本部

【卓戯】連動シナリオ

【卓戯】魂を賭けたボードゲーム

鳴海

形態
ショートEX
難易度
普通
オプション
参加費
1,500
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/10/18 10:29

掲示板

オープニング

 
 これは、ゲームであってゲームじゃないんですよ。
 魂と、尊厳を賭けた。生きるということそのものなんです。
 わかりますか。
 これは、私が一方的にあなた達の命と、生きてきた証を天秤にかける行為。 
 つまり…………ゲームです。
         
              そう、柔らかに水晶の乙女は笑った。


● 闇のゲーム。

 誰もが憧れる大冒険というものはそこらへんに転がっているものだ。
 それはゲームの中だったり、本の中だったり、誰かの話の中にだったり。目の前にだって広がっていたりする。
 言ってはなんだが、ありふれたものだ。
「ラララ?」
 そうerisuは目覚めると体を一杯に伸ばして、一つため息をつく。
 うまく寝れなかった。
 体中が痛み、軋み、肌がひりひりする。
 それもそのはず、erisuの愛おしいベットは姿をけし。自分が横たわっているのは広大な世界の上。 
 芝生の上。
 青々と茂る草、ポツリポツリと生える木。それはまごうことなき草原で。
 erisuはなぜこんなところに放りだされているのか見当もつかなかった。
「らららら?」
 しかもerisuは普段身に着けてない装備でそこにいた。猫耳、小さな杖、レザーの胸当て。
 スカートは短く白いお腹が露わになっている、防御力の欠片もない服装。
「趣味がわるいわ」
 そうerisuは一人ごこちにつぶやいた。そしてどうすればいいか途方に暮れた挙句。erisuは上を向いた。
 そこには、本来広がっているべき青い空ではなく、自分を覗き込む二つの顔があった。
「らら? はるか……?」

「勝負を受けるわ、ルネ・クイーン」

 そして春香は高らかに告げた。
「erisuとみんなを返してもらう!」
 その時erisuはみた、春香と対面する水晶の少女、その口の端が大きく吊り上ったのを。


● 英雄の見る世界。

 あなた達の英雄は囚われました。疑似幻想蝶で作られた手のひらサイズの駒の中に入れられ、いま小さなマップの片隅に転がされています。
 これから英雄をかけてゲームを行うそうです。
 ゲーム内容はWW3。
 英雄にはこの世界の中央の魔王城目指して進んでもらいます。
 この魔王城にはガデンツァ・イミテーション(魔王)が住んでいて、このイミテーションを倒すとゲームクリアで解放されます。
 この世界の大きさは縦百マス横百マスで表現されていて、一マス一キロ四方です。このマスごとにフィールドが設定されているのですが、マスの境目はぼんやりしていて先が見えません。
 英雄たちは南東の端っこからスタートです
 この世界では24倍速で時間が進みます。
 ただし、能力者と相談する時は時間が等倍になる仕組みです。
 このゲームは能力者と英雄が相談しながらゲームを行えるのです。
 この世界では五マス移動するごとに遭遇判定が起こり、目の前に突然何かが出現します。(判定各種については後述)
 また常時敵に襲撃される可能性があります。エネミーは夜に襲ってくる可能性が高いです。警戒しましょう。
 敵を倒すメリットですが、敵を倒すごとに魔王の力は弱体化します、強力な敵であれば一層弱まります。
 さらにマス一つ一つにフィールドが設定してあり、その種類によっては進行に大きな影響を与えるでしょう。
 この状況でどう魔王攻略を目指すかはあなた達の自由です、魔王城に突貫するのもよいですし、エネミーを倒してから向かってもいいです。
 ただ、どちらにせよ、英雄たちは厳しい戦いになるでしょう。
 最後に、六時間眠るごとに生命力が三割回復します。
 事前の相談が重要になると思いますがよろしくお願いします。


*フィールド効果
 マスにはフィールドが設定されています。

火山 このマスで夜フェイズを終了した場合、生命力が30減る。防具を全て脱げばこのペナルティーを回避出来る。
 またこのマスで戦闘を行う場合ダメージに3上乗せされる。水に弱いモンスターが多く出現する。


氷国 全員の移動力が半分になる。また、このマスを通過すると生命力が15低下する。熱に弱いモンスターが出現する。


遺跡 見通しが悪くエネミーに奇襲されやすい。また魔王の手足が出現する可能性がある。


草原 特に何もない草原が続く、動物系のモンスター、俊敏なモンスターが増える


水辺 海や湖に面している、食料などが豊富で見晴らしがよく、敵が少ない。雷に弱いエネミーが増える。


樹林 エネミーが多くなる、また毒やBS付加の能力を持つエネミーが増えとても厄介。さらに戦闘しなくても疫病にかかる可能性がある、このマスで夜を明かすと次のターン何らかのBSにかかっている可能性がある。

 
*遭遇判定
 英雄は旅を続ける中で様々な物と遭遇する可能性があります。
 確立は明かせませんが、遭遇する可能性があるものは下記の通り。

王都 NPCが住んでいる町です、ここで一ターン消費することにより生命力が全回復する。

腐食 屍の山で腐った世界です。基本的にそのマスには足を踏み入れることができません、通ることもできますが、生命の8割を失う。
 さらにこの周辺一マスはエネミーとの遭遇率が上がる。

支配 魔王の占領下、ここでは魔王と遭遇する可能性がある、さらに魔王の手足がこのあたりを守っている。

封印 トラップ トラップ解除系スキルで解除可能。そのマスに踏み入れたPCは三ターンすべてのスキルが封印され、能力値全てが80%に低下する


● クイーンの独白
 ひととおりのルール説明が終わると、ルネ・クイーンはあなた達に微笑みかけた。

「WW3から人を逃がしたのは正解でしたね。私は時が満ちればリアルプレイヤーも含めてこのゲームを開催し、あなた達に人を殺させようと思ってました」

「でも、それを未然に防いだあなた達を、このがらんどうの世界に押し込めるには、とてもとてもさみしい」

「だから私はマスターの栄養からちょっと拝借してこの世界に配置しました」

「ねぇ、知性とはどこに宿ると思う? 魂? 脳みそ? それは人工的に創ることはできる?」

「できるでしょうね、知性の再現は、エリザのように? ……でもねそれには膨大な労力を消費するのです。であれば一から作るより、ある程度そこにあるものを持ってきた方が早い」

「この世界のNPC、みな人と変わらない振る舞いをするでしょう? エネミーでもそうです。その高度な知性はいったいどこから来るのでしょうね」

「答え? 教えませんよ。私はあなた達が苦しむ姿が見たいのです」

「こちらの手札を暴いて踏ん反り帰っているあなた達に横から一撃を加えたい」

「あなた達は知ってしまった、だから私の言葉が嘘か本当か判断できないはずです。そしてそれ故にためらい、自分が傷ついてでもこのゲームを放棄するのか、何かを傷つけてもクリアを目指すのか」

「それが見たいのです」

「繰り返します。これはゲームであって、ゲームではありません」



解説

-------------------------

ミッションタイプ:【敵撃破】 【エリア探索】
このシナリオはクリアと成功度に応じて様々なボーナスが発生します。
詳細は特設ページから「ミッションについて」をご確認ください。



目標 魔王の撃破
《エネミーについて》
 エネミーは沢山の姿形をもち、ステータスはばらばらである。
 ただしそこまで強くない。
 このエネミーは英雄たちの元の世界の敵の姿を模していることがある。
 希望があれば記載していただければ嬉しい。

《魔王の手足》
 魔王の手足は英雄のトラウマを刺激するような見た目であることが多い。
 デザインを皆さんから募集します。特に何もなければルネになります。
 戦闘能力については。攻撃力が異常に高く設定されております。どんな見た目であっても広範囲攻撃を主体とし近づくのも一苦労です。

《魔王》
ガデンツァ・イミテーション
 魔法系特化型ですが。使える技は限られているようです。
*アクアレル・スプラッシュ
 地面から水の柱を噴出させます。同時に多数の目標を同時に攻撃可能、魔法属性の基本攻撃。
*ドローエン・ブルーム
 周囲に風を起こして攻撃する、さらに吹き飛ばし効果もある。
*イミタンド・ミラーリング
 自身の虚像を身代わりに攻撃を回避する。
*スクリーム・カルテット
 死者の怨念を歌に込める。ダメージと共に、全バットステータスの中からランダムで2~3ほどBSを受ける。直線無差別の範囲攻撃、そこまで飛距離は長くない。1~20程度?

