本部

図書室の悪魔

ふーもん

形態
ショート
難易度
やや易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
6人 / 4~6人
英雄
0人 / 0~0人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/09/14 20:46

掲示板

オープニング

 ――やや不可解な事態が校内で起こっていた。
 場所は夜も更けたとある学校の図書室。そこには学校の七不思議に似たよくある怪談話の類があった。
 残暑の名残りが未だ厳しい暑さをともなう9月の上旬――。
 とある本を手に取ろうとした少女はそこではたと気付く。
 何やら忌まわしい影の様なものが自分に纏わりついている事に……。
「キャアアアア!」
 実体のないその影は、正体不明のいわゆる幽霊の類だと噂されていた。
 しかし実際に人を驚かしたりはするものの、危害を加える事は一切なかった――と、人伝に言われている。
 俗に言うポルターガイスト現象やラップ現象等を起こす事は稀にあった。だからこそこの図書室には幽霊がいる等と言う噂が広まったのだ。
 果たしてその幽霊の正体は何なのか? 時は過ぎ去り、生徒達の記憶からもその面影はなくなりつつあった。

 だが、遂に事件は起こった。
 少女は夜の学校に忍び込み、どうしても読みたい本を手に取ろうとした。
 その刹那、彼女は闇の中に引きずり込まれたのだ。
 幽霊の正体はイマーゴ級の従魔だった。従魔の記憶はまだ定かでは無く、エージェント1人でも片付けられそうな位、弱かった。
 だが、少女が依り代としてその闇の中に引きずり込まれてからは分からない。
 従魔の動機も、目的も何もかもが謎に満たされたまま――

 ――その数日後。行方不明になった少女の捜索が始まった。

解説

 今回は割とありきたりな設定です。
 果たしてイマーゴ級の従魔の目的は何なのか? 少女が夜の学校に侵入してまで求めていた本とは何だったのか?
 少しばかりいわくありげな事態ですが、それらが交錯して物語は始まっていくものと思われます。
 相手がイマーゴ級と言うのもあり、英雄は無しでいきたいと思います。
 エージェント6人で試行錯誤し、問題を解決し打破して下さい。
 皆さんの参加をお待ちしております。

リプレイ

●序章

 学校の校舎の前で集合した6人のエージェント達。

「昔懐かしい学校の怪談と言う事だね。ふふ、物語の軸は一体どんなお話なのかな」
 木霊・C・リュカ(aa0068)はそう言いつつとりあえず昼間の調査へと出向いて行った。
 北条 ゆら(aa0651)に至っては事前に制服の貸与を申し出て許可を貰い、事前準備として通信機器や校内の見取り図、そして夜には夜食用のおにぎりをいっぱい持参する予定だった。
 彼女もまた校舎内にいる例の少女のクラスメイト達や担任等から聞き込みをしに目的の場所へと急ぐ。
「皆、久しぶり~&初めまして、宜しくな」
 少しゆるい感じで登場したのは犬か猫で例えたら犬――荒木 拓海(aa1049)だった。
「どこに行ったのか心配だね。早く見つけてあげないと……にしても、拓海さん。その少女は夜の図書室で何がしたかったのかな?」
 その皆月 若葉(aa0778)の問いに暫し思案してから、拓海はクネクネと何やら乙女の仕草で冗談半分に言った。
「……これってアレか? 憧れの先輩の卒アルの写真欲しいなーでも恥ずかしいから夜中にこっそり写メしちゃおうとか、恋が叶うおまじない系かな?」
「ちょ、それ誰の真似? ……く、くく……ははは、ダメだ……笑いが……っ!」
 我慢できずひとしきり笑った後、真剣な表情で若葉はこう言った。
「……はー。と、拓海さんのおまじないって線はあるかもしれないね。彼女の友達に確認してみるよ。皆またあとでね、情報収集頑張ろう!」
「おう! 何か分かったら皆に連絡入れる。後でな!」
 残った2人。暗峠 影明(aa4268)と黒鳶 颯佐(aa4496)もそれに続く。
「では、俺は昼間の図書室がどんなものなのか見ておくとしよう」
「文字通り、真相は闇の中……か。……一先ず、昼間はその女子生徒の……そうだな、近況と、近しい者についてでも情報収集してみるか」

