本部

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
4人 / 4~6人
英雄
3人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2017/02/14 19:36

掲示板

オープニング


 埼玉県某所――での出来事……。

 怪しげな集会がとある分譲マンションの一室にて行われていた。
 エントランスは大理石で覆われ、それなりに高価な分譲マンションではあったが、そこかしこに不気味なオーラ……と、言うか雰囲気が漂っていた。
 その『606号室』――ネームプレートには『森』と言うごく普通の名字が表記。
 しかしその上に余計なモノがこれまた表記されてあった。
 ――数秘術『ゲマとリア』――
 この時点で何かを察しなければならない不気味なオーラ……と、言うか雰囲気が漂っていた。
 カメラアングルを中へと視点に切り替える。するとそこには驚くべき事に6人の女性達が白いテーブルクロスの掛かった円卓を中心に何かをやっていた。
 その議論は次の様なものであった。
「――遂に出てしまったか!」
「これまで私達は実に666回もの間、この円卓の机上にあるルーレットを回してきました。まさかその回数も『666』!」
「おお……恐るべき獣の数字。『666』!」
「おお……忌まわしき獣の数字。『666』!」
「『6』はヘブライ文字で『ヴァヴ』と呼ばれる従魔を――!」
「『600』はヘブライ文字で『メム・ソフィート』と呼ばれる愚神を――!」
 つまり彼女等はこう言いたいのだろう。この数秘術『ゲマとリア』に出た目は絶対だと。何やら怪しい宗教やエセ占い。ニセ霊能力者の如き惨状。
 しかし、出て来てしまったものは仕方がない。
 何とかして彼女等が召喚した2体の『ヴァヴ』――従魔と、1体の『メム・ソフィート』――愚神を探し出して倒さなければならない。
 だが、どこにいるのだろうか――? そもそもこの数秘術『ゲマとリア』とか言う謎団体の言う事を信じても良いのだろうか?

 ――その時だった。2つの事態がほとんど同時に起こった。ただ誰にとっても不幸な事に、それは偶然にして鉢合わせる事は無かったのだ。

「ヴィラン組織! 数秘術『ゲマとリア』! 非合法の麻薬売買の容疑で連行する!」
 その1つがH.O.P.E.東京海上支部から派遣されてきたリンカー達。
 彼等はここを調査してこの女性ヴィラン達を追いかけていた様だ。
 しかし、麻薬の売買にも手を染めてるとは……女性と言えどもさすがはヴィランだ。

「――な!?」
「ちょっと待ちなさい!」
「私達は何も――!」
「麻薬の売買? 聞いてないわよ!」

 しかしリンカー達は事前に調査しているだけの事はあり、自信満々だ。まるで犯行現場に現行犯逮捕しに来た警察官の様に――
「ハイハイ。話は支部で聞くから。それとベランダにあるいかにも~な植物栽培もこれで打ち止めだ。何より犯罪だからね」

「いや、あれは――違うのよ!」
「そうそう! 確か美肌効果に良いって聞かれて!」
「あれは麻薬じゃなくてアロエよ! ヨーグルトとかにも入っているでしょ? そこのあなた見た事ないの!?」

「すんません。俺達リンカーなんで。その辺の詳しい話はさっきも言ったけど支部でじっくりと聞かせて貰うから」

 バタン! 全ての女性が連行された後――その数分後。奇怪な事態がこの現場で起こった。

 ――フフフ フフフ フフフ フフフ――

「数秘術『ゲマとリア』――ですって。実に良い話を聞いたわ。これからはしばらくここを私達の根城にしましょう」
「だが――そう上手くいくかしら?」

 それは2つの影だった。
 最初はよく分からなかったがどうやら愚神で間違いない様だ。
 彼女等は黒いドレス。所謂ゴスロリのファッションをしていた。
 素の人間に非常に近い形態をしており一見しただけでは、美しい外国の貴婦人にしか見えない。

