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広告塔の少女~みんなでアソボ~
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相談卓
最終発言2016/07/19 19:10:47 -
NPC質問卓
最終発言2016/07/16 13:47:45 -
依頼前の挨拶スレッド
最終発言2016/07/18 00:10:30
オープニング
七月某日。大型バスをチャーターしてリンカーたちは山奥のとある施設までやってきていた。
涼しげな風の音響くその施設は、近代的で真新しい作りと共に、小さなかいじゅうたちの声で満ち溢れている。
その声を聴いて遙華は溜息をついた。
今回のTV企画はボランティア。
H.O.P.E.直下の孤児院の子供たち訪問企画風景をとって、二時間の番組に仕立てるのだ。
期間は一拍二日。泊りがけでリンカーたちには子供たちの遊び相手をしてもらう。
これをすることによって、リンカーたちのイメージアップを狙ってグロリア社が名乗りを上げた次第である。
「今回も番組として面白さを出すために、いらない追加要素を加えるわ」
遙華は髪の毛を少年少女に引っ張られながら番組冒頭のシーンを撮影していた。
後ろのほうから、「おねーちゃーん、あそんでー」という金切り声が聞こえてくる。
「ここにいる子供たちの年齢は下は四歳。上は十歳まで」
そう遙華は気にしないふりをしながら。カメラに向かってルール説明を行う。しかし近くで見ている君たちにはわかる。
青筋が立っているし、口元が引くついているのが。
「彼等に一票ずつ表を渡してあるから、この表を多く集められた人の優勝ね」
「優勝すると、表彰されるわ。頑張って」
「四歳から六歳までは小児棟、七歳から十歳までは小学生棟にわけられているの。この影響である程度ターゲットを絞った行動が可能ね」
そう遙華は最後ににこりと苦笑いを浮かべると最後に一言。
「でも私は子供が嫌いだから、この戦いはみんなにまかせるわ。じゃあ。よろしく」
そうカメラのライトが消えたことを確認すると遙華は子供たちに言い放った。
「私の髪の毛引っ張って遊んだの誰よ!」
逃げていく子供たち、それを追いかける遙華。
心なしか両者とも楽しそうな笑みを浮かべている。
● ルール纏め、そして補足
子供たちは四歳から十歳までの男女合わせた百人が対象です。
比率は半々です。少年少女を喜ばせてたくさんの表を得てください。
少年少女たちは無邪気ですがハイパワーです注意してください。
下記に少年少女たちの年齢ごとの性格傾向。
性別ごとの性格傾向を並べておきます。
参考にしてください。
ただし、この情報が全てではないのでご注意を。
*四歳から六歳*
無邪気で疑うことを知らず素直。ただし下限という物を知らず常識もよくわかっていない。
*六歳から八歳 *
何でも知りたがるお年頃、また我欲が強くなり、私を見て状態になりがち。ケンカも起きやすいお年頃
*八歳から十歳 *
ませてきた年頃。話をするということの面白さを知ってきたころであり、大人を侮る発言なども多くなってくる。
*女子*
男性女性問わずなつきやすいが、威圧感のある人は嫌う傾向にある
*男子*
女の子がスキ、男性には挑発的。悪戯盛りなので過激な行動に注意
*スターキャラクター*
子どもと言えど個性的な人物はいることだろう。
要注意人物を並べておくので、対策を練っておくとスムーズに票が稼げるかもしれないです。
・『黒鳥のファズ』 本名 小鳥遊 健吾 十歳 男
子供たちからはファズと呼ばれ親しまれている。窃盗の天才でアイテムを盗まれる危険性がある。
またかなり反抗的で大人(16歳以上)には敵意をむき出しにする。
意外と純情派
・野島 正 六歳 男
数少ないリンカーである。常に共鳴しており、リンカーたちを見ると襲いかかってくる。
ドレッドノートの攻撃適性である。
誰が与えたか知らないが大剣のAGWを持っており、強そうな相手を探し求めている。
・ アイラ・レセクティス 八歳 女
金糸の目、金糸の髪の美しい少女。多くの男性児童を下僕としてはべらせている。自分のものにならない奴は嫌いである。
高飛車な性格、尊大な物言いだが、全部作り物なので、ちょっとしたショックを与えるとすぐに年相応の口調や思考回路に戻る。
・ 三浦 ひかり 十歳 女