リプレイ


プロローグ

『楪 アルト(aa4349)』は俯瞰して世界を見つめていた。
 再び訪れた、救いきれなかった世界WW3。
 そこに舞い降りたのは自分ではない誰か。
 いったいだれ?
 絆強く結んだ存在であるのにもかかわらず。彼、あるいは彼女のことをアルトはまったく知らなかった。
「そんなことはどうでもいい」
 そう張り詰めた声をアルトは部屋に響かせる。
 今度こそハッピーエンドを、総渇望するのはきっと、彼女だけではないはず。
 
「……またこの世界か……、こんなにも温かくて、いい世界をさ…………今度こそあたしが救ってやるんだ」

 そして独奏者に囚われた世界に『‐FORTISSIMODE-(aa4349hero001)』は降り立った。
 彼女、あるいは彼は小高い岡の上を見つめる。そこには一人の男が立っていた。
『ネイ=カースド(aa2271hero001)』は乾いた視線を世界に送っている、眼前いっぱいに広がる大草原、美しい光景だ。
 だがそれをネイは美しいとは感じられない。
 普段の彼女であれば感じられたのかも知れない。
 だが、今の彼女は彼である。
 生前の姿、色黒で癖毛の目つきの悪い男。それに『煤原 燃衣(aa2271)』は既視感を覚える。
 前回もこの姿を見たが、やはり、自分に似ている。
「ららら?」
 しかしerisuは本質を見抜くのだろう。普段と変わらぬ調子でネイの周囲にまとわりつく。
 楽しそうに、遊んでほしそうに。
「わらわは肉体労働は苦手なんじゃがのう…………」
 『飯綱比売命(aa1855hero001)』は空に向かってそう告げた。erisuが一緒になって見上げればそこには特大の『橘 由香里(aa1855)』の顔がある。
「あなた、頭脳労働も苦手でしょう? たまには私のかわりに頑張りなさい」
 由香里の声が箱庭に響く。
「ところで、装備は『びきにあーまー』より『ちゃいなどれす』が良いのじゃが」
「贅沢言わない!」
  そんな風に軽口を叩く飯綱比売命、そんな彼女の脇を少女が金糸の少女が通り過ぎた。
「衣装は吟遊詩人だそうだよ」
 ふわりと風に舞わせた衣装。透き通る生地に輝くケープ、へそ出しルックのそれはとてもきらびやか。
 流麗な衣装を身にまとった『アイリス(aa0124hero001)』は、背中の翼もあいまってまさに妖精と呼ぶにふさわしい。
「一応リュート持ってるようだけど」
「ボクにはその露出度高めのひらひら装備は踊子にしか見えないよ」
『イリス・レイバルド(aa0124)』はアイリスの姿を見つめてそう言った。
「はははっ まぁ、細かい事はいいじゃないか」
「やれやれ、自分の体でやるのは久々だが…………折角だし昂に手本の一つでも見せてやるか」
 そう告げ立ち上がったのは『ベルフ(aa0919hero001)』、彼はハットをかぶりなおすと武器を構えた。
「いつもとは逆だけど、攻略のサポートは任せて」
 『九字原 昂(aa0919)』は見慣れないベルフの姿に困惑しつつもそう答えた。
 ベルフは実に懐かしい姿をしていた。フード付の外套は探偵時代のもの。
 なぜこのようにかつての姿が再現されているかはわからなかったが、今は納得して前に進むしかない。
(あの子は私の所有物ではない、勝手に賭けられても困るな)
『海神 藍(aa2518)』は小さくなってしまった『禮(aa2518hero001)』に指を伸ばす、しかしその手は触れられずホログラフを触るように素通りした、次元自体がずれているのかもしれない。
「……禮、信じてる。帰ってくるんだよ」
「ええ、藍。必ず」
  禮は切り替える。海神藍の妹分から、子供で在れなかった黒人魚へ。
 そんな三者三様の反応を見せる一行だったが、草原の中心で楽しそうにしている黒子が一人。
『ヒルフェ(aa4205hero001)』である。
 彼はこの世界に取り込まれてもなお、この世界に召喚された時の姿を保っていた。
 もしくはもともとこんな姿だったのだろうか、真相は誰にもわからない。
「ン、ナンダモシカシテ今回俺ガ主役カ? ヤ ッ タ ゼ」
「バカやってねーでさっさと戻って来なせーな、次の仕事に支障が出んでしょーが
「ウイッス」
 『フィー(aa4205)』が不服そうにそう告げると、ヒルフェは大人しくなってしまった。
「……いくか」
 やがて情報の確認が済んだ一行をネイが先導する。
 コートを翻し、まだ見ぬ世界へと歩みを進めた。



第一章 探索

 この世界の攻略のためにリンカーは班を二つに分けることにした。AとBである。
 Aは北へ。Bは東へ歩みを進めた。
 そしてA班が突入したのは遺跡ステージ。
 突如現れた石畳、そして先を見通せないように、無数に置かれた意思の柱。
 モンスターのうめき声が多方向から聞こえ。全員が一斉に武器を構えた。
「……プランは?」
 ネイがぶっきらぼうに尋ねると。ベルフが答える。
「消耗少なく、命は大事に、じゃなかったか?」
「援護は任せてください、遠距離近距離どちらでもいけます」
 禮はそう告げ黒鱗を構えた。大気中の水分を刃へと変換する。
「らら、音色、沢山。不協和音。調律するわ」
 erisuがそう告げると。FORTISSIMODEがその隣に並び立つ。
 その光景を見てアイリスが告げた。
「あまり密集しない方がいいかもしれないね」
 その直後である。柱の陰から同時に、半透明な何かが襲いかかってきた。
 それは地上数センチを浮遊する、仮面をかぶった亡霊で、悲鳴を響かせその手を伸ばし突貫してきた。
「ははは、やらせないよ」
 アイリスが前に、その手の盾で亡霊をはじく。
「散開しましょう」
 ベルフと禮が左右に走り、erisuはその手を前にかざした。
 周囲にピアノ線を張り巡らせていく。
「いや、敵が多いと聞いてはいたがこれほどまでとはね」
 アイリスは柱の陰から次々と襲ってくる敵を捌いている。
 円を描くように360度を常に見渡しながら、左へくるり右へくるり。
 回転力はそのまま攻撃をはじく力にもなるし。攻撃をすり抜ける動きにもなる。
 とらえどころがなく、触れられたとしても硬く指先をはじいていく。
 そして攻撃をはじかれ体制が崩れたところでネイが。
「……つぶれろ。……そして死ね」
「右方は敵の層が薄いです!」
 禮が叫ぶ、次の瞬間erisu、そしてFORTISSIMODEの範囲攻撃がさく裂した。
「タナトス・レクイエム」
 張り巡らされたピアノ線、erisuがそれをはじくと、そこから発される音が亡霊たちをまとめて葬っていく。
 そして撃ち漏らした敵をFORTISSIMODEがフリーガーで焼き払うと突破口が見えた。
「走れ!」
「ららら」
 その道を直行。右方つまり東の境界線めざし走る。
「おそらく敵は境界線を越えられない」
 しんがりを務めるアイリスが言った。
「あそこまで走ればひとまず安心できるだろう」
 そうせかされて境界を踏み越えた燃衣だったが、まず感じたのは肌を切るような冷たさ、寒さだった。
「まさか……」
 そうそこは氷国。通り抜ければその過酷さ故に生命力が落ちる魔の領域。
「だが、敵の数はすくなそうだよ?」
 アイリスはそう燃衣に問いかけた。
 寒がるerisuのために、その翼を広げ風を遮る。
「前門の虎。後門の狼か……」
 ベルフがフードをかぶる。それもあっという間に雪が積もっていった。
 FORTISSIMODEが無言でヒーターシートを取り出してベルフに差し出す。
「いや、あんたが使えよ」
 そんなベルフの言葉にすこししょんぼりするFORTISSIMODEであった。

