本部

ワレワレハウチュウジンダ

ふーもん

形態
ショート
難易度
普通
オプション
参加費
1,000
参加制限
-
参加人数
能力者
5人 / 4~6人
英雄
3人 / 0~6人
報酬
普通
相談期間
5日
完成日
2016/05/21 18:42

掲示板

オープニング

 学園は混乱していた。
 場所は日本の首都東京。そしてその都会のコンクリートジャングルに奇妙な物体が上空を占拠していた。
 ――UFO? UMAの出現!? 空から襲い来たる天空の使者!? 地球危うし!?――
 等とそうメディアは報道していたが、大した波及効果は当然にして生まれない。この時代、現代ではありきたりな現象とも言えたからだ。
 だが――。
 都市伝説は加速する。唯々加速し続ける。それ故に学園内ではこの話題で持ちきりだった。
 ありきたりな日常に突如遅いかかってきた謎の物体X――。誰もがそんな存在を認めてはいなかった。否、認めるはずもなかった。
 だからこそ都市伝説と化したのかもしれない。
 1995年に起こった世界蝕。ワールドエクリプスによって既に人類は一時的な危機的状況から離脱し、H.O.P.E.を始めとした組織体制が世界中に散りばめられた。
 それはある種の革命。善悪問わず、人類の新たな歴史が紐解かれた瞬間だった。無論、ヴィランズである古龍幇やシーカ、セラエノやジャンク海賊団等々に至るまでも例外ではなく、兎にも角にも今、この世界は大きな局面を迎えて20年程度しか進んでいないのだ。
 愚神、従魔、エージェント、英雄、ヴィラン――etc.
 もう摩訶不思議現象とは金輪際無縁でいたいと思うのは誰しもに共通した概念であり、実際に誰もがそう思っていた。特に悪と戦うエージェント達にとっては。

 だが、しかーしそうは問屋が卸さない。時間とは時に恐るべき魔力を放った。5月病を吹き飛ばす勢いで学園の上空にそのUFOらしからぬ円盤が急接近したのだから。そしてその中にいたUMA(?)は警告音、アラームを比喩的に言えば火災報知器の様にがなりたてた。
「ワレワレハウチュウジンダ。トオイギンガノナレノハテ。ソノスぺクタクルナホシノシト。カガクトジンルイノエイチノケッショウ。ブラックホールニスイコマレ、ホワイトホールカラヤッテキタ」
 まるで中学生のイタ電のようだった。なぜ、日本語をカタカナ表記でわざわざ喋るのか? 不思議でならないが説明不要だと思うので、割愛させていただく。

 その謎の飛行物体Xの正体は新手のヴィランだった。現代では誰もが目を疑わない現象。丸い円盤の様ないかにもデフォルメされた飛空艇と呼ぶべきものかどうか――チョッとそういう意味では信じがたいが――には脳内設計のイカれたヴィランがまるで宇宙人の如き素振りでなぜか知らんが学園を襲っているではありませんか。NASAもビックリ仰天しない珍現象。しかし、その背後にはヴィランの親玉だけではなく、どうやら日本のマスメディアの黒幕がとある理由で大盤振る舞いを揮っているらしい。さすがにこれにはやられたと言うかH.O.P.E.東京海上支部も黙っていなかった。
 何せ、案の定問題は視聴率独占の為にヴィランを味方に付けたと言う点にある。最近のテレビはつまらないからと言ってその台本を変えるのはその手の放送作家側の自由だが、お茶の間でリモコンを握っている視聴者がつまらないと思えば番組変更あるいはテレビの電源を落とすのはこれまた視聴者側の自由である。
 そんな中、ヴィランはやりたい放題。これを黙せずして地球は、人類の科学と英知の結晶は守れない。

 兎にも角にもこの際、何人でも良いのだが宇宙人らしからぬそのヴィランはそう言った。まさかとは思うが、友誼の象徴として――
「明るい未来、美しき日本の創造」
 なんて事を真面目に喋り出したらそれこそ急性のジンマシンでも発生しかねない。ある種のパニックだ。そんな台詞はどこぞの政治家か総理大臣にでも任せておけばいい。宇宙人だかなんだか知らないが、本気と書いてマジで友誼を深めたいと思うならば人差し指でも互いに合わせて早々に立ち去って貰いたい。