アイドル夢見る少女。歌が得意、彼女のファンは院内に多い。
足が悪く車いすである。
聴覚が優れており多数の声の中から、目的の声だけ聴き分けたり、絶対音感があったりする。
大変傷つきやすく、自意識過剰なため、ボソッと聞こえたこうげきてきな言葉を最大限に悪く解釈できちゃう子である。
解説
目的 子供たちを楽しませる。
ここには愚神や従魔の事件によって親を亡くした子供たちが、国籍に関係なく集められています。
日本に作られている理由は一番生活が安定していて、子供たちへの悪影響も少ないと考えたためです。
この施設で皆さんは一晩過ごすことになりますが、行動によっては世間の闇に触れることになるかもしれません。
*スケジュール
12時 到着。軽く自己紹介とふれあいタイム。
18時 夕食、この時、十歳の子供たちの何人かと先生方は食事を作り始める。
リンカーからも調理してくれる人募集
20時 全員がお風呂など済ませた後に、希望すればレクリエーションタイムを設けられる。普通に子供たちと遊んでいてもok
*翌日*
6時 十歳以上の子供たち数名と先生方がご飯を作り始める、リンカーからも調理してくれる人募集
12時 外でBBQの予定
18時 子供たちがお別れ会をしてくれるそうです。この時に投票結果発表
スケジュールの合間の時間はひたすらに子供たちと遊んでいる時間です。
*フィールド
かなり大きな施設です。敷地は二キロ四方で、L字の建物です。
南側が小学生棟 西側が小児棟です。
建物の前にはグラウンドがあり、サッカー場と野球場が併設されています。
小さな庭もあり、子供たちが手入しているので綺麗です。
施設内は三階建て、二階三階は住居が集中していて、他にあるのは調理室と図書館です。
一階に娯楽室やリビング、多目的ルーム。放送室。職員室、保健室などがそろっています。
*グロリア社のサポート
今回は発注されたアイテムはだいたい貸し出すことができます。
ただし、今回のミッションに関係があると思われるものだけ発注可能です。
リプレイ
プロローグ
「ったく、何で俺がガキのお守なんかしなきゃならねぇんだか」
『ガンロック=ニルスター(aa2799hero001)』はそうぶつくさ言いながらバスから降りた。
「そういうな。一応エージェントとしての初めての仕事だ」
『牧島 凉(aa2799)』は相棒を嗜めると、その巨大な孤児院施設を見あげる。心なしか子供たちの暴れん坊パワーで揺れている気がする。
「うふ……ふふふふ……」
『青色鬼 蓮日(aa2439hero001)』は耳をぴくぴく震わせると、子供たちのギャーギャー騒ぐ声でを聴き身悶えた。
「うふふっふっふふふ、ごっほごほ」
それこそ盛大にむせこむくらいに、ちなみに彼女は普段とは違う割烹着姿である。
「迂闊、でシタ……」
バスに額を押し当てて後悔の念に飲まれる『鬼子母神 焔織(aa2439)』その背を『沖 一真(aa3591)』が気の毒そうにさすっている。
そして最後の忘れ物がないか確認した『北里芽衣(aa1416)』と遙華が下りてきて遙華が言った。
「はい、バスはいったん都内に戻るわ、私たちを地獄に置き去りにしてね」
そんな彼女の腕の中にはなぜか『アリス・ドリームイーター(aa1416hero001)』が抱えられている。
「もう一度約束、覚えてる?」
芽衣が言うと、アリスはうんざりした調子で、芽衣とかわしたお約束を復唱する。
「こわしちゃ」
「だめ」
「たたいちゃー」
「だめ」
「ぷー」
「ぷーじゃないの、みんなと仲良く遊ぶんだよ、アリス」
そんな芽衣たちを見て微笑む忍びの者が二人。
(子供達か。フフ、私にもこのような時があったな)
これが、護れた笑顔の象徴なのだ、そう思案し『無月(aa1531)』は思わず頬をほころばせた。
「この子達を見ていると心が洗われるね」
『ジェネッサ・ルディス(aa1531hero001)』
二人は普段の任務意匠とは違い動きやすい私服で登場。二人ともスタイルがいい。特に足が長い。
「子供、いっぱい……ボク、もう……はぁん」
「うわ、びっくりした」
蓮日の奇行に体を跳ねさせる遙華、心の底からこの人大丈夫かという視線を送るが【暁】隊長からの墨付きもあることだしと、とりあえず様子を見ることにする。
「さぁ往くぞッ!」
その直後、突如きりっとした表情で拳を突き上げた蓮日は、一行を先導して孤児院の中へ進んだ。
「……南無三」
もはや祈るしかできない焔織である。