   *    *

『ルルト=マクスウェル(aa4386hero001)』 は足を滑らせながら着地した、大きく水を跳ねあげ横に転ぶように飛ぶ。すると先ほどまでルルトがいた場所に鋼のハンマーのようなハサミが叩きつけられた。
 人の頭ほどの大きさがあるクラブハンマー。巨大な化け蟹とB班は相対していた。
「く、攻撃する隙がねぇ!」
「おお、でっかいのう」
 飯綱比売命はのんきにカニを眺めて笑う。
 そして狐火を召喚、それを放つも、その分厚い甲羅を焦がして終わった。
「うぬぅ……」
 その脇を駆け抜けて『マイヤ サーア(aa1445hero001)』が駆ける。
「自分の身体で戦うのは…………いつ振りかしら…………」
 風のように走り、双刀を抜いた、その刃で甲羅を叩き割ると。ルルトがそこに英雄経巻で攻撃を仕掛ける。
「ごめんなさい、央。折角の新しい剣と刀。私が先に使う事になりそう」
「2人で戦う為の物だ、マイヤも慣れてくれるならそれに越した事はない。ラシルさんにも礼を言っておいてくれ」
「これだけでかければ外すことはないだろうな!」
 しかしその攻撃をものともせず再びクラブハンマーを叩きつけてくるカニ。
 その半間を『リーヴスラシル(aa0873hero001)』が盾でそらした。
「重たい一撃だ、皆こいつを侮るな!」
 ラシルが叫ぶとB班全員が頷いた。
 そのままラシルは縦でクラブハンマーを叩き落とし、その爪をヒールで抑えて、シュヴェルトライテを構える。
「まずはその装甲を切り開く」
 そして放たれた三日月状の斬撃は腕を走るようにカニの顔面に激突。
「コウイウ大物ハ、オレノ仕事ダナ」
 そうヒルフェが神斬を片手に躍り出て、その装甲の薄くなった部分に刃を突き立てる、すると短く断末魔を上げたカニはその生命活動を停止して。光の粒となって消えた。
「わらわの世界ではこのような魑魅魍魎が多かったが……うーんまさかの?」
 飯綱比売命は首をひねってあたりを見渡す。
 ここは水辺エリア。
 ついでに今倒した化蟹以外にエネミーもなく、進軍するのには優しい地形だ。
「つまらんのう」
「まぁ、そう言わずに……」
 そうリーヴスラシルが武器を収めB班を先導して先を進む。
 だが飯綱比売命はすぐに面白いものを発見してしまった。
 たけのこである。しかも茶色い。
 そのたけのこに違和感を感じた飯綱比売命はそれをじっと凝視していると。
「オイ、ドウシタサッサト先ニ……」
「静かに」
 ヒルフェを黙らせた飯綱比売命、その視線の先でたけのこが徐々に大きくなっていくではないか。
 さらにそのたけのこに手足が生え飛んだり跳ねたりしている。
 そこで飯綱比売命比売命の目つきが変わった。
「奴らを滅ぼすのじゃ!」
「ナンナンダアンタ!」
 ヒルフェが叫んだ
「わらわの里ではきのこたけのこ戦争が頻繁に発生していてのう」
「ホントウナンダロウナソレ」
「たけのこ派がおるぞ! 殲滅じゃー!」
 そう森に突撃を仕掛けていく
「まぁ、エネミーなら倒しておくに越したことはないだろう」
 ラシルが告げるとルルトがその場に腰を下ろしていった。
「俺たちここら辺探索してていいっすか?」
「困りましたねぇ」
 マイヤは刀を構えているあたり、たけのこを追っていく気満々の様だ。
「よし、たけのこを根絶やしにするぞ!」
 その掛け声が聞こえたのか、たけのこたちは森の中に逃げていく。
「エリアダケハコエルンジャネーゾ」
 ヒルフェはそう手を振って三人を見送った。

