本部

【卓戯】連動シナリオ

【卓戯】ここから先へはいかせない

鳴海

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/09/30 14:36

掲示板

オープニング

――――――――――
▼解説テンプレ
ミッションタイプ:【一般人救助】
 このシナリオはクリアと成功度に応じて様々なボーナスが発生します。
 詳細は特設ページから「ミッションについて」をご確認ください。

――――――――――

● とある村、多種族世界で

 冒険という物にあこがれたことはありませんか?
 未知の土地、未知の言語、未知の種族。出会えるもの、見るものすべてが真新しく。
 不安と期待に満ちている、そんな世界にあこがれたことはありませんか?
 このルールブックはそんな世界を訪れることができます。
 あなた達はこの世界で思い思いの生活をするだけでいいのです。
 村に家をたて暮らすのも、森の中で暮らすのもいいでしょう。
 資材が足りなくなれば木を切り、鉄を取り、川から水を引けばいいでしょう。 
 お金が必要となれば少々危ないのですが、化け物たちを倒せば、その爪や牙が高値で取引されることでしょう。
 そうやって、生きていくもの達をこの世界でなんと呼ぶのか知っていますか?
 冒険者です。
 あなた達はこれから冒険者となってこの世界を旅していただきます。
 沢山の困難があるでしょう、生きるには厳しい土地に出たり。強力な魔物に襲われることもあるでしょう。
 それでも生き抜き一人前の戦士となれば、貴方は伝説と呼ばれることでしょう
 

● 暴力的解決が許されるのは小学生まで。
「すごーい、これ本当にバーチャル?」
 春香は中世風の街並みを見て歓声を上げた。

「家が可愛いね。いいにおいがするよ、パン屋さん?」

「すごーい、たくさん武器があるよ、何か買っていこうよ」

「え? 意外と普段からファンタジーな物を扱ってるじゃないかって? それとこれは話は別」
 
 そんな風に、旅行で外国を訪れた少女のようなリアクションを返す春香。
「ねぇ、春香。ここに来た目的忘れてないかな?」
 そんな春香を見かねてerisuは言った。
「わかってるよ、敵情視察でしょ。このWW世界の状況確認!」
《ワインド・ワールド3》
 これが今回の世界の名前である。
 参加者は魔法ありの未開拓の世界。ワールドに赴き、冒険したり町を作ったりするテーブルトークRPGである
 自由度の高さが売りで、参加者は長く遊べる。
 そのためVRもとても丁寧に作られていて、街中も生活しやすい空間になっている。
「にしても。本当にいい街。だからこそかな」
 春香はサクサクのパンを頬張りながらあたりを見渡す。
「人が多いね」
「ひと……?」 
 erisuは首をかしげる。確かに商店街はひとであふれかえっているが、それは当然だろう、ここは城下町で、この世界で一番人口密度の高い場所なのだから。
「ちがうちがう、PCだよ。ほらNPCは頭の上にリングが出るでしょ。PCは出ないんだよ」
「ラララ?」
「ということは、骨が折れるぞぉ」
 春香は珍妙な声でerisuに語りかける。
「ざっと百、いや、二百人は囚われてるぞぉ。さっそく帰って遙華に報告だ!!」
 そう春香は意気揚々と帰宅した、お土産にパンを二~三個程度買って。


● ここから先は戸尾さん、何人たりとも……作戦
「ううう、せっかくのパンが……」
「VRなんだから当たり前じゃない」
 そう春香がお土産にと買ったパンは、現実世界に戻ってみると消えていた。
 悲しい。
「つまり、あの町には囚われのユーザーが百人程度いたのね」
「うん、正確な数はわからなかったけど」
「そして、そのユーザー全員が、その世界を本物だと思ってる……」
「そして、アクセスポイントから離脱すればすんなり帰ってこれるんだよ、でも帰りたがらないのが問題だよね、っていうかもはやあの世界で生きていると信じている人にとって、アクセスポイントから先の世界は異世界なんだから行くわけないよね、ところで猫耳可愛いね」
「あーはいはい、うーんとなると、どうしようかしら、一人一人捕まえてポイントを潜らせていたんじゃめんどくさいから。うーん、自発的にくぐってくれるとありがたいのだけど」
「はーい」
 その時春香が手を挙げた。
「あの世界が居心地良いなら、あの世界の居心地を悪くすればいいんじゃない?」
「というと?」
「破壊の限りを尽くそう!」

 というわけで作戦内容はこんな感じ

1 愚神や従魔に扮したリンカーが町を襲撃する
2『アクセスポイントから逃げてください、早く!』と誘導する。
3 みんな帰還する。
 そう言うわけだった。

「でも、街ってクリーチャーが近づくと迎撃するNPCが配置されているのよね」
「あ、それ大したことなかったよ」
「……?」
「ためしに戦ってみたけど、全然弱かった」
「なら問題はないわね。うん、今回はみんなに悪役になってもらいましょう」


● 細かい作戦内容

 皆さんにはこれから、WWの中心都市『レーベルト』を破壊していただきます。
 破壊して、恐怖を煽って、囚われのユーザーを現実世界に戻してあげてください。
 注意すべき点は二つ。

