本部

痛い、痛い、ここにいたい

鳴海

形態
ショートEX
難易度
普通
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
9人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
6日
完成日
2017/01/23 14:50

掲示板

オープニング

● 悪夢の際
 夢は幻、記憶の欠片を繋ぎ合わせる行為。
 ただそれだけの行為に。人は心を震わせる。
 そして同時に心を傷つけられる。

「みんな、おはよう」

 そう西大寺遙華は教室の扉を引いた、ここは十波高校。人口若干四千人程度の町の、一クラス十人にも満たないド田舎の高校。
 その二年生のクラスに遙華は所属していた。
「おはようみんな、今日はいいお天気ね」
 そう部屋の隅に固まっているクラスメイトに声をかけ席に着こうとすると。
 遙華は気が付いてしまった。
 その部屋の空気が徐々に徐々に冷めていくことに。
 これには覚えがあった。どんどん静かになっていき、囁くような声が音楽のように重なっていく。
 そう、気が付けば遙華は一人だった。
「西大寺さん?」
「え?」
 遙華は振り返る。見れば生徒たちは道をあけて、その机に座る生徒が遙華をきちんと睨めるように開かれていた。
「どうしたのかしら、えっと……」
 遙華はその人物の名前がとっさに思い出せなかった。
 なぜなら全員の顔が。
 黒く塗りつぶされていたから。
「あら、私の名前を忘れてしまったの? 西大寺さん」
 少女がそう告げると、遙華は一歩後ろに下がった。
「あ、えっとそのごめんなさい。お話しするのが初めてだから」
「ひどいわ、西大寺さん! 同じクラスの仲間じゃない」
 少女はとてもヒロイックな声音でそう、言い放った。それに呼応するかのように周囲の生徒の声も大きくなっていく。
「きっと西大寺さんは私たちなど眼中にないんでしょう?」
「そうね、だって西大寺さんは、あの有名な西大寺家の長女ですものね」
 違う。
 そう遙華は叫びたくなった。けれどここで声を荒げたところで立場を悪くする。
 そんな予感が遙華にはあった。
 だから、その言葉を聞いているしかなかった。
「私達なんてきっとどうでもいい存在で、私達とは格が違うと思っているんでしょう?」
「悲しいわね、私達西大寺さんとお友達になりたいのに」
 そこでやっと、遙華は口を開くことができた。
「だったら!! だったら、私と友達になりましょう。大丈夫見下してなんていないわ、きっと話していればそれがわかるはず」
「なってあげてもよくってよ、土下座をしたら」

「え?」

 遙華の動きがぴたりと止まった。
「私達、西大寺さんの態度で深く傷ついたの、だから、土下座、してくれたら友達になってあげてもいいわよ?」
 最初に遙華に声をかけた少女が告げる。
「土下座? 私は……え?」
 その時である、遙華の脳裏を記憶が駆け巡った。
 冷たい椅子。濡れた机。凍りついた教室。刺さる視線。そして無数の陰口。
「悪いことを、したの?」
「したじゃない! 私たちを! 見下して、笑ってたんでしょう? だから友達になってあげるために、対等になってあげるために、あなたは私たちに謝らないといけないわ」
 そして遙華は見た。その先の未来。そう自分はこの少女たちの仕打ちに耐え切れず、教師に相談した。
 次の日。
「お前たちが、愚かなる娘たちか」
 そう告げて遙華の背後から突如現れたのは、総裁殿。
 グロリア社日本支部を統括する、遙華の祖父。
 それが少女の目の前に立っていた。
 そして。
「小娘どもが。我が家紋に泥を塗ったこと。後悔するがいい」
「やめて!! おじい様!!」
 老人はその杖を振るった、次の瞬間、少女たちの首が次々に吹き飛んでいく。
「あああ! そんな!」
 少女たちの悲鳴がこだまする。そして怨嗟も。

「貴女のせいでお父様が職を失ったわ!」
「事務所から解雇されたわ、仕事を回せないって。本当にあなたは最低!!」
「こんな仕打ちするなんてひどい!!」
「返して、元の世界を返して」
「私たちを不幸にしてそんなに楽しいの?」

「違うわ!!」

 いつの間にか遙華は暗がりに跪いていた。
「私は違う、おじい様が、おじい様が勝手に!!」
 遙華は髪を振り乱し虚空に向かって、叫んだ。
 喉よ裂けよとばかりに、空に。誰かに。
「私は止めたわ。でもでもどうしようもなかった、私は西大寺の名前を使わないように対処しようとしたつもりだった。けど。だめだった」
 力なく地面をひっかく遙華。
「私を西大寺と呼ばないで……お願い」
 霞んだ声でそう、遙華は懇願した。
 それから、声が聞こえた。
 響くように、謳うように、重なるのは怨嗟。
 遙華を罵倒する声。
 それは先ほどの少女たちの声もそうだし、大人の声もある。
 あの子は人と馴染めない。
 あの子は人と関われない。
 あの子は人の気持ちを理解できない。
 あの子は人に嫌われる定めにある。
「貴女なんて嫌いよ」

「やめてええええええええええええ!!」

 叫びが全ての声をかき消した。
「やめて、やめてやめて! 私は、私は!!」
 ばきんと音がした、遙華の爪が剥がれる音だった、地面に頭をこすり付けた。涙でぬれた目をギュッと閉じる。
 その時。
「遙華……」
 その手を温かく握る手があった。
 震える遙華、その耳に。その女性の声は届かない。
 けれど、しっかり、しっかりと遙華を抱きかかえる。
「ロクト?」
 遙華はとめどなく涙を流す双眸で、ロクトを見あげた。
「綺麗な爪が台無しよ。これが終わったら病院に行きましょうね」
「ロクト、私、私。ごめんなさい」
「謝ることなんてないのよ。でも、そろそろあなたはこれに向き合うべきだわ」
 そうロクトは遙華の指に包帯を巻くと、その少女から手を離し、遙華に背を向けた。
「ロクト!!」
 まるですがるような声。遙華にはロクトしかこの世界で味方はいないように思えたのだ。けど。
「違うわ、遙華、今のあなたには私以外に助けてくれる人がいる。だから、私の仕事は別にあるの」
「ロクト!!」
 ロクトは闇の向こうへ駆けだした。
 一度だけ振り返り、心配ないわと声をかけ。また闇を見据えて走り出す。
 その瞳は鋭くとがり。冷気を帯びていた。
「けどね、あなたにはそれ相応の罰を受けてもらうから」
 その獰猛な笑みは、普段の穏やかな彼女から想像もつかないもので。
「私を怒らせたのは久しぶりね、まどろみ? だっけ」
 彼女がどれだけ本気なのかがうかがいしれた。
「『夜の毒』その異名の恐ろしさを教えてあげましょう」 

解説


目標 夢からの脱出  
   トラウマの克服。

● 十波町 下記PL情報
突然ですが。十波町という場所はこの世界に存在しません。
 ケントュリオ級愚神『まどろみ』の作ったドロップゾーンです

 この町は現在、血の色に染まる雲が空を覆い。
 町に住む人間はみなさんに対してどこかよそよそしいです。
 外を出歩く人は少なく、前回十波町を訪れた人間は人の温かさに差を感じショックを受けるかもしれません。
 町には小さな学校と、商店街、神社などたいていの町にある施設はそろっています。
 そんな中皆さんは夢の終わりを目指して行動していただきます。