   *   *


 その後氷国を北にぬけた面々はやっと安心できるエリア、水辺にたどり着いた。
「敵の気配もないみたいだよ」
 erisuが言う
「今。どれくらいの敵を倒したかな?」
 アイリスが問いかけた、するとネイが答える。
「……24だ、少ないな……」
 あれから氷国で出会った敵は五体程度、どれも減退やステータス低下などを使ってくる厄介な敵だったが、数が少ないので苦戦はしなかった。
 おかげでそこまで時間をかけることもなく、氷国を抜け出すことができた。
 夕陽に照らし出される湖はとても美しい。そこから派生する川を発見
 その隣のエリアも川辺。
「綺麗ですね」
 禮が目を輝かせる。ベルフは外套から雪を払い言う。
「雲で隠れたからわからなかったが、夜が近づいてるみたいだな」
「……川を探してたどるぞ」
 ネイはそう告げチームを先導して泉の周辺を歩いた。すぐに川を見つけそれに沿って歩くことを決める。
「おい、あれ……」
 道中はぐれてしまったのかゴブリンを見つけたベルフ。
 その足から逃れることができなかったゴブリンはあっさりベルフに捕まった。
「こいつは人語が話せるみたいだな」
「ハナセー、アー」
「ららら? 食べるです?」
 erisuがベルフに尋ねると。
「んなことはしないさ。拷問するだけだ」
 そうerisuが青ざめるようなことを言ってのけた。
 そんなerisuをなだめながら禮は告げる。
「そろそろ野営にしましょう。ルール上夜間の移動は避けた方が良いかもしれません」
 見張りは一度に二人ずつ。そのローテーションを決めると皆食料調達に動いた。
 そう禮は慣れた手つきで魚を捕っていく。お魚も突けるように改造されたトリアイナ。その性能は素晴らしく。あっという間に人数分の晩御飯を調達しできた。
「ららら、すごい! 禮すごい!」
 erisuが拍手を送る。
「取りすぎてはだめです、必要な分だけ」
「海の幸は大量だね」
 そんな二人の隣に腰を下ろしたアイリス、彼女が取ってきたのはキノコ、そして果物である。
 そんな少女たちに料理を任せ。男連中は何をしていたかというと。
「この近くに王都があるそうだ……」
 血で濡れたグローブをはずしながら森から現れたベルフ。
「……他に、有益な情報はなかったのか?」
 それに問いかけるのはネイである。
「どうだろうね、まだ口を割るかもしれないが、今日はこれまでだ」
「生ぬるい。オレにやらせろ」
 ベルフは首を左右に振った
「あんたは殺すからダメだ」
 やがて夜は深くなり。
「アイリスティーはいかがかな」
 アイリスジャムを溶かしたドリンクを飲み床につく。
 翌日は早めに行動を開始する予定だったがその時刻より先に事件が起こった。
 ゴブリンが逃げたのである。
「……オレから逃げようというのか? 殺す……」
 ネイが朝から元気にゴブリンを追いかけはじめた。
 その光景を見て全員を起こすFORTISSIMODE、そしてerisu。
「逃げてもいいように、縄を緩く縛ってたんだ、言い忘れてたけどな」
 ベルフはそうあくびをかみ殺してネイをおう、それに全員が習ってそして次のエリアに進んでしまった。
 それも川が流れる北の方角ではなく、西の方角に進んでしまったのだから大変である。
 そこは遺跡ステージ。
「またですか!」
 禮が叫ぶ。しかしもっと大変なのは別の事柄。
「これはまずいな」
「らららら! ららららら!」
 足元から漂う霊力の本流。
 見えたのは魔方陣、その中央にいるのはネイである。
「なんだこいつは、動かなくなったぞ……」
 ネイはあっけらかんと告げる、確かに燃衣の拳にぶら下がったそれは息をしていなかった。
「らら! ベルフたすけて」
 erisuが叫ぶのと魔方陣が脈動を始めるのは同タイミングだった。 
 このままではトラップが起動してしまう、そうなればほとんどの能力を封印されてしまう。
 ベルフは霊力を介して魔方陣に接触、その機能の解除を試みた。
「別のエリアに逃げることもできません!」
 禮がガラスのように変質してしまった境界線をバンバンと叩く。
「あとすこしだ、お嬢さんがた……」
 その時である、今までせわしなく動いていたベルフの両手の動きが止まる。
 解除が完了したのかな? と一同は首をひねったが魔方陣の光は一向に収まらない。
 では何が起こったのだろうか。
「罠師じゃなく、鍵師を活性化してきちまった……」
「な!」
「ははは、万事休すだね」
 そう爽やかに笑うアイリス、そんな彼女らを光が包んだ。

   *   *

 たけのこを達を 血 祭 り にあげた後一行は海沿いを進むことにした。
 A班が進む経路はある程度わかっているので、それから離れすぎないように安全なルートを選択していく。
 こちら側の旅路は順風だった。
 水辺や草原が続く、ちょっとしたハイキングである。
「普段ナカナカ外ニ出ネエカラコウイウノハ新鮮デイイナ」
 そうヒルフェはカメラで景色を撮影しながらあるく。
「では、今日はここで野営としよう。ルルト殿、周辺の警戒を頼めるか?」
 そうリーヴスラシルが告げるとルルトは頷いた。
「私も行くわ、周辺の安全が確保できてから夕食にしましょう?」 
 そうマイヤも同意する。
 今日は満月だ。夜でも闇は浅い。
 次の日、十分に休息を取った一行は早速境界をわたることを選択する。
「さぁ次はどのような世界が待っておるのかのう」
「あんまりはしゃいで飛び出さないでくれよ……」
 ルルトが飯綱比売命を嗜めた。
 そして白い靄のようなものを潜るとそこにあったのは。火山エリアだった。
 と言ってもマグマの吹き溜まりがあるだけで山は見えない。
 代わりに見えたのが、大量の魔物たち。
 あわてて一行は岩の陰に身を隠した。
「オイオイ大量ジャネェカ」
 ヒルフェが楽しそうにつぶやいた。
「まさか、あれに突っ込もうっていうんじゃないだろうな」
 ルルトは苦笑いを浮かべて告げる。
 ルルトは一瞬その軍勢を見ただけだったがざっと数えて30以上のエネミーが集結している。
 全てたけのこ程度の戦力なら問題はないが、化け蟹程度の戦闘能力であれば、いくらなんでもきつい。
「ここは遠回りをするしかないだろうな」
 リーヴスラシルは冷静に告げる。
「わたしも賛成よ」
 全員が頷きそのエリアから引き返す。そして一行は遠回りに探索を続けることに決めた。
 


   *    *


 一行はその後封印の効果が切れるまで川原で過ごすことに決めた、今まで遭遇した敵の強さを見るに、大幅に減ったステータスでは相手をするのは無理だろうと結論付けたためである。
 だがそんな彼らに朗報が舞い込むB班が王都を見つけたとのことだった。

