本部

カウントを止めろ!

電気石八生

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 6~6人
英雄
6人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2015/10/09 13:42

掲示板

オープニング

●焼きつける者
 合掌造りの家屋が残ることで有名な岐阜県の山岳地帯、その奥の奥。
 朝露に湿った空気がゆらり。背の高い木々を伝い登ってその枝葉を揺らす。
 その様を無機質な目で見上げながら、その者どもは半開きの口から赤炎を吹き漏らした。
 急加熱された湿った空気が、またもやゆらりと景色を揺らしてみせた。
「キュッキュッキュ」
 錆びのまわったボルトを回すような音を発した1体が、土の中から突きだす木の根を踏みしめ、歩き出した。
「キュッキュッ」
 応えた者どもが後に続く。
 根や地に降り積もる木の葉の上に、黒い足跡を焼きつけながら。

●燃やすか燃やさないか
「は~い、みなさんおつかれさまで~す」
 HOPE本部ブリーフィングルームに、新人女子職員がバタバタ駆け込んできた。
「みなさん旅行とか興味あります?」
 集まっていたライヴスリンカーたちが、思わず顔を見合わせた。いきなりそんな詐欺っぽいこと言われても……。
「いやいや、チケット売るよ~とかって話じゃないんですよっ。岐阜県の超有名な、合掌造りの家とかある村のこと知りません?」
 その世界遺産の集落がある、岐阜県と石川県にまたがる霊峰の深部で、不穏なライヴスの揺らぎが検出されたというのだ。
「みなさんにお願いしたいのは、山の奥に現われたデクリオ級従魔5体の退治なんですけど……ライヴスの揺らぎだけじゃなくて、実際の空気も揺らいじゃってるって問題がありまして」
 空気を揺らがせるもの――風?
「さらにそれの基になる熱。もっと言っちゃえば火、です」
 山に熱。それはまずい。山火事になれば、文化遺産だけでなく、山で生きる無数の生命が一気に失われることになる!
「で。その熱源が従魔なんですよ」
 スクリーンに映し出されたのは、おそらくは衛星カメラで上空から撮影された件の従魔たちの姿だったわけだが。
「口から火、噴いてますし、シッポが燃えてるんですよね。放置しとくだけでも近いうち山火事になるんですけど、こいつらが暴れたら確実にまわりの木に引火して、即山火事になるという……」
 敵は火トカゲ。
 だとすればただ戦うだけでなく、「山火事を引き起こすだけの本数が燃える前に倒す」か、「木に引火させない手段を考える」か、とにかく山火事対策をしなければならないということだ。
「敵に集中しきれない状況で戦うことになります。装備と心の準備をしっかり整えて、火事にならないよう事に当たってください」

解説

●依頼
 山火事を起こす前にイグアナ従魔6体を倒してください。

●状況と地形
・戦闘エリアに人はいません。
・特に作戦実行時間帯を夜で指定しなければ(昼の間に作戦を実行すれば)、視界が阻まれることはありません。
・樹木の密集率はそれほどではありません。普通に動く分には問題なしですが、剣や長柄武器を自由に振り回せる広さは確保できません。
・対策なしで従魔と対した場合、1ラウンド経過するごとに1本の樹木が引火して燃え上がってしまいます。
・各種対策により、樹木1本につき1~∞ラウンド引火を遅らせることができます。
・10本めの樹木に引火してしまった時点で依頼は失敗となります(最短10ラウンドで依頼失敗)。

●火トカゲ(デクリオ級従魔)×6
・口から噴く火と燃えるシッポを持つイグアナ型従魔です。
・攻撃は口からの「火炎弾(遠距離単体魔法攻撃)」をメインに、シッポによる「打ち払い(近接範囲物理攻撃)」を行ってきます。どちらも炎による「減退」のBSを与えます場合があります。
・樹木への点火はシッポで行います。
・身体的特徴は「イグアナ」のものを引き継いでいます。