「フフッ……なんだかお母さんになったみたいでこういうのも偶にはいいわね」
そう切なげな表情を浮かべながら『御門 鈴音(aa0175)』は『輝夜(aa0175hero001)』に言葉をかけた。
「ふんっ……鈴音はまず嫁にもらってくれる相手を探すのが先じゃな。」
やけに優しげな表情を浮かべながら言葉を返す輝夜に鈴音は首をかしげた。
「……案外お前……スミコとよく似とるぞ?」
ぼそりとつぶやく輝夜、その言葉は鈴音に届くことはなかった。
● 12時 ふれあいタイム
到着したリンカーたちは、子供たちのソワソワとした雰囲気を肌で感じながら一人一人自己紹介を始める。
「フィーっつーもんでやがります、どーぞよろしく」
「ヒルフェダ、マアヨロシクナ」
「えー、なんか、にほんご、へんだよ?」
子供たちにさっそくからまれる『フィー(aa4205)』と『ヒルフェ(aa4205hero001)』保母さんたちが止めに入るが、珍しい物を見た時の子供のパワーは半端ではない。
「エージェント兼陰陽師の沖一真だ、よろしくな! ……コワい話に興味ある子いる?」
早くも声を潜めて妖しい表情を作る一真の額をぴしゃりと叩いて『月夜(aa3591hero001)』は言った。
「はいはい、後にしてねー。私は月夜。この人の英雄です。よろしくお願いします」
「赤城 龍哉だ、っとこっちはヴァルトラウテ」
『赤城 龍哉(aa0090)』が『ヴァルトラウテ(aa0090hero001)』を紹介すると一部の女子から、キレーと声が上がった。
そして自分の紹介が終わるとヴァルトラウテは龍哉に耳打ちする。
「この気配」
「ああ、将来有望な奴がいるな」
「……蓮日さマ、貴女の番でス、涎フイて……」
そんな焔織の声で妄想の世界から戻ってくる蓮日。
「ハッ!? えーと……蓮日だよっ! フ、フ……ボクもー限界……待てこらァー! チュッチュしてやるーッ!」
その蓮日の暴走を皮切りに、子供たちの群にリンカーたちが飲まれていく。
「一人頭、大体五名……」
「何言ってるんだ、西大寺さんも遊ぶに決まってるだろ」
『麻生 遊夜(aa0452)』が子供を抱えながら言うと、遙華は苦笑いでそれに返した。
その直後である。首元が少し引っ張られた感覚を受け、あわてて胸元に手を当ててみると、ない、友達にもらったペンダントがない。
「こらー、待ちなさい! 私の水晶のペンダント返して!!」
「やだよーばーか」
「おーおー、元気だなー」
さっそく追いかけっこを始める遙華、それを眺めながら楽しそうにしている遊夜。
子供たちが遊んでいる姿を見るのはいつだっていい気持になるのだ。
「……ん、元気なのは良い事」
『ユフォアリーヤ(aa0452hero001)』がそう、笑った。
「そして、あれが噂の小鳥遊君か……」
その俊敏な動きはシャドウルーカ―もかくやというほど、遙華などまるで追いつけていない。
そんな遙華を見かねて『彩咲 姫乃(aa0941)』が健吾に接近。その手に握られているペンダント奪い返す。
「ほら、これ西大寺さんの大事な奴だからな」
そう遙華に投げ渡す姫乃。
「ふん、俺から盗るなんてやるじゃねぇか姉ちゃん……おれは『黒鳥のファズ』と知っての挑戦か?」
若干胸にしみる自己紹介を笑顔で受け流し、健吾の伸びた手を叩き落とす姫乃。
「ふっ俺から盗ろうなんて考えが甘いな。何故なら始めから貴重品なんて碌に持ってない」
「姉ちゃんかわいそうだな」
「貧乏舐めんなよ?」
「なんかあげようか……」
「いらん! それでも挑むのならば――闇のゲームの始まりだ」
二人だけの追いかけっこが始まる、そんな仲良さ気な二人を芽衣は遠巻きに眺めていた。
* *
「よーし、なにして遊ぶ? 外行こうぜ、外!!」
一真が手を取り、女の子たちを先導していく。
「カメラ―」
「とってとって!」
「……なんか、どっちが子どもかわからないよねぇ。ん?」
そう月夜にすり寄ってきた子供たちの頭を撫でながら月夜は訊き返した。
「ねぇねぇおねえちゃん」
「何? 私の話聞きたいの??」
「英雄って何?」
「正君たちと同じなの?」
「ああ、そうだな、正達と同じリンカーだ」
一真は子供たちをシャッターに収めながら答える。
「英雄って、一口に言ってもねぇ。私は異世界で愚神と戦い続けてて。でも他の英雄も同じとは限らなくて」
「よくわからない」
「そのうち解ればいいよ」
「二人はどうやって出会ったの?」
「それはね……」
