本部

【絶零】連動シナリオ

【絶零】君、想えば・夢

紅玉

形態
シリーズ(続編)
難易度
不明
オプション
参加費
1,300
参加制限
-
参加人数
能力者
7人 / 4~8人
英雄
7人 / 0~8人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2017/03/07 19:41

掲示板

オープニング

●白百合と彼岸花
 圓 冥人の前に立っているのは金色のショートヘアに、白いワンピースは花弁の様に着ている少女。
 そして、その後ろには木製の椅子に座った青年が一人。
「まぁ、まぁ。女王がモン・シェリ。私のモン・シェリは、美味しい、美味しい、ライヴスをくれるこのヒト」
 少女は椅子に座っている青年の頭を抱き締める。
「まさか、契約を?」
「ウィ、女王を命令は、絶対。でも、好みじゃない」
 と、抑揚の無い声で答えると少女は、青年の頬に爪を立て傷が出来ない程度に引っ掻く。
「凍らせる、て素敵。永久は無理だけど、それなりに形が保つの、クラトは愚か」
「慢心するより、マシだね。白百合」
 白百合は冥人を無理矢理地面に縛り、無防備になった腹部を力強く踏む。
「希望するだけ、ムダ。援軍なんてさせない、救助しになんて来るわけ、ない」
 桃色に彩られた唇を動かし、白百合は言葉を紡ぐ。
「ただ、このモン・シェリのライヴスを奪い尽くしたら……次は、アナタ」
 白百合は白く細い手で、冥人の腰に差している大太刀を奪う。
「成程、白百合。君は……に弱いんだね?」
「何故、知ってる」
 冥人の言葉に白百合は初めて表情を動かした。
「そして、女王に余裕がない様子でもあるようだね」
「黙れ、女王のモン・シェリであれ、侮辱するなら……テュエ」
 白百合は、大太刀柄を握りると鞘から刀身を抜く。
 そして、大太刀を振り上げると、白百合は口元を吊り上げながら降り下ろした。

●選択
「皆さん、先日の調査お疲れ様でした」
 カフカス基地の小さな会議室に集まったエージェント達を見渡すと、トリス・ファタ・モルガナは小さく微笑んだ。
「さて、皆さんには……選択を迫られています」
 トリスは少し悲しげな瞳でエージェント達を見詰めた。
「1つ目、愚神『白百合』の居場所は分かっています。DZの情報のみがあり、細かい能力までは不明ですが、『白百合』を倒す事は可能です。ですが、冥人ちゃんはDZ内に何日も居ますので、『白百合』を倒しても冥人ちゃんは生きている保証はありません」
 トリスは淡々と1つ目の選択内容を話す。
「2つ目、愚神の能力を調べるのと冥人ちゃんを救出する。こちらはリスクは低い代わりに、白百合を倒す事は不可能です」
 エージェント達は、トリスが話した選択の内容を聞いて顔を見合わせた。
「どの選択を選ぶかは皆さんにお任せします。でも、その他にも提案があれば1つの道です。どうご武運を……」
 トリスは、アナタ達に向かって恭しく一礼をした。

解説

●目標
冥人の救出or白百合の撃破

●場所
森の中(昼)

●NPC
冥人は戦闘出来る状態ではありません。

●敵
愚神『白百合』
花を統べる女王の姉妹の一人で、10歳位の少女。
DZ内部は、雨が降っており気温はかなり低いので凍結や寒さで体力が減っていきます。
幻を見せる事は分かっていますが、法則は不明。