 ――と、そんないてこました妄想を学園へと派遣されたエージェント達6名は勝手気儘に完全無欠な超常現象相手に思っていた。だが、これも仕事だ。
 真っ先に動いたのはやはりH.O.P.E.東京海上支部だ。こんなソメイヨシノも散った後の気だるい五月病が蔓延した最中だってのにえらい面倒事をよこしてくれたもんである。
「今回の仕事の依頼はあくまで調査です」
 H.O.P.E.東京海上支部の女性教官は淡々とした口調で言った。やけにインテリ眼鏡が似合う女性教官はあくまでもきびきびと真面目な姿勢を崩さない。どこまでも本気と書いてマジだった。ある意味、大物だ。今回の依頼。鼻先で笑いたい衝動もあるが、これも仕事だ。
 インテリ女性教官は言う。
「まあ、大方の予想は付いていますが相手の正体が分からない以上、迂闊に手を出すのは危険です。まずは事件が現在進行している場所の学園の生徒から事情聴取を行って下さい。今回はテレビ放送局側に問題の根源がありそうです。つまりこの学園の噂をネタにしたスパイが暗躍しているかもしれません。都市伝説――と言う噂が広がっている通り、何かしら手掛かりが掴めるかもしれません。その手の情報に詳しいのは学園の生徒だけです。もちろんこちら側からもサポートや支援物資、アプローチを仕掛けます。何も相手は宇宙人だと決まった訳じゃありませんから。情報によるとヴィランと言う線が最も濃いと我々は踏んでいますが……そのヴィランの正体を看破し、学園陰謀説を否定するのが私達の課された目的です」

 つまり今回の依頼は宇宙人もどきをとっちめろ! じゃなくて、宇宙人もどきを調査した後、とっちめてあのUFOらしからぬ物体の中の詳細を調べ上げ、正体を明かせ! と言うものだった。どこか危険な香りがするがそう言う事らしい。

 はてさて、そんなこんなで6人のエージェント達は皆、少し首を傾げつつもその疑問符を解消すべく現地の学園へと赴いたのだった。
 ――その謎に立ち向かうべくして。

解説

 今回は久方振りの『調査』を行って貰います。こんな人類、あるいは世界が大変な時にましてや地球外生命体がやって来るなんてトンチキにも程がありますね。
 まあ、モノホンのUMAかどうかはともかく学園の生徒達の間ではどうやらある種の都市伝説と化しているみたいです。H.O.P.E.側では完全にシラケムード満載であくまで新たなヴィランと言う線で話は進んでいくみたいですが……。
 さて、そんな事よりも条件がいくつかあります。それは以下の通りです。

 ・具体的な情報は学園生の間で広まっている。
 ・あくまで噂なので、確信に至る事はほとんど稀。無いものと思っても良いですが、そこから共通点を導き出せば自ずと答えは見つかるはず。
 ・生徒達の証言からここ数日、怪しい人物がいなかったかどうかを割り出すのも1つの手。
 ・テレビ放送局側のスパイを捕まえれば状況はよりスムーズに運ぶかも。
 ・もう既にその謎の飛行物体は屋上で待機しているので、戦闘組と調査班とに分かれるのが理想的かもしれません。
 ・調査とは言え今回はバトル的展開も避けられない模様。
 ・H.O.P.E.東京海上支部からのサポート、情報、支援物資を活かして学園から悪の魔手を遠ざけるのが本来の目的であり狙いでもある。
 ・最終的に相手の正体を暴けたのなら、成功。

 ――以上です。それでは熱意のこもったプレイングお待ちしております。

リプレイ

 本気と書いてマジでやって来たエージェントは6名では無く5名だった。英雄も含めると計8名。

 そんな中、彼等は動く! 走る! やりたい事をやる!

