ニウェウスはライヴス通信機「遠雷」を介し、駆けつけてくる仲間達へ情報を送る。
(連中に生きていてもらうなら、迅速な制圧が必要になるぞ。術を惜しむな)
内からのミューの助言にキミカは頷き、『日蝕』の弦を引き絞った状態から周囲の仲間達に『少し私から目を離すように』と警告した後、フラッシュバンを発動する。
「命まではとるまい。だが己の行いがどれだけ愚かであったかは、その身に刻みこめ」
キミカの宣告と共に、周囲の視界を急速に奪う強烈な閃光が炸裂し、通路にいたシーカヴィラン達の視界を奪い、眩惑させていく。
(アリス。ムンギア達も去った以上、残るのは目の前にいるヴィラン達だけ)
「彼らの無力化と確保も、オーダークリアとなる以上、撃破しない理由はない」
内からのAliceの状況把握にアリスは冷静に応じ、キミカのフラッシュバンから立ち直る暇を与えることなく、複数のヴィラン達を巻き込める位置に向け、ブルームフレアを放つ。
通路の一画に白熱の業火と化したアリスのブルームフレアが噴き出し、ヴィラン達だけを包み込むと、ヴィラン達はアリスの火焔状ライヴスに身体を焼かれ、悲鳴を上げて倒れていく。
(Гарсия。言いたいことはありますが、今は目の前の敵の無力化に専念しましょう)
内にいたЛеттиが、どうにか自分を納得させた口調でГарсияの背を押すと、Гарсияは頷いて肉親の忘れ形見とも言える改良した小説「白冥」を展開する。
Гарсияの小説「白冥」が開いた周囲に冷気状ライヴスが広がり、やがてナイフ状の群れが構築されていく。
「それでは残るシーカの皆様方。拘束させて頂きます」
Гарсияの宣告と共に、ナイフ状ライヴスの弾幕がヴィランの1体に殺到し、次々とГарсияのライヴスがその身を穿ち続け、ヴィランに絡みついたГарсияのライヴスが触れたものを凍らせるがごとく、その身を拘束していく。
視界が十分でない中、銃撃を放つヴィラン達もいたが、どれも狙いが正確でなく、空しく通路の壁や天井に当たり、破片を散らすのみ。
だが一部の銃撃は既に倒されたシーカヴィラン達へ誤って放たれた。
誤射が着弾する寸前、クロスガードで防御力を向上させた亮がシチート「モコシ」を構えて強引に割り込んだ。
亮の構えたシチート「モコシ」に弾着の火花が咲くが、亮は無傷で銃撃を弾き飛ばす。
(味方を撃つなんて、あの連中何をやっとるんや)
亮の内にいたシロガネは敵のお粗末さに呆れていた。
「助けたわけじゃない。あんたらを逮捕するためだ」
倒れたヴィラン達を守る形で亮は立ちはだかり、そうヴィラン達に告げる中、朝霞もまた倒れているヴィラン達を庇える位置から投降を呼びかける。
「私達はH.O.P.E.です! 幹部達は全員逮捕しました! 大人しく投降しなさい!」
(朝霞。右方向から銃撃だ。防ぐぞ)
「了解、ニック!」
ニクノイーサからの助言に従い、朝霞は顕現したレインメーカーの頂きにあるハートマークのオブジェを翻し、空間にハートのエフェクトを残して防御態勢をとったのと、朝霞に銃撃が命中したのはほぼ同時だった。
朝霞とニクノイーサは、そのまま朝霞への銃撃をはね返し、無力化したヴィラン達の安全も守る盾と化していた。
(まだ抵抗を続ける者達の身柄も残らず確保じゃな)
「抵抗するなら悪いけど、新しい装備のテストも兼ねて狩らせてもらうぞ」
内からのインの意志を受け、リィェンは神経接合アーマー『EL』の性能と武器の相性も試すべく、先程亮や朝霞に銃撃を加えたヴァランの位置を確認するなり、その片方に向け疾駆すると急速に間合を詰めていく。
リィェンとヴィランの体が交錯した一瞬、リィェンの【極】の銘を冠した屠剣「神斬」が翻り、リィェンの【極】はヴィランの武器を跳ね上げ、剣の身の部分がヴィランの腕の骨を粉砕する。
リィェンの攻撃を受けたヴィランは苦痛に顔を歪めて武器を取り落とし、追撃で放たれた【極】の身の打撃で足の骨を砕かれ、そのまま転倒する。
その間にもつくしは、亮や朝霞に銃撃を放ったもう片方のヴィランのもとへ、一陣の疾風と化して突っ込んだ。