そう月夜は腰を落とし、こどもたちの視線をまっすぐとらえた。一つ微笑みを向けゆっくり二人のなれ初めを離しだそうとした、その時である。
「ぎゃああああああああ、おばばがくるぞ!!」
かき消される月夜の声。
小児のフルパワーの絶叫はとてもうるさい、もはやお話しどころの騒ぎではない。
「きゃああー逃げろー」
「ようかいおばばだ! おばばだ!」
月夜の声はかき消され、目の前を五~六人の子供たちがはしりぬけていく。
「……だれが、おばばだー。こらまてー」
意外と男女問わずわんぱく者に人気の蓮日である。
「ニャハハーッ! あーこら! 喧嘩するなーッ! 痛いだろ!自分だって嫌だろーッ!」
「ああ、みなさんすみません」
その後ろをついて歩く焔織が若干不憫ではあるが、まぁ仕方ないだろう。
「むふふ……髪型はこーがいいぞ! うん、ほら美人になった!」
子供たちともみくちゃになりながら、静電気を帯びた髪を整えてあげたりしている。
蓮日の周りはてんやわんやの大騒ぎだが、子供全てがこんなにパワフルなわけではない。
大人しい子供たちも多くおり、そんな子供たちは凉がテーブル席で対応していた。
「あのね、凉お兄ちゃん。僕ね、好きな子がいるの」
「へー、どの子」
男の子の話を聞きながら凉は折り紙を折っていく。これが意外と難しく、折り紙帖を身ながら子供たちと四苦八苦している。
「あの子……」
そう指さした先には金髪の女児が、大勢の男子たちに囲まれている。
「あの子はやめておいた方がいいんじゃないか?」
凉は苦笑いをうかべる、しばらくその子とアイラを観察していると、ガンロックのほうに歩いていくのが見えた。
アイラは配下の子供たちに命じると、ガンロックを取り囲み、何の脈絡もなく言い放った。
「私の配下に加えてあげてもよくってよ」
次いで、女帝アイラ・レセクティスはガンロックに跪くように言った。
「あと胸が20cmでかくなってから出直してきな、ガキ」
一瞬何を言われたか分からなかったアイラだったが、目を白黒させた後顔を真っ赤にしてガンロックに食ってかかった
「破廉恥よ!!」
「あー、子供相手に何言ってるんだか。というかアイラって子もあれが楽しいのか? 変な奴だ」
「お前らも、こんな女にへこへこして楽しいかよ」
そうガンロックは取り囲んでいた子供たちを空に放り投げる。
「ちょっと、私の下僕たちよ!!」
「いや、そんな不健全な遊びやめとけって、外で遊ぶぞお前ら」
「ちょっと! 勝手に」
そのままガンロックは腕に巻きついた少年たちを引き連れて外へ向かった。
「こら! 戻ってきなさい!!」
「あー、あいつ一人にしておくとトラブルになりそうだ」
そう、凉は折り紙帖を閉じて、子供たちを引きつれ、彼のあとを追う。
「おい! ガンロックあぶないぞ!」
そして二人は外に出た。
* *
さて、ここでほかの場所にも視点を写してみよう
まずは図書館だ。ここでは文系の少年少女が穏やかな時間を過ごすことに従事している。
その子供たちの中心にジュネッサはいた。
「聞いて聞いて、アステカの文明を起こしたのはね。その昔このせかいにやってきたえいゆうなんだよ」
「へぇ、そうなの?」
「UFOって愚神なんだよ」
「それはすごいね」
それとは離れた卓ではヴァルトラウテが男女問わず人気だった。
武器をもっていなければお人形さんのような神秘的な見た目であるため引っ張りだこだ。
「髪綺麗!」
「地毛なの?」
「あそぼー」
「本読んで!」
そう子供たちにもみくちゃにされながらも丁寧に対応していくヴァルトラウテ。
「髪を引っ張ってはいけません、女性にとって髪は命なのですよ」
「……ん、良い子良い子」
「この本私好きですわ」
「遊びなら、あの元気が有り余ってる青年に頼むとよいですわよ」
「痛い痛い!! ダメです。めッ!!」
ちょっと大げさに痛がってみせると子供たちはションボリしてヴァルトラウテにあやあった。
「ごめんなさーい」
「お前この程度で怪我なんてしないだろ」
龍哉がこっそり問いかける。
「度が過ぎて他人に怪我をさせる前に、それが注意すべき事だと実感させておくのが、後々この子たちの為ですわ」
その時である。二人は反射的に振り返った、見れば図書室の扉の方から異様な気が感じられた
「おいヴァル」
「これは……殺気?」
直後、勢いよく開け放たれた扉。そして突貫してきたのは野島 正
「図書室は静かにって習わなかったのかよ!」