1 抗体と呼ぶにふさわしい、迎撃用NPCをどうするか
 この町は外部の敵が侵入しようとした場合、もしくは町の内部にいるPCが他のPCに対して敵対行動をした場合強制的に排除するNPCが召喚されます。
 ただし、リンクしていれば、このNPCは次元が違うというレベルで敵にならないので、バンバン蹴散らしましょう。
 無限沸きで。常に町に十体配置されるようです。

2 PCの反撃。
 彼らはリンカーではないため、共鳴中であれば全く敵にならない。
 相手がこのゲームの中で伝説級の勇者であろうと、次元が違うレベルで敵にならない。
 こちらも軽く蹴散らしてあげてください。

● 町の構造

 この町は半径十キロの円状の街です。
 中心から半径二キロのエリアは城です。貴族や騎士、王が住まうエリア。
 そこから半径六キロの地点までが居住区、および商店街エリアです。
 一番人でにぎわいます。
 そこから半径八キロの地点までが。工業地区。皮や鉄と言った生活に必要なアイテムを作成する攻防が集中しています。
 そこから半径十キロ地点までは牧場が広がっていたり、訓練施設が広がっていたり、学校があったりします。残りの町に必要な機能を詰め込んだ地点です。
 特に国境に線が引かれているわけではないのでとてもあいまいですが、町の内部はこんな感じです。

 ちなみにアクセスポイントは町のはずれ、つまりこの国境付近にあります。 

解説

目的 一般人を脅かしてゲームから退場させよう

 
 囚われたPCたちの恐怖を煽るために以下の特殊アイテムを配布します。
 またみなさんのAGWは特殊加工を受けて一般人には怪我をさせない仕様となっています。
 安心してください。
 特殊アイテムは一人一つしか持てないので。注意してください。



* 特殊アイテム一覧 *

・翼
 見た目は自由に変更可能、空を自在に飛行できる翼を背中に生やします。
 
・ブラッディ―カウント
 武装に、特殊な血のりを含ませます。これで攻撃された人間は大量の血が噴き出したように見えます。またこの血のりは尽きることを知りません。

・裸の王様
 あなたを崇める取り巻き五十人を作成しますNPCのため別のNPCやPCに倒される可能性があります。

・異形変貌
 自身の外見を異形に変更します。また武器を自分の肉体と一体化させたように見せます。 
 ただし霊力で骨格を作っているだけの張りぼてですが。

・ストルムカディーネ
 NPCを洗脳する手段を有します、その方法は視線を投げる、キスをする、歌を聞かせるなど様々です。
 洗脳できるNPCは自身の能力者のレベルの合計と等しいNPCのレベルまでです。
(NPCのレベルについては流動的な上にいじくられていてわからない、つまり非公開です)

・全知全能
 自身を中心に周囲をつくりかえる、ドロップゾーンのような能力です(実際には違いますが、原理を知らない人から見るとそう見えるだけです)
 周囲の景色を上書きすることができます。PCたちからは世界が浸食されているように見えるでしょう

・魔王の手足
 ポテンシャルの高いNPC一体を生成します。このNPCは町が自己防衛で作り出すNPC二十人分の戦闘力を有し。この世界のラスボス並の強さです。
 外見は自由に設定できます。
 また飛行能力か、潜水能力か、高速陸上走行能力のどれかを設定できます。

