本部
痛い、痛い、ここにいたい
- 形態
- ショートEX
- 難易度
- 普通
- オプション
-
- 参加費
- 1,500
- 参加人数
-
- 能力者
- 10人 / 4~10人
- 英雄
- 9人 / 0~10人
- 報酬
- 普通
- 相談期間
- 6日
- 締切
- 2017/01/15 09:00
- 完成予定
- 2017/01/24 09:00
掲示板
-
依頼前の挨拶スレッド
最終発言
オープニング
● 悪夢の際
夢は幻、記憶の欠片を繋ぎ合わせる行為。
ただそれだけの行為に。人は心を震わせる。
そして同時に心を傷つけられる。
「みんな、おはよう」
そう西大寺遙華は教室の扉を引いた、ここは十波高校。人口若干四千人程度の町の、一クラス十人にも満たないド田舎の高校。
その二年生のクラスに遙華は所属していた。
「おはようみんな、今日はいいお天気ね」
そう部屋の隅に固まっているクラスメイトに声をかけ席に着こうとすると。
遙華は気が付いてしまった。
その部屋の空気が徐々に徐々に冷めていくことに。
これには覚えがあった。どんどん静かになっていき、囁くような声が音楽のように重なっていく。
そう、気が付けば遙華は一人だった。
「西大寺さん?」
「え?」
遙華は振り返る。見れば生徒たちは道をあけて、その机に座る生徒が遙華をきちんと睨めるように開かれていた。
「どうしたのかしら、えっと……」
遙華はその人物の名前がとっさに思い出せなかった。
なぜなら全員の顔が。
黒く塗りつぶされていたから。
「あら、私の名前を忘れてしまったの? 西大寺さん」
少女がそう告げると、遙華は一歩後ろに下がった。
「あ、えっとそのごめんなさい。お話しするのが初めてだから」
「ひどいわ、西大寺さん! 同じクラスの仲間じゃない」
少女はとてもヒロイックな声音でそう、言い放った。それに呼応するかのように周囲の生徒の声も大きくなっていく。
「きっと西大寺さんは私たちなど眼中にないんでしょう?」
「そうね、だって西大寺さんは、あの有名な西大寺家の長女ですものね」
違う。
そう遙華は叫びたくなった。けれどここで声を荒げたところで立場を悪くする。
そんな予感が遙華にはあった。
だから、その言葉を聞いているしかなかった。
「私達なんてきっとどうでもいい存在で、私達とは格が違うと思っているんでしょう?」
「悲しいわね、私達西大寺さんとお友達になりたいのに」
そこでやっと、遙華は口を開くことができた。
「だったら!! だったら、私と友達になりましょう。大丈夫見下してなんていないわ、きっと話していればそれがわかるはず」
「なってあげてもよくってよ、土下座をしたら」
「え?」
遙華の動きがぴたりと止まった。
「私達、西大寺さんの態度で深く傷ついたの、だから、土下座、してくれたら友達になってあげてもいいわよ?」
最初に遙華に声をかけた少女が告げる。
「土下座? 私は……え?」
その時である、遙華の脳裏を記憶が駆け巡った。
冷たい椅子。濡れた机。凍りついた教室。刺さる視線。そして無数の陰口。
「悪いことを、したの?」
「したじゃない! 私たちを! 見下して、笑ってたんでしょう? だから友達になってあげるために、対等になってあげるために、あなたは私たちに謝らないといけないわ」
そして遙華は見た。その先の未来。そう自分はこの少女たちの仕打ちに耐え切れず、教師に相談した。
次の日。
「お前たちが、愚かなる娘たちか」
そう告げて遙華の背後から突如現れたのは、総裁殿。
グロリア社日本支部を統括する、遙華の祖父。
それが少女の目の前に立っていた。
そして。
「小娘どもが。我が家紋に泥を塗ったこと。後悔するがいい」
「やめて!! おじい様!!」
老人はその杖を振るった、次の瞬間、少女たちの首が次々に吹き飛んでいく。
「あああ! そんな!」
少女たちの悲鳴がこだまする。そして怨嗟も。
「貴女のせいでお父様が職を失ったわ!」
「事務所から解雇されたわ、仕事を回せないって。本当にあなたは最低!!」
「こんな仕打ちするなんてひどい!!」
「返して、元の世界を返して」
「私たちを不幸にしてそんなに楽しいの?」
「違うわ!!」
いつの間にか遙華は暗がりに跪いていた。
「私は違う、おじい様が、おじい様が勝手に!!」
遙華は髪を振り乱し虚空に向かって、叫んだ。
喉よ裂けよとばかりに、空に。誰かに。
「私は止めたわ。でもでもどうしようもなかった、私は西大寺の名前を使わないように対処しようとしたつもりだった。けど。だめだった」