●PL情報
OP『●白百合と彼岸花』はPL情報です。

・難易度
1つ目の提案を選んだ場合は難易度がぐん!と上がります。
救出は難易度相応になります。

リプレイ

●選んだ道
 トリス・ファタ・モルガナは話を終えると、蒼玉の様な瞳でじっとエージェント達を見つめた。
「バルトさん! 圓さんが死亡フラグなんです! 助けにいかないと!」
 一瞬だけ静まりかえった会議室にセレティア(aa1695)の第一声が響いた。。
「あいつも大概ヤンデレホイホイだよな。人の恋愛事情に干渉する気は無いが、圓助けるとティリアさんが喜んでくれそうだから行く」
 最近トリスにツララの様に鋭い視線を感じるバルトロメイ(aa1695hero001)は、己の意思半分に名誉挽回が半分の言葉を口にした。
「優先順位は明らかよね。何を考えているかわからない愚神を倒すよりは、冥人さんを助け出す。そして情報を得たうえで、相手の狙いの本質を叩き潰すといきたいわ」
 と、ぐっと拳を握り締め頭上に掲げながら梶木 千尋(aa4353)は声高らかに言う。
「言うだけなら簡単だけどねえ。ま、君がやると決断したなら、僕は付き合うだけさ。君の格好いいところ、見せておくれよ」
 その隣で高野 香菜(aa4353hero001)は肩を竦ませた。
 助ける理由がある者の居れば、倒すのではなくただ仲間を救う為に向かう者も居る。
「それに、冥人様は花の名を関する愚神に関する情報をお持ちですわ。『女王』と呼ばれる者を倒す為にも必要ですわね」
 ファリン(aa3137)の凛とした声が響く。
「出会いはどんな形であれ、愚神に捕まった友人を助けるのがわたしの役目」
 表情は普段と変わらないものの花邑 咲(aa2346)は、大切な友人を守るという強い意志が篭った声色で言う。
「あぁ」
 ブラッドリー クォーツ(aa2346hero001)は咲の強い意思を感じながら力強く頷いた。
 2人を強くしている思いであり、そしてそれが能力者と英雄を繋ぐ誓約でもある。
(「守りたいものを失わぬ(喪わぬ)為に力を尽くす事 」それが、オレ達の誓約なのだから)
 ブラッドリーはゆっくりと緋色の瞳を瞬きするとぐっと拳を握り締めた。
「まずは、人命救助が優先……」
「んじゃま、その手のプロの力を借りちゃおうゼ☆」
 ニウェウス・アーラ(aa1428)が小さく頷くと、ストゥルトゥス(aa1428hero001)が元気よく声を上げた。
「杏樹の、歌で、皆を、守れると、いいな。冥人さん助ける……です」
 泉 杏樹(aa0045)は胸元に手を当て、真っ直ぐな藤色の瞳で仲間を見つめながら力強く言う。
「お嬢様の戦いを拝見させていただきます。どうか迷いのなき戦いを」
 一歩後ろ居る榊 守(aa0045hero001)は杏樹の言葉を聞いて恭しく一礼した。
 ちらりと琥珀の様な瞳で仕えている少女の顔に視線を向ける。
 もう少ししたら少女と呼べない程に、杏樹の顔は初めて会った時よりも能力者として人としても成長していると感じた。
「皆の意思は固まった様ですね。もし、聞きたい事があれば聞いてください」
 トリスはエージェント達の決意と意思を感じ取る。

「雨か。毛皮着てるとこういう時厄介だね」
 と、報告書に目を通しながらダイ・ゾン(aa3137hero002)は低く呻く。
「電気の通りはよくなりますわ。雨音はわたくし達の気配を消してくれますし……」
 ファリンは逆にその状況を有利に使う方向を考える。
「それじゃ、衛生兵に話を聞きにいこうゼ!」
「そうですね。事前知識と準備は大切です」
 ストゥルトゥスの言葉を聞いて咲は頷いた。
 DZ内部では凍死するのであれば、数日間もいる冥人も体温が下がり低体温症になっている可能性を考慮しての準備だ。
「戦いに関しても話し合っておこう」
 シオン(aa4757)が前衛を務める杏樹、セレティアに、ファリンや千尋の4人を集めて戦う時の行動等の打ち合わせをする。