「しばらくは人として生活するのでしょう? 名前はどうする?」
 片方の貴婦人の愚神がそう切り出すと、もう一方のそっくりな貴婦人の愚神はこう応えた。

「せっかくですから、私は『ゲマ』――あなたは『リア』と言う事にしましょう。設定は……そうね。容姿が似ている事だし。双子と言う事に。それと――」
「それと?」
「この――数秘術『ゲマとリア』――を拠点として活動をしてみるのも面白いのかもしれませんわね。占いと称してドロップゾーンを形成する」
「先程言っていた、獣の数字。『666』――『ヴァヴ』の顕現か」
「そして『メム・ソフィート』と呼ばれる新たなる愚神生誕! ああ……これだから占いは女性を虜にするのだわ」

 ――密やかな会話はそれこそ永遠に続くかのように長い間、交わされた。

 そして、案の定プリセンサーだけが新たな愚神の登場を告げていた。

解説

 さて、今回も始まりました6人体制のオーソッドクスな『戦闘』シナリオです。OPでは何やら不可解な集団が何やら不可解な事をやらかして、更に何やら不可解な事態が二重に発生しています。この数秘術『ゲマとリア』と言うどこか不可思議で不気味なオーラを纏った女性集団は一体マンションの一室で何がしたかったのでしょう? ヒントは『666』と言う数字にあります。つまりキーポイントは『666』と言う不吉な数字にあります。この『666』にPLの皆様のPCであるリンカー達やOPに登場した愚神2人組(なぜかゴスロリファッション)が絡んで来れば面白い展開になるのでは? と、勝手にムフフな妄想に浸っています。
 本格的な解説を加えますと、今回のこの事件。難易度は『普通』ですが意外に侮れません。最初に登場した6人の謎の女性集団の密やかな儀式。果たして『666』と言う数字は本来何を現すのか? 本当に不吉の前兆なのか? そこが焦点となります。それに便乗した美しい女性の形をした愚神2人組がDZを形成し、実際に従魔や愚神をこの分譲マンションを根城にしてこの世に顕現したとしたら――PL様のPC次第でその可能性は無限に広がります。
 つまり、何が言いたいのかと言うと、『ゲマ』と『リア』の2人組を倒しただけじゃ、本当に事件の真相を解決した事にはならない――と言うのがこのシナリオの味噌であり肝であります。

 それでは、皆さまの活躍を期待しつつ素敵なプレイングをお待ちしております!

リプレイ


 今回の難攻不落で不可解な事件にて――
 ――かつての記憶の中のゲーマー脳(中二病脳)を働かせる2人組がいた。

 他でもない阪須賀 槇(aa4862)と阪須賀 誄(aa4862hero001)である。

「ゲマとリア? なぁ弟者、これって時に『ゲマトリア数秘術』の事だよな?」
『そうだな、ヘヴライ系のアレだったか。しかし……666。『獣の数字』か……』
「獣の数字ってアレか、黙示録の獣?」
『そう、人類の1/3を殺す災いを締め括る、背に大淫婦を乗せた赤き竜』
「……なあ、嫌なヨカーンしちまったんだ弟者、敵さんがやってきた儀式の行き着く先は……」
 2人はそこで呼吸を合わせて言いきった。

「『……物凄く強い存在を呼び出す儀式』」

「……ほっといたら、トリブヌス級の愚神降臨、なんて事になったりして」
『……OK、時に急ごうか』

『今は、俺達が奴等の事情聴取の最中だ。若いの』
 受話器越しの相手はそう言って一方的に電話を切ってしまった。
 最初に現れた『ゲマとリア』の女性6人グループ。ヴィランズを逮捕したリンカーの1人だ。
 それを聞いていた赤城 龍哉(aa0090)と早急に事情を察したヴァルトラウテ(aa0090hero001)。
「チッ! やっぱしダメか。それにしても本当に逮捕されたヴィランズの部屋に愚神がいるって事か?」
『ちょっと状況が掴みにくいですわ』
「……時間が許すなら事情聴取が必要だな。だが、今の所情報は皆無だ」
『メム・ソフィートは600、ヴァヴは6。666と言うならヴァヴが2つではなくて、60、つまりサメフが入るのではないかしら?』
「何でそんな事知ってんのかはさておき、本当に愚神やら従魔絡みなのか、だな」
『プリセンサーが探知した愚神が別口なら、それは考えておくべきですわね』

