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愚神タウンでの暗殺。
掲示板
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【相談卓】
最終発言2017/04/11 11:37:23 -
【質問卓】
最終発言2017/04/09 00:23:21 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2017/04/09 10:57:56
オープニング
● ここは愚神タウン。愚神が住まう街。
ここはよい町。
みんな友達。
沢山の愚神が住んでいる。
とてもよい町。愚神タウン。
沢山の個性と。
それを受け入れる心で。
みんな楽しく生きている。
愚神タウン。
みんなおいでよ、みんなおいでよ。
愚神タウン、愚神タウン。
アメリカ某所。
突如ドロップゾーンが発生した。
それは広範囲。100KM四方に展開されH.O.P.E.は非常警戒態勢を敷いた。
高霊力反応、トンデモない密度でゾーン内に愚神が生成され。
愚神と人類の全面対決も近いかと思われた。
だがしかし、そう思われたのは最初だけだった。
「全く、人騒がせなドロップゾーンだ」
指令官アンドレは足を組み替えて君たちに告げる。
「このドロップゾーン、あまりに特殊なルールが敷かれていてな。そのルールのひとつが、ドロップゾーン内の愚神を著しく強化するという物だった」
つまり。
「ドロップゾーンから外に出た愚神は、圧倒的に弱くなる。つまり奴らはあのドロップゾーン内でしか活動できないに等しいということだな」
だが、だとしても無視していい問題ではない。
「よって我々は早急に対処すべく、このドロップゾーンに斥候を放った」
ドロップゾーン内には様々な愚神がいるとのことだった。
体長も、数センチの者から数十メートルの物まで。
戦闘能力も、吹いて消えるほど虚弱な者もいれば、デクリオ級まで様々。
その愚神たちは人間のようにコミュニティーを形成し、社会的に生きているらしかった。
そしてこの調査で驚くべきことが分かった。
「なんと、このドロップゾーンは内部の愚神たちが生活をするだけで、微妙に成長するのだ」
そう一日、二日と、時間が経過することによって、微速ながらゾーン自体が成長を続けていた。
その愚神たちが、ドロップゾーンが広がることによって活動圏を広げるのはうまくない。
「なので我々は早急にこのドロップゾーンのコアを破壊することにした、今回はその作戦の中核を君たちに担ってもらいたい」
● 町について。
ここは一辺百キロ四方程度の愚神の街です。
町並みは発展した近代日本程度の分明度です、霊力を動力として豊かな生活をおくっているようです。
愚神の言葉は残念ながら理解できません。
また、様々なサイズの愚神に対応するために、扉が大きかったり、建物の形が不自然だったりと、建物のデザインは我々の文明とはかなり違うようです。
この町に潜入する際に、皆さんには化け物風の特殊メイクを施してもらいます。
人間っぽく見えなければわりと見た目は騙せるようで、愚神たちに接触しなければばれることはないようです。
ただ、自警団的組織があり、あなた達が不振だと思えば話しかけてくる愚神もいるでしょう。
さらに、街角で何らかの目的をもって話しかけてくる愚神もいます。
人間だとばれると集中攻撃を受けるので気を付けましょう。
● 潜伏作戦
今回皆さんには三つの目標どれかを攻略していただきたいです。
さらにそれぞれの目標を攻略する上での行動が、他の目標を攻略する助けになるとも思います。
この目標については事前に十分な説明を受けている物とします。
1 『町の指導者』の暗殺。
2 『儀式の杯』の破壊。
3 『霊力式呪怨弾頭』の設置
順に説明していきます。
1 『町の指導者』の暗殺。
この町にも三角形が存在します。この町の権力層の最上階に位置する何名かの愚神を暗殺することでも、このドロップゾーンの膨張を阻止できます。
