本部

君と誓う星空

鳴海

形態
ショート
難易度
易しい
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
10人 / 4~10人
英雄
10人 / 0~10人
報酬
少なめ
相談期間
4日
完成日
2016/08/25 14:33

掲示板

オープニング

● 今から流れ星を取りに行きます。
 あなた達は今とある高原にいる。あたりは背の低い草がびっしり生えていて、夏なのにちょっと肌寒い。
 その向こうには薄く水の張られた湖が広がっており、鏡のように無機質に静まり返っていた。
 何で君たちがこんなところにいるのかというと。ここに墜落してくる予定の霊石を採取するためである。
 霊石採集は夜通し行われるので、朝まで近くの村で寝て夜ご飯を食べてからこっちに来ました。

●とある水源
 この水源、半径五キロにわたって広がっているが一番深いところでも足元までしか水がない。水はすごく透明なのだが、角度の関係で空を鏡のように映すらしく。
 ここに断つと上も空も星の海という体験ができて神秘的である。
 ちらほら淡水魚が泳いでいる模様。
 ちなみにこの水ぬるいので、体を洗いたいときはこの水を使ってください


●盾座流星群
 この世界が異世界に浸食されてからという物、レアケースではあるが、それまで何の価値ももたなかった意志が霊力を帯び、霊石となることがあった。
 それからという物、ごくまれにではあるが、霊石を含んだ隕石が地球めがけて落下するという事件が発生することがある。
 それが今回の盾座流星群だ。
 盾座流星群の特徴は、大きな岩石部分の中にポツラポツラと霊石成分が凝縮している点にある。
 そのため大気圏に入ると岩の部分は燃え尽き霊力の部分だけは残る、空中で細かなパーツに解れ煌きながらこの光源に降り注ぐらしいのだ。
 さらに落ちた時にも霊力がほとばしり、あたりに銀色の輝きを舞わせるという。
 その光景はさながら。現送の世界に迷い込んだようです。
 また普通の流星群より輝いている時間が長いので、願いがかなう確率も高いかも!!
 

解説

目的 霊石の回収 および、流星群を楽しむ。

 今回のシナリオは、雑談+神秘的な描写+霊石集め
 といった任務です。仲良しさんと夜空を見上げるもよし。
 霊石採集にいそしむもよし。アウトドアを楽しむもよし。
 可能性は無限大です。
 話の構成としては
前 到着
  テントやアウトドアグッズの展開
  ちょっとした自然と触れ合うシーン

中 みんなで寝そべってお話し。

後 流星群到来、
  霊石集め

流れとしてはこんな感じです。
●トークフック
 話に困った人ように遙華を設置しました。
 下記の会話フックを使って遙華やお友達とお話ししてみると楽しいと思います。
 プレイイングにナンバーをかいておいてくれると、遙華が質問してきます。
 使わなくてもいいです、遙華は放置されても平気な子です、黙々と霊石を採取しています 

1 将来の夢とかある?
2 私たちはこれからどうなるんだろう
3 今会いたい人っている?(遙華の場合はテレサです)
4 全部捨てて逃げ出したくなったことってない?
5 都会と田舎どっちが好き?(遙華は都会です)
6 人を殺したことってある?
  (遙華はありません、殺したことがある人にはどんな感じだったかも訊きます)
7 星に、何を願ったの?
(遙華は願いませんでした、なぜかは聞けば教えてくれます)
8 夜に秘密を打ち明けると、朝に遊ぶよりも仲良くなれるらしいわ
(遙華はあなたと仲良くなりたいようです)
9 もし、私が困ったとき、助けに来てくれる?
10 眠くなっちゃった、寝てもいい?