そんな少年の突撃を軽々といなす龍哉。ただ、いなすと言っても相手の攻撃をかわし、腕に手刀を叩き込んだだけなので、体制を崩せるほどではなかったが。
(共鳴しているリンカー相手に、生身はきついか)
ヴァルトラウテも同じ考えだったようで、二人は瞬時に共鳴。正を見つめる。
「おっさんつえーーな!!」
「これでもまだ二十歳前半だが……」
「くううう、燃えてきた」
――あの少年。
「どうした?」
――扉の向こうで見たあなたに似ていますわね
「………………」
扉の向こうのことは断片的にしか覚えていない龍哉はなんと答えていいかわからず、とりあえず幻想蝶から武器を取り出すことでお茶を濁す。
すると、それを開戦の合図だと捉えたのか、正は全力をもってして 大剣を叩きつけた。
「なるほど、なりは小さくともリンカーって事だな」
恐ろしいことに、純粋なパワー勝負だと少々手こずる龍哉である。
「俺のパワーに勝てる奴がいるわけねぇ」
正は高らかにそう、宣言した。
「将来有望だな」
――そうですね、ですが、戦いとはそれだけではないことを、教えてあげましょうか
「あらよっと」
ヴァルトラウテの合図で龍哉は正の剣を受け流して見せた。
剣を受けて受け流し、攻撃を空かしたところで首根っこを捕まえて持ち上げる。
「はなせせえええええええ。うわあああああああ!」
すごく暴れる正である。
「元気なヤツだ。いいぜ、気が済むまで相手しようか」
「やったああああ!!」
「でも、外でな」
「つか、共鳴したままとか英雄の方はどうなってんだ」
* *
次いで視点をキッチンにうつしてみよう。ここにも人数は少ないが、リンカーと子供たちがいた。
フィーと鈴音である。
フィーの方はエプロン姿で生地をこねていた。子供たちもそれを真似している。
「味は、プレーンとココアでいやがりますよ」
オーブンを全て使い、クッキーを盛大に焼き上げるフィー。
焼き上がったクッキーを見て感嘆の声を上げる子供たち。
「さぁ、まだまだ焼いてきましょー」
「おい、鈴音。お主はこちらに来ないのかのう?」
鈴音はわりと小さい子供たちであれば人見知りは発揮しないらしく。料理当番の年長組と仲良くなっていた。
「うん、私はこっち手伝うから」
「輝夜はそっちをお願い」
輝夜は背後に悪寒を感じ振り返る、すると少年少女がハイエナのような目をして輝夜を見つめていた。
この孤児院は多国籍だが、金髪はアイラ以外いないらしく、輝夜は好機の的だったのだ。
「……これだけは言うて置くぞ。わらわは身分を弁えぬ子童が一番好かぬ! 言うこと聞かんと喰ってしまうぞ!」
「鬼退治だ!!」
子供の波に飲み込まれる輝夜。
「暴れるなら外に行きやがれです」
フィーに怒られる子供たち。
仕方ないので輝夜は子供たちを引き連れ外へ、そこでは姫乃が子供たちを引き連れボールを抱えて走っていた。
「サッカーするぞ!」
バーンと物置の扉をあけ放って、大量のボールをカートに入れて押していく。
「それ、かってに……」
「いいんだよ、そして西大寺さんも来いよ」
物置からいろんな種類のボールを発見した姫乃はそれを持って、西大寺ファンの子供たちを引き連れて外へ。
「さぁ、サッカーもいいでやがりますが。栄養補給もそろそろ必要……」
そうフィーが大量のクッキーを手に現れると、誰かがクッキーだと叫び、その言葉に引かれるように子供たちは孤児院内に戻ってくる。
「はいはい、数がそんなにねーでやがりますから分け合って食ってくだせーな」
こうして日も暮れていく。
● 18時ごろ 夕食
時刻はちょうど18時を回るころ、リンカーたちは孤児院内に集まりつつあった。
「ようし、手伝うぜ。つまみ食いするなよ? ――月夜」
一真が調理室の戸をあけ放って言うと。傍らの月夜が絶句した。
「なんで、私が注意されてるのー!?」
「もうできてますよ」
そんな二人を横目に鈴音がエプロンを外す。
「こんばんはカレーですよ。」
鈴音がうれしそうに声を上げると、それを見て、出遅れたと膝を打つ月夜。
一真が鍋の中身を見てみると。
それは至って普通のカレーだった。分類的には田舎カレー。野菜もお肉もごろごろとは言っており、具材を手間暇かけて煮込んだ以外は普通のカレー。
家庭の味、お母さんの味、カレー。
「彩咲さん、料理上手ですね」
鈴音が言う。姫乃は少しはやめにやってきて手伝っていたのだが、その包丁さばきはスムーズだった。
「まぁ。いろいろあってな」
恥ずかしいのか言おうとしないが、花嫁修業は大体こなした姫乃である。