●時刻――正午 場所――とある学校の教員室にて

「ああ、あの図書室の件で集まってくれたエージェントさん達か。今回は宜しく頼むよ」
 行方不明になった例の少女を救う為、とりあえず情報収集として昼間の内に学校内の職員室にやって来たのは計2名。
 リュカと拓海だ。
 他にもエージェントは校内にいたが、それぞれが別行動をとっている。
 少女の友人や担任の教師からの聞き込み、そして事件が発生した図書室において何が原因かを探る為に。
「ええ。もちろん」
「全力を尽くします」
 早速本題に入る。
「今回の依頼……まだ例の行方不明になった少女について。名前すら聞いていないのですが、少女はどういった方なのですか?」
 一見して頼りの無さそうなリュカだが、その真意を訪ねる心意気は鬼気迫っていた。本気で少女の事を心配しているのが傍から見てもよく分かる。
「ああ、そうだったのか。あの女子生徒の名は玉野美紀。学業優秀で女子バスケットボール部でも活躍している。校内じゃそれなりに名の知れた生徒だよ」
「失礼ですが、普段彼女はどんな生活を送っていましたか? 出来ればその性格や、何か最近悩んでいる事等あったのかどうなのか――?」
「――そう言えば……」
 ――と、そこで言葉を区切りその教員は目を細めて苦虫を噛み潰した様な、苦しい表情になった。何か隠し事――いや、言いたくない事でもあるみたいだ。
「何か、あるんですね?」と、そこで口を挟んだのは拓海だ。
「あ――ああ、実はここだけの話なんだが君達エージェントに話す分には問題ないだろう。最近になって彼女の様子が変なんだ」
「変――とは?」
「玉野さんは文武両道。それに以前は明るく何に対しても前向きな皆に好かれる良い子だった。最近では例の図書室も頻繁に利用していてね。それは誰もが感心したよ」
「以前は――と言う事は現在は違うんですね?」
「ああ。玉野さんは変わってしまった。とても暗い雰囲気を持つ様になり、何かに憑りつかれているみたいだった。いじめ等に遭っていなければ良いのだが……」
「それはいつ頃から?」
「噂によるとあの図書室に通う様になってからかな? やはりあの図書室には幽霊や悪魔の類が住みついてるのかもしれん」
「その噂話についてなのですが……」
 そこで話の腰を折ったのは他でもない拓海。
「この学校の生徒達にも噂は波及している様ですね。どれ位前からあったのか? その出現した時期とその時の状況等、詳しく教えてくれませんか?」
「確かあれはその昔、この学校が創立40周年を迎えた時だった。とある病弱な読書好き少女が例の図書室で非業の死を遂げた――らしい」
 因みにこの学校は創立してから60年以上の月日が経っていた。
「他にも、何かありませんか?」
「いや、これ以上は何も無い。彼女、玉野美紀に何があったのか? サッパリだよ」

●時刻――正午 場所――校舎内とある教室にて

 失踪した少女に関して、情報収集の為、クラスメイトや担任の先生に聞き込みをしていたのは――ゆら、若葉、黒鳶だった。
「玉野さんねえ……最近ちょっと様子がおかしかったかしら? あの図書室に通う様になるまでは」
 担任の教師は思案顔でそう言った。
「例の図書室に通う前はどう言った方だったんですか?」
 ゆらがそう問い詰めると――
「とても優秀な生徒でしたよ。向上心が高く明るく前向きな性格でね」
「玉野さんの好きな本の傾向とかって分かりますか?」
「うーん。そこまではちょっとね。プライベートに関わる事だから」
 ゆらと同じく若葉と黒鳶もクラスメイトから聞き込みを開始していた。
「玉野さんって、最近どんな様子だったか分かる人いる? 最近よく話題になる事とか、例の図書室に纏わる噂話、おまじないなんてものもあったりするのかな?」
「それにしても、その女子生徒のやる事はよく分かんねぇ。わざわざ夜に忍び込んでまで読まねばならねぇ本が、学校の図書室にあるのか?」
 その時――1人の女子生徒が手を挙げた。
「私、玉野さんのクラスメイト。いえ、親友です。美紀、最近様子おかしかったから私、心配で……調べてみたんです」
「――何を?」と、エージェント3人は声を揃える。
「この学校に昔から伝わる所謂、怪談話です。あの図書室には今から20年前に病弱の1人の女子生徒が倒れて、そのまま帰らぬ人となったんです」