 ――そして調査は始まった。

●調査段階――その壱
『おお、丁度良い。そこの童ちょっと妾の質問に答えてはくれぬか?』
「あ、もしかして――H.O.P.E.東京海上支部から派遣されてきたエージェントの人? あのUFOの」
 そう答えたのは1人の男子生徒。早くも聞き込み調査に走っていたのは他でもない。
 ――リィェン・ユー(aa0208)とイン・シェン(aa0208hero001)だ。だが、主に聞き込み調査役はインが主体で男子学生を中心に行う。
『ああ、そうじゃ。ならば話は早い。最近じゃがこの近辺、いや学園内で黒い噂を垂れ流している危険人物を知らないか?』
「危険人物? 残念だけど僕には心当たりが無いな。あの都市伝説の類ならば、この学園じゃ知らない者はいないはずだけど」
 リイェンとインは同時に目を合わせる。
『童よ。もう少しその都市伝説とやらを詳しく教えてはくれないじゃろうか?』
 思わずインがそう問い詰めると、その男子学生はあっけらかんと答えた。
「何でもあのUFOに乗っているのはうちの学校のトップ。つまり校長先生の知人らしいんだ」
 ――?――
「年に一度。特に5月病でだらけたこの時期に学生の精神を正す為に雇われた宇宙人がUFOに乗ってやって来る。そして生徒達にある種のマインドコントロールをして自主自立の精神を養うんだ」
 ――?――
「そんなのたぶん誰も信じないとは思うのも無理ないよね。でも、しょうがないじゃん。それがうちの学校の伝統なんだから」
 思わず口ポカン状態となってしまった2人組。唖然とした――と言う形容詞がこれほど似合う言葉は無いと言う程に。

●調査段階――その弐
 謎の転校生。都呂々 俊介(aa1364)とタイタニア(aa1364hero001)は名探偵とろろくんとなって(リンクして)学園の調査を行っていた。
 もちろんリイェンとインとは別行動だ。因みにここの学園は私立高校だけあって異様に設備が充実していた。
 真新しく近代的なその校舎内は塵1つ無く優美で、その豪奢な佇まいは優秀な建築デザイナーのオブジェを想起させた。
 名探偵とろろくんは謎の転校生と言う名目なので、学園のブレザーの制服を着こなして目的地であるオカルト研究部へと走った。
 オカルトオタクの巣窟。
 目を光らせてオカルト研究部なる部室の扉をノックする。
「どうぞ」
 中から伊達メガネを掛けたブレザー姿の一見無害なオカルト生徒の1人が怪訝そうに一言。
「誰ですか? あなた達は?」
 その部室の中はこれまた物騒な気配でいっぱいだった。
 部室内にはお香が焚かれ、奥の教壇の上には黒と赤のリバーシブルの布が敷かれ、その上には蝋燭が2本小さな灯火を燻らせている。その中心には悪魔の象徴である角の生えた髑髏の頭部が静粛に鎮座している。
 部屋の蛍光灯は外されており無残にもその痕跡が残っていた。窓ガラスにはカーテンが幕の様に閉じられており、5月の日光のUVカットに貢献していた。
「オカルト生徒諸君! あのUFOの正体について君達はどう思います?」
 怪しい雰囲気を出しているその場の空気を読まずに名探偵とろろくん事、謎の転校生は言う。
「あれはリトルグレイと呼ばれる宇宙人の乗り物ですね」
 これまた空気を読まずに答えたのはオカルト研究部の女子だった。フード付きのローブをセーラー服の上に纏っている。
「リトルグレイはその名の通り、普通の宇宙人よりも小さい。例のUFOは見ましたか?」
「いや――それはまだだけど」
 さすがにこれには頭を振った。いきなり話の核心を衝かれてしまった。
「映画にもある様にその宇宙人にはある目的があるそうですよ」
「ある目的?」
 思わず聞き返す。
「目的。それは地球人との友誼を深める事。何でもこの学園には長い間の伝統らしいんだけど」
「伝統?」『伝統?』
 思わず顔を見合わせる名探偵とろろくんとその相棒の小さき妖精タイタニア。
「伝統。うちの校長先生は宇宙人を呼べるらしいんですよ。その昔、友達になったらしいんですが。だからこそ私達の様なマイナーオカルト研究部も正式に認可されてるんです」