リプレイ

プロローグ

「うわああああああ、すごいです」
「空気もきれいだね、うん、落ちつくよ」
 空に満点に輝く星空、それよりも瞳を輝かせて『柳生 楓(aa3403)』ははしゃいで駆け回る。
 そんな子犬のような姿を見て微笑むのは、彼女の相棒である『氷室 詩乃(aa3403hero001)』である。
「盾座流星群ねー。楓にぴったりだね、守護の聖女様?」
「やめてくださいよ……それで呼ぶのは……」
 そんな楓の手を取って先へ先へと引いていくのは『天城 稜(aa0314)』と『リリア フォーゲル(aa0314hero001)』
「落ち着き余って寝ないでくださいね、聖女様」
「流星群をこんな最高のシチュエーションで見られるなんて、来てよかったね守護の聖女様」
 稜とリリアがいたずらっぽく笑って言った。
「だから、はずかしい……」
「あら、守護の聖女様、機嫌が悪そうね、どうしたの?」
「聖女様はお腹が減ったのではないかの? ほれジーチャンが作ったおにぎりじゃぞ」
 そう遙華と『古賀 菖蒲(旧姓:サキモリ(aa2336hero001)』が後ろから駆けてきて、肩や背中にを軽く叩いた。
「もう、二人まで!」
「楓さんが怒った」
「逃げるのじゃ」
 別に追いかけるつもりはなくても、目の前を楽しそうに走っている人がいれば追いたくなるものである、楓はつられて、そんな彼女らを追いかけた。
「あらあら、元気ね」
「バスの中で寝てたからな、暇なんだろうな」
 ロクトと『防人 正護(aa2336)』が眺めながら歩いている。地面の硬さなど確かめてテントを立てるのにちょうどいい場所を探しているのだ。
「全くみんな子供だね」
 詩乃がそう笑い正護からテントの骨組みを受け取る。ここからはパズルだ。伸ばしたり差し込んだりして、テントを作り始めた。
 その向こうを歩いていくのは一組のカップル。
「緋十郎、見て。星が動いてるわ。あれが流れ星?」
「いや、あれは衛星だなレミア」
 楽しげに『レミア・ヴォルクシュタイン(aa3678hero001)』は空を指さす、まるで夜空の星を救うように。そんな彼女を後ろから眺めて、その一時を幸せだと感じる『狒村 緋十郎(aa3678)』
「空にだけではなくて、地上にも面白いものが沢山ありそうよ。緋十郎」
 そうドレスを翻し、どんどん先へと進んでいってしまうレミア。緋十郎はキャンプ地に二人分の荷物を置いて。早足で彼女を追いかけた。彼女が目指したのは湖。
「つめたーい」
 そうレミアは水を蹴り上げる。水と戯れる少女は緋十郎の目にとても美しく映った。
「流れ星を取りに行く……うむ、これもロマンだな」
「……ん、綺麗……静かで、良い所」
 耳をピコピコ動かしながら機嫌よさ気に『ユフォアリーヤ(aa0452hero001)』はつぶやいた。
「子供たちのはしゃぎ声も、気持ちよく響く場所だな」
『麻生 遊夜(aa0452)』は遙華や楓を眺める。
 そんな遊夜の目の前を騒がしい大人が通る。
『カグヤ・アトラクア(aa0535)』である。彼女は昆虫採集セットの入ったカバンを大事に抱え、そして相棒に告げる。
「本日の任務は友達作りじゃ! がんばるのじゃぞ、クーよ」
「……は? 何を突然――」
「霊石が降ったら戻ってくる。達者で過ごせよ」
 そう『クー・ナンナ(aa0535hero001)』が振り返った時にはもうカグヤは走り去っていた、ロクトと合流して妙な機械を振り回している。
「あ、ちょっとどこ行くつもりだよ。え、本気?」
 手を伸ばしたまま固まるクーである。
「……まあいいか。いて困ることはあっても、いなくて困ることないし」
 だとしてもだ、こうやって無造作に放り出されれば何をしていいのか困るという物。大自然の真ん中でフムと佇むクー、そんなクーを背後から奇襲する女の子が二人。
「捕まえた!」
「うわ」
「テント設営の戦力確保ですわ」
『九十九 サヤ(aa0057)』と『一花 美鶴(aa0057hero001)』がクーの両脇を固めるように掴み、そしてテント設営場所まで連行した。
「麻生さん、ご指導お願いします」
 さやが礼儀ただしく頭を下げる。
「任せてくれ、慣れたもんさ」
「……ん、日頃の努力の賜物」
 毎年夏には子供たちにせっつかれてキャンプに行く遊夜である、てきぱきと指示を出していく。
「そんなことしなくても自分で歩けるよ」
 意外と手際よく、クーは骨組みを組み立てていく、逆にそれに習いながら美鶴はサヤに言った。
「空気も気持ちいいし。サーヤちょっと周囲をお散歩……と思っておりましたが」
「うん、でも遊んでばっかりもね」
「……ええ分かってましたわ、それがサーヤがですもの。ちゃっちゃと設営やってしまいましょう!」
 少しすねた声の美鶴である。
「きちんと準備しませんと」
「意外と楽しいものですね」
 少女二人は慣れないながらもてきぱきと作業をこなしていく。
「幕を持ってきましたよ」
「ああ、すまない」
『アルセイド(aa0784hero001)』が遊夜にテントの外側にかける幕を手渡した。
 ここでは宿泊用のテントいくつかと、虫よけのための網だけかけた大型テントを設置する予定だ。
 そしてアルセイドはいち早く大型テントを立ち上げると『ルーシャン(aa0784)』を急いでその中に入れた。
「ルゥ様はごゆっくり」
「私だけ、この扱いは……」
「いいんじゃないか? 女の子だしな」
 その隣では正護が炭をおこしていた。
 温かい地方とはいえ、湖で遊んで戻ってくれば寒いだろう、服がすぐに乾くようにと正護の気遣いである。
 その火の脇にアルセイドはルーシャンを誘導する。
「ルゥ様、お体を冷やし過ぎないように……これを」 
 そうアルセイドは薄手のストールを羽織らせた。
「にゅぅ……あ、ありがと、アリス」
 ルーシャンの言葉に穏やかに微笑み、跪いて恭しく手を取る。
「我が女王の尊き優しさ、敬服致します。貴方の願いは、この俺がきっと叶えて差し上げましょう」
「ま、こんなとこだろ」
 そうこうしている間に全ての準備が完了し、小さいながらもテント村と化した一体を眺め観る遊夜。
 彼は誇らしげに微笑んだ。
「飯食ってきたしフルーツとティーセット、ジュースでも置いとくか」
「……ん、子供たちも喜ぶ」
「じゃあ、俺たちも」
「……ん、行こう?」
 遊夜とユフォアリーヤは満足げに泉の方を目指して歩き出した。