●時刻――正午 場所――例の図書室にて

 影明は1人だけ先に図書室内を探索していた。少し後にはリュカとゆら、そして若葉と拓海とも合流する事になっている。
「どんな本があるかをメモでも取りながら棚別に記録しておくとするか。後々の探索に役に立つ事もあるかもしれんしな」
 そんな事を言いつつ影明きは1人、本のジャンル分けにメモを取りつつふと思案する。
(気になっていたのだが、行方不明になった女子生徒は普段から図書室に来る様な人物だったのか……それとも、偶々、夜に図書室に忍び込まなければいけない様な理由があったのだろうか……?)
「この辺りは正直、今の段階ではなんともいえないな。いかんせん情報が無さすぎる……。仲間が言っていたが、夜に図書室で何が起こるか、それを確かめてからだな」

「……なるほど。怪談話か」
 先程の4人から情報を照らし合わせて出た結論がそれだった。
 それに加えて影明の計5人は図書室の休憩スペースを陣取ってこれからの行動と問題の検証に当たっていた。
「どれだけ読みたい本でも夜に探しに来るのはちょっと不自然だよね。なら、よくあるじゃない。栞で無くしたくない、見られたくない物を挟んだまま返しちゃったりさ」
「件の本は……これかな? でもライヴスの欠片も無いんだよね」
「それにしても……何て事ない本だよね。どうやら拓海さんのおまじないって線は無いかもしれないね」
 SFらしからぬその本にライヴスゴーグルでその痕跡を確かめたが、やはりライヴスの痕跡は無かった。
 少女――玉野美紀の貸し出しカードがある事から名前と日付けで最近、読んでいる本はこれで間違いないはずなのだが……。
「これだけ本があると、誰も手にしない本もあるかもな……。もし、本に心が宿るとして、誰かに読んで欲しいと感じたならどうするだろう。何かしら思念が残った結果の従魔なら思いを遂げさせてやりたいが……」
 拓海はそう言うと、通信機で入手した情報を伝える。黒鳶だ。

 そして全員で夜の潜入に備え校内を巡回し、見取り図を把握。ゆらは深刻な面持ちで呟く。
「以前から本に纏わりつく幽霊は目撃されてたんだよね……少女は本に魅入られる何かを持っていたのかなー……」

●時刻――真夜中 場所――とある学校の例の図書室付近にて

 予め事件の詳細を綿密にチェックした結果――少女が行方不明になった時と同条件を予測し再現する事に成功。囮役はもちろん――
「夜の学校は怖いなー。何もなくてもびくびくしちゃう……」
 借りた制服を着用し、囮役で女子生徒の行動を可能な限り再現するゆら。
「皆で守ってるからね。安心して囮役宜しく」
「俺達もいるし大丈夫! 頑張ろう」
「ありがとう。たくみん、若葉くん。私、がんばる。頼りないけど……」
 そして彼女は図書室へと入り、当たりを付けておいた本の所へ行き、本を手に取ってみた。

 ――シン。しばらく静寂が続いた。
 リュカは沈黙を守り、若葉は予め暗さに目を慣らしておき様子を窺う。
 拓海は危険が及ばぬ様守り飛び出せる位置で隠れ戦論で準備待機。
 影明は例の少女を保護した場合に備えてすぐに病院への搬送が出来る様に前もって救急車の手配をしておいた。
 黒鳶は様々な疑問が飛び交う中、意識を集中させて戦闘準備万端。