●調査段階――その参
 調査班のリイェンとインは東棟。謎の転校生――名探偵とろろくんはその反対側の西棟。天野 雅洋(aa1519)は職員室のある本館だった。
 どこかの空調設備業者らしからぬオーバーオールを着て学園内に潜入した天野は本館の職員室に直行した。
「マスコミがガタガタ言う前に終わらせねーと、大変な事になるぜ」
 元々、天野はあるメーカーのH.O.P.E.担当の会社員で研究部門への納品や営業が業務内容だが能力者である事からエージェント登録もされてこき使われていた。
 そんな中、舞い込んできた今回の仕事の依頼。
 正直、本音を言えばこれ程バカらしい仕事も無い。何せ学校の都市伝説だ。
「失礼しまーす。空調設備の点検にやってきましたー」
 意気揚々と仕事モードへと移行。そんな中、1人の男性教職員がとことことやって来た。
 正体がバレたのかと冷やりとしたがそれは杞憂に終わった。
「最近、ここの業務用クーラーが故障気味でね。職員室内が熱気でモヤモヤしてまだ5月だってーのに蒸し風呂状態。整備の方、宜しく頼むよ!」
 そのまだ20代と思しき男性職員は世間話の如く不満をぶちまけたいらしい。
「そうっすねー。マジハンパねぇっす! それにしても……あの屋上にあるUFO? 本物?」
 さり気無く例の問題の事件について窺い申し立てる。ちょうどいい。この男性職員なら話が合いそうだ。
 それにしても屋上にはUFOらしからぬ存在があるってーのにひたすら静かで平和だな。漫画喫茶か? ここは。
「ああ、あれね。生徒達の間では都市伝説だの言われていますが……実際の所、正体は不明。なんでもこの学園の機密事項に触れるんだとか。私もこの学校に最近赴任してきたばかりなので詳しい事は分からない。――だけど」
「だけど?」
 この人の良さそうな職員は声を縮めて密やかに言った。
「どうやらこの学園にはヴィランの手先となる人物がいるらしいんだ。生徒達を洗脳し、学園陰謀説を唱える何者かがね」
 まあ、私は信じてはいないんだけどね。と、最後に締め括りその男性職員は快活の良い笑みを浮かべた。

●調査段階――その四
 鎧堂鷹獅(aa3930)は別館から部活動が行われている広場や校庭の敷地内。その周辺で地道な聞き込み作業をしていた。
「いきなりでごめん。ちょっと教えてほしいんだけど……」
 その地域の各地で念入りに調査を行っている鎧堂の思惑は出発前に女性教官が言っていた言葉だ。
 ――今回はテレビ放送局側に問題の根源がありそうです――
 そしてこうも言っていた。
 ――この学園の噂をネタにしたスパイが暗躍しているかもしれません――
「あのUFO? 例年行事だからなあ。ほとんどの生徒達がどうでも良いと思ってるんじゃないかな」
「スパイ? そんなのいないよ。そもそも都市伝説じゃないし」
「うちの校長も何考えてるのか分からないな。洗脳とかされたんじゃ、自主自立もクソも無いんじゃないかな?」
 UMA自体の正体が分からない――と、言う結論にとりあえず至った。何せどうやら生徒達は同時にマインドコントロール。つまり洗脳されてるらしいから。
 では、相手が仮にヴィランだと仮定して、一度にこの学園全員の生徒達を操る事が出来る、そしてそういった類のコネクションを持っている人物。
 そいつがスパイだ。――そしてそこにマスコミが付け込んだんだとしたら……必然的に犯人は限られてくる。
「まさかとは思うけど……だとしたら最悪な事態だな。この学園はずっとヴィランの魔の手に晒されている事になる」