リプレイ

●娑婆はなんとも世知辛い
「はい! 質問です!」
 出発直前。HOPE本部のブリーフィングルームに、モニカ オベール(aa1020)の元気な声が「ですです」と木霊した!
「モニカよ、そのような声音を響かせては雪山を崩すぞ」
 渋い顔でたしなめるのは、彼女の契約英雄であるヴィルヘルム(aa1020hero001)。豪快を持ち味とする山の戦士ながら、今は常識にうといモニカの世話役を務めている。
「ごめん。……で、今回の依頼、消火道具がたくさん欲しいんですけど用意してもらえますかー? あと耐火スーツ!」
「私も消火器と防炎シートが1ロール欲しいです!」
 唐沢 九繰(aa1379)が、モニカの元気に負けない勢いで手を挙げた。ぴょこぴょこ飛び跳ねる足音が妙に大きいのは、機械化された脚の重量のせいである。
「消火弾を用意してもらえたら、あたしと唯で運んでくよ」
 風雲 梓(aa0930)が腕組みを解き、契約英雄の八雲 椎(aa0930hero001)とうなずきあう。
 そんなエージェントたちを「ん~」と見回した新人女子職員は……。
「無理です」
 辛そうな顔をしょんぼり垂れて。
「シャバにゃ~予算とかね、そういうのがありまして。私だってみなさんに持ちきれないくらいの豪華装備あげちゃいたい。でもっ! オトナの事情がっ!」
 言いながら、後ろからそっとなにかを持ち上げて、卓の上に置いていく。
 それは古びた家庭用消火器。
 たったの、3本……。
「使用期限が切れてるんで最悪粉が出ない可能性もあるんですけど……なんとかひとつ、よろしくお願いします!」

