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祝・暴露大会~秘密持参でご参加ください~
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最終発言2016/09/06 11:26:21
オープニング
●誰にだって、秘密がある。
そして、人は秘密を隠すのである。
ある者は押入れの奥に、ある者は屋根裏部に、ある者はベットの下に――。
「おっかしいな。ここに閉まったはずやのに」
正義は、自分の部屋を掃除していた。そして、ベットの下の宝物の存在を久々に思いだした。小鳥が来てから「気分を害するかな?」と思い、しまっていたAV(アニマルビデオ)は正義の宝物である。
「DVDなかったころのテレビ番組やからな。あ~、思いだしただけでたまらへん」
正義が幼い頃にやっていた、動物番組。
今はもう番組はやっていないが、正義はその番組のファンだった。良質な動物クイズ番組で、動物の習性を学ぶためのミニドラマコーナーもあった。視聴率低迷のために何年も前に終了したが、犬特集のビデオはこうやって今でも大事にとってある。たしか、実家にはもっとあるはずだ。
「今さら、言われへんよな」
そう、自分は犬派なのだ。
飼い主に忠実なところとか、たまらなく好きなのだ。
だが、小鳥とパートナーになったとき自分が犬派なのは隠そうと正義は思った。自分の趣味趣向は変えられないが、それが彼女を不快にさせるかもしれない。たとえ小鳥が、猫なのか小鳥なのかいまいち不明な存在だとしても。
「今は、小鳥もおらへんし。ちょっとぐらいなら、見てもええよな」
番組内でやっていた柴犬と若奥様のミニドラマだけを集めたビデオを編集して作ったはずだ、と正義はベットの下に入れておいたダンボールを漁った。
「ありゃ、記憶違いやったかな?」
たしかに入れていたはずなのに、お気に入りのビデオはなくなっていた。
●秘密を暴きたくなる
『ゆるせないです』
小鳥は、珍しく怒っていた。何に怒っていたのかというと、正義が隠していた小鳥のクッキーを食べてしまったからだ。小鳥はその場で怒ったが、正義は目を点にして「昨日ダイエットするって言ってたやん」と言った。
たしかに、昨日はそんな事を言った。
だが、今日はクッキーの気分だったのである。
『正論ばっかりいう、正義なんて嫌いです。ふふーん、小鳥は敵に回すと恐ろしい奴なのですよ』
小鳥の手には、正義のAV(アニマルビデオ)。ちなみに、タイトルは「柴犬と奥様」。若干タイトルがいかがわしいのは、当時の番組制作者のせいだろう。
『今日は英雄同士で、腹割ってパートナーの恥ずかしい宝物をさらすのです!! そのために、HOPEの会議室も借りてお菓子もジュースも買い込んだのです』
解説
英雄同士で、パートナーの恥ずかしい宝物あるいは恥ずかしい話の暴露大会をしてください。
※このシナリオでは、英雄がメインになります。そのため、プレイングは英雄中心のものをよろしくお願いします。
・場所……HOPE支部の会議室です。作戦会議と支部の人には言っておいたから、大抵のものは言えば貸してくれると思うです。あっ、声ととかは漏れませんのでご心配なく。
・時……小腹が空く午前三時です。オレンジジュースとクッキーなら買ってきました。
・小鳥が準備しているもの……ビデオが再生できるデッキとテレビぐらいしかないです。あと、正義のAVがあるです。
・正義……小鳥の予感がたしかならば暴露話が終わった頃に皆さんのパートナーを引き連れて、正義が小鳥たちのことを探しにくるような気がするです。正義は、小鳥がビデオを持っていると思っていないからびっくりすると思うですよ。
リプレイ
9月の某日。
深夜のHOPEの会議室には、光が灯っていた。テーブルの上にはジュースやお菓子といった、ダイエットの天敵が並んでいる。
『ふっふっふ、パートナーの秘密を丸裸にするです。人のクッキーを勝手に食べる正義の恥ずかしいビデオも上映してやるです』
パイプ椅子に座った小鳥に、そっと紅茶とマフィンを差し出す人物がいた。キュキィ(aa1696hero001)である。