 唯一、屋上でUFOと対峙しているのは石井 菊次郎(aa0866)とテミス(aa0866hero001)だった。
 さり気無くハンディビデオカメラを幻想蝶事ライヴスメモリーに携帯し、その謎円盤を待機させるべく時間稼ぎの交渉に挑む。
「失礼します。遠い銀河の成れの果てより、ホワイトホールとブラックホールを越えてこの様な辺鄙な惑星にご訪問頂き誠に有り難うございます。お疲れのところ申し訳有りませんが、ちょっとお話など宜しいでしょうか?」
 石井は相手の挑発に乗らない様また相手を威嚇しない様、言説丁寧な口調でその反応を窺った。
「ウム。ワレワレトシテモチキュウジントノユウギヲフカメルコトニイロンハナイ。クルシューナイ。チコウヨレ」
 相手も別段困った風な様子は見せない。これからランチタイムでもあるかのように上機嫌で片言では無い日本語を繰り返す。
「では、幾つかお尋ねします。あなたがUMAであると言う確たる証拠として、まずその乗り物。敢えてUFOとしましょうかねえ。その浮力はどう言った形で得ているのですか?」
「ソレハライヴス――イヤ、ナンデモナイ。チキュウジンニハカンケイノナイコトダ」
 ひそひそ声でテミスは言った――『今、何か言い掛けたぞ?』
 ひそひそ声で石井は言った――「俺にはライヴスとしか聞こえなかったが……とりあえず話を続けよう」
「そう言えば、自己紹介がまだでしたね。俺は石井菊次郎です」
『我はテミスだ。貴公の名は?』
「ワレワレハウチュウジンダ。ユエ二ナナドナイ」
「訪問の目的は?」
「コノガクエンノインボウ――イヤ、チキュウジントノユウギヲフカメルコトダ」
「おや? それはおかしいですね。私達、地球人の特にこの学校の生徒達は皆一様にして学園陰謀説を唱えているのですが」
「ソ、ソノヨウナコトハ――ナイ」
『マスメディアの企てる反乱』と、こちらはテミスが意味深な一言。
「マサカソンナ――コトハ――ナイ」
「えーと。実はですね事前にマスコミの方達にゲロッて貰ったんですよ。ええ。全部。その通りに。簡単でしたよ。あなたはUMAではなく、ヴィランだと」
「何!? 裏切ったな!」
 いきなり本領発揮してくれた未だ正体不明のUMAじゃなくてヴィラン。
「バレバレだな。こんな単純なトラップにも引っ掛かるなんて……ええ。もちろん全て嘘ですよ。でもこれで全て辻褄が合う。あの、女性教官はやはり優秀だ」
『マスメディアの企てる反乱』と、またもやテミスが意味深な一言。
 しかし段々、腹立たしく思ってきたのは他でもないテミスだ。
『そのUFOらしからぬ機体の動力源はライヴス――いや、具体的に言えばライヴストーンだな? 貴様』
 貴公から貴様に一人称が変わったあたり怒りの炎が燃え滾る。
「それでは明かして貰いましょうか。今回の所謂都市伝説――マスコミの黒幕が動かした学園のスパイの名を」
 その間、ハンディビデオカメラをさり気無く起動させていたのは言うまでもない。

 とりあえず学園陰謀説のラストを締めくくる為に校舎の中庭に集った一行。因みに石井&テミスは屋上にて未だ調査中。
『童の言っていた事が本当ならば――』と、イン。
「名探偵とろろくんの推理が正しければ――」と、文字通り名探偵とろろくん。
「俺はあの男性職員の話を信じたい――」と、天野。
「てゆーか、犯人はその人以外にありえない。辻褄があってれば――」と、鎧堂。