リプレイ

一章 物語的プロローグ

「ほう、悪くない」
 そうWW3の街並みを見つめ『ナラカ(aa0098hero001)』はつぶやいた。まるで本物、いや景色の美しさであればそれ以上。
 だが、相棒の『八朔 カゲリ(aa0098)』はつまらなさそうにぼんやりとあたりを眺めるだけだった。
 逆に感情を惜しげもなく振りまいているのは女子達で『楪 アルト(aa4349)』もその一人。
「すごーい」
「杏奈! 私よく見えない!」
『世良 杏奈(aa3447)』は『ルナ(aa3447hero001)』を抱き上げて、肩車した。これでやっと遠くまで見渡せる。
「ここ、とっても素敵な所ね! 住みたくなるのも分かるわ♪」
「でも、今回の目的は『破壊』。住み着いちゃってるPCさんを追い出さないと」
 杏奈が苦笑いを浮かべる。
「そうねぇ……あたしもこんなとこに住んでみたいなぁ~……冗談よ」
「いや、わかるよ、アルトちゃんの気持ち。海外風の綺麗な街並みって憧れるよねぇ」
 そう隣で笑うのは春香である。
 ちなみに彼女の英雄erisuはアルトの幻想蝶にしきりに視線を注いでいた。
「らら? ラララ?」
『‐FORTISSIMODE-(aa4349hero001)』という存在が気になるのだろう。だが残念彼女? は今日も姿を見せることはない。
「ララララ? ラララララ?」
「あ、ごめんね、歩く邪魔になるね、この子たまにこんな風になっちゃって……」
 ぼんやりした瞳でアルトの隣につくerisuを露店で買ったパンで退散させるべく、呼びつけた。
「澄香さんたちにもあげてきてね」
 そうerisuは紙袋いっぱいのパンを少し離れて後方を歩くリンカーたちに手渡していく
「お腹は膨れないけど美味しいよ」
『辺是 落児(aa0281)』はそれを受け取り。『蔵李・澄香(aa0010)』と『構築の魔女(aa0281hero001)』も微笑んでそれを受け取った。二人は一口パンをかじってそのリアルさに驚きながらもまた地図に目を通した。
「台本通りに事は進みそうですね」
 構築の魔女が言う。
「ええ、事前情報の精度が高くてよかったです」
 硬めのパンをかじりきって、澄香は視線を噴水広場に向けた。
 そこで辺りを見渡しているのは『泉 杏樹(aa0045)』
「人がいっぱいなの。あ、あの人獣耳、かわいいの」
 彼女は広場の中心に立ってあたりを見渡している。そのそばでは彼女の英雄である『榊 守(aa0045hero001)』がたちビラを配っている。
「杏樹の、初ライブ、頑張るの」
 初めてのライブイベント(と本人は思っている)を目の前にして興奮が抑えきれない様子の杏樹である。
 この時をどれほど夢見たことか分からない。
 杏樹は胸に手を当ててこれまでの日々を思い出す。
 歌は皆をしあわせにできる力。それを目の当たりにした時の興奮と。
 友人であるアイドルリンカー、彼女の活躍に胸を熱くしたこと。
 いまから同じ道をたどると思うと、複雑な感情が胸で躍って、居ても立っても居られない。
「ん~!」
 頑張るぞーとか、大丈夫かな~とか、そんな思いすべてをいっぺんに言葉にできないので、杏樹はとりあえずその感情を噛みしめて見た。そんな杏樹を見て榊が一言。
「お嬢様……数多のアイドルと差別化が重要でございます」
「差別化?」
 杏樹は首をかしげた。
「ゾンビ系アイドルを致しましょう」
 いまいちゾンビというものがどういう物か分かっていなかったが、『クラリッサ(aa0010hero002)』をゾンビと呼ぶ人間が沢山いたので、なんだか可愛らしい者なんだなと、誤解して頷く杏樹。
 ちなみに、そのクラリッサはというと、アクセスポイント付近でお留守番中であった。
 力なく両手足を地面につけて、たまにぴくぴくと動くのだけが生存の証明となっている。そんな彼女を尻目に、リンカーたちは広大な野原をぼんやりと眺めている。
「マスター。今回は、悪の美学というものを教えてあげやう」
「ねぇ、ストゥル。それって必要なの……?」
「まぁまぁ。覚えておいて損は無いヨ?」
 そう『ストゥルトゥス(aa1428hero001)』はウインクを主に飛ばす。『ニウェウス・アーラ(aa1428)』は心配そうに苦笑いした。
 彼女たちのように悪役にノリノリの者もいれば、難色を示す者もいる。
「ww3…… ナンバー付きって事は改良を重ねて愛されてきたゲームだと思うんだ……」
 美しい世界を眺め、風を感じ、遠くの町の活気を感じる『GーYA(aa2289)』彼はこの作戦が人の思いを踏みにじっているようで気に食わないのだ。
「それを壊したくない!」
 そう『まほらま(aa2289hero001)』の目を見つめていった。
「壊し恐怖を与えて現実に戻さなければ死人がでる、今回は同意しかねるわ」
 平行線をたどる二人の会話。
 同じく納得いかない愚神絶対殺す少女『イリス・レイバルド(aa0124)』はというと。
「演技とはいえ愚神になるのなんて、嫌っ!」
 なぜか道端に撃ち捨ててあった土管に籠城作戦中である。
「あらら、大変そうですね」
 そう苦笑いを浮かべているのは『煤原 燃衣(aa2271)』逆に彼はこの依頼を楽しむつもりのようだ。相棒と共に土管に腰をおろし装備品の点検などしている。
『ネイ=カースド(aa2271hero001)』もその隣に腰を下ろした。
「本当にだめかい?」
「だめー」
 軽く説得してみたが、この反応は予想していたので『アイリス(aa0124hero001)』は早々に代替案の提示をする。
「ふむ。では今回は私に任せたまえ」
「え?」
 そろそろと、出てくるイリス。
「いいの?」
「なにその間イリスは寝ているといい。寝ている間に全ては終わるさ」
「そう? じゃあまかせるねー」
 その様子を見てまほらまも考える、あの手は使えると。
「なんなら、私が」
 そうまほらまが口にしようとした瞬間、燃衣があるものを見つけ手を振った、アクセスポイントめがけて歩いてくる一行は町に偵察に出ていたリンカーたちである。
「どう? みんなの準備は進んでる?」
 春香が問いかけた
「うむ。大丈夫じゃ」
 燃衣が得意げにそう言った。
「えー、燃衣さん本当にそれやるの?」
 おかしな口調に燃衣が言う
「……もちろんじゃ。今後奴の考え読むうえで、演じるというのはよいプロセスになるからのう」
 彼が演じるのは元光の女神「ミフューネ」「闇の歌」で世界を塗り替える存在らしい。そして性格のモデルケースはガデンツァらしい。
「あー。怒られないといいね。ガデンツァに」
「ラララ。ゾンビさん、大丈夫?」
「あ~ あ~ 小麦粉の匂いがします」
 そんな自由なリンカーたちを見つめて構築の魔女は溜息を一つつく。
「では、作戦の最終確認を始めましょう」
 そう、実際に町を見て見ての感想をふまえ、計画を修正していくリンカーたち。
「未知への恐怖はあるでしょう……しかし、生きるため踏み出していただきたいのです……」
 そう構築の魔女が告げる、そして町を振り返る。