第二章 王都発見
 ちなみにその移動の過程でA班は支配地域とぶつかり、B班は王都周辺の探索で封印一つを発見した。
 それはマイヤが難なく解除し。
 今はリンカーたちで貸し切った宿屋に全員が集まっているところだった。
 全員で情報共有を始める。
「ラシル、大丈夫でしたか?」
『月鏡 由利菜(aa0873)』が心配そうに告げた。
「ああ、ユリナこちらの損耗はほとんどない。だが……」
 リーヴスラシルが見渡したのはB班、過酷な道のりだったようで禮に至っては眠りについている、彼女は積極的に見張りにたっていたので仕方ないだろう。
「こら、erisu、寝てる人の邪魔しないの」
 禮の寝顔を覗き込むerisuに春香が言った。
「違うの、ちゃんと眠れてるか見てただけなの!」
 erisuが抗議の声を上げる。
「……あー、すみませんそろそろ情報共有を始めてもいいですか?」
 いつも議長になりがちな燃衣が自然と口を開いた。
「まず、魔王についてじゃないか、といっても俺たちは今回の相手について詳しくない」
『迫間 央(aa1445)』が口を開くと、マイヤは自分が見た支配地域の方角と様子を伝えた。
「この王都からニマス離れた南の方角ですか……」
「支配地域は二つ発見したが魔王はおろか、その手足もいなかった」
 リーヴスラシルが告げると、ルルトが手を挙げて王都周辺様子を報告する
「マス配置としては西側から時計回りに。遺、遺、水、水、氷、草、草、草だな。王都周辺にも異変はない」
「うーん、状況が難しい」
『キトラ=ルズ=ヴァーミリオン(aa4386)』は紙に情報をメモしながら話を聞いていた。
「……あのゴミ屑石ころ女はどうしてる?」
 今まで沈黙を守っていたネイが口を開いた。
「すごい言いようですね……。近頃はだんまりを決め込んでます、最初のうちはルールの話をしていたのですけど……」
 ネイが答えた。
「これでゲーム内部の状況は見えてきたね」
 アルトが額を抑えながら言った。
「……一番の謎は、NPCですか?」
 イリスがぽつりとつぶやく。その言葉に全員が頷いた。
「どう見ても人間にしか思えぬが……」  
 飯綱比売命が言う。
「敵NPCもな」 
 ベルフが刃を研ぎながらそう進言する。
「敵はマスターの【栄養】から拝借したと言った。愚神の栄養ならばライヴスで間違いない……」
 央が言葉を選ぶように告げると。
「マスターの栄養? 記録……記憶、か?」
 藍は口元を押さえて言った。そしてその言葉を継いだのは央。
「ライヴスを搾取できる対象とすれば……NPCや敵の配下が人間や英雄ないしは、それらから奪ったライヴスによる複製である可能性も」
「真に迫る贋作であるならば、あのNPCやエネミーは生きている。彼らがそう思っているのだから。だが……」
 藍はそう言葉を口に出しつつも徐々に思考が迷宮の中に潜っていくのを感じていた。
 今一つピースが足りない。これ以上考えを先に進めることができない。
 その時イリスが口を開いた。
「《ある程度そこにあるものを持ってきた方が早い》、これってどうなのかな?」
「ああ、英雄や人間の魂がNPCの可能性かい」
 あっけらかんと言ってのけるアイリス。全員が視線を向けた。
「それは魂の再現ではなく、本物の?」
 イリスの問いかけにアイリスは頷いて見せる。
「彼女ならその可能性もあるということだね、ただ判断材料は足りない。このゲームそもそもが敵からの情報が前提だしねぇ」
「確かお二人はガデンツァとの付き合いはなげーんでしたっけね?」
 フィーが尋ねる。
「はい、僕たちはそれこそ、彼女が活動を開始した直後くらいにはもう、関わってます」
「私に至っては一度彼女と肩を並べて戦っているからね。だからわかるが、ガデンツァは相当歪んでいてもルール自体は守るタイプ……だがね、クイーンまでそうとは限らないのだし」
「だが、本物の人間の魂というべきものが使われているなら……」
 藍が口ごもり、その先を央が継ぐ。
「この王都にいるのは本物の人間ということになるのかな?」
「それもわからない、だからこそ始めは自分たちの目と足で確かめるのだよ」
 アイリスはそう答えると、自分をじっと見つめる視線、erisuに気が付く。
「もし、自分達が倒してきたエネミーがNPCならどうする?」
 その言葉に代わりに答えたのはヒルフェ。
「ソレハカワラネェダロ……邪魔ナラ殺スソレダケダ」
「それは人を、人の思いを切りつけると意ことにならない?」
 erisuがさらに問いかけた。
「今日まで殺してきた敵にそれが無かったとでもいうのか?」 
 その問いかけに答えたのは藍。
「あの子は戦士だ……そんな覚悟はもう、遠い昔にしているさ」
 そう藍は苦しげに禮を見つめた。
「悲しいことだが、戦争に於ける英雄とはそういうものだ。敵を選ぶことなど、できない」
「そうですね、実際に倒して進むしかありませんでした」
 erisuは感情が読み切れない、透き通った瞳で歌うように告げた。
「疑心だ暗鬼だと言ってもなるようにしかならないよ。勿論最善は尽くすがね」
 そうアイリスが告げると、今度はイリスが眉をひそめた。
「んー…………」
 黙りこくってしまうイリス。
「おや、不満そう。だが何もしなければ相手に好き勝手にされるだけだよ」
 重たくなってしまった部屋の空気、それを塗り替えるようにマイヤが立ち上がった。
「面白いお話でした」
 彼女は刀を一本腰に差すとラフな格好で扉に手をかける。
「……可能性としては考慮しておくわ。私が殺したいのは愚神。でも、その愚神に踊らされるのは気分が悪い……面倒ね」
 そう告げてマイヤは部屋を後にした。夕食を下の階で頼んでいたのだ。
 この宿は一階がバーとなっており料理の種類も多い。
 ここのところまともな食事をとっていない英雄たちからすればかなり魅力的だった。
「リスクを恐れていては始まらないさ……まぁ、そのリスクが自分以外の誰かが受けるというのが不満なのだろうけどね」
 マイヤにアイリスも続く。
「というわけでのんびりと世界を楽しもうか」
 その背に禮が声をかけた。
「どこにいくんですか?」
「前回は荒し回ったが本来は美しい世界という話なのだし、回ってみようとおもってね」
 WW3の世界、ここは依然訪れ、一般人を世界から非難させた場所。
 こんな形で再び訪れることになるとはだれが予想しただろうか。
「ひとまず吟遊詩人らしく歌と演奏でNPCを集めてみようか」
 アイリスはリュートをかき鳴らして見せた。
「……遠まわしに言わずに『どんな情報も見逃さないように目を光らせる』っていえばいいと思うな」
 イリスが言う。
「はははっ とりあえず前回の経験を踏まえて中身入りと中身無しのNPCの違いを比べてみるさ」

   *    *

 その後沸騰した頭を抱えて英雄たちは一時解散することに決めた。
 そんな中リーヴスラシルはerisuのおもりとして町の中心部分のカフェに来ている。
 美味しそうにケーキを頬張るイリスを見ながらリーヴスラシルは紅茶を一口含んだ。
 上質な香りが喉から鼻に上がってくる。
 この味わいは本物だ。
(この町並みを見つめていると思い出すことがある)
 リーヴスラシルはフォーク片手に眠りこけているerisuを見つめた。
(とてもではないが、異世界の神には見えないな……)
 そうerisuの率直な感想を胸に抱く。
 ただそれは他の英雄にも同様に思うことだった。
 世界を救った勇者、古き神々、まさに英雄と呼ばれるべき存在、それが今は記憶を奪われ箱庭に押し込まれている。
「私の世界は……覚えている限り二度滅びた。大昔の神々の終末、そして……私の世代の愚神達の襲撃で」
 唐突によみがえる、リーヴスラシルの記憶。
「ユリナと共に英雄としての経験を重ねるにつれ、ミッドガルドの記憶がより鮮明に浮かぶようになった」