さらに混乱が起こり、リンカーたちの行動に対する対処が遅れます。
その愚神たちの力がなくなれば逆にドロップゾーンは縮み始めます。
何ででしょうね。
見分け方は、簡単です。権力者たちは表に顔を出すことが多いので、街角のポスターや、街灯モニター。もしくは人が集まる場所に行って足で探してみるのもありでしょう。少し頭を使う必要がありますが、こちらが一番簡単で手堅いかもです。
また、今回愚神たちは油断しきっています。そのため不意を突いた一撃は致命傷となりえるでしょうし、また狙った部位を攻撃することも可能でしょう。
2 『儀式の杯』の破壊。
この町のドロップゾーンを成長させている機械が、この町の中心、その神殿に存在します。
この儀式の杯に愚神たちの進行によってドロップゾーンを広げています。
杯を破壊するとドロップゾーンは徐々に収縮し、最後には消え去るでしょう。
まぁ、完全にゾーンが消え去る前に新しい杯を作るともいますが。
杯はそれこそ両手で持てる程度の大きさですが、厳重な警備で守られていますし、置かれている大聖堂は、常日頃から愚神が集まる場所なので、奪うのは
用意ではありません。耐久度は高めですが、攻撃で壊すなど、破壊メインの方が現実的かもしれません。
3 『霊力式呪怨弾頭』の設置
これはセカンドプランです。
地形破壊著しい爆弾を愚神の町に設置します。
その爆弾の性質上、霊力で著しく空間自体が汚染されるので、ドロップゾーン以外では使えないですし。かなり高価なので、二つしか支給できません。
これは半径十キロ程度を消し飛ばし、あわよくば目標1.2を達成できる可能性がありますが、仲間が巻き込まれる可能性があります。
またこの爆弾を愚神が集まりやすい場所で使用した段階で、町の成長をある程度阻止できるので、時間稼ぎになります。
1.2の目標の達成が無理だと判断した場合、これを設置、発動させて帰ってきてください。
さらに今回は、実戦経験があまりありませんが。リンカーの集団を運用することができます。
8人で一部隊、これが五部隊使えます、奇襲であったり搖動であったり、自由度高く使えるので、みなさん活用してみてください。
一人に一部隊回せるわけではないので話し合って、何をするか決めてください。
最後に、このゾーンをゾーンブレイカーの方に破壊していただくことは可能ですが。愚神たちの数が多すぎるので、今この段階で運用するのは危険です。
せめて今回の作戦でゾーンの力を弱めてからになると思います。
解説
目標1.2.3の達成
今回のシナリオは最初のアプローチだけでドロップゾーン消滅を狙うのは難しいかもしれません。
ただ皆さんの働きは確実にドロップゾーンを収縮させるので、地道に敵に対処しましょう。
今回のシナリオの要点をまとめましょう。
・達成すべき目標は。
1 『町の指導者』の暗殺。
2 『儀式の杯』の破壊。
3 『霊力式呪怨弾頭』の設置
・ 町には変装して潜入する
・ 八人で一部隊、合計五部隊を陽動や調査など自由に使える。
また次回がたぶんあると思うので、そのための情報収集などしておくと、次回が楽になるかもしれません。
リプレイ
プロローグ
「フフフ、なるほど。これが愚神に支配された仮の世界の縮図というわけかい。こいつは面白いねぇ」
『飛龍アリサ(aa4226)』は高層ビルの頂上で町を一望していた。
行きかう愚神たち、多種多様な容姿を持ちつつ、その動きには一定のルールが見られる。
統制されて生きているように見えた、そして統制が取れているということはルールを強いる存在もいるわけで。
「ここは愚神たちが如何に世界を支配するかをシミュレートする、言わば実験都市なのだろう。その証拠に色々と欠陥が多い」
そう振り返ると同じリンカーである仲間たちが控えていた。
たとえば『フィー(aa4205)』は化物メイクを施していて、『御門 鈴音(aa0175)』は『朔夜(aa0175hero002)』に何事かを強要されている。