 そしてそれぞれの思惑が交錯したその刹那――

「キャアアアアア!」
 他でもない囮役となったゆらの悲鳴が図書室内から響き渡った。

 従魔との戦闘が始まった。
 予想していた通り、従魔は予想以上にライヴスの量が少なかった。つまりイマーゴ級の従魔であり弱いのは明らかだった。
 しかし当然ながら皆は手加減をする気は無い。何せ、依り代となっている少女がいる限りいつ化けるかも分からない緊急事態だ。
 まずは当然の事ながら、ゆらと少女――玉野美紀の身の安全の確保が最優先だった。
 しかし例の黒い闇、そしてポルターガイスト現象がエージェント達の行く手を遮る。少女はその闇の中から姿を現した。意識を失っている様だが、他に異常な所はない。もちろん囮役となったゆらも無事だ。
 とにかく依り代となっている少女の身の安全の確保を最優先。図書室内での戦闘なので、なるべく蔵書等に被害が及ばない様にしたい。物損注意。
「皆、目を閉じて!」
 若葉がそう言って周囲にいた仲間に注意を喚起。それに応じたのを確認した直後、強烈な閃光が瞬間、図書室内を照らし出す。『フラッシュバン』だ。
 敵の従魔が怯んだ隙に、すぐさま少女に接近。敵を遠ざけ守った。
 拓海は従魔に対して容赦しなかった。
 間合いを詰めてスキルで一気に片を付ける為、『オーガドライブ』による防御を無視したライヴスを武器に集中させて攻撃。
「従魔さん。君が本当にこの図書室に潜んでいる悪魔なのかな?」
 影明は『フラメア』での近接攻撃中心。全長2メートルを超えるシンプルな槍で敵である従魔を圧倒。遠くへと退いた直後、『V‐2マグナム』で仕留めに掛かる。
「さっさとくたばれよ」
 最後に動いたのは黒鳶だった。
「後は従魔か……。今まで危害を加えてこなかったと聞いているが、何だって今回は……。その女子生徒でないとならない理由でもあるのか……? ……それか、その女子生徒でなければ……本か」
 従魔との接触を試みていた彼は少女を依り代にしているなら、会話が出来ると思ったのだ。それならまずは理由を聞いてみたいと思う所だが……。
「女子生徒に怪我させる訳にもいかねぇからな、成仏……成仏か? 違うか。……まあ、そういうのだ。そういうの、してもらわねぇとな。女子生徒、一般人だろう。代わりに俺を依り代にしろと言って、聞いてくれりゃ手っ取り早いんだがな?」
 しかし、その想いも虚しく、イマーゴ級の従魔は先程の連続攻撃により、遂に何も言葉を発する事無く倒れたのだった。

 一体今回の一連の事件。あるいは、従魔の目的は何だったのか――?

 ――少女、玉野美紀は呪われていた。その呪いの主は他でもない。約20年前にこの場所で非業の死を遂げた例の病弱な少女。
 その少女はやがてこの図書室に幽霊となって住みつき、自分が最期に手に取っていた本に呪いとなって憑りついた。
 そして10年、20年の歳月が過ぎ、その間誰もその本を手に取る事は無かった。その本が呪われている等誰も知る事も無かった。
 しかしそんなある日、偶然玉野美紀が手に取った書物――それが例の呪われた本だった。
 呪われた少女――玉野美紀はこうして本来の自我を見失い、最近になって様子がおかしくなったのだ。夜中の学校に忍び込んだのも例の本に魅入られた呪いによっての行動だった。
 だが……その事実を知る者は遂にいなかった。ある1つの存在を除いて――
 それは他でもない。例のイマーゴ級の従魔だったのだ。
 従魔の意識は混在し、過去の異世界での記憶も定かでは無かったが、その従魔は少女を呪縛から守る為に敢えて少女の依り代となって異世界へと引きずり込んだ。
 それは例の幽霊の呪縛から身を守るイマーゴ級の従魔の唯一の手段。そう――少女が闇の中に引きずり込まれたのはこの様な経緯があったからだ。
 図書室の悪魔の存在はこうしてエージェント達に葬り去られる事となった。だが――

●時刻――明け方 場所――戦闘終了後の図書室にて

 少女は目を覚まし、そこには6人のエージェント達が立っていた。
「おはよう御嬢さん、身体は大丈夫? 探し物は見つかりましたか」
「とにかく無事で良かったよー。もう夜の学校に忍び込んじゃだめだよ。おなか空いたでしょ。おにぎり食べなー。皆も」
「うん、何はともあれ無事で良かった」
「何かを強く思っての行動だろうが、周りの人も君を思い心配してたよ」
「それにしても何の為に夜、学校に行ったんだ?」
「昼間に読めば良いんじゃねえのか……?」

●終章

「――私、夢を見ていたみたいなんです」
 全てが終わった数日後。少女は誰ともなしに話しかけた。場所は例の図書室――あの悪魔が住んでいたと思しき場所で。
「内容は……そうですね――とっても怖い夢だった。もう2度とここに来る事はないかもしれない。だけど私はあなたのお蔭で救われた事は一生忘れません」
「従魔さん。ありがとうございました」
 もちろんそこに従魔の影などひとかけらも存在しなかった。(了)

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 『赤斑紋』を宿す君の隣で
    木霊・C・リュカaa0068
    人間|31才|男性|攻撃
  • 乱狼
    加賀谷 ゆらaa0651
    人間|24才|女性|命中
  • 共に歩みだす
    皆月 若葉aa0778
    人間|20才|男性|命中
  • 苦悩と覚悟に寄り添い前へ
    荒木 拓海aa1049
    人間|28才|男性|防御
  • エージェント
    暗峠 影明aa4268
    人間|17才|男性|攻撃
  • 孤高
    黒鳶 颯佐aa4496
    人間|21才|男性|生命
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