そんな和気あいあいとしたリンカーたちを狙う一つの陰が、調理室の扉の向こう側にあった。
「今がチャンスじゃねぇか?」
健吾は引き続き虎視眈々とリンカーたちの持ち物を狙っていた。
「何をしてるの?」
小鳥遊の手を芽衣は引いた
「盗っちゃだめだよ」
「あ? なんだお前」
「私も盗られたことがあるけど、辛かったから、だからダメなの」
芽衣の真剣な視線が至近距離から交わる、健吾は気恥ずかしくなって視線を逸らした。
「ね、ファズくん、一緒に遊ぼ。楽しければね、盗りたいって思わなくなるかも」
「俺は女なんかとあそばねぇ」
「ねぇ、もっと楽しいこと沢山あるよ。もしそれでも何か盗りたくなったら、私のを盗っていいから」
ちらりと芽衣に視線を送る健吾。
「だめ、かな?」
長らく沈黙が流れる、芽衣の視線は真剣で思わず健吾はコクリとうなづいてしまう。
(え? おれ、なんで)
「よかった」
そう芽衣は満面の笑みになって彼の腕を引いて食堂まで取って返す。
するとそのころには配膳も大体終わり、みんなが席についてご飯を食べるところだった。
●20時 子供たちはまだまだ元気。
時刻は二十時を回った、就寝前の一準備の時間である。子供たちをお風呂に入れなくてはいけない。
ちなみにこの孤児院は子供たちが沢山いる関係上、大浴場がかなり広く作られている。
「ああ……蓮日。に襲われた子らが……心配デス」
焔織は溜息をつく。
そして女湯。
「クク……此処ならば焔織も邪魔は出来ん……さぁさぁおいでっ! 女の子は手入れが大事ぞっ!」
「きゃあああ!」
「体洗ってあげる」
「ぎゃあああ!」
どことは言わないがゆさゆささせながら子供たちを襲っていく蓮日。
「照れるな照れるな! キミも直ぐ大きくなるぞっ!」
鈴音は輝夜を監視している。
姫乃は蓮日や鈴音がいるので風呂から出れずにいる。
「ヒケツはな……ニィ! 恋をする事だ! さーてキミは?」
「いないよ」
少女はしきりに手を振る。
「んー居るなコレは……小鳥遊かな?」
顔を赤らめる少女。
「ニャハハッ! いいじゃないか、女は恋をして美人になるもんだ!
「……男って見栄っ張りなんだ。何時も傍にいて、沢山褒めて、沢山励ましてあげなさい。それが上手く行くコツだよ!」
その言葉をきいて緊張したような表情を見せる芽衣、彼女は湯の中に深く沈み、ブクブクと口から泡を出した。
そんなてんやわんやの女湯だったが、リンカーたちもやることはやっていたようで、実際はスムーズに入浴時間を終えることができた。
そしてレクリエーションタイム、リンカーたちは子供たちに一つ一つ出し物を披露していく。
一真の出し物は階段である。
「これは、俺が受けた仕事の話なんだけど……」
雰囲気の出た離し方に子供たちは身を縮こまらせて聞いている。
「襖がその時すぅっとあいて、そして。そこに目が」
ぎゃあああああああ!
悲鳴を上げて逃げ出す子供たち。
「まぁ、実はおばあちゃんだったんだけどな」
「途中で逃げられたんだけど……」
「最後まで残ってる子もいたけどね」
焔織は策に頼らず、子供たちと単純に遊ぶだけである。
「むーすーんで、ひーらいて……ニャハハっ」
焔織を気に入っている子供たちは昼の大騒ぎでそうとう疲れたのだろう。すぐにぐったりし始めた。
「なー? 将来の夢はあるのかー?」
「ボクはね、ヒーローになりたい」
「お姉ちゃんはヒーロなんだよね」
苦笑いをする焔織、言葉に迷っていると就寝の鐘が鳴った。
「おっと、時間だ!」
布団に入れーっとリンカーたちは子供たちを寝室に追い立てていく。
「どーした、寝れんのかー? むふふー(ねんねころーりよー、おころーりよー……」
熱いと言いながら四本の手足で抵抗する子供たち。
「親を奪ワレし……子らの悲しみ……如何ホドのもノか……」
焔織は寝静まった子供たちを見つめてつぶやいた。
「ニィッ……しょっぱい顔すんなっ!」
びっしとデコピン、あうっとのけぞった焔織
「……これから沢山の愛を、幸せを知ればいいのだ」
●翌日 6時
孤児院の朝は早い。
「よ、夜寝かせてもらえねーかった」
「いいよ、私が作るから」
割烹着の月夜はぐったりした一真に布団をかぶせてやり、意気揚々と台所へ進む。
「朝ごはんの定番はこれよね」
そう鈴音はお味噌汁、シャケ焼き、のり、ご飯というラインナップを手早くそろえて見せた。
「何かその、お手伝いしましょうか?」
芽衣が目をこすりながら鈴音に問いかけると、鈴音は言った。
「輝夜を起こしてきて、ご飯を運んでくれます?」