   *    *

 国境付近には見張り台がたてられてる、モンスターたちの侵入を感知するためのものだが、今まであまり役に立つ場面はなかった。
 なぜかと言うと町の周りのモンスターは狩りつくされてしまう運命にあるからで、そのことを理解している見張りの兵士はあくびをかみ殺して不真面目に周辺を警戒していた。
 だが、彼の表情はすぐに引きつる。
 草原の奥から異様な影が行進してくるのを見て、頭を抱えた。
「なんだあれは」
 まず、真っ先に目に入ったのは黒い全身甲冑を着た巨人の黒騎士、その肩にニウェウスが乗っている、普段の魔法少女っぽい衣装『Form:Magician』も今は血濡れの黒いゴシックドレスに調整されている。
「さぁ、君の力を見えてもらおうか、私の手足」
 そう告げると騎士は主を肩からおろし、一つ吠える。次の瞬間見張り台へと突貫した。
 次いで目を引くのはやはり、狂戦士となった燃衣だろう。
「…フゥゥ…ゥゥウウウ……ッッ!」
 常に目が光り全身が赤黒い何かに侵食された異様な肉体、筋肉がビキビキと筋張って、食いしばった歯茎から血がこぼれている。
 燃衣も騎士が突貫するのを見るや否やそれに続いて走っていった。
「やれやれ、血気盛んだね」
 そのニウェウスの隣に立つのは見慣れない黒髪の少女が佇んでいる、しかし声からアイリスであるということがわかった。
 ヴェネチアンマスクと黒のウィッグ、そしてその身に纏う雰囲気はまるで幻想の顕現である。
「今日は別人みたいだね」
 大人っぽいメイクと黒の衣装の春香が問いかけた。
「はははっ 形からというのは重要なのだよ」
 アイリスは赤黒いドレスを翻していった。ヴァイドパイパーのように音を鳴らしながら進行する彼女の音楽に、早くも監視塔周辺のPCが惹かれ始める。
「なんだか私のイメージとかけ離れちゃったな、妖精ってもっと可愛いものだと思ってたから」
「そうかい? 妖精って結構怖いものも多いのだよ?」
 子供たちを誘い、夜にいざなう妖精の話は各地方に存在する。その怖い方の妖精の体現が今日のアイリスらしい。
「全く、なんで俺が……」
 そんな意気揚々と駆け出す脅かし役、必然的に最後尾にいるのはやる気のない人物になる。カゲリであった。
 彼は監視塔をその怪力だけでなぎ倒す黒騎士、そして戦う獣となってしまった燃衣。
「……コ、殺ス……殺ス殺ス……ッ! ……ガァァアアアアアアアアアッッ!」
――弱いな……
「そら、どうした塵共。逃げるか? 逃げ道は……ああ、あるな。たった一つだけ」
 ストゥルトゥスと一体となったニウェウスはご機嫌で半殺しのPCの山を築きあげながら先に進んでいく。
「逃げられるものなら逃げてみろ。タイムアタックとか言うやつか? そういうのが好きなのだろう、貴様等」
 そしてその暴虐の矛先は工場地区へと向く。
「来たようね……みなさん」
 そんな工場地区の中心を駆けながら街中に向かうのは構築の魔女。
 そして、その周囲を固めるのは彼女の部下『魔女の私兵』たちだった。
「いま、この都市は危機に瀕しています。どうか逃げてください。アクセスポイントまで」
 そんな構築の魔女の言葉に従うように私兵たちは住民の避難誘導を勧める。
 

第二章 闇につかまれる前に

 町の中心はまだ普段と変わらない日常を保っている、電話という機能がないこの世界の情報伝達は想像を絶するほどに遅い。
 特に噴水広場周りに集まった人間たちはのんきにアイドルライブのビラなど眺めて、可愛いと口々に言っている。
 危機感はまるでなかった。
 そんな会場にキーンとハウリング音が響く、その中心、ライトアップされたステージの上には和装でマイクスタンドに手をかけた少女がたっていて、独特の柔らかい笑みを周囲に振りまいている。
「みなさん集まっていただいてありがとうございます、さっそくですがこの町は危機に瀕しているの」
 そんな少女の訴えに足を止める人々もいれば、興味を示さないものもいる。
「杏樹の声が遠くに届くように、歌と音で届けるの、だからみんなは杏樹が示す方に逃げて」
 かき鳴らすサウンド。
「女神の使者、杏樹の歌、聞いてください、です」
「黒い予感が近づいてくる。
 世界の終わりの鐘が鳴る
 でも大丈夫
 素敵な女神が君を助けてくれるよ」
 人々が口々に感想を漏らし始めた。

「何を言ってるのあの子?」
「でも歌はうまいよ」
「終わりって」
「歌の世界感だろ、創作物だよ」
「けど光の女神さまってたぶんこの世界の神様のことでしょ?」
「グロリア社のイベントかなにかとか……」
「そんなことよりあの子可愛いな、なんて名前?」