 この町ではあなた達の能力者と英雄、どちらか片方は過去のトラウマに囚われます。
 振り切ったはずの過去が追いかけてきて具現化するそんな空間です。
 それはより直接的な形かもしれません。
 因縁の人物の幻が見えたり、自分の運命を変えた決定的な瞬間が目の前で繰り返される。
 そんな風に精神を衰弱させられるかもしれませんし。
 間接的にトラウマへの道が示唆されるかもしれませんし、顕現の仕方は様々です。
 
● 悪夢から覚める方法
 悪夢に取り込まれた皆さんは協力して悪夢からの脱却を図ることになります。
 一番簡単な方法としてはトラウマと向き合うことでしょうか。ただこの場で克服できるかは皆さんの努力次第です。
 あとは黒い鴉を見つけることです。この鴉は不定形で黒いガスを無理やり鳥のかたちにしているような見た目です。
 これは村人を攻撃することで発見できます。誰でもいいわけではありません、トラウマから作られた村人を攻撃すると鴉になります。
 カラスの飛び立つ先に愚神がおり、愚神を見つけるとこの夢から脱出できます。
 また時間経過でも脱出することはできますが、具体的にどれだけの時間がかかるか分かりません、それまでPCの精神が無事で済むかはわかりません。
 

リプレイ


 
第一章 重なる光景

 赤に染まる光景を『柳生 楓(aa3403)』は見つめていた。
「やめて」
 住宅地の真ん中の、車が一台走れる程度の細い路地で、少女が何度も何度も切り裂かれる光景が繰り返されている、コンクリートに叩きつけられる光景が。
 耳を覆いたくなるような悲鳴と。骨が砕ける音の連鎖。
「助けて! お姉ちゃん!」
 そう叫んだ彼女の口から飛び散った血が楓の頬を赤く彩る。
 生ぬるいそれをぬぐうと、鉄臭い香りが鼻につく。
 全てがあの時と同じ…………
「ああああああああああ!」
 楓の慟哭がこだまする。

 赤い空は赤い雨を降らせる、それは『八朔 カゲリ(aa0098)』にも等しく降り注いだ。
 虚ろな視線。灰色の路上を花のように彩る妹の形はおおよそ人間と呼べるものではなかった。その血を雨が洗い流す。
 それをカゲリはただ見つめているしかなく。 
 耳元に届く悲鳴は聞き知った少女の声。
「違うな」
 カゲリは告げる、向かいで転がる楓と、その視線の先の自分の妹。
 それを眺めて告げる。
「こんな光景じゃなかった。あの日は…………」
 影俐と双子の妹が小学校を卒業した日、両親は愚神に殺された。
 二人で一番乗りを競って通学路を遡る。
 その日、家に最初にたどり着いたのは妹だった。そしてそれ故に。
 彼女の心は壊れてしまった。
 カゲリは今でも覚えている。家の中に入った時に嗅いだ血肉の臭いを、目に映した惨状をそして父と母であったであろうものを……影俐は今も目に焼き付いている。
 屈強な愚神の両手には吊るされている両親、ふと気を許せばあの時に心が帰る。すべてを失ったあの日。
 だがあの人は違う何かがそこに一つだけあった。
 金糸の髪を持つ少女。彼女は確か『イリス・レイバルド(aa0124)』と言ったか。


 イリスは路上での光景を家の中から見ていた。死体に重なる残像、誰かの死に顔、誰かの死に顔。 
 直感的に解ったそれが見る者によって姿を変えること。
 それを唖然と眺めるカゲリと楓、異質だった。
 二人はあの日に囚われている、そう今のイリスのように。
 イリスはすべてをあきらめたような瞳を室内に向ける。
 そこには愚神に壊された姿のままの、族だったものの幻影がそこにあった
「お前がわるい」「お前が悪い」
 そんな声をイリスはずっと、聞き続けていたのだ。
 そして家族は冷たくイリスに接する。
 自分の髪を優しく梳かしてくれた姉は見向きもしない。
 兄はわざとイリスの椅子を蹴る。それで床に転がったイリスを母も父も見向きもしない。
 その冷たい背中がありありとかたる、お前のせいだ、お前のせいだ。
 姉が歩みよる。見上げてイリスは告げた。
「お姉ちゃん、逢えてボク、嬉しいよ…………あのね」
 イリスは懸命に笑顔を向ける、そうしていたらいつか笑い返してくれると信じて。
「歌を歌ってるんだよ、本当は人前に出るのは嫌だけど、でもね……みんな喜んでくれて……」
 そう言ってほほ笑んで見せても、だれも、だれもイリスのことを見てくれない。
「いなくなれ」
 やがて父が告げた。
「お前のせいだ、いなくなれ」
「……言わないよ。……ボクが悪いなんていわない」
 そう、イリスは拳を握りしめて自分に言い聞かせるように告げた。

「悪いのは、愚神どもだ」
 それは、愚神が憎いから出た言葉ではない。
「ボクが悪いと言う事は同じ境遇の被害者にお前が悪いと言うことと同じだから」
 自分がここで、自分の行いを罪だと認めてしまえば。同じように愚神に苦しめられているみんなを否定することになる、戦っている人を否定することになる。
「だからボクは、謝らないよ、それに僕は大丈夫、これくらい、慣れてる。僕一人だって」
 そうイリスは拳を握りしめる。
「……上等だよ。この世界を創ったクズは見つけ次第コロシテヤル」
 その居間の光景を横目にカゲリが階段を上り去る、すると見えたのは広大な白い廊下。まるで病院の様だ。
 橋が見えないほどに遠くまで続いているが、ここはまるであの日の。
 そう考えた時、カゲリは反射的に手近な戸を引いていた。
 扉を開くと、そこには幼い自分がうつむいて座っている。目の前には主治医。
 彼の言葉は、今になって覚えていることは少ない、ただ。
 そうカゲリはかつてを思い出しながら向かいの戸を引いた。
 そこには生命維持装置に繋がれた妹がいる。
「あの時、妹は戻ってくることを拒んでいるのだと知った。」
病院のベッドで妹はただ静かに眠り続けていた。
外傷はなかった物の、医師からは目の前で両親を亡くした精神的ショックによるものだろうと説明された。
影俐はその姿に愚神を殺す事を誓った。
『カゲリはズルいよ』
 妹の声が聞こえる、あの日最後に笑い合った声音のまま。
 遅いよ、カゲリ。そう笑った声音のまま。
『私はこんな目にあって寝たきりになっても、起こそうともしてくれなかった』

「ああ、そうだな。反駁しようもない事実だ」
 そう告げてカゲリはベットの隣に腰を下ろす。
「罪は、許されないから罪と言うんだろうな」
 そう振り返ってみた病室の白い壁には、プロジェクターもないのに映像が映し出されていた。それは一人の男の不幸が繰り返し映し出されているのだった。