「……さーて、久々に“らしい”仕事が回ってきたっつーか」
そんなフィーの言葉に『フィリア(aa4205hero002)』が反応する。
「精々かき乱すとしましょうか」
「……まったく……愚神ごときにビビってちゃ変装してもばれるわよ?……この街に溶け込めそうな共鳴……そうだ。良い事思いついた……あれをやるわよ!」
「あれってまさか……。」
朔夜の言葉に鈴音が震えた。
「……ご名答! ナイトビ〇チよ!」
「ぜったいいやあああああ!」
「……」
無言になるアリサ、そんな彼女の独り言へ『国塚 深散(aa4139)』が反応する。
「愚神だけが住まうドロップゾーン、ですか」
「不可解だよね。人から奪わないなら、どこからライヴスを賄っているっていうのか」
『九郎(aa4139hero001)』はそう大聖堂を見つめた。
「霊石、でしょうか」
「色々と調べてみる必要はありそうだね」
「ふん、気に食わんな」
『魔纏狼(aa0064hero001)』はその漆黒のシルエットを躍らせる。
「あぁ。愚神が俺らの猿真似してるってのが気に食わねぇ」
『布野 橘(aa0064)』が告げると魔纏狼は機嫌悪そうに鼻を鳴らした。
「だが心が躍るようだ。今すぐ正面から殴り込みたいところだが」
「そうだよ、まどろっこしいことなんてしないで、正面から殺して回ろうよ」
『黄泉(aa4226hero001)』が魔纏狼の言葉に反応した。
「目的はそれじゃない」
だがそれを嗜める橘。
「そうだな、それに壊してしまうには少し惜しい」
アリサがほくそ笑む。
「ならばその性質を逆手にとって、試してみたいことがある」
このドロップゾーンは支配者と儀式の杯が致命的な弱点となっており、この二つを失えば天下麻の如く乱れ、たちまち転覆してしまうだろう。
全てのドロップゾーンが金太郎飴だとは言わないが、少なくとも同じパターンのドロップゾーンの攻略法は確立される。
そのための実験である。
「いや、まさか。わたしたちがテロリストをすることになるとは思わなかったねえ」
そんな不穏な空気を発する二組と比べ、あっけらかんとした温度なのは『志賀谷 京子(aa0150)』
「そうですよねぇ、なんだか印象が悪いです」
そう頬に手を当ててため息をつくのは『月鏡 由利菜(aa0873)』
「戦乙女は戦死者を選定する者。愚神にはこのゾーンごと滅びて貰う」
『リーヴスラシル(aa0873hero001)』
「気合たっぷりだね」
京子はそう告げて微笑んだ。
「分かっていますが、私達は仮にも騎士なのに騙し討ちというのは……」
「せめてレジスタンスとかですね……」
由利菜の言葉に頷き『アリッサ ラウティオラ(aa0150hero001)』はそうため息をつく。
「ふふ、じゃあ愚神に抗うレジスタンスってことでいこうか」
そうアリッサが告げると橘が踵を返した。
「……時間だ。行くぞ魔纏狼」
「まぁ、私達は杯の破壊に向かう方が向いているだろう。…一筋縄ではいかなさそうだがな」
リーヴスラシルの言葉に全員が続く。
作戦開始時刻が迫っている。
「おや、イリス、やはりこの光景を見るのは辛いかな?」
『アイリス(aa0124hero001)』が告げた。
『イリス・レイバルド(aa0124)』は答える。
「別に異世界のものをすべて否定するわけじゃないよ。お姉ちゃんにルゥ、気のいい英雄さんたちもいっぱいいますし」
でも。そうイリスは言いよどむ。
「あいつらは要らないかな」
そう見る者すべてを凍てつかせる様な、冷たい視線を愚神たちへと下ろした。
第一章 潜伏
『構築の魔女(aa0281hero001)』は水路を走る。下水道は人間が管理するそれと同じような異臭を放ち。奴らが衣食住を伴う生活を送っていることが分かった。
「町は近代的な作りをしています」
構築の魔女は一人ごちる、あるいは『辺是 落児(aa0281)』へ話しかけているのかもしれない。