「666なんて言われても、よくわかんないんだよっ。倒すだけじゃダメなの?」
「数秘術の666なぞ、其こそそこいら中にありふれておるからの。バーコード然り、クレジットカード然り……のぅ。くく」
 難解な事態には全くついていけないミーニャ シュヴァルツ(aa4916)はそのまだ幼さの残る顔をくしゃりと歪める。
 しかし、パートナーのアーニャ ヴァイス(aa4916hero001)の方は違っていた様で、僅かながら憂いの籠もった苦笑を漏らす。
「最低限愚神は倒さなくてはのぅ。666の謎を解くのはそれからかのぅ」
「うーん、頭がぐるぐるして来たんだよー。ミーは謎解き苦手~」
「時間があれば、ヴィラン検挙後にどうなったか、変わった事が無いか聴き込みたいところじゃの。DZが形成されてしまえば、悠長な事も言っておれんがの」
「聴き込みなら、ミーが役に立てるかもしれないんだよっ」
「くくく、ゲマとリア……のぅ。数秘術でゲマは156、リアは132。全て足すと18(6+6+6)。やれやれ、此処にも666が出てきたのぅ。いや、此の場合二人だから9+9。裏返せば66。つまり裏の顔、本当の顔は6と6、二体のヴァヴと言うことか? いやしかし……だとすると、先に倒せば愚神の居場所がわからなくなる恐れもあるか。まぁ現場に行かねばわからんか」
「うー、アーにゃんが難しい事呟いてて、意味がよくわかんないんだよっ。いっぱい探せば、何か情報見つかるかな?」

 そんな中、マイペースな男が1人。柳生 沙貴(aa4912)だ。
「どうも、新人の柳生です。右も左もなんですけど、よろしくでーす」
 今回の事件にて、彼には2つの目的があった。
 現場の捜査及び、可能な限りの現場保存。
 そして、その為に愚神を迅速に撃破する事だ。