第二章 ここで輪廻を繰り返す。

 『辺是 落児(aa0281)』は商店街を歩いている。家に帰るなり夕食の買い出しに付き合うように言われ。恋人に手を引かれてここまで歩いてきたのだ。
 彼女の表情は見えなかったが足取りは軽い。
「どこまで、いくんだ?」
 落児はそう問いかける。
「今日の晩御飯のオカズが決まるまで」
 それならそれでいいかと、落児は思い彼女に追いつこうと歩みを速めた。その時だった。
 目の前の十字路、赤信号なのにもかかわらずトラックが急カーブをしながら迫ってきた。
 ダイヤは自重に耐え切れずはじけて飛んで。そのまま勢いを殺し切れずスライドしながら突っ込んでくる。
 間に合わない、そう落児が目を閉じた時。体に強い衝撃を感じた。
 次いで目をあけたとき、真っ先に目に飛び込んできたのが、地面と車体に挟まれ呻く恋人の姿。
「そんな!」
 落児は思わず駆け寄って、跪く、しみだすように血がこぼれ、そして落児の膝を濡らした。
「貴方が生きてくれるならそれでいいの……」
 そう言ってほほ笑んだ恋人、その手が落児の頬に触れるより先にその手が。地面に落ちた。
「そんな、また。失うのか……」
 その直後である。脳内に悲鳴じみた声が響く。
(いやだ、いやだ、死になくないなんで貴方が死なないのよ!?)
「……すまない」
 そうあふれる涙を押さえつけるように強く目を瞑った。
 しかしだ、時は逆回る。
 一瞬の瞬きのうちに目の前の光景は消えうせ場所は商店街。
 目の前を歩く彼女の手には買い物カバンがかけられていて。
「早く帰ろう」
 相変わらず彼女の足取りは軽い。
「ちょっと待ってくれ」
 そう落児は彼女の手を引いた。
「何かおかしい、これは……そうだ、タクシーを使って帰ろう」
「どうしたの? そんなにあわてて、大げさだね」
 そう振り返って微笑む彼女、だが。
 落児の背後からぬるりと現れたフードの人物。その手にぎらつくナイフから彼女は身を挺して落児を庇う。
 ドスッと鈍い音。嘘のように軽い音が響き彼女の体は崩れ落ちる。
 走り去るフードの人物。
 通り魔だ。そう判断したときにはもう遅かった。
「あれ……? なんで……? え……?」
 どす黒い血、内臓を傷つけたのだろう彼女は呻く。
(痛い痛い痛い痛い痛い痛い……)
 そう言葉にならない思いが落児の中に滑り込んできて。
「……すまない」
 だが落児はそう、謝ることしかできなかった。

――永遠と悲劇を繰り返す。
 突如世界に響く、悲劇の淵に逢っても忘れえぬ声。
――はたしてそれにどれだけの意味があるのでしょう。
『構築の魔女(aa0281hero001)』の魔女の言葉に閉じた落児は閉じた瞼を持ち上げた。
 すると目の前に恋人がいた。風に髪をなびかせて、けれど彼女は笑っている。
 そして彼女は落児の手を引いて入れ替わるように前へ。その先に道はなく、彼女は重力に惹かれ遠い地面へと吸い込まれていく。
 そんな光景が何度も何度も繰り返された。

 たとえば建築現場の落下物から……
「痛い……痛い……どこにいるの?」
(なんで私が……なんで……いや……)
「……すまない」

 たとえば火災現場の猛る炎から……
「ごめん、そっちにはいけないみたい……ごめんね」
(置いていくなんて……! 置いていくなんて……!)
「……すまない」

 たとえば地震で倒壊する家屋から……
「助けて……! 置いていかないでよ……!」
(潰されたのが私だけでよかった……)
「……すまない」


 幾度も幾度も助けようとし助けられ生き残る風景……
 その最中常に彼女は微笑んでいた。まるで落児がそこにいるだけで嬉しいとでも言いたげに。
 だが、彼女の胸中はそうではなかったはずだ。
 落児は思う。苦痛に彩られ、絶望の淵に逢ったはずだ。
 だって、あの時彼女は涙を流していたはずだから。
 今のように、笑って死を受け入れてはいないはずだったから。
 喪った恋人に心配され呪われ泣かれ喚かれ離別が繰り返される。 
 彼女の言葉と思意とで、脳が汚染されていく。
 だが、そんな行為の最中、ふと落児は思ったことがある。
「この程度か……」
 直後、ガラスを踏みつけたようなひび割れる音が世界に響き渡った。
 

  *  *

 白い壁に映し出される光景。
 それをカゲリは見届けた。
 ひび割れた白い壁。
 それに次いで映し出されたのはカゲリ自体の記憶。
 壁の四方、天井までもその時の記憶に支配される。
 それは力を得て、仇の愚神と真っ向からぶつかったその時の光景だった。
 あれは復讐だったのだろうか。
 何一つわからない、たった一つわかったことがあるとすれば。それは……
 仇をうったとしても、何も戻ってこなかったということ。
 悲鳴が聞こえる。苦痛に身をよじる少女たちの心の声。
「結果として仇は取ったが、然しまだ足りない」
 カゲリは穏やかな横顔をさらす妹に語りかける。
「この世界を恐れて眠り続けるなら、恐れる必要のない世界を俺が創る」
妹が安心して目覚められると言うには、世界は『敵』が多過ぎた。
影俐はその真実に『敵』の総てを焼き尽くすと誓った。

「……見ているんだろう、ナラカ」
 そうカゲリが告げた瞬間その時部屋の隅が燃え上がり、そこに少『ナラカ(aa0098hero001)』が現れた彼女は無言で窓の外を指さす。
 そこには泥まみれになった『氷室 詩乃(aa3403hero001)』がいる。
 彼女は無人の町へと必死に視線を巡らせている。詩乃の耳にはずーっと楓の声が聞こえているからである。
「どこだ」
 懺悔の声が。
「君はいったいどこにいる!!」

『ごめんなさい、貴方を一人にしてしまって」
「違う」
 詩乃は叫びながら路地を駆け抜けた
『ごめんなさい、私だけ生き残ってしまって』
「違う!」
『ごめんなさい…………まだ生きていて』
「違う、違う!!」
 詩乃は首を振り涙を払うと路地を曲がる、また観た光景。
 迷路のような町。


『ごめんなさい、まだ、そちらには行けそうにありません。
 私は、自分から死なないと決めましたので。
 誰かの犠牲となって死ぬと決めましたから、まだ貴方には会えそうにはありません…………だから、待っててください。
 私がそちらに行くまで。それまで、恨んでもらって構いません。
 私は、貴方を救うことを出来なかったから、あの時貴方の手を握ることが出来なかったから…………私だけ、惨めに生き残ってしまったから』

 その時霞みゆく光景の向こうに、楓が見えた気がした。
 彼女は笑っていた、儚く、何かをあきらめたように自嘲気味に。
「待ってて、楓、僕がたどり着くまで」

「素晴らしいな、ここには困難に直面して諦めるということをする人間は いない」

 そうナラカは……詩乃だけではない。
 能力者、英雄、全員をさしてカゲリにそう告げた。
「私が見えるということは、覚者も心を決めたのだろう? きかせてくれないか、その思いを」
 その言葉を受けてだろうか、突如妹が目を開き、カゲリを睨んで言葉を吐き始める。
「自分勝手だな、死ねよ外道」
「お前みたいな気狂い、生きていて良い筈がない」
「……どうしてたすけてくれないの?」