●火トカゲ襲来
 視界の確保が容易な昼時を選び、エージェント一行は山へと踏み入っていく。
「せっかくの山なのに、かついでるのが酸素ボンベじゃなくて消火器じゃなぁ……」
 先頭を進み、下生えを踏みつけて山に慣れない一同の進路を確保するモニカがぶつぶつ。
「歩荷訓練をもっと積んでおくべきだったな」
 モニカをとなりで黙々と下生え処理を行っていたヴィルヘルムが重々しく返す。
「重さはなんてことないんだよ。ただ……ジャマ!」
 そんなふたりの後を進むエミナ・トライアルフォー(aa1379hero001)が、自身の契約者である九繰へまったく抑揚のない音声で話しかけた。
「計算が狂いましたね」
「ねー。従魔6匹いるのに消火器3本じゃ、3匹余っちゃいます! せめて防炎シートがあったらよかったのに」
「オトナの事情なんざ持ち出されちまったらな……ツッコミも入れらんねぇ」
 かぶりを振り振りため息をつく赤城 龍哉(aa0090)の肩に触れ、契約英雄のヴァルトラウテ(aa0090hero001)は凜と声を張る。
「奮い立ちなさい! たとえ矢尽き剣折れようと、私たちは使命を果たすまでのこと」
 奮い立ったのは龍哉ならぬ宇宙 みらい(aa0900)だ。
「使命! そうだよね。よし、カトリ兄ちゃん。山火事を防ぐため、宇宙警備隊出動だ!」
「了解だ、みらい。悪を討ち、世界の平和を俺たちで守る……この勇気の証にかけて!」
 みらいの傍らにある、レトロな宇宙服の風情を漂わせる衣装に身を包んだ契約英雄、カトリ・S・ゴルデンバード(aa0900hero001)が、腕につけたブレスレットを高く掲げた。
 それに合わせ、おそろいのブレスレットをつけた腕を振り上げるみらいへ、ヴァルトラウテがやさしい目を向けた。
「あいかわらず子供だけは好きなんだな」
 茶化す龍哉に、ヴァルトラウテは優しく笑んで。
「未来への可能性、その輝きを見るのが好きなのですわ」
「だったらあたしたちの手で従魔を倒して守るだけさ。未来への可能性っての、さ」
 梓の言葉に応じたのは、ヴァルトラウテではなかった。
「キュッ」
 金属質の高い音とともに、一同へ襲いかかる火炎弾!
 ぼぶん! 加熱された空気がモニカに当たって弾け、盛大に炎のカケラを散らした。
「わわわわーっ!」
 元気のいい松明と化したモニカは悲鳴をあげながら地面を転がる。
「モニカぁっ!」
 ヴィルヘルムもその掌で炎を消そうとモニカの体を叩くが――魔法の炎は、そんなことでは打ち払えない。
「ごめん痛い消火器痛いっ! 痛いあたしに痛いってば消火器かけてー!」
「消火器はAGWではありません。この炎は消せません」
 首を振るエミナに、九繰があたふた指示を飛ばす。
「エミナちゃんクリアレイです!」
「リンクしなければスキルが使えません」
 エミナは無表情のまま、機械化された――もともとエミナは医療用機械であり、今は両腕を機械化した少女の形をとっているのだ――右手の甲の感情表現用小窓で焦りを九繰に伝えた。
「あー、そうだよね! じゃあリンク!」
「――俺たちもやるぞ、みらい!」
「うん、カトリ兄ちゃん! トカゲ怪獣、おまえたちの好きにはさせないよ!」
 みらいとカトリがブレスレットをクロスさせた。
「共鳴合体ブレイブリンク!!」
 そして現われたのは、炎さながらに赤い髪を持つ緑瞳の少年の姿。
「この山の未来は僕たちが守るっ!」
 果たして木々の根元から次々と躍り出てくる火トカゲ。
 消火器を手にした龍哉を守り、トカゲどもの前へ出たヴァルトラウテが「あら」と声を漏らした。
「敵は火を吐くトカゲ……ドラゴンではありませんのね」
「ドラゴンだったら大惨事だろ。こちとら竜殺しの槍も持ってねぇしな」
 龍哉のセリフに思わぬ動揺を見せたのは、英雄のエミナ・トライアルフォー(aa1379hero001)だった。
「どうしよう。どうすればいいんだろ」
「なんだよ?」
 手近な樹木を守りに走った天野 正人(aa0012)が、契約英雄の困った声に振り返った。
「火には消火器、効果あるよね?」
「そりゃ火を消す道具だからな」
「じゃあ火トカゲにはなにが効果あるの? 竜に槍なら、針とかピンとか? 私そういうの持ってないよ……!」
 自他共に認める苦労人。それがレイアなのだが、それは何事も考えすぎてしまう生真面目さが原因なのかもしれない。いや、ちょっと天然なだけなのか。
 思わず遠い世界へ行きかけた正人は全力で現世に復帰。相棒の迷いを断ち切った。
「燃えたら消す! トカゲは斬る! 気合だよ気合!」
「――うん。わかった。気合だね気合!」
「キュッキュッキュッ」
 その間に、1匹の火トカゲがシッポの炎で点火を開始。すぐに樹木が炎で包まれた。
「うそ!? 生木がこんなに早く燃えちゃう!?」
 九繰のクリアレイに救われたモニカが、フェイルノートにつがえた矢を取り落としかけてあわあわ慌てた。
『あの蔦のせいだ。あれは木の表皮に根を張り、養分と水を吸い上げる。そのせいで乾いているのだよ。高火力のシッポを当てられるだけで燃え上がるほどにな』
 リンクしたヴィルヘルムの解説がこれだ。
 つまり、点火に時間はかからない。
「枯れ草集めて火をつけるみたいなおつむがなくてよかったねって思ったのに……」
 嘆くモニカ。それに対して梓は不敵な笑みを見せ。
「だとしても、こっちの火は普通の火だろう? なら――」
 樹木を包む炎に消火器の白煙を吹きつけると、炎上の勢いが目に見えて弱まった。
『1回じゃ完全には消せないけど、山火事になるまでの時間は延ばせそうだよ!』
 リンク中の唯の報告を受けた梓は、消火器を槍を扱うように突きだしたまま、仲間を振り返った。
「ある程度対処がすんだら火トカゲ退治に合流する。それまでなんとか支えてくれ」
 なにを言い交わすこともなくリンクした正人とレイアが、消火へ向かう梓と、こちらを牽制する火トカゲの間に割り込んだ。
「任せろ。俺たちが絶対支えてみせる!」
『任せて。私たちが絶対支えてみせる!』
 正人とモニカの意志がハーモニーを奏で。
 ここにエージェントと火トカゲのイタチごっこが始まったのだった。