「であればある程度、論理的、機能的に町は構造化されているはず」
そう構築の魔女は白紙の地図にガリガリとマップを書き進めていく。
周囲を飛び交う情報を集積し、自分が走り回って得た情報で上塗りしていく。
情報の密度は濃ければ濃い方がいい。
この作戦、準備のしすぎということはありえないのだから。
「公害や騒音問題等があるのかはなぞですが……ひとまずの指針として」
構築の魔女はH.O.P.E.から貸し出されている部隊からの情報も統合し、自分が情報を把握しやすい地図を構築する。
「ふむ……代表者はどうやって選んでるんでしょうね?」
愚神の町にあふれかえる情報。これはそもそも言語がわからないから不明だ。
だが落ちている新聞やメディアから発信される情報から言語体系を予想することはできた。
そこに混じる絵や図と合わせて雰囲気を察することはできる。
「怪しまれない程度に……あくまで暗殺が主軸ですから」
そうインカムの向こうの部隊に告げる。
「後は仕事のためのポジショニングを……」
そして狙撃に適した街のポイントを暫定的に割り出す。あまり町をうろつきたくはなかったため、目星をつけた場所に最短で向かうつもりだった。
「送電……送霊施設と変霊施設……霊石等への蓄積型だとない可能性はありますが」
着々と暗殺の準備は進んでいく。
「避難設備と思われる建造物も洗い出しておきましょう」
あとは地上班の面々がうまく行動できていればいいのだが。
そう、構築の魔女は頭上を仰いだ。
* *
対して地上では。
「町の様子まで人間と同じか。いっちょまえに店まである」
橘と魔纏狼は共鳴。ワーウルフの姿となって潜入していた。
割り出そうと挑むのは杯のある神殿、進行ルート、脱出経路。
――買い物でもしていくか?
「冗談、それよりあれから離れよう。嫌な予感がする」
そう指さしたのは肌の露出八割の少女。
――鈴音殿。周りから視線を集めている気がするのだが。
「気のせいよきっと。あら、あの愚神とってもいい体つきしてる」
由利菜は思わずため息をつく。
彼女は肌を青の染料でぬり、シャドウフェイスで顔を隠すヘルの姿を模している。
それはまぁいいだろう、禍々しく愚神に見える。
(こ、こんな姿、両親には見せたくありませんね……)
(私も邪英化は御免だ。今は愚神として振る舞う必要があるがな……)
問題は鈴音である。
「うっふーん」
わざとらしくそうつぶやき、しなを作って見せる鈴音。
二つ結びにした銀の髪が舞い、普段は恥ずかしくて隠されている胸の谷間がガッツリ強調されていた。
足はあみあみのタイツで覆われ。そして視線を集めるホットパンツが愚神たちの視線をがっちりつかんで離さない。
そうビ〇チ。鈴音はビ〇チとなってしまった。
普段無欲な鈴音と欲望に忠実な朔夜の精神が入り混じりまさにビ〇チとなった形態がこのナイトビ〇チフォームである。
「鈴音さん、あのどうしたのですか? その姿、いつもの鈴音さんだとは思えないんだけど」
「ふふふ、なんかぜーんぶどうでもいいのよね」
「鈴音さん?」
由利菜の表情が青ざめる。
――日頃のストレスで壊れてしまったのか……。
リーヴスラシルは疲れたようにため息をつく。
だが意外なことに鈴音はキチンと調査に参加してくれた。
情報取集、要人探索、だけでなく力を入れたのはこの町の起源。
どうしてこの町ができたのか。
「あら。あの食べ物おいしそう」
「ちょっと待ってください!」
まぁ、それは由利菜の手綱力によるところが大きいかもしれないが。
ただ鈴音がバーに向かおうとしたときにはさすがに止めた、全力で止めた。
「鈴音さんは未成年です!!」
「なによ、それくらい。一回くらい大丈夫……」
「だめです、思春期の成長に甚大な被害が」
「情報収集と言ったら酒場なのよ!」
常識がゲーム的なのはいつもの鈴音と変わらない。そんな二人を見て愚神たちはひそひそ声を立てて遠ざかっていく。
(ああ)
リーヴスラシルは思った。
(彼らの文化にも、さわらぬ神にたたりなし、という言葉があるのかもしれないな)