力なく地面をひっかく遙華。
「私を西大寺と呼ばないで……お願い」
霞んだ声でそう、遙華は懇願した。
それから、声が聞こえた。
響くように、謳うように、重なるのは怨嗟。
遙華を罵倒する声。
それは先ほどの少女たちの声もそうだし、大人の声もある。
あの子は人と馴染めない。
あの子は人と関われない。
あの子は人の気持ちを理解できない。
あの子は人に嫌われる定めにある。
「貴女なんて嫌いよ」
「やめてええええええええええええ!!」
叫びが全ての声をかき消した。
「やめて、やめてやめて! 私は、私は!!」
ばきんと音がした、遙華の爪が剥がれる音だった、地面に頭をこすり付けた。涙でぬれた目をギュッと閉じる。
その時。
「遙華……」
その手を温かく握る手があった。
震える遙華、その耳に。その女性の声は届かない。
けれど、しっかり、しっかりと遙華を抱きかかえる。
「ロクト?」
遙華はとめどなく涙を流す双眸で、ロクトを見あげた。
「綺麗な爪が台無しよ。これが終わったら病院に行きましょうね」
「ロクト、私、私。ごめんなさい」
「謝ることなんてないのよ。でも、そろそろあなたはこれに向き合うべきだわ」
そうロクトは遙華の指に包帯を巻くと、その少女から手を離し、遙華に背を向けた。
「ロクト!!」
まるですがるような声。遙華にはロクトしかこの世界で味方はいないように思えたのだ。けど。
「違うわ、遙華、今のあなたには私以外に助けてくれる人がいる。だから、私の仕事は別にあるの」
「ロクト!!」
ロクトは闇の向こうへ駆けだした。
一度だけ振り返り、心配ないわと声をかけ。また闇を見据えて走り出す。
その瞳は鋭くとがり。冷気を帯びていた。
「けどね、あなたにはそれ相応の罰を受けてもらうから」
その獰猛な笑みは、普段の穏やかな彼女から想像もつかないもので。
「私を怒らせたのは久しぶりね、まどろみ? だっけ」
彼女がどれだけ本気なのかがうかがいしれた。
「『夜の毒』その異名の恐ろしさを教えてあげましょう」
解説
目標 夢からの脱出
トラウマの克服。
● 十波町 下記PL情報
突然ですが。十波町という場所はこの世界に存在しません。
ケントュリオ級愚神『まどろみ』の作ったドロップゾーンです
この町は現在、血の色に染まる雲が空を覆い。
町に住む人間はみなさんに対してどこかよそよそしいです。
外を出歩く人は少なく、前回十波町を訪れた人間は人の温かさに差を感じショックを受けるかもしれません。
町には小さな学校と、商店街、神社などたいていの町にある施設はそろっています。
そんな中皆さんは夢の終わりを目指して行動していただきます。
この町ではあなた達の能力者と英雄、どちらか片方は過去のトラウマに囚われます。
振り切ったはずの過去が追いかけてきて具現化するそんな空間です。
それはより直接的な形かもしれません。
因縁の人物の幻が見えたり、自分の運命を変えた決定的な瞬間が目の前で繰り返される。
そんな風に精神を衰弱させられるかもしれませんし。
間接的にトラウマへの道が示唆されるかもしれませんし、顕現の仕方は様々です。
● 悪夢から覚める方法
悪夢に取り込まれた皆さんは協力して悪夢からの脱却を図ることになります。
一番簡単な方法としてはトラウマと向き合うことでしょうか。ただこの場で克服できるかは皆さんの努力次第です。
あとは黒い鴉を見つけることです。この鴉は不定形で黒いガスを無理やり鳥のかたちにしているような見た目です。
これは村人を攻撃することで発見できます。誰でもいいわけではありません、トラウマから作られた村人を攻撃すると鴉になります。
カラスの飛び立つ先に愚神がおり、愚神を見つけるとこの夢から脱出できます。
また時間経過でも脱出することはできますが、具体的にどれだけの時間がかかるか分かりません、それまでPCの精神が無事で済むかはわかりません。
マスターより
痛覚とは、生存するために必須の機能です。
異常を訴え改善を訴える機能。それはここにいるための機能と言い換えることもできます。
体が痛む限り、その体は生きることをあきらめませんし。
心もまた、痛みを感じ続ける限りそこにありたいんだと思います。
今回はそんなシナリオです。
痛みを抱え続けてでも生きることを選んだリンカーたち。
そんな彼らが自分の痛みの根源と向き合う。そんなお話し。
関連NPC
リプレイ公開中 納品日時 2017/01/23 14:50
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