 そして、ここに集ったリンカー達の戦いは幕を開けた。


「どうも、リンカーの柳生です。こちらの部屋が犯罪に使われた疑いがあるらしいんで、調べさせて欲しいです。ちょっとお邪魔してもいいですか?」
 後処理の名目で『ゲマとリア』のいたマンションの606号室を訪問した4人のリンカー一行。と、言うかもうなんか色々な意味で準備万端だった。
 当然の事ながら訝しげに首を傾げる例の人型愚神。『ゲマ』と『リア』――もちろん、黒のゴスロリファッションで応対する。
 ドアにはチェーンロックが掛かったままだ。リンカーと聞いてのとっさの判断だ。思わず不安になるのも自明の理。
 恐らく最初のヴィランを検挙したリンカー達を想起したのだろう。
 だが――ある意味今回のリンカー達はそれと同じ、もしくはそれ以上に厄介な存在だった。
「リンカー……さん? 一体、どういうおつもりでこちらへ?」
 とりあえず部屋に誰か居るとすれば不法侵入者か予言された愚神だと見当をつける赤城とヴァルトラウテ。油断はしていなかった。
 ライヴスを介さなくても分かるほど、明らかに人のふりして誤魔化そうとする愚神。その名は『ゲマ』と『リア』――。
 その可能性を考慮して、赤城はいきなり10円玉を指で弾き、人体の急所を狙う。
 人なら一時的に無力化出来るが、ライヴスを介さない仕掛けであれば愚神や従魔には無効のはずだ。
 セーフティガスがあればもっと話が早いが無い物は仕方ない。
 そして案の定。この愚神2人組は己のライヴスを咄嗟に高めて、その10円玉を無力化&回避。そして弾いた!
 これにてターゲット捕捉。速やかに対象を排除しにかかる。思わずアイコンタクトで戦闘開始の合図をするリンカー一行。
 しかし最初にいきり立ったのは、玄関口最前列でやり取りしていた柳生だった。
「いいから入れろっつってんだよクソ下等生物が。ガタガタ抜かすとなますに刻んで表のゴミ捨て場にぶち込むぞ。何処の馬の骨とも知れないゴミカスの分際でリンカー様に逆らってんじゃねえよ」
 そう言って柳生はドアを引っぺがす。リンカーにとってチェーンロック等無意味だ。
「――な!? あなた達! 自分達のしている事がお分かりですの!?」
 完璧にドアが開ききった所で――突入直前に槇が『フラッシュバン』!
 試合開始早々いきなりのBS攻撃に目を奪われつつ、2人の愚神の視界が眩む。
 もちろん味方全員は無傷。と言うか、ライヴスの閃光でダメージを受ける事は愚か、事前に口裏を合わせておいたお蔭様で安心して目をつぶってその場を回避していた!
「――グッ! き、貴様等ぁー!!」
「他人様の家の玄関口で……な、何て事を!!」
 ゴスロリ愚神! 効果覿面!
 しかしいきなりの先制攻撃はそのままの流れを継続。まるで審判がアドバンテージを見ているかの様な包丁さばきで手際良く継続。
 槇と誄はそのBS効果。衝撃ドキュン! が切れるまでの間、流れる様な動きで追撃! スキル『ストライク』を容赦なく蹲った敵目掛けて送り込んだ。
 精神を集中させ、鋭い一射を放ちます。
 その後も他人様の玄関口ですったもんだは繰り返される。
 『ファストショット』――瞬間的に限界まで反射神経を高め、敵の虚を突く早撃ち。牽制と支援を槇と誄がしている最中、敵の側面に回り込んだ柳生は味方とは別方向から攻撃を開始。
 更に敵の隙が大きくなった所で、赤城が吠える!
「上っ面だけ人の真似をしたところでそう簡単に誤魔化されると思うなよ!」
 外に出すとどこに逃げられるか分からない。出来れば屋内で決着を付けたいところだ。
 玄関にあった遮蔽物。
 レイアウトのガラス細工の花瓶やどこかの民芸品の置物等を投擲したりそのまま殴ったりして使いつつ攻撃に徹していた槇と誄は勇猛果敢に部位攻撃。
 最初だけは足を狙い機動力を徹底的に削ぐ。そして十分に機動力を殺した所で脳天を狙った戦法。
「OK、射線ゲット。ヘッドショいきますよっと!」
『よし、流石だな、続けるんだ』
 これ以上、現場に被害が及ぶ事も懸念して柳生は『アサルトユニット』の使用を控える。しかし、思索に耽り、戦闘態勢は崩さない。
 なんとなくこの仲間達、リンカーの戦いぶりを見て柳生はこんな事を思っていた。
 (狭っ苦しいな……フレンドリーファイアも怖い。味方がいないところから攻めるのが上策だろ。先輩方が動きすぎるならお手並み拝見だ。周りをよく見て攻撃の隙を窺おう)
 そんな中、赤城とヴァルトラウテは基本、『ネビロスの繰糸』で一方を牽制・捕縛しつつ、もう一方に攻撃を集中し各個撃破を狙う。
 武装は間合いにより『エクリクシス』と『ゴッドハンド』を適宜に応じて使い分けする。
 そんな戦いの最中、愚神のランクについて探る。
「ドロップゾーンをまだ張ってない辺りデグリオ級ってとこか?」
『未熟なケントゥリオ級という可能性もありますわね』
 愚神を倒すのが前提の今回の戦いは一方的だった。
「色々謎は深いが、愚神をそのままにしていては始まらん。先ずは敵をどうにかせねばの」
 そう言ったアーニャはミーニャと共鳴。敵味方が入り乱れたこの狭いエントランスでの戦いに容赦なく便乗。
 ――クソオオオ!! 貴様等、覚えておれええぇぇぇ!!!――
 結果的にこのゴスロリファッションをした2人組の愚神は跡形もなく消えていった。