「敵」と定めたなら、その歩みに惑いはなかった。
 同じ人間であるヴィランを手にかけた事がある。
 時には善良な者とさえ激突してきた。
 そして目的の為と誰かを犠牲にした事も。
 我も人、彼も人、故に対等。
 即ち己とは異なる真であり等しき命。
 誰であれ無価値だった訳ではない。
 その踏み躙った総て、膝を折って無為には出来ない。
「お前なんて死んじまえばいいのに」
「ワンパターンだな、引き出しが少ない」
 そうカゲリが伸ばした右手には黒い炎が宿っていた。
 これが契約の証、浄化の炎
「それでも俺は、前へ征く」
「なんで? なんでお兄ちゃんは歩みを止めないの?」
 そう目に涙をためて問いかける妹に、カゲリは歩み寄って答えた。
「それは……俺が。自分の救いなんていらないと、思ってるからだ」  
 直後世界が爆ぜた。
 歪な虚構も、壁を走るあの日の光景も、全てがガラス細工のように消し飛んだ。
「待ってるね、迎えに来てね」
 そうつげて涙をこぼす妹。彼女の涙が陰りの指を伝い地面に落ちる。
 直後二人は光に包まれた。
「俺は、先へ行く、過去に囚われている暇はない。傷があってもいいだろう、ただ、痛みに足を取られることは二度とない。」
「何とも雄々しい決意であったな。まるで英雄だ」
 ナラカは面白がるようにそう告げた。
「……屑の間違いだろう。それより征くぞ、こんな事に係う暇などない」
「ああ、そうだな。汝の歩みは光が如く……いや、焔の如くか」
 果てが破滅であろうと、その先に贖うべき光があると信じる故に歩みを止めることはない

   *   *

 感情の起伏は少ないはずなのに、優しげで、全てを包み込んでくれるような温かい声『アイリス(aa0124hero001)』の声だ。
 見れば彼女は、後ろからイリスにもたれかかっている。
「イリス、どうしたんだい。手から血が出ているよ」
 そのアイリスの出現に目を見開くイリス。
「爪はきちんと切るように言ったじゃないか」
「お姉ちゃん」
「幻だとわかっているなら、壊してしまえばよかっただろうに、いや、それをしないから君なのか。それを私は誇らしく思うよ。一人でよく頑張ったねイリス。もう大丈夫だ。私がいる」
 そう頭を撫でてくれる手は、小さいはずなのに、とても大きく感じられて。
「お姉ちゃん……」
「向き合う事もなく、逃げ出す事もなく、忘れる事もなく。まあイリスがそうするなら私も付き合うさ」
 そう告げると、いまだイリスに見向きもしない家族たちへアイリスは視線を向ける。
 醜悪な形だ。だがそれでもイリスにとっては大切な家族。それをアイリスは理解している。
「そもそもあの場でイリスの家族を見捨てる事を決めたのは私だ」
 イリスがギュッと、アイリスの袖を引いた。
「責めたいのなら私を存分に責めろというものだよ。思わず欠伸が出るような熱烈なものを期待しよう」
「その子は私たちを見殺しにした」
「置き去りにした」
「守ってくれなかった」
 なるほど、とアイリスはすべてを理解する。
「さてね、可愛い妹を守るのは姉の特権だよ?」
「イリス、よく聞くんだ。私は今まで一つだけ。君に話していないことがある」
 アイリスはそうイリスの目の前に立つと、彼女の目を見据えて告げた。
「最後に、私に託された願いと、願望。
私は本当のお姉さんに、家族に君を託されると共に。
願いも受け継いでいるんだ」
 イリスの視線が一瞬泳ぐ、冷たい視線を向ける姉を一瞥し、恐れるように視線を戻す。
「君の姉は最後に、言ったんだ」
「何を?」
「君を自分の手で幸せにしたかったと」
 直後、イリスの瞳から涙がこぼれた。
「これがどういうことかわかるかい?
自分の言葉で、笑って、自分の行動でイリスが笑って。自分が守って、傷ついたならずっとそばにいて。
そう言うことがしたかったって未練なんだ。
君は家族に愛されていた。これはまやかしだ」
「おねえ……ちゃん」
 アイリスはそれが、自分を呼ぶ声でないと一瞬で理解する。
「だから君は、今幸福であっても、良いんだ。それは彼女たちの」
 望みだから。
 アイリスの言葉がしみいるように世界が揺れた、その直後家族たちの幻覚が爆ぜ、光の中に二人は落される。

「どうか、幸せになって、イリス」

 そう響くのはイリスの実の姉の声。
「お姉ちゃん」
 イリスはそのまま光に飲まれて消えて行った。


   *   *

 何度目の転倒だろう。
 心と裏腹に限界の近づく体。それに鞭打って詩乃は最後の路地を曲がる。
「楓!」
 やっと見つけた、そう詩乃が楓に歩み寄ると。楓は変わり果てた姿でそこにいた。
 何度も転がって、邪魔な足を取り外して、妹の血にまみれた楓はまるであの日の再現の様だった。
 いや実際再現なんだろう、楓が望んだのだ。
 あの時一緒に死ぬことを望んでいたのだ。
「楓、一人でこんなになるまで、もう大丈夫、僕がもう君を傷つけさせない」
 そう軽くなってしまったその体を詩乃は抱きかかえる。
「詩乃?」
 焦点の定まらない楓の瞳、きっとその瞳はずっと死の光景をうつし続けているのだろう。
「楓、ごめん。ボク謝らないといけないことがあるんだ?」 
 その悲痛な声に反応して、楓はそっと詩乃の頬に手を当てた。
「どうしたの? 詩乃? 悲しまないで」
 楓は、そううわ言のように告げる。詩乃は理解してしまった。
 これは反射反応だ。楓は自分がこんなに傷ついてぼろぼろであっても、こうやって反射的に誰かを気遣おうとしてしまうのだ。
 それはもはや病気だ。だから詩乃はすべてを言葉にすることを決めた。
「楓、ボクは君の心の傷を、罪を知ってる。それでも君に言うよ。そんな罪くだらないって」
「くだらない…………」
 その時初めて楓の瞳が詩乃を捉える。
「私の罪が、過去が」
「君は過去に囚われすぎなんだ。今の君が誰かを守れるなんて思わない。誰かを守るという口実に自分を傷つけてる、愚か者にしか思えない」
「詩乃は、わかってくれるって信じてたのにな……」
 楓はそう悲しそうにつぶやくと、腕を妹へと伸ばす。
「見るな!!」
 詩乃の怒号。普段声を荒げることのない彼女の一面におびえたように視線を戻す楓。 
「なんで、なんでそんなことを言うんですか……」
 涙をこぼす楓。
「だって、私が、私が悪いのに」
「それが愚かだっていうんだよ」
 そう詩乃は震える楓を抱きしめる。
「だから、誓約を変えよう。君が過去の罪に囚われないように、胸を張って誰かを守れるように『過去に囚われず前を向いて進む』そして、『人を多く救う』だ。この人には君も含むから」
「…………私も?」
「君が必要なんだ、犠牲になんてしたくない…………これはボクの我が儘だ。でも、ボクは君に生きていて欲しい」
「いけません、詩乃、それは…………」
 詩乃の腕から逃れようと悶える楓、それを押し込める体力もない詩乃は一緒に血の海に転がるしかなかった。
 上から覆いかぶさるように詩乃は楓の両腕を抑え。そして告げる。
「楓、君が自分の罪が許せないならボクは君の罪を…………」
 楓は驚愕に目を見開いた。
「赦す。そしてボクも背負うよ。君の罪を」
 楓は言葉をかみ殺すように歯を食いしばって。けれど頬に落ちる雫が雨ではないと知った時。
 楓は再び両目を開いて、詩乃の言葉を泣きながら受け止めた。
「詩乃が一緒に?」
「うん、僕たちは一心同体、そうだろう?」
 詩乃は言葉を続ける。
「一緒に、行こう楓、この罪の向こうに沢山の人を救いにさ」
「うん……うん!」
 そう楓は詩乃の手を握り返すとそう微笑みを返した。
 直後二人は光に飲まれて消える。
 それを。その光景を構築の魔女が見つめていた。
「無事に脱出できたようですね」
 そして構築の魔女は背後を振り返る。
 そこには落ちてきたガラスで体を切り裂かれた落児の恋人がいる。
 だが彼女はもうまともな人語を話さない
「たとえ、たと、えばば……?」
(※※!!??………………)
 思考すること万を超え、それらすべてにバリエーションがあったが。模倣するたびに何かが壊れ、そして落児は何かに気が付いて行った。
「すまない……」
 その言葉は恋人ではなく空へ。
「救えなかった後悔は、ここでみせられた光景どの全てより多くしている。ここで魅せられた光景以上に、自分は自分を責め続けていた……」
 そう告げて落児は恋人の手を、取った。
「あぁ、本当にすまなかった」
 そう彼女の指にキスを。
「長く君の想いに気がつかず……今もこの身を見せる勇気がない。
そして、待たせ続けてすまないがもう少し時間が欲しい」
 そして彼女はその指を伸ばし落児に触れようともがく、そんな光景を構築の魔女は見届けると、石の階段を上っていった。
「二度目の施行の時。私は本来の登場人物に成り代わり、彼の恋人をさしました」
 その時飛び立った鴉がこの場所を示してくれた。
 町の神社、古びた、参拝客も見られないここに。それはいた。
 豪奢な刺繍の施されたフードをかぶる人物。背は高くなくその手には本を持つ。
「貴女がまどろみ……、面白みのないことをするものですね。悲劇は不幸で……決して幸福と呼べるものではないでしょう」
 まどろみが、その身を揺らす。そこにはロクトが膝立ちになって佇んでいた。 
 単独で交戦したのだろうか。さすがに無謀だと、構築の魔女は思った。
「ただ、それでもそこから生まれた【想い】をもって生きる存在もあるのですよ?」
「あなた達は毎回面白いものを見せてくれる。特に彼は言葉を捨てるほどの傷を受けながら、その安寧を、安息を受け入れない、これはどういうことなんだろうか」
 そうまどろみが問いかけると構築の魔女は微笑んだ。