●カウントダウン進行!
「……とか言ってみたけどさ、なかなかキッツイな」
 火炎弾を円盾で受け止めた正人が荒い息をつく。
 円盾を構える腕は位置をキープできずに下がりぎみだ。
 火トカゲ自体はそれほどの強敵ではないのだ。しかし、向こうはエージェントへの攻撃と樹木への点火を気ままに使い分けてくる。人間相手なら目を見てその行動を読むこともできようが、爬虫類の目はあまりに無機質で、読めるような情報が浮いてこない。
 今、5本の樹木が燃えてしまっている。これ以上、させるわけにはいかない――!
『ごめん。私がもっと強かったら……』
 レイアの弱々しい声。
 正人はレイアとリンクしてもその外見がほとんど変わらない。その原因をレイアは、自身の魂、英雄としての弱さのせいかもと思い悩んでいるのだが……。
「俺、レイアのこと信じてるから」
『え?』
 唐突な正人の言葉に、レイアの思考が固まった。
「HOPEも学校も信じらんないけど、レイアだけは信じられる。レイアは強い。だからさ、そう信じてる俺を信じろ」
 レイアはどう返していいか悩んだ。でも、思いついたすべてを捨てて、ただ心のままに告げる。
『……バカ』
 今度は正人が固まる番だ。でも、次の瞬間にはもう、レイアの迷いも正人のショックも消えていた。
 成すべきことを成すため、ふたりは力をひとつに合わせ、盾を構える腕に力を込めた。
「うわっ」
 一方、火トカゲの点火をジャマするべく消火器のレバーを引き絞ったはずのみらいが大きな声をあげた。
 消火粉が、噴射しない。
 使用期限切れのせいか、まだ中身は充分残っているはずの消火器が作動不可となってしまったのだ。
『問題は、我々が常に後手に回らざるをえない点にあります』とはエミナの声。
 九繰は愛槍で火トカゲにプレッシャーをかけつつ疑問を返す。
「先手が取れたらいいってことですよね? でも、どうやって?」
『私たちに盾はありません。だとすれば、取るべき行動はただひとつ』
「攻撃、だよねっ」
 その九繰と同時に駆け出したのは、手にしていた消火器をみらいへと投げ渡し、相棒とのリンクを完了していた龍哉だ。
「やるぞ、ヴァル! ヘタ打つんじゃねぇぞ!」
 龍哉はすでにヘタを打っており、そのことを自覚もしている。
 実は、龍哉は当初、相棒と手分けして事に当たるつもりだったのだ。
 しかし、リンクしなければスキルどころかAGWを使うことができない。リンカーと英雄は、よくも悪くも一心同体なのだ。
 その失敗を自らに言い聞かせるつもりの言葉だし、ヴァルトラウテからも当然、そのあたりをツッコまれると覚悟していたのが……。
『誰に言っていますの!? 私とあなたは一心同体。私が失敗を犯さない以上、あなたも失敗は犯しません』
 予想外の返答。龍哉は一瞬表情を凍りつかせ、そして、獰猛に笑んだ。
「はっ、そりゃあいいな。だったら、思いっきりぶっ込むぞ!」
 龍哉を迎え討とうとする火トカゲ。しかし。
「トカゲ怪獣、こっちだよ!」
 みらいの噴射した消火粉を避け、体勢を崩した!
 明らかにシッポをかばっている。これはつまり――
『龍哉君!』
「おお!」
 上からまっすぐに振り下ろされたイプシロンアックスの鈍く重い刃が、みらいに気を取られて横を向いていた火トカゲ、その燃えるシッポをぶった斬った。
『トカゲのシッポ切りとは言いますけれど、火トカゲのシッポも切れやすいのですわね』
 トカゲのシッポは切れやすい。そして実は、イグアナも同じ性質を持っているのだ。
 本来は自己防衛の術のはずなのだが、シッポで物を燃やす火トカゲにとってはそれだけではすまない。
 シッポを失った火トカゲは、じたばたとバランスを取り戻そうとあがきつつ、火炎弾を吐きつけようと口を開けるが。
「させませんから!」
 九繰のトリアイナに上から縫いつけられ、口内で魔法の炎を暴発させた。
「ギュググウゥ!」
 海神の三叉槍を模したこの槍は、その刃に水化したライヴスをまとうと言う。それを証明するかのごとく、水が炎をかき消す濁音が森に響き渡り――火トカゲが、くもぐった悲鳴と激しい痙攣を残して息絶えた。
『この槍こそ、火トカゲを殺す水神の槍なのですね』
 元の世界の記憶が蘇ったか、いつになく叙情的な言葉を紡ぐエミナに、九繰は強くうなずいた。
「消火に貢献できなかった分、この槍で戦闘がんばりますよ!」