「それらが全て真実である保証もないが」




第三章 腐食の指先 


 その後一行は二日ほどのこの町での準備を続けた。
 アイテムを買ったりとRPGにありがちな行動はできなかったがNPCとの交流はできたためだ。
 ここでは様々な情報が得られた。
「遺跡周辺は危険なフィールドが多い」
「草原や水辺は続くことが多い」
「腐食は…………」
「町の周囲に生成されることが多い」
 そんな中アルトは以前空を飛んでみたこの世界との共通点を探していた。
「なぁ煤原さん、WW3の世界がどんな地形だったか覚えてるか?」
「いや、その、実はまったく……」
 まぁ、無理もないだろう。あの世界を俯瞰で見る機会があったのは光の三姉妹くらいだったろうから。
「じゃあさ、あたしの記憶が正しければなんだけど」
 アルトは告げる。
「魔王城の近くに王都がもう一つあるんじゃないかな」
 そして一行は魔王城めがけ進行する、再び班を二つに分けてマッピングしながら先を急ぐ。
 ただ王都を出て半日もしないうちに能力者側からの通信が入った。
「どうしたのじゃ由香里」
 飯綱比売命はサソリのようなエネミーを焼き払いながらその通信に応じる。
「B班の位置からも見えるみたいね」
「何がじゃ?」
「……あれだな?」
 リーヴスラシルが重たい声で告げた。
 このゲーム、そのマスに一度でも足を踏み入れたことがあれば、境界越しにもそのマップの様子が確認できるようになる。
 つまりA班が足を運んだマスはBでも遠くから観察できるということになる。
 そしてリーヴスラシルは遺跡エリアに高くそびえる塔から、隣のマップを見下ろしていた。
「見えますか? あれが」
 由利菜が告げる。
「腐食…………」
 A班はそれを火山の頂上から見下ろしていた。
 もともとは樹林だったのだろう、だが何か酸でも吐きかけられたようにフィールド中央に向けてへこんでしまっている。
 そしてその中心に何かがいた。細く長くとぐろを巻いたそれは、まる蛇。
(あの姿は……記憶より随分小さいが、あの日王都の空を覆った……!!)
 リーヴスラシルが目を見開く。
「まさか、ここでお目にかかるとは…………」
 その時リーヴスラシルが冷静さを失った声で告げる。
「どうしたのですかラシル」
 その異様さが一番わかるのが由利菜だ。由利菜は息をのんだ。
 突如リーヴスラシルは膝をつく、脳が内側から裂かれるような苦痛を味わい立っていられなくなったのだ。
 彼女の額に脂汗が滲んでいた。
「ラシル!」
「やつは…………」
 リーヴスラシルの脳裏に蘇ったのは記憶。
「奴は…………」
 殺意すらはらんだ声で再度リーヴスラシルはその敵を見た
「ミドガルズオルム」
 次の瞬間その龍はリンカーの存在に気付いたのだろう。咆哮を轟かせる。
 そして毒蛇は真っ直ぐ王都に向けて進軍し始めた。
「不味いです、あそこには沢山のNPCが」
 その時、ルネが笑った。その声は英雄たちの元にも届く。
「どうします? 王都を目指して進軍中とは言っても、NPCなんてたかがプログラム。あれを放っておいて魔王を目指したほうが良いのでは?」
 全員の思考がそこでこう着した。
 その議論にはまだ答えが出ていない。
 NPCとは何か、救う価値があるのか、その答えは出ずに終わっている。
「確かにあなた達が助けに行けば壊滅は防げるかもしれません。けれどめちゃくちゃにされた王都は王都として機能するのでしょうか」
 ルネは言っている、見捨てるべきだと、公平で冷静なGMとしての言葉。
 そしてそれに不吉さを覚えずにはいられないリンカーたち。
「それであれば王都など無視して先に進むべきでしょう。先に言っておきますが、ミドガルズオルムは強い。私のお気に入りのエネミーです」
 小さく笑うルネ、その口角が次第に吊り上るのを見た。
 燃衣の脳裏に、水晶の乙女の姿が重なる。
 あの日、世界を守りたいと願って消えた少女の面影が、浮かんでは消える。
「燃衣…………」
 その声に燃衣は盤上に視線を下ろした。ネイが燃衣を見つめている。
「…………お前。どーすんだ?」
「僕は…………」
「僕は王都を救いがてら、魔王の手足を倒すのに一票入れます」
「いいじゃないか隊長、私も賛成だ」
 アイリスが言う。
「逆に無視する意味はないと考えるがね」
「あたしも賛成だ」
 アルトが告げる。
「今度こそ……この世界を救うんだ、犠牲は出したくない」
 その言葉に全員が頷いた。

   *   *

「一足遅かったか」
 まず町にたどり着いたのはベルフだった。その手の刀でNPCに襲いかかろうとしていた小悪魔を両断し町を見渡す。
 一言でその惨状を表すなら、百鬼夜行に飲まれた街だった。
 古今東西、様々な化物の祭典、ごった煮。
 それが町を破壊している、そんな光景が目の前に広がっている。
「数ガ多スギルンダヨナ」
 民家の屋根に膝をつきヒルフェはハウンドドックにて敵を迎撃していく。
「さぁ……鎮魂歌(レクイエム)奏でさせてやるよ……効聴きやがれ! 跪け! 懺悔しな!!」
 その射線を遮ってアルト叫びFORTISSIMODEがフリーガーで敵を蹴散らしていく。
 その背後に迫る敵をルルトが魔導銃で撃墜した。
「らー」
 反響する音、erisuの歌がその指に絡ませたピアノ線を伝ってエネミー内側から破砕していく。 
 さらにカオティックブレイドの真骨頂はここからである。
「まずは数を減らすぞ!」
 ルルトが叫ぶ、その瞬間三人のカオティックブレイドすべての武装が大量に複製されていく。
 そして放たれた飽和攻撃は多数のエネミーを葬り去っていく。
 だがその直後。複数の英雄が不吉な予感を感じ振り返る。そこには向き合うべき過去と表現したくなるようなものが再現されていた。
 飯綱比売命比売命は相対する。それは見上げるほどの野犬である。
「飯綱、震えてる」
 黒い毛並震わせて突撃してきた猟犬の一撃、それを受け転がった飯綱比売命だったが、血の滴る両腕を地面について懸命に起き上がろうともがいていた。
「気のせいじゃ、これは、武者震いというものじゃよ」
 そう血を払ってトリアイナを構えると、襲ってくるたけのこを切り裂いて黒犬と相対する。
 その隣の路地ではリーヴスラシルが一人で蛇の集団と相対していた。
「当時、我が国にライヴスを扱う技術は殆どなかったはず……」
 ニーズヘッグ、神々の終末を生き残った蛇である、ただ今のこの魔物たちは霊力の鱗を纏っており一筋縄ではいかない存在となっている。
「だが今の私はルーンとライヴスを融合させ、戦える!」
 リーヴスラシルは蛇の集団に単身切りかかった。
 しかしそれを無謀と禮は判断。
 ブルームフレアをさく裂させて、リーヴスラシルの体に絡みつく蛇を払う。
「大丈夫ですか?」
 しかし他人の心配をしている暇はない。
 禮の背後に影。現れたのは魚人や人間の兵士、剣を持ち狂気じみた光を瞳に宿し、禮に襲いかかってきた。
その姿は記憶の中の敵兵。彼女が殺してきたもの達だった。戦争の果てに愚神に唆され狂ったとある国の人々。
「……なぜこの世界に」
 禮は黒鱗でそれを応戦していく。
「変わらず狂わされてるんですか……? ごめんね、何度だって……あなたたちを、殺す」
 いつだって帰る場所のために。表情を消して敵を殲滅する。……いつも表情豊かなのは、反動なのだ。
 殺したくはなかった。
 しかし、殺さなくてはいけなかった。
 その、反動。
(複製? でもどうやって……まさか私達の記憶を?)
 その狂気に満ちた軍勢はNPCに積極的に群がっていった。
 だが誰一人犠牲は出さないとして、ネイがその斧で敵を弾き飛ばしていく。
 マイヤも加勢するが。敵の数は全く減らない。
「思うに、ミドガルズオルムがエネミーを生成しているのではないだろうか」
 二人にリーヴスラシルが合流しそう告げた。
 アイリスもまた激戦を潜り抜けてきたようで、流麗な衣装をズタズタに死ながら合流する。
 これで戦力は四人。
「…………なんでもいい、やるぞ」
 ネイが告げると、マイヤは微笑んだ。
「ええ、これ以上の好き勝手は……」
 許さない。
 そう二人のブレイブナイトが戦闘を務め蛇龍に挑む。