第一章 星の煌き
「あーあ、なんていうか、すこし場違いな感じをうけやがりますね」
 そう『フィー(aa4205)』はつぶやく。
「どうしたの?」
 そう稜が振り返ると、すでにフィーはどこにもいなかった。
「消えた?」
 そうあたりを見渡す稜。そんな彼を追い抜いて一人の少女が躍るように草原を駆けていく。
「すごーい! こんな景色があるんだね」
 スマホをぴろりーんとしきりにならして『斉加 理夢琉(aa0783)』はシャッターを切る。
「夜なのに明るいね。アリュー」
 手当たり次第に風景を撮る理夢琉、その風景に『アリュー(aa0783hero001)』が映りこむと、回るのをやめその場スマートフォンを見つめて佇んだ。
 そしてふと思いついたように理夢琉はアリューへとカメラを向け、何度もシャッターを切る。
「なんか不思議だね、アリューがいる」
 そう理夢琉はアリューに写真を見せた。
「一緒に来たんだから当然……」
 アリューは虚を突かれたような表情で言う。
「そういう意味じゃなくてね、アリュー達は今回の英雄達と違っていろんな異世界から召喚されてるじゃない?」
「俺みたいな残留思念の偽物までな」
「そういう言い方好きじゃない、やめてアリューテュス」
「あわわ、喧嘩したらだめですよ。お二人ともよければ流星群の前にお星様をどうぞ」
 サヤが小さなお星さまを差し出した。
「ご飯は食べたけれど、甘い物は別腹よね」
「ありがとうございます」
 そう理夢琉と美鶴が金平糖を口に含み、うっとりした表情で言った。
「あっちでみんなで遊んでるんです、一緒にどうですか?」
 そう理夢琉の手を引いてサヤと美鶴は駆けだす。一瞬理夢琉はアリューに視線を向けるが、彼の優しい微笑みを受けて理夢琉は自らの足で少女たちの輪に加わることを決めた。
 水辺まで走り寄ると、すでに遊んでいたリンカーたちは水着になっていた。それは遙華も例外ではなく、黒のビキニと大胆である。
「これ、今度家で販売するはずの水鉄砲なの」
 そうかけてきた少女三人を水鉄砲で迎撃する遙華。
「あ、魚がいるね」 
 そんな騒動を尻目に稜とリリアは水のなかを泳ぐ魚に夢中になっていた。鱗が月明かりに煌いて美しい。
 しかし、そんな穏やかな時間はそうは続かなかった。
 それめがけてユフォアリーヤが飛びかかったからだ。
「ん……。とった」
「まぁ、それもいいが……あーあー、濡れちまってまぁ」
「……ん、楽しかった」
 湿った尻尾を振ってご機嫌のユフォアリーヤは、遊夜に魚を差し出すと、手早くその場で血抜きをしてしまう。
「そりゃよござんした……あっちで釣りでもするか」