「低体温症、ですか? 応急処置としては、急には温めずに脇や股下の大きな静脈がある部分に温かい物を当てて下さい。もし、衣類が濡れている場合は室内で着替えさせ風に当てない様に」
 若い衛生兵は人体図を指しながら説明をする。
「じゃ、栄養を考えた飲み物とかはどうすれば?」
「アルコールやカフェインを含む飲み物は避けて甘い物を飲ませましょう。それと、意識が無い場合は飲ませずに温まるのを待ってください」
 ストゥルトゥスの問いに衛生兵は説明をする。
「なら、ホットチョコレートとスープの両方の用意ですね」
「手伝う……」
 ニウェウスと咲は軍の調理室を借りて準備をする。
「あ、あと、衛生兵を数名借りたいんだよ」
「それは、エージェントでもない私達が居ても大丈夫なのですか?」
 ストゥルトゥスの言葉を聞いて衛生兵は険しい表情になる。
 愚神という存在、兵であっても医療に特化した衛生兵達にハンドガンで戦車と戦えと言われている様なモノだ。
「非戦闘区域で良いんだよ?」
「すみません。それでも、リスクが高いのと今は軍上層部から『基地から出るな』と命令されておりますゆえ……」
 ストゥルトゥスが説得するも、上司の命令を無視するわけにはいかない衛生兵はただ首を横に振るだけ。
 冥人が命がけで助けたとはいえ、兵に負傷者が出たので軍上層部は兵士を基地から出る事を禁止したのだ。
「そう、なんだね」
 衛生兵の言葉を聞いてストゥルトゥスは渋々ながら諦める事にした。

「どう、だったかな……?」
 ニウェウスは新型MM水筒を両手で抱え、合流したストゥルトゥスを見上げた。
「だめだったよ。ボク達だけでなんとかしないとね」
「それでも助ける、その気持ちは変わらない」
 ストゥルトゥスの言葉を聞いてブラッドリーはぎゅっと拳を握る。
「もちろんです。他の皆さんと合流しましょうね」
 と、言って咲達は会議室へと向かった。

 木々の間から日の光が薄っすらと差し、しとしとと雨が降る白百合のドロップゾーン内部の葉に付いた滴がキラキラと日の光を反射させ輝く。
「ふふ、ほら……来ない。女王のモン・シェリはクリムを背負った。あの時と同じね」
 白百合は金の瞳で冥人の紅玉の様な瞳を見つめた。
「……うそ、だろ……?」
 冥人は目を見開き空を見上げた。
「お兄様、私が殺されたのは……お兄様が私を見てくれなかったから……どうして? ねぇ?」
 白百合は蔓で出来た椅子に座り、雨音に負けないくらいに冥人の耳に届くように声を上げる。
「ちが……違う!」
「じゃ、何で……私は殺されなければならなかったの?」
 音も無く白百合は冥人の傍に移動し、ゆっくりとライヴスを奪う。
(まぁ、こうでもしないとねぇ。足りないの)
 先日、エージェント達の調査により一般人が殆ど来ずにライヴスが足りないと感じつつある白百合は、多少女王の意向に反する行為だと理解しつつも『つまみ食い』をする。
「Bienvenue(いらっしゃい)」
 ドロップソーン内部にエージェント達が入って来たのを感知した白百合はお辞儀をした。

●救出する困難
 雨降る森と化しているドロップゾーンに足を踏み入れたエージェント達に白百合は微笑んだ。
「『雨……嫌いじゃないよ。何処か物憂げで美しい……』」
 再び目にする白百合のドロップゾーンにシオンは、ぽたぽたと雨を降らせる空を見上げると銀の瞳を細めた。
『でも、なんだか怖い……』
 少し声を震わせながらファビュラス(aa4757hero001)は言った。
「冥人さんを返してもらいに来たわ。ついでにこの間のお礼も返さなきゃいけないしね――!」
 千尋は真珠の様な瞳で白百合を睨む。
「そう、本人はそれを望んでいるのかしら?」
「そんな、冥人さんは、貴女達を、花の名を関する愚神を、恨んでいる……です」
 白百合の言葉に杏樹は首を振る。
「クリミネル。『アレは何に見える?』」
 白百合はエージェント達に指先を向け、冥人の耳元で囁く。
「……見たくない人、だ」
 低い声で呟くと冥人は共鳴し、光を失った瞳でエーッジェント達を見据える。
「冥人さん!」
 咲は共鳴姿になり冥人の名を呼びながら頬を叩こうとする、が手首を掴まれ軽々と咲を放り投げた。
 雨水を纏った葉の上に落ちる咲、水飛沫が上がるとファリンはその音に紛れる様に動き一気に間合いを詰める。
「stupide(愚かな)」
 だが、白百合の守るようにファリンの前に現るは氷の壁。
「杏樹も、います」
 共鳴姿の杏樹が藤神ノ扇を白百合の顔に向けて振り下ろす。
「っ! 乙女の顔を傷付けましたわね!」
「よそ見をしている暇はありますの?」
 千尋は守るべき誓いを使い白百合と冥人の間に割り込む。
「クリミネルを忘れたらダメよ?」
 ピッと頬の血を拭うと、白百合は楽し気に微笑みながら言う。
「その前に、白百合を祝福してあげよう」
 シオンはアーバレスト「ハストゥル」の鏃を白百合に向け、威嚇射撃で意識を拡散させようと試みる。
「そんな祝福は不要よ」
 白百合は足元に刺さった矢を見てつまらなそうに小さく鼻を鳴らす。
「近付くな!」
「目を……覚ましやがれ!」
 バルトロメイは冥人の攻撃を受け流し真っ直ぐに拳を突き出すが、その力を逆に利用され少女の体は前転し背中から地面に落ちた。
「助けるどころじゃ、ない……?」
「まさか、幻を見ているだけじゃないようだね」
 ニウェウスは首を傾げるが、ストゥルトゥスは冥人の様子を見つつライヴスの蝶を放つ。
「……目覚めさせて差し上げましょう」
「はい」
 守の言葉に杏樹は力強く頷くと、バッと藤神ノ扇を頭上で開き三日月を描く様に動かし一呼吸置く。
「杏樹の新曲『Knight』なの。杏樹が、守るから、皆で、帰る、です」
 杏樹は力強く、凛とした声をドロップゾーン内部に降る雨音にも負けない位に響かせた。
 