 そんな観衆のざわめきを力に変えて、今日まで頑張って練習してきた曲を歌う杏樹。
「さあ行こう
 女神の楽園へ
 女神を賛美しつつ」
 そう指でアクセスポイントを指さすと観客の何人かがそちらを向いた。 
「意外と客が逃げていかないなぁ」
 ホロキーボードを奏でながらアルトが飛んでくる。避難勧告をしながら町を練り歩き、杏樹のもとに合流してきたのだが。
「あれは、女神さま!」
「本当にいたんだ」
 この世界の芸術の女神を模したアルトの姿にくぎ付けになる一同。
「何かのイベントと勘違いしているみたいね……」
 だが、注目度が上がるのはとても良いことだ。そうアルトは考え、己のピアノ力全てを杏樹にささげる。
 そしてコーラスを追加、杏樹の声に厚みを持たせる。
 そんな会場に合流した構築の魔女は一瞬盛り上がり具合に驚くも。周囲を警戒していたβ班γ班の班長を呼び寄せ、作戦手順を確認する。
「時間がありません、皆さん成すべきことは理解していますね?」
 部隊員全員の応じる声が聞こえる。
「敵の先兵は西のエリアに到達しました。進路上にあるすべての者をなぎ倒しながら進んでいます」
 魔女はζ班、η班から情報を受け、全部隊への指令を修正する。
「プランはA-2に変更」
「了解です」
「了解しました」
 隊長格が全員頷くと構築の魔女は町を駆けはじめた。

「愛しき人の子よ! 国境付近のアクセスポイントから避難が可能です!」

「我らは女神の意志に従う聖堂騎士です! 声が届いたなら行動をお願いします! 繰り返します!」

 そんな構築の魔女がすれ違い市街地の方へ、それをG―YAは見送った、彼が目指すのは混乱のさなかも沈黙を守る王城である
(粉々になった夢の欠片を握りしめる事しかできなかったあの頃)
 そんな民たちを見下ろしG―YAは考えていた自分がどうすればいいか。
(自分の力で前に進めるこんな世界に憧れたんだ)
「みんなで作り上げてきた、こんな素晴らしい物をこの手で壊すなんて……。なぁ何かほかに道があるんじゃないか? このままじゃあの人たちの好きだって気持ちも壊してしまいそうで」
 そう目を伏せたG―YAの手をまほらまが引いて、そして言った。
「大丈夫よ、あなたができないなら。私がやるから」
 直後共鳴の光、G―YAの意識はまほらまに飲まれることになる。
 そしてにやりと笑った彼女は。左右を駆け抜けようとした衛兵NPCを全力で吹き飛ばした。
「市街地での爆破を確認、しかも同時多発的です」
 同時刻、ついに市街地への攻撃が始まった。
 それを構築の魔女に告げたのはδ班、ε班の面々。ついに現実のものとなった恐怖、それに駆られるように悲鳴を上げて民衆たちは逃げ惑う。
「こちらの道は安全です! 郊外は我らの仲間が確保しております! 慌てずに移動してください!」
「現状を報告してください」
 構築の魔女はアイドル組のすぐそばで控えながら情報を集めていた。
「アクセスポイント反対側の西区から敵が」
「黒い、黒い甲冑と、あれは? 少女、うわあああああ」
「応答してください!! ε班! 通信途絶……。そんな進行が速すぎる」
 そんな構築の魔女を見て、何事かを察したPCたちは、親しいものを連れて東側のアクセスポイントを目指す。
 その東側の空に、突如はじけたのは桃色の光。
 鮮やかな翼を翻して、天使のような少女が空を舞っていた。
「私たちが誘導するから逃げて、早く」
 そう彼女が手を振ると、背中に生えたビット、そして小さな妖精が人々の先を示し進み始めた。
「あれは女神さまの妖精だ」
「癒しの女神さまだ!」
「お集まりのみなさん、私の話を聞いてください」
 杏樹のステージに降り立ち、周囲の人間に告げる。
「異界の魔王が攻めてきています。女神は貴方達と共に戦います」
「みんな、これは本当なの」
 杏樹が告げる。
「西から敵の軍勢がせめてきてるのよ。だから」
 アルトが精いっぱいの思いを込めて叫んだ。
「国境付近に離脱魔法陣を敷きました。安全な場所に繋いであります。一人でも多く逃げて下さい」
 その直後だった。降り注ぐ銃弾、斬撃の嵐、そしてステージ中央に獣のような男が飛来する。
 燃衣だ。
「私の精霊たちが……」
 澄香が唖然とつぶやいた、その視線の先にはカゲリ。彼が妖精を打ち落としているのだろう。その視線に気が付くとかげりは真っ直ぐ澄香を見つめた。
「こんな茶番はとっとと終わらせるぞ」
 それは紛れもない本心だが、周囲の人間からは、この世界を終わらせる的意味合いに聞こえた。
 震えあがるPCたち、だから女神陣営も頑張らないといけない。
「ここから先には行かせませんよ」
 そんな悪の軍勢の前に、一人立ちはだかる澄香
「だめよ姉さん!!」
 そうアルトは叫ぶ。ちなみに、芸術の女神は癒しの女神の妹設定である。
「あなたは私の意思を次いで、大丈夫きっと私も追いつきます」
 そう優しく、諭すように澄香はアルトに告げるが、その声を嘲笑うように少女が一人姿を現した。
「はたしてそれはどうかしらね」
「なんで……」
 アルトが目を見開いた、そこにいる少女の姿に見覚えがあったからだ、だがその少女はこんな禍々しい姿はしていなかった。
 そしてその姿に驚いたのはPCたちもだった。
「あ、あれは」
「救世三聖神の末妹、豊穣の女神さまじゃないか!」
 そう、救世の女神は三人いる、癒しと芸術、そして豊穣。
 その女神がなぜか敵側にいた。
「ハルカ、なぜ裏切ったのですか!」
 澄香が叫ぶ、それに春香は引きつった表情を浮かべながら答えようと口をもごもごさせる。
「えっと……」
 そんな春香に歩み寄り、燃衣が何事かを耳打ちした
「こ、こういう時はね…モニョモニョ…とか大袈裟に言うんだよ!」