第二章 流れ星


「まだ回収していない霊石もあるわね」
 遊びもほどほどに、遙華は草むらにポツリポツリと落ちている霊石を拾い集め始めた。
 星が降るこの丘は、流星群時期でなくとも霊石が落ちてくるらしい。 
 その石拾いをサヤは手伝っていた。
「サーヤも遙華様も真面目なのは美徳と思いますが、もう少し楽しんでも……」
 美鶴がそう声をかけるも黙々と拾い集める二人、地味な作業が意外と好きらしい。
「あの、お二人とも……」
「ん~」
「分かりました。今から星にお願いします。5分でいいので、わたくしと一緒に星を見て下さい」
「え。まだ星なんて……」
「お願いしたのですから、二人とも叶えてくれますよね」
 そう美鶴はむきになってサヤの手を引く。
「……せっかく綺麗な光景なのに……もっと楽しんでもいいじゃないですかー!!」
「……あ、ごめんね美鶴ちゃん。楽しみたかったのよね、一緒に」
 そうほっぺたを膨らませて首を上下に揺らす美鶴。
「ふふ、そうね。回収も大事だけど、思い出も大事よね」
「遙華さんもよかったら少し休憩して一緒に星を見ませんか?」
「まぁ、確かにそろそろ時間だし、ここらで切り上げてもいいかもね」
 見れば、他のリンカーたちも続々と着替えテント付近に集まってきている。
「ルゥ様。草の汁でお召し物を汚してはいけませんので、ルゥ様はタオルケットの上へどうぞ」
「ありがとう」
 そうルーシャンは特等席に座る。
 それを皮切りに、星が流れ始めた。
「うわー、すごい」
 空に無数に描かれる軌跡。ただそれは摩擦熱では燃えきることのない霊力の塊である。
 それが見とれている稜の隣を通過した。
「あぶない!」
 それを見て笑うリリア。
「心配しなくても、ぶつかる瞬間に逆噴射して勢いを殺すから、そんなに危険じゃないわ。まぁ痛いことには痛いのだけど」
 それはどういう意味だろう、そうリンカーたちがあたりを見渡すと銀色の光が柱となって立ち上っていた。
 霊石は地面にぶつかる瞬間に霊力を逆噴射、自身の加速度を殺し地形を傷つけることなく地面に落ちるのだ。
 その副産物として、銀色に光る柱が立ち込める。
 空にも地上にも幻想的な風景が広がった。
「なるほど……これはまた、すごいな」
 遊夜は複数台のカメラを設置しながらその光景を見守った。
「……ん、綺麗……」
 うっとりと目を細めて体重を遊夜に預けるユフォアリーヤ。
 そんな一行の周りではクーが黙々と霊石を集めている。
(意外と多くて、全部拾うのは面倒だなぁ)
「流れ星が消えない内にお願いすると、願い事が叶うっていうよね」
 ルーシャンがほうっとため息をつき、そんな言葉をぽつりと一言。
 その光景に見入っていたリンカーたちはあわてて願い事を考え始める。
「沢山願ってもいいのかな」
「光っている間に三回も願い事言うなんて無理じゃない?」
「早口の練習をしてくればよかったわ」
「そう言う問題?」
「沢山流れ星が見れたら、その分沢山の人のお願い事が叶うかもしれないね……」
 ルーシャンは周囲のリンカーを見渡して笑う。
「みんなは何を願ったの?」
 遙華が尋ねると緋十郎が答えた。
「……願いとは“誓願”だ。実現の為に己はこれだけの努力をする……だから見守って居て欲しい……と誓いを立てる……そうあるべきだと俺は思う」
「だったら私!」
 ルーシャンが手を挙げて立つそしてアルセイドに言った。
「アリスのお願い事、叶えられるように。あの、まだ何もできない、けど。アリスが誇りに思えるような、『女王』になれるように、がんばる!」
 そんな光景をほほえましく思いつつ、緋十郎は言葉を続ける。
「ただ願っただけでは願いなど叶うまい。……で、西大寺は何故何も願わなかったんだ?」
「わ、私は」
 ルーシャンも続けて尋ねた。
「私はね、えっとね、皆とずっと仲良しで、一緒にいられますように、って。遙華お姉ちゃんはお願い事内緒なの? お願い事は心の中で大事にするのもいいと思うの。いつか叶うと、いいね」
 そう微笑むルーシャンの手を取って遙華は言った。
「願わなかったのはね。私も緋十郎と似たような思いだからよ。それに私は過程が重要なの、経験値を無視して願い事だけ叶えられたら、たまらないわ」
 その言葉に緋十郎は頷いた。
「願い続けている限り……そして努力し続ける限り……夢は実現し得る。
それが無理でも……少しは良い方向へ変えられるはずだ。きっと……な」
「でも、努力でどうにもならないことは願ってもいいのかもね……だめもとで」
 レミアはその寂しげな笑みに引っかかるものを感じた。
「夢は、自分で叶える物だものね。ねぇところでみんなには夢とかあるの?」
「夢ねぇ……ガキ共全員の巣立ちを見ることかね」
 今度は遊夜が答えた。
「……ん、つまり現状維持」
 遊夜とユフォアリーヤはそう言って顔を見合わせる。
「そうだな、俺たちも似たようなものだ……レミアとずっと一緒に居たい」
 緋十郎は何気なくそう答えるとレミアは赤面した。
「ちょ、ば、馬鹿じゃないの……?! 何を突然恥ずかしいこと言ってるのよ……! で、西大寺の夢はなんなの?」
 そうあわてて話をそらすレミア。
「うーん、大きくこうなりたいってものはあまりないけど。今は私の身の回りのアイドルたちの助けになりたいなって。思うわ」
「はい! はい!」
 理夢琉が手を上げる。
「アイドル達が着る服をデザインして作ってみたいなって」
「この前、ウエディングドレス作ってくれたものね」
「衣装のほつれや丈をつめるとかお手伝いしたいです」
「おねーちゃん、おねーちゃん。おねーちゃんは何を願ったのじゃ?」
 そんな話の流れを受けてアイリスは楓に問いかける。
「私は……これからも皆さんを守れますようにと……大切なあの人ともっと仲良くなれますように、です」
「ボクは楓と一緒にいれますように、かな」
 詩乃が告げると、楓はえへへと笑った。
「アリスちゃんは?」
「ん~? 妾はねー……いつまでもおねーちゃん達と一緒にいれますよーにって。あとあと、うんとねー……子供が欲しいのじゃ~」
 屈託のない言葉に凍りつく遙華と理夢琉。いきなり漂い始めたアダルトな雰囲気に顔を赤らめる思春期組と、苦笑いする大人組。
(ここにカグヤがいなくて本当によかったなぁ)
 クーは言葉にはしないがそんな風に思っていた。
「でもどうすればいいんだろう? 結婚するとコウノトリが運んできてくれるって聞いたんだけどいっつもお空見てるけど……あれ? おねーちゃん、なんでかたまってるの?」
「ん~。ねぇ、遙華さっき言いよ淀んだのはなんだったの? 自分でかなえられない願い事って」
 ここでレミアの助け船。遙華はレミアに多大な感謝を抱きつつ、質問に答えた。
「うーん、例えば、テレサにあいたいとか。でも相手の都合で無理なのよね」
「その気持ちはよくわかるぞ」
 緋十郎が感慨深く頷いた。そしてしまったという顔を明後日の方向に向けた。
「……相変わらず嘘つくのが下手ね。分かってるわよ。雪娘に会いたいのでしょう? 愚神を救いたいなんて……大馬鹿の緋十郎らしい考えね」
辛辣な言葉を使いつつも、レミアの眼差しや声音はとても温かい。だがレミアは賢い、同時にいつか緋十郎が深く傷付く未来が見えているようだ。
「さて、そろそろ」
 そう遙華は腰をあげて手を叩く。
「さて星も落ち着いたみたいだし、探しに行きましょう」