 立ち止まらないで
 上を向いて
 勇気を出して一歩踏み出そう
 私が君を守る騎士になるよ
 皆を癒し力を与え
 明日へと続く道を切り開く
 私は皆のholy knight

 仲間を守るため、愚神の幻を打ち砕くため、想いと云う絆を言葉にして歌として紡ぐ。

「耳障りな、歌……」
 白百合は親指の爪に歯を立てる。
「『キミも……雨が好きなのかな?』」
「ええ、好きよ。私の為に殿方がライヴスを運んでくださるもの」
 シオンの問いに白百合はにっこりと微笑んだ。
(成程、幻は男性のみであるが……冥人の言動は兵士達の証言とは違う)
 白百合はもちろん、周囲の行動も気にしつつ思考するシオン。
「『美しい白百合……キミにその花の名を語る資格はあるのかい?』」
「ウィ。私の想いは純粋よ。この身は真っ白、でも女王の命ならばクリミネルの様な事だってするわ」
 シオンの言葉に律儀に答える白百合は、蔓で出来た椅子の上でくるくると回る。
「『その花言葉、知っているだろう? 美しい、白百合……』」
「愚問ね。でもね、私は愚神よ? 無垢なんてヒトが取って付けた意味、だから……」
 美しい金色の瞳にシオンが映る。
「『幻を見せても無駄だよ』」
「本当に?」
 シオンの言葉に白百合は首を傾げた。
「『本当さ』」
 と、力強く答えるシオンを含め他のエージェント達の目には見えないだろう。
 そう、森の中にある一本の木が白百合と契約した青年だと。
(どうして、冥人様は……まるで操られているかのう様ですわ)
 潜伏を使い白百合に気付かれない様にキリングワイヤーで氷の壁を破壊しているファリンは、素手で仲間と戦う冥人を見て疑問に思う。
「ふぅん?」
 契約者が見えない事を確認した白百合は、冥人が携えていた大太刀を手にすると居合抜きの構えを取る。