『小鳥様心をお沈めください。紅茶とマフィンにございます』
『あと、ショートケーキとチョコケーキも持って来たわ。ほら、小鳥も食べなさい。クッキー食べられずに悲しかったのでしょう? クッキーとケーキ、どっちも好きなだけ食べて良いのよ』
レミア・ヴォルクシュタイン(aa3678hero001)も持ってきたお菓子をテーブルに並べて、深夜だというにすっかり優雅なお茶会の準備が整う。ヴァレンティナ・パリーゼ(aa0921hero001)もチョコチップクッキーをお供に、紅茶の香りを楽しむ。
『……徹夜で、卓上戦戯の作戦相談をするのかと思ったぞ』
リーヴスラシル(aa0873hero001)は、はぁとため息をつく。真面目な会議だと思ってきてみれば、単なる契約者なしの井戸端会議である。
『リーヴスラシルのところは、秘密なんてなさそうだな。俺のところのお譲は……すごいぜ』
榊 守(aa0045hero001)は疲れたような顔で、ニヒルに笑っていた。
疲れているのか、恰好をつけたいのか、非情に判断に困る表情である。
『人が隠しておきたいと思う程想いが強いものは、どういった物があるのか……。興味は、ある』
オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)は、配られた紅茶を飲みながらも難しい顔をしていた。視線の先には、ガルー・A・A(aa0076hero001)の姿があった。もしもガルーがデリカシーなく、紫 征四郎(aa0076)の秘密を明らかにしようとしたら自分が力技を使ってでも止めなければならない。ガルーはというと、さっそくスマホを取り出した。
『あいつ、去年からちょくちょく電子ピアノの練習をしてるんだけど……。この間、こんなのを聞いてな。いやー、手が勝手に録音を』
ピッ、と再生されたのは征四郎の声であった。
一緒の聞こえるピアノの音色は、征四郎の伴奏なのだろう。去年から始めたわりには、上手い伴奏が奏でるのはクラシックではない。もっとポップな曲調だ。
「♪ よるのやみにひそむかげー。だれかのひめいが きこえてくるぞ。愚神☆ しょうめつ。せいぎのけんがー火をふくとき。みんなのあしたをまもーるー」
どことなく、アニメの主題歌を思わせる歌であった。
だが、こんな歌のアニメが放送されていただろうかと一同は首をかしげた。
「せーいぎのみかたー。つよいぞ。せいしろー!」
ぷっ、と誰かが噴出した。
年長者の意見としては「やっちゃったかー」である。おそらく、ある程度うまく弾けるようになったから勢いで作詞作曲してしまったのだろう。
『最近両手弾きできるようになったとかで、家に人がいない時に適当に弾いて歌ってる。多分、今後日の目を見ることのない自分のテーマ曲。いやー、本人はばれてないって思ってるみたいだけど、ほら! このまま墓に持ってくのは、ちいと勿体無いだろ。始めたばっかで、独学にしてはよくできてると思うんだよな!』
ガルーは娘の成績を自慢する父親の顔をしていたが、征四郎がこの場にいたら叫びだすほどに恥ずかしがるであろう。
『いつかプリプリの主題歌とか作曲してくれるかもな』
『……それだけは、絶対にありえない』
数々のプリプリの悲劇を見てきたオリヴィエは、やたらと冷えた声で言った。
『ガルー殿は、音声か。私のは、映像だ。テレビを借りるぞ』
リーヴスラシルは、再生したのはアニメであった。てっきり、実写で月鏡 由利菜(aa0873)の恥ずかしい映像が流れると思った者たちは、ちょっと驚いた。
『以前、我が主がグロリア社の季節島キャンペーンの買い物でプレゼントされた代物だ。HOPE芸能課制作のアニメ……内容が気になっていた者も多いはず』
リーヴスラシルの説明を聞いていたヴァレンティナは首をかしげる。
『アニメなの?』
ヴァレンティナの疑問ももっともであった。
オープニングは普通のアニメだったが、それ以降は紙芝居である。
『オープニングと変身シーン位しかまともに動かない……他は、ほぼ紙芝居だ』
リーヴスラシルの言葉に、一同は驚きに包まれる。
ほぼ全編紙芝居!?