第三章 星さがし

「一つくらい土産に欲しい所だな」
「……ん、飾っておきたいねぇ」
 遊夜とユフォアリーヤは草の根をかき分けるように霊石を探す。
 ただ、先ほどより盾座流星群は落ち着いたとはいえ、まだまだ流れてくる、それにだけは注意は怠れない。
「あ、そう言えばフィーさんがいない……」
 霊石を探しながら、物思いにふけっていた楓は草の間から顔だけ出すと、稜に尋ねた。
「そう言えばさっき一瞬見たきりだな、どこに行ったんだろう」
「あっちにおったぞ!」
 その時突如として、カグヤがロクトと共に登場し、二人を驚かせた。
「草の背が少し高くなっておるところじゃ、そしてわらわもききたいのじゃが、遙華はどこに?」
 カグヤの問いかけに二人は指を向けて答える。それを見るとカグヤは悠々と去って行った。
 二人は頷いて、カグヤの示してくれた方角へ足を向ける。
 やや背の高い草むらをかき分けて進むと、不意に開けた土地に出た、そこにフィーは寝転んであまり楽しそうとは言えない表情で空を見上げていた。
「なんでこんなところにいるの? フィーさん」
 楓は問いかける。
「なんででしょーね。喧騒が嫌になったとか、そんなんですかねー」
「『Yours』にいる時と変わりなくないです?」
 楓がフィーの隣に腰を下ろす。
「まぁ、そうなんですが」
「むしろ『Yours』以外で騒ぐのもちょっと……。疲れやがりますから」
「頑張ってたんですか?」
「いや、頑張るとはまたちげーんですよ。うまくいえねーんですが。楽しいんですよ、こういうのはとても、あの店も。ですがね……」
 歯切れの悪いフィーである、実際本人にも、なぜ自分があの集団に混ざりたくないのかよくわかっていないんだろう。
 場違いなよくわからな感覚だけがフィーを支配して、胴にも気だるい。
「特に今回は、どいつもこいつも願い事で浮かれていやがるでしょう? どうしてもねあの明るい雰囲気には……」 