 皆が生きて帰る為に
 皆を守る騎士になるよ
 想い混めた歌

「ル・べべ。相手は俺だぜ」
 シオンと白百合の間に割って入るのは、共鳴姿でドラゴンスレイヤーを振り下ろすバルトロメイだ。
「あら、下品な子」
 氷の壁で直撃から防ぐ白百合は口を両手で覆った。
「愚神にしては、可愛い悪口とは迫力が無さ過ぎるな」
 と、言ってドラゴンスレイヤーを肩に乗せながらバルトロメイは不満げに鼻を鳴らす。
「ふふ、ありがとう。でもね、『今の私は強い』わよ」
 大太刀の柄に再び手を掛け、白百合はワザとバルトロメイの鼻先を皮一枚だけ居合で切る。
「……っ! 手を抜くとはな」
 斬られないと分かっていてもバルトロメイは思わず後退する。
 無い。
 殺意等の気持ちを向けながら相手に攻撃される事はよくあるが、白百合の攻撃には何も無い。
 戦場なれした暗殺者と酷似している。
「これ位はしてあげるね」
 白百合は幻影蝶を鷲掴みにした。
(可笑しい。どうして白百合はそんな事をしても『余裕』があるのかい?)
 シオンは銀色の瞳をスッと細めた。
「では、逆にどうして君たちは『俺に襲われている』のかな?」
 と、何処からか聞いたことのある声がした。
「そうなのですわね」
 ファリンは手にしている武器で耳たぶをピッと切った。
「お嬢ちゃん、加虐趣味かい。若ェのに因業だね」
 ソンは喉で笑いながら言う
「おじ様、軽口はよろしいですわ」
 『痛み』でファリンは『軽い催眠状態』と白百合が施した『幻』から目覚めた。
 桃色の瞳に映るのは、白百合と契約をした青年の姿。
「あーあ、起きちゃったね」
 つまらなそうに白百合は言った。
「『あの時、だね』」
 強い違和感と、杏樹の歌声で少しずつ『幻』から『現実』が見える様になったシオンは呟いた。
「ワケわからん!」
 バルトロメイはファリンとシオンを交互に見た後にガシガシと後頭部を掻いた。
「賢い子は嫌い、ちょっとおバカな位が可愛いわね」
 ペットを眺める飼い主の様に眺める白百合はにっこりと笑顔を作るが、楽しんで、喜んで、笑顔にしているワケではない。
 勿論、愚神らしく白百合ではなく黒百合の様な美しくも恐ろしいモノが巨大な波となって押し寄せる。
「……月下美人が可愛く見えますわ」
 似たような白く美しい愚神を思い出しながらファリンは、苦虫を噛んだような表情で言った。

「冥人さん、すみませんが、少しの間我慢していてくださいね」
 と、言って咲は小銃「S-01」で冥人を殴ろうとする、が。
「あぁ、それはコッチのセリフ……と言いたい場面ではあるけど、想定外ねぇ」
「ダメ、覚めてない。花、効き過ぎ」
 冥人は咲の両頬を掴んで引っ張る。
「ふへっ!?」
 痛みと、驚きで咲はちょっと間の抜けた声を出す。
「おはよう。目覚めたかな?」
「あれ? 戦って、え?」
 先ほどまで交戦していた冥人や、ぼーと突っ立っている仲間を咲は困惑しながら見回す。
「幻は兎も角、軽い催眠ね。歌は良い案だけど……催眠には意味がない」
「そ、そんな……冥人さんはどうやって?」
 現状を説明する冥人を見て咲は問う。
「嫌だったけど、仕方がない。演技、私が、起こしたよ」
「そういう事なのね」
 静華のたどたどしい答えに咲は胸を撫で下ろす。
「他の皆さんも目覚めさせないと」
「うん。でも、白百合の幻対策を立てたのに……」
 咲は拳を握り締め、しとしとと降り続ける少し灰色の空を見上げた。
「白百合の情報が少なかった、仕方がない」
 と、言ってブラッドリーは小さく首を横に振った。
「そういえば、冥人さんは体調とか大丈夫なの?」
「大丈夫じゃないね」
「温まると思いますから、少しでも飲んでください。他の皆さんはわたしが起こします」
 ホットチョコレートが入った水筒を冥人に渡すと、咲は軽い催眠状態の仲間の元へと駆け出した。
「甘えとこうかね」
 咲の後姿を見送った冥人は、緊迫した様子の白百合とバルトロメイ、ファリン、シオン達に視線を向けた。