「私はもうあなた達をみかぎって。そう。こちら側についたのよ。闇の軍事にね!!」

 たどたどしい口調に笑いを抑える、燃衣。
「もう! 燃衣さん! じゃなかった、ミフューネ! 笑ってないであいつらを無に帰して!」
「貴女の好きにはさせませんよ!」
 その澄香の声で我に返った燃衣は再び狂気を瞳に宿らせて吠える。
「……グ、ガア……ォォオオアアアアアッッ!!」
「私達も加勢しますよ」
 澄香の背後で、構築の魔女は静かに告げた
「αチーム」
「何なりと」
「私たちは民衆の盾になりましょう」
「我らの命は御柱と共に……愛しき命を救う為に捧げる所存です」
「御託はもううんざりだ、とっとと終わらせるぞ」
 カゲリは妖精を打ち落とした銃を今度は澄香に向けて告げる。
「負けないの、みんな私たちをしんじて!」
 そう高らかにサウンドを響かせたのは杏樹。
 戦いは激化の一途をたどる。

 避難率15%

第三章 城塞にて

「今回、アルマギノミコンは置いてきた。武器は銃のみ。あの方になりきるわ……! ウフフフフ♪」
――スイッチ入っちゃったわね……
 そう異様なテンションで城に迫るのは杏奈だった、その手の魔導銃は絶え間なく火を噴き、NPCたちを屠っていく。
 その半歩後ろに下がってまほらまは待機していた。黒いローブを羽織り、城砦を見あげる。
 その時城に動きが見える。こちらを迎撃するために運ばれてきた砲門は合計十五、しかしそんなものソフィスビショップの前には無力である。
「さようなら」
 にやっと笑い、銃弾を放つと、それは城塞を破壊した。それと同じ攻撃が何発も降り注ぐ。
 遠距離攻撃はできない、そう判断したのか直後開く城門
 だが、接近してくる騎士NPCも冒険者PCも全てヴァルキュリアの一刀で切り伏せられてしまう。
 鮮血がローブを彩った。
「目標を城に近づけるな、王妃様がおられるのだぞ」
 その号令と共に放たれたのは空を埋め尽くすほどの矢。だが二人ともそれを避けない。
 そして、避けることなくにやりと杏奈は笑った。
 そしてまほらまは城内に突入。薄く笑みを浮かべたまま城壁内のNPCをテクスチャへと変えていった。
 さらに前進すると迫撃砲の弾丸がまほらまの足元を吹き飛ばし。直撃は避けられたものの、意志や砲弾の破片が体にめり込んで大量の血を流した。
「人間を切り刻むこの感覚をあたしは知っている……みたいね」
 そんな彼女にきりかかってきた戦士の剣。それをはじきあげると、その喉元に刃を当てる。
「終りね」
「それはこっちのセリフだ!」
 見れば杏奈とまほらまを包囲するように屈強なPCたちがあたりを取り囲んでいた。
 しかし彼らはこれまでのPCとは趣が違う、ワンオフの装備に身を包みレベルも遥かに高い、おそらくこれが攻略組と呼ばれる、この世界のトッププレイヤーだろう。
「俺ごと! やれ!」
 そのトッププレイヤー四人が同時に、己の最強技を放った。
 雷鳴と、地を割くほどの斬撃、雨のような鉛玉に、浄化の閃光が柱のようにそびえたつ。
「やったか?」 
 土煙が静まった後、戦場の中心を見て見れば、確かに意識を失った杏奈とまほらまがいた。
「魔王と戦うときのとっておきにしておくつもりだったんだがな」
 そう一際巨体の勇者が、二人に歩み寄ったその時である。
「あはははははははは!」
 まほらまが瞬時に動いた。
 その勇者の握る剣を奪い取り、その切っ先を首に当てる。
 戦場にどよめきが走った。
「うふふっ聖剣で刺貫かれる勇者……無様よねぇ? あーはははは」
「ぐ、お前たちの望みはなんだ」
「姫に逢わせなさい……」
 そう告げると勇者に先を促し、まほらまは杏奈に告げる。
「ここはまかせたわよ」
「どうぞ、ご自由に」
 獲物が増えたとばかりに嬉々とした笑みを向け杏奈はまた殺戮に興じる。
「ウフフフ、こんなものじゃ、私は倒せないわよ?」
 杏奈は次々とPC、NPCを打ち抜いていく。
 時に二丁拳銃のPride of fools、時に魔導銃と持ち替えた。
「今度はこちらのターン。……さあ、楽しみましょう……!」
 怯えるルナ、その声に我に返った杏奈はNPCの一人を掴みあげた。瞳が真紅に光る。
 対して王室にたどり着いたまほらまは、この国の最高権力者である姫と会合する。
「そとの衛兵はどうしたのですか?」
「ここに」
 そうまほらまはその手にぶら下げた二つの死体を投げた。
「なぜかしら、こういう行いが、馴染む……」
 記憶は無くても魂で感じる高揚感。血にぬめる剣を握り直し姫へと迫った。
「これまでどれほどの命を奪ってきたのです?」
 姫はおびえながらもまほらまに問いかける。その言葉が重く胸に響いた。
「貴女には、関係のないことよ」
 そう告げてまほらまが姫に手を伸ばそうとしたその瞬間である。
「それだけは許さん!」
 満身創痍の勇者がまほらまの背に刃を突き立てていた。
「ふふふ、それでいい」
 そうまほらまは小さく笑った瞬間、その剣から光が放たれた。
 その剣に隠れるようにまほらまはローブを脱ぎ捨て、そして純白のプリンセスドレスを見せた。
「目が覚めました、ありがとう勇者様」
――おい、なんなんだこの状況は。
 そして突如目覚めさせられるGーYA。
――あとはよろしくね。
 そう状況も詳しくわからないうちに丸投げされることになる。
「と、とりあえず逃げましょう」
「ああ、あんたがもとに戻ったとして、あの女とやりあうのもまた死にいくようなもんだ」
 GーYAは思わず苦笑いをこぼし、屋根つたいに脱出する提案をした。
 そしていざ外に出て見れば、それはそれは奇妙な光景が広がっていた。
 清らかな音楽が町いっぱいに流れている、その源は大行列の戦闘、黒髪の少女だ。
 そうアイリスのパレードが城壁の前まで来ていたのだ。
 彼女の歌は厚みを増している。
 周囲には無数の光の粒が舞っている。それをコントロールするのは奏輝石『エイジス』。大粒のダイヤモンドが奏でる幻想的な音色は人の自我から理性を奪っていく。
「ああ、アイリスさん。そちらはどうです?」
「あらかた、片付いたよ。城壁内も落ち着いたようだね」
「ええ。全員皆殺し(NPC)しました」
「こちらも皆殺し(NPC)にしてきたよ」
 アイリスと杏奈は仲良く物騒なことを話している。
 そんな光景を城の屋上から眺めているGーYAとPCたち。
「なんだこれは……」
 この世界はどうなってしまっているんだ。そうその場で全員が唖然とする。
「新たな仲間がやってきた! ようこそようこそ私たちのパレードへ」
 アイリスは楽しそうにNPCの残骸をダンスパートナーに舞って見せた。
 クルリクルリと舞うさまは美しかったが。
 その列が通った街道は死体であふれていく。
「クルリクルリ! ゴキリゴキリ! ゴキゴキグシャグシャ新しい音が加わった」
――ねぇ、私帰っていい?
 ルナがあんなに問いかけるも、杏奈は甘い声で。だーめと言った。
「さぁさぁ、踊ろう踊ろう皆で踊ろう! ピチャピチャトントンピチャピチャトントン赤い雨が降ってきた新しい音が増えてきた」
「貴方達もこうなりたいかしら?」
 そう問いかけるとPCたちは身支度を整え始める。