    *    *

 ベルフは飛ぶように街中を駆けていた。避難できずにいる市民がいないかの確認と遊撃を担当していたためだ。
 しかし、先刻から彼の背中をぴったりとつけてくる影がある。
 全身を覆い隠す黒い外套と仮面。
「いったい彼らはなんなんですか?」
 昂が問いかける。
「あれは、暗殺集団だな、名前はあったりなかったりまちまちだ」
「いったいどういう……」
「追われていたのさ。俺は、あいつらにな」
 そう告げた直後ベルフは反転、その黒衣の集団と戦闘に入る。
 振りぬいた刃は弾かれ、敵に背後を取られるが、それを射抜いたのはヒルフェの弾丸。
「ヘェ、混ザッテルノカ。オモシレェナ」
 そうヒルフェは暗殺者の外套をまくり上げ腕を見つめる、その腕は奇妙なことに指先から肩にかけて黒い入れ墨のようなものが刻まれていた。
 そして同様に左腕ないし、右腕にかけて同じ模様を刻んだ人間にヒルフェはかこまれている。
「なんなんですかねぇ、こいつらは」
 AGWと思われる武装を振るって攻撃してくるそれらをヒルフェは眉一つ動かさずに屠っていく。
「ホー、成ル程ネェ、良イ趣味シテンジャネエカ?」
「何か知ってやがるんでしょーか?」
「ン? アア、ンナコト今ドウデモイイダロ。ホラ、サッサト殺シテ進ムゾ」
 ヒルフェにとっては人間を殺すのは日常茶飯事なのだ。
 その性質故に、その生まれ故に。
 ただ。
 まだ手を汚したことが無い人間もいる。
 同じように病に侵されたエネミーにFORTISSIMODEが襲われている。
「…………」
 アルトは撃てとはいえずに、FORTISSIMODEは銃を下ろしてしまった。
 それを合図に襲いかかってくるエネミー達。だが襲われる瞬間に照準を胸に当てるFORTISSIMODE。
「どんな姿であたしを騙そうったって……この世界にはもう誰もいねぇ、遠慮はいらねぇ! ……早く蹴散らしてやらぁ!!」
 その奮闘を眺めながら、ルネ・クイーンは言った。

「私は命を奪うという行為にさほど絶望的要素があるとは思えません」

「しかし、心に傷を抱えながら生きていくことはより強い絶望を生むのではないでしょうか」

「あなた達のように」

「だから私は考えました。深層意識に刻み込む形で殺人の記憶を植え付ける、そして殺害されるという恐怖の記憶を植え付けることを」
 
「それは人をとても不安定にするのではないでしょうか」

「あなた達のように」

「さぁ、救って見せてください、殺される人々を、殺したがる人々を、両方の心を」


第四章 魔王城

 冷たい王の間に乙女が座っていた。
 彼女はがらんどうになった町を見おろしため息をつく。
 退屈だった、この世界に召喚されてからというもの、ずっと暇だった。
 それ故にもうこの世界を滅ぼしてしまおうかと考えていたころの話。
 突如王の間の扉が開いた。
 その向こうに立っていたのは、魔王を倒さんと立ち上がった、十人の英雄たちであった。
「ほう、王都防衛を先ほどまで行っていたはずではなかったかの?」
 その声に昂が答える。
「町の人が腐食の近くの遺跡に隠し通路があるって教えてくれたんです」
「じゃが……その扉を開くためには北の大神殿に眠る鍵が必要じゃが?」
 そう告げるとベルフは豪奢な作りの錠前を投げ捨てて見せた。
「俺に物理錠は無意味でね」
「ほう……」
 水晶の乙女の写し身、ガデンツァは笑って告げた。
「いや、面白い、面白いぞ勇者どの。じゃがな、ここまでたどり着いた報酬は死じゃ。すまんのう」
 そうズタボロ衣装の勇者たちを冷たい目で流しみるレプリカ。
 最低限の回復はしてきたようだがそれでも万全とはいいがたい。
「あと二日で、人類が殺し合う瞬間を見られたものを……」
 そうガデンツァがつまらなさそうに告げると、禮が口を開いた。
「自身の写しをここに……? 本当は殺して欲しいの?」
「なに?」
 ガデンツァは眉をひそめる。
「倒されるわけが無かろう。ラスボスが最強、それで詰みじゃ」
「攻略できないゲームなんて無い。もしそんなものがあるとするのなら…………」
 ベルフが告げる。そして昂が言葉を継ぐ。
「そんなものは、そんな運命は僕らで叩き潰してお仕舞いです」
 ベルフが魔王を見据え相対し、全幅の信頼を寄せて昂が盤上から見守る。
「コピーノコピーニ用ハネエンダ、ジャアナ」
 ヒルフェが挑発するように告げた。
 そして極めつけに燃衣が言い放つ。

「……やはりお前等は《何者でも無い》存在だ」
「へぇ?」
 その言葉に反応したのはルネ・クイーン。
「なぜそう思うのです?」
「……理由?《いし》が無いんだよ」
「…………」
「《石》の様に固く、一文字ズラせば《あす》になる……生きる《意志》だ
そして《いし》は託し紡がれ……未来への道を生むッ」
「言葉遊びですか? つまらないですね」
「お前等は壊すっきりで何も生まない……ッ」
「それが私たちの存在理由ですから」

「お前たちには! 生きる《いし》が無い! 水の様に不定形で、不特定多数の様な存在だ!」

「傷付いても構わない……生きる事は戦う事だ!」

「託された《いし》と共に……お前等を倒して明日を掴む! お前等に負ける道理は無い! 」
「言ってくれますね。クソザコの分際で」
「てめぇが澄香達が言ってた独奏ってやつか……!」
 アルトは拳を握りしめて、その言葉を吐きだした。
「聞いてたよりもずっとひどい奴だ」
 これまで、見せられてきたものは、世界は。むごく、むなくそ悪いものだった。
 こんな世界を生み出し続ける存在と、ずっと彼女は戦ってきたのか。
 そう思うと胸が張り裂ける思いだった。
「これはまだ序の口ですよ」
「まるで昔のあたしだな…………冷たくて……独りぼっちで…………だいっ嫌いだ!!」

「何をごちゃごちゃと騒いでおる。さっさとかかってこい、わらわは退屈で仕方がないぞ」

 次の瞬間アルトが銃を抜いた。
「テメエニ死ノ救済ヲ」
 リンカーたちは陣形を展開、ヒルフェは近接武装で前に。
 そして最初に切りかかったのはベルフとマイヤ。
 その攻撃を音の壁で弾き反撃しようと口を開いた直後。
 ネイが飛び込んだ。
「……死ねよ。みっともなく」
 大斧は音の障壁を貫いてガデンツァの腹部にめり込んだ。
 しかしそれは残像。イミタンド・ミラーリングにてガデンツァはネイの背後に移動した。
 そして風音により、ベルフ、マイヤ、ネイを吹き飛ばす。
「俺魔法攻撃食ライタクネーンダケド」
 その光景を見つめぼやくヒルフェ。
「なんのためにそこら辺に盾が用意してあると思ってんでやがりますか、有効に活用しろってんですよ
「ンー? アア、リョーカイ」
 スキル全開で速攻を意識。ガデンツァの首を取りにかかる。
「聞け、魂を食らう旋律を」
 床から吹き上げる水柱。そしてガデンツァの奏でる怨念の声。
 多種多様な魔法攻撃に初めて相対するもの達はペースを乱される。
「皆、私達から離れるな」
 アイリスとリーヴスラシルが前に出る。そしてガデンツァの攻撃をはじいた。
「ほう? わらわの攻撃を止めるとは……」。
「出力が低い……」
「これなら」
 そう二人が頷きあった瞬間である。
「甘い!!」
 地面から噴出する水柱。
 アイリスとリーヴスラシルは吹き飛ばされる、直後にドローエン・ブルームの連続攻撃でガデンツァは距離を取った。
 しかし更なる追撃を行うことはできない。カオティックブレイドたちの飽和攻撃がガデンツァと二人を遮ったからである。
「くそ、単体相手だとやりにくいな」
 ルルトは歯噛みした。
「手を隠して相手できる君ではないか」
 アイリスはそう告げると胸に手を当て羽を羽ばたかせた。
 多重の旋律がアイリスを、周囲を包んだ。
「音色じゃと」
 周囲を煌く花びらが舞い、煌く光の粒子が守護をする、響く歌声は羽と共鳴し。
 己の輝きが周囲を照らす。
 その身を守護するのはティタン。使用者の肉体そのものを結界となす。
 それ故にアイリスは素手で水の柱をはじくことができる。
「な……」
 さらには音として展開される光の結界エイジスは、減衰による無力化に特化した、壮麗なる魔奏領域。
 さらに、その黄金の羽は周囲にその守護の力を分け与える。
「うっとおしい結界じゃ!」
「だが効くのだろう?」
「く!」
 そうガデンツァの両手を盾で封じ、息がかかるような距離でアイリスは囁いた。
「私が君といた時間はわずかだが、それでも君を知りえるには十分だった」
「…………」
「何を焦っている? 音色から伝わってくる」
「わらわは後悔はしない主義じゃが、今はそうも言ってられぬな、ああ、あの時殺しておけば」
「なぜ、ルネを作り出したのかな、クイーンという形で」
「特に意味などない!」
「そうかな? 本当に? なぜかな、気になるんだ、そのことがとても」