●花の名を関する少女
「計画は失敗ね。ここからは、セナリストからル・プルミエ・ロールとして舞台に上がらせてもらうね」
 と、言って白百合は複数の百合を地面から呼び出す。
 そう、霧を出した百合。
「『させないよ』」
 シオンはファストショットでアーバレスト「ハストゥル」の引き金を素早く引く。
「あ~ら、盛り上げ上手、ね」
 白百合は矢を大太刀で切り落とす。
「そうは、させないよっ!」
 白百合に向かって千尋は飛盾「陰陽玉」のライヴスリッパーで攻撃をする。
「お客さんは静かに舞台を見るモノよ?」
 と、言いながら白百合は百合で攻撃を受け止める。
「皆様、起きたようですわね。早く、冥人様を基地へ」
 ファリンは、やっと『幻』と『軽い催眠』から目覚めたニウェウス達に通信機で指示を出す。
『後で、援護に……』
 そう短くニウェウスから返答が返って来た。
「私達が逃げられるかも……怪しいですわ」
 ドロップゾーン内部に降る雨のせいなのか、それとも白百合の攻撃を見て冷や汗をかいたのか、肌を伝う滴の一粒一粒が分かる。
「冥人さんは渡しません。男の方だけを、狙うのは、趣味が悪い……です。杏樹が、お相手……する……ですよ」
 杏樹は手にしている薙刀「冬姫」の先を白百合に向ける。
「……追いかける事は、命令に入ってないのよね。だけど、この大太刀は貰うわね」
「どういう、風の吹き回しよ?」
 あっさりと諦める白百合の言葉を聞いて、千尋は逆に何かを隠しているのではないのか? と怪しむ。
「やめとけ。今は救出に専念するんだ」
 バルトロメイが千尋の肩に手を置く。
「『今の白百合は、美しく見えるが恐ろしいよ』」
 白百合から視線を逸らさずにアーバレスト「ハストゥル」を手にしたまま、シオンはゆっくりとドロップゾーン外へと後退する。
「あの花の数では……青年は諦めるしかありませんわ」
 百合に囲まれた青年を見ながらファリンは、少しだけ唇を噛むと白百合を睨んだまま軽快なステップで後退する。
 これが最善であり、やっと分かった白百合の情報を持って帰るのをエージェント達は選んだ選択。
 しかし、白百合が口元を吊り上げ不気味に微笑んでいたのを見た者は居ない――……冥人以外は。

「まずは知っていることを洗いざらい教えてもらおうかしら? それくらい、当然の報酬じゃない?」
 基地に着くや否や千尋は冥人に言う。
 しかし――……
「脈が……っ! 直ぐにベッドの用意! 人を集めろ!」
 軍医が冥人を診察していたのだが、ゆっくりとゆっくりと体の機能が低下していった、
「……髪、黒から赤へ。肌、黒い。姉妹、呼べる……それが、女王」
 衛生兵と軍医が慌ただしく動く中で、静華はエージェント達にゆっくりと聞こえる様に答えた。
 それは、女王の外見と花の名を関する愚神の出生だという事は理解出来るものは目を見開き驚いていた。

結果

シナリオ成功度 普通

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 藤の華
    泉 杏樹aa0045
    人間|18才|女性|生命
  • Black coat
    榊 守aa0045hero001
    英雄|38才|男性|バト
  • カフカスの『知』
    ニウェウス・アーラaa1428
    人間|16才|女性|攻撃
  • ストゥえもん
    ストゥルトゥスaa1428hero001
    英雄|20才|女性|ソフィ
  • 黒の歴史を紡ぐ者
    セレティアaa1695
    人間|11才|女性|攻撃
  • 過保護な英雄
    バルトロメイaa1695hero001
    英雄|32才|男性|ドレ
  • 幽霊花の想いを託され
    花邑 咲aa2346
    人間|20才|女性|命中
  • 守るのは手の中の宝石
    ブラッドリー・クォーツaa2346hero001
    英雄|27才|男性|ジャ
  • 危急存亡を断つ女神
    ファリンaa3137
    獣人|18才|女性|回避
  • 我を超えてゆけ
    ダイ・ゾンaa3137hero002
    英雄|35才|男性|シャド
  • 崩れぬ者
    梶木 千尋aa4353
    機械|18才|女性|防御
  • 誇り高き者
    高野 香菜aa4353hero001
    英雄|17才|女性|ブレ
  • 藤色の騎士
    シオンaa4757
    人間|24才|男性|攻撃
  • 翡翠の姫
    ファビュラスaa4757hero001
    英雄|22才|女性|ジャ
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