第三章 再起


「幼いころ私は。従魔に襲われたことがある」
 そう『海神 藍(aa2518)』は『禮(aa2518hero001)』と共にその光景を見つめ続けていた。
 迫る従魔、幼い少年。それは禮の隣に立つ藍とうり二つ、だから思わず助けようと駆け出しそうになった。
 だがそれを征する藍。
「させません!」
 そう従魔の前に躍り出たのは『九十九 サヤ(aa0057)』
 彼女は身を挺して藍を庇ってくれた
「……もしあの日、あの時。死んでいたのが私だったなら、どれほど良かっただろうな……」
「……否定します。兄さん」
 その否定を肯定できない藍の旅が始まった。
 すべての物語は、四歳のころだった。
 そう禮の脳裏に直接響く藍の声。
 いつの間にか傍らに藍の姿はなく、代わりに闇があるばかりだった。
 その闇の向こうに浮上する光景。
 それは何度となくみせられた藍が初めて能力者の存在を知ったその時の光景。
 従魔に襲われた藍は付近のエージェントに助けられる、だが能力者に対し世間は冷たく当たっていることを知る。
彼女は素晴らしい人だ。そう子供が何を言おうと大人達は聞きはしなかった。
「いつか教えてくれましたよね、今思えばあの背中に、石を投げられても揺らがぬ在り方に憧れたのだと」
 禮は暗闇の中に語りかける。
「ああ、自分の身を顧みずに、他者を咄嗟に助けられる気高さ。それを周囲の人間には理解してもらえなかった」
 そう、藍の声が闇にこだまする。
「9の時父親が病死する。医者は手を尽くしてくれたが、それでも救うことはかなわなかった」
 最愛の父だった、彼は自分の目標であると同時に最大の理解者だった。
 彼だけはずっと自分のそばにいてくれるんだと信じていた。
 だが、あっさりとした退場劇に、藍は唖然としたのを覚えている。
 そしてこの日、死というものがどんなに恐ろしいのか知った。
「父の死は悲しかったが、お医者様は諦めず、最期まで手を尽くしてくれたと」
 禮は目を閉じそう告げた。
「いい人だったんだ。ああ、今でも感謝してる」
 その直後禮の全身を警告音が貫いた。クラクションの甲高い音。そして。
 手術室の前で祈るようにうつむく藍の姿。
 彼は成長し、今のような大人びた面影を持っている。
「15の時母が事故死する。雨の日で、藍を最寄り駅に車で送ってすぐの事故だった」
「母の事故は苦しかったが、彼女は最期に”あなたが無事でよかった”と言ってくれたと」
「愛されていたんですね、兄さん」
「ああ。母の明るさには何度救われたか分からない、自分も辛いはずだったのに、姉と自分を弱音も吐かずに育ててくれた」
 次いで暗闇に浮かび上がる情景。母親との記憶。
「綺麗な方ですね」
 禮はそうつぶやいた。
「気高い人だった」
 直後映し出された光景は痛々しいものだった。
「17の時」
 藍が重たく告げる。
「姉が殺された」
 その死の光景、それがまざまざと映し出されて。
「バイクが趣味だった姉はツーリング中に暴走族狩りと称した少年たちに撲殺された。
ニュースでそういう連中がいることは知っていたんだ……止めていれば……」
「兄さん!!」
 禮は走り出した、この暗闇のどこにも彼はいない、けれど、今寄り添ってあげなければ彼がどこかに消える気がした。
「みんないなくなってしまった」
「でも! 兄さん。兄さんは言っていたじゃないですか!」
 禮は知っている、藍の中に人を憎む心が欠片もないことを。
「家族をみんな喪って空虚さを感じる中、周囲の人たちはあなたを気にして、支えてくれたって」
 だが、欠片もないからと言って、人は傷つかないわけでは無い。
 むしろ抑え込んだ感情があるはずだ。自分で殺してしまった感情が。
「だめです兄さん! いえ藍」
 その言葉に藍は息をのんだ。
「藍、あなたは……苦しくとも、悲しくとも。今日まで支えてくれた人たちを護る為に、剣を取ったんでしょう?」
 負けないで、そう願って伸ばした禮の手を誰かが取った。
「私は、あなたのその想いに、近いものを見出したんです……だから、帰ってきて、”兄さん”」
 それに引き上げられることなく、逆に禮はその手を引っ張った。
 闇の中から藍が姿を見せる。
「……ごめん、手間をかけたね。禮……ありがとう」
 その直後である。二人は事故現場に飛ばされた。目の前にはひしゃげた女性。
 そのヘルメットが割れて女性の顔が露わになった。
 その女性は告げる。
「なんで止めてくれなかったの……?」
「行けますか? 兄さん」
 そう禮は強く藍の手を握りしめた。
「悪いね、姉さん。悪夢にうなされていても前には進めない……微睡みは覚まさせてもらう」
 直後共鳴の光。幻想蝶から響く潮騒に耳を澄ませそれを抜き取るとひかりは槍の形となる。黒鱗。それは二人を象徴する刃。
「……そのうちそっちに行くから……今は安らかな眠りを」
 そして振り下ろされた刃は幻影を切り裂く。
 過去との決別、というわけでは無いが。藍が道を見失うことはもう。ないだろう。
 飛び立つ鴉。
 それを眺めていた藍に『一花 美鶴(aa0057hero001)』が走り寄る。
「サーヤを観ませんでしたか?」
「あ。私を助けてくれたリンカーさん、そのサーヤさんだったかも」
 そう藍は必死に記憶をたどる、何せこの世界では記憶がおぼろげになる。だから誰と会ったか思い出すのも一苦労だ。
「え? 時系列がおかしいですよ兄さん。明らかに九十九さんの方が年下じゃないですか」
「現実の話ではなくこの世界の話。役者が物理的に不足してるのかな、使いまわしの印象が……」
「ありがとうございましたー」
 そう美鶴は最後まで話を聞かずに走り去っていった。