「もともとヴィランにいたから?」

 その時だった、楓ではない誰かがそんな問いかけを投げた。
 驚き上半身を持ち上げるフィー。
「ちょっと、クーさん」
 そんなクーを止めようと飛びついた稜はあっさりかわされ、二人してフィーの隣に倒れ込むことになった、その後ろから続々とリリアやアイリスが姿を現した。
「あははははは、いや気になって……」
「驚きました。どこで聞きやがったんですか?」
 フィーがクーに問いかけた。
「いや、偶然遙華が話しているのをきいた」
 そんなクーだが、ここに居合わせたのはカグヤを探していてたまたまだったらしく、テントに向かったことを告げると足早に去って行った。
「なんで抜けてきたんですか」
 楓が問いかける。
「あ? いや、簡単な話でやがりますよ 自分のさせられてる事が気に食わなかった、ただそれだけの話でやがります」
「では、おぬしは、人を殺したことが」
 そう問いかけたのはアイリス。語気が冷えついていた。視線を泳がせてまるで別人のような口調でいう。
「それもイエス、でやがりますね」
「勿論だな」
 影がかたどり『ヒルフェ(aa4205hero001)』が姿を現した。
「こいついきなり人間の姿になりやがりましたね」
 フィーはともかく、他の一同はあまり見慣れないヒルフェの姿に目をぱちくりさせる。
「別に隠す事でも大した事でもねーですし話しちまいますか」 
 それは決して遠くはない過去の話、今でもその時の感覚は鮮明に思い出せる、そんな鮮やかな記憶。
「それが私の役割の1つだったもんで。慣れっちまえばどうってことはねーんです」
 それも一度ではない、何度も。
 人を殺すという感覚が無数に体に住み着いている。
 ナイフで頸椎を叩き斬る感触。眼球を貫いて頭蓋を割る感覚。肋骨の隙間に滑らせて心臓を一突きにする感触、銃の引き金を引く感触。
「さすがに最初の内は色々とアレだった様な気もするんでやがりますが……流石にそんな昔の事なんざ覚えてねーです」
「俺の場合は殺すというよりも処理だな」
 ヒルフェが言葉を継ぐ。
「俺が生まれてから数百年だか数千年だかの間中その世界の人類の数とパワーバランスの調整、それが俺というシステムだったからな」
ケタケタと笑いながらヒルフェはあっけらかんと言い放つ。
「ま、要するにただの作業だ、今になって思えばなんともつまらない仕事だったな」
「最終的には親すら殺して、まぁあいつらは私に戦力としてしか期待してなかったんだかどーだかは知らねーですが、親からの愛情なんぞ受けたこともなく他人同然だったんで全然堪えなかったんですがね」
 そう淡々と告げるフィーにいつの間にか視線が集まっていた。
「……っと、こんなとこでする話でもなかったでやがりますね、つい余計な事まで語りすぎちまいました。真面目に星でもひろってやりますかね」
 そうフィーは腰を上げる、そしてどう声をかけていいか分からない一同へと振り返って言葉を投げた。
「つまんねー同情はいらねーですよ?」
 