芽衣は張り切って輝夜を起こしに行く。
その後リンカーたちはまたみんなと遊ぶ役と、そしてBBQの準備をする役に解れた。
遊夜は庭先で、炭をおこしながら子供たちを見ている。
「おー、綺麗なもんだな」
「……ん、綺麗、だねぇ」
結局、昼間での自由な時間は、昨日の自由時間と同じ様子になった。
一晩寝て体力が回復した子供たちは、騒ぐものは騒ぎ、大人しく過ごしたいものは本を読んだりゲームをして過ごす。
そんな中姫乃は昨日と違い室内にこもって大人しめの子供たちの相手をするようだった。
ボードゲームや本の読み聞かせをして、穏やかに時を過ごしている。
「……また読み聞かせするのか。縁があるのかな?」
「えんってなに?」
「いや、お前たちより生まれたてほやほやの友達がいて、そいつにいろんな本を読み聞かせたんだ」
「どんな人?」
「歌がうまかったな」
そう姫野はとある少女との思い出を反芻する、その時だった。
まるで脳内の彼女の声に重なるように、施設の外から歌声が聞こえてきた。
「この声は?」
その声に導かれるように姫乃は裏口まで歩いて行った。
* *
裏口はさして整備がされていないため草が生え放題になっている。沢山のファンが並び、そこから熱を帯びた風が排出されている。
そこにその少女がいた。
少女は車いすに座っており、目を瞑って歌を謳っていた。
「誰ですか?」
その時少女が振り返る、その視線の先には一人の凉が立っていた。その後ろに立っていたのは姫乃。
「歌聞かせてもらったよ」
凉が言う。
「あはは、恥ずかしいです」
「足が悪いのか」
「これは……」
「ああ、いや、すまん。傷つけたなら謝るよ」
「歌、上手いな。あんたは」
姫乃は脳内のファイルをめくっていく、彼女はそう三浦 ひかり
「ここで一人で遊んでる必要なんてないぜ、こっち来ないか」
「でも、私はみんなを邪魔しちゃうし」
そうひかりは車いすを叩いて見せる。
「私はみんなとは違うし」
「この程度で躓くようじゃ夢なんて捕まらないぜ。奴さんは逃げ足が速いんだ」
「おいガンロック」
「でも、歌は本当にうまいと思ったよ、友達がアイドルやってるけど負けじおとらじって感じだ」
姫野が言葉を継ぐ。
「えへへ、ありがとうございます。私将来アイドルになるのが夢なんです」
「へー、アイドルが夢なのか。」
「髪いじっても平気か? ブラッシングのやり方とか教えるぞ?」
「ブラッシング……大人だ。お姉さんすごいですね」
なぜか肩を落とす姫乃。
「いやいやまぁ、できるできるっていうだけなら簡単だけどな。それよりは役立ちそうな事を教えたいと思ってな 」
● 12時 外でBBQ
いい音を立てながら、肉が、野菜が焼き上がっていく。
やはり炭火だな、炭火、そう言いながらアウトドアの似合う男たちが肉をとりわけていく。
「ほら、できたぞ」
凉が子供たちのさらに串から外した肉を並べて言った。
「よーし、好きな物言ってくれ。あ、必ず野菜を一つは食べるんだぞ」
一真が串を回収しながら言う。
「うんうん、なんでも食べればそれだけ強くなるよ」
両手に三本ずつ串を抱える月夜である。
「お前は食べ過ぎ」
「食器はこっちにおねがいしまーす」
鈴音は使い終わった食器をかたずける。
そして子供たちが食べ飽きたころを見計らって、フルーツゼリーを持ってくると子供たちから感嘆の声が上がった。
「ほら、お姫様」
そう遊夜は肉を盛った皿を一人の少女に差し出した。アイラである。
「あら、いいの? ありがとう」
高飛車な態度をとりつつも、子供である、食べるのは好きなようで、美味しいとホクホクの笑顔を見せてくれた。
「いいわ、貴方わたしの下僕になりなさいな」
お決まりのセリフをアイラがはくと、遊夜は苦笑いを向けた。
「そんな言葉どこで覚えてんだ……」
「……ん、ダメ、コレはボクの」
そう間髪入れずユフォアリーヤは遊夜の頭を抱える。
「だそうだ、すまんねお嬢様」
そしてご飯を食べ終わったものから、また遊びに出ていく。
その子供たちの手を引いて、無月が草むらを回っていた。
カタツムリや芋虫なんかを見て楽しげな声を上げるのは子供ならではだろうか。
子供たちはしきりに無月に問いかけてくる。
好奇心が豊富なのだろう。
「芋虫ってどうやって蝶になるの」
「一度さなぎになると、中でいったんどろどろに溶かされ蝶になる」
「えーーーー」
「おお、気を付けた方がいい、その植物には毒がある」
「そうなの?」