   *  *
 そのカラスを見つめ『リジー・V・ヒルデブラント(aa4420)』は一つため息をついた。
「トラウマ、ですか…………はぁ…………まぁ、わたくしも家が家ですから色々ありましたわよ」
『オーリャ(aa4420hero002)』はその言葉に黙って耳を傾けている。
「他所の人間は『あの家の者だから』家の者は『この家の者ならば』
「どうあっても家名はついてまわっていましたから、今母方の姓を名乗っているわけですし」
 飛び立つ鴉を学校の屋上から眺め、その耳は少女の悲鳴を捉え続けている。
「……まぁだからといって、あの家に生まれた以上はそれは致し方ない事と認識しております。
家名に振り回されるのは御免ですが……トラウマとして「あの家にいた自分」まで否定するほど、わたくし堕ちぶれておりませんので」
 それよりもそうリジーはつぶやいて、スッと立ち上がった。
「わたくしは猫ですから。飛ぶ鳥は捕まえたくって仕方がありませんの」
  そう微笑んでおーりゃの手を取る。
「ほらオーリャ、行きますわよ!」


   *   *

 それは美鶴との契約直後の話。
 そして最初の悲劇。
 サヤはたまたまその電話を直接受けた、H.O.P.E.のオペレーター不在の中たまたま電話番を預かって。
 そして聞いた。
「あの、サヤとか言う女」
 自分の名前が出た時には背筋が凍るようだった。
「私の子を道ずれに死のうとしたんです」
 違う。
 そんな言葉も喉を出なかった。
 まるで言葉も全て凍てついたかのように、寒かった。
「あの子はあの日から言葉を失って……謝罪が必要よ! 謝って!」
 その言葉が心に突き刺さり。いまだにサヤの心は血を流し続けている。
「私は精一杯守ろうと思って……」
 沙耶は少年の背に告げた。
「でも他に方法はあったかもしれない……」
 そう足元に視線を落とす。
「他の人ならもっと上手に対処できたかもしれない……それ以前に、私があの子を連れて愚神から逃げることができてれば……」
 さらにもっと強かったなら、愚神を倒すことができたはずだ。だが自分はそれができなかった。
「HOPEに入ってもそう、他の人は能力を上手く使って色々な事ができる」

「私はいつも『足りなくて』」

「ごめんね美鶴ちゃん、他の人と契約していたらもっとうまくできるのに」


 そうサヤは空に向かって言葉を吐いた。その向こうにまるでサヤを招くような腕が見える。サヤはそれに手を伸ばす。
 もういっそのこと。そう願った直後。
 声が聞こえた。
「もう、ごめんねは聞き飽きましたわ!」
 そう肩で息をしながら美鶴は声を張り上げた。
「今度はいったいどうしたと言いますの? そんな悲しい顔をして」
 その直後、サヤの背後であの日の光景が再現される。

『私の子を道連れにしようとしたんでしょ!』

 キィンとノイズ交じりに響くその声を聴いてサヤは諦めたように肩を落とす。
 そして美鶴の顔が真っ赤に染まった。
「何ですって、そんな事を言われたの!?」
「秘密にしてたのに……」
 そうサヤは視線を下ろす。
「うぅ、許せませんわ」
 直後美鶴はぷりぷりと怒り出した。
「私は知っています、サーヤは自分一人なら逃げられたのに子供を助けようとして捕まった事を
捕まって逃げられなくても、せめて盾になるようにと子供を抱きしめて、殺されそうになる寸前まで優しく声をかけ続けた事を!」
「うん」
 サヤ自身あの時は必死で記憶はおぼろげだ、ただあの少年に安心してほしくて、ずっと話しかけていたのを覚えている。
「それで十分ではないですか」
「けど、私……」
「けど?」
 美鶴はサヤに歩み寄りその鼻をつまみあげた。涙を目に貯めていたがるサヤ。
「もう、この子は……一人で頑張りすぎですのよ。もっと私にも言っていいのに」
 そう美鶴が指を鳴らすと、今度は美鶴の背後に映し出される光景があった。

『ああ、自分の身を顧みずに、他者を咄嗟に助けられる気高さ。それを周囲の人間には理解してもらえなかった』

 それは藍の独白。
「貴女が救ったわけでは無いけれど、あなたの救った男の子のように、リンカーに救われた人の思いですの」
 そう告げて美鶴はまたサヤに歩み寄った。
「サーヤ、ねぇ。何もかもが「足りない」とは思っていないわ
もしわたくしが同じように責められたら、サーヤはきっと庇ってくれるでしょう?
確かに戦場で大きな功績と言えるものはない」
けれど、そう美鶴は言葉を切る。
「 サーヤが誰かを守りたいという思いは「足りている」と思うわ、少なくとわたくしには。
自分が「足りない」と思うのはあたりまえだわ、わたくし達は二人で一人なんですもの……
サーヤが足りないものをわたくしが、わたくしが足りないものをサーヤが、互いが互いを補いあうのだから」
 そう告げて、サヤの頭を抱える。
「わたくしはサーヤがいいの」
「 ありがとう、私も……美鶴ちゃんでよかった」


第四章 罪業の果てに
 
 
『アリュー(aa0783hero001)』は猫となり果てそこにいた。
「なんで、ここに来るといつもいつも」
 アリューは部屋を見渡した。可愛らしく装飾された壁、沢山の人形。天蓋月のベット。そして震える少女。
 彼女へとアリューは身を寄せる。
 すると少女は虚ろな視線をアリューに向けて、口を開いた。
「生後暫くは前世の記憶を憶えている子が稀にいるという」
「理夢琉……」
 アリューにはわかっていた。『斉加 理夢琉(aa0783)』ではない。別の人間がその口を動かしている。
 ではその人間とはだれか。決まっている。
 理夢琉の元となった人物だろう。
「その記憶がより鮮明であったなら?」