そう俯瞰で由利菜と鈴音のやり取りを見守った。
* *
『アリス(aa1651)』は首に巻きつけた布を少し緩める。
息苦しく、この案は失敗かなと思い始めたころ。アリスは愚神に取り囲まれた。
――過剰に反応してはだめよ。
『Alice(aa1651hero001)』が小さく告げるとアリスは小首をかしげた。
小さな少女を取り囲んで見下ろす愚神たち。
影が色濃くアリスの上へと落ちる。
そんなアリスへ愚神たちは謳うような、喚くような。おそらく言葉であろう音を向けてきたが、彼女が話を出来ないと知ると、愚神たちは尻尾を翻して帰っていった。
「何の用だったのかしら、アリス」
――わからないわ、アリス。
そうアリスは安堵のため息とともに雷神ノ書をしまう。あと十数秒、立ち去るのが遅ければ空ら全員を黒焦げにしていたかもしれない。
「彼らは一体この町で何をしているのかしらね」
そうアリスはあたりを見渡す。
色とりどり、姿も様々な愚神たちは、言葉を交わし、時に奇声をあげ、人間と変わらない生活を送っているように見える。
そんな中アリスはこの町の観光マップのようなものを発見した。
中心にはでかでかと大聖堂の絵がかきこまれている。
「神殿を中心に街が作られてるのかな」
――人間の国でもそういう作り方あるよね、聖堂を中心に、とか。
重要な情報になるだろう。そうアリスはマップを幻想蝶にしまった。
* *
「ぴよぴよ、僕はとり」
そんな鈴音の出現で愚神たちが大通りに流れていく。見物だろうか。まさか本当に鈴音の色気に引きつけられたというわけではないだろう。
……たぶんないだろう。
そんな混乱に乗じてイリスは町の奥深くに入り込んでいく。
「二足歩行の鳥です」
イメージプロジェクターの助けを借りながら鳥型の生命体に変身。ただ細部はキチンと模型を使用して再現してある。
――よくあるだろう。幻影がすり抜けてしまうとかさ。
「そこにあったのになかったという顔になるよね」
ぶつかってしまった時のためである。
「これから聖杯の調査をはじめます。主にお姉ちゃんが」
――別に構わないが。気は抜かないことだよ。
そう聖堂回りに顔を出すと、確かに愚神たちの密集度が上がる、その杯を崇めるような動作を取る愚神もおり、その愚神からは小さな光の玉が杯に注がれる。
――いや懐かしいね。最初は森暮らしで文明から遠ざかっていたから初めて街に下りてきたときは探るように行動したものだよ。
「お金とか全然わからなかったからね」
――とりあえず断りなく物を持っていくことが具合の悪い行為だということは把握できたね。
その杯が満たされると光が天にのぼる。
「なるほど……」
――愚神たちから霊力を供給してもらっているんだね。
今見た光景を報告するためにいったん聖堂を離れるイリス。
――まあ、機会が来るまでは潜伏と観察に勤しむとしようか。
「お姉ちゃんの指示だけど……こんなに堂々と移動してていいの?」
――愚神の種類が多いから多少の奇行程度は問題ないだろうが。警戒心というのは目立つものだよ。堂々としてればいい。
――ちなみに堂々と目立てという意味ではないよ。気をつけたまえ。
「うん、慌てず騒がず視線を合わせずに行動するよ」
そう堂々としていればいい。きょどっている人間は怪しいものだ、それは愚神たちも同じようで。
『Hoang Thi Hoa(aa4477)』と深散の運命を分けた一つの要因でもあるだろう。
「たすけてーーーー」
Hoangが追われている。それを深散は見送った。
「突飛な行動を避け、雑踏に溶け込みましょう」
そう深散は愚神ごみの中に紛れていく。
Hoangは最初はベトコン英雄の『Minh van Tran(aa4477hero002)』の知識と経験を頼りに潜入するつもりだった。
だが怪しまれたのが運のつき。
うまくごまかすことができず、警備軍団に追われていた。
「ベトコン戦法はジャングルゲリラが得意で市街戦はそこまででもないのに~」
――解説ありがとよ!