●反撃開始!
 ついに仲間の1匹を失った火トカゲが、点火作業を加速した。
 どうやら目の前の敵どもは、火をつけられるのを嫌がっているらしい。だとすれば、多くの木を燃やすことができればこちらの勝ちだ。
『みらい、シルバーシールドだ!』
「了解!」
 使いきった消火器から持ち替えた盾で木に迫るシッポを受け止め、みらいが叫んだ。
「動物や植物が生きる大切な場所、悪いトカゲなんかに奪わせないから!」
『そうだとも! 俺たちの勇気で、このかけがえのない命を――平和を守りぬく!』
 ライヴスを燃え立たせ、カトリと一体になったみらいが火トカゲを弾き飛ばした。
 その火トカゲが地へ落ちる前に、梓が前へ跳び込んで一回転。勢いを足の裏で強引に止めたときにはすでに狙いは定まっている。
 ショートボウから放たれた矢が、火トカゲの胴の真ん中を貫き、さらに吹き飛ばした。
「かけがえのないものを護りたいのはあたしも同じさ」
 大切な人を護りたい。それこそが梓の願いであり、誓いだ。
 そしてそれは、梓の思いに応じ、誓約を結んだ弓の化身である唯もまた同じこと。
『護るために攻めよう! あたしの力、梓に任せるから!』
「ああ。力を貸してもらうよ。今は仲間と、この山を護るために」
 みらい、そして梓の援護を受け、エージェントたちが反撃を開始した。
「ヴァルも俺に力を貸せ! こいつで片をつける!」
『言われずとも――いえ、この力のすべてをお貸ししますわ』
 龍哉の防御を捨てた猛攻、オーガドライブが、火トカゲの頭を文字通りに叩き潰す。
「自然にやさしくないのはあたしたちだけで十分。動物はもっと山を大事にしなさい!」
『この一射は山の怒りと知るがよい』
 ひょうと飛んだモニカの矢が、火トカゲのシッポを撃ち斬った。
 そして残る本体は九繰の槍で串刺され、動きを止める。
 さらに正人のシルフィードが鋭いうなりを置き去りに、トカゲの固い皮を中身の肉ごと断ち切った。
 攻勢に転じたエージェントたちにより、ついに火トカゲは最後の1匹となった。
『みらい、これで決めるぞ』
 みらいの内で、カトリがファイナルアタックを促した。
「ブレイブソード、チャージアップ!」
 応えたみらいが、カトリと心を合わせ、ライヴスを高めていく。
「僕たちの絆で悪を斬る! アストロフィニッシュ!!」
 莫大なライヴスを吸い込んだコンユンクシオが、火トカゲを両断。
 ここにすべての従魔が討伐され、山の平和は守られたのであった。