「 無垢な魂に与える影響は? そして家族はどう対処するだろうか」

「これは、この幼きか弱き少女が受けた、心の傷と罪業のお話」
 
 そう告げると、理夢琉らしき少女はアリューを膝の上にのせてテレビのリモコンをかちりといじる。

「昔、霊力という技術があまり浸透していない頃。霊力には差別偏見がありました」
 映し出されるのは孤独な少女、その少女にしきりに話しかける老紳士と。そして背を向ける夫婦。
 そしてその手綱を握る眼光鋭き老人。
「お爺さまはライヴスや英雄を否定する側にいた。お父さまは家を守る為に選択を迫られていた。世論は英雄を認める方向で動き始めていたから」
 そんな生活の果てに。やがて母の心は壊れてしまった。
「お母さん」
 そうしたったらずな声で、理夢琉は声をかける。
 魂を失った人形のような母に。
「お母さん。またね、誰かが私にね、訴えかけるんだよ。ここから出してって。お母さん」
 そして完全に理夢琉の世界が破たんするのは、一瞬のうちの出来事だった。
 理夢琉はそれまで世界に愛されていると思っていた。
 幼いということはそう言うことだ。皆が笑いかけてくれる。
 だがその常識は一瞬で崩れ去った。
 痩せ細った白い腕。今思えば痛々しいくらいに冷たいその腕が、理夢琉の首に絡みついていた。
「お母さまは泣いていた」
 葛藤、後悔、懺悔。憎しみ。
 自分が壊れてしまうから、理夢琉を壊そうとした。理夢琉を壊しながら自分が壊れていくと知った。
 愛していた、だからこそ、眠らせてあげるべきだとも思った。
 だが、その思いも一瞬で砕かれることになる。
「私が普通の子供みたいにただ恐怖を覚え泣いて抵抗したなら。その手を緩め抱きしめてくれたかもしれない」

だが理夢琉は抵抗せず見つめていた。

 絞めつける力が急激に増すのがわかった。
 お母さまの顔が奇妙に歪んで瞳に狂気が滲む。
 壊れていく。

『 ワタシガ「コワシテシマッタ」』

 理夢琉が画面の向こうから告げる。
 その心に降り立つように悪魔のごとき愚神が理夢琉の前に現れた。

『壊したくない』『愛してほしい』おもいは逆にすり替えられる
『壊してしまおう』『壊してしまえ』『お前を否定する人間をすべて』

気が付けば爺やが床に血まみれで倒れていた。

 愚神は。
 私の目の前で。
 爺やの首を引きちぎり。 
 壊していく。

『コワシテ コワシテイルノハ ワタシ?』

 水晶の英雄がいた。彼女は世界を救うために歌となってこの世を去った。 
 彼女を助けたい。
 そう願って、力を尽くした。けれどその努力は無駄に終わってしまった。
 目の前でひび割れるその体。
 美しい水晶の体は水の雫のように粉々に。
 理夢琉は涙を流した、だが頭の奥で、別の誰かが囁いて。

『アァ マタ コワシテシマッタ』

「私は! きっと誰も救えない!」
「俺を救ったじゃないか!」
 そうアリューは四本の足で力強く地面を蹴った、そしてモニターの中へと入る。
 その向こうで佇む理夢琉をアリューは力一杯抱きしめた。
「俺を偽物じゃないと言ってくれたのは、理夢琉じゃないか」
 そんなアリューを理夢琉は抱きしめ返す。
「探そう、誰も壊さなくていい戦い方を、一緒に。そのための契約じゃないか」

「「絆を信じ一緒に戦う」」

「その響きがある限り、何度だってやり直せる」
 その言葉に理夢琉は瞳を閉じる。
 
    *   *

 町のあちらこちらでひかりの柱が立ち上っていくのを『卸 蘿蔔(aa0405)』は見守っていた。
 教室の隅っこ、人の意識からも端っこ。
 誰からも忘れ去られたこの教室で。蘿蔔は一人だった。
 蘿蔔は窓の外に手を伸ばす。
 今日一日この世界で生きて見て分かったが、蘿蔔が逢いたかった人、話したい人は全員触れようとすれば消えてしまう。
 自分と関わる人間は消える、その比喩だと思った。
 両親も、英雄も、そして遙華でさえ。
 今は蘿蔔の目の前に現れない。
 全員触れようとして消えてしまった、蘿蔔が消してしまったから。
「しろちゃん?」
 その時だ、名前を呼ばれはじかれたように蘿蔔は顔をあげた。そこには彼方がいる。
 思わず蘿蔔は席を立った。
「…………かなちゃん」
 嬉しい、あえて嬉しい。まだ話したいことが沢山あったから。
 行きたいところも見たいところもたくさんあった。
 けれど。
 そう蘿蔔はポケットの中のトランプを握りる。
「なんで、そんなに悲しい顔をしているの?」
「来ないでください!」
嬉しいはずが来ないでと思ってしまう。抱きとめたら消えてしまうと。
「嫌です、かなちゃんまで、消えてしまう。消えないで。御願いです」
「私のことが嫌い?」
 その言葉に目を見開く蘿蔔。
「違います……けど」
 蘿蔔は再びトランプを、握りしめる。
「忘れてもいいって、何ですか」
 蘿蔔はふにゃふにゃと、情けない声で啖呵を切る。
「私は、そんなこと一度も。思ってないのに」
「辛い思いをさせてごめんね」
「そう言う話をしたいんじゃないんです。でも自分じゃなければ、最後に寂しい思いをさせなくて、すんだんですよね。ごめんなさい」
「それは、違うよ」
 蘿蔔は反射的に顔をあげた。いつの間にか彼方がそばにいる。
 息がかかりそうなほど近く、でも触れられない。それがどれだけ人を遠くに感じさせるかこの時蘿蔔は初めて思い知った。
「寂しくなかったよ。だって、そのための一か月分の思い出もらったんだもん。しろがいなかったら。それはなかったよ。ありがとう」
 蘿蔔は思った、そんな風にお礼を言われるようなこと、できていない。
「最後はしろちゃんの、カッコいい姿見れたし。すごかったね、あんなふうに戦ってるんだね」

「私は蘿蔔とあえて幸せだったよ」 

 その言葉に、蘿蔔は一つ涙をこぼす。
「私は…………逃げてただけだ。生きてる人の為なんて言って、目をそらして、考えないようして。結局は忘れたかった」

「ごめんなさい、ごめんなさい、かなちゃん。私謝りたくて、でも」
 幻影がいくら許してくれても、本物が許してくれているかどうかはわからない。
 蘿蔔は口をあけて大きな声で泣いた。
 その時である。
「またやってるのか」
 ピシャンと勢いよく教室のドアが開いた。
「……いたのですか」
 突然の『ウォルナット(aa0405hero002)』に涙を止めきれない蘿蔔、恥ずかしくてそっぽを向いた。
「前に飲んだココアの味が忘れられなくてな。買いだめしてた」
 そう告げてウォルナットは蘿蔔に缶ココアを頬に押し当ててくる、思いの他ホットで蘿蔔は悲鳴をあげた。
「あははははは」
「あの、ひどくないですか。それとウォルは泣いている女の子にさらにいじわるする人なんですか?」
 そんな言葉をさらっと聞き流してウォルは隣に座った。
 彼は告げる。
「死は簡単に向き合い受け止められるような優しいものじゃないよな」
「ウォル?」
「時間をかけて、ゆっくり癒すものだ、焦らなくていい。大事な人なら、なおさらだ」
 そう告げるウォルナットの瞳には底知れぬ光が讃えられていた。
 蘿蔔はここで思い出す、彼の素性を自分はほとんど知らない。
 彼が依然どんな人と契約していて、どんな仕事をしていたのか。
 あまり知らない。
「そうだ、そんなことより、やらないといけないことが残ってるんじゃないか?」
「え?」
「西大寺の御嬢さんがそこで泣いてたぞ」
「あ! 遙華!」
 そう蘿蔔は教室の戸を押し開けた。