 全ての調査班の行動&聞き込み調査を行った結果……。

 ――犯人は校長先生!――


「えー。この度は、ヴィランの『NASAもビックリ! ドッキリ大作戦』のイベントにご協力いただき感謝感激雨霰! 生徒達の諸君!」
『妾等、エージェント一同も応援しておるぞ! 何せヴィランとの友誼を深める為!』
「またとない機会!」
『千載一遇のチャンス!』
「『この機を逃さずに!』」
 拡声器を使って思いっきりバッチグーな宣伝文句を謳い上げる。リイェンとイン。もちろん生徒達への逆アプローチ。例の噂の本領発揮だ。
「コラ―! 貴様等、校内で何をやっとるんじゃー!」
 どこかから聞いたのか登場したのはもちろん学園の首領。THE 校長。そしてそこに飛びかかったのは他でもない。名探偵とろろくん。
「……ズバリ! あなたは宇宙人のエージェントですね! 証拠は上がっているのです!」
 いきなりの名探偵のご登場に拍子抜けしたのか、うっかり校長は騙るに落ちて口を滑らせる。
「ガッハッハ! そのとおーり! 我こそは全人類の代表。UMAと名だたるヴィランの手先。悪の権化。学園陰謀説のスパイ! ――って、何言わせるんじゃ! ボケ!」
 ――シン。瞬間、聞いていた生徒達は静まり返る。
「オイ。聞いたか?」
「マジかよ」
「――嘘でしょ?」
 校長直伝のご挨拶に口々に生徒達は疑心暗鬼になる。リイェンとインの作戦が名探偵とろろくんとマッチして成功した。
 そして極めつけにリンクを外したタイタニアが問い詰める。
『――そうか。ならば教えてくれないか? そのUMAとやらがいるはずのUFOに乗り込む方法を』

「この学園の校長が犯人?」
「ククク。そうさ。この学園を食い物にしている犯人は校長。だが、残念だったな。生徒達を私の手で洗脳している以上、誰もそんな事信じるはずもない」
『完全に開き直りモードなのは勝手だが――』と、こちらは怒り奮闘テミス。
『どうやらその校長がスパイだと言う専らな噂が今、現在校舎内で発生しているみたいだぞ』
 それはリイェンとインのあの噂の逆波及効果が齎した決定的な一打だった。仲間内から自前のスマホでその情報を掴んだ。
 そしてテミスは一通り作業が終わったらUMA――ヴィランとの対峙に屋上へと来て支援してくれとメールを返信した。
 マスコミ、UMA(ヴィラン)、校長先生のトリプルアクションにて毎年行われていたこの都市伝説はこうして一気に脆くも崩れ去った。もう、視聴率が上がる事もないだろう。この手の番組は打切りだ。
 無論、言うまでもなくこの学園に潜入したエージェント達の手によって。
「――何!? そんなはずは無い! 学園内の全ての管理は校長によって行われている! 手抜かりは無かったはず!」
「例えば、俺達みたいな異端……聞こえが悪いのでエージェントとしましょうか。――が、偽装工作をしてこの学校に潜り込み、生徒達から情報を集めていたんだとしても?」
 それは謎の転校生――名探偵とろろくんや、空調設備の業者として職員から情報を聞きかじった天野をさしていた。
「クソ! ぬけぬけと小細工ばかりしおってからに! どいつもこいつも役立たずだ! そんな戯けた遊びに自ら引っ掛かるとは……! こうなればヴィランである私自らが貴様等を都市伝説の一部として成敗してくれる!」
 お約束の戦闘モードへと移行したUMAでは無いヴィランがそう叫んだのも束の間。いつの間にか、屋上には数人の人影が集っていた。
「おじゃまさせてもらうぜ宇宙人。色々と迷惑だからおとなしく投降しろ。抵抗するならしても良いが命以外無くなっても知らねぇぞ」
 そう言ったのはリイェン。傍らにはインが扇を片手に余裕の笑み。
「格好よく謎を解くステージを用意する筈だったのに許せません!」
『まあ、そう言う事になってしまうのかもしれぬが……相手がヴィランである以上わらわも手は抜けぬな』
 名探偵とろろくん事、都呂々とタイタニアも戦闘準備万端。
「全く。校長が犯人だったとは――マジハンパねぇな。だけどやるしかねぇな」と、こちらは天野。
「戦闘開始。目標を排除する」淡々とそう言ったのは他でもない鎧堂。