《シンクロニティ・》

 突如ガデンツァから響いた音にアイリスは距離を取った。
 しかしそれを聞いて嘲笑ったのはルネ。

「安心してください、あんなに卑怯臭い技は装備させてきてませんから」

 そして独奏者の演奏会は続く。
「なんだってこのボス相手に水属性の槍持ってきたんじゃ!だめーじが通らぬではないか!」
 飯綱比売命はガデンツァに吹き飛ばされた武装のかわりにトリアイナを取り出した。
「やり方次第よ。トリアイナはこちらのライブスを水に変えられる。敵を構成する水にこちらのライブスで生成した水を混ぜ込んで混乱させられるかもしれない」
 由利菜が言う。
「かもしれないってなんじゃー!」
 久しぶりに飯綱比売命が取り乱している姿を見られて満足の由香里だが。
 次の瞬間目を開くことになる。 
「それは有効かもしれない、その話乗らせてほしい」
 藍が名乗りを上げてきたのだ。さらには央まで賛同し始めた。
 何をするのかというと。
 まずは、マイヤが突貫、そのスピードで翻弄し、水柱をかわして敵眼前へ。
 そしてその顔面を切りつけた。
 意外なことに視力に割と依存しているガデンツァ。
 ここに隙ができた。
 そしれ、それを合図に禮と飯綱比売命が駆ける。
 その双振りのトリアイナをガデンツァへと突き立てた。
 そしてその時。信じられないことが起こった。
 結論から言うと、ガデンツァの一部を取り込んだのだ。
「霊力を奪った……」
 唖然とつぶやく藍。
 トリアイナの刃はガデンツァを素通りした、何の手ごたえもなく。
 しかしその刃は、まるで水あめをひっかいたように大量の水分を付着させていたのだ。
 ガデンツァが膝をつく。そして目を見開いているルネ・クイーン。
「しかしそれが通用するのは下位のルミナス・イミネーションだけです」

「あああああ! コケにしよって!」
 次いで繰り出されるトリアイナの攻撃にガデンツァはイミタンド・ミラーリングを使用。
 虚像となったガデンツァは脆くも崩れ去り、FORTISSIMODEの背後で再構成した。
「まずは弱い者から殺す」
「殺す? はっ、バーカ!」
 直後ガデンツァは信じられないものを見た。空中に浮遊する複製されたLpC PSRM-01、その銃口がガデンツァを向いている。
 予測していたのだ、こうなることを。
「バカな、自分すら巻き込むぞ」
「あたしは信じてる。みんなが……あたしの後ろにいてくれるから。だからあたしは無茶出来る。てめぇとは違うんだよ! てめぇはここで終わりだぁ!!」
 クイックスキル。
 ウェポンディプロイでLQCを召喚
 リアクションスキル。
 ロストモーメント発動。
 大量に並べられた銃口が、水晶の歌姫を穿つ。
「ガデンツァ!」
 躍り出たのはリーヴスラシル
「私達は自らの意志による決断を後悔せぬ。その意思へ後悔しろ、か……問題外だ!」
 その剣によってガデンツァを弾き飛ばし。傷ついたアルトを戦闘範囲外に投げた。
 それを抱き留めたのは飯綱比売命。
「ようやったのう、あとはまかせよ」
「……やっぱり、あったけぇな……あたしの周りは
 そして後詰で突貫したのはネイである。
「潰れろ、砕けろ……みっともなく死ねよ……!」
 その斧が信じられない速度で閃いた。
 一瞬にて敵の腕を切り飛ばし。
 二撃目にてその斧の柄で腹部を強打。
 トドメの一撃にて首を切り飛ばす。
「そ、そんな、イミテーションとはいえ主がこのような英雄たちに……」

「わかったでしょう? あなた達の企みはどうあってもまかり通りません、ぼくたちがいる限り」

 燃衣がそう告げるのとガデンツァの首が落ちるのは同時だった。


エピローグ
 その後その世界からどう戻ったかはわからない。
 ただ、英雄たちは無事に相棒のもとに戻り、そして最後に遙華からWW3の世界が完全に愚神の手から解放されたことを告げられた。
 この戦いは過酷でさまざまな思いを彼らに残したことだろう。
 だがFORTISSIMODEの記憶は誰にも残らない、ぼんやりとしたその人がいたという記憶だけが残り、アルトがそこにいたという錯覚を生んでしまった。
 この謎が解明されるのはきっと、今ではない未来の話だろう。
「今日はケーキより呑みたい気分ですね……」
 そう疲れ切った体を寄せて禮は藍に甘えて見せた。
「……付き合おうか」
 そう告げると、終わったんだという実感が二人の仲に沸き起こった。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271

重体一覧

参加者

  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 永遠に共に
    月鏡 由利菜aa0873
    人間|18才|女性|攻撃
  • 永遠に共に
    リーヴスラシルaa0873hero001
    英雄|24才|女性|ブレ

  • 九字原 昂aa0919
    人間|20才|男性|回避

  • ベルフaa0919hero001
    英雄|25才|男性|シャド
  • 素戔嗚尊
    迫間 央aa1445
    人間|25才|男性|回避
  • 奇稲田姫
    マイヤ 迫間 サーアaa1445hero001
    英雄|26才|女性|シャド
  • 終極に挑む
    橘 由香里aa1855
    人間|18才|女性|攻撃
  • 狐は見守る、その行く先を
    飯綱比売命aa1855hero001
    英雄|27才|女性|バト
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271
    人間|20才|男性|命中
  • エクス・マキナ
    ネイ=カースドaa2271hero001
    英雄|22才|女性|ドレ
  • マーメイドナイト
    海神 藍aa2518
    人間|22才|男性|防御
  • 白い渚のローレライ
    aa2518hero001
    英雄|11才|女性|ソフィ
  • Dirty
    フィーaa4205
    人間|20才|女性|攻撃
  • ボランティア亡霊
    ヒルフェaa4205hero001
    英雄|14才|?|ドレ
  • 残照と安らぎの鎮魂歌
    楪 アルトaa4349
    機械|18才|女性|命中
  • 反抗する音色
    ‐FORTISSIMODE-aa4349hero001
    英雄|99才|?|カオ
  • 四人のベシェールング
    キトラ=ルズ=ヴァーミリオンaa4386
    人間|15才|女性|攻撃
  • エージェント
    ルルト=マクスウェルaa4386hero001
    英雄|20才|男性|カオ
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