Hoangの言葉にMinhが叫びを返す。
ちなみに、深散も甲冑姿の警備愚神に話しかけられたのだが。
ニャー、ニャーと言っていたら、あっちが勝手に離れて行ったのだ。
すかさず深散はインカムを起動し、情報を流す。
「いま鷹の目で確認しましたけど、国会っぽい建物がありません?」
聖堂から五キロ程度離れた場所にある四角く、敷地にゆとりのある建物である。
「私は、銀行らしき建物を発見したので、この建物をもう少し調べますね」
そう深散はとある建物の入り口が見える場所に陣取った。
その建物からは、紙幣らしき紙束を手に出てくる愚神たちが多くいたからだ。
「いや、それにしても、見れば見るほど奇妙なドロップゾーンだよね」
そう告げたのは京子。彼女は自身が持ち込んだパンをかじりながらスコープを覗く。
構築の魔女が割り出した狙撃ポイントの一つだが、狙撃対象が定まらない限りここを使うとは決められない。
なので、自身のマッピングシートに建物の情報や注意事項など細かく書き込んでいくだけでよしとする。
「脱出経路はこれでよさそうかな」
そうシートに赤い線を引く。
それにアリッサが頷いた。
第二章 社会
「にしても」
フィーは腰に手を当てて、大交差点の巨大モニターを見あげていた。
「一向に調査が進みませんなぁ」
そうため息をつくフィー。
街灯ポスターやモニターから該当人物を探してはいるが。愚神個々の見分けがつきにくい上に文字が読めないので辛かった。
「しかもそいつらがどこにいるか判然としやがりません」
そうフィーはポケットに手を突っ込んでそれを弄ぶ。
ずしりと服を下に引っ張るそれはその大きさからは信じられない破壊力を持つという。
それを使える時を今か今かと待ち望んでいる。
「”#&’&’%&$%”!$#」
その時である。フィーの隣に一人の男が立った。
「!”#&(’&4」
褐色肌の上半身裸。その見た目は人間に酷似していたが身長は二メートルを超えている。
その人物が明らかにフィーへと何かを語りかけている。
「”!$”##%’&(&)&$%”%#$」
それをフィーは聞こえないふりをした。けれど。
(なんなんでしょうね、この高揚感)
まったく身に覚えはないのだが、その声を聴いていると胸が高鳴る。
それは恋人と寄り添っている時の甘い時間とは違う。
そう例えば、命を懸けて刃をぶつけ合う時に似た。
その時、いつか嗅いだことのある血なまぐささを嗅いだ。
その匂いに振り向くと、その愚神はその場から消え去っている。
同時に、画面に映し出されたのはなにかの式典の映像。
これから演説会が行われるようだ。
フィーはインカムに吹き込む。
「至急、近くのモニターを見てくだせぇ。こいつらを襲うってのはどうでしょう」
* *
『魅霊(aa1456)』はその通信を聞き、街角のモニターを眺めた。
「やっと獲物が決まりましたか」
そう魅霊の瞳がモニターの光を反射し鈍く光る。
そんな魅霊に『S.O.D.(aa1456hero002)』は何も言わない。
ちょうど退路の整備も済み、全ての準備が整った頃。
魅霊は息をひそめて路地裏を走った。
京子もそれに合わせて狙撃地点へと走った。
「言葉が判れば特定派閥だけ狙うとかするんだけど……」
――あのモニターに映っている顔、タブロイド紙でよく見る顔でしたわね。
「うん、あの愚神を殺した後どんな影響が出るかは不明だけど、混乱を起こすことはできそうだね」
そうマンションのとある一室に忍び込み。国会のような建物を監視する。
そこには無数の愚神が集まっており、一段高い壇を囲っていた。『オートマチック「グラセウールIS000」』を構える。
壇上に登るのは、褐色の肌の愚神。
その周りにも、誌面やモニターでよく見る顔ぶれが並んでいる。
今日は一体何の日なんだろうか。
「配置につきました」