『ざ……斬新すぎるだろ』
榊は、ごくりと唾を飲む。
アニメの専門学校の卒業制作だって、もうちょっとマシなものを作るだろう。
『主役の声優と主題歌は、新人としては頑張ってはいるな……』
『……次は征四郎に歌ってもらうか?』
リーヴスラシルは、思わずガルーの言葉にうなずきそうになった。
『劇中で堂々と「細かい設定は特典のブックレットを見てね!」……設定説明を丸投げか』
特典つくんですね……キュキィは人知れず思った。
『制作期間が短かっただろうことは、容易に想像がつく』
予算もなかったのだろう、と守銭奴な榊は思った。
『このアニメがカオティックブレイドのイメージ向上へ本当に効果があるか、疑問なのだが……』
一般の人間もみれるの? とレミアも驚く。
『HOPEに予算がないと思われそうよね』
ヴァレンティナは、次は私の番とDVDを再生する。
今度はアニメではなくて、実写である。映っていたのは、テレビを熱心に見つめる少女――夢洲 蜜柑(aa0921)を隠し撮りした映像である。映像のなかでテレビに映っているのは、ニュース番組だ。ヴァレンティナと共鳴した蜜柑たちが映っているらしく、テレビのなかの蜜柑は大変ご立派な体つきをしている。
『ほれほれ。映像の中でで共鳴して、ばいんばいんの何頭身だかになって戦ってるじゃん?』
実はあれは蜜柑なのよね、ヴァレンティナはニヤニヤしていた。彼女は、奇しくも映像のなかの蜜柑と同じ表情をしていた。
『うわー、もう、ニヤニヤしちゃって。そんなに脱ちんちくりんが嬉しいのかしらねぇ。ヤバいわー、マジ面白いわー』
映像のなかの蜜柑が、立ち上がり何やらポーズを決め始める。膨らみはじめた胸を精一杯よせてあげて、悩殺ポーズの練習中らしい。残念ながら、現段階では悩殺される人間は非常に少ないだろう。そして、悩殺される人間には近づかないほうがいい。
『きたわー、キメ顔でポージングきたわー。どこのグラビアアイドルの真似だかしらないけど、無い胸精一杯寄せてポージングしてるわー』
ヴァレンティナは、腹を抱えて大爆笑をしていた。
蜜柑と同じ年頃のオリヴィエに、ヴァレンティナは『セクシーに見える?』と尋ねてみる。オリヴィエは無反応であったが、何故かガルーが『あと、十年経てば余裕で口説ける』と自信を持って答えていた。
『マジで10年経ったら、ばいんばいんになるって信じてるっぽいわねー。つか、腹筋が死にそうなんだけど。何度もこの映像観たのに毎回ヤバいわ。普段はスマホで観るんだけど、少し大きい画面に映すと破壊力上がるわね。動画投稿サイトに上げたら人気爆発よ、コレ』
笑い死にしそうなヴァレンティナを見ながら、レミアは『今でも十分に需要があると思うわよ』とつぶやく。彼女のパートナー狒村 緋十郎(aa3678)が、まさにその口である。
『緋十郎、20代後半位に見えるけど、実際のところは35歳のオッサンなの。その癖に外見年齢10歳の愚神に惚れてみたり…そもそも外見年齢13歳のわたしにプロポーズしてる時点で、よくよく考えれば犯罪よね』
レミアが英雄でなければ、緋十郎は逮捕されていたことであろう。そう考えると、緋十郎はレミアが英雄であったことを感謝しなければならない。
『蜜柑は年相応でかわいいもんだろ。俺のところのお嬢は……ひどいぜ』
榊は、深く息を吐いた。
『お嬢が、俺の為に珈琲を入れてくれたんだ。……いらない、と言えなかった』
ちなみにお嬢こと泉 杏樹(aa0045)は、生粋のお嬢さま。
親に大事に育てられ箱入り娘は、榊の前で茶碗を用意した。茶道用の恐ろしく高い茶碗に、杏樹はいきなりインスタント珈琲を大量に入れた。瓶の中味の三分の二が茶碗のなかに消えていき、榊は遠い目をするしかなかったという。
杏樹は、しゃかしゃかと抹茶をたてる容量で珈琲を作ってくれた。水はお抹茶を作るぐらいの量で、なんで茶匙も使ってくれなかったのだという濃度だった。
どろっとしたカフェインの塊を見た榊は、唾をのみこんだ。
どこから突っ込めばいいのかわからない物体から現実逃避するため、榊は茶碗の値段となぜ杏樹がスプーンを使わなかったかということに思いをはせたという。