 何を覚えておくのかはさておき――
『でな兄者、この獣の数字、666じゃない場合があるんだ』
「ゼェ……ゼェ……し、死ぬかと思った……弟者、なんだそれ?」
『……≪オクシリンコス・パピルス≫……。ヨハネ黙示録の写本においては……この獣の数字は……≪616≫……と記されている』
「……えッ!?」
『……616号室って、あったっけね。在るなら見た方が良いかもしらんね? あとー……ヴァヴとヴァヴだっけ、合わせると12だね。612号室も確認した方が良いかもしれない』
「て、敵が居たりして……」

 兎にも角にも、部屋の捜索が始まった。と、言うか警察の手入れじゃないから、部屋の方は鑑識で封鎖されたりしてないのか?
 思わずそんな疑問を浮かべる赤城とヴァルトラウテ。
「ドラマも真っ青の手抜きっぷりだな」
『本職でないとは言え、ちょっと杜撰すぎですわ』

 そんな中、柳生は念入りに注射器など、麻薬を使用する器具があるかどうか。その使用回数はどの位か。それと、数秘術の道具の質及び量を調べていた。
 その行動を訝しげに眺めていた仲間達に自分の行動の意図を伝える。
「自分達も使う目的で麻薬を作っていたのかとか、どのくらいのグレードの道具で数秘術を行っていたのかとか、地道な捜査でも分かることはあると思います。……正直、真実がどうこうよりも、事件の再発防止が最優先だと思うんですよね。ゲマとリアのメンバーは別々に収監して、可能なら司法取引等の離間策を採るのがいいと思います」
 マンションの室内にはそれほど物騒な物は出てこなかった。最初に来たリンカー達が証拠品として持ち去ってしまったのだろうか?
 その代わりと言っては何だが、悪趣味な絵画や彫刻。絶滅危惧種に指定されている動物の剥製なんかがリビングの周囲を取り囲んでいた。
 こんなマンションの部屋内の確認は速やかに調査し、一刻も早く終わらせたいのがここにいるリンカー達の本音ではある。
 そんな空気をそのまま声に出したのが、ミーニャだった。
「ねー、連れてかれた人は何か『げろった』の?」
「いいや、それはこっちが聞きたいくらいだぜ。何せ例の逮捕された6人の女性グループがそもそも何やってたのか? そのヴィランどもを検挙したリンカー達に連絡を入れた所、一方的に電話を切られちまったし」
 容姿からして明らかに子供のミーニャに対し、赤城は肩をすくめるしかなかった。
「……え? この前エージェントのおじさんが、『早くげろっちまえよぉ、あぁん?』て言ってたから……違うの?」
「おいおい。ミーニャ。どこでそんな新情報を得たんだ?」
 ――ヴィランが検挙後にどうなったのか?
 いつの間にかミーニャは例のリンカー達と接触していたらしい。もちろん直接ではなくH.O.P.E.東京海上支部に情報集めの一環として、携帯電話からの応対だ。
「何だ? あのリンカー軍団め。俺の時は全く相手にしなかった癖して、ちびっ子相手にゃとことん弱いってか」
『とんだロリコン魔もいいとこですわ』
 赤城がそう主張したのに対し辛口評価で便乗するヴァルトラウテ。
「それで? 『メム・ソフィート』と『ヴァヴ』の事について何か分かったのでしょうか?」
 聞いたのは柳生だ。
「うーん。ぜーんぜん。ミーニャが聞いたのは電話口から聞こえてきたいわゆる恐喝? の声だけで、例の女のヴィラン達の声は何にも分かんなかったよ!」
 そんな元気いっぱいに言われても……思わず項垂れてしまうのも無理も無い他メンバー達。
 要するに今回の666の謎は振り出しに戻った。
「まあ、とにかく例の愚神2人組は倒したんだし、もうこの部屋にいる必要は無いわけだ。別に俺達はプロの探偵や何でも屋って訳じゃない。リンカーだ。666の謎は解けなくても『ヴァヴ』なる従魔や『メム・ソフィート』なる愚神が出なければとりあえず安心だろ」
 そう赤城は締め括った。