そんな魅霊の言葉を受けて京子は引き金を引いた。
その弾丸を、褐色肌の愚神は指で挟んで止める。
「は!?」
京子は驚きの声を上げた、自分の狙撃が防がれたのなんていつ振りだろうか。
――狙撃失敗しました。
京子のかわりにアリッサが告げると、人ごみから躍り出たのは魅霊。
選択が迫られる。このまま一番偉そうな、褐色肌の愚神を狙うか。
それとも、その周囲にいる愚神を狙うか。
そう魅霊は褐色の愚神へ視線をうつす。
だがそんな魅霊に走り寄ってきた愚神がいた。
ボディーガードだろうか、だがその愚神もよく見る顔だったので、魅霊はとりあえずそいつを。
「澄香姉さん。貴女の恩義に、私は全霊で報いることを誓います」
殺した。
その手の刃で体を深くをえぐるように切る。
黒々とした液体をばらまいて、その愚神は倒れた。
会場に悲鳴のハーモニーが響いた。
直後魅霊を捉えるべく襲いかかる褐色の愚神。
それを阻むように弾丸を撃ち込んだのはフィー。
挑発するように褐色の愚神の隣に立っていた愚神の足を打ち抜き、動きが止まったところで京子と構築の魔女が四方から穴だらけにした。
崩れ落ちる灰色の巨体。
その隙に魅霊は距離を離していた、褐色の愚神は狙撃地点を割り出そうと周囲を眺めたが発見はできなかった。
そんな中、避難誘導しようと声を上げる愚神。
その愚神の頭が次の瞬間吹き飛んだ。
混乱に乗じた構築の魔女による射殺。
「今のは町のインフラを管理している愚神でしたね」
そう構築の魔女が狙撃ポイントを変えながらインカムに告げる。
「わざわざ社まで赴いたかいがありましたよ」
「すごいね、魔女さん。私も頑張らないと」
そう京子が告げると、インカムに深散の通信が割り込んできた。
「町の金融を管理しているのはここだけみたいでしたのでとりあえず」
そう深散は『忍刀「無」』を振る、血が点々と床に滴った。
「大体を殺しておきました」
全員小柄、ゴブリンのような見た目だったのが幸いした。弱点は目に見えて明らかで、骨ごと頸動脈を立ってやったら、あっさりと息絶えた。
「そちらは?」
「撤退の準備中だよ」
町の有力者を手に駆けた魅霊へのヘイトは高い。今までにないほどに大勢の愚神から追いまわされる魅霊。
ただ、京子と構築の魔女の支援。そして自身が構築した逃走ルートのおかげで追っ手に捕まらずに済んだ。
「行きあたりばったりな感じが否めませんね」
そう魅霊は路地に身を隠すと頬についた血をぬぐった。
* *
そして同時に街中で騒ぎを起こす影がある。
たとえばHoang。
「いい加減にしてよ!」
建物や、障害物を利用して追ってくる愚神たちを迎撃するHoang。
一人無双できるほどの実力はまだないが、頼りのMinhも大軍や小隊の扱いができないので、小隊をうまくいかせないでいた。
ただ、小隊との合流は果たせたので、一丸となって愚神たちをひきつける。
町は同時多発的な攻撃で混乱の渦中へ飛び込んだようだ。
Hoang側に増援が回される様子はない。
彼女にしてみれば必死の抵抗だったが、それは町をかき乱す一手としてはとても有効で。
都合よく神殿へ向かう愚神を減らすことができた。
「俺がやろう」
――すぐ代われよ。
魔纏狼がそう言い放つと、後ろからその愚神の首根っこを掴みあげ壁に叩きつける。
そしてその愚神の命を一瞬で奪い去ると、聖堂を警備していた愚神たちの目の前に躍り出る。
「噂のクセモノなら、ここにいるぜ?」
直後一薙で愚神たちを吹き飛ばす魔纏狼
――フン、そんなガラクタを崇めてんのか。今からこの街に禁教令を敷く。文句があるなら、かかってこい。
腰を落とし、膝に左肘をかけ、ハルバードを担ぐ挑発的な姿勢。
腰が引けつつも向かっていく愚神を裁いていく。
――交代だ。
「バカを言うな。これからが面白いんだろうが」