「……ククク! 貴様等の名は都市伝説のUMAに逆らった確たる勇者として永遠に後世に遺す事にしよう!」
 最初に行動を開始したのは他でもない未だ名も無きヴィランだった。身構えるエージェント達をよそにあのライヴストーンを動力源にしたUFOなる乗り物で体当たりしてきた。
 それはあくまで牽制。中から未知なる生物――ではないヴィランがその姿を現したのだ。その姿形はリトルグレイとは余程近からぬ存在で。第一印象は普通の悪人面した言ってみれば強面だ。
 顔面には無数の傷が痛々しいほどにまで痕跡を残し、筋肉質な身体にもこれまで戦ってきた相手に引き裂かれた傷痕が残っていた。しかし手には両手大剣。ライヴスを感知した所、相当な猛者だ。
「さて――お手並み拝見といこうか」
 まずダッシュで動いたのは鎧堂。敵が逃げられない様に屋上のドアの前に陣取り、そこから支援体制。
 その次に動いたのはライヴスフィールドを発動した都呂々だった。不意のその先制の結界内にいたヴィランは一気に弱体化される。
 だがしかし、敵であるヴィランは両手大剣を活かしたライヴスブローを容赦なく放ち、その間出来た隙を使って力を込めたへヴィアタックを連続で叩き込む。
 ――間接と直接の二重行動。攻撃こそ最大の防御也。数多の死闘を潜り抜けてきたヴィランらしい戦闘スタイル。
「なるほど。単純な攻防一体――と言うヤツか」
『シンプルが故に侮れん。リイェン。油断はするな』
 インがそう言った直後、リイェンは動いた。目標は敵が持っている両手大剣。そこに幻想蝶、ライヴスメモリーに格納したAGWを起動。
 フルンティングによるへヴィアタックは絶大だ。敵との交戦に一騎当千。相手が怯んだ隙を縫って、今度は天野がゴーストウィンドで敵を攻撃。防御力を阻害。
「何!?」
 相当な自信があったのか虚を衝かれたヴィランは多勢に無勢。お役御免。
「UMAを演じてくれてご苦労様。後は俺達に任せてもらえないですかねえ?」
 止めの連携に石井が銀の魔弾を発動。魔力によって形成されたエネルギー弾は見事に相手の息の根を止めた。

 UFO(?)の中は存外普通のコックピットだった。
 その動力源はやはりライヴストーンによるものだったが、それは既に分かっていた事。意外性は0だ。名探偵事、都呂々はガックリと項垂れる。
「まあ、あまり期待はしていなかったのですが。とりあえずビデオに先程の戦闘までの過程を撮っておいたので、それを証拠に公開すれば学園の洗脳とやらも解かれるでしょう」
 それでも石井はハンディビデオカメラを回し続ける。
「とりあえず、スパイは校長先生だった。その事を上に報告しておかないと」と、鎧堂は言った。
「あーやっと終わった。航空支援の要請なんかしなくても済んだか」と、こちらは天野。

 こうして学園の都市伝説は静かに幕を閉じた。(了)

結果

シナリオ成功度 成功

MVP一覧

重体一覧

参加者

  • 義の拳客
    リィェン・ユーaa0208
    人間|22才|男性|攻撃
  • 義の拳姫
    イン・シェンaa0208hero001
    英雄|26才|女性|ドレ
  • 愚神を追う者
    石井 菊次郎aa0866
    人間|25才|男性|命中
  • パスファインダー
    テミスaa0866hero001
    英雄|18才|女性|ソフィ
  • 真仮のリンカー
    都呂々 俊介aa1364
    人間|16才|男性|攻撃
  • 蜘蛛ハンター
    タイタニアaa1364hero001
    英雄|25才|女性|バト
  • エージェント
    天野 雅洋aa1519
    機械|29才|男性|攻撃



  • エージェント
    鎧堂鷹獅aa3930
    機械|15才|?|生命



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