『……榊、カフェインは取りすぎると死ぬらしいぜ』
『炭は?』
杏樹が制作した最高温度と最長時間でじっくりと焼かれた黒いクッキーを完食してしまった榊は、医者に相談する気分でガルーに事の顛末を話した。ガルーの診断は『焦げは、食べるとガンになるそうだ』だった。
『たくさん食べたんだが……。お嬢が友達にプレゼントするため、炭を量産したからな』
さすがの友人に炭を食べさせるわけにはいかず、クッキーは榊が改めて手作りした。
『よくオーブンが、無茶な使い方に耐えたな』
リーヴスラシルの言葉に、榊は『煙吐いて壊れた……』と答えた。
榊は無言で胃のあたりを撫でる。
榊に必要なのは、優しさや思いやりではなくて処方箋なのかもしれない。
『でも、オーブンの買い替え料は旦那に請求したんだぜ』
わずかに榊の顔色がよくなった。
自分の財布が痛まなかったことを思い出して、精神的には回復したらしい。
『話だけ聞いていると守もドMよね。緋十郎のはHOPEの資料にも記載されてるし、今更秘密……でも無いのでしょうけれど。あいつ、超が付く程のドMなの。踏まれて縛られて痛めつけられても、相手が愛らしい娘なら苦痛は全て快感に変換されるみたいね』
見て、とレミアが机に広げたのは何に使ったのかあまり聞きたくない手錠や猿ぐつわといったアイテムの数々であった。
『え、緋十郎に、誰が使ってるのかって? わたしに決まってるじゃない、それが何か?』
その話は聞かなくてよかった。
こほん、榊は咳をして場を仕切りなおした。
『……お嬢の父親つまり旦那も、お嬢に甘くてな。金は俺が管理してるんだが。旦那が勝手にお嬢を渡すんだ』
金銭感覚がおかしい杏樹の父親だから、というべきなのか子供に与える金額がとてもおかしいのだと榊は語る。500イェンぐらいだったら、榊は何にも言わない。それで買えるのは、せいぜいお菓子の詰め合わせだ。
『……なにを買ったんだ?』
オリヴィエの質問に、3000万の別荘と榊は答えた。
『クーリングオフできたぜ』
全員の目が、榊の胃に集まる。
ストレスやらカフェインやらで、榊の胃の状態がとても心配だった。
『まぁ、お嬢も可愛いところもあるんだぜ。由利菜とお嬢がアニメ鑑賞会して。こっそり魔法少女遊びしてた時も「アイドルさんに、なったら、魔法少女なの」と言って、歌詞作ったり歌練習したりして。太ってるの恥ずかしいって着やせする服選ぶけど、実は爆乳グラビアアイドルで売り出せば儲かる……』
やっぱり、最後は金らしい。
榊は杏樹が書いたというポエム帳を取出し『可愛いだろ。売れそうだろ』と嬉しそうにしていた。
『おっ、じゃあ作詞が杏樹で作曲征四郎でどうよ』
『あんまりデリカシー無いと、余計もてなくなる、ぞ。俺は別に、ガルーがさびしい晩年を過ごしても気にしないが』
オリヴィエのさびしい晩年の一言に、なんとなくだがキュキィに視線が集まる。小さな背丈のご老人獣臓(aa1696)は、普段から隠しておいたほうがよい一面をフルオープンしている。
『ご主人様には、お子様やお孫様もいらっしゃいますよ』
キュキィの一言に、知らなかった面々は目を見開いた。
結婚して、子供がいて、孫までいた。
年齢的には全くおかしくはないことだが、普段の獣臓の言動からそのような普通の「おじいちゃん」像がどうしても想像できなかった。
『それといつも女性のお尻ばかり追いかけている旦那様ですが、実は故郷に残してきたお子様やお孫様のことをご心配されております。……たまには、素直にメールやお手紙をしたり帰省したりすればよろしいのに「先代の当主が顔出したらめんどうじゃろうて」とかなんとかぬかしてやがりますが』
『へー、もう当主の座は子供に譲ってたのね』
レミアが、にやにやしながら話を聞いていた。
本人がここにいたら絶対に嫌がるだろうが、獣臓の良いおじいちゃん暴露は聞いていて面白い。
孫が小学校にあがったら、ランドセルとか送ったりするのだろうか。それとも、もう送ったりしているのだろうか。孫からの年賀状とか電話とかを楽しみにして、敬老の日のプレゼントを待ち遠しく思っていたりするのだろうか。想像すると異様に楽しくなってくる、レミアであった。