――多勢に無勢だ。それに、街に戻れば敵はもっといるだろ。
その言葉に頷いた魔纏狼は橘に人格を交代する。
聖堂内では避難誘導が行われていた。
徐々に人が減っていく中、ゾンビ風の女性は動かずに聖杯を見つめている。
そんな女性に警備員が近づくが。直後はなたれたライヴスショットで昏倒。
意識を失った。
「さぁ、始めようか。反逆を!」
アリサは高らかに告げるとリンクバリアを発動、直後リンカーは動き出した。
そして聖堂に突入したのは由利菜、そしてび○ちモードの鈴音。
鈴音が警備員をその槍で抑え。その頭を足場に由利菜が飛んだ。
――脚を壊せば機能停止するのか、あるいは完全破壊が必要か……。
その手のダガーを閃かせ。そしてその刃が杯の足を砕き、上部が空を舞った。
――く……完全破壊が必要か。
そうリーヴスラシルはつぶやく。
だが、後詰にイリスがいた。鳥のように聖堂の張から翼を広げて踊りでる。
その翼に飛行能力はないが。センスで見事に杯の目の前に陣取り。
「煌翼刃・螺旋槍!」
その杯を砕く。すると聖堂を愚神たちの嘆きの声が満たした。
直後むせかえるほどに高密度な霊力が聖堂を覆う。
怒り狂って押し寄せる愚神たち。
それ等を跳ねのけて橘が聖堂に乱入してきた。
「ここに愚神が集まり来つつある!」
由利菜は追いすがる赤鬼のような愚神を連続斬撃で屠り、聖堂から抜け出す。
脱出ルートは示されている。あとはそれらがまだ機能しているの祈るだけだ。
その様子をフィーは高台から見下ろしている。
エピローグ。
「いや、ルートが確立されていたとして、追ってくる愚神に対して対策がなきゃどーしよーも、ねぇでしょ」
そうフィーは右腕を伸ばした。その先には霊力で編まれた鷹が乗っている。
その鷹に括り付けられていたのは、重たそうな球体。
「ほいほい、んじゃ神殿ごと爆破しちまうんでさっさと撤退してくだせーなー」
そしてフィーは逃げ出す仲間たちと聖堂の距離を測る。
目算で十キロメートル。
「あと、二」
逃走を試みるリンカーたちの背後を愚神たちがうねりとなって追いかける。
だがそんな暇なことをしていられるのは今のうちだ。
「あと一」
フィーは鷹を放った。それは町の中心へ向けて飛び。
そして。
「全員例の神殿から10キロメートルは離れましたな? んじゃファイヤー!」
起爆した。
フィーはその光景に星が生まれたのかと思った。
青白い炎は摂氏何千度だろうか。
鉄さえも蒸発させる熱でおそらく爆発の中心地は跡形も残っていないだろう。
今までリンカーたちを追っていた愚神たちも足を止め。その炎に見入っている。
それをフィーは、こんな物か。と冷めた感情で見下ろしていた。
* *
一行は逃走に下水を利用した。
追ってくる影は無い、仲間たちと合流し、全員がいることを確かめたリンカーたちは皆安堵のため息をついた。
その狭く重苦しい空間に泣き声が響く。
「もうお嫁にいけない……」
鈴音がめそめそと泣いていたのだ。
そんな鈴音に向けて朔夜は告げる。
「人間欲望に忠実なぐらいが楽しいわよ?」
「あれは忠実というか……」
由利菜が苦笑いして告げる。
「従順?」
「うわーん」
そんな中、『辺是 落児(aa0281)』は偶然街中で拾った小型テレビを使って地上の様子を確認していた。
一夜にして町の骨子を全て引き抜かれた愚神タウン。
その混乱ぶりはそうとうのもので、まるでパニック映画でも見ているようだった。
「中心人物が死ねば、街の機能が麻痺するか」
「つくづく人間と同じで反吐が出るな」
そう橘が告げると魔纏狼が吐き捨てるようにそう、言葉を切った。
結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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