●エンディング
 龍哉が手配していた消防署の署員とともに、一行は燃えてしまった樹木の後片付けにかかっていた。
「この木はなんの木かな~気になる感じ~」などと歌う正人。そこへレイアが口を挟んだ。
「杉でしょ。杉として生まれて杉として生きて杉として死んでいく、杉」
 ななめ上を行く返事に、正人はただかぶりを振った。ちがう。ちがうんだよ……。
「そういえばみらい、その荷物は?」
 見慣れない荷物を大事そうに抱えていたみらいに、カトリが訊いた。
「え。これは、その……合掌造り撮って学校で自慢しようとか、思ってないよ?」
 どうやら荷物の中身はカメラらしい。
 横を向いてカトリの目から逃れたみらいの横で、モニカが「あ」と声をあげる。
「1回下りて着替えよう!」
「まだ作業の途中だぞ?」
 眉をしかめたヴィルヘルムに、モニカが焦れた早口で。
「せっかくいい山だし、合掌造りも見たいからちゃんと登りなおそうかなって」
 そんなみらいとモニカを見て、九繰がほうとため息をついた。
「私もメカのことだけじゃなくて、もうちょっと地理とか歴史を勉強するべきでしょうか」
「少しずつ学んでいきましょう。私もこの世界のことをもっと知りたいと思います」
 エミナの右手の甲の小窓には、彼女の願いが映し出されていた。
「やれやれだな」
 仲間たちの騒ぎに、龍哉は苦笑い。
「しかし今回は戦った気がしないな。どうせなら技と心の丈を比べ合うような真っ向勝負がしたいもんだ」
「……」
 ヴァルトラウテはなにも言わなかった。龍哉の内にたぎる、戦いへの渇望を知るがゆえに。
 ――ともあれ、戦いは終わった。
 梓は自らが護りきれなかった樹木に黙祷を捧げた後、仲間たちと共に護りぬいた山を見やる。
「……これからも、大切なものを護るためにあたしは戦うよ」
 その傍らに立つ唯は、ただ強くうなずいた。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 雪山のエキスパート
    モニカ オベールaa1020

重体一覧

参加者

  • 映画出演者
    天野 正人aa0012
    人間|17才|男性|防御
  • エージェント
    レイア アルノベリーaa0012hero001
    英雄|18才|女性|ブレ
  • ライヴスリンカー
    赤城 龍哉aa0090
    人間|25才|男性|攻撃
  • リライヴァー
    ヴァルトラウテaa0090hero001
    英雄|20才|女性|ドレ
  • エージェント
    宇宙 みらいaa0900
    人間|12才|男性|攻撃
  • エージェント
    カトリ・S・ゴルデンバードaa0900hero001
    英雄|21才|男性|ブレ
  • エージェント
    風雲 梓aa0930
    機械|19才|女性|攻撃
  • エージェント
    八雲 椎aa0930hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 雪山のエキスパート
    モニカ オベールaa1020
    人間|17才|女性|生命
  • エージェント
    ヴィルヘルムaa1020hero001
    英雄|38才|男性|ジャ
  • Twinkle-twinkle-littlegear
    唐沢 九繰aa1379
    機械|18才|女性|生命
  • かにコレクター
    エミナ・トライアルフォーaa1379hero001
    英雄|14才|女性|バト
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