『残してきたお子様やお孫様、亡くなられた奥方様のお写真を文机の隠し扉に隠しているのも知っております。誰が掃除していると思うのですか、とたまに首根っこ掴んでがっくんがっくんしたくなりますがというかしてますが……シャイな旦那様ですので仕方がないですね』
全員が、笑いをこらえている。
子供思いで、孫をかわいがる、エロおじいちゃんというのが面白すぎてたまらない。
『あっ! もう一つございました! 今朝方旦那様の部屋の掃除をしておりましたところ、押し入れの奥が何やらおかしいなと……。布団を干すついでに少々壁を探ってみたところなんと!! 旦那様のえっちな本が大量に! ちなみに女性のご趣味はおっぱいもおしりもイケルと申しておきます。いつもどこにしまっているのかと思っておりましたがまさかあのような場所に』
意外とちゃんと隠してあるんだなー、と一同は思った。
家族の話よりインパクトが薄く感じてしまうのは、獣臓本人のキャラクターのせいだろう。
『もちろん、きちんと掃除をした後に虫干しをして部屋に置いておきました』
かわいそうに、と男性陣は獣臓のエロ本虫干し事件に同情する。
『普通は、隠すよな』
『隠してなかったの?』
ヴァレンティナの言葉に、オリヴィエは『布がかけた本棚にあった』と答えた。
男所帯であるから困らないと言ったら困らないが、もう少し隠してもよいのだろうか。
『たぶん、隠したかったのはこちらなんだろうな』
オリヴィエは、大学ノートを取り出した。子供が書いたような文字で『設定ノート』と大きく書かれている。
『リュカ殿がこれを……』
リーヴスラシルは、唾をのみこんだ。
大人が書いたものだとすれば、この設定ノートは痛すぎる。
『ランドセルのなかから出てきたから、その頃のものだと思うが
オリヴィエの言葉に、リーヴスラシルはほっとする。
小学生のころのノートならば、まだ笑い話にできる。
『まずはこの『設定集』を見てからがいい。登場人物の名前が難しい当て字だったり、造語があったりでそのままだと読むのが難しい……。後こっちには登場人物の設定と相関があってだな、ちゃんと拙いが自分で絵まで描いてる』
木霊・C・リュカ(aa0068)のことだから、小学校のころにきっと友人たちと話をしながら設定を作ったのだろう。見れば、数人分の設定や敵とおぼしき設定まで書かれている。
『この話なんだが、事の始まりは魔剣サーカリオンが2047年の東京……』
『おっ。こっちは、キャラクターの絵か』
榊が指差したのは、どこかで見たことあるようなキャラクターの絵が描いてある。
『もしや、リュカ様では?』
キュキィの指摘に、全員がはっとする。
『そういえば、似てるな。当て字で嶐華になってたから、分からなかったが』
ガルーの指摘通り、ページの端っこにはやたらと難しい字が書かれていた。辞書を引きながら書かれたのか、字のバランスが崩れていて読みにくかったが。
『やっぱり、秘密暴露大会はおもしろかったです。では、本日のメインイベントである正義のAV上映会をするです』
オリヴィエを除いた男性陣の目が、生き生きとした輝きを帯びた。
リーヴスラシルやヴァレンティナの目が、冷たくなったのは気のせいではないだろう。
――ビデオが上映される。
「さて、ワンちゃんは変装した飼い主の匂いがわかるでしょうか!?」
司会者の顔がアップで映った。
画面が切り替わって、映ったのは泥棒の変装をした俳優だった。飼い主の姿が変わって困惑した犬と泥棒の格好をした俳優の寸劇が、そのままひたすら十五分も続いた。
『……これAVではありませんね』
キュキィの一言に、全員が神妙な顔をしてうなずいた。
『こっち見る? 緋十郎の本物の――』
レミアがいかにもお子様お断りなビデオを取り出そうとしたところ、会議室のドアが破られた。
「小鳥――! 女の子が、なに深夜に出歩るいとんねん!!」
そんな怒声と共に現れたのは、正義と英雄のパートナーたちであった。彼らは、会議室のテーブルに広げられているものを見てここでどんなに残酷なことが行われていたかを悟った。