第四章 空を満たすは希望の光

 テント周辺では、小腹が減ったということで夜食会が開かれていた。
 せっかく炭があるのだからと、正護が肉を焼き。サンドイッチやらなにやら、みんなで持ち寄った食べ物が広げられている。
「やっぱり、幸福度っていうのは、食料の豊かさに比例するわよね」
 そんな謎理論を展開しながら遙華は肉を焼いていく。
 どこからか登場したスイカをさやが切り分け、それをルーシャンに手渡していた。
「あまい、おいしー」
「こうやって夜になると、なんだか自分のことをうまく話せる気がしない?」
 起こした火で温まりながら遙華は遊夜に言葉をかけた。
「夜の世界には……きっと、昼間には無い魔力があるのよ。西大寺の言うことも、何となく分かる気がするわ」
 レミアが答える。
「俺もそんな気がするな、ちなみに西大寺さんは何を語ってくれるのかな?」
 遊夜は足を延ばせるタイプのチェアーに座り膝に頭を乗せてうとうとするユフォアリーヤの頭を撫でた。
「私は感謝を。普段言えないけど、この場なら言えるわ。遊夜いつもありがとう。エリザの時も、すごく助かってるわ」
「改めて言われると照れるな」
「みんなには内緒ね」
「ふむ、秘密の共有って奴か。まぁここにはその、みんながいるわけだがな」
「……ん、大事な秘密ほど、信頼の証」
「だったら、俺はどんな秘密を話そうか? 西大寺さんを愛してる、とか」
 はじかれたように立ち上がるユフォアリーヤ。顔を真っ赤にしてふらつく遙華。
「こく、こく」
「二人とも、落ち着きなさい」
 ユフォアリーヤの肩を掴んで座らせる遊夜。遙華へはうちわで風を送る。
「家族として、という意味にだ、安心しなさい」
 そんな光景をみて、うらやましそうな表情を向ける理夢琉。
「まざりたい」
 ボソッとつぶやいた理夢琉の肩をアリューが強めに押す。
 理夢琉はひとりごちに、両手の拳を握って気合をいれると、まだ熱が抜けきっていない遙華に手を差し出した。
「遥華さん、正式にお友達になってください!」
「ん?」
「私、同年代の子と、その、あんまり遊んだことないから。話しかけるタイミングとか、話しかけていいのかとか。わからなくて。一歩引いちゃうんです。それに、それに」
 伸ばした手がもし、誰にも届かなかったら。そう考えるだけでも。怖かった。
「遙華さんのぐいぐい、進んでくところとか、すごく見習いたくて、その! あの!」
 その手を遙華は優しくとった。
「私はもう友達だと思っていたわよ」
「私、空気が読めなくて、そのせいで人に嫌われることが多くあったけど、だからこそ。私相手にタイミングとか、話しかけていいのかとか、悩む必要はないわ。もっと沢山お話ししましょう?」
「はい!」
 理夢琉は微笑む。
「そして友達だったら呼び捨てにするもの、ロクトに習ったわ」
「え、そうなんですか? でもちょっとそれは……」
 アリューが後ろから本をかぶせた、その瞬間、湖に倒れ込む二人。
「遥華……ありがと!」
「アルマギが手に入ったら言うつもりだったようだ」
「我ながらなかなか良いものを生み出してしまったわ」
「あわわわわわわ、遙華!」
 そのまま理夢琉が抱き着いて身動きが取れなくなっている遙華。
 そんな彼女の前にくらーい雰囲気に喫茶店常連組が戻ってくる。
「なに、このお通夜のような雰囲気」
「フィーが殺人者であることが発覚してのう」
「ええ、そんな言い方……」
 遙華が引きつった笑みを浮かべる。
「いや、本当のことですし、むしろH.O.P.E.という組織に所属している限り避けては通れない道じゃねーですか? ここにいるみんながそうでしょう?」
 そのフィーの問いかけにレミアが答える。緋十郎の心配そうな視線をわざと見ないふりをした。
「……あるわよ。数え切れない位にね。そうねぇ……例えるなら……小枝を折ったり卵を割るような感覚よ。人は簡単に死ぬ……わ」
物憂げに星を見つめながら多くは語らぬレミア。その横顔を見て緋十郎は、レミアの手を握る。
「そうだね、僕だってそうだ」
 今度は稜が同意した。
「今の所、テロリストだったりマガツヒの構成員だったから、殺害する事に対して後悔は無いけどやはり覚悟は必要だったよ」
「私はないわ」
 遙華が言う。
「殺せないと言った方が正しいわね、私はどうしてもその人の後ろを見てしまう、生きてきた背景、その人を思ってくれている人がいるかもしれないこと、それを全部、無には返せないわ。重たすぎる……」
 だったら、そう稜は言葉を続けた。
「もし、相手を殺す覚悟が無いなら相手を圧倒して無力化できる力を持って欲しいと僕は思う。そうじゃなければ、仲間や自身に危険を招くから……」
「あの、私も」
 楓が手を上げる。
「直接殺したことはありませんが……二人、守ることが出来なくて殺してしまったことがあります……一人目はこの両足と家族を失ったときに、二人目は……初依頼のときに」
「それは楓のせいじゃ……」
 詩乃は言う。あれは誰が直面してもどうしようもなかった、それが一般的な見解だし、詩乃もそう思っていた。
「愚神、リトル・アリスの件ね」
 遙華が解説を入れる。
「同じ苦しみではないですけど、でも少しはフィーさんと同じです、だからわかってあげられないですか?」
 楓は優しい子だ、人の気持ちを良く見ることができる、そんな人間はたいてい傷つきやすい、だから最初の依頼で死人が出て、その時にエージェント活動をやめてもおかしくはなかったのだ。
 だが、楓は努力し続けた。その結果、この前のミッションでは死人を一人も出さずに済んだのだ。
 そしてその優しさで今フィーの苦しみにを労わろうとしている。
「ありがてー話ですけど、今はまだ……」
 言いよどむフィー、そして彼女は言葉を続ける。
「みなさんに訊きてーんですけど。人を殺すことにそんなに嫌悪感を抱いて。まだ戦うつもりですか? 逃げたくなったことは?」
 その言葉にはルーシャンが答える。
「ん……戦うのは、怖いし、好きじゃないけど……アリスが一緒にいてくれるから
エージェントにはお友達も沢山いるし、一人じゃないから…だから大丈夫だと思うの」
 次いでさやが告げた。
「怖いことは一杯あるけれど……でも逃げたら、痛い思いや怖い思いをする人達が増えてしまうから
私の力はとても弱い、でも誰かを救う手助けができるなら力になりたいな」
 楓はその言葉を噛みしめるように首を縦に振った。
「そう言っても、自分一人なら我慢できずに逃げてたかも……美鶴ちゃんがいるからまだ踏ん張れてるんだと思うの」
 そうさやが美鶴に微笑みかけると、美鶴は告げた。
「逃げませんわ。サーヤを守る為にわたくしがいるんですもの。わたくしはサーヤを守る。だから流れ星に「お願い」はしてませんわ。だってそう「決まって」いるのだから 」
 そした、最後に遙華が胸に秘めた決意を言葉にする。
「私も、逃げない、私は、私を勝利の女神と呼んでくれたその言葉を汚したくないの、それに、エージェント活動を続けていたからこそ。こんなにたくさんの友達と出会えた」
 