四章 悪化

 噴水広場の戦いは激化していた。
 圧倒的力を振るうカゲリの前に澄香は破れ横たわっている。
「逃げなさい。そして何時か戻って来なさい。この世界を取り戻しに」
 澄香がそう呻くと、杏樹が助けに入る。
「女神さま!」
「邪魔だ!」
 やすやすとその右手刀で腹部を貫かれる杏樹、絶望に染まった表情で澄香は言った。
「アルト、みんなをお願い……」
「いや、まだだ」
 そうカゲリが告げると、その背後から世界は塗り替わっていく、まるで地獄のような熱量、そして指先もみえない闇がせり出してきた。
 それは澄香と杏樹の体を浸食していく。
「痛くないの!」
――痛てぇ! が、ここは我慢だぜ。
 観客がどよめいた。
 体中血まみれで、腹部を貫かれたはずの少女が起き上がったのだから当然だろう。
 そして杏樹は血まみれのままマイクに手をかけて、カッと目を見開いた。
「これでいいの? ゾンビ系?」
 阿鼻叫喚の声を上げ、逃走を謀るPCたち
「どこへ行くの?杏樹の、お友達に、なる……です?」
――ゾンビの生け贄になりたいのか!!
 榊のデスボイスに追い立てられるように人民は東へ。
「まって! 待ってほしいの!」
 そう手を伸ばす杏樹はもはやホラー以外の何物でもない。
「どうして……皆さん、逃げ出すのでしょう?」
――おそらく、あちらの方が原因かと……
 そう榊が示す先には。
 むしられた羽をむなしく揺らす、代わり果てた女神の姿があった。
「澄香ちゃん」
「あ゛~。あ゛~」
 虚ろな瞳で歩き出す澄香、実は体の主導権をクラリッサに明け渡しているためこうなっている。
 ちなみにクラリッサはあまりの空腹に切なさマックスである。
「何で……みんなどうしてっ!!」
 そんな代わりはててしまった仲間たちの姿を見て涙をこぼすアルト。
「でも、私は……」
 本来であれば、姉の無念を背負って悪しき者と戦うべきなのだろう、だが、それがアルトにはできなかった。
「あたしは……戦いたくなんかない!!!」
 そのアルトを見て好機と思ったのかカゲリはアルトを指さして澄香に命じた。
「襲え」
「あ゛?」
 カゲリの命令に振り返る澄香。
――すでに人語を解していないようだな……
 ナラカが残念そうにつぶやいた。
「こんなんで本当に大丈夫なのか?」
 その直後だ、瓦礫を吹き飛ばして黒騎士が現れる。
 その光景を眺めながらニウェウスは笑っている。
「くくく、ははははは、あはははははは」
「だめだ、あっちには抜けられない、みんな東を目指すんだ!!」
 魔女の私兵たちが吹き飛ばされながらもPCたちの避難誘導を続けた。
「愉快、愉快。実に無様で痛快な宴ではないか!」
 ニウェウスはあたりを見渡して告げた。
 演奏を再開した杏樹、その音色に悲鳴が加わって響く。
「ははは、良い音色だね。混ぜてもらおうか」
 そこに合流したのはアイリスと杏奈である。
 トリプルカディーネ発動。NPCの意識が軒並み奪われていく。
「友達になろうよ
 この痛み分かち合って
 楽しく踊れば
 皆幸せだよ」