   *   *

 
『世良 霧人(aa3803)』は校舎内を闊歩していた。
 学校の影にちらちらと見える遙華を追ってひとまず歩いていたのだが、その尻尾はいつまでもつかめない。
「西大寺さん!」
 そう手を伸ばし、また逃したことで肩を落とす霧人。だがその背後から聞き覚えのある声が聞こえた。
「相田、久しぶりだな。元気にしてたか?」
 相田、その名前には嫌悪感しかない、そしてその声にも。
 振り返ればそこにあの体育教師が突っ立っていた。
 にやにやと霧人を眺めて一歩一歩歩み寄ってくる。
 それから霧人は逃げた。
 逃げて走って。そしてたどり着いた教室で。
 霧人は驚くべきものを見ることになる。
 それは舞い散る鮮血。鋏を右目に突き立て、血を流して倒れる過去の自分。その様子を嫌な笑みを浮かべながら眺める教師。
「これで、お前は壊れちまったんだよなあ?」
 そう告げてその教師は成長した霧人と向き直る。
「でも、お前はもう治ってるよな。治ったんなら、また壊してやるよ」
 そう教師は地面に落ちた血濡れの鋏を拾い、その切っ先に下を這わせた。
 その背後で教室の壁が透ける、その向こうに見えたのは蹲る遙華と、それに声をかける蘿蔔の姿。

   *   * 

「遙華、どこですか!」
 そう叫びながら校舎内を走り回ると、少女の悲鳴が聞こえてくる。
 蘿蔔は反射的にその扉を開いた。
 そこには黒い影に罵倒を浴びせられる遙華がいた。頭を押さえてネズミのように小さく縮こまっている。
「蘿蔔! 来ないで、私はあなたにまで否定されたら、それがたとえ幻影だとしても」
「わかりますよ、その気持ち。だから」
「これは相手が悪いが、優しい嬢ちゃんは思うことがあるのだろうな。負い目もあるから強く出れない
 ウォルがそうつぶやくと、ここにいてください、蘿蔔はそう言って遙華の元へとゆっくり歩みよる。
「アンタなんて西大寺の家に守られてるだけの性悪女!」
「それは違う!」
 その蘿蔔の言葉に、場が静まり返った。遙華ですらきょとんと蘿蔔をみつめている。
「私は…………遙華が好きですから! 大好き! いつも色々付き合ってくれて、お仕事でも支えてくれて。私と友達になってくれて、嬉しいです。ありがとう」
「それは違うわ!」
 遙華が告げた。泣きながら立ち上がって首を振る。
「私は、蘿蔔が傷ついている時に何もあなたにできなかった。声をかけることも慰めることもできなかった。彼方に嫉妬までして、私はあなたに友達なんて呼んでもらえる資格本当は、なくて」
「遥華さん……」
 次いで声をかけたのは藍だった。校舎を彷徨っている間に遙華の声に導かれここまで来た。
「あなたは不器用だけれど、やさしい人だ。私はあなたのこと、割と好きなんだけどね」
「私はそんな、大した人間じゃ……」
「私は何があっても遙華の味方です…………そう思っているのは私だけじゃない。だから大丈夫。一緒にここを出よう」
 そう蘿蔔は手を差し伸べる、その瞬間スピーカーから声が響いた。

『家名に振り回されるのは御免ですが……トラウマとして「あの家にいた自分」まで否定するほど、わたくし堕ちぶれておりませんので』

「蘿蔔……」
 その時である。影が消え去り、遙華と蘿蔔の間に彼方が現れた。
 彼方はずっとやさしく微笑んでいる。
「歌、届きましたか?」
 蘿蔔は恐れない、真っ直ぐ彼方を見つめてそう、つぶやいた。
「向き合うのはそれからでも遅くはない。そしてそのときはきっと」
 ウォルナットの言葉に頷いて蘿蔔は告げた。
「うん。その為にもこの夢…………終わらせないと。だから今だけは向き合うよ、眠らせてあげないと」
 そう告げて蘿蔔は彼方を抱きしめた、その手には銃。彼方へ頬ずりしながらその銃口を背中に向ける。
 だがその手を遙華が抑えた。
「それだけは絶対ダメよ。ダメ」 
 そう彼方ごと蘿蔔を抱きしめる遙華。
 そんな二人だけに聞こえるように、彼方は告げる。
「歌。届いてるよ。大切にしてくれてありがとう、みんなにもそう、伝えてね」
 直後教室が砕けた。光の奔流が全員を包む。

   *   *

 その光景を霧人は見つめていた。
 遙華はこの世界を脱出できたようだ、友人たちの支えによって。
 そして自分も同じように地獄から救い出してくれた人と、言葉がある
「あつっ」
 霧人は薬指を見つめた。エンゲージリングが光り輝き、その存在を訴えている。
 まるで彼女が叱咤激励してくれているようではないか。
 だからもう、何も怖いものはなかった。
「あの時の僕とは違う! もう簡単には壊れない!!」
 そう告げた霧人はいつの間にか共鳴後の姿となっていた。
 直後鋏をはじいて教師を殴り飛ばす。
と言い、教師を思い切り突き飛ばす。
 その瞬間幻影は鴉となって飛び立ってしまう。
「もう大丈夫だよ」
 そうあの時差し伸べられなかった手を自分で差し伸べる。
「これからはもう、辛いことなんてない。みんな助けてくれる、だから僕は大丈夫」

結果

シナリオ成功度 大成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • いつも笑って
    九十九 サヤaa0057
    人間|17才|女性|防御
  • 『悪夢』の先へ共に
    一花 美鶴aa0057hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 燼滅の王
    八朔 カゲリaa0098
    人間|18才|男性|攻撃
  • 神々の王を滅ぼす者
    ナラカaa0098hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • 白い死神
    卸 蘿蔔aa0405
    人間|18才|女性|命中
  • エージェント
    ウォルナットaa0405hero002
    英雄|15才|?|シャド
  • 希望を歌うアイドル
    斉加 理夢琉aa0783
    人間|14才|女性|生命
  • 分かち合う幸せ
    アリューテュスaa0783hero001
    英雄|20才|男性|ソフィ
  • マーメイドナイト
    海神 藍aa2518
    人間|22才|男性|防御
  • 白い渚のローレライ
    aa2518hero001
    英雄|11才|女性|ソフィ
  • これからも、ずっと
    柳生 楓aa3403
    機械|20才|女性|生命
  • これからも、ずっと
    氷室 詩乃aa3403hero001
    英雄|20才|女性|ブレ
  • 心優しき教師
    世良 霧人aa3803
    人間|30才|男性|防御



  • 復活の狼煙
    リジー・V・ヒルデブラントaa4420
    獣人|15才|女性|攻撃
  • エージェント
    オーリャaa4420hero002
    英雄|11才|女性|ソフィ
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