「しっかし弟者、獣の数字の謎なんてよーく覚えてたな」
『ん? あぁ、兄者が『謎解きムズ杉クソゲー乙』ってブン投げてたゲームにたまたまあったんだよ。詰みゲーしてなければ兄者も色々分かったんだろうになぁ』
 ケラケラと笑う誄。それに対して槇は――
「ぐ、ぐぬぬ……」
 ライヴスを溜めている様だ。

 ――しかし、それから数日が経過した頃。
「な、何で私の部屋がこんなに荒らされているの!?」
 606号室の本来の住人。森さんが海外旅行から帰って来たところだった。その空き家を狙って女性ヴィラン達は数日そこを根城にしていた。
 森さんは数秘術『ゲマとリア』の本当の占い師だった。所謂自分の名。苗字『森』の画数をあてがって606号室を選んだのだが……。
 『森』の画数は全部で12。それを6で割ると2つに分かれる。だからこその606号室だった。
 最初の捕まった女性ヴィラン達がリンカーに口を割らない理由もここにあった。本当に彼女等は何も知らなかったのだ。
 全ては偶然。
 ――しかし、ここ数日の間でヴィランやらそれを連行しに来たリンカー達やら愚神やらそれを討伐しに来たリンカー達やらで明らかに部屋の内部は変わっていた。本来の住人なら一目で分かるだろう。
 そんな事知ってか知らずか、森さんは叫ぶ。もう阿鼻叫喚。
「ドロボー! ドロボーよ!」
 しかし、そこでこの女性。森さんは声を失う。ある1つの事実が自分の首を真綿で絞める事に気付いたのだ。
 そう。彼女は密やかに麻薬の栽培をしていたのだ。見た目はアロエの形状によく似ているが、もちろん違法だ。
 つまり最初の女性ヴィラン達の言っていた事はある意味本当だったのだ。
 もうその麻薬の存在もリンカー達の手によって事件の確たる証拠品として没収されたのだが、森さんは暫し黙考していてベランダに本来あるべきものが無い事にも気付かない。
 そして1つポンッ! と、手を打った。
「そうだわ! ならばこうしましょう。ここに長居するのはさすがに不味い。かと言って、他に引っ越しをするのは御近所に知られてもっと不味い。だとすれば私はどうすれば良いのか?」
 元々、ここは自分の名前に沿った占い師特有の606号室。しかし、ゲマトリア数秘術に相応しいスロットで言えば777と同じ番号があるではないか。無論、不吉の数字だが……。
 だから――
「この1階上の666号室にしましょう!」
 偶然とは時に恐るべき魔力を放った。
 数秘術『ゲマとリア』よりもヴィランの女性構成員達よりもゴスロリ愚神2人組よりもそしてリンカー達のライヴスよりも――。

 そして今度こそこの不吉な数字666が何を呼び覚ますのか? その部屋にいる当の本人。占い師にすら聞く術は無い。

 ――せめてトリブヌス級愚神が出現する事だけは避けなければならない。(了)

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • その背に【暁】を刻みて
    阪須賀 槇aa4862
    獣人|21才|男性|命中
  • その背に【暁】を刻みて
    阪須賀 誄aa4862hero001
    英雄|19才|男性|ジャ
  • 戦い始めた者たちへ
    柳生 沙貴aa4912
    獣人|18才|男性|攻撃



  • おもてなし少女
    ミーニャ シュヴァルツaa4916
    獣人|10才|女性|攻撃
  • おもてなし少女?
    アーニャ ヴァイスaa4916hero001
    英雄|10才|女性|ドレ
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