「どれだけ悪いことをしていても、死なせるのは駄目だと思うから」
(ええ。自分達が何を間違ったのか。何を仕出かしたのかを理解しないまま死なれては困ります)
内にいるメグルもつくしに賛意を示し、つくしはヴィランが次の銃撃を行うよりも早く、極獄宝典『アルスマギカ・リ・チューン』を発動する。
【SW(杖・本)】アルス・ペンタクルで精度を上げたつくしの極獄宝典『アルスマギカ・リ・チューン』の一撃は、ヴィランに命中し、ヴィランの防御力を上回ったつくしの攻撃がヴィランの生命力を容赦なく削り、戦闘不能と化したヴィランがその場に昏倒する。
(つくし。この区域にいるシーカヴィラン達はこれで全て無力化できたようです)
メグルの指摘を受け、つくしが周囲を見渡して状況を確認する中、敵を倒し終えたアリスもライヴス通信機「遠雷」を介し情報を集めていた。
(アリス。こちらも動ける敵の姿は見当たらないとの連絡が)
「戦闘音も聞こえなくなったけど、確認は怠らない方がいい」
内にいるAliceと役割を分担して情勢の把握に努めていたアリスは、情報が正しい事を確認すると、ライヴス通信機「遠雷」や無線を介して仲間達に伝達していき、以後の活動を無力化したヴィラン達の拘束と搬送に切り替える。
やがてアリスの情報を受け、シーカの幹部達やヴィラン達を全て無力化したことがわかった仲間達も、確保作業と搬送作業に取り掛かった。
●壊滅の報酬
こうして世界各国政府と愚神達を巻き込み『調停』を行ってきた秘密結社シーカは、エージェント達によって壊滅した。
「幹部の身柄は引き渡せと言われたけど、書類に関しては言われてないもんね!」
「朝霞も抜け目なくなってきたな」
朝霞とニクノイーサによって、シーカ拠点に残された資料が数多く確保された。
その資料によって残るシーカ結社員達の素性が暴かれていき、その大半がH.O.P.E.によって確保された結果、シーカの世界への影響力は完全に潰えた。
確保されたフランツらシーカ幹部達は、亮やГарсия、つくし、ニウェウス、リィェンの奔走でロシア・アメリカ各国へと身柄を移され、両国はエージェント達との約束通り厳しい尋問を行った。
そして裁かれるシーカに下手な神秘性を持たせぬよう、両国はシーカのこれまでの悪行を事実を客観的に並べる形で世界に発信し、エージェント達の要望どおり新たなシーカが発生する要素を根絶した。
逮捕されたフランツら幹部達には苛烈な刑罰が下されることになるが、フランツ達が最後まで『調停』という幻想を捨てられかった以上、この結末は当然と言える。
そしてシーカによって密かに危機に立たされていた世界各国は、各国の諜報機関がシーカにまるで歯が立たなかったという表に出せない情報もあるため、エージェント達の功績を公に表彰することはできなかった。
ただ自国の危機を幾度も救ってくれた恩義には報いたいというロシア・アメリカ各政府の意向にH.O.P.E.は応え、これまでシーカやその手先となった愚神達との暗闘を制してきたエージェント達に、非公式ではあったがこれまでの功績を表彰し、特に重要な事件を解決してきたエージェント達には情報部への極秘所属証が配布された。
H.O.P.E.は日の当たりにくい暗闘であっても、人々や世界を守りぬいた『あなたたち』の奮闘を忘れない。
古より続いたシーカとその悪行に終止符を打った『あなたたち』に、最大の感謝を。
●令狸執鼠
エージェント達との交渉の後、ニアは当初の方針を変え、H.O.P.E.の追跡を逃れ得たシーカの残党達を保護していた。
「暗殺とH.O.P.E.への手出しは控えて下さい。逆らわない限り、貴方がたの身の安全は保障します」
シーカの残党達は頭を垂れ、ニアに服従する未来を選択し、ニアはシーカの残滓を自分の組織へと取り込んだ。
結果
シナリオ成功度 | 大成功 |
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