「やだー! 皆でお菓子&ジュース食べてるのずるいー仲間外れダメ! 絶対!! って、厳重に隠してたノートがなんでここに!?」
『いや、厳重でもなかっただろ』
押入れのランドセルのなかに放り込んであったから、簡単に見つけることができたのだ。だが、オリヴィエの予想に反してリュカはだいぶショックを受けているようであった。
『嶐華、おまえなら平気だろ。一緒に東京を救おうぜ』
笑いをこらえられないガルーの前には、征四郎が顔を真っ赤にして仁王立ちになっていた。
「ばかばかガルー!! なんで聞いてるんですか! しかもしっかり録音まで!! 絶対許しませんから!」
『痛い痛いって。別にいいだろ、こそこそ歌わなくっても。今度大規模前に流せばいいじゃない楽しいし。今度の飲み会の余興の時に後ろでプリプリのテーマ弾いてくれても』
「ばかーーー!!!」
ばちん、と征四郎はガルーの頬をはたいた。
「わしの秘蔵の宝物たちがぁああ! いやぁあ! わしのキャラクターを壊さないで! おちゃめでえっちなジジイでいいのよ!」
キュキィの足元で、獣臓は悶えていた。
にまり、と獣臓の秘密を知ってしまった者たちは笑う。
ヴァレンティナは自分の持ってきたものを素早く鞄に収めて、にまにまと蜜柑の顔を眺めた。蜜柑は変なのと自分の英雄を不審がるが、ヴァレンティナは楽しくてたまらない。
「あ、荒削りなのは否めませんけど、スタッフの方々の熱意はすごく伝わってきますよね」
由利菜は、リーヴスラシルが持ってきたアニメを精一杯フォローする。
「私や杏樹さんの知人のエージェントも声優として参加しているかもしれないので……探す楽しみもあります。ほら、ここなんてアイドルぽい魔法少女ですよ。い、いするーん☆
ひ、光の魔法戦士そうぇ……ある……」
由利菜の声が、段々と小さくなる。見かねたリーヴスラシルが、由利菜に代わって踊りだす。
『いするーん☆……光の魔法戦士ソウェイル・アルジス、ジ・アドヴェント! 良い子の皆、もう大丈夫! 悪の組織ヨツンヘイムの霜の巨人は、私の剣でヘルヘイムの深淵に沈めちゃうぞ☆……私だって、真面目な演技を主に笑われたら傷つくぞ?』
「ご、ごめんなさい」
くすくすと笑っていた由利菜を見つけたリーヴスラシルは、少しばかりむっとしていた。
「失敗ばっかり言っちゃ、ダメ!」
この場でどんなことが起こっていたかを知った杏樹は、真っ赤な顔でわたわたとしていた。だが、テーブルに広がっているお菓子類を見て、少しばかり顔をほころばせる。
「榊さん、お腹がすいてるの? 杏樹、練習したのがあるから食べて欲しいの」
心優しいお嬢様が差し出したもの。
それは、おにぎりだった。
持っただけでわかる米の半生具合。使われたのは最高級の米と梅干なのだろうが、味は食べなくてもわかる。ああ……だれか彼に医者を紹介してやってくれ。
『緋十郎、棚の下にこれ隠してたのよね……これも、あにまるびでおかしら?』
「れ、れみあ、待ってくれ、そいつは……!!」
レミアは美しい唇で弧を描いて、ビデオをちらちらと見せる。
「それはあかーん! 女子供が見ちゃ、あかーん!!」
緋十郎と正義は、レミアから『女王様と犬』という題名のビデオを奪おうとするが、レミアはひらりひらりと会議室内を逃げ回った。
『ガルー、パスよ』
レミアは、ガルーに向かってビデオをパスした。ガルーはレミアまでもがいかがわしいものを持ち込んだとはしらなかったし、中身は正義のアニマルビデオだと思っていた。そのため、悲劇が起きた。
『というか正義のコレは、別に隠すようなもんじゃないんじゃねぇの? 小鳥ちゃんが気にしないなら、一緒に見ればいいじゃん。柴犬』
そういいつつ、ガルーはビデオデッキにビデオを入れた。
――今月最大の悲劇が起こったことは、想像に難くない。
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結果
シナリオ成功度 | 成功 |
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