――お前もゾンビ人形にしてやろうか!!

 榊のデスボイスが広場内に響き渡ると、自然と阿鼻叫喚が静まっていく。
 代わりに洗脳されたNPCがアルトを取り囲んで逃さないようにとしせんを送る。
「お願い……みんな目を覚まして、あたしはあんたとなんか戦いたくないんだよ!! だから……」
 その直後、背後の壁を粉砕して黒騎士が現れた。
「アールトォ」
 ニウェウスが笑うと、黒騎士に捉えられるアルト。
「きゃああああああああああ」
 最後の希望も捕えられてしまった、町を絶望が包む。
「痛い! いたいよ」
 泣き出してしまうアルト。 
「くはははは! 見ろ、この無様な姿を!」
「もうやめて!」
 直後ウェポンズレインが発動、弾丸が雨のように地上に降り注ぐ、これこそ女神の悲しみの雨、涙の雨である。
 と言ってもそれも暴虐の嵐に変わりないので、市民の恐怖の対象にであった。
「いいぞ、気に入った。貴様は持ち帰って玩具にしてやる。これからも、私の為に泣き続けろ……!」
 その地獄絵図の真ん中で、ついに善戦むなしく構築の魔女と、その私兵たちは倒れようとしていた。
「あぁ……愛しき人の子よ……どうか、貴方達は生きてください」
 静まり返った町に狂気の音がこだまする。

   *   *

 命からがら逃げだした勇者と姫は、ズタボロになりながらアクセスポイントにたどり着いた。
 そこには魔女の私兵、最後の生き残りであるκ班が控えており、ポイントを守っていた。
「ここは死守しろ!抜かれれば先はない!
王女はアクセスポイントまでたどり着いた。
――フォローよろしくぅ
 そうまほらまに押し付けられたGーYAは、改まって二人に告げる
「お……ワ……タクシは世界を具現したものです
守護者である女神の幾人かは既に魔王の手に落ちた
黒魔力の浸食は世界を闇に変えてしまう……
愛してくれてありがとう! 門の向こう新世界で逢いましょう……またね!」

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

  • トップアイドル!
    蔵李 澄香aa0010
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281

重体一覧

参加者

  • トップアイドル!
    蔵李 澄香aa0010
    人間|17才|女性|生命
  • エージェント
    クラリッサaa0010hero002
    英雄|15才|女性|バト
  • 藤の華
    泉 杏樹aa0045
    人間|18才|女性|生命
  • Black coat
    榊 守aa0045hero001
    英雄|38才|男性|バト
  • 燼滅の王
    八朔 カゲリaa0098
    人間|18才|男性|攻撃
  • 神々の王を滅ぼす者
    ナラカaa0098hero001
    英雄|12才|女性|ブレ
  • 深森の歌姫
    イリス・レイバルドaa0124
    人間|6才|女性|攻撃
  • 深森の聖霊
    アイリスaa0124hero001
    英雄|8才|女性|ブレ
  • 誓約のはらから
    辺是 落児aa0281
    機械|24才|男性|命中
  • 共鳴する弾丸
    構築の魔女aa0281hero001
    英雄|26才|女性|ジャ
  • カフカスの『知』
    ニウェウス・アーラaa1428
    人間|16才|女性|攻撃
  • ストゥえもん
    ストゥルトゥスaa1428hero001
    英雄|20才|女性|ソフィ
  • 紅蓮の兵長
    煤原 燃衣aa2271
    人間|20才|男性|命中
  • エクス・マキナ
    ネイ=カースドaa2271hero001
    英雄|22才|女性|ドレ
  • ハートを君に
    GーYAaa2289
    機械|18才|男性|攻撃
  • ハートを貴方に
    まほらまaa2289hero001
    英雄|18才|女性|ドレ
  • 世を超える絆
    世良 杏奈aa3447
    人間|27才|女性|生命
  • 魔法少女L・ローズ
    ルナaa3447hero001
    英雄|7才|女性|ソフィ
  • 残照と安らぎの鎮魂歌
    楪 アルトaa4349
    機械|18才|女性|命中
  • 反抗する音色
    ‐FORTISSIMODE-aa4349hero001
    英雄|99才|?|カオ
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