「胡蝶の夢。すべては夢の中の出来事で、いつか目が覚める時にはすべて失うと思っているんだ。何もかもが無駄におわるのに、どうして人は今を楽しめるんだろう?」

 そんな悩める少年少女たちを、アイス片手に見守るクーである。
「それにしても、このアイスおいしい」
「最後にみんな、もし私が困ったとき助けに来てくれる?」
 遙華がみんな告げるとみんなが頷いてくれた。
「勿論、助けるよ! 僕と遙華さんは、友達でしょ? 何でも言ってよ!」
 稜はそう声を上げる。
「俺達の目と手が届く限り、必ず行くさ」
「……ん、ボク達からは、逃げられないよ?」
「おねーちゃんが困ったら妾いつでも行くのじゃ~」
「私、もっと遙華さんのことを色々知って仲良くなりたいです」
「ボクもだね。遙華くんと一緒にいたら楽しそうだから」
「ありがとう、みんな、うれしいわ」
 そして時刻は深夜三時を回った。流星群は完全に終了しあと二時間程度で夜が明けるだろう、その朝焼けを背にリンカーたちは帰路につく。
 新たな誓いや思いを胸に。

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • いつも笑って
    九十九 サヤaa0057
    人間|17才|女性|防御
  • 『悪夢』の先へ共に
    一花 美鶴aa0057hero001
    英雄|18才|女性|バト
  • 惑いの蒼
    天城 稜aa0314
    人間|20才|男性|防御
  • 癒やしの翠
    リリア フォーゲルaa0314hero001
    英雄|20才|女性|バト
  • 来世でも誓う“愛”
    麻生 遊夜aa0452
    機械|34才|男性|命中
  • 来世でも誓う“愛”
    ユフォアリーヤaa0452hero001
    英雄|18才|女性|ジャ
  • 果てなき欲望
    カグヤ・アトラクアaa0535
    機械|24才|女性|生命
  • おうちかえる
    クー・ナンナaa0535hero001
    英雄|12才|男性|バト
  • 希望を歌うアイドル
    斉加 理夢琉aa0783
    人間|14才|女性|生命
  • 分かち合う幸せ
    アリューテュスaa0783hero001
    英雄|20才|男性|ソフィ
  • 希望の守り人
    ルーシャンaa0784
    人間|7才|女性|生命
  • 絶望を越えた絆
    アルセイドaa0784hero001
    英雄|25才|男性|ブレ
  • グロリア社名誉社員
    防人 正護aa2336
    人間|20才|男性|回避
  • 家を護る狐
    古賀 菖蒲(旧姓:サキモリaa2336hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
  • これからも、ずっと
    柳生 楓aa3403
    機械|20才|女性|生命
  • これからも、ずっと
    氷室 詩乃aa3403hero001
    英雄|20才|女性|ブレ
  • 緋色の猿王
    狒村 緋十郎aa3678
    獣人|37才|男性|防御
  • 血華の吸血姫 
    レミア・ヴォルクシュタインaa3678hero001
    英雄|13才|女性|ドレ
  • Dirty
    フィーaa4205
    人間|20才|女性|攻撃
  • ボランティア亡霊
    ヒルフェaa4205hero001
    英雄|14才|?|ドレ
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