「と言っても根っこにだが。それに植物というものは大体が、少量の毒を持っている物だ。ジャガイモですら光を当てると毒を持つしな」
「蝶々になるか観察する」
そう男の子が芋虫を手に取ったが、それを無月は葉の上に戻してしまった。
「命を無駄にする必要はない、自然に生きる生物を人の思惑で勝手にとらえてはいけないよ」
そう無月は子供たちの頭を撫でた。
* *
BBQも楽しく終わり、後片付けまできっちり子供たちに教え込んだ後。リンカーたちは最後のふれあいタイムを楽しむべく孤児院内に戻った。
「さぁ、食後にお菓子を作るという食いしん坊もびっくりなスケジューリングでやがりますが」
そうフィーはあたりに集まったエプロン姿の子供たちを眺めながら言う。
「お菓子作りを教えてやります。クッキーでもマフィンでも好きにしがれってんです」
そう拳をつきあげて、笛吹き男よろしく子供たちを調理場へ先導していった。
ごっそり人がいなくなった多目的スペースの隅っこでは健吾が寝そべっている。
心底つまらなさそうにボーっと天井を見ていると、それを芽衣が覗き込んだ。
その細い髪の毛が頬の当たってくすぐったい。
「なんだお前、あの糞餓鬼の面倒を見てるんじゃねぇのか」
「アリスのことです? あの子なら御門さんが……」
アリスと輝夜、さらに子供たちで結成された大軍団相手に一人で対応している鈴音を想像して、少し不憫に思いつつ芽衣は笑う。
「昨日はいいだけ遊んだろ、俺は疲れてんだ、休憩」
「だから今日は誰のものも取ってないの?」
「…………そうだよ」
「うれしい」
そう笑う芽衣が眩しくて、健吾は体を起こしてそっぽを向いた。
「だから、お前がここに来る必要もないんだよ。他の餓鬼と遊んでろ」
そう健吾が手を振ると、芽衣は言った。
「あと少しでお別れだね」
健吾の手の動きが止まる。
「ファズくんもみんなもありがとう、すごくね、すごく楽しかった」
「…………」
「ずっと忘れないから、その、アリスと一緒にまた来るね」
「そうかよ」
その時18時を告げる鐘が鳴った、お別れの時間である。
芽衣は悲しそうに、立ち上がり、そして一度だけ健吾を振り返った。
● 18時 お別れ
リンカーたちは十八時の鐘音で職員室に集められた
ここで職員たちからお礼が延べられ、とても助かった。また来てほしい等口々に苦労をねぎらわれる。そして。
「準備ができたわよ」
そう遙華が扉を開けてリンカーたちを先導すると。見慣れた一階の多目的ホールの前で止まった。そして。
「今回の企画は大成功ね。助かったわ。ありがとう」
そう告げて、中に入ることを促した。
すると盛大な拍手で迎えられ子供たちが、リンカーの前にそれぞれ一人ずつ立っている。
「おにいさん、おねえさん。ありがとうございました」
「またきてくれるよね?」
「まってるからね」
口々にお礼の言葉を述べ、子供たちは折り紙で作ったバッジだとか、手作りの品々をくれた。
「ありがとうな、俺らからもプレゼントがある」
そう言うと一真は鞄からアルバムをいくつか取り出して、子供たちに見せていく。
「わぁ、すごい」
一真は子供たちと遊ぶ傍ら沢山の写真を撮っていたのだ。
「また来てやるよ、それまでいい子にして待ってろよ」
エピローグ
帰りのバスに乗り込むときは、子供たちがバスの妨害をすると大変なので、全員が孤児院の中からリンカーたちを見送った。
「じゃーなー!また来るぞー!」
蓮日は満面の笑みで孤児院に手を振ると
「……最下位、でシタね」
そっと焔織。
「むむ? そーなのか? ニャハッ!気にしてる暇もなかったッ!
ちなみに、順位としては、姫乃が一番で遊夜と一真が同着で二番。しかし一人一人の表ではあまり差が出なかったので、みんなお気に入りのお兄さんお姉さんが見つけられたのだろうと思えた。
「その、青色鬼さんの気持ちはきっと伝わりますから」
そう芽衣が蓮日に声をかけると。
「お、お! 気遣っているのか!! いじらしい!!」
そうテンションの振り切った蓮日に捕獲される。
「芽衣はアリスのなのよー!」
そうアリスが抗議をするが蓮日は芽衣を解放しない。
「芽衣!!」
その時だ。突如名前を呼ばれた芽衣は首を回す、すると一人教員たちを巻いて脱出してきた健吾が、芽衣を見据えて立っていた。
「また、来いよな」
「うん、絶対に来るから、健吾君も元気でね」
「絶対に、絶対だぞ、俺も会いに行くから」
そしてバスははっしゃした、それぞれの思いを残し孤児院は遠ざかっていく。